説明

ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法及び測定装置

【課題】 ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置を簡単な構成で連続的に測定する方法と装置。
【解決手段】 被走査面と想定されている面の前後の一定の距離Hだけ離れた位置それぞれの主走査方向に沿って、開口幅が副走査方向へ連続的に変化している三角スリット21を、主走査方向へ走査光ビームB2の移動速度に比較して遅い速度で移動させながら、三角スリット21を通過する光量を光電変換してパルス信号を発生させ、そのパルス信号から三角スリット21の主走査方向位置に応じてポリゴンミラー4の各回転でのパルス幅変動幅データδt1、δt2を取得し、パルス幅変動幅データδt1、δt2と、S=H×(δt1−δt2)/(δt1+δt2)の関係から、光走査光学系10の共役点の被走査面に対する位置Sを主走査方向に関して連続的に求める測定方法と装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法及び測定装置に関し、特に、ポリゴンミラーを用いた光走査装置の面倒れ補正光学系が十分に機能しているか否かを測定する方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリゴンミラーを用いた光走査光学系においては、ポリゴンミラーの各反射面(偏向反射面)に基準面に対して反射面毎に傾き角が異なると、走査線のピッチムラが生ずる。そこで、通常は、副走査断面(ポリゴンミラーの回転軸を含む断面)内でポリゴンミラーの反射点と被走査面を光学的に共役関係になるようにする面倒れ補正光学系が採用されるが、被走査面がその共役点に一致しないと、その面倒れ補正光学系の面倒れ補正機能が十分ではなく、走査線の移動(ピッチムラ)を生ずる。
【0003】
従来、このような面倒れ補正光学系を採用した光走査光学系において、被走査面を通る走査線の位置を、走査線の位置に交差するように配置した三角スリットや非平行の2本のスリットを用いて、走査光ビームがその三角スリットや非平行の2本のスリットを横切る時間の長さから、面倒れの影響による走査線のピッチムラを測定する装置は、特許文献1等において提案されている。
【特許文献1】特開平6−118329号公報
【特許文献2】特開2000−292308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系にいおいて面倒れ補正光学系が十分に機能していれば、ポリゴンミラーの反射点と共役に設定される被走査面においては、原理的に走査線のピッチムラは起こらないはずであるが、組み立て誤差や部品のバラツキ等により被走査面がその共役位置からずれることがある。
【0005】
従来、被走査面に配置した三角スリットや非平行の2本のスリットにより、走査線のピッチムラを直接測定することは、上記のように特許文献1等において提案されていたが、主走査方向全体にわたってポリゴンミラーの反射点と共役な位置を連続的に測定する方法は提案されていない。
【0006】
本発明は従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置を簡単な構成で連続的に測定する方法と装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法は、ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法であって、
予め被走査面と想定されている面の前後の一定の距離Hだけ離れた位置それぞれの主走査方向に沿って、開口幅が副走査方向へ連続的に変化している三角スリット、又は、2つの直線スリットを副走査方向のスリット間間隔が連続的に変化するように配置してなる非平行対スリットを、主走査方向へ走査光ビームの移動速度に比較して遅い速度で移動させながら、前記三角スリット又は非平行対スリットを通過する光量を光電変換してパルス信号を発生させ、そのパルス信号から前記三角スリット又は非平行対スリットの主走査方向位置に応じて前記ポリゴンミラーの各回転でのパルス幅変動幅データδt1、δt2を取得し、前記パルス幅変動幅データδt1、δt2と、
S=H×(δt1−δt2)/(δt1+δt2) ・・・(2)
の関係から、前記光走査光学系の共役点の被走査面に対する位置Sを主走査方向に関して連続的に求めることを特徴とする方法である。
【0008】
本発明の別のポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法は、ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法であって、
予め被走査面と想定されている面の前後の一定の距離Hだけ離れた位置それぞれの主走査方向に沿って、開口幅が副走査方向へ連続的に変化している三角スリット、又は、2つの直線スリットを副走査方向のスリット間間隔が連続的に変化するように配置してなる非平行対スリットを、主走査方向へ走査光ビームの移動速度に比較して遅い速度で移動させながら、前記三角スリット又は非平行対スリットを通過する光量を光電変換してパルス信号を発生させ、そのパルス信号と、前記三角スリット又は非平行対スリットの形状データと、走査光ビームの被走査面での速度データとに基づいて、前記三角スリット又は非平行対スリットの主走査方向位置に応じて、走査光ビームの副走査方向への変化幅δ1(X)、δ2(X)を求め、前記変化幅δ1(X)、δ2(X)と、
S=H×(δ1−δ2)/(δ1+δ2) ・・・(1)
の関係から、前記光走査光学系の共役点の被走査面に対する位置Sを主走査方向に関して連続的に求めることを特徴とする方法である。
【0009】
また、本発明のポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定装置は、ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定装置であって、
開口幅が副走査方向へ連続的に変化している三角スリット、又は、2つの直線スリットを副走査方向のスリット間間隔が連続的に変化するように配置してなる非平行対スリットと、その背後に配置された光電変換手段と、前記スリットと前記光量検出手段とを一体に、被走査面の前後の一定の距離Hだけ離れた位置で被走査面に沿って平行に主走査方向へ走査光ビームの移動速度に比較して遅い速度で移動させる移動手段と、前記光電変換手段からのパルス信号から前記三角スリット又は非平行対スリットの主走査方向位置に応じて前記ポリゴンミラーの各回転でのパルス幅変動幅データδt1、δt2を取得する手段と、
S=H×(δt1−δt2)/(δt1+δt2) ・・・(2)
の関係から、前記光走査光学系の共役点の被走査面に対する位置Sを主走査方向に関して連続的に求める計算手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の別のポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定装置は、ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定装置であって、
開口幅が副走査方向へ連続的に変化している三角スリット、又は、2つの直線スリットを副走査方向のスリット間間隔が連続的に変化するように配置してなる非平行対スリットと、その背後に配置された光電変換手段と、前記スリットと前記光量検出手段とを一体に、被走査面の前後の一定の距離Hだけ離れた位置で被走査面に沿って平行に主走査方向へ走査光ビームの移動速度に比較して遅い速度で移動させる移動手段と、前記光電変換手段からのパルス信号と、前記三角スリット又は非平行対スリットの形状データと、走査光ビームの被走査面での速度データとに基づいて、前記三角スリット又は非平行対スリットの主走査方向位置に応じて、走査光ビームの副走査方向への変化幅δ1(X)、δ2(X)を求める第1の計算手段と、
S=H×(δ1−δ2)/(δ1+δ2) ・・・(1)
の関係から、前記光走査光学系の共役点の被走査面に対する位置Sを主走査方向に関して連続的に求める第2の計算手段とを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法及び測定装置によると、光走査光学系の偏向走査状態において、予め被走査面と想定されている面の前後の一定の距離Hだけ離れた位置それぞれの主走査方向に沿って、開口幅が副走査方向へ連続的に変化している三角スリット、又は、2つの直線スリットを副走査方向のスリット間間隔が連続的に変化するように配置してなる非平行対スリットを、主走査方向へ走査光ビームの移動速度に比較して遅い速度で移動させてパルス信号を発生させるだけで、ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置を連続的に測定することができる。すなわち、光軸方向に連続的にスリットを動かさなくても、共役点を挟む前後2位置で測定することで、ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置を連続的に測定することができる。また、光電変換するセンサーの主走査方向の移動とポリゴンミラーの偏向反射面の回転を何ら同期させなくとも、簡単な配置で共役位置の連続的に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明のポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法及び測定装置を原理と実施例に基づいて説明する。
【0013】
ポリゴンミラー(回転多面鏡)を用いて光ビームの走査を行う場合、ポリゴンミラーの各偏向反射面の回転軸に対する平行度が同一ではないため、反射された光ビームの副走査方向の角度はポリゴンミラーの偏向反射面に応じて僅かに変動する。例えばレーザービームプリンターで用いられる光走査光学系では、ポリゴンミラーから被走査面まで100〜400mm程度の距離があるので、角度の誤差が数10″であっても、被走査面上では数10μmのずれ量となる。これは走査線ピッチと同じ程度の値であり、放置できない問題となる。これを避けるため、従来から面倒れ補正光学系が用いられてきた。
【0014】
以下、まず、ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系について説明する。
【0015】
図1は、本発明のポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法を実施する装置の1実施例の構成を示す模式的な斜視図であり、図2は、その光走査光学系の光路展開図であり、図2(a)は主走査断面(ポリゴンミラーの回転軸に垂直で光軸Aを含む断面)での光路展開図であり、図2(b)は副走査断面(ポリゴンミラーの回転軸に平行で光軸Aを含む断面)での光路展開図である。この図1と図2を参照にして、ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系について説明する。
【0016】
光走査光学系10は、例示として、光源1、コリメートレンズ2、副走査方向にのみ正屈折力を有するシリンドリカルレンズ3、ポリゴンミラー(回転多面鏡)4、走査光学系7で構成されており、光源1からの光はコリメートレンズ2で平行光ビームに変換され、シリンドリカルレンズ3でポリゴンミラー4の回転軸6に直交する方向(主走査方向)には平行光になり、その回転軸6に平行な方向(副走査方向)にはポリゴンミラー4の偏光反射面5近傍に集光するように変換され、その光ビームB1はポリゴンミラー4の偏向反射面5に入射し、その偏向反射面5で反射偏向された光ビームは走査光学系7を経て図の矢印方向へ繰り返し偏向される走査光ビームB2に変換され、被走査面11に入射して主走査方向、副走査方向共に被走査面11に集光する。偏向反射面5はポリゴンミラー4の回転軸6の周りで回転するので、その走査光ビームB2は偏向反射面5の回転速度の2倍の回転速度で回転して被走査面11上に走査線を描く。ポリゴンミラー4の回転に伴って光源1からの入射光ビームの入射位置に隣接する偏向反射面5が順次入っては出るので、ポリゴンミラー4の回転に伴って走査光ビームB2は被走査面上の同じ位置に走査線を一端から他端へ繰り返し描く。また、走査光ビームB2の偏向方向の上流端には反射鏡8が配置され、その反射鏡8で反射された光は水平同期検出器(光センサー)9に入射するようになっている。
【0017】
ここで、副走査方向において、コリメートレンズ2とシリンドリカルレンズ3を経た光ビームB1がポリゴンミラー4の偏光反射面5近傍に集光するように構成され、かつ、走査光学系7を経た走査光ビームB2が被走査面11に集光するように構成されているのが面倒れ補正方式の光走査光学系であり、偏光反射面5近傍の集光点Cと被走査面11上の集光点Dが共役になっていることがその大きな特徴である。以後、この集光点Dを共役点Dとする。このように構成すれば、ポリゴンミラー4の偏光反射面5の回転軸6に対する傾き角が面毎に異なっていても、共役点Dが被走査面11上に位置する限り、原理的に走査線のピッチムラ(副走査方向の位置の変化)は起こらないはずである。これがポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の原理である。
【0018】
このように、面倒れ補正光学系は、ポリゴンミラー4の偏光反射面5の倒れを光学的な共役関係を利用して補正するものであるが、被走査面11に共役点Dが一致しないと、面倒れ補正機能が十分ではなく、走査線のピッチムラを生ずる。
【0019】
その様子を図3の副走査断面での光路展開図を参照にして説明する。偏向反射面5に符号5’で示したような倒れがある場合、走査光学系7を介しての共役点Dは、図3(a)に示すように、被走査面11に共役点Dが一致しているのが正常に面倒れ補正機能が動作している場合であるが、図3(b)、(c)に示すように、被走査面11に共役点Dが一致しないと、面倒れ補正機能が十分ではなく、共役点Dが被走査面11の前方に位置する場合(図3(b))と、被走査面11の後方に位置する場合(図3(c))とでは、被走査面11上での走査線のずれる方向が相互に反対になる。図の光軸Aより上の方向を正、下の方向を負とすると、共役点Dが被走査面11の前方に位置する場合には、走査線のずれΔは負になり、共役点Dが被走査面11の後方に位置する場合には、走査線のずれΔは正になる。そして、何れの場合も、共役点Dの被走査面11からのずれ量が大きくなるに従って、走査線のピッチムラも大きくなる。
【0020】
次に、本発明による共役位置の連続測定方法の原理を図4を参照にして説明する。図4は副走査断面での光路展開図であり、共役点Dが被走査面11から図示のようにずれているものとする。そして、ポリゴンミラー4の複数(図1の場合は6面)の偏光反射面5の中のプラス方向に最も倒れの大きい偏光反射面を5max+とし、マイナス方向に最も倒れの大きい偏光反射面を5max-とし、それぞれの偏光反射面5max+、5max-で反射された走査光ビームB2の主光線を12max+と12max-とすると、ポリゴンミラー4が1回転する間に光ビームB1を偏向反射する、偏光反射面5は5max+と5max-の間にあり、偏光反射面5で反射された走査光ビームB2の主光線も12max+と12max-の間にある。あるいは、ポリゴンミラー4が1回転する間に、偏光反射面5で反射された走査光ビームB2の主光線は12max+と12max-の間で変化し、その変化の限界が12max+と12max-であると言うこともできる。通常、ポリゴンミラー4にはそれぞれ固有の偏光反射面5の倒れを持っているため、一般のポリゴンミラー4の偏光反射面5で反射される走査光ビームB2の主光線はこのような変化を伴っている。
【0021】
以上のような副走査方向でポリゴンミラー4の回転に伴って位置が変化する走査光ビームB2の変化幅を検出することを考える。図4に示すように、被走査面11の前後に一定の距離Hだけ離れた位置13- 、13+ (被走査面11の後の方向をプラス、被走査面11の前方をマイナスとする。)で、ポリゴンミラー4が1回転する間の走査光ビームB2の主光線12max+、12max-の変化幅をδ1、δ2とすると、比例関係から、共役点Dの被走査面11に対する位置Sが次の式(1)で求まる。
【0022】
S=H×(δ1−δ2)/(δ1+δ2) ・・・(1)
したがって、被走査面11の前後の一定の距離Hだけ離れた位置13- 、13+ でポリゴンミラー4の回転に伴う走査光ビームB2の中心位置での変化幅δ1、δ2を計測し、その変化幅δ1、δ2から式(1)に基づいて被走査面11に対する共役点Dの位置Sが求まる。そして、この共役点Dの位置Sは、図4の面に垂直な主走査方向全ての位置で求めることができる。
【0023】
次に、被走査面11の前後の一定の距離Hだけ離れた位置13- 、13+ で走査光ビームB2の中心位置での変化幅δ1、δ2の求め方について説明する。位置13- 、13+ を推定される共役点Dの位置のばらつき範囲より多少外に設定すると、その位置における走査光ビームB2の径は共役点Dでのビーム径に比較してもさほど大きくないので、特許文献1、2に示されているように、走査光ビームB2の位置13- 、13+ での副走査方向の位置は、三角スリットや非平行の2本のスリットを用いて、それらスリットを横切ったときのパルス幅やパルス間間隔を測定することにより求めることができる。例えば、図5(a)に示すように、位置13- 、13+ に副走査方向の位置に応じて主走査方向の幅が変化する形状の三角スリット21を配置して、その三角スリット21を通った走査光ビームB21 、B22 のパルス形状は、図5(b)、(c)のようになる。走査光ビームB21 は副走査方向のより高い位置を通り、走査光ビームB22 は副走査方向のより低い位置を通るものとすると、走査光ビームB21 が通ったときには、図5(b)のようなパルス幅t1 の信号が得られ、走査光ビームB22 が通ったときには、図5(c)のようなパルス幅t2 の信号が得られる。走査光ビームB2が三角スリット21を通ったときに得られるパルス幅は、走査光ビームB2の偏向速度が一定であれば副走査方向の通過位置に比例するので、パルス幅t1 とt2 の差から走査光ビームB21 とB22 の副走査方向の通過位置の差dが求まる。
【0024】
したがって、ポリゴンミラー4が1回転する間の最も大きいパルス幅から最も小さいパルス幅の差(パルス幅変動幅)δt1、δt2から位置13- 、13+ での走査光ビームB2の変化幅δ1、δ2を求めることができるが、上記のように、走査光ビームB2の変化幅δ1、δ2は、三角スリット21を通った走査光ビームB2のパルス幅変動幅δt1、δt2に比例するので、式(1)のδ1、δ2にδt1、δt2を代入すると、分母と分子の比例係数がキャンセルされて、式(1)は次のようになる。
【0025】
S=H×(δt1−δt2)/(δt1+δt2) ・・・(2)
次に、以上のような原理に基づいて、ポリゴンミラー4を用いた面倒れ補正方式の光走査光学系10の共役位置の連続測定方法を、図1を参照にして説明する。本発明による測定装置として、光走査光学系10の被走査面近傍に被走査面に平行に配置された電動ステージ30と、その電動ステージ30のレール31に案内されて被走査面に平行に主走査方向へ一定速度で移動する移動台32とを備えており、その移動台32上に、走査光ビームB2入射側に三角スリット21を設けたスリット板33が、また、その背後に三角スリット21を通過した走査光ビームB2の光強度信号を出す光センサー34が、相互に一体に、かつ、移動台32上の被走査面の前後方向位置が調節可能に取り付けられていて、移動台32の移動に伴って被走査面に平行に主走査方向へ移動するようになっている。
【0026】
そして、光センサー34からのパルス信号がタイムインターバルアナライザ35(例えば、横河電機(株)製TA−320)に入力され、タイムインターバルアナライザ35で取得されたパルス幅に関するデータ列はパーソナルコンピュータ36に送られ、式(2)基づいた処理が行われる。
【0027】
このような測定装置を用いて、共役点Dの位置Sを連続的に測定するには、まず、被走査面11の前の一定の距離−Hだけ離れた位置13- にスリット板33を調節して、移動台32を電動ステージ30のレール31に沿って主走査方向に移動させながら、光走査光学系10のポリゴンミラー4を回転させてその各偏光反射面5による走査光ビームB2をスリット板33の三角スリット21上を順次横切らせて、光センサー34からパルス信号を発生させ、タイムインターバルアナライザ35にそのパルス信号を入力させ、タイムインターバルアナライザ35からはパルス信号中の各パルスの幅が数値データに変換されてパーソナルコンピュータ36に送られる。
【0028】
図6は、その場合のパルス幅信号系列の例を模式的に示した図であり、●(黒丸)のパルス幅データがポリゴンミラー4の各偏光反射面5による1つの走査光ビームB2に対応する。図1のポリゴンミラー4の場合、6面の偏光反射面5からなるので、連続する6個のパルス幅データがポリゴンミラー4の1回転に対応する。したがって、パーソナルコンピュータ36では、図6のようなパルス幅データ系列を連続する6個のデータ列に順次区切ってポリゴンミラー4の各回転に対応させ、各回転でのパルス幅変動幅δt11 、δt12 、δt13 、δt14 、・・・・を求める。移動台32の移動をポリゴンミラー4の回転に比較してゆっくりと行う場合、ポリゴンミラー4の各回転は主走査方向に連続的に変わる各位置に略対応するので、パルス幅変動幅δt11 、δt12 、δt13 、δt14 、・・・・は主走査方向の測定位置に対応し、主走査方向の座標をX軸とすると、δt1(X)のデータが得られる。
【0029】
次に、今度は被走査面11の後の一定の距離+Hだけ離れた位置13+ にスリット板33を調節して、移動台32を電動ステージ30のレール31に沿って主走査方向に移動させながら、同様に、光センサー34からパルス信号を発生させ、タイムインターバルアナライザ35を経てパーソナルコンピュータ36で、δt2(X)のデータが得られる。
【0030】
その後、得られたδt1(X)とδt2(X)から、パーソナルコンピュータ36で式(2)に基づいて計算することにより、共役点Dの被走査面11に対する位置S(X)が連続的に求められる。
【0031】
なお、図6のようなパルス幅データと、三角スリット21の形状データと、走査光ビームB2の速度に基づいて、パーソナルコンピュータ36で走査光ビームB2の変化幅δ1(X)、δ2(X)を求め、式(1)に基づいて計算することにより、共役点Dの被走査面11に対する位置S(X)を連続的に求めるようにしてもよい。
【0032】
パルス幅変動幅δt1(X)、δt2(X)又は走査光ビームB2の変化幅δ1(X)、δ2(X)を求める位置13- 、13+ は、前記のように、推定される共役点Dの位置のばらつき範囲より多少外に設定するが、通常の光走査光学系10では、共役点Dは被走査面11に略一致しているので、被走査面11から光軸方向において各種の誤差による共役点位置のばらつき量より十分に大きい量だけ前後にずらせれば、必ずその間に共役点Dがあることになるので、本発明の測定方法を行うことができる。
【0033】
また、ポリゴンミラー4が1回転してその面数に対応するパルス幅を取得する間に、三角スリット21は主走査方向に若干移動するが、その移動速度は走査光ビームB2の速度に比較して十分遅く設定することにより、その移動は実用上問題ない。
【0034】
なお、光センサー34からパルス信号から図6のようなパルス幅信号系列を取得するには、オシロスコープのような測定器で個々のパルス幅を測定するようにしてもよいが、タイムインターバルアナライザ35を用いることにより高速で効率的に取得することができる。タイムインターバルアナライザ35は、電気信号の時間軸方向の値を連続的に計測、蓄積できるもので、例えば、パルス幅やパルス間隔等の情報を連続する一定数の全てのパルスについて取りこぼすことなく取得できる。これに対して、オシロスコープでは、表示、処理に時間がかかるので、取り込めるパルスの数と精度に限界がある。
【0035】
被走査面11の前後の測定位置13- 、13+ に配置するスリットとしては、図5に示したような二等辺三角形のスリット21だけでなく、図7(a)に示すような、直角三角形のスリット21’でもよく、あるいは、図7(b)に示すようなスリット幅が一定の2つの直線スリットを副走査方向に非平行に配置した非平行対スリット21”を用いてもよい。図7(b)に示すような非平行対スリット21”を用いる場合は、図6のようなパルス幅信号系列を取得するには、タイムインターバルアナライザ35で2つのスリットを通ったパルスのパルス間隔を求め、そのパルス間隔をパルス幅とすればよい。
【0036】
以上、本発明のポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法をその原理と実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法を実施する装置の1実施例の構成を示す模式的な斜視図である。
【図2】ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の光路展開図である。
【図3】面倒れ補正機能が十分ではなく走査線のピッチムラが生じる様子を説明するための図である。
【図4】本発明による共役位置の連続測定方法の原理を説明するための図である。
【図5】本発明の測定方法及び測定装置に用いる三角スリットの作用を説明するための図である。
【図6】パルス幅信号系列の例を模式的に示した図である。
【図7】本発明の測定方法及び測定装置に用いるスリットの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
A…光軸
B1…光ビーム
B2…走査光ビーム
B21 、B22 …走査光ビーム
C…集光点
D…共役点(集光点)
1…光源
2…コリメートレンズ
3…シリンドリカルレンズ
4…ポリゴンミラー(回転多面鏡)
5…ポリゴンミラーの偏光反射面
5’…倒れがある偏光反射面
max+…プラス方向に最も倒れの大きい偏光反射面
max-…マイナス方向に最も倒れの大きい偏光反射面
6…ポリゴンミラーの回転軸
7…走査光学系
8…反射鏡
9…水平同期検出器(光センサー)
10…光走査光学系
11…被走査面
12max+、12max-…偏光反射面5max+、5max-で反射された走査光ビームB2の主光線13- 、13+ …被走査面の前後に一定の距離Hだけ離れた位置
21…三角スリット
21’…直角三角形のスリット
21”…非平行対スリット
30…電動ステージ
31…レール
32…移動台
33…スリット板
34…光センサー
35…タイムインターバルアナライザ
36…パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法であって、
予め被走査面と想定されている面の前後の一定の距離Hだけ離れた位置それぞれの主走査方向に沿って、開口幅が副走査方向へ連続的に変化している三角スリット、又は、2つの直線スリットを副走査方向のスリット間間隔が連続的に変化するように配置してなる非平行対スリットを、主走査方向へ走査光ビームの移動速度に比較して遅い速度で移動させながら、前記三角スリット又は非平行対スリットを通過する光量を光電変換してパルス信号を発生させ、そのパルス信号から前記三角スリット又は非平行対スリットの主走査方向位置に応じて前記ポリゴンミラーの各回転でのパルス幅変動幅データδt1、δt2を取得し、前記パルス幅変動幅データδt1、δt2と、
S=H×(δt1−δt2)/(δt1+δt2) ・・・(2)
の関係から、前記光走査光学系の共役点の被走査面に対する位置Sを主走査方向に関して連続的に求めることを特徴とするポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法。
【請求項2】
ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法であって、
予め被走査面と想定されている面の前後の一定の距離Hだけ離れた位置それぞれの主走査方向に沿って、開口幅が副走査方向へ連続的に変化している三角スリット、又は、2つの直線スリットを副走査方向のスリット間間隔が連続的に変化するように配置してなる非平行対スリットを、主走査方向へ走査光ビームの移動速度に比較して遅い速度で移動させながら、前記三角スリット又は非平行対スリットを通過する光量を光電変換してパルス信号を発生させ、そのパルス信号と、前記三角スリット又は非平行対スリットの形状データと、走査光ビームの被走査面での速度データとに基づいて、前記三角スリット又は非平行対スリットの主走査方向位置に応じて、走査光ビームの副走査方向への変化幅δ1(X)、δ2(X)を求め、前記変化幅δ1(X)、δ2(X)と、
S=H×(δ1−δ2)/(δ1+δ2) ・・・(1)
の関係から、前記光走査光学系の共役点の被走査面に対する位置Sを主走査方向に関して連続的に求めることを特徴とするポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定方法。
【請求項3】
ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定装置であって、
開口幅が副走査方向へ連続的に変化している三角スリット、又は、2つの直線スリットを副走査方向のスリット間間隔が連続的に変化するように配置してなる非平行対スリットと、その背後に配置された光電変換手段と、前記スリットと前記光量検出手段とを一体に、被走査面の前後の一定の距離Hだけ離れた位置で被走査面に沿って平行に主走査方向へ走査光ビームの移動速度に比較して遅い速度で移動させる移動手段と、前記光電変換手段からのパルス信号から前記三角スリット又は非平行対スリットの主走査方向位置に応じて前記ポリゴンミラーの各回転でのパルス幅変動幅データδt1、δt2を取得する手段と、
S=H×(δt1−δt2)/(δt1+δt2) ・・・(2)
の関係から、前記光走査光学系の共役点の被走査面に対する位置Sを主走査方向に関して連続的に求める計算手段とを備えていることを特徴とするポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定装置。
【請求項4】
ポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定装置であって、
開口幅が副走査方向へ連続的に変化している三角スリット、又は、2つの直線スリットを副走査方向のスリット間間隔が連続的に変化するように配置してなる非平行対スリットと、その背後に配置された光電変換手段と、前記スリットと前記光量検出手段とを一体に、被走査面の前後の一定の距離Hだけ離れた位置で被走査面に沿って平行に主走査方向へ走査光ビームの移動速度に比較して遅い速度で移動させる移動手段と、前記光電変換手段からのパルス信号と、前記三角スリット又は非平行対スリットの形状データと、走査光ビームの被走査面での速度データとに基づいて、前記三角スリット又は非平行対スリットの主走査方向位置に応じて、走査光ビームの副走査方向への変化幅δ1(X)、δ2(X)を求める第1の計算手段と、
S=H×(δ1−δ2)/(δ1+δ2) ・・・(1)
の関係から、前記光走査光学系の共役点の被走査面に対する位置Sを主走査方向に関して連続的に求める第2の計算手段とを備えていることを特徴とするポリゴンミラーを用いた面倒れ補正方式の光走査光学系の共役位置の連続測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−118954(P2006−118954A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306356(P2004−306356)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】