説明

ポリゴンミラーモータのミラー偏心および面出入りを測定する装置

【課題】被検出部が非円筒状でも測定でき、毎分数万回転の高速回転まで測定可能なポリゴンミラーのミラー偏心、面出入り測定装置を提供する。
【解決手段】第1光源4と、被測定ミラーで前記第1光源4からの光を反射させた第1反射光を検出する第1光検出素子7および第1スリット6と、前記光検出素子7にスポット形成させる第1光学系5と、第2光源8と、ミラーで前記第2光源8からの光を反射させた第2反射光と前記第2光源8からの光がミラー面と垂直をなすミラー正対時に第2反射光を検出する第2光検出素子11、第2光学系9および第2スリット10と、ミラー各面ごとに第1光検出素子7と第2光検出素子11の出力信号の時間間隔を測定する時間計測手段と、時間間隔値に基づいてミラー偏心を算出する偏心算出手段および面出入りを算出する面出入り算出手段とを備えたことを特徴とするミラー偏心および面出入りを測定する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリゴンミラーモータのミラー偏心およびミラー面の出入りを非接触で検査する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変位計の出力のピーク値を検出する第1ピーク検出器の他に第2ピーク検出器を設け、両ピーク検出器によるピークの差を取ることにより、偏心を検出することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、一般的には、被検出部分である回転軸が円筒状であることがほとんどであることから、被検出部分において接触型のダイヤルゲージや電気マイクロ、非接触型の静電容量変位計やレーザ変位計などを使用して、偏心測定が行われている。
【特許文献1】特開平5−227710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、被検出部が非円筒状であり、接触しての測定が許されないポリゴンミラーが被検出対象である場合の測定方法である。この場合、当然のことながら接触型のセンサは使用できず、一方、非接触型の静電容量変位計においては、数十μm程度に近接して設置することが要求され、角部分を持つポリゴンミラーにおいてはセンサとポリゴンミラーが衝突してしまうなどの問題があり測定は困難である。また、市販されているレーザ変位計では応答速度がマイクロオーダーであることから、測定可能範囲はせいぜい毎分数百回転までであり、毎分数万回転している状態での偏心測定には使用不可能である。
【発明の効果】
【0005】
本発明では、検出部をレーザおよび応答速度がナノオーダーである光検出素子で構成しており、低速回転から毎分数万回転までの高速回転において測定可能である。
【0006】
また、ミラー反射面からの反射光をもとに測定を行うので、被検出対象がポリゴンミラーのような非円筒状であっても測定が可能である。さらに、2つの光検出素子を用い、ミラー偏心および面出入りを2出力信号のエッジ間の時間間隔変動としてディジタル的に測定することができるので、PSDなど光位置検出素子を使用したアナログ測定手法に比較し安定したデータを得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明に係わる代表的な手段は、第1光源と、前記第1光源から射出された第1測定光を被測定ポリゴンミラーで反射させ、反射させた第1反射光を検出する位置に設置した第1光検出素子および第1スリットと、前記光検出素子にスポットを形成させる第1光学系と、第2光源と、前記第2光源から射出された第2測定光をポリゴンミラーで反射させ、反射させた第2反射光と前記第2測定光の両方がミラー反射面と垂直をなすミラー正対時に第2反射光を検出する第2光検出素子、第2光学系および第2スリットと、被測定ポリゴンミラーの各面ごとに第1光検出素子と第2光検出素子から出力される信号の時間間隔を測定する時間計測手段と、前記時間計測手段により得られた時間間隔値に基づいて被測定ポリゴンミラーモータのミラー偏心を算出する偏心算出手段およびミラー面の出入りを算出する面出入り算出手段とを備えたことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1光源と、前記第1光源から射出された第1測定光を被測定ポリゴンミラーで反射させ、反射させた第1反射光を検出する位置に設置した第1光検出素子および第1スリットと、前記光検出素子にスポットを形成させる第1光学系と、第2光源と、前記第2光源から射出された第2測定光をポリゴンミラーで反射させ、反射させた第2反射光と前記第2測定光の両方がミラー反射面と垂直をなすミラー正対時に第2反射光を検出する第2光検出素子、第2光学系および第2スリットと、被測定ポリゴンミラーの各面ごとに第1光検出素子と第2光検出素子から出力される信号の時間間隔を測定する時間計測手段と、前記時間計測手段により得られた時間間隔値に基づいて被測定ポリゴンミラーモータのミラー偏心を算出する偏心算出手段およびミラー面の出入りを算出する面出入り算出手段から構成する。
【実施例1】
【0009】
図1はミラー偏心の定義を示している。偏心が存在しない理想状態にあるポリゴンミラー1と、偏心Eをもつポリゴンミラー2があるとしたとき、ポリゴンミラー1の回転中心に対するポリゴンミラー2の回転中心のズレ量Eを偏心と呼ぶ。本発明では、偏心Eのx方向成分Exとy方向成分Eyをそれぞれ測定し、(式1)により偏心Eを求める。
【0010】
【数1】

【0011】
図2はミラーの面出入りの定義を示している。ポリゴンミラーに偏心や各ミラー面の横幅寸法に差異が存在したとき、ポリゴンミラー3が回転する状態では図2に示すようなミラーの面出入りDが発生する。
【0012】
図3は本発明の測定原理を示したものである。仮にポリゴンミラーは4面であり、ポリゴンミラーモータが回転状態にあるとする。ただし、図3については説明を簡単にするため4面ミラーではあるが2面間の関係のみについて示している。
【0013】
装置構成は、第1光源4の光を光学レンズ5(たとえば対物レンズ)を通しポリゴンミラーで反射させ、スリット6を通して光検出素子7に入射させる。また、4面あるミラーの各面がそれぞれ同じ方向を向く(たとえば紙面上でまっすぐに上を向く)、ミラー正対タイミングを検出するため、第2光源8の光をポリゴンミラーで反射させ、その反射光をさらに光学レンズ9(たとえばビームスプリッタ)で反射させ、スリット10を通して光検出素子11(たとえばフォトダイオード)に入射させる。
【0014】
ここで図3に示したe’は偏心あるいは面出入りに比例する量であり、逆にこのe’を知ることができれば偏心および面出入りを算出することが可能となる。
【0015】
ミラー正対時のミラー姿勢12の時には、実際検出はしないが第1光源の光は光検出素子7に向かって反射光13のような軌道を通って進んでいくものと考えられる。同じくミラー正対時のミラー姿勢14の時にも、実際検出はしないが第1光源の光は光検出素子7に向かって反射光15のような軌道を通って進んでいくものと考えられ、反射光13と反射光15が光検出素子7に入る位置の変位がe’となる。ただし光検出素子7の性質上、光位置の検出は不可能である。
【0016】
そこでe’を時間の変動として検出する測定方法を示す。e’は(式2)により表され
る。
ここでtanθn<<1としてスリット6を配置すればtanθn≒θとみなせるので、(式2)は(式3)のように簡略化できる。さらに、(式3)は(式4)のように展開することができる。ただし、ωは回転角速度、t1はθ1だけ回転するのに要した時間、t2はθ2だけ回転するのに要した時間である。ミラー反射面からスリット6までの距離L、回転角速度ωが既知であるとすれば、t2、t1を計測することでe’の算出が可能となる。ここでθ1はミラー姿勢16のときの反射光17が入射するスリット6のエッジ位置から、反射光13が光検出素子7に入射するであろう位置までの角度であるので、回転角速度ωが一定とすればt1は反射光17を光検出素子7が検出した時点から、ミラー姿勢12の時に光検出素子11が光を検出した時点までの時間によって計測することができる。t2についても同様に、θ2がミラー姿勢18のときの反射光19が入射するスリット6のエッジ位置から、反射光15が光検出素子7に入射するであろう位置までの角度であるので、t2も反射光19を光検出素子7が検出した時点から、ミラー姿勢14の時に光検出素子11が光を検出した時点までの時間によって計測することができる。
【0017】
【数2】

【0018】
【数3】

【0019】
【数4】

【0020】
図4は光検出素子7と光検出素子11の出力波形イメージを示したものである。時間t1はミラー第1面の反射による光が光検出素子7と光検出素子11に入射したとき、2出力の立ち上がりエッジ間の時間間隔を時間間隔計測手段(たとえばタイムインターバルアナライザ)を用いて計測することができる。時間t2についてもミラー第2面の反射光入射時に同様に計測でき、ミラー第3面、第4面においてもt3、t4を計測すれば1回転分(4面)の時間間隔値が得られる。(式4)を(式5)、(式6)のように応用することで、ミラー偏心量Eおよびミラーの面出入り量Dを算出することができる。
【0021】
【数5】

【0022】
【数6】

【0023】
ただし、tmaxはt1,t2,t3,t4のうちの最大値、tminはt1,t2,t3,t4のうちの最小値である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のポリゴンミラーモータのミラー偏心および面出入りを測定する装置は、回転状態にあるポリゴンミラーモータのミラー偏心および面出入りの測定に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1における偏心定義の説明図
【図2】本発明の実施例1における面出入り定義の説明図
【図3】本発明の実施例1における偏心、面出入り測定原理および装置構成の説明図
【図4】本発明の実施例1における信号出力と時間間隔計測の説明図
【符号の説明】
【0026】
1、2、3 ポリゴンミラー
4 第1光源
5 光学レンズ(第1光学系)
6、10 スリット
7 第1光検出素子
8 第2光源
9 光学レンズ(第2光学系)
11 第2光検出素子
12、14 ミラー正対時のミラー姿勢
13、15、17、19 反射光
16、18 ミラー姿勢


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光源と、前記第1光源から射出された第1測定光を被測定ポリゴンミラーで反射させ、反射させた第1反射光を検出する位置に設置した第1光検出素子および第1スリットと、前記光検出素子にスポットを形成させる第1光学系と、第2光源と、前記第2光源から射出された第2測定光をポリゴンミラーで反射させ、反射させた第2反射光と前記第2測定光の両方がミラー反射面と垂直をなすミラー正対時に第2反射光を検出する第2光検出素子、第2光学系および第2スリットと、被測定ポリゴンミラーの各面ごとに第1光検出素子と第2光検出素子から出力される信号の時間間隔を測定する時間間隔計測手段と、前記時間間隔計測手段により得られた時間間隔値に基づいて被測定ポリゴンミラーモータのミラー偏心を算出する偏心算出手段およびミラー面の出入りを算出する面出入り算出手段とを備えたことを特徴とするポリゴンミラーのミラー偏心および面出入りを測定する装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−132955(P2006−132955A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318983(P2004−318983)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】