説明

ポンプ装置

【課題】ステータとロータを隔てる隔壁に対してステータを精度よく位置決め固定できるポンプ装置を提供すること。
【解決手段】ポンプ装置1は、中央に環状部50を備えるステータコア28および駆動コイル27を備えるステータ29と、羽根車21およびステータ29の外周側に配置される駆動マグネット22を備えるロータ23と、羽根車21が配置されるポンプ室25とステータ29との間を隔てるためにステータ29とロータ23との間に配置された上ケース12(隔壁)を有する。上ケース12は、環状部50の内側に突出する有底筒状の中央突出部80を備え、中央突出部80の筒状部84の外周面には径方向外側に突出する3つのステータ固定用突部85が形成されている。ステータ29は、3つのステータ固定用突部85がステータコア28の環状部50に圧入された状態で中央突出部80に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ室を区画する隔壁を備えるポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体圧送用の渦流ポンプとしては特許文献1に記載のものが知られている。同文献のポンプ装置は、駆動コイルを搭載するステータコアを備えるステータと、羽根車およびステータを外周側から囲む筒状の駆動マグネットを備えるロータと、羽根車が配置されるポンプ室とステータとの間を隔てるために、ステータとロータとの間に配置された隔壁を備えている。同文献において、ステータは、駆動コイルをステータコアに巻き回す際に利用されるインシュレータを介して基板に固定され、しかる後に、ハウジングに固定されている。ハウジングはステータと基板をインサート成形によって樹脂モールドした樹脂モールド体であり、樹脂モールド体の一部分が隔壁として機能している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−119164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のポンプ装置では、ハウジングとステータの間に2つの部材(インシュレータと基板)が介在しているので、寸法公差や組立公差が積みあがり、結果として隔壁に対するステータの位置精度が低下してしまうことがある。ここで、隔壁に対するステータの位置精度が低下すると、隔壁を介して対峙するステータの駆動コイルとロータの駆動マグネットの間のギャップを管理することが困難になるので、製造されるポンプ装置の性能を同一に維持することが難しくなるという問題がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ステータとロータを隔てる隔壁に対してステータを精度よく位置決め固定できるポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、中央に環状部を備えるステータコアおよび当該ステータコアに搭載された駆動コイルを備えるステータと、羽根車および前記ステータの外周側で当該ステータと所定間隔を開けて対峙する駆動マグネットを備えるロータと、前記羽根車が配置されるポンプ室と前記ステータとの間を隔てるために当該ステータと前記ロータとの間に配置された隔壁とを有するポンプ装置において、前記隔壁は、前記環状部の内側に突出する有底筒状の突出部を備え、前記突出部の筒状部の外周面には、周方向の一部分から径方向外側に突出する複数の突部が形成されており、前記ステータコアは、前記複数の突部が前記環状部に圧入された状態で前記突出部に固定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ステータはステータとロータとの間を隔てる隔壁に直接固定されている。従って、隔壁に対するステータの位置精度を高めることができる。また、ステータコアは、突出部の周方向の全体が環状部に圧入された状態で隔壁に固定されているのではなく、突出部の筒状部の外周面に設けられた複数の突部が環状部に圧入された状態で隔壁に固定されており、隔壁とステータコアの間の圧入代が小さい。この結果、ステータコアを隔壁に固定する際の圧入が容易となるので、圧入固定に際しても、隔壁に対するステータの位置精度を高めることができる。従って、隔壁を介して対峙するステータの駆動コイルとロータの駆動マグネットの間のギャップを精度良く管理することが可能となる。
【0008】
本発明において、前記ステータコアの環状部の内周面には、前記複数の突部のそれぞれを圧入可能な複数の凹部が設けられており、各突部は、各凹部に圧入されていることが望ましい。このようにすれば、凹部に突部が圧入されることによって、ステータ(ステータコア)を軸線回りで位置決めすることができる。また、駆動コイルと駆動マグネットからなる磁気駆動機構によって羽根車を備えるロータを回転させる際に、反力によってステータが軸線回りに回転することを防止できる。さらに、突出部の外周面に設けられた複数の突部を環状部に設けた凹部に圧入する構成であれば、圧入時の応力が各突部から突出部の周方向に逃げやすい。従って、圧入固定に際して、隔壁の変形や破損を防止できる。
【0009】
この場合において、各突部は、周方向の両側部分が各凹部に圧入されており、径方向外側の先端と各凹部との間にはクリアランスが設けられていることが望ましい。このようにすれば、圧入固定に際して、突出部の径方向に応力が発生することを抑制できる。よって、隔壁の変形や破損を防止できる。
【0010】
本発明において、前記複数の突部は、同一形状であり、等角度間隔で3つ以上形成されていることが望ましい。このようにすれば、複数の突部を環状部に圧入したときに、隔壁の突出部とステータコアの同心度を向上させることができるので、隔壁に対するステータの位置精度が向上する。
【0011】
本発明において、各突部は、前記筒状部の外周面に沿って軸線方向に延びているとともに、底部の側から開口端の側に向かって径方向外側および周方向への突出量が増加するテーパー面を備えており、前記ステータコアの環状部には、各突部の前記開口端の側の一部分が圧入されていることが望ましい。このようにすれば、ステータコアの環状部に突部を圧入することが容易となる。また、ステータコアの環状部には、突部の一部分だけが圧入されるので、圧入代が小さい状態を維持できる。
【0012】
本発明において、前記隔壁は、前記突出部の外周側に設けられた円筒部と、前記突出部の開口端と前記円筒部とを連続させている円環状部とを備えており、前記突出部、前記円筒部および前記円環状部によって形成された円環状凹部には、前記ステータが収納されており、前記ステータは、前記円環状凹部に流し込まれた封止剤によって覆われていることが望ましい。このようにすれば、隔壁とステータコアの間の圧入代が小さい場合でも、封止剤によって、ステータを隔壁に確実に固定できる。
【0013】
この場合において、前記突出部は、前記底部の側に前記円環状凹部の開口から突出する突出部分を備えており、各突部における前記突出部の前記底部の側の端は、前記突出部分に達していることが望ましい。このようにすれば、各突部において突出部分に達している端をステータコアの環状部の各凹部に挿入し、しかる後に、ステータをステータ収納室に落とし込むことによって、ステータは各突部に案内されて、ステータ収納室内に収納される。
【0014】
また、この場合において、前記隔壁は、樹脂成形品であり、前記突出部の筒状部の内周面には、当該筒状部の外周面に形成されている各突部と重なる位置に溝が設けられていることが望ましい。このようにすれば、突出部の筒状部の厚さを全周に渡って均一に近いものとすることができるので、隔壁の成形時に突出部で発生するヒケを均一にすることができる。従って、突出部の円筒度を向上させることができる。
【0015】
本発明において、前記突出部の前記筒状部の外周面には、開口端の側から前記ステータコアの前記環状部に当接して前記ステータを軸線方向で位置決めする位置決め部が設けられており、前記位置決め部と各突部とは、周方向で離れた位置に形成されていることが望ましい。このようにすれば、軸線方向におけるステータの位置決めが容易となる。
【0016】
本発明において、前記突出部の底部の内側面には、前記ロータを回転可能に支持する支軸が固定されていることが望ましい。このようにすれば、ロータを支持する支軸とステータの双方を突出部に固定できるので、支軸に支持されるロータとステータの相対位置精度を向上させることができる。
【0017】
また、本発明において、前記突出部の底部の内側面には、前記ロータを回転可能に支持する支軸が固定されており、前記ロータは、筒状の軸受部を備えており、前記軸受部は、中心孔に前記支軸が挿入された状態で前記突出部の内側に配置されており、前記突出部の底部と前記軸受部の間には、前記ロータの軸線方向の位置を調整するためのワッシャーが挿入されており、前記ワッシャーには、外周縁部分から径方向外側に突出する回り止め部が形成されており、前記回り止め部は、前記筒状部の内周面の溝に挿入されていることが望ましい。このようにすれば、ワッシャーの挿入によって、軸線方向におけるロータとステータの相対位置調整を行うことができる。また、回り止め部と溝との係止によって、ロータの回転時に、ワッシャーが軸線回りに回転することを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ステータはステータとロータとの間を隔てる隔壁に直接固定されているので、隔壁に対するステータの位置精度を高めることができる。また、ステータコアは、突出部に設けられた複数の突部が環状部に圧入された状態で隔壁に固定されており、隔壁とステータコアの間の圧入代が小さい。この結果、ステータコアを隔壁に固定する際の圧入が容易となるので、圧入固定に際しても、隔壁に対するステータの位置精度を高めることができる。従って、隔壁を介して対峙するステータの駆動コイルとロータの駆動マグネットの間のギャップを精度良く管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用したポンプ装置の斜視図および正面図である。
【図2】本発明を適用したポンプ装置の断面図である。
【図3】本発明を適用したポンプ装置の分解斜視図である。
【図4】ロータおよびステータの斜視図である。
【図5】下ケースの斜視図である。
【図6】上ケースの斜視図である。
【図7】上ケースのステータ収納室の周辺の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態のポンプ装置を説明する。なお、以下の説明において、説明の便宜上、図の上下に従ってポンプ装置の上下を説明する。また、吸入管および吐出管が突出している側をポンプ装置の前側、その反対側を後側とし、吸入管および吐出管の配列方向を装置幅方向として説明する。
【0021】
(全体構成)
図1(a)は本発明を適用したポンプ装置を前方の斜め上から見た斜視図であり、図1(b)はポンプ装置を後方の斜め上から見た斜視図であり、図1(c)はポンプ装置の正面図である。本形態のポンプ装置1は冷媒等の液体を圧送する渦流ポンプである。ポンプ装置1は全体として偏平な四角柱形状のポンプケース2を備えている。ポンプケース2は樹脂製であり、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等からなる。ポンプケース2の前面からは吸入管3および吐出管4が前方に向かって平行に突出している。ポンプケース2の前面2aと、前面2aに時計回りの方向で隣接する側面の間の前側左の角部分2bには、ポンプケース2の内側からリード線5を取出すための配線取出し部6が設けられている。リード線5は配線取出し部6を介してポンプ装置1の軸線L方向(高さ方向)の途中位置から斜め前方に向かって引き出されている。リード線5は吸入管3および吐出管4よりも長く延びており、その先端にはコネクタ7が取り付けられている。
【0022】
配線取出し部6が設けられているポンプケース2の前側左の角部分2bには、当該角部分2bの先端を斜めに切り欠くことにより、前面2aおよび側面と交差して軸線L方向に延びる傾斜面2c(図1(c)参照)が設けられている。また、この前側左の角部分2bには、リード線5を傾斜面2cに沿って引き回したときに、このリード線5を係止するためのフック8が設けられている。フック8は、傾斜面2cの軸線L方向の中央位置において、傾斜面2cとの間に所定の隙間を開けて軸線Lと直交する方向に延びている。また、フック8は、前面2aの側から側面の側に向かって一定幅で延びている。
【0023】
ポンプケース2は、上下に積層された下ケース11および上ケース(隔壁)12から構成されている。吸入管3および吐出管4は下ケース11から突出している。配線取出し部6は、上ケース12に設けられている。フック8は下ケース11に設けられている。ここで、ポンプケース2において配線取出し部6と対角に位置する後側右の角部分2fには、下ケース11と上ケース12を積層する際にこれらが相対回転することを防止するための回り止め機構13が設けられている。
【0024】
図2(a)は図1(a)のX−X線におけるポンプ装置1の縦断面図であり、図2(b)は図1(a)のY−Y線におけるポンプ装置1の縦断面図である。図3はポンプ装置1の分解斜視図である。図4(a)はロータの斜視図であり、図4(b)はステータの斜視図である。
【0025】
図2、図3に示すように、下ケース11と上ケース12は軸線Lと直交する方向で部分的に重なる状態で積層されている。下ケース11と上ケース12の間には、区画室20が構成されている。区画室20には、円環状の羽根車21と駆動マグネット22を備えるロータ23と、このロータ23を回転可能に支持する支軸24が配置されている。また、区画室20の外周側部分は円環状のポンプ室25となっており、羽根車21はポンプ室25に挿入されている。下ケース11と上ケース12の間には、区画室20からの流体の漏れを防止するためのOリング26が配置されている。上ケース12の上側、すなわち、区画室20の逆側(下ケース11とは反対側)には、駆動コイル27と、この駆動コイル27を搭載するステータコア28を備えるステータ29、基板30が配置されている。駆動マグネット22と駆動コイル27は羽根車21を回転駆動するための磁気駆動機構を構成している。
【0026】
ポンプ室25の底面および天井面には、軸線L回りの所定の角度範囲に渡って液体流路31が形成されている。より詳細には、下ケース11によって規定されているポンプ室25の底面には半円形の断面形状を備える円弧溝からなる下側流体流路31aが形成されており、上ケース12によって規定されているポンプ室25の天井面には半円形の断面形状を備える円弧溝からなる上側流体流路31bが形成されている。これら下側流体流路31aおよび上側流体流路31bは軸線L方向から見たときに重なっている。本例では、液体流路31は軸線L回りの270°を超える角度範囲に渡って形成されている。
【0027】
ポンプ室25において液体流路31の一方の端が位置する下ケース11の部位には吸入管3が連通する吸入口3a(図5参照)が設けられており、液体流路31の他方の端が位置する下ケース11の部位は吐出管4が連通する吐出口4aが設けられている。ポンプ室25の底面において、吸入口3aと吐出口4aの間に位置する部分は、下側流体流路31aが設けられていない下側封鎖部32aとなっている。同様に、ポンプ室25の天井面において、吸入口3aと吐出口4aの間に位置する部分は、上側流体流路31bが設けられていない上側封鎖部32bとなっている。
【0028】
支軸24は、ステンレス製であり、下端部分が下ケース11に設けられた支軸固定用凹部60に固定されている。上端部分が上ケース12の中央部分に設けられた有底筒状の中央突出部80の底部81の支軸固定用凹部82に固定されている。支軸固定用凹部82は底部81の内側面の中心に設けられている。
【0029】
ロータ23は、PPS等からなる樹脂製であり、図4(a)に示すように、円盤部40と、円盤部40の上面の中心から上方に突出する円筒状の軸受部41と、円盤部40の上面から上方に突出しており、軸受部41と所定間隔を開けてこの軸受部41を同軸上で包囲している円筒部42を備えている。軸受部41と円筒部42の間の所定間隔は、上ケース12を介して、これらの間にステータ29を受け入れることが可能な間隔である。ロータ23は、軸受部41の中心孔41aに支軸24が挿入され、軸受部41が上ケース12中央突出部80の内側に配置された状態で、支軸24の軸線L回りに回転可能となっている。ここで、軸受部41と中央突出部80の底部81の間には1枚または複数枚のワッシャー43が挿入されており、このワッシャー43の挿入によって軸線L方向におけるロータ23の位置が調整されている(図2参照)。本例では2枚のワッシャーが挿入されているが、例えば、厚みが0.2mmのワッシャー43と厚みが0.3mmのワッシャー43のうち、1枚または2枚を選択することで、ワッシャー43の合計厚みを0.2mm〜0.6mmまで0.1mm間隔で調整することができる。
【0030】
円筒部42の内周面には、円筒状のヨーク44が保持されており、ヨーク44の内周面には円筒状の駆動マグネット22が保持されている。ヨーク44はインサート成形によってロータ23と一体に形成され、駆動マグネット22はヨーク44に接着固定されている。円盤部40において円筒部42よりも外周側の外周部分は羽根車21となっている。
【0031】
羽根車21の外周部分には上下2段に形成された凹部45が周方向に等角度間隔で形成されている。凹部45は円盤部40の上面の周縁を円弧形状に切り欠いて形成された上側凹部46と、円盤部40の下面の周縁を円弧形状に切り欠いて形成された下側凹部47を備えており、周方向で隣接する凹部45の間はそれぞれ半径方向に延びる羽根48となっている。上下方向で隣接する上側凹部46と下側凹部47の間は、周方向に延びて各羽根48の間を上下に区画するリブ49となっている。羽根車21は、図2に示すように、ポンプ室25内に挿入されている。
【0032】
ステータ29は、上ケース12の上面の側において、中央突出部80の外周側に設けられた円環状凹部であるステータ収納室(円環状凹部)83内に配置されている。ステータコア28は、図4(b)に示すように、環状部50および環状部50から径方向外側に突出する複数の突極51を備えており、駆動コイル27は複数の突極51のそれぞれに巻き回されている。図2に示すように、各突極51は、軸線Lと直交する方向で、上ケース12を介して、区画室20内のロータ23の駆動マグネット22と対峙している。上ケース12は、ロータ23とステータ29の間に配置されて、ポンプ室25とステータ29を隔てる隔壁として機能している。
【0033】
ステータコア28は、薄板状の磁性鋼板を型抜きして形成した同一形状の板状コア片52を複数枚上下方向に積層して構成されており、板状コア片52の積層方向が軸線L方向となっている。ステータコア28の環状部50の内周面には、軸線Lと直交する断面形状に円弧輪郭を備える3つの内側凹部53が軸線L回りに等角度間隔で形成されている。3つの内側凹部53は同一形状であり、いずれも、軸線L方向に延びている。各内側凹部53は半径方向の深さが一定であり、断面形状は軸線L方向のいずれの位置においても同一である。
【0034】
基板30は、上ケース12の上面において、周縁に沿って上方に向かって突出する枠状の外周壁86の内側に設けられた上部空間87に配置されている。基板30は、ステータ収納室83内に配置されたステータ29を上方から被っている。基板30におけるステータコア28の側の面にはリード線5が接続されており、このリード線5は、配線取出し部6を介して、ポンプケース2の外側に引き出されている。配線取出し部6は、図3に示すように、外周壁86を切り欠いて設けられた配線取出し口33と、配線取出し口33を介してポンプケース2の内側から外側に取出したリード線5を一列に配列して載置するための配線載置部34と、基板30の上方から配線取出し口33を塞ぐように上ケース12に固定され、配線載置部34上に配列されたリード線5を配線載置部34との間に挟みこんでその被覆を押圧した状態で固定する固定部材35を備えている。
【0035】
ここで、上ケース12のステータ収納室83および上部空間87には、図1に示すように、外周壁86の上端縁に達するまで上方からポッティング剤(封止剤)16が流し込まれており、ステータ29および基板30はポッティング剤16により被われて、固定されている。ポッティング剤16は、エポキシ系やアクリル系、シリコン系等の絶縁性の樹脂である。
【0036】
コネクタ7からリード線5および基板30を介して駆動コイル27に励磁電流が供給されると、ロータ23は軸線L回りに回転する。これにより、液体は吸入管3からポンプ室25内に吸い込まれ、ポンプ室25内で加圧されて、吐出管4から吐出される。なお、本例のポンプ装置1を駆動するモータ(ロータ23、ステータ29、基板30)は3相ブラシレスモータであり、基板30にはロータ23の駆動マグネットの位置を検出する図示しないホール素子が3つ配置される。駆動コイル27に供給される励磁電流の順序を逆にすると、ロータ23が逆方向に回転し、液体を吐出管4から吸入して、ポンプ室25内で加圧して、吸入管3から吐出する。
【0037】
(下ケース)
図5(a)は下ケース11を上方から見た斜視図であり、図5(b)は下ケース11を下方から見た斜視図である。下ケース11は、底板部61と、底板部61の外周側部分から起立して上方に延びる環状の側壁部62と、これら底板部61および側壁部62によって形成された円形凹部63を備えている。側壁部62の輪郭形状は略矩形であり、下ケース11は軸線L方向から見た平面形状が略矩形となっている。側壁部62は平坦な上端面62aを備えており、この上端面62aは下ケース11の上端面となっている。ポンプ室25は、円形凹部63の周縁に沿って環状に構成される。円形凹部63の円形底面の中央には支軸固定用凹部60が設けられている。
【0038】
支軸固定用凹部60の外周側には円環状凹部64が支軸固定用凹部60と同軸に形成されている。支軸固定用凹部60と円環状凹部64の間は内側円環状突出面65となっており、円環状凹部64の外周側は外側円環状突出面66となっている。外側円環状突出面66には、その周縁に沿ってポンプ室25の底面を構成する下側流体流路31aと下側封鎖部32aが設けられている。外側円環状突出面66においてポンプ室25の内側に隣接している円環状の端面部分67は、区画室20内に配置されたロータ23の円盤部40と微小なギャップG1を開けて対向する(図2参照)。円環状の端面部分67には、円環状凹部64と下側流体流路31aとを連通させる一定幅の溝67aが、180°離れた位置に、2つ形成されている。
【0039】
円形凹部63の上側部分、すなわち、側壁部62の上側部分の内周面には、円環状段部68が設けられている。円環状段部68は、側壁部62の内周面の軸線L方向の途中位置から半径方向に延びる円環状端面68aと、円環状端面68aの外周縁から上方に延びる円形内周面68bを備えている。円環状段部68は、上ケース12の上端部分に円形凹部63よりも径の大きな円形の凹部を形成している。
【0040】
側壁部62の前面からは吸入管3と吐出管4が平行に突出している。側壁部62の吐出管4に隣接する下ケース11の前側左の角部分2bには、傾斜面2cおよびフック8が設けられている。側壁部62の後側右の角部分2fには、回り止め機構13を構成する回り止め用凹部69が設けられている。回り止め用凹部69は上端面62aから下方に窪む凹部である。また、回り止め用凹部69は外周側から切り欠かれており、その内周面が下ケース11の外側に露出している。
【0041】
(上ケース)
図6(a)は上ケース12を上方から見た斜視図であり、図6(b)は上ケース12を下方から見た斜視図である。上ケース12は、図6(a)に示すように、中央突出部80と、この中央突出部80と同軸に構成された円筒部89と、中央突出部80の開口端と円筒部89の下端部とを連続させている内側環状部90を備えている。また、上ケース12は、図6(b)に示すように、円筒部89の外周側で中央突出部80および円筒部89と同軸に構成され、下方に向かって突出している円環状突出部91と、円筒部89の上端部と円環状突出部91の上端部の間を連続させている外側環状部92と、円環状突出部91の上端部から外周側に張り出す張り出し部93を備えている。
【0042】
張り出し部93の輪郭形状は略矩形であり、前側左の角部分2bが斜めに切り欠かれて傾斜面2cを構成している。基板30が配置される上部空間87を区画している外周壁86は、この切り欠きがある前側左の角部分2bを除き、張り出し部93の外周縁から上方に向かって突出している。切り欠きがある前側左の角部分2bでは、外周壁86は張り出し部93の外周縁からセットバックした位置に設けられている。また、前側左の角部分では、外周壁86は一定幅で矩形に切り欠かれており、この切り欠き部が配線取出し部6の配線取出し口33となっている。配線取出し口33から張り出し部93の外周縁に至る間は配線載置部34となっている。配線載置部34の上面には半径方向外側に向かって延びる円弧状断面の配線保持溝36aがリード線5の数に対応する数だけ並列に設けられている。なお、固定部材35の下面には、配線保持溝36aと対応する配線保持溝36bが設けられており(図1(c)参照)、リード線5は上下の配線保持溝36a、36bの間に挟まれて被覆が押圧された状態で固定される。
【0043】
張り出し部93において配線取出し部6とは対角に位置する後側右の角部分2fには、下ケース11の側に向かって突出する円柱形状の回り止め用突起97が設けられている。回り止め用突起97は下ケース11に設けられた回り止め用凹部69に挿入可能となっており、回り止め用凹部69とともに回り止め機構13を構成している。
【0044】
ステータ29が配置されるステータ収納室83は、中央突出部80、円筒部89、および内側環状部90の下ケース11とは反対側の面によって構成されている。中央突出部80は底部81の側にステータ収納室83の開口から上方に突出する突出部分80aを備えている。円筒部89の半径方向における厚さは中央突出部80の半径方向における厚さと比較して薄く形成されている。
【0045】
円環状突出部91の円環状下端面94には、径方向の途中位置にポンプ室25の天井面を構成する上側流体流路31bと上側封鎖部32bが形成されている。円環状下端面94においてポンプ室25の内側に隣接している円環状の端面部分94aは、区画室20内に配置されたロータ23の円盤部40と微小なギャップG2を開けて対向する(図2参照)。
【0046】
円環状突出部91の円形外周面95の上端部分には、半径方向外側に所定寸法だけ突出する径方向突出部96が設けられている。径方向突出部96は、円環状突出部91の軸線L方向の途中位置から半径方向外側に延びて下ケース11の側を向いている円環状端面96aと、円環状端面96aの外周縁から上方に延びて半径方向外側を向いている円形外周面96bを備えている。
【0047】
ここで、上ケース12と下ケース11を積層してポンプ室25(区画室20)を区画形成する際には、円環状突出部91の円形外周面95にOリング26を装着した状態とする。この際に、Oリング26には、潤滑剤を塗布しておく。また、支軸24は予め支軸固定用凹部82に固定し、ロータ23は下ケース11の円形凹部63内に配置して、軸受部41に支軸24を挿入可能な状態としておく。そして、上ケース12の円環状突出部91を下ケース11の円環状段部68の内側に挿入し、上ケース12と下ケース11とを相対的に接近させて、円環状突出部91の円環状下端面94(上側流体流路31bおよび上側封鎖部32bの外周側に位置する円環状の端面部分)と、下ケース11の円環状段部68の円環状端面68aとを当接させる。
【0048】
この際に、上ケース12の径方向突出部96の円形外周面96bが、下ケース11の円環状段部68の円形内周面68bに当接した状態となり、上ケース12は下ケース11に対して径方向で位置決めされる。また、Oリング26は、径方向突出部96の円環状端面96aと円環状段部68の円環状端面68aの間において、上ケース12の円環状突出部91の円形外周面95と下ケース11の円形内周面68bの間で径方向に潰された状態となり、区画室20からの流体の漏れが防止された状態が形成される。ここで、上ケース12の円環状突出部91が下ケース11の円環状段部68の内側に挿入されると、回り止め機構13の回り止め用突起97が下ケース11に設けられた回り止め用凹部69に挿入された状態となり、下ケース11と上ケース12が軸線L回りに相対回転することが防止される。従って、Oリング26が径方向に潰された状態で周方向に捻られることがなく、ポンプ室25を区画形成する際にOリング26の損傷を防止できる。なお、下ケース11に上ケース12が積層されてポンプ室25(区画室20)が区画された状態になると、ロータ23の軸受部41を貫通した支軸24は、その下端が下ケース11の支軸固定用凹部60に挿入されて固定され、支軸24と中央突出部80が同軸状態となる。また、ロータ23は支軸24回りを回転可能な状態で支軸24に支持される。
【0049】
次に、中央突出部80の筒状部84は、軸線L方向に沿って底部81の側から開口端80bの側に向かって径が拡大するテーパー状の外周面および内周面を備えている。筒状部84の外周面には、周方向の一部分から径方向外側に突出する3つのステータ固定用突部85が設けられている。3つのステータ固定用突部85は、同一形状であり、軸線L回りに等角度間隔で形成されている。各ステータ固定用突部85は、軸線Lと直交する断面形状に円弧輪郭を備えており、中央突出部80の外周面に沿って軸線L方向に延びている。また、各ステータ固定用突部85は、底部81の側から開口端80bの側に向かって径方向外側および周方向への突出量が増加するテーパー面を備えている。3つのステータ固定用突部85の底部81の側の上端85aは、中央突出部80においてステータ収納室83の開口から上方に突出する突出部分80aに達し、内側環状部90側の下端は後述する位置決め部88より下方に達している。
【0050】
また、中央突出部80の筒状部84の外周面には、軸線L方向の下方から環状部に当接してステータコアを軸線L方向で位置決めする位置決め部88が設けられている。位置決め部88は、筒状部84の外周面に沿って周方向に延びる円弧形状の突部であり、周方向の3箇所に設けられている。位置決め部88においてステータコア28と当接する上端面は軸線Lと直交する平坦面となっている。位置決め部88とステータ固定用突部85とは周方向で離れた位置に形成されており、位置決め部88とステータ固定用突部85の間には周方向に隙間88aが設けられている。各位置決め部88と筒状部84との間には、半径方向に延びてこれらの間を連続する板状の3枚のリブ98が設けられている。各リブ98によって、上ケース12のステータ収納室83の周辺の強度が確保されている。
【0051】
中央突出部80の筒状部84の内周面には、筒状部84の外周面に形成された各ステータ固定用突部85と対応する位置に軸線L方向に延びる3本の溝99が設けられている。すなわち、中央突出部80の筒状部84の内周面には、同一形状の3つの溝99が支軸24の軸線L回りに等角度間隔で形成されている。各溝99は、軸線Lと直交する断面形状が半円形となっており、中央突出部80の内周面に沿って軸線L方向に延びている。また、各溝99は、底部81の側から開口端80bの側に向かって周方向の幅が漸次に増加している。
【0052】
(ステータの固定構造)
図7は上ケース12のステータ収納室83の周辺の部分拡大図であり、図7(a)はステータ29が収納されていない状態を示し、図7(b)はステータ29が収納された状態を示す。ステータコア28は、各突極51に駆動コイル27が巻き回された状態とされた後に、上ケース12のステータ収納室83内に固定される。より具体的には、ステータ29は、ステータ固定用突部85がステータコア28の環状部50の内側凹部53に挿入された状態でステータ収納室83内に落とし込まれ、その後、ステータ固定用突部85の下端部分85b(中央突出部80の開口端80bの側の一部分)が環状部の内側凹部53に圧入されることにより、上ケース12に固定される。なお、ステータコア28の環状部50の内側は中央突出部80の筒状部84より径が大きく、ステータ固定用突部85が設けられた場所を除いて、環状部50の内側と筒状部84の間には隙間が構成される。また、ステータコア28の環状部50の内側凹部53の曲率は、ステータ固定用突部85の下端部分85bより大きく、ステータ固定用突部85の下端部分85bの先端部のみが環状部50の内側凹部53の底部に圧入される。すなわち、下端部分85bの周方向側面と内側凹部53の間には隙間が設けられる。
【0053】
ここで、ステータ固定用突部85の底部81の側の上端85aは、中央突出部80においてステータ収納室83の開口から上方に突出する突出部分80aに達しているので、ステータ29をステータ収納室83に落とし込む際に、各ステータ固定用突部85の上端85aをステータコア28の環状部50の各内側凹部53に挿入することが容易である。また、ステータ固定用突部85は下側に向かって広がるテーパー面となっているので、ステータ29がステータ収納室83に落とし込まれた当初は、ステータ固定用突部85によってステータ29は下方へ案内される。そして、圧入固定に際しては、位置決め部88が下方からステータコア28の環状部50に当接して、ステータ29を軸線L方向で位置決めする。また、位置決め部88の上端面とステータコア28との当接により、ステータコア28の姿勢が規定される。本例では、ステータコア28を構成している板状コア片52の1枚の環状部50の内側凹部53にステータ固定用突部85の下端部分85bが圧入された状態で、ステータ29は位置決めされて、固定される。
【0054】
ステータ29が上ケース12のステータ収納室83内に固定された状態となると、ステータコア28において駆動コイル27が巻き回されている突極51と、区画室20に配置されたロータ23の駆動マグネット22が上ケース12の筒状部84を介して対峙した状態となる。この状態でステータ収納室83にはポッティング剤16が流し込まれる。ポッティング剤16は、環状部50の内側と筒状部84の間に構成されている空間などにも隙間無く流れ込み、ステータ29はポッティング剤16によって覆われる。
【0055】
なお、本例では、図2に示すように、ロータ23の軸受部41の上端面と中央突出部80の底部81の間に1枚または複数枚のワッシャー43を挿入して、ステータコア28の軸線L方向の磁気中心位置に対してロータ23に搭載された駆動マグネット22の軸線L方向の磁気中心位置を下方にずらし、ステータコア28と駆動マグネット22の間に働く磁気吸引力によってロータ23を上方に付勢した状態としている。ここで、各ワッシャー43には、外周縁部分から径方向外側に突出する半円形の回り止め部43aが形成されている。また、各回り止め部43aが中央突出部80の内周面に形成された溝99内に挿入されることによって、ロータ23の回転時に、ワッシャー43が軸線L回りに共回りすることが防止されている。また、前述したように、ワッシャー43は、厚みが0.2mmと厚みが0.3mmのうち、1枚または2枚を選択して用いるが、厚みが0.2mmのワッシャー43には回り止め部43aを2箇所に設け、厚みが0.3mmのワッシャー43には回り止め部43aを3箇所に設けることで、厚みが0.2mmのワッシャー43と厚みが0.3mmのワッシャー43を簡単に見分けることができる。
【0056】
(作用効果)
本例によれば、ステータ29はステータ29とロータ23との間を隔てる上ケース12(隔壁)に直接固定されている。従って、上ケース12(隔壁)に対するステータ29の位置精度を高めることができる。また、ステータコア28は、中央突出部80の周方向の全体がステータ29の環状部50に圧入された状態で上ケース12に固定されているのではなく、中央突出部80の筒状部84の外周面に設けられた3つのステータ固定用突部85が環状部50に圧入された状態で上ケース12に固定されており、上ケース12とステータコア28の間の圧入代が小さい。この結果、ステータコア28を上ケース12に固定する際の圧入が容易となるので、圧入固定に際しても、上ケース12に対するステータ29の位置精度を高めることができる。従って、上ケース12(隔壁)を介して対峙するステータ29の駆動コイル27とロータ23の駆動マグネット22の間のギャップを精度良く管理することが可能となる。
【0057】
また、ステータコア28の環状部50の内周面には、3つのステータ固定用突部85のそれぞれを圧入可能な複数の内側凹部53が設けられており、各ステータ固定用突部85は、各内側凹部53に圧入されている。従って、ステータ29(ステータコア28)を軸線L回りで位置決めすることができる。また、駆動コイル27と駆動マグネット22からなる磁気駆動機構によって羽根車21を備えるロータ23を回転させる際に、反力によってステータ29が軸線L回りに回転することを防止できる。さらに、中央突出部80の外周面に設けられた3つのステータ固定用突部85を環状部50の内側凹部53に圧入する構成であれば、圧入時の応力が各ステータ固定用突部85から中央突出部80の周方向に逃げやすい。従って、圧入固定に際して、上ケース12の変形や破損を防止できる。
【0058】
さらに、3つのステータ固定用突部85は、同一形状であり、等角度間隔で3つ以上形成されているので、3つのステータ固定用突部85を環状部50に圧入固定したときに、上ケース12の中央突出部80とステータコア28の同心度を向上させることができる。よって、上ケース12に対するステータ29の位置精度が向上する。
【0059】
また、本例では、ステータ29は、ステータ収納室83に流し込まれたポッティング剤16によって覆われているので、上ケース12とステータコア28の間の圧入代が小さい場合でも、ポッティング剤16によって、上ケース12にステータ29を確実に固定できる。
【0060】
さらに、本例では、中央突出部80の筒状部84の内周面には、当該筒状部84の外周面に形成されている各ステータ固定用突部85と重なる位置に溝99が設けられているので、中央突出部80の筒状部84の厚さを全周に渡って均一に近いものとすることができる。この結果、上ケース12の成形時に中央突出部80において発生するヒケを均一にすることができるので、中央突出部80の円筒度を向上させることができる。
【0061】
また、本例では、位置決め部88と各ステータ固定用突部85とは、周方向で離れた位置に形成されているので、圧入に際してステータコア28の環状部50が樹脂からなるステータ固定用突部85を削った場合でも、この削りくずが位置決め部88に付着することがない。よって、軸線L方向におけるステータ29の位置決めを精度よく行うことができる。
【0062】
さらに、本例では、ステータコア28が固定される中央突出部80の底部81の内側面(区画室20側の面)の中央には、ロータ23を回転可能に支持する支軸24が固定されている。従って、支軸24に支持されるロータ23とステータ29の相対位置精度を向上させることができる。また、このようにすれば、中央突出部80の底部81に支軸24が固定され、中央突出部80の開口端80bの側にステータコア28が固定される構成となり、ステータ29の固定部と支軸24の固定部が軸線L方向で離れる。従って、ステータ29を圧入固定する際に、中央突出部80の筒状部84が変形するようなことがあっても、支軸24の固定が不安定となることがない。
【0063】
(その他の実施の形態)
上記の例では、各ステータ固定用突部85と各内側凹部53は、いずれも断面形状に円弧輪郭を備えており、ステータ固定用突部85の外周側の先端が各内側凹部53に圧入され周方向の両側に隙間が設けられる構成となっているが、例えば、各ステータ固定用突部85および各内側凹部53のいずれか一方の断面形状を変更することにより、各ステータ固定用突部85の周方向の両側が各内側凹部53に圧入され、径方向外側の先端と各内側凹部53との間にはクリアランスが設けられるようにしてもよい。この場合には、圧入時に、中央突出部80の径方向に応力が発生することを抑制できるので、上ケース12の変形や破損を防止できる。なお、ステータコア28の環状部50に設けられた内側凹部53を省略することもできる。また、ステータ固定用突部85の外周側の全体が各内側凹部53に圧入されるようにすることで、ステータ29の周方向と径方向の位置決めを同時に行なうことができる。さらに、各ステータ固定用突部85と各内側凹部53は半円形断面に限らず、三角形や四角形などとしても良い。
【符号の説明】
【0064】
1・・・ポンプ装置
12・・・上ケース(隔壁)
16・・・ポッティング剤(封止剤)
21・・・羽根車
22・・・駆動マグネット
23・・・ロータ
24・・・支軸
25・・・ポンプ室
27・・・駆動コイル
28・・・ステータコア
29・・・ステータ
41・・・軸受部
43・・・ワッシャー
43a・・・回り止め部
50・・・ステータコアの環状部
53・・・内側凹部(凹部)
80・・・中央突出部(突出部)
80a・・・突出部分
80b・・・開口端
81・・・底部
83・・・ステータ収納室(円環状凹部)
84・・・筒状部
85・・・ステータ固定用突部(突部)
85b・・・ステータ固定用突部の下端部分(一部分)
88・・・位置決め部
88a・・・位置決め部とステータ固定用突部の隙間
89・・・円筒部
90・・・内側環状部
99・・・溝
L・・・軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に環状部を備えるステータコアおよび当該ステータコアに搭載された駆動コイルを備えるステータと、羽根車および前記ステータの外周側で当該ステータと所定間隔を開けて対峙する駆動マグネットを備えるロータと、前記羽根車が配置されるポンプ室と前記ステータとの間を隔てるために当該ステータと前記ロータとの間に配置された隔壁とを有するポンプ装置において、
前記隔壁は、前記環状部の内側に突出する有底筒状の突出部を備え、
前記突出部の筒状部の外周面には、周方向の一部分から径方向外側に突出する複数の突部が形成されており、
前記ステータコアは、前記複数の突部が前記環状部に圧入された状態で前記突出部に固定されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ステータコアの環状部の内周面には、前記複数の突部のそれぞれを圧入可能な複数の凹部が設けられており、
各突部は、各凹部に圧入されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項3】
請求項2において、
各突部は、周方向の両側部分が各凹部に圧入されており、径方向外側の先端と各凹部との間にはクリアランスが設けられていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記複数の突部は、同一形状であり、等角度間隔で3つ以上形成されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
各突部は、前記筒状部の外周面に沿って軸線方向に延びているとともに、底部の側から開口端の側に向かって径方向外側および周方向への突出量が増加するテーパー面を備えており、
前記ステータコアの環状部には、各突部の前記開口端の側の一部分が圧入されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項において、
前記隔壁は、前記突出部の外周側に設けられた円筒部と、前記突出部の開口端と前記円筒部とを連続させている円環状部とを備えており、
前記突出部、前記円筒部および前記円環状部によって形成された円環状凹部には、前記ステータが収納されており、
前記ステータは、前記円環状凹部に流し込まれた封止剤によって覆われていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記突出部は、前記底部の側に前記円環状凹部の開口から突出する突出部分を備えており、
各突部における前記突出部の前記底部の側の端は、前記突出部分に達していることを特徴とするポンプ装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記隔壁は、樹脂成形品であり、
前記突出部の筒状部の内周面には、当該筒状部の外周面に形成されている各突部と重なる位置に溝が設けられていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちのいずれかの項において、
前記突出部の前記筒状部の外周面には、開口端の側から前記ステータコアの前記環状部に当接して前記ステータを軸線方向で位置決めする位置決め部が設けられており、
前記位置決め部と各突部とは、周方向で離れた位置に形成されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のうちのいずれかの項において、
前記突出部の底部の内側面には、前記ロータを回転可能に支持する支軸が固定されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項11】
請求項8において、
前記突出部の底部の内側面には、前記ロータを回転可能に支持する支軸が固定されており、
前記ロータは、筒状の軸受部を備えており、
前記軸受部は、中心孔に前記支軸が挿入された状態で前記突出部の内側に配置されており、
前記突出部の底部と前記軸受部の間には、前記ロータの軸線方向の位置を調整するためのワッシャーが挿入されており、
前記ワッシャーには、外周縁部分から径方向外側に突出する回り止め部が形成されており、
前記回り止め部は、前記筒状部の内周面の溝に挿入されていることを特徴とするポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−24217(P2013−24217A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162569(P2011−162569)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】