説明

ポンプ

【課題】ケーシング内の流体の流れの乱れが減少したポンプを提供する。
【解決手段】内部に流体の流路を形成し、先端側から基端側にかけて大径になる羽根車を内包してあるケーシングを設け、ケーシングに形成した流体吸入口に連通すると共に、羽根車と対向してその羽根車との間に羽根隙間を形成し、羽根車の外形に沿って流体吸入口側から先端側ほど拡径するラッパ状の誘導筒部5を備え、ケーシングの内壁に締結具6を介して取り付けるためのフランジ部7を誘導筒部の流体吸入口側の外周部に備えた誘導筒部材8を、ケーシングに着脱自在に設け、誘導筒部材8の径方向の外側で、且つ、締結具6による連結部以外の周方向の複数箇所に、誘導筒部5からフランジ部7にかけて補強部材13を取り付け、流体を外周側に案内する誘導斜面部13Aを、補強部材13の少なくとも一つに形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に流体の流路を形成し、駆動装置につながる回転軸により回転すると共にその回転軸の先端側から基端側に流体を吸引して流動させる先端側から基端側にかけて大径になる斜流オープン羽根を備えた羽根車を、内包してあるケーシングを設け、前記羽根車の先端側でケーシングに形成した流体吸入口に連通すると共に、羽根車と対向してその羽根車との間に羽根隙間を形成し、且つ、前記羽根車の外形に沿った流体吸入口側から先端側ほど拡径するラッパ状の誘導筒部を備えると共に、前記ケーシングの内壁に締結具を介して取り付けるためのフランジ部を前記誘導筒部の流体吸入口側の外周部に備えた誘導筒部材を、前記ケーシングに着脱自在に設けてあるポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大型のポンプになれば、前記誘導筒部材も大径の筒になり、加工に伴い振動を生じ、羽根隙間の管理に必要な加工精度が得られなくなると共に、運転中には、羽根車による流体の吸い込み流動により、前記誘導筒部材が振動する虞が生じ、その振動に伴う発生音の抑制と金属劣化防止のために、補強をする必要性が出てくる。
補強のために例えば誘導筒部材を、厚みのある鋳造品で形成することも考えられるが、大径の誘導筒部材では、鋳造に伴って、スやヒケができやすく重量も増えコスト高となり、好ましくなかった。
そこで誘導筒部材を製缶で製作し補強のために、前記誘導筒部材の径方向の外側で、且つ、前記締結具による連結部以外の周方向の複数箇所に、前記誘導筒部の拡径先端部から前記フランジ部にかけて、図8に示すように、補強部材13としてリブを径方向に沿って設けることが行われていた(適切な文献が見当たらない)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来のリブは、一般的に径方向に沿って法線状に設けるために、ケーシング内の羽根車の回転に伴って誘導筒部の回りに形成される流れの抵抗になり、ケーシング内の流体の流れを乱す欠点があった。
【0004】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、羽根車によって形成されるケーシング内の流体の流れの乱れが減少したポンプを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴構成は、内部に流体の流路を形成し、駆動装置につながる回転軸により回転すると共にその回転軸の先端側から基端側に流体を吸引して流動させる先端側から基端側にかけて大径になる斜流オープン羽根を備えた羽根車を、内包してあるケーシングを設け、前記羽根車の先端側でケーシングに形成した流体吸入口に連通すると共に、羽根車と対向してその羽根車との間に羽根隙間を形成し、且つ、前記羽根車の外形に沿って流体吸入口側から先端側ほど拡径するラッパ状の誘導筒部を備えると共に、前記ケーシングに締結具を介して取り付けるためのフランジ部を前記誘導筒部の流体吸入口側の外周部に備えた誘導筒部材を、前記ケーシングに着脱自在に設け、前記誘導筒部材の径方向の外側で、且つ、前記締結具による連結部以外の周方向の複数箇所に、前記誘導筒部の拡径先端部から前記フランジ部にかけて補強部材を取り付け、流体を外周側に案内する誘導斜面部を、前記補強部材の少なくとも一つに形成してあるところにある。
【0006】
本発明の第1の特徴構成によれば、誘導筒部の拡径先端部からフランジ部にかけて取り付けた補強部材に、前記誘導筒部とフランジ部との間の流体を誘導筒部の外周側に案内する誘導斜面部を形成してあることにより、羽根車の回転に伴って誘導筒部の外周に形成される流路に、近づくように補強部材と接触する流体は案内され、従来のリブのように、流れは阻害されず、スムーズに流れる流路が形成される。
【0007】
本発明の第2の特徴構成は、前記補強部材において、前記誘導斜面部の背面側に補助誘導斜面部を形成してあるところにある。
【0008】
本発明の第2の特徴構成によれば、誘導斜面部の背面側に補助誘導斜面部を設けることにより、誘導斜面部の背面側に生じる渦の発生を抑制する。渦の発生が抑制されることにより、流れに乱れが生じにくくなり、よりスムーズに流れる流路が形成される。
【0009】
本発明の第3の特徴構成は、内部に流体の流路を形成し、駆動装置につながる回転軸により回転すると共にその回転軸の先端側から基端側に流体を吸引して流動させる先端側から基端側にかけて大径になる斜流オープン羽根を備えた羽根車を、内包してあるケーシングを設け、
前記羽根車の先端側でケーシングに形成した流体吸入口に連通すると共に、羽根車と対向してその羽根車との間に羽根隙間を形成し、且つ、前記羽根車の外形に沿って流体吸入口側から先端側ほど拡径するラッパ状の誘導筒部を備えると共に、前記ケーシングの内壁に締結具を介して取り付けるためのフランジ部を前記誘導筒部の流体吸入口側の外周部に備えた誘導筒部材を、前記ケーシングに着脱自在に設け、前記誘導筒部から前記フランジ部にかけて周方向に亘る補強円弧壁を一体に取り付け、連結部に対する前記締結具の操作用の開口部を前記補強円弧壁または複数の補強円弧壁間に形成してあるところにある。
【0010】
本発明の第3の特徴構成によれば、流体吸入口側から下流側ほど拡径するラッパ状の誘導筒部の外周側を、誘導筒部から前記フランジ部にかけて周方向に亘る補強円弧壁で囲まれて一体に取り付けてあるために、誘導筒部材は略中空のドーナツ状になって補強されると同時に、補強円弧壁は、誘導筒部の外周に沿った曲面を形成するために、その補強円弧壁により流体の流れが阻害されることが無くなる。
しかも、補強円弧壁には、連結部に対する前記締結具の操作用の開口部が形成してあるために、略中空のドーナツ状の誘導筒部材であっても、開口部を通して締結具を挿入して、フランジ部をケーシングの内壁に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ポンプの全体縦断面図である。
【図2】本発明の誘導筒部材の斜視図である。
【図3】本発明の誘導筒部材の横断平面図である。
【図4】実施形態2の誘導筒部材の斜視図である。
【図5】別実施形態の誘導筒部材の斜視図である。
【図6】別実施形態の誘導筒部材の横断平面図である。
【図7】別実施形態の誘導筒部材の斜視図である。
【図8】従来例の誘導筒部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0013】
〔実施形態1〕
内部に流体の流路を形成し、駆動装置につながる上下方向に沿った回転軸1により回転すると共にその回転軸1の羽根車2の取り付く先端側から駆動装置のある基端側に流体を吸引して流動させる先端側から基端側にかけて大径になる斜流オープン羽根を備えた羽根車2を、内包してあるケーシング3を設け、前記羽根車2の先端側でケーシング3に形成した流体吸入口4に連通すると共に、羽根車2と対向してその羽根車2との間に羽根隙間を形成し、且つ、羽根車2の外形に沿った流体吸入口4側から先端側ほど拡径するラッパ状の誘導筒部5を備えると共に、前記ケーシング3の内壁にボルトなどの締結具6を介して取り付けるためのフランジ部7を誘導筒部5の流体吸入口4側の外周部に備えた誘導筒部材8を、前記ケーシング3に着脱自在に設けて、図1に示す立軸式のポンプを構成してある。
【0014】
前記ケーシング3は、流体吸入口4側に吸込みカバー部10を設け、羽根車2を内包するケーシング本体部11と回転軸カバー部12とを駆動装置側に設けてある。
【0015】
前記誘導筒部材8は、ポンプ全体が大型になればなるほどその径は大きくなる。
そのために、加工を行う際に振動が生じ、羽根隙間を維持するための精度が得られなくなると共に、流体の流れによって振動する虞が生じ、誘導筒部材8に補強をする必要性が出てくる。
そこで、その誘導筒部5の径方向の外側で、且つ、締結具6によるケーシング3の内壁への連結部以外の周方向の複数箇所に、図1〜図3に示すように、誘導筒部5の拡径先端部からフランジ部7にかけて補強部材13を取り付け、流体をケーシング3内の流路17に近づけるように案内する誘導斜面部13Aを外周側が内周側より回転方向(旋回流18の下流)に位置するように、補強部材13に形成してある。
つまり、誘導筒部5の外側ではその外周部に沿って、羽根車2の回転に伴う旋回流18(図中の矢印で示す)が発生するが、補強部材13に形成した誘導斜面部13Aによって、流体の流れは周方向で阻害されずに外周側に誘導され、旋回流18を成す流路17に近づけられてスムーズに流れる。
【0016】
前記補強部材13には、旋回流18に近づくように誘導筒部5の中心側から外側に傾斜した誘導斜面部13Aの他に、その誘導斜面部13Aの背面(旋回流の下流側)に、下流側ほど回転軸の中心(0)に近づく補助斜面部13Bを連接してあり、誘導斜面部13Aの背面側で、渦流が発生して流体の流れに抵抗を与えるのを防止できるように形成してある。
【0017】
なお、前記締結具6によるケーシング3の内壁への連結部は、フランジ部7における周方向に隣り合う補強部材13と補強部材13との間に、配設してある。
また、補強部材は、誘導筒部の拡径先端部からフランジ部にかけて取り付く構成が補強のために最良であるが、拡径の途中から取り付く構成であっても良い。
【0018】
〔実施形態2〕
次に、本発明の別の構造のポンプとして、図1と同様に、内部に流体の流路17を形成し、駆動装置につながる回転軸1により回転すると共にその回転軸1の先端側から基端側に流体を吸引して流動させる先端側から基端側にかけて大径になる斜流オープン羽根を備えた羽根車2を、内包してある前記と同様のケーシング3を設け、羽根車2の先端側でケーシング3に形成した流体吸入口4に連通すると共に、羽根車2と対向してその羽根車2との間に羽根隙間を形成し、且つ、羽根車2の外形に沿って流体吸入口4側から下流側ほど拡径するラッパ状の誘導筒部5を備えると共に、ケーシング3の内壁にボルトなどの締結具6を介して取り付けるためのフランジ部7を流体吸入口4側の外周部に備えた誘導筒部材8を、ケーシング3に着脱自在に設けてある。
【0019】
前記誘導筒部材8には、図4に示すように、誘導筒部5の拡径先端部からフランジ部7にかけて周方向の全てに亘る補強円弧壁14、を一体に取り付け、連結部に対する締結具6の操作用の開口部15を補強円弧壁14に形成してある。
つまり、前記補強円弧壁14は、ラッパ状の誘導筒部5の外側周りに発生する流体の旋回流に抵抗を与えずに、しかも、誘導筒部5の補強効果も期待できる。
【0020】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0021】
〈1〉 本発明は、立軸式以外に横軸式のポンプに採用してあっても良い。
〈2〉 前記補強部材13には、補助斜面部13Bを設けずに誘導斜面部13Aのみを設けてあるものでも良い。
〈3〉 前記誘導筒部5の変形例として、図5に示すように、誘導筒部5の周方向に不連続な補強円弧壁16を所定間隔置きに連接してあっても良い。
〈4〉 図6に示すように、従来のリブの他に、誘導斜面部13A、補助斜面部13Bを持つ補強部材13を設けてあるものでも良い。
〈5〉 更に、図7に示すように、補強円弧壁16に誘導斜面13Aや補助斜面部13Bを設けてある物でも良い。
【0022】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0023】
1 回転軸
2 羽根車
3 ケーシング
4 流体吸入口
5 誘導筒部
6 締結具
7 フランジ部
8 誘導筒部材
13 補強部材
13A 誘導斜面部
13B 補助斜面部
17 流路
18 旋回流(羽根車の回転方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体の流路を形成し、駆動装置につながる回転軸により回転すると共にその回転軸の先端側から基端側に流体を吸引して流動させる先端側から基端側にかけて大径になる斜流オープン羽根を備えた羽根車を、内包してあるケーシングを設け、
前記羽根車の先端側でケーシングに形成した流体吸入口に連通すると共に、羽根車と対向してその羽根車との間に羽根隙間を形成し、且つ、前記羽根車の外形に沿って流体吸入口側から先端側ほど拡径するラッパ状の誘導筒部を備えると共に、前記ケーシングに締結具を介して取り付けるためのフランジ部を前記誘導筒部の流体吸入口側の外周部に備えた誘導筒部材を、前記ケーシングに着脱自在に設け、
前記誘導筒部材の径方向の外側で、且つ、前記締結具による連結部以外の周方向の複数箇所に、前記誘導筒部から前記フランジ部にかけて補強部材を取り付け、流体を外周側に案内する誘導斜面部を、前記補強部材の少なくとも一つに形成してあるポンプ。
【請求項2】
前記補強部材において、前記誘導斜面部の背面側に補助誘導斜面部を形成してある請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
内部に流体の流路を形成し、駆動装置につながる回転軸により回転すると共にその回転軸の先端側から基端側に流体を吸引して流動させる先端側から基端側にかけて大径になる斜流オープン羽根を備えた羽根車を、内包してあるケーシングを設け、
前記羽根車の先端側でケーシングに形成した流体吸入口に連通すると共に、羽根車と対向してその羽根車との間に羽根隙間を形成し、且つ、前記羽根車の外形に沿って流体吸入口側から先端側ほど拡径するラッパ状の誘導筒部を備えると共に、前記ケーシングの内壁に締結具を介して取り付けるためのフランジ部を前記誘導筒部の流体吸入口側の外周部に備えた誘導筒部材を、前記ケーシングに着脱自在に設け、
前記誘導筒部から前記フランジ部にかけて周方向に亘る補強円弧壁を一体に取り付け、連結部に対する前記締結具の操作用の開口部を前記補強円弧壁または複数の補強円弧壁間に形成してあるポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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