説明

マイクロメカニカル構造体の作製方法

【課題】SOI基板を用いて作製されるミラー構造体の両面に、より容易に所望とする形状の金属膜が形成できるようにする。
【解決手段】金属膜106の表面に電着レジストを電着することで、電着レジスト層107を形成し、電着レジスト層107をフォトリソグラフィーによりパターニングし、ミラー部131の金属パターン141と対向する領域に、電着レジストパターン171を形成する。電着レジストパターン171は、ミラー部131の裏面側の金属パターン141に対向して形成する金属パターンの領域を被覆するように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SOI基板を用いて形成されるマイクロメカニカル構造体の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信用デバイスあるいはスキャナーなどの光学デバイスとして、シリコンを用いたマイクロマシンニングによるMEMSミラーの開発が進展している。これらの光学デバイスは、多くの場合、赤外線を対象としている。これに対し、材料として用いているシリコンは、赤外線に対して透過性が極めて高いため、このままではミラーとして使用することができない。このため、アルミニウムや金などの、光の反射膜として反射率の高い金属の膜をシリコンの表面に形成し、赤外線に対してもミラーとして機能するようにしている。薄いシリコンをミラーの構造体とする場合、金属膜をミラー構造体の両面に形成して応力の平衡を保ち、ミラー面が平坦となるようにすることが理想的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−057574号公報
【特許文献2】米国特許第6369931号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現状では、ミラー構造体の両面に金属膜を形成することが容易ではないという問題がある。
【0005】
例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いてMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを作製する技術がある(特許文献1参照)。この技術では、基体部の上に埋め込み絶縁層を介して配置されているSOI層をパターニングしてミラー構造体を形成し、形成したミラー構造体に対応する領域の基体部に開口を形成し、ミラー構造体が回転などの動作を行えるようにしている。
【0006】
ここで、平坦な状態のSOI層の表面側においては、金属膜を形成し、形成した金属膜を公知のリソグラフィー技術とエッチング技術とによりパターニングすることで、ミラー構造体となるの領域に選択的に金属膜を残すようにすることが容易である。
【0007】
これに対し、基体部の側の開口に露出させているミラー構造体の裏面側においては、数百μmの厚さの基体部および埋め込み絶縁層のミラー構造体の領域を除去することで、開口を形成している。このため、基体部の側(SOI基板の裏面)から見ると、上述したミラー構造体の裏面側は、ほぼ基体部の厚さだけ奥に存在することになる。言い換えると、ミラー構造体の裏面側には、ほぼ基体部の厚さの段差が存在していることになる。
【0008】
このミラー構造体の裏面側に、上述同様にすることで選択的に金属膜を形成する場合、大きな段差が存在しているところにエッチングマスクを形成するためのレジスト膜を形成することになる。一般に、レジスト膜の形成では、スピン塗布によりレジストを塗布することで形成している。しかしながら、スピン塗布によりレジスト膜を形成すると、大きな段差のあるくぼみの中にはレジストが留まりやすく、膜厚が不均一な状態となる。
【0009】
例えば、図2の断面図に示すように、基体部201,埋め込み絶縁層202,およびSOI層203を備えるSOI基板の基体部201側より凹部201aを形成する。この状態で、凹部201a内を含めて基体部201の表面(SOI基板の裏面)に金属膜204を形成する。この後、スピン塗布により基体部201の表面にフォトレジストを塗布すると、凹部201aの周端部ほど膜厚が厚い不均一なフォトレジスト膜205が形成される。
【0010】
この後、フォトリソグラフィーによる露光が行われるが、この露光では、一般には、フォトマスクを透過した光が照射される凹部201aの全領域においては、光量がほぼ一定となる。ところが、フォトレジスト膜205は、上述したように膜厚が不均一であるため、凹部201aの終端部と中心部とで、露光の条件が大きく異なることになり、正確なパターニングを行うことが容易ではない。正確なパターニングが行えない場合、所望とする形状・寸法のパターンを高い精度で形成することができず、所望とする形状に金属膜を形成することができなくなる。
【0011】
また、スピン塗布およびリソグラフィーによるマスクパターンの形成の他にも、スクリーン印刷法によるマスクパターンの形成が考えられる。この方法では、図3に示すように、基体部301,埋め込み絶縁層302,およびSOI層303を備えるSOI基板の基体部301側より凹部301aを形成する。この状態で、凹部301a内を含めて基体部301の表面(SOI基板の裏面)に金属膜304を形成する。この後、スクリーン306の上にレジスト材料351を配置し、スキージ307をスライドさせることで、スクリーン306の開口部306aよりレジスト材料351を選択的に供給する。これらのことにより、凹部301aにレジストパターン305を形成する。しかしながら、この方法においても、形成されるレジストパターン305は、例えば、図3に示すように、凹部301a内において均一な膜厚が得られず、正確なパターンを形成することが容易ではない。
【0012】
上述したように、凹部の底部においては、正確なレジストパターンを形成することが容易ではく、ミラー構造体の両面に金属膜を形成することが容易ではない。このため、現状では、凹部の内部を含めてSOI基板の裏面に金属膜を形成し、金属膜をパターニングすることなく用いている。しかしながら、このように全域に金属膜を形成する場合、ミラー構造体をこの周囲の枠部に連結・支持している連結部にも金属膜が形成されることになり、ミラー部の回動などの動作に支障を来す場合が発生する。
【0013】
このために、平坦な状態のSOI層のミラー構造体となる部分の表面側のみに金属膜を形成し、MEMSミラーとすることも行われている(特許文献2参照)。このMEMSミラーでは、図4に示すように、駆動電極412,413を備える電極基板411の上に、凹部401aを形成した基体部401,埋め込み絶縁層402,およびミラー構造体431,枠部432が形成されたSOI層403を配置する。また、ミラー構造体431の表面側には、金属膜441を備える。
【0014】
このMEMSミラーでは、基体部401を支持体とし、ミラー構造体431が、駆動電極412,413の上に離間して配置され、駆動電極412,413に印加される制御信号により、ミラー構造体431を変位させ、金属膜441による反射面を変位させるようにしている。
【0015】
この構造では、駆動電極412,413とミラー構造体431の距離は、ほぼ基体部401の厚さで決定されてしまい、設計自由度を著しく害し、所望の駆動特性を得ることが容易ではなくなる。また、片面だけに金属膜441を形成しているので、この応力によってミラー面の平坦度を維持することが容易ではないという問題も生じる。
【0016】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、SOI基板を用いて作製されるミラー構造体の両面に、より容易に所望とする形状の金属膜が形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るマイクロメカニカル構造体の作製方法は、基体部の上に埋め込み絶縁層を介して配置されたシリコンからなる表面シリコン層の上のミラー部となる領域に第1金属パターンを形成する第1工程と、表面シリコン層をパターニングし、ミラー部,このミラー部の周囲に配置された枠部、および、ミラー部と枠部とを連結する連結部を形成する第2工程と、ミラー部および連結部を含む領域に対応し、表面シリコン層の裏面に到達する開口部を基体部および埋め込み絶縁層に形成する第3工程と、電着レジストを用いたリソグラフィーにより形成した電着レジストパターンを用いることで、第1金属パターンに対向する開口部の底部のミラー部の裏面の領域に第2金属パターンを形成する第4工程とを少なくとも備える。
【0018】
上記マイクロメカニカル構造体の作製方法において、第4工程では、開口部の内部を含む基体部の表面に金属膜を形成し、この金属膜の上の第1金属パターンに対向する領域に、第2金属パターンが形成される領域を被覆する電着レジストパターンを形成し、この電着レジストパターンをマスクとして金属膜を選択的にエッチングすることで、第2金属パターンを形成するようにすればよい。
【0019】
上記マイクロメカニカル構造体の作製方法において、第4工程では、第1金属パターンに対向する、開口部の底部のミラー部の裏面の第2金属パターンを形成する領域が開口する電着レジストパターンを形成し、この電着レジストパターンの上に金属膜を形成し、この金属膜を形成した後に、電着レジストパターンを除去することで、第2金属パターンを形成するようにしてもよい。としたものである。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、電着レジストパターンを用いることで、第1金属パターンに対向する開口部の底部のミラー部の裏面の領域に第2金属パターンを形成するようにしたので、SOI基板を用いて作製されるミラー構造体の両面に、より容易に所望とする形状の金属膜が形成できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】図1Aは、本発明の実施の形態におけるマイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する工程図である。
【図1B】図1Bは、本発明の実施の形態におけるマイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する工程図である。
【図1C】図1Cは、本発明の実施の形態におけるマイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する工程図である。
【図1D】図1Dは、本発明の実施の形態におけるマイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する工程図である。
【図1E】図1Eは、本発明の実施の形態におけるマイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する工程図である。
【図1F】図1Fは、本発明の実施の形態におけるマイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する工程図である。
【図1G】図1Gは、本発明の実施の形態におけるマイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する工程図である。
【図1H】図1Hは、本発明の実施の形態におけるマイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する工程図である。
【図1I】図1Iは、本発明の実施の形態におけるマイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する工程図である。
【図1J】図1Jは、本発明の実施の形態におけるマイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する工程図である。
【図1K】図1Kは、本発明の実施の形態におけるマイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する工程図である。
【図1L】図1Lは、本発明の実施の形態におけるマイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する工程図である。
【図2】図2は、マイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する断面図である。
【図3】図3は、マイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する断面図である。
【図4】図4は、マイクロメカニカル構造体の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1A〜図1Lは、本発明の実施の形態におけるマイクロメカニカル構造体の作製方法について説明する工程図である。
【0023】
まず、図1Aに示すように、例えば単結晶シリコンからなる基体部101,埋め込み絶縁層102,および単結晶シリコンからなる表面シリコン層(SOI層)103を備えるSOI基板を用意する。例えば、基体部101は、膜厚625μm、埋め込み絶縁層102は、膜厚1μm、SOI層103は層厚10μmである。
【0024】
次に、SOI層103の上に金属膜104を形成する。金属膜104は、例えば、SOI層103の側に形成された層厚10nmのチタン層とこのチタン層の上に形成された層厚70nmの金層から構成されている。チタン層は、金層とシリコンとを密着させる密着層として機能する。これらは、例えば、電子ビーム蒸着法により形成することができる。また、これらの金属層は、スパッタ法やめっき法で形成することもできる。また、各金属層の層厚は、対象とする光の波長域にて応じて必要な反射率を確保できる範囲で、任意に選択すればよい。
【0025】
次に、金属膜104を公知のリソグラフィー技術とエッチング技術とによりパターニングし、図1Bに示すように、後述するミラー構造体の反射面となる金属パターン(第1金属パターン)141、および、図示しない金属配線端子部を形成する。このパターニングにおけるエッチングでは、まず、金層は、エッチング液として希釈した王水を用いてエッチングすればよい。また、金層のエッチングには、ヨウ素-ヨウ化カリウム溶液を用いたウエットエッチングでもよく、ドライエッチングを用いてもよい。一方、チタン層は、希フッ酸によってエッチングすればよい。
【0026】
次に、SOI層103を公知のリソグラフィー技術とエッチング技術とによりパターニングし、図1Cに示すように、ミラー部131,および枠部132などを形成する。このパターニングにより、図1Dの平面図に例示するように、枠部132に隙間133を開けてミラー部131が形成され、また、一対の連結部134により、ミラー部131が枠部132に連結・支持された状態とする。これらの構造体のパターニングでは、リソグラフィー技術により形成したレジストパターンをマスクとしたRIE(Reactive Ion Etching)を用いてエッチング加工を行えばよい。また、このエッチング加工では、埋め込み絶縁層102をエッチングストッパ層として用いることができる。
【0027】
次に、図1Eに示すように、金属パターン141が形成されているSOI層103の表面に、有機樹脂からなる保護層105を形成する。保護層105は、材料となる例えばポリベンゾオキサゾールからなる有機樹脂を塗布し、これを加熱処理することで形成できる。加熱処理は、窒素雰囲気・温度300℃・30分の条件で行えばよい。保護層105の材料としては、他にはポリイミドあるいはレジストを用いてもよいことを確認している。
【0028】
次に、図1Fに示すように、基体部101に、埋め込み絶縁層102が露出する開口部101aを形成する。開口部101aは、前述したミラー部131および連結部134などの領域に対応して形成する。開口部101aも、公知のフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術により形成することができる。このエッチングは、ドライエッチングにより行い、また、埋め込み絶縁層102をエッチングストップ層として用いればよい。また、よく知られているように、基体部101を構成する単結晶シリコンは、KOH水溶液やテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液などのアルカリ溶液を用いてもエッチング可能である。このウエットエッチングにおいても、埋め込み絶縁層102がエッチングストップ層となる。
【0029】
次に、開口部101aに露出している埋め込み絶縁層102をエッチング除去し、図1Gに示すように、開口部101aに続く開口部102aを形成する。この開口部102aの形成により、SOI基板の裏面側より表面シリコン層(SOI層)103の裏面に到達する開口部が形成されたことになる。埋め込み絶縁層102のエッチングでは、例えば、大気中におけるフッ化水素ガスの暴露により行えばよい。このフッ化水素暴露は、良く知られているように、常温から50℃程度の1気圧におけるフッ化水素の飽和蒸気圧で行えばよい。また、シリコンや保護層105を構成している有機樹脂に影響を与えない範囲で、窒素や不活性気体をキャリアガスとし温度、フッ化水素分圧を制御して行っても良い。
【0030】
なお、このようなウエットエッチングを行った後の乾燥を、例えば、超臨界乾燥により行うようにしてもよい。超臨界乾燥を用いる場合、用いる超臨界状態の流体により、保護層105を構成している有機樹脂などが溶解しないようにすることが重要となる。
【0031】
次に、図1Hに示すように、開口部101aの内部を含む基体部101の表面(SOI基板の裏面)に金属膜106を形成する。金属膜106は、前述した金属膜104と同様であり、例えば、SOI層103の側に形成された層厚10nmのチタン層とこのチタン層の上に形成された層厚70nmの金層から構成されている。
【0032】
次に、図1Iに示すように、金属膜106の表面に電着レジストを電着することで、電着レジスト層107を形成する。例えば、電着液の中において、金属膜106を一方の電極としてこれに所定の電圧を印加すれば、金属膜106の表面に電着レジストを電着させることができる。電着レジストを電着することで、開口部101aにより大きな段差を有する状態で形成されている金属膜106の表面に対し、均一な層厚で電着レジスト層107が形成できる。
【0033】
ここで、電着レジストとしては、ポジ型、ネガ型どちらでも可能である。ただし、開口部101aの側壁が、SOI基板の裏面側から見て逆テーパ形状となっている場合を考慮し、ネガ型の電着レジストを用いるとよい。逆テーパ形状となっている場合、開口部101aの側壁には、後述する電着レジスト層107のフォトリソグラフィーにおける露光で、光が照射されることがない領域となる。このような場合であっても、ネガ型のレストであれば、側壁に付着している電着レジスト層107を、現像により除去することができる。ネガ型の電着レジストとしては、例えば、カチオン電着ネガ型のエレコートEU−XCプロセス(株式会社シミズ製)などを用いればよい。
【0034】
電着レジストでは、電界印加されかつ電着レジスト溶液に触れている面の上には、凹凸のある面でも均一に成長させることが可能であり、先に記したような逆テーパ型のピクセル内壁にも均一な被覆をなし得ることが特徴である。なお、電着レジストを用いた均一性にはおよばないものの、スプレー塗布法を用いても少なくともピクセル底部には均一にレジストを塗布できる。このようにして形成したスプレー塗布膜を、後述する電着レジストパターンの形成と同様にパターニングすれば、このパターンを電着レジストパターンと同様に用いることができる。
【0035】
次に、電着レジスト層107をフォトリソグラフィーによりパターニングし、図1Jに示すように、ミラー部131の金属パターン141と対向する領域に、電着レジストパターン171を形成する。電着レジストパターン171は、ミラー部131の裏面側の金属パターン141に対向して形成する金属パターンの領域を被覆するように形成する。このパターニングにおいて、例えば、ミラープロジェクション形式の露光装置を用いればよい。また、レーザー露光や電子線露光などを用いるようにしてもよい。
【0036】
次に、電着レジストパターン171をマスクとして金属膜106を公知のリソグラフィー技術とエッチング技術とによりパターニングし、図1Kに示すように、ミラー部131の他方の反射面となる金属パターン(第2金属パターン)161を形成する。金属パターン161は、ミラー部131を介して金属パターン141と対向して配置されている。金属パターン161のパターニングにおけるエッチングでは、前述した金属パターン141の場合と同様であり、まず、金層は、エッチング液として希釈王水を用いてエッチングすればよい。また、金層のエッチングには、ヨウ素-ヨウ化カリウム溶液を用いたウエットエッチングでもよく、ドライエッチングを用いてもよい。一方、チタン層は、希フッ酸によってエッチングする。
【0037】
この後、電着レジストパターン171を、公知のリムーバによって剥離する。さらに、保護に用いていた保護層105を、例えば、酸素プラズマやオゾンなどの活性酸素を用いることで灰化させて除去する(図1L)。この処理によって、金属パターン141および金属パターン161の金表面が酸化すると、電気的導通がとれなくなる。これを回復するために、水素雰囲気下、80℃で加熱して還元する。この際、温度の条件は、60℃以上であればよいことを確認している。また、真空中あるいは不活性ガス雰囲気下で加熱してもよく、この場合は200℃以上が必要である。
【0038】
この後に、ダイシングを行いチップ化して一連の工程を終了する。ダイシングにはレーザーを用いる公知のステルスダイシングを用いればよい。また、保護層105を除去せずに、通常のダイシングソーによるダイシングを行いチップ化し、この後、上述したように保護層105を除去するようにしてもよい。
【0039】
また、上述では、SOI基板のSOI側と基体部に形成した開口部に露出したSOI層の上に金属を蒸着したが、本発明の要諦は、開口部の底の領域に均一レジストを塗布し作製プロセスを容易ならしめることにあり、金属を堆積する工程を一切経ることなく、単に開口部内のシリコン構造体を更に開口部側から加工するためにリソグラフィを行ってもよく、目的に応じて種々のプロセスをとりうることは当業者であれば容易に推察できるであろう。
【0040】
例えば、開口部101aおよび開口部102aを形成した後、金属膜106を形成する前に、電着レジストを開口部101aの内部を含む基体部101の表面(SOI基板の裏面)に電着する。シリコン表面に対して付着力の弱い電着レジストを用いる場合、電着の前に、シリコンの表面をシランカップリング剤などにより処理しておけばよい。このようにして形成した電着レジストの層を、公知のフォトリソグラフィー技術によりパターニングし、金属パターン161となる領域が開口している電着レジストパターンを形成する。この後、金属膜を形成し、よく知られたリフトオフ法により電着レジストパターンを除去すれば、金属パターン141と対向するように、ミラー部131の一方の面に金属パターンが形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
SOI基板を利用したMEMSミラーにおいて、SOI層に形成したミラー部の表面と、基体部に形成した開口部側の裏面との両面の領域に、金属膜を形成し、両面に反射膜となる金属パターンを備えるミラー部(ミラー構造体)を形成するとができる。
【符号の説明】
【0042】
101…基体部、101a…開口部、102…埋め込み絶縁層、102a…開口部、103…表面シリコン層(SOI層)、104…金属膜、105…保護層、106…金属膜、107…電着レジスト層、131…ミラー部、132…枠部、133…隙間、134…連結部、141…金属パターン(第1金属パターン)、161…金属パターン(第2金属パターン)、171…電着レジストパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体部の上に埋め込み絶縁層を介して配置されたシリコンからなる表面シリコン層の上のミラー部となる領域に第1金属パターンを形成する第1工程と、
前記表面シリコン層をパターニングし、前記ミラー部,このミラー部の周囲に配置された枠部、および、前記ミラー部と前記枠部とを連結する連結部を形成する第2工程と、
前記ミラー部および前記連結部を含む領域に対応し、前記表面シリコン層の裏面に到達する開口部を前記基体部および前記埋め込み絶縁層に形成する第3工程と、
電着レジストを用いたリソグラフィーにより形成した電着レジストパターンを用いることで、前記第1金属パターンに対向する前記開口部の底部の前記ミラー部の裏面の領域に第2金属パターンを形成する第4工程と
を少なくとも備えることを特徴とするマイクロメカニカル構造体の作製方法。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロメカニカル構造体の作製方法において、
前記第4工程では、
前記開口部の内部を含む前記基体部の表面に金属膜を形成し、この金属膜の上の前記第1金属パターンに対向する領域に、前記第2金属パターンが形成される領域を被覆する前記電着レジストパターンを形成し、この電着レジストパターンをマスクとして前記金属膜を選択的にエッチングすることで、前記第2金属パターンを形成する
ことを特徴とするマイクロメカニカル構造体の作製方法。
【請求項3】
請求項1記載のマイクロメカニカル構造体の作製方法において、
前記第4工程では、
前記第1金属パターンに対向する、前記開口部の底部の前記ミラー部の裏面の前記第2金属パターンを形成する領域が開口する前記電着レジストパターンを形成し、この電着レジストパターンの上に金属膜を形成し、この金属膜を形成した後に、前記電着レジストパターンを除去することで、前記第2金属パターンを形成する
ことを特徴とするマイクロメカニカル構造体の作製方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図1K】
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【図1L】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−256452(P2010−256452A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103798(P2009−103798)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】