説明

マンナン分解物の製造方法

【課題】 マンナン分解物の製造方法を提供する。
【解決手段】 β−マンナナーゼ生産能を有するバクテロイデス・ブルガタスをマンナンを含む培地で培養し、該マンナンを分解することを特徴とする。該バクテロイデス・ブルガタスはヒト由来であるため安全性が高く、マンナンを炭素源として該生産菌を培養すれば、マンナン分解物を培養液中に生産することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規β−マンナナーゼ、β−マンナナーゼ生産菌、β−マンナナーゼ生産菌とマンナンとを培養して、マンナン分解物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンナンは水溶性の難消化性多糖類であり、代表的なものとして、グアーやイナゴマメ等に存在するガラクトマンナンやコンニャクイモやイリス、アロエ等に存在するグルコマンナンなどが知られている。例えば、コンニャクイモ由来のマンナンは消石灰を加えて凝固させコンニャクとして食用に供されている。また、マンナンは、食品として使用されるほかにも、ヒトの消化酵素では分解されない水溶性食物繊維として医薬品原料などとしても使用されている。食物繊維の作用として、便秘の改善、血中コレステロールの低下作用、腸内のビフィドバクテリウムの菌数の増加作用などが知られている。
【0003】
一方、マンナンは上記のように多様な作用を有するが、その水溶液は粘度が高いためコンニャクやゼリーなどの用途に制限され、粘度が高いために消化管に閉塞を有する場合には消化管内通過に支障が生じる場合がある。また、カルシウムや油性ビタミン等をマンナン中に取り込み、ヒトへの吸収が阻害される場合もある。このため、高分子マンナンを分解して粘度を低下させる試みがなされており、各種セルラーゼやマンナナーゼが使用されている。
【0004】
例えば、コンニャク粉に含まれる多糖類の部分分解物の製造方法であって、アスペルギルス属に属する微生物に由来するセルラーゼによって分解し、平均分子量2,000〜15,000の水溶性食物繊維を得る方法が開示されている(特許文献1)。コンニャク粉の水溶液は粘度が高くゲル化したり、ヒトの栄養上必要なミネラルを吸着する性質があるため、コンニャク粉の食物繊維としての機能を維持したまま上記難点を克服するため、マンナンの分子内β−グルコシド結合を加水分解する酵素の中で、特にアスペルギルス属に属する微生物由来セルラーゼを使用するというものである。実施例では、市販のセルラーゼをコンニャク粉に添加して分解している。
【0005】
また、β−マンナナーゼを使用してマンノ糖含有糖類を製造する方法もある(特許文献2)。バチルス属に属し、アルカリ性に至適pHを有する好アルカリ性微生物、微工研菌寄託第8856号〜第8860号のいずれかを培養液中に生成・蓄積させて得られたβ−マンナナーゼを使用し、該β−マンナナーゼを、β−1,4−マンノピラノシド結合を主骨格とする糖類基質に作用させている。なお、β−マンナナーゼは、酵素産生微生物の培養によって菌体外に生産された後に菌体と分離されたものを使用している。
【0006】
また、β−マンナナーゼとして工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM P−14139号として寄託されたバチルス・ズブチリスM−1が生産する酵素を使用する方法も開示されている(特許文献3)。該生産菌は土壌中から単離されたものであり、β−マンナナーゼのみを生産することを特徴とする。実施例では、該生産菌を培養して得たβ−マンナナーゼを遠心分離により菌体と分離した後に、コンニャクマンナン溶液に作用させ、加水分解させている。
【0007】
更に、β−マンナナーゼとしてFERM P−18001号として寄託されたバチルス・ポリミキサKT551株が生産する酵素を使用する方法も開示されている(特許文献4)。該生産菌は土壌中から単離されたものであり、ヤシ油の原料であるコプラの搾油残渣を含む培地で培養することにより効率よくβ−マンナナーゼを細胞外に生産でき、かつ得られるβ−マンナナーゼは文献未載のものである、としている。実施例では、該生産菌をコプラの搾油残渣を炭素源として供給して培養して得たβ−マンナナーゼを遠心分離により菌体と分離した後に、コンニャクマンナン溶液に作用させ、加水分解させている。
【特許文献1】特開平2−222659号公報
【特許文献2】特開昭63−49093号公報
【特許文献3】特開平7−274960号公報
【特許文献4】特開2002−65257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記文献記載の方法はいずれもマンナン分解酵素を単離した後に該酵素を用いるものであり、酵素の単離工程が必要となり、その結果、マンナン分解物の製造工程が複雑なものとなっている。また、酵素生産菌は土壌から採取されたものが多く、ヒトへの安全性が不明である。
【0009】
また、従来の酵素は、それ自体の性質により、または酵素作用の制御が困難なためにオリゴ糖まで分解される場合があり、マンナンによる食物繊維としての機能が喪失する場合がある。
【0010】
本発明は上記現状に鑑み、安全性が高く、ヒトに関連性を有する微生物を使用してマンナンを低分子量化する方法を提供することを目的とする。
【0011】
また本発明は、食物繊維などの機能を発揮しうるように、オリゴ糖まで分解させず、低分子量化したマンナン分解物を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、安全性の観点からヒト腸内細菌に着目し、こられの中でマンナン分解酵素として作用しうる微生物を詳細に調査したところ、バクテロイデス・ブルガタスがβ−マンナナーゼを生産し得ること、該バクテロイデス・ブルガタスをマンナン溶液中で培養すると、単離したβ−マンナナーゼを作用させたのと同様に、マンナンを低分子量化することができることを見出した。しかも、該β−マンナナーゼはエンド型であるためマンナンを単糖まで分解することがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低分子量化したマンナン分解物を簡便に製造することができる。バクテロイデス・ブルガタスが生産するβ−マンナナーゼはエンド型であるため、該酵素を使用するとオリゴ糖まで分解することがなく、食物繊維などとしての機能を保持するマンナン分解物を製造することができる。しかも、マンナン溶液中でバクテロイデス・ブルガタスを培養してマンナン分解物を製造することができるため、β−マンナナーゼを単離する必要がなく、製造工程および製造時間を簡略化することができる。加えて、β−マンナナーゼを産生するバクテロイデス・ブルガタスはヒト腸内由来の偏性嫌気性菌であり、空気に暴露されると速やかに死滅するため、製品あるいは環境への汚染の可能性が低く、安全性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第一は、バクテロイデス・ブルガタスが産生するβ−マンナナーゼである。
【0015】
バクテロイデス・ブルガタスとしては特に制限はないが、バクテロイデス・ブルガタス GM4(FERM P−20107)をマンナンを炭素源とする培地で培養してうることができ、以下に示す性質を有している。
(1)作用および基質特異性:本酵素はグルコマンナン、ガラクトマンナン等のβ−マンナンに作用し、そのβ−1,4−D−マンノピラノシル結合を加水分解するエンド型のβ−マンナナーゼであり、α−マンナンには作用しない。
【0016】
(2)至適pH:本酵素の至適pHは6.5〜7.5である。
【0017】
(3)分子量:分子量の異なるアイソザイムが複数存在すると考えられ、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法による代表的な分子量は、約36kDa、59kDaである。
【0018】
以下に、本菌の菌学的性質を示す。ただし、+は陽性を、−は陰性を示す。
1.細胞形態
(a)桿菌(大きさ:0.5〜0.8μm×1.5〜8.0μm)
(b)運動性 −
(c)グラム染色 −
(d)内生胞子 −
2.生理的性質
(a)インドール産生 −
(b)硝酸塩からの亜硝酸塩の生成 −
(c)カタラーゼ −
(d)デンプンの加水分解 +
(e)エスクリンの加水分解 +
3.糖の分解 酸の生成
(a)アラビノース +
(b)セロビオース −
(c)エスクリン −
(d)フルクトース +
(e)グルコース +
(f)イノシトール −
(g)マルトース +
(h)マンニトール −
(i)ラフィノース +
(j)サリシン −
(k)デンプン +
(l)スクロース +
(m)トレハロース −
(n)キシロース +
4.酸素に対する態度 偏性嫌気性
5.至適ph 7.2
6.グルコースから産生される主な酸 酢酸、ギ酸、プロピオン酸、コハク酸
7.エンド型のβ−マンナナーゼ +
8.エキソ型のβ−マンナナーゼ −
以上の諸性質から、本菌株はバクテロイデス属に属することが明らかであり、バージーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Bergey´s Manual of Systematic Bacterilogy)Vol.1,1984年に基づいて検索を行った結果、バクテロイデス・ブルガタスと同定された。既知菌株には本菌株に近縁ないし同種のものは存在せず、新菌株であると認められ、本菌株をバクテロイデス・ブルガタス GM4株と命名した。本菌株は独立行政法人産業技術総合研究所に寄託されており、その受託番号はFERM P−20107である。すなわち、本発明の第二は、上記β−マンナナーゼ生産能を有するバクテロイデス・ブルガタス GM4(FERM P−20107)である。本発明においては、本菌株を自然に、もしくは人工的手段によって変異させて得られる変異株であっても、目的とするβ−マンナナーゼを生産する能力を有する限り、包含される。
【0019】
なお、本発明のβ−マンナナーゼは、上記バクテロイデス・ブルガタス GM4(FERM P−20107)菌をマンナン含有液体培地で培養するとβ−マンナナーゼが菌体外に放出されるため、培養液を遠心分離して菌体と分離し、上清を塩析、ゲルろ過、限外ろ過、イオン交換樹脂によるクロマトグラフ等を行うことで酵素を精製することができる。特に、本発明のバクテロイデス・ブルガタス GM4(FERM P−20107)は、健康なヒトの腸内から分離されたきわめて安全性の高い細菌であり、かつエンド型であってβ−マンナナーゼ活性に優れるため、マンナンの低分子量化に極めて好適である。従来から、各種のβ−マンナナーゼがマンナンの分解に使用されてきたが、本発明のような偏性嫌気性菌に由来し、エンド型のものは存在しない。他のβ−マンナナーゼ産生菌と相違して偏性嫌気性菌であるため、目的の操作が終了後に空気に暴露させると容易に死滅させることができ、バチルス属のように胞子を持たないため製品や環境への汚染の心配がなく、極めて安全性が高い。
【0020】
本発明の第三は、β−マンナナーゼ生産能を有するバクテロイデス・ブルガタスをマンナンを含む培地で培養し、該マンナンを分解することを特徴とする、マンナン分解物の製造方法である。
【0021】
本発明においてバクテロイデス・ブルガタスとしてはβ−マンナナーゼ生産能を有するものを広く使用することができる。好ましくは、バクテロイデス・ブルガタス GM4(FERM P−20107)である。ヒト由来であり、安全性が高く、かつ生産するβ−マンナナーゼはエンド型であってマンナンをオリゴ糖にまでは分解しないため、容易な制御で食物繊維などとしての機能を保持する範囲にマンナンを低分子量化することができる。
【0022】
本発明で使用するマンナンとしては、マンノースを主な構成成分とする多糖類を広く意味し、ガラクトースを含むガラクトマンナンや、グルコースを含むグルコマンナンなどであってもよい。マンナンは、木材、植物体に広く存在するが、その由来も限定されない。したがって、コンニャクイモ、サトイモ科のアルム根、マツ属のジャツクパイン、ラン科の球根、エゾマツやハリモミなどのトウヒ属植物、ヤシ科のゾウゲヤシ、フオエニクス・カナリエンシス、オーキス・マキユラタ、コプラ、ローカストビーンガム、グアーガム、スピノガム、大豆、コーヒー豆、ムラサキウマゴヤシ、アカツメクサ、コロハ、が知られている。その他のマンナン含有植物としては、アスパラガス・オフィシナリス、エレムラス・フスカス、エレムラス・レゲリー、エレムラス・スペクタビリス、フアセオラス・アウレウスなどから得られるマンナンを対象とすることができる。これらは、一般にアルカリ抽出法などにより得られている。更に、市販のコンニャク粉(製粉、中分、荒分等)や精製マンナン、従来から食品工業や繊維産業で糊料や増粘剤として使用された各種β−D−マンナンであってもよい。加えて、これらマンナンは、デンプンを含んでいてもよい。使用するバクテロイデス・ブルガタスはデンプンも分解するため、培養液からのマンナンの単離に影響を与えないからである。なお、該マンナンはバクテロイデス・ブルガタスの炭素源として添加されるものである。本発明では、入手が容易であることなどによりコンニャクマンナンを使用することが好ましい。
【0023】
本生産菌の培養は、基本的にはバクテロイデス・ブルガタスの培養に用いられる培地と培養条件にしたがって行えばよいが、炭素源として上記マンナンを含む培地を用いる。窒素源としては、ペプトン、ポリペプトン、肉エキス、酵母エキスなどを単独で、または組み合わせて用いることができる。その他、リン酸水素一カリウム等の緩衝剤や硫酸マグネシウム等の無機塩や微量の重金属を添加することができる。
【0024】
培養は、嫌気的条件下に行われ、バッチ培養の場合には気相を窒素ガスや炭素ガス等で置換して行う。一般に、培養液中のマンナン濃度は、0.01〜5質量%、より好ましくは0.5〜2質量%である。濃度が5質量%よりも高い場合には、マンナンの粘度が高すぎて培養や攪拌が困難となる場合がある。一方、0.01質量%を下回ると、生産性が低下する。上記バクテロイデス・ブルガタスは、一般に培地中に1×10〜1×10個/mlの割合で培養する。培養温度は、30〜40℃、好ましくは35〜38℃が適当で、培養期間は2〜7日間、好ましくは3〜5日間である。なお、培養中、培地のpHは6〜8に保つことが好ましい。なお、反応の終了は、培養液の粘度によって判断することができる。
【0025】
本発明の特徴は、バクテロイデス・ブルガタスから単離したβ−マンナナーゼを用いてマンナンを分解するのではなく、β−マンナナーゼを生産するバクテロイデス・ブルガタスの培地中にマンナンを炭素源として含ませ、マンナンを低分子量化する点にある。β−マンナナーゼは菌体外に生産されるため、培地中でβ−マンナナーゼによってマンナンが低分子量化される点は同じであるが、生産菌からβ−マンナナーゼを単離する工程がない点で相違する。従来から、β−マンナナーゼはその生産菌よりも耐熱性に優れるため、単離したβ−マンナナーゼを使用してマンナンを低分子量化することが多く、そのためにβ−マンナナーゼの単離が必須の工程となっていた。また、マンナン分解物が食用、医療用などに使用される場合には、製品の安全性が重要である。β−マンナナーゼ生産菌の由来が明確でないと、安全性を確保することが困難であり、このような理由からも菌体によるマンナンの分解は行われていなかった。しかしながら、本発明では、ヒト由来のバクテロイデス・ブルガタスを使用するために安全性が確保され、β−マンナナーゼを単離することなく培地中にマンナンを炭素源として供給し、容易にマンナンを低分子量化することができる。しかも、目的とするマンナンの分子量は培養時間を変化することで調節が可能であり、酵素反応をpHや温度で調節するような煩雑な方法は必要としない。本発明では、平均分子量2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000、特には10,000〜200,000のマンナン分解物とすることが好ましい。この範囲であれば、分解前のマンナンよりも粘度が低下しているため取り扱いが容易であり、しかも食物繊維としての機能を維持することができるからである。
【0026】
培養終了後、培養物には菌体、マンナン分解物およびβ−マンナナーゼが含まれている。該培養液を遠心分離すれば、菌体を分離することができる。菌体分離後の上清はマンナン分解物含有水溶液である。
【0027】
該マンナン分解物含有水溶液に塩化カリウム、硫酸アンモニウム等の無機塩類を飽和度50〜80%、より好ましくは60〜70%で添加すると、主としてβ−マンナナーゼが沈殿する。該沈殿物を50mMのリン酸バッファー(pH7.2)などで透析し、陰イオン交換クロマト、ゲルろ過などを行うことでβ−マンナナーゼを回収することができる。得られたβ−マンナナーゼは噴霧乾燥あるいは凍結乾燥法により粉末とすることができる。
【0028】
前記マンナン分解物含有水溶液にエタノールなどの有機溶媒を添加するとβ−マンナナーゼよりも優先的にマンナン分解物が沈殿する。該沈殿物を分取し、水で攪拌するとマンナン分解物が水に溶解するため、先の沈殿操作と水への溶解操作とを繰り返すことでマンナン分解物を精製することができる。得られたマンナン分解物は、噴霧乾燥や凍結乾燥法によって粉末とすることができる。
【0029】
一方、前記マンナン分解物含有水溶液、前記エタノール沈殿物を水に溶解した溶液、または前記精製マンナン分解物を水に溶解した溶液に、塩化カリウム、硫酸アンモニウム等の無機塩類を飽和度10〜50%、より好ましくは15〜35%で添加すると、主としてマンナン分解物が沈殿する。このマンナン分解物は、不溶性であり再度水を添加しても溶解しない。したがって、精製水を加えて懸濁液を調製し、遠心、懸濁を繰り返すと不溶性マンナン分解物をうることができる。このような不溶性マンナン分解物は、不溶性食物繊維として、便秘治療剤、吸着剤、賦形剤などとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0031】
(実施例1)
リン酸−カリウム200gが入った40リットルの水溶液に、ペプトン(ミクニ化学)800g、コンニャクマンナン(和光純薬)400gを添加して培地を調製し、これを121℃で30分間滅菌した。
【0032】
該培地の気相部に窒素ガスを充満させ、37℃まで冷却した。次いで、同培地で前培養したバクテロイデス・ブルガタス GM4(FERM P−20107)培養液(1×10/ml)800mlを該培地に接種し、37℃で4日間攪拌しながら培養した。
【0033】
培養後に連続遠心により菌体を除去した。上清液に等量のエタノールを加え、発生した沈殿を遠心分離により除去した。次いで、上清液に硫酸アンモニウムを飽和度が60%になるよう加え、4℃一晩放置後、10,000gで30分間遠心し沈殿を集めた。50mMのリン酸バッファー(pH7.2)に対し、冷却しながら一晩透析した。次に、陰イオン交換樹脂(SOURCE 30Q;アマシャムバイオサイエンス)でイオン交換クロマトを実施後、Sephacry1 S−200HR(アマシャムバイオサイエンス)によりゲルろ過を行い、β−マンナナーゼ活性のある画分を集めた。限外ろ過器(ミリポア)により濃縮後、凍結乾燥し酵素末800mgを得た。SDS・PAGEによる分子量は、約36kDaと59kDaであった。結果を図1に示す。
【0034】
(実施例2)
リン酸−カリウム200gが入った40リットルの水溶液に、ペプトン(ミクニ化学)800g、市販のコンニャク粉400gを添加して培地を調製し、これを121℃で30分間滅菌した。
【0035】
該培地の気相部に窒素ガスを充満させ、37℃まで冷却した。次いで、同培地で前培養したバクテロイデス・ブルガタス GM4(FERM P−20107)培養液(1×10/ml)800mlを該培地に接種し、37℃で4日間攪拌しながら培養した。
【0036】
培養後に連続遠心により菌体を除去した。上清液に等量のエタノールを加え、発生した沈殿を遠心して集め、沈殿物を精製水に再溶解した。これに等量のエタノールを再度加え、発生した沈殿を遠心により分取した。該沈殿の精製水への溶解およびエタノール沈殿という操作を3回繰り返して不純物を除去した。精製沈殿を噴霧乾燥したところ、345gの部分分解マンナンが得られた。ゲルろ過により分子量を測定したところ、10,000〜30,000であった。
【0037】
(実施例3)
培養時間を3日間に変更した以外は実施例2と同様に操作し、凍結乾燥により368gの部分分解マンナンを得た。このものの分子量は、100,000〜280,000であった。
【0038】
(実施例4)
実施例2と同様に培養後、遠心して菌体を除去した。上清液に硫酸アンモニウムを飽和度が20%なるよう加え、4℃で4時間放置した。10,000gで30分間遠心し、沈殿を集めた。沈殿を精製水に懸濁後、10,000gで30分間遠心した。この遠心、懸濁の操作を3回繰り返して不純物を除去した。精製沈殿を凍結乾燥したところ330gの部分分解マンナンが得られた。このマンナン分解物は水に不溶性であり、酸、アルカリに安定であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のβ−マンナナーゼによれば、例えばコンニャクマンナンを容易に低分子量化することができる。該β−マンナナーゼを産出するバクテロイデス・ブルガタス GM4(FERM P−20107)は、ヒト由来であるため安全性が高く、これを用いて得たマンナン分解物は、食品や医薬品として使用するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、新規β−マンナナーゼのSDS−PAGEを示す。レーン1は分子量マーカー、レーン2、3はβ−マンナナーゼの精製過程のサンプルである。矢印は新規β−マンナナーゼのバンドを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バクテロイデス・ブルガタスが産生するβ−マンナナーゼ。
【請求項2】
エンド型であることを特徴とする、請求項1記載のβ−マンナナーゼ。
【請求項3】
請求項1または2記載のβ−マンナナーゼ生産能を有するバクテロイデス・ブルガタス GM4(FERM P−20107)。
【請求項4】
β−マンナナーゼ生産能を有するバクテロイデス・ブルガタスをマンナンを含む培地で培養し、該マンナンを分解することを特徴とする、マンナン分解物の製造方法。
【請求項5】
濃度0.01〜5質量%のマンナン溶液に、β−マンナナーゼ生産能を有するバクテロイデス・ブルガタスを仕込み、温度30〜40℃で培養した後に菌体を分離する工程を含む、マンナン分解物含有水溶液の製造方法。
【請求項6】
前記マンナン分解物含有水溶液にアルコールを添加して、マンナン分解物を沈殿させる工程を含む、マンナン分解物の製造方法。
【請求項7】
分子量2,000〜1,000,000のマンナン分解物を溶解した水溶液に、無機塩を飽和度10〜50%で添加してマンナン分解物を沈殿させることを特徴とする、不溶性マンナン分解物の製造方法。
【請求項8】
前記バクテロイデス・ブルガタスが、バクテロイデス・ブルガタス GM4(FERM P−20107)である、請求項4〜6のいずれかに記載のマンナン分解物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−34166(P2006−34166A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218547(P2004−218547)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000114282)ミヤリサン株式会社 (8)
【Fターム(参考)】