説明

ミオチューブラリン1(MTM1)ポリペプチドを含むキメラポリペプチドを使用して筋細管ミオパシーを処置するための方法および組成物

本発明は、ミオチューブラリン1(MTM1)ポリペプチドと、内部移行部分とを含み、該部分が、抗体であることが可能であり、好ましくはモノクローナル抗体3E10、その機能的変異体、またはその機能断片であるキメラポリペプチドを提供する。本発明の一態様は、薬学的に許容される担体、ならびに、場合によって、さらなる治療剤と併せて、これらのキメラポリペプチドを含む組成物を提供する。本発明の別の態様は、それを必要とする被験体に、該ポリペプチドまたは該ポリペプチドを含む組成物を投与するステップを含む、筋細管ミオパシーを治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2009年6月15日に出願された米国仮出願第61/268,732号(この開示は、その全体が参考として本明細書に援用される)の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
筋細管ミオパシー(MTM)は、出生50,000人当たりで男性1人の推定発生率で発生する、まれで重度のX連鎖筋障害である。筋細管ミオパシーは、中心核ミオパチーと称する疾患類型のメンバーである。中心核ミオパチーの枢要な特色は、核が、罹患個体の筋肉細胞の多くで中心部に位置し、通常の位置である、これらの細胞の末端には位置しないことである。中心核ミオパチーは、この特徴的な特色を共有するが、この疾患の多様な種類は異なる原因を有し、異なる患者集団がそれらに罹患し、病状の固有の進行および予後を示す。
【0003】
筋細管ミオパシーは、ホスホイノシチドホスファターゼであるミオチューブラリン(myotubularin)1(MTM1)タンパク質が欠損することにより引き起こされる(非特許文献1)。出生時に重度の低血圧および呼吸困難を伴うMTM患者、ならびに新生児期を延命するMTM患者は、換気装置の支持に全面的または部分的に依存することが多い(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。MTMを伴う患者は、運動発達の遅延を呈示し、脊柱側彎症、不正咬合、幽門狭窄、球状赤血球症、ならびに胆石および腎臓結石などの合併症にかかりやすいが、身長の伸びおよび知能は正常であり、病状は非進行性の経過をたどる(非特許文献5)。新生児MTM患者の平均入院期間は約90日間である。しかし、延命する患者には、長期にわたる換気補助および自宅でのケアが要求される。MTM患者において発生することが多い、基本的な支持ケアのコストのほか、合併症を処理することに随伴する費用により、患者および家族にはかなりの人的負担および経済的負担が賦課される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Bello ABら、Human Molecular Genetics、2008年、17巻、14号
【非特許文献2】Taylor GSら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2000年8月1日;97巻(16号):8910〜5頁
【非特許文献3】Bello ABら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2002年11月12日;99巻(23号):15060〜5頁
【非特許文献4】Pierson CRら、Neuromuscul Disord.、2007年7月;17巻(7号):562〜568頁
【非特許文献5】Herman GEら、THE JOURNAL OF PEDIATRICS、134巻、2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在のところ、MTMのための療法は存在しない。治療は、MTMと関連する機能障害を管理しようと努める、換気補助ならびに他の形態の支持的ケアに限定される。本開示は、MTMを治療するための方法および組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ミオチューブラリン(MTM1)ポリペプチドまたはその生物活性断片と内部移行部分とを含むキメラポリペプチドのほか、薬学的な担体との組合せで該キメラポリペプチドを含む組成物を提供する。また、このようなキメラポリペプチドを作製するのに有用な構築物も開示される。さらに、本開示は、キメラポリペプチド、ならびにそれらをコードする構築物を作出する方法も教示する。加えて、本明細書では、例えば、細胞におけるホスファターゼ活性を操作し、MTM1の突然変異または欠損と関連する疾患または状態に対する治療の一部として、該キメラポリペプチドを使用する方法も開示される。
【0007】
一態様では、本開示が、(i)ミオチューブラリン(MTM1)ポリペプチドまたはその生物活性断片と、(ii)内部移行部分とを含むキメラポリペプチドを提供する。ある実施形態では、キメラポリペプチドが、ホスホイノシチドホスファターゼ活性を有する。すなわち、キメラポリペプチドが、リン酸化ホスホイノシチド分子を切断または加水分解する能力を有する。ある実施形態では、キメラポリペプチドの基質が、PI3またはPIP3である。ある実施形態では、内部移行部分が筋肉細胞内への前記キメラポリペプチドの輸送を促進する。言い換えれば、内部移行部分は、キメラポリペプチドが、細胞膜を効果的かつ効率的に透過する一助となる。一部の実施形態では、内部移行部分が、ENT2トランスポーターを介して細胞膜を通過する。言い換えれば、内部移行部分は、ENT2トランスポーターを介して、細胞膜を隔てたキメラポリペプチドの輸送を促進する。
【0008】
ある実施形態では、本明細書で開示されるMTM1ポリペプチドが、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはその生物活性断片を含む。一部の実施形態では、該MTM1ポリペプチドが、あるMTM1ポリペプチド(配列番号1、6、8、または前出のいずれかの生物活性断片のうちの1または複数で表わされるMTM1ポリペプチドなど)と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、該MTM1ポリペプチドが、配列番号1で表わされるMTM1ポリペプチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、本明細書で開示され、キメラポリペプチドにおいて使用される、前出または後出のMTM1ポリペプチドのうちのいずれかが、in vivoにおける安定性、in vivoにおける半減期、取込み/投与、および/または精製のうちの1または複数を増強する1またはそれより多いポリペプチド部分をさらに含む。ある実施形態では、前出もしくは後出のMTM1ポリペプチド、および/またはキメラポリペプチドが、1またはそれより多いエピトープタグをさらに包含しうる。このようなエピトープタグは、MTM1ポリペプチドおよび/または内部移行部分に接合することができる。複数の(例えば、2つ、3つ、4つの)エピトープタグが存在する場合、該タグは、同じ場合もあり、異なる場合もある。
【0009】
前出のキメラポリペプチドのうちのいずれかの内部移行部分は、抗体またはその抗原結合断片を含む。ある実施形態では、抗体が、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。抗体またはその抗原結合断片は、例えば、モノクローナル抗体3E10もしくは3E10の細胞透過活性を保持するその変異体、または3E10もしくは前記3E10の変異体の抗原結合断片でありうる。ある実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、3E10と同じエピトープに結合する抗体または抗原結合断片、もしくは細胞透過活性が3E10と実質的に同じである抗体、またはその抗原結合断片でありうる。他の実施形態では、前出のキメラポリペプチドのうちのいずれかの内部移行部分が、本明細書で説明されるホーミングペプチドを含む。ある実施形態では、内部移行部分が、配列番号4と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体または抗原結合断片を含む。ある実施形態では、内部移行部分が、配列番号2と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む抗体または抗原結合断片を含む。ある実施形態では、内部移行部分が、配列番号4と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号2と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗体または抗原結合断片を含む。本発明は、とりわけ、前出のVH鎖およびVL鎖の任意の組合せに基づく内部移行部分、例えば、配列番号2と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むVH鎖と、配列番号4と少なくとも96%同一であるVL鎖とを含む内部移行部分を意図する。ある実施形態では、内部移行部分が、配列番号2で示されるアミノ酸を含むVH鎖と、配列番号4で示されるアミノ酸を含むVL鎖とを含む。本明細書で詳述される通り、VHドメインおよびVLドメインは、全長抗体の一部として包含される場合もあり、scFvなど、断片の一部として包含される場合もある。さらに、VHドメインおよびVLドメインは、リンカーにより接合される場合もあり、直接接合される場合もある。いずれの場合も、VHドメインおよびVLドメインは、どちら向きに接合することもできる(例えば、VLドメインのN末端をVHドメインに接合することもでき、VHドメインのN末端をVLドメインに接合することもできる)。
【0010】
ある実施形態では、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、内部移行部分に化学的に結合体化することにより、前出のキメラポリペプチドのうちのいずれかを作製することができる。ある実施形態では、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、内部移行部分に組換え結合体化することによりキメラポリペプチドを作製することができる。例えば、MTM1ポリペプチドおよび内部移行部分の両方をコードする組換えベクターを使用してキメラポリペプチドを作製することができる。一部の実施形態では、キメラポリペプチドが、真核細胞または原核細胞内で産生される。例えば、真核細胞は、酵母細胞、鳥類細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞から選択することができる。MTM1ポリペプチドを、内部移行部分に化学的に結合体化する実施形態では、本発明が、MTM1ポリペプチドおよび/または内部移行部分を組換えにより作製しうると意図することに注意されたい。
【0011】
一部の実施形態では、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、リンカーにより内部移行部分に結合体化または接合することができる(化学的にまたは組換えにより)。他の実施形態では、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、内部移行部分に直接結合体化または接合することができる。例えば、組換えにより結合体化されたキメラポリペプチドは、フレーム内におけるMTM1部分と内部移行部分との融合体として作製することができる。ある実施形態では、リンカーが、切断可能なリンカーである。前出の実施形態のうちのいずれかでは、内部移行部分を、MTM1ポリペプチドのN末端アミノ酸またはC末端アミノ酸に結合体化することができる(直接またはリンカーを介して)。他の実施形態では、内部移行部分を、前記MTM1ポリペプチドの内部アミノ酸に結合体化することができる(直接またはリンカーを介して)。構築物の2つの部分は、互いに結合体化/接合されることに注意されたい。別段に指定しない限り、MTM1部分を内部移行部分に結合体化することとしてキメラポリペプチドを説明することは、内部移行部分をMTM1部分に結合体化することと同義に使用される。ある実施形態では、リンカーが、抗体のVHドメインおよびVLドメインなど、内部移行部分のうちの1またはそれより多い部分を併せて接合する。本発明は、0個のリンカー、1個のリンカー、2個のリンカー、ならびに2個以上のリンカーの使用を意図する。複数個のリンカーを使用する場合、リンカーは、同じ場合もあり異なる場合もある。
【0012】
ある実施形態では、前出のキメラポリペプチドのうちのいずれかを、薬学的に許容される担体中で調合される組成物として調合することができる。ある実施形態では、組成物を、静脈内投与用に調合する。
【0013】
関連する態様では、本開示が、配列番号11に示されるアミノ酸、または配列番号11に示されるが、一方もしくは両方のエピトープタグが存在しないアミノ酸配列を含むキメラポリペプチドを提供する。このようなキメラポリペプチド、ならびに本明細書で説明されるキメラポリペプチドのうちのいずれも、本明細書で説明される方法のうちのいずれかで使用することができる。
【0014】
キメラポリペプチドに関して、本開示は、前出の態様および実施形態のうちのいずれかによるすべての組合せのほか、詳細な説明および実施例で示される実施形態のうちのいずれかとの組合せも意図する。さらに、本開示のキメラポリペプチドのうちのいずれかは、本明細書で説明される方法のうちのいずれかで使用することができる。
【0015】
別の態様では、本開示が、内部移行部分をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結された、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸構築物を提供する。ある実施形態では、核酸構築物が、ホスホイノシチドホスファターゼ活性を有するキメラポリペプチドをコードする。ある実施形態では、内部移行部分が、筋肉細胞を標的として筋肉細胞内への輸送を促進する。他の実施形態では、内部移行部分が、ENT2トランスポーターを介して細胞膜を通過する。
【0016】
一部の実施形態では、MTM1ポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列が、配列番号5と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む。ある実施形態では、MTM1ポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列が、配列番号5、7、または9のうちの任意の1または複数と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む。ある実施形態では、該ヌクレオチド配列が、配列番号1、6、または8のうちの任意の1または複数と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むMTM1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。ある実施形態では、該ヌクレオチド配列が、配列番号1と少なくとも90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むMTM1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。
【0017】
ある実施形態では、核酸構築物が、リンカーをコードするヌクレオチド配列をさらに含みうる。
【0018】
ある実施形態では、内部移行部分が、抗体またはその抗原結合断片でありうる。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、モノクローナル抗体3E10もしくは3E10の細胞透過活性を保持するその変異体、または3E10もしくは前記3E10の変異体の抗原結合断片でありうる。他の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、3E10と同じエピトープに結合する抗体または抗原結合断片、もしくは細胞透過活性が3E10と実質的に同じである抗体または抗原結合断片、またはその抗原結合断片でありうる。ある実施形態では、内部移行部分がホーミングペプチドでありうる。ある実施形態では、内部移行部分が、筋肉細胞を標的とするホーミングペプチドである。
【0019】
別の態様では、本開示が、前出のキメラポリペプチド組成物または核酸構築物のうちのいずれかと、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物を提供する。ある実施形態では、組成物が、筋細管ミオパシーを治療し、細胞に対してMTM1の生物活性効果を及ぼし、かつ/または細胞内への輸送を促進するのに、相加的または相乗的な様式で作用する第2の薬剤をさらに含みうる。第2の薬剤は、例えば、低分子、ポリペプチド、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、またはsiRNA分子でありうる。
【0020】
核酸構築物に関して、本開示は、前出の態様および実施形態のうちのいずれかによるすべての組合せのほか、詳細な説明および実施例で示される実施形態のうちのいずれかとの組合せも意図する。
【0021】
さらなる態様では、本開示が、それを必要とする被験体において筋細管ミオパシーを治療する方法であって、有効量の、前出のキメラポリペプチドまたは核酸構築物を前記被験体に投与するステップを含む方法を提供する。ある実施形態では、該方法が、(i)MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片と、(ii)筋肉細胞内へのキメラポリペプチドの輸送を促進する内部移行部分とを含むキメラポリペプチドを投与するステップを含む。ある実施形態では、キメラポリペプチドが、ホスホイノシチドホスファターゼ活性を有する。ある実施形態では、被験体がヒトである。他の実施形態では、被験体が、マウス、ラット、または非ヒト霊長動物のうちのいずれかから選択される。
【0022】
一部の実施形態では、内部移行部分が、ENT2トランスポーターを介して細胞膜を通過する。言い換えれば、内部移行部分は、ENT2トランスポーターを介する細胞内への輸送を促進する。ある実施形態では、内部移行部分が、抗体またはその抗原結合断片を含む。ある実施形態では、内部移行部分が、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体3E10もしくは3E10の細胞透過活性を保持するその変異体、または3E10もしくは前記3E10の変異体の抗原結合断片でありうる。加えて、抗体またはその抗原結合断片は、3E10と同じエピトープに結合する抗体または抗原結合断片、もしくは細胞透過活性が3E10と実質的に同じである抗体または抗原結合断片、またはその抗原結合断片でありうる。
【0023】
ある実施形態では、MTM1ポリペプチドが、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはその生物活性断片を含む。一部の実施形態では、該MTM1ポリペプチドが、あるMTM1ポリペプチド(配列番号1、6、8、または前出のいずれかの生物活性断片のうちの1または複数で表わされるMTM1ポリペプチドなど)と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0024】
一部の実施形態では、前出のキメラポリペプチドのうちのいずれかを、薬学的に許容される担体と共に調合することができる。
【0025】
ある実施形態では、特許請求される方法において使用されるキメラポリペプチドを、本明細書で説明する通りに結合体化(例えば、化学的にまたは組換えにより)することができる。
【0026】
ある実施形態では、前出の方法のうちのいずれかが、筋細管ミオパシーを治療するための、相加的または相乗的な様式で作用する第2の療法をさらに含みうる。一部の実施形態では、第2の療法が、筋細管ミオパシーの1またはそれより多い症状を緩和する一助となる薬物の場合もあり、筋細管ミオパシーの1またはそれより多い症状を治療するか、または他の形で緩和する一助となる理学療法または他の非薬物療法の場合もある。例示的な非薬物療法には、換気療法、作業療法、鍼、およびマッサージが含まれるがこれらに限定されない。
【0027】
一部の実施形態では、前出のキメラポリペプチドのうちのいずれかを、適切な投与経路を介して投与することができる、例えば、全身投与、局所投与、または静脈内投与することができる。ある実施形態では、キメラポリペプチドを、ボーラス注射またはボーラス注入を介して静脈内投与する。
【0028】
筋細管ミオパシーを治療する方法に関して、本開示は、前出の態様および実施形態のうちのいずれかによるすべての組合せのほか、詳細な説明および実施例で示される実施形態のうちのいずれかとの組合せも意図する。
【0029】
別の態様では、本開示が、キメラポリペプチドまたは核酸構築物を、受動拡散型ヌクレオシドトランスポーター(equilibrative nucleoside transporter)(ENT2)経路を介して細胞内に送達する方法であって、キメラポリペプチドまたは核酸構築物と細胞を接触させるステップを含む方法を提供する。ある実施形態では、該方法が、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片と、ENT2経路を介して細胞膜を横切る輸送を媒介する内部移行部分とを含むキメラポリペプチドと細胞を接触させ、これにより、該キメラポリペプチドを該細胞内に送達するステップを含む。ある実施形態では、細胞が筋肉細胞である。
【0030】
ある実施形態では、MTM1ポリペプチドが、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはその生物活性断片を含む。一部の実施形態では、該MTM1ポリペプチドが、あるMTM1ポリペプチド(配列番号1、6、8、または前出のいずれかの生物活性断片のうちの1または複数で表わされるMTM1ポリペプチドなど)と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0031】
ある実施形態では、MTM1ポリペプチドが、in vivoにおける安定性、in vivoにおける半減期、取込み/投与、および/または精製のうちの1または複数を増強する1またはそれより多いポリペプチド部分をさらに含みうる。他の実施形態では、内部移行部分が、抗体またはその抗原結合断片を含む。他の実施形態では、内部移行部分が、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体3E10もしくは3E10の細胞透過活性を保持するその変異体、または3E10もしくは前記3E10の変異体の抗原結合断片でありうる。加えて、抗体またはその抗原結合断片は、3E10と同じエピトープに結合する抗体または抗原結合断片、もしくは細胞透過活性が3E10と実質的に同じである抗体または抗原結合断片、またはその抗原結合断片でありうる。一部の実施形態では、内部移行部分が、ENT2を標的とするホーミングペプチドを含みうる。
【0032】
ある実施形態では、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、内部移行部分に化学的に結合体化することにより、該方法で使用されるキメラポリペプチドを作製することができる。一部の実施形態では、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、内部移行部分に組換え結合体化することによりキメラポリペプチドを作製することができる。ある実施形態では、特許請求される方法において使用されるキメラポリペプチドを、本明細書で説明する通りに結合体化(例えば、化学的にまたは組換えにより)することができる。
【0033】
キメラポリペプチドを、受動拡散型ヌクレオシドトランスポーター(ENT2)経路を介して細胞内に送達する方法に関して、本開示は、前出の態様および実施形態のうちのいずれかによるすべての組合せのほか、詳細な説明および実施例で示される実施形態のうちのいずれかとの組合せも意図する。
【0034】
別の態様では、本開示が、キメラポリペプチドを筋肉細胞内に送達する方法であって、キメラポリペプチドまたは核酸構築物と筋肉細胞を接触させるステップを含む方法を提供する。ある実施形態では、該方法が、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片と、筋肉細胞内への輸送を促進する内部移行部分とを含むキメラポリペプチドと該筋肉細胞を接触させ、これにより、該キメラポリペプチドを該筋肉細胞内に送達するステップを含む。ある実施形態では、内部移行部分が、受動拡散型ヌクレオシドトランスポーター(ENT2)経路を介する輸送を促進する。
【0035】
ある実施形態では、MTM1ポリペプチドが、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはその生物活性断片を含む。一部の実施形態では、該MTM1ポリペプチドが、あるMTM1ポリペプチド(配列番号1、6、8、またはその生物活性断片のうちの1または複数で表わされるMTM1ポリペプチドなど)と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0036】
ある実施形態では、MTM1ポリペプチドが、in vivoにおける安定性、in vivoにおける半減期、取込み/投与、および/または精製のうちの1または複数を増強する1またはそれより多いポリペプチド部分をさらに含みうる。他の実施形態では、内部移行部分が、抗体またはその抗原結合断片を含む。他の実施形態では、内部移行部分が、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体3E10もしくは3E10の細胞透過活性を保持するその変異体、または3E10もしくは前記3E10の変異体の抗原結合断片でありうる。加えて、抗体またはその抗原結合断片は、3E10と同じエピトープに結合する抗体または抗原結合断片、もしくは細胞透過活性が3E10と実質的に同じである抗体または抗原結合断片、またはその抗原結合断片でありうる。一部の実施形態では、内部移行部分が、ENT2を標的とするホーミングペプチド、および/または筋肉細胞を標的とするホーミングペプチドを含みうる。
【0037】
一部の実施形態では、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、内部移行部分に化学的に結合体化することにより、該方法のいずれかのキメラポリペプチドを作製することができる。他の実施形態では、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、内部移行部分に組換え結合体化することによりキメラポリペプチドを作製することができる。ある実施形態では、特許請求される方法において使用されるキメラポリペプチドを、本明細書で説明する通りに結合体化(例えば、化学的にまたは組換えにより)することができる。
【0038】
キメラポリペプチドを、受動拡散型ヌクレオシドトランスポーター(ENT2)経路を介して細胞内に送達する方法に関して、本開示は、前出の態様および実施形態のうちのいずれかによるすべての組合せのほか、詳細な説明および実施例で示される実施形態のうちのいずれかとの組合せも意図する。
【0039】
他の態様では、本開示が、キメラポリペプチドを、それを必要とする被験体に送達する方法であって、キメラポリペプチドまたは核酸構築物を、それを必要とする被験体に投与するステップを含む方法を提供する。ある実施形態では、該方法が、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片と、筋肉細胞内への輸送を促進する内部移行部分とを含むキメラポリペプチドを投与し、これにより、該キメラポリペプチドを該筋肉細胞内に送達するするステップを含む。ある実施形態では、内部移行部分が、ENT2トランスポーターを介する輸送を促進する。
【0040】
ある実施形態では、MTM1ポリペプチドが、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはその生物活性断片を含む。一部の実施形態では、該MTM1ポリペプチドが、あるMTM1ポリペプチド(配列番号1、6、8、またはその生物活性断片のうちの1または複数で表わされるMTM1ポリペプチドなど)と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0041】
ある実施形態では、MTM1ポリペプチドが、in vivoにおける安定性、in vivoにおける半減期、取込み/投与、および/または精製のうちの1または複数を増強する1またはそれより多いポリペプチド部分をさらに含みうる。他の実施形態では、内部移行部分が、抗体またはその抗原結合断片を含む。他の実施形態では、内部移行部分が、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体3E10もしくは3E10の細胞透過活性を保持するその変異体、または3E10もしくは前記3E10の変異体の抗原結合断片でありうる。加えて、抗体またはその抗原結合断片は、3E10と同じエピトープに結合する抗体または抗原結合断片、もしくは細胞透過活性が3E10と実質的に同じである抗体または抗原結合断片、またはその抗原結合断片でありうる。一部の実施形態では、内部移行部分が、ENT2を標的とするホーミングペプチド、および/または筋肉細胞を標的とするホーミングペプチドを含みうる。
【0042】
一部の実施形態では、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、内部移行部分に化学的に結合体化することにより、該方法のいずれかのキメラポリペプチドを作製することができる。他の実施形態では、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、内部移行部分に組換え結合体化することによりキメラポリペプチドを作製することができる。ある実施形態では、特許請求される方法において使用されるキメラポリペプチドを、本明細書で説明する通りに結合体化(例えば、化学的にまたは組換えにより)することができる。
【0043】
ある実施形態では、前出の方法のうちのいずれかの被験体がヒトでありうる。一部の実施形態では、送達する方法が、例えば、非経口送達の場合もあり、静脈内送達の場合もある。ある実施形態では、キメラポリペプチドを、例えば、ボーラス注射またはボーラス注入を介して静脈内投与する。
【0044】
キメラポリペプチドを筋肉細胞内に送達する方法に関して、本開示は、前出の態様および実施形態のうちのいずれかによるすべての組合せのほか、詳細な説明および実施例で示される実施形態のうちのいずれかとの組合せも意図する。
【0045】
別の態様では、本開示が、筋肉細胞におけるMTM1の生物活性を増大させる方法であって、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片と、筋肉細胞内への輸送を促進する内部移行部分とを含むキメラポリペプチドと筋肉細胞を接触させ、これにより、前記筋肉細胞におけるMTM1の生物活性を増大させるステップを含む方法を提供する。ある実施形態では、内部移行部分が、ENT2トランスポーターを介する輸送を促進する。
【0046】
ある実施形態では、MTM1ポリペプチドが、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはその生物活性断片を含む。一部の実施形態では、該MTM1ポリペプチドが、あるMTM1ポリペプチド(配列番号1、6、8、または前出のいずれかの生物活性断片のうちの1または複数で表わされるMTM1ポリペプチドなど)と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0047】
ある実施形態では、MTM1ポリペプチドが、in vivoにおける安定性、in vivoにおける半減期、取込み/投与、および/または精製のうちの1または複数を増強する1またはそれより多いポリペプチド部分をさらに含みうる。他の実施形態では、内部移行部分が、抗体またはその抗原結合断片を含む。他の実施形態では、内部移行部分が、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体3E10もしくは3E10の細胞透過活性を保持するその変異体、または3E10もしくは前記3E10の変異体の抗原結合断片でありうる。加えて、抗体またはその抗原結合断片は、3E10と同じエピトープに結合する抗体または抗原結合断片、もしくは細胞透過活性が3E10と実質的に同じである抗体または抗原結合断片、またはその抗原結合断片でありうる。一部の実施形態では、内部移行部分が、ENT2および/または筋肉細胞を標的とするホーミングペプチドを含みうる。
【0048】
他の実施形態では、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、内部移行部分に化学的に結合体化することにより、前出の方法のうちのいずれかで使用されるキメラポリペプチドを作製することができる。他の実施形態では、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、内部移行部分に組換え結合体化することによりキメラポリペプチドを作製することができる。
【0049】
一部の実施形態では、MTM1生物活性に、例えば、MTM1ホスホイノシチドホスファターゼ活性、もしくはエンドソームタンパク質とのMTM1の会合、またはこれらの両方が含まれる。ある実施形態では、ホスホイノシチド活性が、天然MTM1のホスホイノシチド活性の少なくとも50%であるか、または天然MTM1のホスホイノシチド活性の少なくとも80%である。他の実施形態では、ホスホイノシチド活性が、天然MTM1のホスホイノシチド活性の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%である。生物活性は、対照における生物活性と比べて評価することができる。
【0050】
細胞におけるMTM1の生物活性を増大させる方法に関して、本開示は、前出の態様および実施形態のうちのいずれかによるすべての組合せのほか、詳細な説明および実施例で示される実施形態のうちのいずれかとの組合せも意図する。キメラポリペプチドを投与するか、または細胞をキメラポリペプチドと接触させるステップに基づく前出の方法は、in vitroで(例えば、細胞または培養物において)で実施することもでき、in vivoで(患者または動物モデルにおいて)実施することもできる。ある実施形態では、該方法が、in vitroにおける方法である。ある実施形態では、該方法が、in vivoにおける方法である。
【0051】
他の態様では、本開示がまた、本明細書で説明される前出のキメラポリペプチドのうちのいずれかを作製する方法も提供する。さらに、本開示は、前出の方法および組成物による任意の数の組合せも意図する。
【0052】
本発明は、前出の態様および実施形態のうちのいずれかによるすべての組合せのほか、詳細な説明および実施例で示される実施形態のうちのいずれかとの組合せも意図する。
【0053】
表の簡単な説明
表1:遺伝子的に結合体化されたFv3E10−GS3−hMTM1のホスホイノシチドホスファターゼ活性、エンドソームにおける会合および分泌を評価するための実験デザインを示す表である。対照群について予測される何らかの結果を、「yes」または「no」で示唆し;測定されていない結果を、「?」で示唆する。「+」または「−」は、具体的な化合物が試料に存在すること、または不在であることを示唆する。「」は、ホスホイノシチド活性が内因性活性およびhMTM1に依存する活性の関数である、という仮定に予測が基づくことを示唆する。
【0054】
表2:Fv3E10−GS3−hMTM1が、ENTを介して細胞に侵入し、エンドソームタンパク質と会合するかどうかを評価するための実験デザインを示す表である。注記についての表1の説明を参照されたい。「」は、表1の第10〜18群で免疫沈降した場合に限り、試料を免疫沈降させ、免疫ブロットにより検出することを示唆する。「**」は、遺伝子結合体が、Vps34とhMTM1との会合で欠陥を示さない、という仮定に予測が基づくことを示唆する。
【0055】
表3:化学的に結合体化された3E10−MTM1および遺伝子的に結合体化された3E10−MTM1についての、in vivoにおける投与計画を示す表である。投与は、20週間にわたり毎週2回と計画されている。免疫組織化学(IHC)、ヘマトキシリンおよびエオシン染色(H&E)、ならびにタンパク質単離のために血液および組織を回収する。
【発明を実施するための形態】
【0056】
発明の詳細な説明
MTMファミリーのタンパク質は、2つの基本的類型:ホスホイノシチドホスファターゼ活性を呈示するファミリーメンバーと、ホスホイノシチドに結合するが触媒的には不活性なファミリーメンバーとに分けられる。それが突然変異すると、筋細管ミオパシーが結果としてもたらされるMTM1は、触媒的に活性であり、ホスホイノシチドホスファターゼ活性を保有する。MTM1の基質として作用するホスホイノシチドの一部の例には、例えば、ホスファチジルイノシトール3リン酸(PI(3)P)、PI(4)P、PI(5)P、PI(3,4)P、PI(4,5)P、PI(3,5)P、PI(3,4,5)Pのほか、in vitroでのアッセイに有用な合成ホスホイノシチド化合物が含まれるがこれらに限定されない。ある実施形態では、キメラポリペプチドが、前出のホスホイノシチドのうちの任意の1または複数を切断または加水分解することが可能である。ある実施形態では、キメラポリペプチドが、PIP3を切断または加水分解することが可能である。
【0057】
MTM1、ならびに他の類縁のMTMタンパク質(MTMR)は、細胞内輸送の多様な段階のエンドサイトーシス小胞において、個別にまたはヘテロ二量体の形で会合する。MTM1は、MTMR12と会合し、hVps15アダプター分子を介して、GTPアーゼであるRab5およびPI3キナーゼであるhVps34など、他のエンドソームタンパク質と相互作用する。理論に拘束されることなく述べると、MTM1 PIP3ホスファターゼおよびhVps34 PI−3キナーゼの示差的な動員および対立する活性は、エンドサイトーシス小胞の細胞内輸送パターンを方向づける、PIおよびPIP3の一時的な膜内分布を調整しうる。他のMTM類縁タンパク質もホスホイノシチドホスファターゼ活性を保有するが、それらの細胞内局在化は、MTM1の欠損を機能的に補完することが可能である程度に十分にはMTM1の細胞内局在化と重複していない。MTM1の発現は遍在的であるが、骨格筋においてMTM1が不在であるだけで、MTMの病態生理の原因となり(Taylor GSら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2000年8月1日;97巻(16号):8910〜5頁; Bello ABら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2002年11月12日;99巻(23号):15060〜5頁)、これは、正常な骨格筋機能にとって特に肝要である固有の細胞内機能をMTM1のホスホイノシチドホスファターゼ活性が保有することを示唆する。MTM1は、T細管系の縦方向および横方向の構造を維持することに関与していると考えられ、したがって、これらの構造の組織化に欠陥があると、興奮−収縮の結合が損なわれ、MTMの特徴である、その後の筋力低下および筋委縮が結果としてもたらされるであろう(Bello ABら、Human Molecular Genetics、2008年、17巻、14号; Laporte Jら、HUMAN MUTATION、15巻:393〜409頁(2000年); Herman GEら、THE JOURNAL OF PEDIATRICS、134巻、2号; Weisbart RHら、J Immunol.、2000年6月1日;164巻(11号):6020〜6頁)。
【0058】
ある態様では、本開示が、MTM1の欠損に随伴する状態、例えば、筋細管ミオパシーを治療するのに使用しうる、MTM1の結合体(例えば、MTM1またはその生物活性断片を含むキメラポリペプチド)を提供する。本明細書では、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語が、アミノ酸残基のポリマーを指すのに互換的に使用される。該用語は、そのうちの1またはそれより多いアミノ酸残基が対応する自然発生のアミノ酸の人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーのほか、自然発生のアミノ酸ポリマーおよび非自然発生のアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0059】
I.MTM1ポリペプチド
本明細書で使用されるMTM1ポリペプチドには、野生型MTM1ポリペプチドの各種のスプライシングアイソフォーム、変異体、融合タンパク質、および修飾形態が含まれる。このようなMTM1ポリペプチドのアイソフォーム、生物活性断片または変異体、融合タンパク質、および修飾形態は、天然MTM1タンパク質に対する実質的な配列同一性を示すアミノ酸配列の少なくとも一部を有し、天然MTM1タンパク質の少なくとも1つの機能を保持する。ある実施形態では、MTM1ポリペプチドの生物活性断片、変異体、または融合タンパク質は、MTM1ポリペプチド(配列番号1、6、および8のうちの1または複数で表わされるMTM1ポリペプチドなど)と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。本明細書で使用される「断片」とは、本明細書で説明される「生物活性」を呈示する生物活性断片または生物活性変異体を包含すると理解される。すなわち、MTM1の生物活性断片または変異体は、測定して調べることが可能な生物活性を呈示する。例えば、生物活性断片または変異体は、天然(すなわち、野生型または正常)MTM1タンパク質と同じであるかまたは実質的に同じ生物活性を呈示し、このような生物活性は、該断片または変異体が、例えば、当技術分野において公知である内因性ホスホイノシチド基質、もしくはin vitroアッセイの場合の人工的なホスホイノシチド基質を切断もしくは加水分解する能力(すなわち、ホスホイノシチド活性);例えば、GTPアーゼであるRab5、PI 3キナーゼであるVps34もしくはVps15など、他のタンパク質を動員し、かつ/もしくはこれらと会合する能力(すなわち、適正な局在化能);または筋細管ミオパシーを治療する能力により評価することができる。本明細書では、これらの基準のうちのいずれかを評価するための方法が説明される。本明細書で使用される「実質的に同じ」とは、対比して測定される対照の少なくとも70%である任意のパラメータ(例えば、活性)を指す。ある実施形態では、「実質的に同じ」はまた、対比して測定される対照の少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、100%、102%、105%、または110%である任意のパラメータ(例えば、活性)も指す。
【0060】
当技術分野では、MTM1ポリペプチドの構造および各種のモチーフが十分に特徴づけられている(Laporteら、2003年、Human Molecular Genetics、12巻(2号):R285〜R292頁; Laporteら、2002年、Journal of Cell Science、15巻:3105〜3117頁; Lorenzoら、2006年、119巻:2953〜2959頁)。ある実施形態では、例えば、MTM1ポリペプチドをコードする、対応する核酸断片から組換えにより作出されたポリペプチドをスクリーニングすることにより、MTM1ポリペプチドの各種の生物活性断片または変異体を、それ自体としてデザインおよび同定することができる。例えば、MTM1の複数のドメインが、そのホスファターゼ活性または局在化にとって重要であることが示されている。例示を目的として述べると、これらのドメインには、グルコシルトランスフェラーゼ、Rab様GTPase活性化因子およびミオチューブラリン(GRAM;配列番号1のアミノ酸29〜97位または160位まで)、Rac誘導型動員ドメイン(RID;配列番号1のアミノ酸161〜272位)、PTP/DSP相同性ドメイン(配列番号1のアミノ酸273〜471位;触媒性システインは、配列番号1のアミノ酸375位である)、およびSET相互作用ドメイン(SID;配列番号1のアミノ酸435〜486位)が含まれる。したがって、このようなドメインの任意の組合せを構築して、天然MTM1と同じであるかまたは実質的に同じ生物活性を呈示するMTM1の断片または変異体を同定することができる。適切な生物活性断片を使用して、キメラポリペプチドを作出することができ、このようなキメラポリペプチドは、本明細書で説明される方法のうちのいずれにおいても使用することができる。
【0061】
キメラポリペプチドの部分として使用しうる例示的な断片には、例えば、配列番号1の残基29〜486の近傍が含まれる。したがって、ある実施形態では、キメラポリペプチドが、配列番号1の残基29〜486を含む。
【0062】
ある実施形態では、キメラポリペプチドのMTM1部分が、ヒトMTM1の配列に対応する。例えば、キメラポリペプチドのMTM1部分は、配列番号1と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0063】
加えて、断片または変異体は、従来のメリフィールド固相f−Moc化学反応またはメリフィールド固相t−Boc化学反応など、当技術分野で公知の技法を使用して化学合成することができる。断片または変異体を作製(組換えにより、または化学合成により)し、ならびに、例えば、それらが、内因性ホスホイノシチド基質もしくは人工的なホスホイノシチド基質を切断もしくは加水分解する能力(すなわち、ホスホイノシチド活性);例えば、GTPアーゼであるRab5、PI3キナーゼであるhVps34もしくはhVps15など、他のタンパク質を動員し、かつ/もしくはこれらと会合する能力(すなわち、適正な局在化能);または筋細管ミオパシーを治療する能力を調べることによりそれらを調べて、天然MTM1タンパク質と同等に、またはこれと実質的に同等に機能しうる断片または変異体を同定することができる。
【0064】
ある実施形態では、本発明が、治療有効性もしくは予防有効性、または安定性(例えば、ex vivoにおける保管寿命、ならびにin vivoにおけるタンパク質分解による劣化に対する耐性)を増強することなどの目的で、MTM1ポリペプチドの構造を修飾することを意図する。このような修飾MTM1ポリペプチドは、自然発生の(すなわち、天然または野生型の)MTM1ポリペプチドと同じであるかまたは実質的に同じ生物活性を有する。修飾ポリペプチドは、例えば、アミノ酸置換、アミノ酸欠失、またはアミノ酸付加により作製することができる。例えば、ロイシンをイソロイシンもしくはバリンで、アスパラギン酸をグルタミン酸で、トレオニンをセリンで孤発的に置換するか、またはアミノ酸を構造的に類縁のアミノ酸で同様に置換(例えば、保存的突然変異)しても、例えば、結果として得られる分子の生物活性には大きな影響が及ばないと予測することは正当である。保存的置換は、それらの側鎖が類縁であるアミノ酸ファミリー内で生じる置換である。
【0065】
本発明は、MTM1ポリペプチドの組合せによる突然変異体、ならびに切断による突然変異体のセットを生成させることをさらに意図するが、これはとりわけ、生物活性である変異体配列を同定するのに有用である。自然発生のMTM1ポリペプチドと類縁の選択効力を有する、組合せ誘導型変異体を生成させることができる。同様に、突然変異誘発は、細胞内半減期が、対応する野生型のMTM1ポリペプチドとは劇的に異なる変異体をもたらしうる。例えば、改変タンパク質は、対象のタンパク質を結果として破壊するか、または他の形で不活化する、タンパク質分解による劣化または他の細胞過程に対してより安定化される場合もあり、より不安定化される場合もある。それらの半減期を調節することによりMTM1ポリペプチドレベルを変化させるのに、このような変異体を用いることができる。例えば、縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的なMTM1変異体配列のライブラリーを生成させる多くの方法が存在する。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動式DNA合成器で実施することができ、次いで、その合成遺伝子を、適切な遺伝子にライゲーションして発現させることができる。縮重遺伝子セットの目的は、1つの混合物中に、所望される潜在的なポリペプチド配列のセットをコードする配列のすべてを提示することである。当技術分野では縮重オリゴヌクレオチドの合成が周知である(例えば、Narang, SA(1983年)、Tetrahedron、39巻:3頁; Itakuraら(1981年)、「Recombinant DNA」、Proc. 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules、AG Walton編、Amsterdam: Elsevier、273〜289頁; Itakuraら(1984年)、Annu. Rev. Biochem.、53巻:323頁; Itakuraら(1984年)、Science、198巻:1056頁; Ikeら(1983年)、Nucleic Acid Res.、11巻:477頁を参照されたい)。このような技法は、他のタンパク質の指向的漸進変化において採用されている(例えば、Scottら(1990年)、Science、249巻:386〜390頁; Robertsら(1992年)、PNAS USA、89巻:2429〜2433頁; Devlinら(1990年)、Science、249巻:404〜406頁; Cwirlaら(1990年)、PNAS USA、87巻:6378〜6382頁;ならびに米国特許第5,223,409号、同第5,198,346号、および同第5,096,815号を参照されたい)。
【0066】
代替的に、突然変異誘発の他の形態を用いて、組換えライブラリーを生成させることもできる。例えば、MTM1ポリペプチド変異体は、例えば、アラニン走査突然変異誘発など(Rufら(1994年)、Biochemistry、33巻:1565〜1572頁; Wangら(1994年)、J. Biol. Chem.、269巻:3095〜3099頁; Balintら(1993年)、Gene、137巻:109〜118頁; Grodbergら(1993年)、Eur. J. Biochem.、218巻:597〜601頁; Nagashimaら(1993年)、J. Biol. Chem.、268巻:2888〜2892頁; Lowmanら(1991年)、Biochemistry、30巻:10832〜10838頁;およびCunninghamら(1989年)、Science、244巻:1081〜1085頁)を使用してスクリーニングすることにより;リンカー走査突然変異誘発(Gustin ら(1993年)、Virology、193巻:653〜660頁; Brownら(1992年)、Mol. Cell Biol.、12巻:2644〜2652頁; McKnight ら(1982年)、Science、232巻:316頁)により;飽和突然変異誘発(Meyers ら(1986年)、Science、232巻:613頁)により;PCR突然変異誘発(Leungら(1989年)、Method Cell Mol Biol、1巻:11〜19頁)により;または化学的突然変異誘発を含めたランダム突然変異誘発(Miller ら(1992年)、「A Short Course in Bacterial Genetics」、CSHL Press、Cold Spring Harbor、NY; およびGreenerら(1994年)、Strategies in Mol Biol、7巻:32〜34頁)により、ライブラリーから生成させ、かつ単離することができる。特に、組換え状況下におけるリンカー走査突然変異誘発は、MTM1ポリペプチドの切断(生物活性)形態を同定するのに魅力的な方法である。
【0067】
当技術分野では、点突然変異および切断により作出される組換えライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングし、そのために、ある特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするための広範な技法が公知である。このような技法は一般に、MTM1ポリペプチドの組換えによる突然変異誘発を介して生成される遺伝子ライブラリーを迅速にスクリーニングするのに適用可能である。大規模な遺伝子ライブラリーをスクリーニングするのに最も広く使用される技法は、該遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクター内にクローニングするステップと、結果としてもたらされるベクターライブラリーにより適切な細胞を形質転換するステップと、その産物が検出される遺伝子をコードするベクターの比較的容易な単離を、所望の活性を検出することにより容易とする条件下で、該組換え遺伝子を発現させるステップとを含むことが典型的である。以下で説明される例示的アッセイの各々は、組合せ突然変異誘発法により創出される多数の縮重配列をスクリーニングするのに必要なハイスループット解析に好適である。
【0068】
ある実施形態では、MTM1ポリペプチドが、ペプチドおよびペプチド模倣体を包含しうる。本明細書で使用される「ペプチド模倣体」という用語は、自然発生でないアミノ酸、ペプチドなどを含有する、化学修飾ペプチドおよびペプチド様分子を包含する。ペプチド模倣体は、被験体に投与されると、安定性の増強を含め、ペプチドを上回る各種の利点をもたらす。ペプチド模倣体を同定する方法は当技術分野において周知であり、潜在的なペプチド模倣体のライブラリーを含有するデータベースをスクリーニングするステップを包含する。例えば、Cambridge Structural Databaseは、公知の結晶構造を有する300,000を超える化合物のコレクションを含有する(Allenら、Acta Crystallogr. Section B、35巻:2331頁(1979年))。標的分子の結晶構造が利用可能でない場合は、例えば、CONCORDプログラム(Rusinkoら、J. Chem. Inf. Comput. Sci.、29巻:251頁(1989年))を使用して、構造を生成させることができる。別のデータベースであるAvailable Chemicals Directory(Molecular Design Limited,Informations Systems;San Leandro、Calif.)は、市販されている約100,00の化合物を包含し、これを検索してMTM1ポリペプチドの潜在的なペプチド模倣体を同定することもできる。
【0069】
ある実施形態では、MTM1ポリペプチドが、翻訳後修飾をさらに含みうる。例示的な翻訳後タンパク質修飾には、ポリペプチド側鎖または疎水性基のリン酸化、アセチル化、メチル化、ADPリボシル化、ユビキチン化、グリコシル化、カルボニル化、SUMO化、ビオチニル化、または付加が含まれる。結果として、修飾MTM1ポリペプチドは、脂質、多糖または単糖、およびリン酸などの非アミノ酸要素を含有しうる。このような非アミノ酸要素がMTM1ポリペプチドの機能性に対して及ぼす効果を、その生物学的活性、例えば、それが筋細管ミオパシーを治療する能力、またはホスホイノシチド(例えば、PIP3)を切断する能力について調べることができる。天然のMTM1ポリペプチドがグリコシル化されていることを踏まえ、ある実施形態では、本開示によるキメラポリペプチドで使用されるMTM1ポリペプチドをグリコシル化する。ある実施形態では、グリコシル化のレベルおよびパターンが、天然MTM1ポリペプチドと同じであるかまたは実質的に同じである。他の実施形態では、グリコシル化のレベルおよび/またはパターンが、天然MTM1ポリペプチドと異なる(例えば、グリコシル化が過少である、グリコシル化が過剰である、グリコシル化されていない)。
【0070】
本発明の特定の一実施形態では、MTM1ポリペプチドを、非タンパク質性ポリマーにより修飾することができる。特定の一実施形態では、ポリマーが、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号;または同第4,179,337号で示される形のポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンである。PEGは、市販されているか、または当技術分野において周知の方法(SandlerおよびKaro、「Polymer Synthesis」、Academic Press、New York、3巻、138〜161頁)に従い、エチレングリコールを開環重合化することにより調製しうる、周知の水溶性ポリマーである。
【0071】
ある実施形態では、MTM1ポリペプチドの断片または変異体が、天然MTM1ポリペプチドと関連する生物学的活性のうち、少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、または100%を保持することが好ましい。ある実施形態では、MTM1ポリペプチドの断片または変異体の半減期(t1/2)が、該天然タンパク質の半減期と比べて延長されている。半減期が延長される実施形態の場合、MTM1断片またはMTM1変異体の半減期は、天然MTM1タンパク質の半減期と比べて、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、400%、もしくは500%、なおまたは1000%延長される。一部の実施形態では、タンパク質の半減期が、緩衝生理食塩液中または血清中など、in vitroで決定される。他の実施形態では、タンパク質の半減期が、動物の血清または他の体液におけるタンパク質の半減期など、in vivoにおける半減期である。
【0072】
ある態様では、MTM1ポリペプチドが、1またはそれより多い融合ドメインをさらに含む融合タンパク質でありうる。このような融合ドメインの周知の例には、アフィニティークロマトグラフィーにより融合タンパク質を単離するのに特に有用である、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、ならびに免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)が含まれるがこれらに限定されない。アフィニティー精製の目的では、グルタチオン結合体化樹脂、アミラーゼ結合体化樹脂、およびニッケル結合体化樹脂、またはコバルト結合体化樹脂など、アフィニティークロマトグラフィーと関連するマトリックスが使用される。融合ドメインはまた、それに対する特定の抗体が利用可能である短鎖ペプチド配列であることが通常である「エピトープタグ」も包含する。それに対する特定のモノクローナル抗体が容易に利用可能である周知のエピトープタグには、FLAGタグ、インフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)タグ、およびc−mycタグが含まれる。場合によっては、融合ドメインが、関連するプロテアーゼに融合タンパク質を部分的に消化させ、これにより、融合タンパク質から組換えタンパク質を放出させる、因子Xaまたはトロンビンなどのためのプロテアーゼ切断部位を有する。次いで、後続のクロマトグラフィーによる分離を介して、放出されたタンパク質を融合ドメインから単離することができる。ある実施形態では、MTM1ポリペプチドが、それを安定化させることが可能な1またはそれより多い修飾を含有しうる。例えば、このような修飾は、in vitroにおける該ポリペプチドの半減期を延長させるか、該ポリペプチドの循環半減期を延長させるか、または該ポリペプチドのタンパク質分解による劣化を低減する。本発明のキメラポリペプチドのうちの任意の部分にも同様に、エピトープタグを付しうることに注意すべきである。言い換えれば、エピトープタグは、MTM1に付すこともでき、かつ/または内部移行部分に付すこともできる。さらに、キメラポリペプチドは、2つのエピトープタグなど複数のエピトープタグを含む場合もあり、包含するエピトープタグが0の場合もある。
【0073】
一部の実施形態では、MTM1タンパク質が、免疫グロブリンのFc領域の全部または一部を伴う融合タンパク質でありうる。同様に、ある実施形態では、免疫グロブリンのFc領域の全部または一部を、MTM1タンパク質を内部移行部分と連結するためのリンカーとして使用することもできる。公知の通り、免疫グロブリンの各重鎖定常領域は、4つまたは5つずつのドメインを含む。ドメインを以下:CH1−ヒンジ−CH2−CH3−(−CH4)の通りに順次名付ける。重鎖ドメインのDNA配列は、免疫グロブリンクラス間で交差相同性を有する、例えば、IgGのCH2ドメインは、IgAおよびIgDのCH2ドメイン、IgMおよびIgEのCH3ドメインと相同である。本明細書で使用される「免疫グロブリンFc領域」という用語は、免疫グロブリン鎖定常領域、好ましくは免疫グロブリン重鎖定常領域またはその一部のカルボキシル末端部分を意味するものと理解される。例えば、免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン;2)CH1ドメインおよびCH2ドメイン;3)CH1ドメインおよびCH3ドメイン;4)CH2ドメインおよびCH3ドメイン;または5)2つ以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域との組合せを含みうる。好ましい実施形態では、免疫グロブリンFc領域が、少なくとも、免疫グロブリンヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、CH1ドメインを欠くことが好ましい。一実施形態では、重鎖定常領域が由来する免疫グロブリンのクラスが、IgG(Igγ)(γサブクラス1、2、3、または4)である。免疫グロブリンの他のクラスであるIgA(Igα)、IgD(Igδ)、IgE(Igε)、およびIgM(Igμ)もまた使用することができる。適切な免疫グロブリン重鎖定常領域の選択については、米国特許第5,541,087号および同第5,726,044号において詳細に論じられている。ある免疫グロブリンのクラスおよびサブクラスから具体的な免疫グロブリン重鎖定常領域配列を選択して具体的な結果を達成することは、当技術分野のレベル内にあると考えられる。免疫グロブリンFc領域をコードするDNA構築物の部分は、ヒンジドメインの少なくとも一部、好ましくは、FcγのCHドメイン、またはIgA、IgD、IgE、もしくはIgMのうちのいずれかにおける相同的なドメインの少なくとも一部を含むことが好ましい。さらに、免疫グロブリン重鎖定常領域内でアミノ酸を置換または欠失させることは、本発明を実施するのに有用でありうることも意図される。一例を挙げれば、上流のCH2領域内にアミノ酸置換を導入して、Fc受容体に対するアフィニティーが低下したFc変異体を創出することであろう(Coleら(1997年)、J. IMMUNOL.、159巻:3613頁)。当業者は、分子生物学の周知の技法を使用して、このような構築物を調製することができる。
【0074】
II.内部移行部分
本明細書で使用される「内部移行部分」という用語は、標的の組織型または細胞型と相互作用して、結合した分子を細胞内に送達する(すなわち、所望の細胞を透過する;細胞膜を横切って輸送する)ことが可能な部分を指す。ある実施形態では、本開示が、必ずしも排他的にではないが、選択的に筋肉細胞を標的とし、これらを透過する内部移行部分に関する。ある実施形態では、内部移行部分の交差反応性が限定されており、したがって、具体的な細胞型または組織型を優先的に標的とする。ある実施形態では、適切な内部移行部分に、例えば、抗体、モノクローナル抗体、またはそれらの誘導体もしくは類似体が含まれる。他の内部移行部分には、例えば、ホーミングペプチド、融合タンパク質、受容体、リガンド、アプタマー、ペプチド模倣体、ならびに特定の結合対の任意のメンバーが含まれる。ある実施形態では、内部移行部分が、ENT2トランスポーターを介する、細胞膜を隔てた透過を媒介する。
【0075】
(a)抗体
ある態様では、内部移行部分が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびヒト化抗体などの抗体を含みうる。理論により束縛されずに述べると、このような抗体は、標的組織の抗原に結合することが可能であり、したがって、対象のキメラポリペプチドが、該標的組織(例えば、筋肉)へと送達されることを媒介しうる。一部の実施形態では、内部移行部分が、Fv断片、単鎖Fv(scFv)断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、単一ドメイン抗体、ヒト化抗体およびヒト化抗体断片、ならびに前出の多価変化形が含まれるがこれらに限定されない、抗体断片、それらの誘導体または類似体を含みうる。多価の内部移行部分には、ジスルフィド結合により安定化させたFv断片、scFvタンデム((scFv)断片)、scFv断片を典型的には共有結合によるか、または他の形で安定化させた(すなわち、ロイシンジッパーまたはヘリックスにより安定化させた)ダイアボディー、トリボディー、またはテトラボディーなどの単一特異性抗体または二重特異性抗体;所望の標的分子と天然状態で相互作用する受容体分子が含まれるがこれらに限定されない。ある実施形態では、抗体またはそれらの変異体を修飾して、それらが被験体に投与されたときの免疫原性を低下させることができる。例えば、被験体がヒトである場合は、抗体を「ヒト化」することができる;この場合は、例えば、Jones, P.ら(1986年)、Nature、321巻522〜525頁;またはTempestら(1991年)、Biotechnology、9巻、266〜273頁において説明される通り、ハイブリドーマに由来する抗体の相補性決定領域(複数可)が、ヒトモノクローナル抗体内に移植されている。また、トランスジェニックマウスまたは他の哺乳動物を使用して、ヒト化抗体を発現させることもできる。このようなヒト化は、部分的な場合もあり、完全な場合もある。ある実施形態では、抗体がマウス抗体または他の非ヒト抗体であるが、そのヒト性のスコアは、ヒト化が不要である程度に十分である。さらに他の実施形態では、抗体または抗原結合断片が、完全なヒト抗体またはヒト抗原結合断片である。
【0076】
ある実施形態では、内部移行部分が、モノクローナル抗体3E10、その抗原結合断片、またはその単鎖Fv断片を含む。本明細書で使用される「抗体」という用語は、選択された標的に結合することが可能な完全抗体または抗体断片を指す。Fv、scFv、Fab’およびF(ab’)2、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、遺伝子操作抗体、ならびにファージディスプレイ法または代替的な技法を使用して産生される合成抗体または半合成抗体が含まれる。モノクローナル抗体3E10は、組換えにより複製することもでき、American Type Culture Collection(ATCC)受託番号PTA−2439でATCCに永年寄託されているハイブリドーマにより複製することもできる(米国特許第7,189,396号を参照されたい)。さらなる適切な抗体は、3E10と同等であるかもしくは実質的に同じ膜透過活性を有し、かつ/または3E10と同じエピトープに結合し、かつ/または3E10と実質的に同じ抗原結合特性を有する。
【0077】
モノクローナル抗体3E10は、毒性なしに細胞を透過することが示されており、タンパク質および核酸を、標的組織の細胞質腔または核内腔へと送達する手段として、大きな関心を集めている(Weisbart RHら、J Autoimmun.、1998年10月、11巻(5号):539〜46頁; Weisbart RHら、Mol Immunol.、2003年3月、39巻(13号):783〜9頁; Zack DJら、J Immunol.、1996年9月1日、157巻(5号):2082〜8頁)。さらに、3E10のVH配列およびVk配列は、それぞれのヒト性を表わすzスコアが0.943および−0.880であり、ヒト抗体と高度に相同である。したがって、Fv3E10は、他の多くの容認されているヒト化抗体より抗抗体反応を誘導する程度が小さいことが予測される(Abhinandan KRら、Mol. Biol.、2007年、369巻、852〜862頁)。3E10の単鎖Fv断片は、元のモノクローナル抗体のすべての細胞透過能を保有し、カタラーゼ、ジストロフィン、HSP70、およびp53などのタンパク質も、Fv3E10と結合体化された後にそれらの活性を保持する(Hansen JEら、Brain Res.、2006年5月9日、1088巻(1号):187〜96頁; Weisbart RHら、Cancer Lett.、2003年6月10日、195巻(2号):211〜9頁; Weisbart RHら、J Drug Target.、2005年2月、13巻(2号):81〜7頁; Weisbart RHら、J Immunol.、2000年6月1日、164巻(11号):6020〜6頁; Hansen JEら、J Biol Chem.、2007年7月20日、282巻(29号):20790〜3頁)。3E10は、すべての哺乳動物において存在する抗体足場(マウス重鎖可変ドメインおよびマウス軽鎖カッパ可変ドメイン)上に構築する。3E10は、骨格筋および癌細胞において特に豊富なENT2ヌクレオチドトランスポーターを介して細胞に侵入するが、in vitroでの研究は、3E10が非毒性であることを示している(Weisbart RHら、Mol Immunol.、2003年3月、39巻(13号):783〜9頁; Pennycooke Mら、Biochem Biophys Res Commun.、2001年1月26日、280巻(3号):951〜9頁)。骨格筋に対する3E10およびその断片のアフィニティー、ならびに3E10およびMTM1の各種の結合体がそれら各々の活性を維持する能力を踏まえると、組換え3E10−MTM1(ならびに本明細書で説明される他の結合体化変異体)療法は、MTMを治療するための有益な手法を表わす。本明細書で説明される通り、組換え3E10または3E10断片もしくは3E10変異体は、化学的または遺伝子的にヒトMTM1(hMTM1)に結合体化することができ、各結合体の活性は、in vitroで確認することができる。さらに、精製結合体をMTM1欠損マウスに注射することができ、本明細書で説明される通り、疾患表現型の改善を検討することができる。
【0078】
内部移行部分はまた、mAb 3E10と同じであるかまたは実質的に同じ細胞透過特徴を保持する3E10の変異体のほか、その有用性を改善する(例えば、特定の細胞型を標的とする能力の改善、細胞膜を透過する能力の改善、細胞内DNAに局在化する能力の改善、結合アフィニティーの改善など)突然変異により修飾された変異体など、mAb 3E10の突然変異体も包含しうる。このような突然変異体は、1またはそれより多い保存的置換が、抗体の重鎖、軽鎖、および/または定常領域(複数可)に導入された変異体を包含する。mAb 3E10の多数の変異体は、例えば、それらの教示が参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第7,189,396号およびWO2008/091911において特徴づけられている。ある実施形態では、内部移行部分が、3E10のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるか、または3E10の単鎖Fv(例えば、配列番号2および配列番号4を含む単鎖Fv)のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する抗体を含む。ある実施形態では、内部移行部分が、3E10の単鎖Fvを含み、Vドメインのアミノ酸配列が、配列番号2と少なくとも90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であり、Vドメインのアミノ酸配列が、配列番号4と少なくとも90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一である。変異体の3E10またはその断片は、内部移行部分の機能を保持している。
【0079】
ある実施形態では、内部移行部分が、配列番号4と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体または抗原結合断片を含む。ある実施形態では、内部移行部分が、配列番号2と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む抗体または抗原結合断片を含む。ある実施形態では、内部移行部分が、配列番号4と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)、ならびに配列番号2と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一なアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む抗体または抗原結合断片を含む。本発明はとりわけ、前出のVH鎖およびVL鎖の任意の組合せに基づく内部移行部分、例えば、配列番号2と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む内部移行部分を意図する。ある実施形態では、内部移行部分が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むVLとを含む。本明細書で詳述される通り、VHドメインおよびVLドメインは、全長抗体の一部として包含される場合もあり、svFvなどの断片の一部として包含される場合もある。さらに、VHドメインおよびVLドメインは、リンカーにより接合することもでき、直接接合することもできる。いずれの場合も、VHドメインおよびVLドメインは、いずれの方向に接合することもできる(例えば、VLドメインのN末端をVHドメインに接合することもでき、VHドメインのN末端をVLドメインに接合することもできる)。
【0080】
当業者により容易に認識される通り、改変mAb 3E10(例えば、キメラ、ヒト化、CDR移植、完全ヒト、二官能性、抗体ポリペプチド二量体:すなわち、重鎖および軽鎖を含む1本の抗体アームなど、抗体の構成要素である2つのポリペプチド鎖の会合体、またはV抗体ドメイン、V抗体ドメイン、C抗体ドメイン、およびCH1抗体ドメインを含むFab断片、またはVドメインおよびVドメインを含むFv断片(単鎖抗体):例えば、リンカーによりVドメインと連結されたVドメインを含むscFv断片など)もまた、当技術分野で周知の方法により作製することができる。このような抗体はまた、例えば、参照により本明細書に組み込まれるSambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第2版(Cold Spring Harbor Laboratory、1989年);ならびに参照により本明細書に組み込まれるHarlowおよびLane、「Antibodies: A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory、1988年)において説明されるハイブリドーマ法、化学合成法、または組換え法によっても作製することができる。さらに、他の抗体内部移行部分も容易に作出することができ、これらには、げっ歯動物抗体内部移行部分、キメラ抗体内部移行部分、ヒト化抗体内部移行部分、完全ヒト抗体内部移行部分などが含まれうる。
【0081】
当技術分野では、抗体またはそれらの断片(例えば、V−リンカー−Vによりコードされる単鎖Fv断片)の調製が周知である。特に、WO2008/091911では、組換えによりmAb 3E10抗体断片ならびにそれらの結合体(例えば、本明細書で開示されるFv3E10−GS3h−hMTM1)を作製する方法が説明されている。さらに、当技術分野では、抗体のscFv断片を生成させる方法が周知である。本開示の例示的な方法では、(GGGGS)3リンカー(配列番号3)を使用して、3E10 VLドメインと3E10 VHドメインとを接合する。しかし、他のリンカーもまたデザインしうることが理解される。例えば、可撓性のタンパク質領域内で典型的な表面アミノ酸には、Gly、Asn、およびSerが含まれる。Gly、Asn、およびSerを含有するアミノ酸配列の順列であれば、リンカー配列の基準(例えば、疎水性特徴または帯電特徴を最小とする可撓性リンカー配列の基準)を満たすと予測されるであろう。ThrおよびAlaなど、他の中性に近いアミノ酸もまた、リンカー配列で使用することができる。特定の実施形態では、より長いかまたは短いリンカー配列もまた使用しうるが、約15アミノ酸のリンカー配列長を使用して、機能的なタンパク質ドメインに適する分離をもたらすことができる。さらに、ある実施形態では、キメラポリペプチドが、そのMTM1ポリペプチド部分に内部移行部分を接合するさらなるリンカーを包含しうることも理解される。したがって、ある実施形態では、キメラポリペプチドが、2つのリンカーなど、複数のリンカーを包含しうる。キメラポリペプチドが複数のリンカーを包含する実施形態の場合、該リンカーは、独立して選択され、同じ場合もあり異なる場合もあることが理解される。
【0082】
抗体およびそれらの断片の調製はまた、モノクローナル抗体を生成させる、任意の数の周知の方法により達成することもできる。これらの方法は、所望の免疫原(例えば、所望の標的分子またはその断片)により、動物、典型的にはマウスを免疫化するステップを包含することが典型的である。所望の免疫原(複数可)によりマウスを免疫化し、好ましくは、1または複数回にわたり追加投与したら、周知の方法(例えば、モノクローナル抗体作製についての一般的概観については、その一部が参照により本明細書に組み込まれる、Kuby, Janis、「Immunology」、第3版、131〜139頁、W.H. Freeman & Co.(1997年)を参照されたい)に従い、モノクローナル抗体作製用のハイブリドーマを調製およびスクリーニングすることができる。過去数十年間を経て、抗体の作製は、著しく頑健となった。抗体の認識とファージディスプレイ法とを組み合わせるin vitroでの方法により、極めて特異的な結合能を有する抗体を増幅および選択することが可能となる。例えば、参照により本明細書に組み込まれるHolt, L. J.ら、「The Use of Recombinant Antibodies in Proteomics」、Current Opinion in Biotechnology、2000年、11巻:445〜449頁を参照されたい。これらの方法は、従来のモノクローナル抗体調製法によるハイブリドーマの調製よりはるかに煩雑さの度合いが小さい。一実施形態では、ファージディスプレイ法を使用して、所望の標的分子に特異的な内部移行部分を生成させることができる。選択された免疫原に対する免疫反応を動物(マウス、ウサギ、ヤギ、または他の動物など)において誘発し、その反応を追加増幅して、免疫原特異的B細胞集団を増殖させる。メッセンジャーRNAは、これらのB細胞から単離され、場合によって、モノクローナルハイブリドーマ集団またはポリクローナルハイブリドーマ集団から単離する。ポリAプライマー、または所望のV鎖およびV鎖に隣接する配列に特異的であることが典型的なマウス免疫グロブリンに特異的プライマー(複数可)を用いる公知の方法によりこのmRNAを逆転写して、cDNAを得る。VおよびVに特異的なプライマーセットを使用することが典型的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により所望のV鎖およびV鎖を増幅し、これらを、リンカーにより分離した形で、併せてライゲーションする。VおよびVに特異的なプライマーセットは、例えば、Stratagene,Inc.、La Jolla、Californiaから市販されている。構築されたV−リンカー−V産物(scFv断片をコードする)を、PCRにより選択および増幅する。制限部位を含めたプライマーを伴うPCRにより、V−リンカー−V産物の両端に制限部位を導入し、このscFv断片を、適切な表現ベクター(典型的にはプラスミド)内に挿入して、ファージディスプレイを行う。Fab’断片などの他の断片も、ファージディスプレイベクター内にクローニングして、ファージ粒子上において表面発現させることができる。ファージは、ラムダファージなど、任意のファージでありうるが、fdファージおよびM13ファージ、典型的にはM13ファージなどの繊維状ファージであることが典型的である。ある実施形態では、組換えにより抗体または抗体断片を作出する。言い換えれば、抗体の配列が公知であれば(例えば、上記で説明した方法を使用して)、標準的な技法を使用して、組換えによりその抗体を作出することができる。したがって、例えば、ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることにより、3E10と類縁であるかまたは細胞透過(penetrating/transiting)特徴が同等である他の抗体および抗原結合断片を容易に同定することができる。
【0083】
ある実施形態では、内部移行部分を修飾して、プロテアーゼによる切断に対するそれらの耐性を増大させることができる。例えば、(L)型の立体構造にある自然発生のアミノ酸のうちの1または複数を、D型アミノ酸で置換することにより、ポリペプチドを含む内部移行部分の安定性を増大させることができる。各種の実施形態では、内部移行部分のアミノ酸残基のうち、少なくとも1%、5%、10%、20%、50%、80%、90%、または100%がD型の立体構造である。L型アミノ酸からD型アミノ酸に切り替えることにより、消化管内で見出される多くの遍在性ペプチダーゼの消化能が中和される。代替的に、従来のペプチド結合に対する修飾を導入することにより、ペプチド結合を含む内部移行部分の安定性の増強を達成することもできる。例えば、胃または他の消化管において、ならびに血清においてポリペプチドを消化することが公知である多くのタンパク質溶解酵素の効果を回避する目的で、ポリペプチド骨格内に環状鎖を導入することにより、安定性を増強することができる。さらに他の実施形態では、内部移行部分のアミノ酸間に1またはそれより多い右旋性アミノ酸(右旋性フェニルアラニンまたは右旋性トリプトファンなど)を挿入することにより、内部移行部分の安定性の増強を達成することもできる。例示的な実施形態では、このような修飾により、所望の標的分子との相互作用の活性または特異性を損なうことなく、内部移行部分のプロテアーゼ耐性を増大させる。
【0084】
(b)ホーミングペプチド
ある態様では、内部移行部分が、対象のキメラMTM1ポリペプチドを、細胞膜を超えて細胞内に選択的に誘導するホーミングペプチドを含みうる。ある実施形態では、内部移行部分が、対象のキメラMTM1ポリペプチドを、標的組織(例えば、筋肉)に選択的に誘導するホーミングペプチドを含みうる。例えば、ASSLNIAのアミノ酸配列を含むホーミングペプチドにより、筋肉へのキメラポリペプチドの送達を媒介することができる。さらなる例示的なホーミングペプチドは、参照によりその全体において組み込まれるWO98/53804において開示されている。ホーミングペプチドのさらなる例には、核局在化配列Tat48〜60を含むTAT(HIV transactivator of transcription);Drosophila属転写因子のアンテナペディアホメオドメイン(例えば、ホメオドメイン第3ヘリックスのAntp43〜58を含むペネトラチン);ホモアルギニンペプチド(例えば、Arg7ペプチド−PKC−εアゴニストによるラット虚血心の保護);アルファヘリックスペプチド;陽イオン性ペプチド(「正に超帯電」したタンパク質)が含まれる。
【0085】
加えて、当技術分野において周知である各種の方法を使用して、標的組織(または内臓)のホーミングペプチドを同定することもできる。具体的な標的組織に対して選択的なホーミングペプチドが同定されたら、これをある実施形態で使用することができる。
【0086】
例示的な方法は、in vivoにおけるファージディスプレイ法である。とりわけ、ファージの表面タンパク質を伴う融合ペプチドとしてランダムなペプチド配列を表現させ、このランダムなペプチドライブラリーを全身の循環内に注入する。宿主マウス内に注入した後、標的の組織または内臓を摘出し、次いで、ファージを単離して増殖させ、この注射手順をさらに2回にわたり反復する。注射されるウイルスは、組織に無作為に結合するか、または非標的組織に特異的に結合する可能性を有するので、注射の各ラウンドは、デフォルトで、陰性選択のための構成要素を包含する。選択過程により、非標的組織に特異的に結合するウイルス配列が迅速に除去される一方、選択のラウンドごとに、非特異的に結合するファージの数が減少する。多くの試験所では、脳、腎臓、肺、皮膚、膵臓、腸、子宮、副腎、網膜、筋肉、前立腺、または腫瘍の血管系に選択的なホーミングペプチドが同定されている。例えば、Samoylovaら、1999年、Muscle Nerve、22巻:460頁; Pasqualiniら、1996年、Nature、380巻:364頁; Koivunenら、1995年、Biotechnology、13巻:265頁; Pasqualiniら、1995年、J. Cell Biol.、130巻:1189頁; Pasqualiniら、1996年、Mole. Psych.、1巻:421、423頁; Rajotteら、1998年、J. Clin. Invest.、102巻:430頁; Rajotteら、1999年、J. Biol. Chem.、274巻:11593頁を参照されたい。また、米国特許第5,622,699号;同第6,068,829号;同第6,174,687号;同第6,180,084号;同第6,232,287号;同第6,296,832号;同第6,303,573号;同第6,306,365号も参照されたい。
【0087】
III.キメラポリペプチド
本発明のキメラポリペプチドは、各種の方式で作出することができる。ある実施形態では、MTM1ポリペプチドのC末端を、内部移行部分(例えば、抗体またはホーミングペプチド)のN末端と連結することができる。代替的に、内部移行部分(例えば、抗体またはホーミングペプチド)のC末端を、MTM1ポリペプチドのN末端と連結することもできる。例えば、MTM1ポリペプチドを、mAb 3E10の抗体重鎖または抗体軽鎖のアミノ末端またはカルボキシ末端に配置するように、キメラポリペプチドをデザインすることができる。ある実施形態では、潜在的な立体構造が、結合されるMTM1ポリペプチドの機能的完全性を維持するのに必要とされる、抗体の重鎖配列および軽鎖配列の切断部分(例えば、mAb 3E10)の使用を包含する。さらにまた、MTM1またはその変異体の露出された内部(非末端)残基に内部移行部分を連結することもできる。さらなる実施形態では、MTM1−内部移行部分による立体構造の任意の組合せを用いることができ、これにより、1:1を超える(例えば、1つの内部移行部分に対して2つのMTM1分子)MTM1:内部移行部分比が結果としてもたらされる。
【0088】
MTM1ポリペプチドおよび内部移行部分は、互いと直接結合体化することができる。代替的に、各ドメインが、その二次構造および三次構造に適正な形で折りたたまれることを確保するのに十分な距離だけ、MTM1ポリペプチドと内部移行部分とを分離するリンカー配列を介して、これらを互いと連結することもできる。好ましいリンカー配列は、(1)可撓性の伸展型立体配座を取るべきであり;(2)MTM1ポリペプチドまたは内部移行部分の機能的ドメインと相互作用しうる、秩序化された二次構造を発生させる傾向を呈示すべきではなく;(3)機能的なタンパク質ドメインとの相互作用を促進しうる、疎水性特徴または帯電特徴を最小限とすべきである。可撓性のタンパク質領域内で典型的な表面アミノ酸には、Gly、Asn、およびSerが含まれる。Gly、Asn、およびSerを含有するアミノ酸配列の順列であれば、上記のリンカー配列の基準を満たすと予測されるであろう。ThrおよびAlaなど、他の中性に近いアミノ酸もまた、リンカー配列で使用することができる。特定の実施形態では、より長いかまたは短いリンカー配列もまた使用しうるが、約15アミノ酸のリンカー配列長を使用して、機能的なタンパク質ドメインに適する分離をもたらすことができる。MTM1ポリペプチドと内部移行部分とを分離するリンカー配列の長さは、5〜500アミノ酸の長さである場合もあり、より好ましくは5〜100アミノ酸の長さである場合もある。リンカー配列は、約5〜30アミノ酸の長さであることが好ましい。好ましい実施形態では、リンカー配列が、約5〜約20アミノ酸であり、約10〜約20アミノ酸であることが有利である。他の実施形態では、MTM1ポリペプチドを内部移行部分と接合するリンカーは、抗体の定常領域(例えば、mAb 3E10の定常ドメイン、または別の抗体のFc領域の全部もしくは一部)でありうる。例として述べると、MTM1を内部移行部分と接合するリンカーは、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号10)である。ある実施形態では、リンカーが切断可能なリンカーである。上述の通り、キメラポリペプチドは、内部移行部分をMTMポリペプチドに接合するリンカー、ならびに内部移行部分の一部を互いと接合するリンカー(例えば、単鎖Fv断片のVHドメインとVLドメインとを接合するリンカー)など、複数のリンカーを包含しうる。キメラポリペプチドが2つのリンカーなど複数のリンカーを包含する場合、リンカーは独立して選択され、これらは同じ場合もあり、異なる場合もある。
【0089】
ある実施形態では、周知の架橋試薬および架橋プロトコールを使用して、本発明のキメラポリペプチドを生成させることができる。例えば、当業者に公知であり、MTM1ポリペプチドを内部移行部分(例えば、抗体)と架橋するのに有用な、多数の化学的架橋剤が存在する。例えば、架橋剤は、分子を段階的に連結するのに用いうるヘテロ二官能性の架橋剤である。ヘテロ二官能性の架橋剤は、タンパク質を結合体化し、これにより、ホモタンパク質ポリマーなど、望ましくない副次的反応の発生を低減する、より特異的な結合法をデザインすることを可能とする。当技術分野では、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS);N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC);4−スクシンイミジルオキシカルボニル−a−メチル−a−(2−ピリジルジチオ)−トルエン(SMPT)、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート]ヘキサノエート(LC−SPDP)を含め、多種多様のヘテロ二官能性の架橋剤が公知である。N−ヒドロキシスクシンイミド部分を有するこれらの架橋剤は、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド類似体として得ることができ、これらは一般に、水溶性が大きい。加えて、この代わりに、in vivoにおけるリンカーの切断量を低減するよう、連結鎖内にジスルフィド架橋を有する架橋剤をアルキル誘導体として合成することもできる。ヘテロ二官能性架橋剤に加えて、ホモ二官能性架橋剤および光反応性架橋剤を含め、他の多数の架橋剤も存在する。スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)、ビスマレイミドヘキサン(BMH)、およびピメルイミド酸ジメチル2HCl(DMP)が、本発明で使用するのに有用なホモ二官能性架橋剤の例であり、ビス−[B−(4−アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド(BASED)およびN−スクシンイミジル−6(4’−アジド−2’−ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート(SANPAH)が、本発明で使用するのに有用な光反応性架橋剤の例である。近年におけるタンパク質結合法の総説については、参照により本明細書に組み込まれるMeans ら(1990年)、Bioconjugate Chemistry.、1巻:2〜12頁を参照されたい。
【0090】
上記に含まれる、ヘテロ二官能性架橋剤の1つの特に有用なクラスは、一級アミン反応基であるN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはその水溶性の類似体であるN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホNHS)を含有する。一級アミン(リシンのイプシロン基)は、アルカリ性のpHに置かれると脱プロトン化し、NHSエステルまたはスルホNHSエステルに対する求核攻撃により反応する。この反応の結果、アミド結合が形成され、副生成物としてNHSまたはスルホNHSが放出される。ヘテロ二官能性架橋剤の一部として有用な別の反応基は、チオール反応基である。一般的なチオール反応基には、マレイミド、ハロゲン、およびピリジルジスルフィドが含まれる。マレイミドは、弱い酸性〜中性(pH6.5〜7.5)の条件下、数分間で遊離スルフヒドリル(システイン残基)と特異的に反応する。ハロゲン(ヨードアセチル官能基)は、生理学的pHで−SH基と反応する。これらの反応基のいずれもが、安定的なチオエーテル結合の形成を結果としてもたらす。ヘテロ二官能性架橋剤の第3の構成要素は、スペーサーアームまたは架橋である。架橋は、2つの反応性末端を接続する構造である。架橋の最も明らかな属性は、立体障害性に対するその効果である。場合によっては、架橋が長くなると、2つの複合体生体分子を連結するのに必要な距離をより容易に隔てさせることができる。
【0091】
ヘテロ二官能性試薬を使用してタンパク質結合体を調製する過程は、アミン反応およびスルフヒドリル反応を伴う2段階の過程である。第1の段階であるアミン反応では、選択されるタンパク質が、一級アミンを含有するものとする。この一級アミンは、大半のタンパク質のN末端に見出されるリシンイプシロンアミンの場合もあり、一級アルファアミンの場合もある。タンパク質は、遊離スルフヒドリル基を含有しないものとする。結合体化される両方のタンパク質が遊離スルフヒドリル基を含有する場合は、例えば、N−エチルマレイミドを使用してすべてのスルフヒドリルが保護されるように、1つのタンパク質を修飾することができる(参照により本明細書に組み込まれるPartisら(1983年)、J. Pro. Chem.、2巻:263頁を参照されたい)。エルマン試薬を使用して、具体的なタンパク質におけるスルフヒドリルの量を計算することができる(参照により本明細書に組み込まれる、Ellmanら(1958年)、Arch. Biochem. Biophys.、74巻:443頁;およびRiddlesら(1979年)、Anal. Biochem.、94巻:75頁を参照されたい)。
【0092】
ある特定の実施形態では、汎用担体系を使用することにより、本発明のキメラポリペプチドを作製することができる。例えば、MTM1ポリペプチドを、プロテインA、ポリ−L−リシン、ヘキサヒスチジンなどの共通の担体に結合体化することができる。次いで、結合体化された担体は、内部移行部分として作用する抗体と共に複合体を形成する。免疫グロブリンに結合する一因となる担体分子の小部分であれば、担体として使用することができるであろう。
【0093】
ある実施形態では、Bodansky, M.、「Principles of Peptide Synthesis」、Springer Verlag、Berlin(1993年);およびGrant G. A.(編)、「Synthetic Peptides: A User’s Guide」、W. H. Freeman and Company、New York(1992年)において説明される技法などの標準的なタンパク質化学法を使用することにより、本発明のキメラポリペプチドを作製することができる。加えて、自動式ペプチド合成器も市販されている(例えば、Advanced ChemTech Model 396; Milligen/Biosearch 9600)。MTM1を内部移行部分に化学的に結合体化する前出の架橋法のいずれにおいても、切断ドメインまたは切断リンカーを使用することができる。切断により、内部移行部分とMTM1ポリペプチドとの分離が可能となる。例えば、キメラポリペプチドが細胞を透過した後で、切断リンカーが切断されれば、内部移行部分からのMTM1の分離が可能となるであろう。
【0094】
ある実施形態では、1つの連続したポリペプチド鎖として発現されるMTM1ポリペプチドおよび内部移行部分(例えば、抗体またはホーミングペプチド)を含有する融合タンパク質として、本発明のキメラポリペプチドを生成させることができる。本明細書では、このようなキメラポリペプチドを、組換え結合体化されたキメラポリペプチドと称する。このような融合タンパク質を調製する場合は、MTM1ポリペプチドおよび内部移行部分、ならびに場合によって、該MTM1ポリペプチドと該内部移行部分とを隔てるペプチドリンカー配列をコードする核酸を含む融合遺伝子を構築する。翻訳産物を所望の融合タンパク質とする融合遺伝子を創出する組換えDNA法の使用は、当技術分野において周知である。タンパク質産物の機能的特性、作出されるタンパク質の量、またはその中でタンパク質が生成される細胞型を変化させる目的で、遺伝子のコード配列ならびにその制御領域の両方のデザインを変化させることができる。例えば、融合タンパク質をコードする新規のハイブリッド遺伝子を生成させる異なる遺伝子のコード配列にその一部を融合させることにより、遺伝子のコード配列を大幅に改変することができる。融合タンパク質を作製する方法の例については、参照により本明細書に組み込まれる、PCT出願であるPCT/US87/02968、PCT/US89/03587、およびPCT/US90/07335のほか、Trauneckerら(1989年)、Nature、339巻:68頁において説明されている。本質的に述べると、ライゲーションのための平滑末端または粘着末端、適切な末端をもたらす制限酵素による消化、必要に応じた付着末端の充填、望ましくない接合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、ならびに酵素によるライゲーションを用いる従来の技法に従い、異なるポリペプチド配列をコードする各種のDNA断片の接合を実施する。代替的には、自動式DNA合成器を含めた従来の技法により、融合遺伝子を合成することができる。別の方法では、2つの連続する遺伝子断片間で相補的な突出をもたらし、その後、これをアニーリングしてキメラ遺伝子配列を生成させる、アンカープライマーを使用して、遺伝子断片のPCR増幅を行うことができる(例えば、「Current Protocols in Molecular Biology」、Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992年を参照されたい)。当技術分野において周知である各種の発現系を使用する組換えにより、融合遺伝子によりコードされるキメラポリペプチドを作製することができる(以下もまた参照されたい)。
【0095】
組換えにより結合体化されるキメラポリペプチドには、MTM1ポリペプチドを内部移行部分のN末端またはC末端と結合体化する実施形態が含まれる。
【0096】
一部の実施形態では、米国特許公開第2003/0166877号において説明される通り、キメラポリペプチドを隔てる接合領域内の候補T細胞エピトープを同定し、該接合領域内のアミノ酸を変化させることにより、キメラポリペプチドの免疫原性を低減することができる。
【0097】
本発明のキメラポリペプチドは、様々な形で使用される。例えば、キメラポリペプチドを使用して、MTM1が内因的に結合するタンパク質、またはMTM1の基質など、MTM1の結合パートナーを同定することができる。キメラポリペプチドはまた、MTM1欠損骨格筋細胞などの骨格筋細胞を画像化し、野生型骨格筋細胞またはMTM1欠損骨格筋細胞におけるMTM1の細胞内局在化を研究するのにも用いることができる。キメラポリペプチドはまた、動物またはヒト患者における欠損細胞内のMTM1タンパク質を置換する療法の一部として用いることもできる。キメラポリペプチドは、単独で、または筋細管ミオパシーを治療する治療レジメンの一部として使用することができる。
【0098】
IV.MTM1類縁核酸および発現
ある実施形態では、本発明が、MTM1ポリペプチド(その生物活性断片、変異体、および融合体を含めた)を作製するのに核酸を使用する。ある特定の実施形態では、該核酸が、本発明の組換えキメラタンパク質を作出するのに、内部移行部分(例えば、抗体またはホーミングペプチド)をコードするDNAをさらに含みうる。これらの核酸すべてを集合的に、MTM1核酸と称する。
【0099】
該核酸は、一本鎖の場合もあり二本鎖の場合もあり、DNA分子の場合もありRNA分子の場合もある。ある実施形態では、本開示が、MTM1ヌクレオチド配列領域(例えば、配列番号5、7、および9)と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一である、単離核酸配列または組換え核酸配列に関する。さらなる実施形態では、MTM1核酸配列が、単離されているか、組換えであるか、かつ/または異種ヌクレオチド配列と融合されている場合もあり、DNAライブラリー内の場合もある。
【0100】
ある実施形態では、MTM1核酸がまた、高度に厳密な条件下で、上述の天然MTM1ヌクレオチド配列のうちのいずれかまたはその相補体配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列も包含する。当業者は、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切な厳密性の条件を変化させうることを容易に理解するであろう。例えば、約45℃で6.0倍濃度の塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)においてハイブリダイゼーションを実施した後、50℃で約2.0×SSCにより洗浄することが可能であろう。例えば、洗浄ステップにおける塩濃度は、50℃で約2.0×SSCである低度の厳密性〜50℃で約0.2×SSCである高度の厳密性から選択することができる。加えて、洗浄ステップにおける温度は、約22℃の室温における低度の厳密性条件から、約65℃における高度の厳密性条件に上昇させることもできる。温度および塩分の両方を変化させることもでき、他の変数を変化させる一方で、温度または塩濃度を一定に保つこともできる。一実施形態では、本発明が、室温で6×SSCによる低度の厳密性条件下でハイブリダイズした後、室温で2×SSCにより洗浄される核酸を提供する。
【0101】
遺伝子コードにおける縮重のために天然MTM1核酸と異なる単離核酸もまた、本発明の範囲内にある。例えば、複数のトリプレットにより指定される核酸は数多い。同じアミノ酸またはシノニム(例えば、CAUとCACとはヒスチジンのシノニムである)を指定するコドンは、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント」突然変異を結果としてもたらしうる。しかし、哺乳動物細胞間には、対象タンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらすDNA配列多型が存在すると予測される。天然の対立遺伝子変異に起因して、所与の種の個体間では、具体的なタンパク質をコードする核酸のうちの1またはそれより多いヌクレオチド(該ヌクレオチドのうち、最大で約3〜5%)にこれらの変異が存在しうることを当業者は理解するであろう。任意かつすべてのこのようなヌクレオチド変異、ならびに結果としてもたらされるアミノ酸多型は、本発明の範囲内にある。
【0102】
ある実施形態では、組換えMTM1核酸を、発現構築物における1またはそれより多い制御ヌクレオチド配列と作動可能に連結することができる。制御ヌクレオチド配列は一般に、発現に使用される宿主細胞に適切である。当技術分野では、各種の宿主細胞に適切な多くの種類の発現ベクターならびに適切な制御配列が公知である。前記1またはそれより多い制御ヌクレオチド配列には、プロモーター配列、リーダー配列またはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および転写終結配列、翻訳開始配列および翻訳終結配列、ならびにエンハンサー配列またはアクチベーター配列が含まれうるがこれらに限定されない。当技術分野において公知の構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターが、本発明により意図される。プロモーターは、自然発生のプロモーターの場合もあり、複数のプロモーターのエレメントを組み合わせるハイブリッドプロモーターの場合もある。発現構築物は、細胞内の、プラスミドなどのエピソームに存在する場合もあり、染色体内に挿入される場合もある。好ましい実施形態では、発現ベクターが、形質転換された宿主細胞の選択を可能とする選択マーカー遺伝子を含有する。当技術分野では、選択マーカー遺伝子が周知であり、使用される宿主細胞と共に変化する。ある態様では、本発明が、MTM1ポリペプチドをコードし、少なくとも1つの制御配列と作動可能に連結されるヌクレオチド配列を含む発現ベクターに関する。制御配列は当技術分野で認知されており、コードされるポリペプチドの発現を誘導するように選択される。したがって、制御配列という用語は、プロモーター、エンハンサー、ならびに他の発現制御エレメントを包含する。例示的な制御配列は、Goeddel、「Gene Expression Technology: Methods in Enzymology」、Academic Press、San Diego、CA(1990年)において説明されている。発現ベクターのデザインが、形質転換される宿主細胞の選択、および/または発現が所望されるタンパク質の種類などの因子に依存しうることを理解すべきである。さらに、ベクターによるコピー数、このコピー数を制御する能力、ならびに抗生剤マーカーなど、ベクターによりコードされる他の任意のタンパク質の発現もまた考慮すべきである。
【0103】
本発明はまた、本発明のMTM1ポリペプチド、内部移行部分、またはキメラポリペプチドをコードする組換え遺伝子をトランスフェクトした宿主細胞にも関する。宿主細胞は、原核細胞の場合もあり、真核細胞の場合もある。例えば、MTM1ポリペプチドまたはキメラポリペプチドは、E. coliなどの細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルスによる発現系を用いる)、酵母細胞、または哺乳動物細胞で発現させることができる。当業者には、他の適切な宿主細胞も公知である。
【0104】
本発明は、本発明のMTM1ポリペプチド、内部移行部分、および/またはキメラポリペプチドを作製する方法にさらに関する。例えば、MTM1ポリペプチド、内部移行部分、またはキメラポリペプチドをコードする発現ベクターをトランスフェクトした宿主細胞を適切な条件下で培養して、該ポリペプチドを発現させることができる。それを含有する細胞および培地の混合物から、ポリペプチドを分泌させ、単離することができる。代替的に、ポリペプチドを細胞質または膜画分内に保持して、細胞を採取し、溶解させ、タンパク質を単離することもできる。細胞培養物は、宿主細胞、培地、および他の副産物を包含する。当技術分野では、細胞培養に適する培地が周知である。イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、ならびにポリペプチド(例えば、MTM1ポリペプチド)の具体的なエピトープに特異的な抗体によるイムノアフィニティー精製を含めた、タンパク質を精製するのに当技術分野で公知の技法を使用して、細胞培地、宿主細胞、またはこれらの両方からポリペプチドを単離することができる。好ましい実施形態では、ポリペプチドが、その精製を容易とするドメインを含有する融合タンパク質である。
【0105】
クローニングされた遺伝子またはその一部を、原核細胞、真核細胞(酵母細胞、鳥類細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞)、またはこれらの両方において発現させるのに適するベクターにライゲーションすることにより、組換えMTM1核酸を作製することができる。組換えポリペプチドを作製するための発現媒体には、プラスミドおよび他のベクターが含まれる。例えば、適切なベクターには、E. coliなどの原核細胞内で発現させるための、pBR322に由来するプラスミド、pEMBLに由来するプラスミド、pEXに由来するプラスミド、pBTacに由来するプラスミド、ならびにpUCに由来するプラスミドといった種類のプラスミドが含まれる。好ましい哺乳動物発現ベクターは、細菌内でのベクター増殖を促進するための原核細胞配列、ならびに真核細胞内で発現する1またはそれより多い真核細胞転写単位の両方を含有する。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neo、およびpHygに由来するベクターが、真核細胞をトランスフェクトするのに適する哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのうちの一部は、原核細胞および真核細胞の両方における複製および薬剤耐性による選択を容易とする目的で、pBR322などの細菌プラスミドに由来する配列により修飾されている。代替的に、ウシパピローマウイルスの誘導体(BPV−1)、またはエプスタイン−バーウイルスの誘導体(pHEBo、pREPに由来する誘導体、およびp205)などのウイルス誘導体を使用して、真核細胞においてタンパク質を一過性発現させることもできる。当技術分野では、プラスミドを調製し、宿主生物を形質転換するのに用いられる各種の方法が周知である。原核細胞および真核細胞のいずれにも適する他の発現系、ならびに一般的な組換え手順については、「Molecular Cloning A Laboratory Manual」、第2版、Sambrook、Fritsch、およびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年)、16および17章を参照されたい。場合によっては、バキュロウイルスによる発現系を使用することにより組換えポリペプチドを発現させることが望ましいこともある。このようなバキュロウイルスによる発現系の例には、pVLに由来するベクター(pVL1392、pVL1393、およびpVL941など)、pAcUWに由来するベクター(pAcUW1など)、ならびにpBlueBacに由来するベクター(β−ガラクトシダーゼ(β−gal)を含有するpBlueBac IIIなど)が含まれる。
【0106】
融合遺伝子を作出する技法は周知である。本質的に述べると、ライゲーションのための平滑末端または粘着末端、適切な末端をもたらす制限酵素による消化、適切な場合の付着末端の充填、望ましくない接合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、ならびに酵素によるライゲーションを用いる従来の技法に従い、異なるポリペプチド配列をコードする各種のDNA断片の接合を実施する。別の実施形態では、自動式DNA合成器を含めた従来の技法により、融合遺伝子を合成することができる。別の方法では、2つの連続する遺伝子断片間で相補的な突出をもたらし、その後、これをアニーリングしてキメラ遺伝子配列を生成させる、アンカープライマーを使用して、遺伝子断片のPCR増幅を行うことができる(例えば、「Current Protocols in Molecular Biology」、Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992年を参照されたい)。
【0107】
キメラポリペプチドは、多くの方式で作出しうることを理解すべきである。例えば、MTM1ポリペプチドおよび内部移行部分は、それら各々のタンパク質をコードする核酸構築物に由来する2つの個別の細胞培養物中で組換えにより作製するなど、個別に作出することができる。作出されたタンパク質は、直接にまたはリンカーを介して、化学的に結合体化することができる。別の例として述べると、その中で、場合によって、1またはそれより多いリンカーを含めた全キメラポリペプチドが、MTM1ポリペプチドおよび内部移行部分の両方をコードするヌクレオチド配列を包含する核酸構築物から作出されるインフレームの融合体として、キメラポリペプチドを作出することができる。
【0108】
V.治療方法
ある実施形態では、本発明が、筋細管ミオパシーなど、ミオチューブラリン1(MTM1)タンパク質が欠損するかまたは非機能性であることに随伴する状態を治療する方法を提供する。これらの方法は、それを必要とする個体に、治療有効量の、上記で説明したキメラポリペプチドを投与するステップを伴う。とりわけ、該方法は、(a)ミオチューブラリン(MTM1)ポリペプチドまたはその生物活性断片と、(b)内部移行部分とを含むキメラポリペプチドを投与するステップを含む。これらの方法は、動物、ならびに、より具体的に述べると、ヒトの治療的処置および予防的処置を特に目的とする。
【0109】
MTMは、出生50,000人当たりで男性1人の推定発生率で発生し、ホスホイノシチドホスファターゼであるMTM1が欠損することにより引き起こされる、まれで重度のX連鎖筋障害である(Bello ABら、Human Molecular Genetics、2008年、17巻、14号)。出生時に重度の低血圧および呼吸困難を伴うMTM患者、ならびに新生児期を延命するMTM患者は、換気装置の支持に全面的または部分的に依存することが多い(Taylor GSら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2000年8月1日;97巻(16号):8910〜5頁; Bello ABら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2002年11月12日;99巻(23号):15060〜5頁; Pierson CRら、Neuromuscul Disord.、2007年7月;17巻(7号):562〜568頁; Herman GEら、THE JOURNAL OF PEDIATRICS、134巻、2号)。MTMを伴う患者は、運動発達の遅延を呈示し、脊柱側彎症、不正咬合、幽門狭窄、球状赤血球症、ならびに胆石および腎臓結石などの合併症にかかりやすいが、身長の伸びおよび知能は正常であり、病状は非進行性の経過をたどる(Herman GEら、THE JOURNAL OF PEDIATRICS、134巻、2号)。さらなる合併症は、MTM患者が、重度であり、致死的ですらある呼吸器感染症に特にかかりやすいことである。理論に束縛されることなく述べると、これらの呼吸器感染症は、個体が粘液を生成させ、かつ除去する能力が低下するほか、長期にわたる換気装置の使用により引き起こされる肺組織の萎縮に起因しうる。新生児MTM患者の平均入院期間は約90日間であり、長期にわたる換気補助および自宅でのケアが必要であるほか、合併症に随伴する費用により、患者および家族にはかなりの人的負担および経済的負担が賦課される。
【0110】
MTMは、ホスホイノシチドホスファターゼ活性を呈示するか、または代替的に、ホスホイノシチドに結合するが、触媒的には不活性である、類縁タンパク質のファミリーである。MTM1、ならびに他の類縁のMTMタンパク質(MTMR)は、細胞内輸送の多様な段階にあるエンドサイトーシス小胞において、個別にまたはヘテロ二量体の形で会合する。MTM1は、MTMR12と会合し、Vps15アダプター分子を介して、GTPアーゼであるRab5ならびにPI3キナーゼであるVps34など、他のエンドソームタンパク質と相互作用する。MTM1 PIP3ホスファターゼおよびVps34 PI−3キナーゼの示差的な動員および対立する活性は、エンドサイトーシス小胞の細胞内輸送パターンを方向づける、PIおよびPIP3の一時的な膜内分布を調整する可能性が高い。他のMTM類縁タンパク質もPIP3ホスファターゼ活性を保有するが、それらの細胞内局在化は、MTM1の不在を機能的に補完することが可能である程度に十分にはMTM1の細胞内局在化と重複していない。MTM1の発現は遍在的であるが、骨格筋においてMTM1が不在であるだけで、MTMの病態生理の原因となり(Blondeau Fら、Hum Mol Genet.、2000年9月22日;9巻(15号):2223〜9頁; Taylor GSら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2000年8月1日;97巻(16号):8910〜5頁; Bello ABら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2002年11月12日;99巻(23号):15060〜5頁)、これは、正常な骨格筋機能にとって特に肝要である固有の細胞内機能をMTM1のPIP3ホスファターゼ活性が保有することを示唆する。MTM1は、T細管系の縦方向および横方向の構造を維持することに関与していると推定され、したがって、これらの構造の組織化に欠陥があると、興奮−収縮の結合が損なわれ、その後の筋力低下および筋委縮が結果としてもたらされるであろう(Bello ABら、Human Molecular Genetics、2008年、17巻、14号; Laporte Jら、HUMAN MUTATION、15巻:393〜409頁(2000年); Herman GEら、THE JOURNAL OF PEDIATRICS、134巻、2号)。
【0111】
具体的なエンドソーム区画の固有性が、PIならびにそのリン酸化形態についての規定の比率および分布として存在しうることを踏まえると、PI−3キナーゼを遮断し、かつ/または代替的にPIP4(また、「PI(4)P」)、PIP5(また、「PI(5)P」)、もしくはPIP4,5(また、「PI(4,5)P」)を増大させる治療手法により、MTMに対する治療的特異性が付与される可能性は低い。MTM1、MTMR1、およびMTMR2は、類縁性が最も密接なホスホイノシチドホスファターゼであり、骨格筋内で発現しており、このことは、他のMTMRを薬理学的に上方制御するならば、MTMに対する補完的利益がもたらされうることを示唆する。しかし、MTMR1、MTMR2、およびMTM1の細胞内局在化は、重複が十分ではなく(Lorenzo Oら、Journal of Cell Science、119巻、2953〜2959頁、2005年)、シャルコー−マリー−トゥース4B型劣性脱髄性運動感覚神経障害(CMT4B)におけるMTMR2の突然変異は、MTMの場合とは極めて異なる病理学的症状および臨床症状を提示する。したがって、MTMR2または他のMTM類縁タンパク質が補完的に上方制御されても、MTM1の欠損を治療的に補完することが、仮になされるとしてもそれはわずかであるに過ぎない可能性が高い。停止コドンのリードスルーに基づくmRNAレスキュー法は、MTM患者の約20%には有効でありうるが、エクソンスキッピングに基づく技法が、欠失およびスプライス部位の突然変異を保有する約50%の患者に有用であることは示唆されていない(Laporte Jら、HUMAN MUTATION、15巻:393〜409頁(2000年))。IGF投与、ミオスタチンの阻害、またはAKTの活性化に基づく手法であれば、MTMの根底をなす生化学的欠陥は是正されず、MTMにおいて存在しうる任意の発育不全性シグナル伝達に対する反作用が生じうるであろう。
【0112】
遺伝子治療、幹細胞療法、または組換え静脈内療法を介して骨格筋にMTM1を復元する手法が、MTMに望ましい治療戦略である。ある実施形態では、本開示が、MTMを治療する方法で使用するのに適するキメラポリペプチドを提供する。例示的なキメラポリペプチドは、(a)MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片と、(b)内部移行部分とを含む。ある実施形態では、内部移行部分が、筋肉細胞を選択的にキメラポリペプチドの標的とし、かつ/またはENT2トランスポーターを介して細胞膜を通過する。
【0113】
組換えMTM1の静脈内送達は、用量に最大限の柔軟性を与えることが可能であり、輸送障壁が発生することはほとんどない。例えば、静脈内MTM1の用量が有効となるように滴定することもでき、具体的な患者が副作用を受ける場合は休薬することもできる。
【0114】
MTM1は、細胞質酵素であり、固有の筋肉内部移行部分を有するわけではないので、骨格筋の筋細胞膜を透過し、適切な細胞質区画に到達するように、MTM1を細胞透過タンパク質に結合体化することができる。MTM1は、GSTおよび6−Hisなどの精製タグ(Kim SAら、J. Biol. Chem.、277巻、6号、4526〜4531頁、2002年2月8日)、赤色蛍光タンパク質および緑色蛍光タンパク質などの蛍光レポーター(Chaussade Cら、Molecular Endocrinology、17巻(12号):2448〜2460頁、2003年)へのN末端遺伝子およびC末端遺伝子の結合体化など、度重なる遺伝子融合後にもPIP3ホスファターゼ活性を保持することが示されているので、MTM1は、例えば、筋肉に内部移行する単鎖抗体であるFv3E10への化学的結合体化および遺伝子的結合体化後にも、活性を保持することが予測される。加えて、hMTM1は、6−His精製タグおよびGST精製タグへの遺伝子的結合体化(Taylor GSら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2000年8月1日;97巻(16号):8910〜5頁; Cao Cら、Traffic、2007年、8巻:1052〜1067頁; Kim SAら、J. Biol. Chem.、277巻、6号、4526〜4531頁、2002年2月8日)、緑色蛍光タンパク質および赤色蛍光タンパク質への遺伝子的結合体化(Cao Cら、Traffic、2007年、8巻:1052〜1067頁; Chaussade Cら、Molecular Endocrinology、17巻(12号):2448〜2460頁、2003年; Robinson FLら、Trends in Cell Biology、2006年、16巻(8号):403〜412頁)、ならびにフラッグエピトープによるタグ付け(Cao Cら、Traffic、2007年、8巻:1052〜1067頁; Kim SAら、J. Biol. Chem.、277巻、6号、4526〜4531頁、2002年2月8日)後において、Vps15およびVps34など、初期エンドソームおよび免疫沈降物のアクセサリータンパク質へと局在化する能力も維持する。したがって、3E10およびhMTM1の化学的結合体および遺伝子的結合体は、細胞を透過し、PIP3を切断してPIとし、エンドソームタンパク質と会合する能力を保持する。
【0115】
本明細書では、「治療」、「治療すること」などの用語を使用して、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを意味する。該効果は、疾患、状態、またはこれらの症状を完全または部分的に予防する点で予防的な場合もあり、かつ/あるいは疾患もしくは状態および/または疾患もしくは状態に帰せられる有害作用に対する部分的または完全な治癒の点で治療的な場合もある。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物、特に、ヒトの疾患または状態に対する任意の治療を対象とし、(a)該疾患もしくは状態に対する素因を示しうるが、それを有するとは診断されていない被験体において、該疾患もしくは状態が発生することを予防すること;(b)該疾患もしくは状態を阻害すること(例えば、その発生を停止させること);または(c)該疾患もしくは状態を緩和すること(例えば、該疾患もしくは状態の退縮を引き起こすこと、1もしくはそれより多い症状の改善をもたらすこと)を包含する。例えば、MTMの「治療」は、該疾患の完全な可逆化もしくは治癒、またはMTMに帰せられる状態および/もしくは有害作用に対する任意の範囲の改善を包含する。例示だけを目的として述べると、MTMの「治療」には、MTMに随伴する以下の作用:平均寿命の短縮、呼吸器不全(部分的な、または完全な)、筋緊張の低下、眼瞼下垂、近位筋力の低下、遠位筋力の低下、眼筋低下を伴うかまたは伴わない顔面筋力の低下、異常な脊椎湾曲、関節の変形、ならびに眼球運動を制御する筋力の低下(眼筋麻痺)のうちのいずれか、またはこれらの組合せの改善が含まれる。これらの状態のうちのいずれかの改善は、当技術分野において公知の標準的な方法および技法に従い容易に評価することができる。本発明の方法により治療される被験体の集団には、望ましくない状態または疾患を患う被験体のほか、該状態または疾患を発生させる危険性を示す被験体も含まれる。
【0116】
「治療有効量」または「有効量」という用語は、そのためにそれが投与される所望の効果をもたらす用量を意味する。正確な用量は治療目的に依存し、公知の技法(例えば、Lloyd(1999年)、「The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding」を参照されたい)を用いて当業者により確認されうる。
【0117】
ある実施形態では、本発明の1またはそれより多いキメラポリペプチドを併せて(同時に)投与することもでき、異なる時点に(逐次的に)投与することもできる。加えて、本発明のキメラポリペプチドは、筋細管ミオパシーを治療するための1またはそれより多いさらなる化合物または療法と組み合わせて投与することもでき、神経筋障害一般を治療するための1またはそれより多いさらなる化合物または療法と組み合わせて投与することもできる。例えば、1またはそれより多いキメラポリペプチドを、1またはそれより多い治療化合物と共に共投与することができる。組合せ療法は、同時投与または交代投与を包含しうる。加えて、組合せは、短期投与または長期投与を包含しうる。場合によって、本発明のキメラポリペプチドならびにさらなる化合物は、筋細管ミオパシーを治療するのに相加的または相乗的な様式で作用する。例を目的として述べると、本方法は、上記で説明したMTM治療法(例えば、MTMR2もしくは他のMTM類縁タンパク質の補完的な上方制御、または停止コドンのリードスルーに基づくmRNAレスキュー法)のうちのいずれかと組み合わせて使用して、相加的効果または相乗的効果を達成することができる。組合せ療法において使用されるさらなる化合物には、低分子、ポリペプチド、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびsiRNA分子が含まれるがこれらに限定されない。さらに、組合せ療法はまた、MTMのための他の療法(例えば、理学療法、換気による支持、作業療法、鍼など)とも併せて、本明細書で開示される方法を包含する。組合せ療法の性格に応じて、他の療法を投与しつつある間、かつ/またはその後にわたり、本発明のキメラポリペプチドの投与を継続することができる。キメラポリペプチドの投与は、単回投与により行うこともでき、複数回投与により行うこともできる。ある場合には、キメラポリペプチドの投与を他の療法の少なくとも数日間前に開始するが、他の場合には、投与を、他の療法の投与の直前またはその時点において開始する。
【0118】
キメラポリペプチドを単独療法として投与するか、または組合せ療法として投与するかに関わらず、治療法は、単回投与または複数回投与を行うステップを包含する。複数回投与は、キメラポリペプチドを、毎日、毎週、毎月2回、毎月など指定の間隔で投与するステップを包含する。複数回投与は、患者の生涯にわたって、指定の間隔でキメラポリペプチドを投与する投与スキームを包含する。
【0119】
VI.遺伝子治療
従来のウイルスベースの遺伝子導入法ならびに非ウイルスベースの遺伝子導入法を使用して、MTM1ポリペプチドをコードする核酸を、哺乳動物細胞または標的組織に導入することができる。このような方法を使用して、in vitroで、本発明のポリペプチド(例えば、その変異体を含めたMTM1)をコードする核酸を細胞に投与することができる。一部の実施形態では、MTM1をコードする核酸を、in vivoまたはex vivoにおける遺伝子治療で使用するのに投与する。非ウイルスベクターによる送達系には、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、ならびに、リポソームなどの送達媒体と複合体化した核酸が含まれる。ウイルスベクターによる送達系には、細胞への送達後におけるエピソームゲノムまたは組込み型ゲノムを有する、DNAウイルスおよびRNAウイルスが含まれる。当技術分野では、このような方法が周知である。
【0120】
本発明の遺伝子操作されたポリペプチドをコードする核酸をウイルスによらずに送達する方法には、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸結合体、ネイキッドDNA、人工ビリオン、ならびに薬剤増強型DNA取込みが含まれる。当技術分野では、リポフェクション法およびリポフェクション試薬が周知である(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。効率的な受容体認識によりポリヌクレオチドをリポフェクトするのに適する陽イオン脂質および中性脂質には、Felgner、WO91/17424、WO91/16024による陽イオン脂質および中性脂質が含まれる。送達は、細胞に対する場合(ex vivo投与の場合)もあり、標的組織に対する場合(in vivo投与の場合)もある。当業者には、免疫脂質複合体など、標的化リポソームを含めた脂質:核酸複合体の調製が周知である。
【0121】
MTM1またはその変異体をコードする核酸を送達するのに、RNAウイルスベースの系またはDNAウイルスベースの系を使用することは、ウイルスを体内の特定の細胞へと内部移行させ、該ウイルスペイロードを核へと輸送するための高度に進化した過程を利用するものである。ウイルスベクターを患者に直接(in vivoにおいて)投与することもでき、ウイルスベクターを使用してin vitroにおいて細胞を治療することができ、改変された細胞を患者に投与する(ex vivoにおいて)。本発明のポリペプチドを送達するための、従来のウイルスベースの系には、遺伝子導入用のレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルスベクターが含まれうるであろう。現在のところ、ウイルスベクターは、標的細胞および標的組織に遺伝子導入するのに最も効率的で万能の方法である。宿主遺伝子への組込みは、レトロウイルス遺伝子導入法、レンチウイルス遺伝子導入法、およびアデノ随伴ウイルス遺伝子導入法により可能であり、挿入されたトランス遺伝子の長期にわたる発現を結果としてもたらすことが多い。加えて、多くの異なる細胞型および標的組織では、高い形質導入効率が観察されている。
【0122】
外来のエンベロープタンパク質を組み込み、標的細胞の潜在的な標的集団を増殖させることにより、レトロウイルスの向性を変化させることができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入するかまたはこれらに感染させることが可能であり、高ウイルス力価をもたらすことが典型的な、レトロウイルスベクターである。したがって、レトロウイルスによる遺伝子導入系を選択するかどうかは、標的組織に依存するであろう。レトロウイルスベクターは、最長で6〜10kbの外来配列に対するパッケージング能を伴う、cis作用性の長い末端反復配列を含む。ベクターを複製およびパッケージングするには、最小限のcis作用性LTRで十分であり、次いで、これらを使用して、治療用遺伝子を標的細胞に組み込み、永続的なトランス遺伝子の発現をもたらす。広く使用されるレトロウイルスベクターには、それらのすべてが当技術分野において周知である、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SW)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ならびにこれらの組合せに基づくものが含まれる。
【0123】
本発明のポリペプチドの一過性発現が好ましい適用では、アデノウイルスベースの系を使用することが典型的である。アデノウイルスベースのベクターは、多くの細胞型において極めて高い形質導入効率を示すことが可能であり、細胞分裂を要求しない。このようなベクターにより、高力価ならびに高度な発現レベルが得られている。このベクターは、比較的単純な系で大量に作製することができる。細胞に標的核酸を形質導入して、例えば、in vitroにおいて核酸およびペプチドを作製する場合には、ならびにin vivoおよびex vivoの遺伝子治療手順のためには、アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターもまた用いられる。組換えAAVベクターの構築については、米国特許第5,173,414号;Tratschinら、Mol. Cell. Biol.、5巻:3251〜3260頁(1985年); Tratschinら、Mol. Cell. Biol.、4巻:2072〜2081頁(1984年); HermonatおよびMuzyczka、PNAS、81巻:6466〜6470頁(1984年);ならびにSamulskiら、J. Virol.、63巻:03822〜3828頁(1989年)を含めた、多数の刊行物で説明されている。
【0124】
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、複製欠損性および非病原性の2型アデノ随伴ウイルスであるパルボウイルスに基づく、有望で代替的な遺伝子送達系である。すべてのベクターは、トランス遺伝子発現カセットを挟む145bpのAAV逆位末端反復配列(inverted terminal repeat)だけを保持するプラスミドに由来する。形質導入された細胞のゲノムに組み込まれることによる、効率的な遺伝子導入および安定的なトランス遺伝子の送達が、このベクター系の重要な特色である。
【0125】
トランス遺伝子が、Ad E1a遺伝子、Ad E1b遺伝子、およびAd E3遺伝子を置換するように、複製欠損組換えアデノウイルスベクター(Ad)を遺伝子操作することができる;その後、複製欠損性ベクターをヒト293細胞内で増殖させ、これにより、トランスにおける遺伝子機能の欠失をもたらす。Adベクターにより、肝臓組織、腎臓組織、および筋肉系組織において見出される非分裂細胞、分化細胞を含めた、in vivoにおける複数種類の組織に形質導入することができる。従来のAdベクターは輸送能が大きい。
【0126】
パッケージング細胞を使用して、宿主細胞に感染することが可能なウイルス粒子を形成させる。このような細胞には、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、ならびにレトロウイルスをパッケージングする42細胞またはPA317細胞が含まれる。遺伝子治療で使用されるウイルスベクターは通常、核酸ベクターをウイルス粒子内にパッケージングするプロデューサー細胞株により生成される。ベクターは、パッケージングならびにその後の宿主への組込みに要求される最小限のウイルス配列を含有することが典型的であり、他のウイルス配列は、タンパク質を発現させるための発現カセットにより置換されている。喪失されるウイルス機能は、トランスにおいて、パッケージング細胞株により供給される。例えば、遺伝子治療で使用されるAAVベクターは、パッケージングならびに宿主ゲノムへの組込みに要求されるAAVゲノムに由来するITR配列だけを保有することが典型的である。他のAAV遺伝子、すなわち、rep遺伝子およびcap遺伝子はコードするが、ITR配列を欠くヘルパープラスミドを含有する細胞株にウイルスDNAをパッケージングする。この細胞株には、ヘルパーとしてのアデノウイルスもまた感染させる。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製、ならびにヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列を欠いているため、大量にはパッケージングされない。アデノウイルスによる汚染は、例えば、それに対してアデノウイルスがAAVより感受性である熱処理によりこれを低減することができる。
【0127】
多くの遺伝子治療適用では、具体的な組織型に対する高度な特異性を伴って遺伝子治療ベクターを送達することが望ましい。ウイルスの外面において、ウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてのリガンドを発現させることにより、所与の細胞型に対する特異性を示すようにウイルスベクターを改変することが典型的である。リガンドは、対象の細胞型において存在することが公知である受容体に対するアフィニティーを示すように選択される。この原則は、リガンド融合タンパク質を発現させるウイルスと、受容体を発現させる標的細胞とによる他の対へも拡張することができる。例えば、選択された事実上任意の細胞受容体に特異的な結合アフィニティーを示す抗体断片(例えば、FabまたはFv)を表示するように、繊維状ファージを遺伝子操作することができる。上記の説明は、主にウイルスベクターに適用されるが、同じ原則は、非ウイルスベクターにも適用される。筋肉細胞など、特定の標的細胞による取込みを促進すると考えられる、特定の取込み配列を含有するように、このようなベクターを遺伝子操作することができる。
【0128】
遺伝子治療ベクターは、全身投与(例えば、静脈内注入、腹腔内注入、筋肉内注入、皮下注入、または頭蓋内注入)または局所適用を介して個々の患者に投与することにより、in vivoで送達することができる。代替的に、個々の患者から外植される細胞(例えば、リンパ球、骨髄吸引物、組織生検)、または万能ドナーである造血幹細胞など、ex vivoにおける細胞へとベクターを送達した後、通常、ベクターを組み込んだ細胞を選択した後で、該細胞を患者に再度植え込むこともできる。
【0129】
当技術分野では、診断、研究、または遺伝子治療のためのex vivoにおける細胞のトランスフェクション(例えば、トランスフェクトした細胞を宿主生物に再度注入することを介する)が周知である。例えば、対象の生物から細胞を単離し、例えば、MTM1またはその変異体をコードする核酸(遺伝子またはcDNA)をこれらにトランスフェクトし、該対象生物(例えば、患者)にこれらを再度注入して戻す。当業者には、ex vivoにおけるトランスフェクションに適する各種の細胞型が周知である。
【0130】
ある実施形態では、ex vivoで細胞にトランスフェクトし、遺伝子治療を行うための手順において、幹細胞を使用する。幹細胞を使用する利点は、それらがin vitroにおいて他の細胞型に分化することの場合もあり、それらを哺乳動物(細胞のドナーなど)に導入し、そこで骨髄に移植することの場合もある。公知の方法を使用して幹細胞を単離し、これらに形質導入し、これらを分化する。
【0131】
治療用核酸を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)はまた、生物に直接投与して、in vivoにおいて細胞に形質導入することもできる。代替的に、ネイキッドDNAを投与することもできる。投与は、分子を導入して血液または組織細胞と最終的に接触させるのに通常使用される経路のうちのいずれかによる。当業者には、このような核酸を投与するのに適する方法が利用可能および周知であり、具体的な組成物を投与するのに複数の経路を使用しうるが、ある具体的な経路が、別の経路より即時的でより有効な反応をもたらしうることが多い。
【0132】
薬学的に許容される担体は、ある部分では、投与される具体的な組成物により、ならびに該組成物を投与するのに使用される具体的な方法により決定される。したがって、本明細書で説明される通り、本発明の医薬組成物に適する製剤は多種多様である。
【0133】
VII.投与方法
例えば、各種の製剤、リポソームへの封入、マイクロ粒子、マイクロカプセル、化合物を発現することが可能な組換え細胞、受容体媒介型エンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu、1987年、J. Biol. Chem.、262巻:4429〜4432頁を参照されたい)など、各種の送達系が公知であり、これらを使用して、本発明のキメラポリペプチドを投与することができる。導入方法は、経口の場合もあり、非経口の場合もあり、皮内経路、経皮経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、肺内経路、鼻腔内経路、眼内経路、硬膜外経路、および経口経路が含まれるがこれらに限定されない。具体的な実施形態では、非経口導入に、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、脈管内投与、および腹腔内投与が含まれる。
【0134】
キメラポリペプチドは、任意の簡便な経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮層または粘膜層(例えば、口腔内粘膜、直腸内粘膜、および腸内粘膜など)を介する吸収により投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と併せて投与することができる。投与は、全身投与の場合もあり、局所投与の場合もある。例えば、吸入器または噴霧器、ならびにエアゾール化剤を伴う製剤を使用することにより肺内投与もまた用いることができる。
【0135】
ある実施形態では、本発明のキメラポリペプチドを、治療を必要とする領域(例えば、筋肉)に局所的に投与することが望ましい場合がある;これは、限定を目的とするものではないが、例えば、手術時における局所注入、局所適用、例えば、注射により、カテーテルにより、またはインプラント(インプラントは、シラスティック(sialastic)膜などの膜、繊維、または市販の皮膚代替物を含めた多孔性、非多孔性、またはゼラチン性材料である)により達成することができる。
【0136】
他の実施形態では、小胞、特に、リポソーム(Langer、1990年、Science、249巻:1527〜1533頁を参照されたい)により、本発明のキメラポリペプチドを送達することができる。さらに別の実施形態では、本発明のキメラポリペプチドを、制御放出系により送達することができる。別の実施形態では、ポンプを用いることができる(Langer、1990年、前出を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料を用いることができる(Howardら、1989年、J. Neurosurg.、71巻:105頁を参照されたい)。ある特定の実施形態では、本発明のキメラポリペプチドを静脈内送達することができる。
【0137】
ある実施形態では、静脈内注入によりキメラポリペプチドを投与する。ある実施形態では、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも20分間、または少なくとも30分間にわたりキメラポリペプチドを注入する。他の実施形態では、少なくとも60、90、または120分間にわたりキメラポリペプチドを注入する。注入時間に関わらず、本発明は、各回の注入が、定期的なスケジュール(例えば、毎週、毎月など)に従いキメラポリペプチドを投与する全体的な治療計画の一部であることを意図する。
【0138】
VIII.医薬組成物
ある実施形態では、本発明の対象のキメラポリペプチドを、薬学的に許容される担体と共に調合する。単独で、または医薬製剤(組成物)の構成要素として、1またはそれより多いキメラポリペプチドを投与することができる。キメラポリペプチドは、ヒト医療または獣医療で使用される任意の簡便な方式で投与されるように調合することができる。湿潤剤、乳化剤、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤のほか、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、着香剤および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤もまた、組成物中に存在しうる。
【0139】
対象のキメラポリペプチド製剤には、経口投与、鼻腔内投与、局所投与、非経口投与、直腸内投与、および/または膣内投与に適する製剤が含まれる。製剤は、単位用量形態で存在することが可能であり、薬学の技術分野で周知の任意の方法により調製することができる。単回の用量形態を作製するのに担体材料と共に混合しうる有効成分の量は、治療される宿主、ならびに具体的な投与方式に応じて変化する。単回の投与形態を作製するのに担体材料と共に混合しうる有効成分の量は一般に、治療効果をもたらす化合物の量である。
【0140】
ある実施形態では、これらの製剤または組成物を調製する方法が、別の種類の治療剤および担体、ならびに、場合によって、1またはそれより多い付属成分を混合するステップを包含する。一般に、製剤は、液体の担体もしくは微粉化された固体の担体、またはこれらの両方と共に調製することができ、次いで、必要な場合は、この生成物を成形することを伴う。
【0141】
経口投与用の製剤は、それぞれが所定の量の対象ポリペプチド治療剤を活性成分として含有する、カプセル、小袋、丸薬、錠剤、トローチ(lozenges)(着香ベース、通常はスクロースおよびアカシアガムまたはトラガカントガムを用いる)、粉末、顆粒の場合もあり、水溶性もしくは非水溶性の液体中における溶液または懸濁液である場合もあり、水中油エマルジョンもしくは油中水エマルジョンである場合もあり、エリキシルもしくはシロップである場合もあり、トローチ(pastilles)(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアガムなどの不活性ベースを用いる)である場合もあり、かつ/または口内洗浄剤などである場合もある。懸濁液は、活性化合物に加えて、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微晶質セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカントガム、ならびにこれらの混合物などの懸濁剤も含有しうる。
【0142】
経口投与のための固体の投与形態(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、粉末、顆粒など)では、本発明の1またはそれより多いポリペプチド治療剤を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなど、1もしくはそれより多い薬学的に許容される担体、ならびに/または以下:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤または拡張剤;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシアガムなどの結合剤;(3)グリセロールなどの保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、バレイショデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤;(9)滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物などの潤滑剤;ならびに(10)着色剤のうちのいずれかと共に混合することができる。カプセル、錠剤、および丸薬の場合、医薬組成物はまた、緩衝剤も含みうる。同様の種類の固体組成物もまた、ラクトースまたは乳糖のほか、高分子量のポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用する、充填型軟質ゼラチンカプセルおよび充填型硬質ゼラチンカプセル内の充填剤として用いることができる。経口投与用の液体投与形態には、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが含まれる。有効成分に加えて、液体の投与形態は、水、またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、麦芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールならびにソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物など、他の溶媒、溶解剤、および乳化剤など、当技術分野で一般に用いられる不活性の希釈剤を含有しうる。不活性の希釈剤のほか、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、着香剤、着色剤、芳香剤、ならびに防腐剤などのアジュバントも包含しうる。
【0143】
非経口投与に適する医薬組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含有しうる、1もしくはそれより多い、薬学的に許容される、滅菌等張性で水性もしくは非水性の溶液、分散液、懸濁液、もしくはエマルジョン、または使用直前に滅菌注射溶液もしくは滅菌注射分散液に復元することが可能な滅菌粉末と組み合わせて、1またはそれより多いキメラポリペプチドを含みうる。本発明の医薬組成物中で用いうる適切な水性担体および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、ならびにこれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。例えば、レシチンなどのコーティング材料を用いることにより、分散液の場合には要求される粒子サイズを維持することにより、ならびに界面活性剤を使用することにより、適正な流動性を維持することができる。
【0144】
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントも含有しうる。例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなど、各種の抗菌剤および抗真菌剤を包含することにより、微生物作用の防止を確保することができる。また、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に包含することも望ましい。加えて、モノステアリンサンアルミニウムおよびゼラチンなど、吸収を遅延させる薬剤を包含することにより、注射可能な医薬形態の遅延吸収をもたらすこともできる。
【0145】
注射可能なデポ形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生体分解性ポリマー中に、1またはそれより多いポリペプチド治療剤によるマイクロ封入マトリックスを形成することにより作出する。薬物対ポリマー比、ならびに用いられる具体的なポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生体分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。注射可能なデポ製剤はまた、体内組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を封入することによっても調製される。
【0146】
ある実施形態では、本発明のキメラポリペプチドが、ヒトに対する静脈内投与用に適応する医薬組成物として、日常的手順に従い調合される。必要な場合、組成物はまた、溶解剤、ならびに注射部位における疼痛を緩和するリドカインなどの局所麻酔剤も包含しうる。組成物を注入により投与する場合は、医薬グレードの滅菌水または滅菌生理食塩液を含有する注入ボトルによりこれを分散させることができる。組成物を注射により投与する場合は、投与前に成分を混合しうるように、注射用滅菌水または生理食塩液のアンプルを供給することができる。
【0147】
組織に関連する状態または疾患(例えば、筋細管ミオパシー)を治療するのに有効である、本発明のキメラポリペプチドの量は、標準的な臨床的技法により決定することができる。加えて、場合によっては、in vitroアッセイを用いて、最適な用量範囲を同定する一助とすることもできる。製剤中で用いうる正確な用量はまた、投与経路、状態の重篤度にも依存し、医療者の判断および各被験体の状況に従いこれを決定すべきである。しかし、静脈内投与に適する用量範囲は一般に、体重1キログラム当たり、約20〜5000マイクログラムの活性キメラポリペプチドである。鼻腔内投与に適する用量範囲は一般に、約0.01pg/体重kg〜1mg/体重kgである。有効用量は、in vitroにおける試験系または動物モデルによる試験系から導出される用量−反応曲線から外挿することができる。
【0148】
ある実施形態では、医薬調製物を含めた本開示のキメラポリペプチドおよび組成物が、非発熱性である。言い換えれば、ある実施形態では、組成物が、実質的に発熱物質を含まない。一実施形態では、本発明の製剤が、エンドトキシンおよび/または類縁の発熱性物質を実質的に含まない、発熱物質非含有製剤である。エンドトキシンは、微生物内に閉じ込められており、該微生物が分解されるかまたは死滅するときに限り放出される毒素を包含する。発熱性物質はまた、細菌および他の微生物の外膜に由来する発熱誘導性の熱安定性物質(糖タンパク質)も包含する。これらの物質のいずれもが、ヒトに投与されると、発熱、低血圧、およびショックを引き起こしうる。潜在的な有害作用のために、低量のエンドトキシンであっても、静脈内投与される医薬溶液から除去しなければならない。米国食品医薬局(「FDA」)は、単回の1時間にわたる静脈内薬物適用における、体重1キログラムに対する投与1回当たりの上限を、5エンドトキシン単位(EU)と設定している(The United States Pharmacopeial Convention、Pharmacopeial Forum、26巻(1号):223頁(2000年))。治療用タンパク質を比較的高用量で、かつ/または長期間にわたり(例えば、患者の一生にわたるなど)投与する場合、有害かつ危険なエンドトキシンは、少量であっても危険でありうるであろう。ある特定の実施形態では、組成物中のエンドトキシンレベルおよび発熱物質レベルが、10EU/mg未満、または5EU/mg未満、または1EU/mg未満、または0.1EU/mg未満、または0.01EU/mg未満、または0.001EU/mg未満である。
【0149】
前出は、本明細書で説明されるキメラポリペプチド、組成物、および方法のうちのいずれにも当てはまる。本発明はとりわけ、このようなキメラポリペプチド、組成物、および方法(単独で、または組合せで)の特色を、本節で説明した各種の医薬組成物および投与経路について説明される特色と任意の形で組み合わせることを意図する。
【0150】
IX.MTMの動物モデル
MTM1遺伝子を標的とする不活化を保有するマウス(MTM1 KOマウス)は、出生時の分布がメンデルの法則に従わないが、他の点では見かけ上正常である。しかし、出生後1週間以内に、MTM1 KOマウスは、筋肉塊を喪失し始め、これは急速に進行して、7週齢の中央値(最長14週齢)で呼吸器系の崩壊および死亡に至る。MTM KOマウスの筋線維は、発育不全であり、中央部に位置する核がミトコンドリアおよびグリコーゲンにより取り囲まれて液胞化して見えるが、筋細胞膜の損傷はほとんど見られず、アポトーシスまたは炎症の証拠も見られない。超微細構造的に、MTM1タンパク質は、細胞質の細胞膜内の小胞;ならびに骨格筋のT細管系の三連構造において現出する(Bello ABら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2002年11月12日;99巻(23号):15060〜5頁)。骨格筋におけるMTM1の欠損だけがMTM1 KOマウスの表現型の原因となるので、MTM1 KOマウスモデルを使用して、本明細書で開示される構築物を、治療有効性について評価することができる。さらに、MTM1遺伝子を標的とする部分的な不活化を保有するマウスもまた、本発明に適するモデル系として用いることができる。当技術分野では、このようなマウスモデルが公知である。例えば、MTM1δ4マウスでは、エクソン4がloxP部位により置換され、Cre対立遺伝子が不在である(Buj−Belloら、2002年、PNAS、99巻(23号):15060〜15065頁)。
【0151】
したがって、ある実施形態では、本開示が、MTMマウスモデルにおいて、本明細書で開示されるMTM1構築物(例えば、MTM1を含むキメラポリペプチド)を使用して、疾患表現型の改善について探査する方法を意図する。MTM1欠損マウスによる研究は、野生型マウスとMTM1欠損マウスとの顕著な表現型の差違を裏付けている(例えば、Buj−Belloら、2002年、PNAS、99巻(23号):15060〜15065頁を参照されたい)。例えば、約3週齢になると、正常マウスとMTM1欠損マウスとでは、体重増加が明白な形で乖離する(Bello ABら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2002年11月12日;99巻(23号):15060〜5頁)。また、懸垂評価試験も、MTM1欠損マウスと正常マウスとで、劇的な懸垂能力の差違を示唆している。加えて、MTM1欠損マウスは、正常マウスと比較して、握力(例えば、前足の握力)の著明な低下を示す。さらに、跛行をほとんど顕在化させない正常マウスと比較して、MTM1欠損マウスは、歩行分析により決定される通り、跛行がひどくなる。この動物モデルにおける、MTM1を含むキメラポリペプチドの効果を評価するための詳細なプロトコールについては、本明細書で説明する(実施例4)。
【0152】
MTM1欠損マウスに投与(例えば、静脈内)されたときに、MTM1を含むキメラポリペプチド(例えば、実施例で概観される3E10−hMTM1キメラポリペプチド)の化学的結合体および/または遺伝子的結合体が、MTM1欠損マウスにおける1またはそれより多い症状を改善する能力(例えば、体重を増大させ、かつ寿命を延長させる能力、跛行を軽減する能力、前足の握力を改善する能力、治療を受けたマウスが重力に対して自らを支持する能力を改善する能力)がそれ自体として評価される。さらなる実験はまた、選択された骨格筋の等尺性収縮力、筋線維の断面積の増大、中心核の減少、形状測定値、光学/蛍光顕微鏡所見、自発的活動、ex vivoでのミオグラフィー所見、ならびに規格化NADH−TR染色所見が何らかの形で改善されることについても評価しうる。3E10−hMTM1の血清レベルおよび組織レベルのほか、任意の抗3E10−hMTM1抗体の発生についてもまた、免疫ベースの検出法を使用して評価する。
【0153】
さらに、3E10×MTM1またはMTM1の遺伝子融合体(例えば、3E10−GS3−hMTM1または3E10−GSTS−hMTM1)が、表現型を結果として改善することが確立されたら、3E10−MTM1の有効用量、クリアランス速度、分布容積、および半減期を決定する完全な薬物動態研究を実施することができる。3E10−MTM1の薬物動態は、各種の組織が異なる程度のクリアランスを呈示するマルチコンパートメントモデルに従う可能性が高く、血清半減期の評価だけでは、治療のための投与速度を計算するのに十分な情報が得られない。したがって、最終的には、所与の3E10−MTM1用量による薬物動態、薬力学、毒性、ならびに、例えば、体重の増大、ワイヤー懸垂時間の延長、前足握力の増大、跛行の改善、自発的活動の増大、筋線維直径の増大、および寿命の延長が観察される速度および程度についての経験的観察から用量および投与速度の計算値を導出する。以下の薬物動態研究で決定される3E10−MTM1の用量および投与速度は、組換え3E10−MTM1の最適化ロットを評価するための基準比較値として使用することができる。次いで、最終生成物についてのPK/PD/TKを、ラット、イヌ、および霊長動物など、より大型の動物で検討する。
【0154】
上記のマウスモデルは、対象のキメラポリペプチドの活性および有効性を評価するのに適する動物モデル系を提供する。さらに、これらのモデルは、MTMと強く相関し、適切なMTMモデルを提供する。これらのマウスモデルでは、ポリペプチドの活性を評価することができ、その結果を、野生型の対照動物、ならびにキメラポリペプチドを投与されていない動物で観察される結果と比較することができる。マウスを検討することにより、ならびにそれらの筋肉細胞の超微細構造を検討することにより、結果を評価することができる。同様に、培養物中の細胞、例えば、突然変異体のマウスから調製された細胞を使用して、対象のキメラポリペプチドを評価することができる。
【0155】
他の実施形態ではまた、対象のキメラポリペプチドの活性および有効性を評価するのに、大型の動物モデルも使用することができる。例として述べると、イヌモデルは、MTMを研究するのに特に有用な系でありうる。罹患したイヌは欠損したMTM1遺伝子を保有し、したがって、本明細書で説明されるマウスモデルについての研究は、イヌモデルにも同様に適用される。MTM1が欠損したイヌに送達される、hMTM1に化学的または遺伝子的に結合体化された3E10の評価用量は、経験的に決定される。
【0156】
X.他の適切なモデル
本発明のキメラポリペプチドの活性を評価するのに適切な他のモデルには、細胞フリーのアッセイおよび細胞ベースのアッセイが含まれる。キメラポリペプチドは、2つの特性:MTM1の生物活性と、細胞膜を隔てた細胞内への透過を促進する内部移行部分の細胞透過活性とを保有する。適切なモデルは、これらの活性のうちの一方または両方についての評価を可能とする。
【0157】
例として述べると、キメラポリペプチドは、培養物中の初代細胞または細胞株を使用して、細胞透過活性について評価することができる。細胞をキメラポリペプチドと接触させ、該キメラポリペプチドが、細胞に侵入したかどうか、ならびにどの程度細胞に侵入したかを決定する目的でアッセイした。例えば、IHCを使用して、キメラポリペプチドが細胞に侵入したかどうかを評価し、その結果を、適切な対照と比較することができる。細胞内への透過がENT2トランスポーターを介して生じると考えられるある実施形態では、ENT2トランスポーター阻害剤の存在下または不在下において細胞を検討することができる。
【0158】
さらに、本明細書で説明される通り、本発明のキメラポリペプチドを使用して、細胞ベースのアッセイにおける機能性について調べることができる。例示的な実施形態では、MTM1欠損マウス(例えば、MTM1δ4)に由来する初代筋肉細胞を使用して、ミオチューブラリンが欠損する筋芽細胞の融合欠損を、本明細書で説明されるキメラポリペプチドによる処置が改善しうるかどうかを決定することができる。本明細書では詳細な方法について例示する。
【0159】
さらなる例として述べると、細胞フリーのアッセイでは、MTM1の生物活性を測定して、例えば、キメラポリペプチドが、適切な結合パートナーに結合し、かつ/またはホスファターゼ活性を保持する能力を保持することを確認することができる。培養物中の初代細胞または培養物中における細胞株においても同様のアッセイを行うことができる。
【0160】
XI.キット
ある実施形態ではまた、本発明が、少なくとも1つの本発明のキメラポリペプチドを充填した1またはそれより多い容器を含む、医薬パッケージまたはキットも提供する。例示的な容器には、バイアル、ボトル、あらかじめ充填されたシリンジ、静脈内注入(IV)用バッグ、ブリスターパック(1またはそれより多い丸薬を含む)が含まれるがこれらに限定されない。場合によって、このような容器(複数可)は、医薬物質または生物学的生成物の製造、使用、または販売を規制する政府機関により規定された形式の注意書きを伴い、これらの注意書きは、(a)ヒト投与のための製造、使用、または販売についての該機関による承認、(b)使用についての指示書、またはこれらの両方を反映する。
【実施例】
【0161】
本発明のある態様および実施形態の例示だけを目的として包含されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない以下の実施例を参照することにより、今や一般的な形で説明されている本発明がより容易に理解される。例えば、本明細書で開示される具体的な構築物および実験デザインは、適正な機能を検証するための例示的なツールおよび方法を表わす。開示される特定の構築物および実験計画のうちのいずれかを、それ自体、本開示の範囲内で置換しうることは容易に明らかである。
【0162】
(実施例1)
3E10とhMTM1との化学的結合体化(mAb3E10×hMTM1)
化学的結合体化
モノクローナルAbである3E10は、IgG2a亜型であり、FOX−NYハイブリドーマ細胞とMRL/lpr/mpjマウスに由来する脾臓細胞の融合体に由来する(Mankodi Aら、Mol Cell.、2002年7月;10巻(1号):35〜44頁)。2つの異なるヘテロ二官能性試薬であるスクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネートおよびスクシンイミジルtrans−4−(マレイミジルメチル)シクロ−ヘキサン−1−カルボキシレートを1/1のモル比で使用して、10ミリグラム(10mg)のmAb 3E10を、組換えヒトMTM1(AbNova)と、共有結合により結合体化する。この反応により、mAb 3E10のリシン残基がチオールへと修飾され、チオール反応性のマレイミド基がMTM1に付加される(Weisbart RHら、J Immunol.、2000年6月1日;164巻(11号):6020〜6頁)。脱保護した後、修飾タンパク質を互いと反応させて、安定的なチオエーテル結合を創出する。化学的結合体化を実施し、ゲル濾過クロマトグラフィーにより生成物を画分化する。還元的環境および非還元的環境における天然PAGEおよびSDS−PAGEにより、画分の成分を評価する。遊離mAb 3E10および遊離hMTM1に対する最大比で化学的結合体であるmAb 3E10×hMTM1を含有する画分をプールし、さらなる研究で使用するために選択する。
【0163】
同様に、後続の試験のために、さらなる化学的結合体を作出する。非限定的な例として述べると:(a)hMTM1×3E10、(b)Fv3E10×hMTM1、(c)hMTM1×Fv3E10を作出する。本実施例の全体において、Fvという略記は、3E10の単鎖Fvを指すのに使用することに注意されたい。同様に、mAb 3E10と3E10とは、互換的に使用される。例えば、本明細書で詳述されるアッセイを使用して、これらおよび他のキメラポリペプチドを、酵素活性および機能性について調べることができる。同様に、MTM1部分および内部移行部分を含む任意のキメラポリペプチドを調べて、そのキメラポリペプチドが、MTM1の活性、ならびに内部移行部分の細胞透過活性を維持することを確認することができる。これらの実施例における任意の具体的なキメラポリペプチドに対する言及は、単に例としての言及である。ある実施形態では、本実施例のうちのいずれかに示されるこれらのアッセイのうちの任意の1または複数において、配列番号11に示されるアミノ酸配列、または一方もしくは両方のエピトープタグが存在しない配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むキメラポリペプチドについて調べる。ある実施形態では、内部移行部分が、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体または抗原結合断片を含むキメラポリペプチドについて調べる。他の実施形態では、内部移行部分が、配列番号4と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である重鎖を含む抗体または抗原結合断片を含むキメラポリペプチドについて調べる。
【0164】
in vitroにおけるmAb 3E10×hMTM1のPI(3)Pホスファターゼ活性およびPI(3,5)Pホスファターゼ活性
Malachite Green Phosphatase Assay Kit(Echelon Biosciences,Inc.)の指示書に従い、かつSchaletzky, J.ら(Current Biology、13巻:504〜509頁、2003年; Supplemental Data、S1〜S3頁)により説明される通りに、1)化学的に結合体化したmAb 3E10×hMTM1、2)mAb 3E10とhMTM1との非結合体化混合物、3)mAb 3E10単独、または4)hMTM1単独の、5logにわたる等モル希釈液について、ホスファターゼ活性を評価する。ホスファターゼ活性を評価して、化学的に結合体化した3E10×hMTM1構築物が、酵素活性を保持しているかどうかを決定する。細胞フリー系、ならびに培養物中のBHK細胞の両方においてホスファターゼ活性を評価する(例えば、該結合体により処置したBHK細胞においてホスファターゼ活性を評価し、対象で処置したBHK細胞と比較する)。PI(3)Pホスファターゼ活性およびPI(3,5)Pホスファターゼ活性を伴う他のタンパク質(PI(3)Pホスファターゼ活性およびPI(3,5)Pホスファターゼ活性を有する、多数のMTM1類縁(MTMR)タンパク質を含めた)が存在するという事実により、細胞におけるホスファターゼ活性をアッセイすることは複雑となりうるため、細胞フリー系および細胞ベース系の両方においてホスファターゼ活性を評価することは有用である。したがって、BHK細胞が、これらの構築物のPI(3)Pホスファターゼ活性およびPI(3,5)Pホスファターゼ活性を調べるための透明なバックグラウンドをもたらし得ないことを踏まえ、細胞フリー系および細胞ベース系の両方を使用して該構築物の活性を確認する。活性基準には、例えば、MTM1単独の50%の活性(重量による)が示されること、または公表レベルの50%の活性(例えば、Schaletzky, J.らによるSupplemental Dataの図S1を参照されたい)が示されることが含まれる。
【0165】
本実施例では、とりわけ、PIP3(また、「PI(3)P」としても公知である)およびPI(3,5)PをMTM1の基質として使用するが、当業者ならば、本明細書で開示される他のホスホイノシチド基質もまた、in vitroアッセイ用の基質として用いうることを容易に理解するであろう。
【0166】
mAb 3E10×hMTM1の細胞内侵入、ならびにエンドソームタンパク質Vps34との会合
1.BHK細胞に、hVps34をコードするcDNAならびに/または細胞によるmAb 3E10の取込みを媒介するENT2トランスポーターのcDNAをトランスフェクトする(Hansen JEら、J Biol Chem.、2007年7月20日、282巻(29号):20790〜3頁)。2日後(トランスフェクションの48時間後)、化学的に結合体化されたmAb 3E10×hMTM1、または結合体化されていないmAb 3E10およびhMTM1の混合物をトランスフェクトされた細胞に適用し、その後、抗Vps34抗体、抗hMTM1抗体、または抗mAb3E10抗体による免疫沈降を実施し、その後、mAb 3E10、hVps34、およびhMTM1による免疫ブロット検出を実施する。対照として、逆相免疫沈降を実施する。BHK細胞は、ヒトMTM1(hMTM1)、ヒトVps34(hVps34)に対して陰性の免疫反応を示す(Cao Cら、Traffic、2007年、8巻:1052〜1067頁)。結合体化材料および非結合体化材料を添加する前に、トランスフェクトされた細胞を、ENT2阻害剤(NBMPR)で処置することにより、トランスフェクトされたENT2トランスポーターを介するmAb 3E10×hMTM1の細胞内への侵入について検証する。
【0167】
ヒトMTM1は、hVps34およびhVps15を免疫沈降させることが公知であり(Cao Cら、Traffic、2007年、8巻:1052〜1067頁)、エンドソームにおける会合についてのさらなる検証として、または免疫沈降で使用されるhVps34に対する代替物として、hVps15の免疫沈降を使用することができる。BHK細胞がhMTM1およびhVps34に対して陰性の免疫反応を示すことを踏まえると、結合体化材料を添加した後ではhVps34およびhMTM1の共免疫沈降の証拠が何らかの形で得られるが、非結合体化材料を添加した後ではこれが得られないことは、hMTM1が細胞へと送達され、hVps34と会合する能力を保持したという結論と符合する。
【0168】
・ヒトVps34 cDNAおよびENT2 cDNAの合成:hVps34およびENT2トランスポーターのcDNAについては、既に公表されている(Hansen JEら、J Biol Chem.、2007年7月20日、282巻(29号):20790〜3頁; Cao Cら、Traffic、2007年、8巻:1052〜1067頁)通りである。各cDNAをCMVベースの哺乳動物用発現カセットにクローニングし、Qiagen Mega Endo−freeプラスミド精製キットを使用して、大スケールの調製物を作出する。
【0169】
・トランスフェクション:市販のトランスフェクション試薬を使用して、10マイクログラムのプラスミドpCMV hVps34および/またはpCMV ENT2を、80%のコンフルエントBHK細胞内にトランスフェクトする。トランスフェクションの48時間後、化学的に結合体化されたmAb 3E10×hMTM1、または結合体化されていないmAb 3E10およびhMTM1の混合物を細胞に適用する。4〜6時間後、細胞を洗浄し、サポニンで処置し、これにより、膜構造の完全性を維持しながら、細胞質内容物を除去する(Cao Cら、Traffic、2007年、8巻:1052〜1067頁)。トランスフェクションの効率を追跡するため、ベータ−ガラクトシダーゼまたはGFPなどの適切なレポーターをコードするプラスミドによる二重トランスフェクションを実施する。
【0170】
・免疫沈降および免疫ブロット:既に説明されている(Weisbart RHら、Mol Immunol.、2003年3月、39巻(13号):783〜9頁; Cao Cら、Traffic、2007年、8巻:1052〜1067頁)通りに、抗hMTM1抗体、抗Vps34抗体、および抗mAb3E10抗体による免疫沈降を実施した後で、共免疫沈降したhMTM1、hVps34、およびmAb 3E10を免疫ブロット検出する。また、対照として、逆相免疫沈降も実施する。エピトープによるタグ付けを用いない場合、3E10単独による対照ならびにhMTM1単独による対照に対して、mAb 3E10×hMTM1で処置した細胞では、抗3E10および抗hMTM1の免疫反応バンドが約190kDaで一致して存在すれば、化学的に結合体化した3E10×hMTM1の透過が成功したことになる。細胞透過後においても化学的結合体であるmAb 3E10×hMTM1が完全性を保持するならば、それはトランスフェクトされたhVps34を免疫沈降させるはずであり、同様に、hVps34も、hMTM1および3E10を免疫沈降させるはずである。チューブリンの検出を、ローディング対照として使用する。
【0171】
・ENT2の阻害:ENT2トランスポーターに対するmAb3E10×hMTM1の特異性を検証するため、すべての群をENT2阻害剤であるニトロベンジルメルカプトプリンリボシド(NBMPR)で1時間にわたり処理してから、化学的に結合体化されたmAb3E10×hMTM1、または遊離組換えmAb 3E10および遊離hMTM1の混合物を添加し、4〜6時間後、上記で説明した通りに、培地および細胞を回収して免疫沈降を行う。
【0172】
2.確立された方法に従い、Mtm1δ4マウスから(および/または他のMTM1欠損マウスから)、ならびに野生型の同腹マウスから平行して、初代筋肉細胞を摘出する。略述すると、骨格筋を採取し、微細に磨り潰し、ジスパーゼIIおよびコラゲナーゼDを使用して消化する。初代筋原細胞を、コラーゲンでコーティングしたプレート上の増殖培地(GM:F10+20%FBS、10ng/ml FGF−3/4、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)中で培養し、これらの細胞が約70%のコンフルエンシーに到達したところで継代した。
【0173】
用量範囲にある組換えFv3E10−MTM1で細胞を処置し、免疫検出用に固定するか、または終点までの経過中に細胞溶解物を回収する。存在する場合は、配列番号11に示されるタンパク質など、組換えFv3E10−MTM1タンパク質のmycタグまたは6Hisタグを、免疫検出、ならびにその後の細胞内における取込みおよび内部局在化の決定に用いる。また、細胞内Fv3E10−MTM1を共免疫沈降させ、結合タンパク質の存在を検出し、内部輸送されたFv3E10−MTM1タンパク質の酵素活性を調べる(本明細書で説明されるMalachite Green Phosphatase Assay Kitを使用して)のにも、抗Fv3E10−MTM1タグ抗体を用いる。
【0174】
初代筋肉細胞における融合欠損に対する是正
確立された方法に従い、Mtm1δ4マウスから(および/または他のMTM1欠損マウスから)、ならびに野生型の同腹マウスから平行して、初代筋肉細胞を摘出する。略述すると、骨格筋を採取し、微細に磨り潰し、ジスパーゼIIおよびコラゲナーゼDを使用して消化する。初代筋原細胞を、コラーゲンでコーティングしたプレート上の増殖培地(GM:F10+20%FBS、10ng/ml FGF−3/4、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)中で培養し、これらの細胞が約70%のコンフルエンシーに到達したところで継代した。細胞増殖の差違について評価するため、Mtm1δ4マウス(および/または他のMTM1欠損マウス)の筋線維芽細胞、ならびに野生型の筋線維芽細胞について、同数の初代細胞を播種する。組換えMTM1または組換えFv3E10−MTM1の添加を伴うかまたは伴わずに、約2週間にわたり毎日培養を続ける。
【0175】
ミオチューブラリンが欠損する筋線維芽細胞の「融合」欠損を、組換えタンパク質による処置が改善するかどうかを決定するため、初代細胞を、2×10個/ウェルの濃度で12ウェルプレートに播種する。DMEMを補充した2%ウマ血清からなる分化培地中で、毎日培地を交換しながら7日間にわたり細胞を維持する。顕微鏡画像を毎日取得することにより、筋細管の形成をモニタリングおよび記録する。対照ならびにミオチューブラリンが欠損した細胞培養物における融合指数を、筋細管内の総核数に対する融合核の比として計算する。ウィルコクソンの順位和検定を使用して、対照培養物、変異体培養物、および処置培養物における融合指数を比較する。これらの評価により、処置細胞が内容物、増殖能、および分化能で異なるかどうかが示唆される。
【0176】
上記で説明した通り、試験または処置の後、培養された短趾屈筋(FDB)の筋線維または分化した筋細管をチャンバースライド上で増殖させ、メタノール中で固定し、10%FBS/0.1%Triton X−100中でブロッキングし、デスミンまたはミオシンの1型重鎖、2a型重鎖、または2b型重鎖に対するマウスモノクローナル抗体と共にインキュベートする。NIS−Elements−ARソフトウェア(Nikon、Melville、NY)を使用するNikon Eclipse 90i顕微鏡を使用して、陽性の線維をカウントし、カリパー直径の最小値を2点間測定する。
【0177】
(実施例2)
fv 3E10およびhMTM1による遺伝子構築物(Fv3E10−GS3−hMTM1およびFv3E10−GSTS−hMTM1)
Fv3E10とhMTM1との遺伝子融合体をコードする哺乳動物発現ベクター(GS3リンカーによりhMTM1に融合されたmAb 3E10のscFvを含むfv3E10−GS3−hMTM1:配列番号3;「GSTS」リンカーによりhMTM1に融合されたmAb 3E10のscFvを含むfv3E10−GSTS−hMTM1:配列番号10)を生成させる。fv3E10−GSTS−hMTM1キメラポリペプチドの例示的な配列を、配列番号11に示す。したがって、本発明のキメラポリペプチドは、エピトープタグの存在下または不在下にある、配列番号11に示されるアミノ酸配列(例えば、配列番号11は、内部においてmycタグ、ならびにC末端において6×Hisタグを含有する)を含むキメラポリペプチドを包含する。
【0178】
実施例1で説明した通り、トランスフェクション後、細胞を免疫沈降させて、遺伝子融合体が、エンドソームタンパク質と会合する能力を保持することを検証する。また、条件培地を免疫ブロットし、培地内への3E10およびhMTM1の分泌も検出する。条件培地を濃縮した後、例えば、PI(3)PまたはPI(3,5)Pに対するホスファターゼ活性を測定し、Vps34およびENT2を発現させるBHK細胞に濃縮された材料を適用し、分泌されたhMTM1融合体が細胞に侵入し、エンドソームタンパク質と会合する能力を保持することをさらに検証する。また、これらの遺伝子融合体を、組換え結合体または組換え作製結合体とも称することに注意されたい。
【0179】
同様に、後続の試験のために、さらなる組換え作製結合体を作出する。非限定的な例として述べると:(a)hMTM1−GS3−3E10、(b)3E10−GS3−hMTM1、(c)hMTM1−GS3−Fv3E10、(d)hMTM1−3E10、(e)3E10−hMTM1、(f)hMTM1−Fv3E10を作出する。本実施例の全体において、Fvという略記は、3E10の単鎖Fvを指すのに使用することに注意されたい。同様に、mAb 3E10と3E10とは、互換的に使用される。例えば、本明細書で詳述されるアッセイを使用して、これらおよび他のキメラポリペプチドについて調べることができる。
【0180】
・hMTM1およびFv3E10のcDNAの合成:適切な発現ベクター内へのクローニングを容易にする挟み込み制限部位と共に、ヒトMTM1のcDNA(受託番号:NP000243.1)と、3E10の重鎖連結されたFv3E10軽鎖可変ドメインのcDNAとを、合成および配列決定する。発現を最大化するため、哺乳動物における発現、メタノール資化酵母における発現、および/またはE. coliにおける発現について、各cDNAのコドンを最適化する。ヒトMTM1 cDNAは、分泌されると修飾を受ける可能性がある、3つのグリコシル化コンセンサス配列を有する。本明細書で使用される3E10重鎖連結された例示的なマウスFv3E10軽鎖可変ドメインをコードするcDNAは、全マウス3E10配列の31位において生じる、Fv断片の細胞透過能を増強する突然変異(D31Q)(Zack DJら、J Immunol.、1996年9月1日、157巻(5号):2082〜8頁)を含有し、それがこの実施例では使用された変異体である。結果としてもたらされるcDNAを哺乳動物発現カセット、または他の適切な発現カセットにクローニングし、Qiagen Mega Endo−freeプラスミド精製キットを使用して、プラスミドpCMV−Fv3E10−GS3−hMTM1の大スケール調製物を作出する。マウス3E10 VHおよびマウス3E10 VLの例示的な配列を、それぞれ、配列番号2および4により示す。
【0181】
・トランスフェクション:市販のトランスフェクション試薬を使用して、10マイクログラムのプラスミドpCMV−hMTM1、pCMV−Fv3E10−GS3−hMTM1、pCMV−ENT2、またはpCMVを、80%のコンフルエントBHK細胞内にトランスフェクトする。トランスフェクションの48時間後、実施例1で説明した通りに、条件培地を回収および濃縮し、細胞を洗浄し、サポニンで処置する。トランスフェクションの効率を追跡するため、ベータ−ガラクトシダーゼまたはGFPなどの適切なレポーターをコードするプラスミドによる二重トランスフェクションを実施する。
【0182】
・遺伝子的に結合体化したhMTM1融合体のPIP3ホスファターゼ活性:本明細書で説明されるpCMV−hMTM1融合体、pCMV−hMTM1融合体、またはpCMVをトランスフェクトしたBHK細胞に由来する細胞溶解物および濃縮条件培地を回収し、Malachite Green Phosphatase Assay Kit(Echelon Biosciences,Inc.)の指示書に従い、各トランスフェクションに由来する、例えば、PI(3)PまたはPI(3,5)Pに対するホスファターゼ活性を評価する。実験群についての一般的な概観、ならびに何らかの対照群について予測される結果を、表1に表示する。「?」印を付した細胞は、結果が得られていない細胞を表示する。対照群13〜16(表1を参照されたい)は、化学的に結合体化されたmAb3E10×MTM1を、pCMVトランスフェクト細胞(モックトランスフェクト細胞)に適用した1日後に、細胞溶解物および濃縮条件培地中のホスファターゼ活性を評価することを包含する。細胞溶解物および濃縮条件培地中では、翌日(24時間後)にもホスファターゼ活性を検討する。例えば、ENT2阻害剤で前処置された第13群(表1の第13群)の溶解物中では、ホスファターゼ活性が観察されないと予測される。さらなる対照群17〜18では、細胞溶解物中にスパイクされた、化学的に結合体化されたmAb3E10×MTM1、ならびにpCMVトランスフェクト細胞(モックトランスフェクト細胞)による濃縮条件培地の活性が公知であり、これらをホスファターゼ活性についての陽性対照ならびに標準曲線として用いる。
【0183】
【表1】

・遺伝子的に結合体化したhMTM1融合体の細胞内への取込み:化学的に結合体化したmAb3E10×MTM1、ならびにpCMV−hMTM1融合体またはpCMVをトランスフェクトしたBHK細胞に由来する濃縮条件培地を、その48時間前に表2のpCMV−ENT2またはpCMVをトランスフェクトしたBHK細胞に適用する。次いで、実施例1の通りに免疫沈降を行う。NBMPRトランスポーター阻害剤で二連群を処置することにより、3E10の取込みがENT2トランスポーターに特異的であることが検証される。
【0184】
【表2】

(実施例3)
組換えによるhMTM1融合体の作製、ならびにPIP3ホスファターゼ活性、細胞透過、およびエンドソームにおけるVps34との会合の検証
Pichia属酵母用タンパク質発現系(Invitrogen、RCT)を使用して、組換え3E10−GS3−hMTM1または組換え3E10−GSTS−hMTM1を作製する。Pichia属は、哺乳動物細胞と同様の、優れたタンパク質発現、高い細胞密度、制御可能な過程、生成の安定性、耐久性、ならびに生成物のプロセシングを呈示する。3E10−GS3−hMTM1の分泌形態および非分泌形態の両方が生成される。hMTM1配列は、任意の分泌物質の生物学的活性に影響を及ぼしうる3つの潜在的なNXS/Tグリコシル化部位を含有する。他の実施形態では、細菌発現系(例えば、E. coli)または哺乳動物細胞による発現系においてキメラポリペプチドを作製する。
【0185】
・Pichia属用のタンパク質発現ベクターの構築:Pichia属のプラスミド構築、トランスフェクション、コロニー選択、および培養は、製造元の指示書(Invitrogen)に従い、キットおよびマニュアルを使用する。実施例2で創出および検証された、遺伝子的に結合体化されたhMTM1(3E10−GS3−hMTM1または3E10−GSTS−hMTM1)のcDNAを、2つの代替的なプラスミド(細胞内発現用のPICZプラスミド、ならびに分泌発現用のPICZアルファプラスミド)にクローニングする。AOX1プロモーターにより、各プラスミドからのタンパク質発現を駆動する。トランスフェクトされたPichia属をZeocinにより選択し、組換えhMTM1融合体の発現についてコロニーを調べる。発現が高度なコロニーを選択し、スケール増幅して精製した。
【0186】
・組換えhMTM1融合体の精製:mAb 3E10 FvとのcDNA融合体を、酵母発現用ベクターであるpPICZAにライゲーションし、その後、これを電気穿孔によりPichia pastorisのX−33株に導入する。Zeocin(Invitrogen、Carlsbad、CA)によりコロニーを選択し、抗his6抗体(Qiagen Inc、Valencia、CA)によりこれらを同定する。緩衝処理されたグリセロール/メタノール培地を伴うバッフル付きシェーカーフラスコ内でX−33細胞を培養し、製造元のプロトコール(EasySelect Pichia Expression Kit;Invitrogen、Carlsbad、CA)に従い、0.5%メタノールによりタンパク質の合成を誘導する。20,000lb/in2で2回French Cell Pressを通すことにより細胞を溶解させ、Ni−NTA−Agarose(Qiagen、Valencia、CA)上における固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)により、9MグアニジンHClおよび2%NP40中で溶解させた細胞ペレットから組換えタンパク質を精製する。結合したタンパク質を、300mM NaCl、500mMイミダゾール、および25%グリセロールを含有する50mM NaH2PO4中で溶出させる。溶出画分の試料を、4〜20%の勾配によるSDS−PAGE(NuSep Ltd、Frenchs Forest、Australia)により電気泳動させ、カーゴ特異的なマウス抗体で現像するニトロセルロース膜へのウェスタンブロット法の後、マウスIgGに対するアルカリホスファターゼ結合体化ヤギ抗体により組換えタンパク質を同定する。発色性基質であるニトロブルーテトラゾリウム塩化物/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイルホスフェートp−トルイジン塩により、アルカリホスファターゼ活性を測定する。GelCode Blue Stain Reagent(Pierce Chemical Co.、Rockford、IL)により、SDS−PAGEゲル中のタンパク質を同定する。溶出タンパク質を濃縮し、ウシ胎仔血清で5%に復元し、30,000MWCOスピンフィルター(Millipore Corp.、Billerica、MA)により、5%グリセロールを含有するマッコイ培地(Mediatech,Inc.、Herndon、VA)に対して100倍に交換透析した。
【0187】
・細菌による発現:キメラポリペプチドはまた、E. coliなど、細菌発現系によっても発現させることができる。このような場合には、E. coliによる発現について最適化されるように、キメラポリペプチドをコードする核酸構築物のコドンにバイアスをかける。E. coliにより発現させるためには、pGEX−2T GST発現ベクターを使用する。発現を最適化するために、E. coli菌株であるWCA株、BL21(DE3)株、およびBL21(DE3)pLysE株など、異なるE. coli菌株を調べることができる。
【0188】
・品質の評価および製剤:3E10およびhMTM1に対する免疫ブロットを使用して、組換えタンパク質のサイズおよび固有性を検証した後で、銀染色により3E10、MTM1、およびhMTM1融合体による調製物間の相対的純度を同定する。その後のin vivo投与の必要と符合する緩衝液および濃度(約0.5mg/ml)により、組換え材料を調合する。
【0189】
・in vitroにおける組換え材料の評価:実施例2による研究に基づき、hMTM1融合体をトランスフェクトした細胞の条件培地中に存在する結合体1モル当たりのホスファターゼ活性(例えば、PI(3)PまたはPI(3,5)Pに対する)を決定し、この値を、メタノール資化酵母またはE. coliに由来する組換えhMTM1融合体のホスファターゼ活性を評価するための基準として使用する。表2に示す通り、Vps34をトランスフェクトしたBHK細胞における、化学的に結合体化された、哺乳動物細胞に由来する組換え3E10−GS3−hMTM1およびメタノール資化酵母に由来する組換え3E10−GS3−hMTM1の相対的なPIP3ホスファターゼ活性も同様に比較する。
【0190】
(実施例4)
MTM KOマウスにおける、筋肉を標的とするhMTM1のin vivo評価
評価のためのマウスモデルの選択
MTM1遺伝子を標的とする不活化を保有するマウス(MTM1 KOマウス)は、出生時の分布がメンデルの法則に従わないが、他の点では見かけ上正常である。しかし、出生後1週間以内に、MTM1 KOマウスは、筋肉塊を喪失し始め、これは急速に進行して、7週齢の中央値(最長14週齢)で呼吸器系の崩壊および死亡に至る(Bello ABら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2002年11月12日;99巻(23号):15060〜5頁)。MTM KOマウスにおける進行性の衰弱は、体重増大の鈍化、前足の握力の低下、重力に対して自らを支持する能力の低下、ならびに跛行の増大と同時発生する(Bello ABら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2002年11月12日;99巻(23号):15060〜5頁)。MTM KOマウスの筋線維は、発育不全であり、中央部に位置する核がミトコンドリアおよびグリコーゲンにより取り囲まれて液胞化して見えるが、筋細胞膜の損傷はほとんど見られず、アポトーシスまたは炎症の証拠も見られない(Bello ABら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2002年11月12日;99巻(23号):15060〜5頁)。MTM1 KOマウスを使用する利点は、ELISAを使用して、3E10−GS3−MTM1の血清レベルおよび組織レベルを追跡しうることであり、これは、その後の薬物動態評価、ならびに薬力学反応および毒性反応のそれぞれに必要となる。MTM1の生理学的レベルを超えるレベルが有害であるかどうかを比較検討するために、野生型MTM1ホモ接合マウス(+/+)に3E10−hMTM1を投与する。
【0191】
以下では、処置マウスを評価するための例示的なアッセイについて説明する。加えて、平均寿命(処置マウスにおける平均寿命の延長)、体重、ならびに跛行の減少にも基づいて、マウスの状態の改善を評価する。
【0192】
3E10−GS3−hMTM1用量の選択
MTM KOマウスに送達される、hMTM1に化学的または遺伝子的に結合体化された3E10の評価用量を決定する。出発点として、治療応答を裏付けるため、最長20週間または死亡のいずれかが先に生じるまで、毎週2回、高用量(例えば、5.0mg/kg)を静脈内投与する。20週間にわたり毎週2回、用量5mg/kgの3E10−GS3−MTM1をMTM KOマウスに送達した(表3)後に、疾患評価項目の変化について評価する。対照は、媒体、ならびに処置ヘテロ接合MTM1+/+マウス、ならびに媒体処置MTM1−/−マウスを包含する。抗3E10−MTM1抗体の発生についてもまたモニタリングする。3E10×MTM1またはMTM1の遺伝子融合体(例えば、3E10−GS3−hMTM1または3E10−GSTS−hMTM1)を静脈内投与する結果として、表現型の改善が確立されたら、MTM KOマウスにおいてその後のin vivoにおけるPK評価を開始して、毒性の帰結を最小限としながら最大限の薬力学効果を促進する投与レジメンを同定する。
【0193】
【表3】

・握力:握力デバイス(Columbus Instruments)は、マウス側の訓練を要求しない。他の研究者(Bello ABら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2002年11月12日;99巻(23号):15060〜5頁)により用いられている全身引張り試験では、動物の尾を力トランスデュサーに括りつけ、次いで、尾をピンチングし、動物が逃避しようとするときにかかる張力を測定する。応答の条件として疼痛を誘導することの動物福利的な意味合いを措くとしても、どのようにしてピンチング力を標準化するのか、またはどのようにして尾をトランスデュサーに適正に固定するのかが不明確である。許容可能な代替法としての前足握力試験は、マウス体重で規格化すれば、全身引張り試験の測定値を十分に再現するであろうし、IACUCの査察に耐えるであろうし、容易に利用可能な力トランスデュサー(Columbus Instruments)により実施することができる。マウスが金属製格子から牽引される角度に比例した効果が力の測定値に及ぼされる。したがって、尾を介して、水平方向の格子に平行に、かつ、力トランスデュサーから遠ざかる向きに、約5cm/秒の速度でマウスを牽引することにより握力試験を標準化する。約20秒間ずつの休息を挟んだ4回にわたる牽引を使用して、疲労を調整する。
【0194】
・化学的に結合体化された3E10−MTM1ならびに遺伝子的に結合体化された3E10−MTM1の注射:3E10×hMTM1またはhMTM1遺伝子融合体を調合し、静脈内注射に適合する緩衝液(例えば、滅菌生理食塩液、または50mMトリス−HCl、pH7.4、0.15M NaClによる緩衝溶液)中で希釈する。各マウスに施される3E10×hMTM1またはhMTM1遺伝子融合体の量は、以下:用量(mg/kg)×マウスの体重(kg)×原液濃度(mg/ml)=マウス1匹当たりの原液容量(ml)の通りに、媒体により100ulとされる適量として計算する。
【0195】
・血液の回収:動物を屠殺して組織を切片化する際に、心臓穿刺により血液を回収する。血清を取り出し、−80℃で凍結させる。融解および処理の影響を最小化するため、血液中を循環する3E10×hMTM1またはMTM1遺伝子融合体に対するすべての解析は、同じ日に実施する。
【0196】
・組織の回収および調製:免疫ブロット、ホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロック、ならびにOCT(最適切削温度)における凍結切片用に、試料組織を等分する。免疫ブロット解析用にさらに加工するため、心臓、肝臓、肺、脾臓、腎臓、大腿四頭筋、長趾伸筋(EDL)、ヒラメ筋、横隔膜、および大腿二頭筋を半分に分け、プラスチック製試験管内で凍結させる。心臓、肝臓、肺、脾臓、腎臓、大腿四頭筋、EDL、ヒラメ筋、横隔膜、および大腿二頭筋の残りの半分をさらに分け、OCTにおける組織切片化用媒体中で凍結させるか、または4℃で24〜48時間にわたり亜鉛−ホルムアルデヒド固定により固定してパラフィン包埋する。
【0197】
・組織学的評価:HE切片に対する明視野顕微鏡法を使用して、中心核化した筋線維の百分率、ならびに無作為に選択した5つの視野に由来する筋線維の断面積を決定する。筋肉群につきマウス1匹当たり、少なくとも200本の筋線維をカウントする。他の切片は、NADH−TRについて染色する。中心核、筋線維断面積、ならびにNADH−TR染色の規格化について、盲検処理した切片のスコア評価もまた実施する。
【0198】
・免疫ブロット:既に説明されている(Weisbart RHら、Mol Immunol.、2003年3月、39巻(13号):783〜9頁; Bello ABら、Human Molecular Genetics、2008年、17巻、14号; Lorenzo Oら、Journal of Cell Science、119巻、2953〜2959頁、2005年)通りに、3E10およびMTM1のタンパク質単離および免疫ブロット検出を実施する。
【0199】
・循環3E10−hMTM1の解析:市販されている抗ヒトMTM1抗体を使用して、ヒト3E10−MTM1に特異的なELISAを現像および検証する。組換え3E10−MTM1を希釈し使用して、標準曲線を生成させる。血清の希釈率(ng/血清mlに規格化する)または組織抽出物の希釈率(ng/組織mlに規格化する)から3E10−MTM1レベルを決定する。
【0200】
・抗3E10−hMTM1抗体反応のモニタリング:MTM KOマウスに注射するのに使用される精製3E10−MTM1を、コーティングバッファー(Pierce Biotech)中1ug/mlで、高度結合型96ウェルELISAプレートに播種し、一晩にわたりコーティングし、TBS中1%の脱脂粉乳(Biorad)中で30分間にわたりブロッキングし、TBS中で3回にわたりすすぐ。媒体および3E10−MTM1を注射した動物に由来する血清の2倍希釈液をウェル内に投入し、37℃で30分間にわたりインキュベートし、3回にわたり洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化ウサギ抗マウスIgA、IgG、およびIgMと共に37℃で30分間にわたりインキュベートし、3回にわたり洗浄する。TMB液体基質によりマウス抗3E10−MTM1抗体を検出し、ELISAプレートリーダーにより405nmで読み取る。ポリクローナルウサギ抗マウスMTM1抗体(Bello ABら、Human Molecular Genetics、2008年、17巻、14号)の後、HRP結合体化ヤギ抗ウサギ抗体を、陽性対照の抗体反応として用いる。媒体で処置したMTM1 KOマウスの場合を超える、405nmにおける任意の吸光度が、陽性の抗3E10−MTM1抗体応答を構成する。
【0201】
・統計学的解析:対応のある比較では、スチューデントのt検定を用いる。複数の群間における比較では、ANOVAを用いる。いずれの場合も、p値<0.05を、統計学的に有意であると考える。
【0202】
前出の実施例は、本明細書で説明した方法で使用するためのキメラポリペプチドを作出して調べる際に使用しうる実験を例示する一助となる。MTM1部分および内部移行部分を含むキメラポリペプチドを、例えば、これらの方法を使用して調べる。本明細書で説明したキメラポリペプチドのうちのいずれも、容易に調べることができる。同様に、MTM1部分および内部移行部分を含む任意のキメラポリペプチドを調べ、それがMTM1活性ならびに内部移行部分の細胞透過活性を維持することを確認することができる。これらの実施例における任意の具体的なキメラポリペプチドに対する言及は、例だけを目的とするものである。ある実施形態では、配列番号11に示されるアミノ酸配列、または一方もしくは両方のエピトープタグが存在しない配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むキメラポリペプチドを、本実施例のうちのいずれかに示されるアッセイのうちの任意の1または複数において調べる。ある実施形態では、内部移行部分が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体または抗原結合断片を含むキメラポリペプチドについて調べる。他の実施形態では、内部移行部分が、配列番号4と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、配列番号2と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体または抗原結合断片を含むキメラポリペプチドについて調べる。
【0203】
配列の情報
配列番号1:ヒトMTM1タンパク質のアミノ酸配列(NP_000243.1)
【0204】
【化1】

配列番号2:3E10重鎖可変ドメイン
【0205】
【化2】

配列番号3:リンカー配列「GS3」
【0206】
【化3】

配列番号4:3E10軽鎖可変ドメイン
【0207】
【化4】

配列番号5:ヒトMTM1核酸配列(NM_000252.2)
【0208】
【化5−1】

【0209】
【化5−2】

【0210】
【化5−3】

配列番号6:マウスMTM1タンパク質配列(NP_064310.1)
【0211】
【化6】

配列番号7:マウスMTM1核酸配列(NP_019926.2)
【0212】
【化7−1】

【0213】
【化7−2】

【0214】
【化7−3】

配列番号8:ラットMTM1タンパク質配列(NP_001013065.1)
【0215】
【化8】

配列番号9:ラットMTM1核酸配列(NM_001013047.1)
【0216】
【化9−1】

【0217】
【化9−2】

配列番号10:リンカー配列「GSTS」
【0218】
【化10】

配列番号11:Fv3E10−GSTS−hMTM1
【0219】
【化11】

注:配列番号11では、リンカー配列に下線を付し、エピトープタグには二重下線を付す。
【0220】
参照による組込み
本明細書で言及されるすべての刊行物および特許は、各個の刊行物または特許が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に表示されたと仮定した場合と同様に、それらの全体において、参照により本明細書に組み込まれる。
【0221】
対象の発明の特定の実施形態について論じてきたが、上記の明細書は、例示的なものであり、限定的なものではない。本明細書および以下の特許請求の範囲を再検討すれば、当業者には、本発明の多くの変化形が明らかとなるであろう。本発明の完全な範囲は、特許請求の範囲と均等物の完全な範囲、およびこのような変化形と本明細書を参照することにより決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号11に示されるアミノ酸配列、または1もしくはそれより多いエピトープタグが存在しない配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むキメラポリペプチド。
【請求項2】
(i)ミオチューブラリン(MTM1)ポリペプチドと、(ii)内部移行部分とを含む、キメラポリペプチドであって、前記内部移行部分が、配列番号4と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号2と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体または抗原結合断片であり、
前記キメラポリペプチドが、ホスホイノシチドホスファターゼ活性を有する、キメラポリペプチド。
【請求項3】
前記内部移行部分が、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体または抗原結合断片である、請求項2に記載のキメラポリペプチド。
【請求項4】
(i)ミオチューブラリン(MTM1)ポリペプチドまたはその生物活性断片と、(ii)内部移行部分とを含むキメラポリペプチドであって、
前記キメラポリペプチドが、ホスホイノシチドホスファターゼ活性を有する、キメラポリペプチド。
【請求項5】
前記内部移行部分が筋肉細胞内への前記キメラポリペプチドの輸送を促進する、請求項1から4のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
【請求項6】
前記内部移行部分が、受動拡散型ヌクレオシドトランスポーター2(ENT2)トランスポーターを介して細胞膜を通過する、請求項1から5のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
【請求項7】
前記MTM1ポリペプチドが、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から6のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
【請求項8】
配列番号11に示されるアミノ酸配列、または1もしくはそれより多いエピトープタグが存在しない配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む、請求項2から7のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
【請求項9】
前記MTM1ポリペプチドが、in vivoにおける安定性、in vivoにおける半減期、取込み/投与、および/または精製のうちの1または複数を増強する1またはそれより多いポリペプチド部分をさらに含む、請求項1から8のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
【請求項10】
前記内部移行部分が、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項1から9のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
【請求項11】
前記抗体またはその抗原結合断片が、モノクローナル抗体3E10もしくは3E10の細胞透過活性を保持するその変異体、または3E10もしくは前記3E10の変異体の抗原結合断片である、請求項10に記載のキメラポリペプチド。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合断片が、3E10と同じエピトープに結合する抗体、もしくは細胞透過活性が3E10と実質的に同じである抗体、またはその抗原結合断片である、請求項10に記載のキメラポリペプチド。
【請求項13】
前記抗体またはその抗原結合断片が、キメラまたはヒト化抗体または断片である、請求項10から12のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
【請求項14】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号4と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号2と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項10から13のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
【請求項15】
前記内部移行部分が、ホーミングペプチドを含む、請求項3から9のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
【請求項16】
前記内部移行部分との前記MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片の化学的結合体である、請求項1から15のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
【請求項17】
前記内部移行部分との、前記MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を含む組換え共翻訳融合タンパク質である、請求項1から15のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
【請求項18】
前記MTM1ポリペプチドおよび前記内部移行部分の両方をコードする組換えベクターを使用して産生される、請求項17に記載のキメラポリペプチド。
【請求項19】
原核細胞または真核細胞内で産生される、請求項17または18に記載のキメラポリペプチド。
【請求項20】
前記真核細胞が、酵母細胞、鳥類細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞から選択される、請求項19に記載のキメラポリペプチド。
【請求項21】
前記原核細胞がE. coliに由来する、請求項19に記載のキメラポリペプチド。
【請求項22】
前記MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片が、リンカーにより前記内部移行部分に結合体化または接合される、請求項1から21のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
【請求項23】
2つのリンカーを含む、請求項22に記載のキメラポリペプチド。
【請求項24】
前記リンカーが、配列番号3または10から独立して選択される、請求項22または23に記載のキメラポリペプチド。
【請求項25】
前記MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片が、前記内部移行部分に直接結合体化または接合される、請求項1から21のいずれかに記載のキメラポリペプチド。
【請求項26】
前記リンカーが、切断可能なリンカーである、請求項22に記載のキメラポリペプチド。
【請求項27】
前記内部移行部分が、前記MTM1ポリペプチドのN末端アミノ酸またはC末端アミノ酸に結合体化される、請求項22または25に記載のキメラポリペプチド。
【請求項28】
前記内部移行部分が、前記MTM1ポリペプチドの内部アミノ酸に結合体化される、請求項22または25に記載のキメラポリペプチド。
【請求項29】
内部移行部分をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするヌクレオチド配列を含み、
ホスホイノシチドホスファターゼ活性を有するキメラポリペプチドをコードする核酸構築物。
【請求項30】
前記内部移行部分が、筋肉細胞を標的として筋肉細胞内への輸送を促進する、請求項29に記載の核酸構築物。
【請求項31】
前記内部移行部分が、ENT2トランスポーターを介して細胞膜を通過する、請求項29または30に記載の核酸構築物。
【請求項32】
MTM1ポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列が、配列番号5と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項29から31のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項33】
リンカーをコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項29から32のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項34】
前記内部移行部分が、抗体またはその抗原結合断片である、請求項29から33のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項35】
前記抗体またはその抗原結合断片が、モノクローナル抗体3E10もしくは3E10の細胞透過活性を保持するその変異体、または3E10もしくは前記3E10の変異体の抗原結合断片である、請求項34に記載の核酸構築物。
【請求項36】
前記抗体またはその抗原結合断片が、3E10と同じエピトープに結合する抗体、もしくは細胞透過活性が3E10と実質的に同じである抗体、またはその抗原結合断片である、請求項34に記載の核酸構築物。
【請求項37】
前記内部移行部分が、筋肉細胞を標的とするホーミングペプチドである、請求項29から33のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項38】
請求項1から28のいずれかに記載のキメラポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸構築物。
【請求項39】
請求項1から28のいずれかに記載のキメラポリペプチドと、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物。
【請求項40】
筋細管ミオパシーを治療するための、相加的または相乗的な様式で作用する第2の薬剤をさらに含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記第2の薬剤が、低分子、ポリペプチド、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびsiRNA分子から選択される、請求項39に記載の組成物。
【請求項42】
筋細管ミオパシーの治療を必要とする被験体において筋細管ミオパシーを治療する方法であって、有効量の、請求項1から28のいずれかに記載のキメラポリペプチドを前記被験体に投与するステップを含む方法。
【請求項43】
筋細管ミオパシーの治療を必要とする被験体において筋細管ミオパシーを治療する方法であって、有効量のキメラポリペプチドを前記被験体に投与するステップを含み、前記キメラポリペプチドは、(i)MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片と、(ii)前記キメラポリペプチドの筋肉細胞内への輸送を促進する内部移行部分とを含み、
前記キメラポリペプチドは、ホスホイノシチドホスファターゼ活性を有する、
方法。
【請求項44】
前記被験体がヒトである、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記内部移行部分が、ENT2トランスポーターを介して細胞膜を通過する、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記MTM1ポリペプチドが、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはその生物活性断片を含む、請求項43から45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記内部移行部分が、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項43から45のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記抗体またはその抗原結合断片が、モノクローナル抗体3E10もしくは3E10の細胞透過活性を保持するその変異体、または3E10もしくは前記3E10の変異体の抗原結合断片である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体またはその抗原結合断片が、3E10と同じエピトープに結合する抗体、もしくは細胞透過活性が3E10と実質的に同じである抗体、またはその抗原結合断片である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記キメラポリペプチドが、薬学的に許容される担体と共に調合される、請求項42から49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
筋細管ミオパシーを治療するための、相加的または相乗的な様式で作用する第2の療法をさらに含む、請求項42から50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記第2の療法が、筋細管ミオパシーを治療するための薬物である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記第2の療法が、筋細管ミオパシーを治療するための理学療法である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記キメラポリペプチドが全身投与される、請求項42から53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記キメラポリペプチドが局所投与される、請求項42から54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記キメラポリペプチドが静脈内投与される、請求項42から54のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
キメラポリペプチドを、受動拡散型ヌクレオシドトランスポーター(ENT2)経路を介して細胞内に送達する方法であって、
MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片と、ENT2経路を介して細胞膜を横切る輸送を媒介する内部移行部分とを含むキメラポリペプチドと細胞を接触させ、これにより前記キメラポリペプチドを前記細胞内に送達するステップを含む方法。
【請求項58】
前記MTM1ポリペプチドが、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはその生物活性断片を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記MTM1ポリペプチドが、in vivoにおける安定性、in vivoにおける半減期、取込み/投与、および/または精製のうちの1または複数を増強する1またはそれより多いポリペプチド部分をさらに含む、請求項57または58に記載の方法。
【請求項60】
前記内部移行部分が、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項57から59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記抗体またはその抗原結合断片が、モノクローナル抗体3E10もしくは3E10の細胞透過活性を保持するその変異体、または3E10もしくは前記3E10の変異体の抗原結合断片である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記抗体またはその抗原結合断片が、3E10と同じエピトープに結合する抗体、もしくは細胞透過活性が3E10と実質的に同じである抗体、またはその抗原結合断片である、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記内部移行部分が、ENT2を標的とするホーミングペプチドを含む、請求項57から59のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記キメラポリペプチドが、前記内部移行部分との前記MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片の化学的結合体である、請求項57から63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記キメラポリペプチドが、前記内部移行部分との前記MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片の組換え共翻訳融合体である、請求項57から63のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
キメラポリペプチドを筋肉細胞内に送達する方法であって、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片と、筋肉細胞内への輸送を促進する内部移行部分とを含むキメラポリペプチドと筋肉細胞を接触させ、これにより、前記キメラポリペプチドを前記筋肉細胞内に送達するステップを含む方法。
【請求項67】
前記MTM1ポリペプチドが、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはその生物活性断片を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記MTM1ポリペプチドが、in vivoにおける安定性、in vivoにおける半減期、取込み/投与、および/または精製のうちの1または複数を増強する1またはそれより多いポリペプチド部分をさらに含む、請求項66または67に記載の方法。
【請求項69】
前記内部移行部分が、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項66から68のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
前記抗体またはその抗原結合断片が、モノクローナル抗体3E10もしくは3E10の細胞透過活性を保持するその変異体、または3E10もしくは前記3E10の変異体の抗原結合断片である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記抗体またはその抗原結合断片が、3E10と同じエピトープに結合する抗体、もしくは細胞透過活性が3E10と実質的に同じである抗体、またはその抗原結合断片である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記内部移行部分が、ENT2を標的とするホーミングペプチドを含む、請求項66から68のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
前記内部移行部分が、筋肉細胞を標的とするホーミングペプチドを含む、請求項66から68のいずれかまたは72に記載の方法。
【請求項74】
前記MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、前記内部移行部分に化学的に結合体化することにより前記キメラポリペプチドを作製する、請求項66から73のいずれかに記載の方法。
【請求項75】
前記MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、前記内部移行部分に組換え結合体化することにより前記キメラポリペプチドを組換え作製する、請求項66から73のいずれかに記載の方法。
【請求項76】
キメラポリペプチドを、それを必要とする被験体に送達する方法であって、
MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片と、筋肉細胞内への輸送を促進する内部移行部分とを含むキメラポリペプチドを、それを必要とする被験体に投与し、これにより、前記キメラポリペプチドを前記筋肉細胞内に送達するステップを含む方法。
【請求項77】
前記MTM1ポリペプチドが、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはその生物活性断片を含む、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記MTM1ポリペプチドが、in vivoにおける安定性、in vivoにおける半減期、取込み/投与、および/または精製のうちの1または複数を増強する1またはそれより多いポリペプチド部分をさらに含む、請求項76または77に記載の方法。
【請求項79】
前記内部移行部分が、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項76から78のいずれかに記載の方法。
【請求項80】
前記抗体またはその抗原結合断片が、モノクローナル抗体3E10もしくは3E10の細胞透過活性を保持するその変異体、または3E10もしくは前記3E10の変異体の抗原結合断片である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記抗体またはその抗原結合断片が、3E10と同じエピトープに結合する抗体、もしくは細胞透過活性が3E10と実質的に同じである抗体、またはその抗原結合断片である、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記内部移行部分が、ENT2を標的とするホーミングペプチドを含む、請求項76から78のいずれかに記載の方法。
【請求項83】
前記内部移行部分が、筋肉細胞を標的とするホーミングペプチドを含む、請求項76から78のいずれかまたは82に記載の方法。
【請求項84】
前記キメラポリペプチドが、前記内部移行部分との前記MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片の化学的結合体である、請求項76から83のいずれかに記載の方法。
【請求項85】
前記MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、前記内部移行部分に組換え結合体化することにより前記キメラポリペプチドを組換え作製する、請求項76から83のいずれかに記載の方法。
【請求項86】
前記被験体がヒトである、請求項76から85のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
前記送達の方法が非経口送達である、請求項76から86のいずれかに記載の方法。
【請求項88】
前記キメラポリペプチドが静脈内投与される、請求項76から87のいずれかに記載の方法。
【請求項89】
筋肉細胞におけるMTM1の生物活性を増大させる方法であって、MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片と、筋肉細胞内への輸送を促進する内部移行部分とを含むキメラポリペプチドと筋肉細胞を接触させ、これにより、前記筋肉細胞におけるMTM1の生物活性を増大させるステップを含む方法。
【請求項90】
前記MTM1ポリペプチドが、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはその生物活性断片を含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記MTM1ポリペプチドが、in vivoにおける安定性、in vivoにおける半減期、取込み/投与、および/または精製のうちの1または複数を増強する1またはそれより多いポリペプチド部分をさらに含む、請求項89または90に記載の方法。
【請求項92】
前記内部移行部分が、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項89から91のいずれかに記載の方法。
【請求項93】
前記抗体またはその抗原結合断片が、モノクローナル抗体3E10もしくは3E10の細胞透過活性を保持するその変異体、または3E10もしくは前記3E10の変異体の抗原結合断片である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記抗体またはその抗原結合断片が、3E10と同じエピトープに結合する抗体、もしくは細胞透過活性が3E10と実質的に同じである抗体、またはその抗原結合断片である、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
前記内部移行部分が、ENT2を標的とするホーミングペプチドを含む、請求項89から91のいずれかに記載の方法。
【請求項96】
前記内部移行部分が、筋肉細胞を標的とするホーミングペプチドを含む、請求項89〜91および95のいずれかに記載の方法。
【請求項97】
前記MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、前記内部移行部分に化学的に結合体化することにより前記キメラポリペプチドを作製する、請求項89から96のいずれかに記載の方法。
【請求項98】
前記MTM1ポリペプチドまたはその生物活性断片を、前記内部移行部分に組換え結合体化することにより前記キメラポリペプチドを組換え作製する、請求項89から96のいずれかに記載の方法。
【請求項99】
前記MTM1生物活性に、MTM1ホスホイノシチドホスファターゼ活性、またはエンドソームタンパク質とのMTM1の会合が含まれる、請求項89から98のいずれかに記載の方法。
【請求項100】
ホスホイノシチド活性が、天然MTM1のホスホイノシチド活性の少なくとも50%である、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
ホスホイノシチド活性が、天然MTM1のホスホイノシチド活性の少なくとも80%である、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
キメラポリペプチドを投与するステップを含み、前記キメラポリペプチドの前記内部移行部分が、配列番号4と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体または抗原結合断片を含み、
前記キメラポリペプチドが、ホスホイノシチドホスファターゼ活性を有する、
請求項43から101のいずれかに記載の方法。
【請求項103】
前記キメラポリペプチドの前記内部移行部分が、配列番号4と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号2と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体または抗原結合断片を含み、
前記キメラポリペプチドが、ホスホイノシチドホスファターゼ活性を有する、
請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記キメラポリペプチドの前記内部移行部分が、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体または抗原結合断片を含み、
前記キメラポリペプチドが、ホスホイノシチドホスファターゼ活性を有する、
請求項103に記載の方法。
【請求項105】
(i)ミオチューブラリン(MTM1)ポリペプチドと、(ii)配列番号4と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体または抗原結合断片である内部移行部分とを含み、
ホスホイノシチドホスファターゼ活性を有する
キメラポリペプチドを投与するステップを含む、請求項43から101のいずれかに記載の方法。
【請求項106】
前記キメラポリペプチドが、(i)ミオチューブラリン(MTM1)ポリペプチドと、(ii)配列番号4と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号2と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体または抗原結合断片である内部移行部分とを含み、
前記キメラポリペプチドが、ホスホイノシチドホスファターゼ活性を有する、
請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記キメラポリペプチドが、(i)ミオチューブラリン(MTM1)ポリペプチドと、(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体または抗原結合断片である内部移行部分とを含み、
前記キメラポリペプチドが、ホスホイノシチドホスファターゼ活性を有する、
請求項106に記載の方法。
【請求項108】
請求項1から28のいずれかに記載のキメラポリペプチドである、筋細管ミオパシーを治療するための薬剤。

【公表番号】特表2012−529891(P2012−529891A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515229(P2012−515229)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/038703
【国際公開番号】WO2010/148010
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511302426)4エス3 バイオサイエンス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】