説明

ミトコンドリア膜タンパク質群およびそれらをコードする遺伝子群

【課題】ミトコンドリアの機能を担っているタンパク質を網羅的に同定・解析し、ミトコンドリア膜の形態を調節しかつミトコンドリアの機能を調節するタンパク質群の機能や相互の関連性を解明するための方法の提供。
【解決手段】特定な配列からなるアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質の群から選ばれる1種又は2種以上のタンパク質が欠損若しくは過剰発現した細胞、又はこれらのタンパク質が添加された細胞であって、ミトコンドリアの形態に異常が生じている細胞に、試験物質を添加して、当該試験物質によるミトコンドリアの形態の変化を測定することからなる、ミトコンドリアの形態を正常化させるために活性な物質をスクリーニングする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミトコンドリアの形態を制御又は調節する機能を有するタンパク質、及び当該タンパク質をコードする遺伝子に関する。また、本発明は、ミトコンドリアに存在するタンパク質、好ましくはミトコンドリア膜タンパク質を網羅的に精製し、単離することからなるミトコンドリアの形態を制御又は調節する機能を有する新規なタンパク質、及び当該タンパク質をコードする遺伝子に関する。さらに、本発明は、ミトコンドリアの形態を制御又は調節する機能を有するタンパク質が欠損又は過剰に存在して、ミトコンドリアの形態が異常になっている細胞を用いて、ミトコンドリアの形態を正常化させる活性を有する物質をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリアは真核生物の細胞内小器官で、好気性原核細胞が原始の真核細胞に細胞内共生したものと考えられている。ミトコンドリアは、細胞核とは別に独自のDNAを持ち、これはミトコンドリアDNA(mtDNA)と呼ばれている。mtDNAは動物では16〜18kbと比較的一定しているが、原生動物では6〜77kbと極めて多様である。これまでに、700種近く生物のmtDNAの全塩基配列が解析されてきており、全てのmtDNAに共通している遺伝子は、2つのrRNAと電子伝達系に関与している2つの遺伝子(cob、及びcox1)であることが知られている。ヒトなどの哺乳動物のmtDNAは、約16.5kbの環状2本鎖DNAであり、1細胞当たり数百〜数千コピー存在している。mtDNAは、核DNAとは異なり、ほぼ隙間なく遺伝子がコードされており、ヒトでは13種類のタンパク質、2つのrRNA、及び22種のtRNAがコードされている。
ミトコンドリアは、哺乳動物では約1500種のタンパク質によって構成されているといわれている。そのうちの13種のタンパク質だけがmtDNAにより産生されていることになるから、残りの約99%のタンパク質は細胞核のDNAにコードされていることになる。細胞質で合成されたタンパク質は、N末端に存在するミトコンドリア指向配列(MTS)によりミトコンドリアに選別輸送される。このようなシグナル配列によりミトコンドリアのタンパク質を補足する方法も開発されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
ミトコンドリアは、生命活動に必要なATPの大部分を産生する。また、アポトーシスの誘導および活性酸素の発生などの重要な機能を有する。これらの機能は、ミトコンドリア内膜上に存在する電子伝達系の働きによる。ミトコンドリア膜は、外膜と内膜の二つの膜から構成されるが、内膜はクリステという指状構造を有する。このクリステの形態はミトコンドリアのエネルギー状態によって異なり、休止状態に比較すると高エネルギー状態では膜間腔が広がりクリステの構造が密になることが知られており、ミトコンドリアの膜形態が電子伝達系の機能調節に密接に連関していると考えられる。これまで真核生物のミトコンドリアの形態が細胞の分化や病的状態により動的に変化することが観察されており、特に肝疾患や先天性筋ジストロフィー症、胃癌や骨髄腫、またミトコンドリアDNA異常に基づく拡張型心筋症などの病的状態で、ミトコンドリアの形態や分布が著しく変化し、巨大ミトコンドリアや環状または車軸状のミトコンドリア、環状や同心円状のクリステ構造を持つミトコンドリアなどを呈することが知られている(非特許文献1及び2参照)。このように、細胞機能とミトコンドリア形態が密接な連関を有することが考えられ、ミトコンドリアのDNA変異と関連性がない疾患でもミトコンドリアの形態異常が報告されている(非特許文献3、4及び5参照)。また、脳筋症(非特許文献6参照)や、アルツハイマー病やパーキンソン病(特許文献3及び4、並びに非特許文献7及び8参照)もミトコンドリアの異常と関連性がることや、さらにII型糖尿病は、少なくとも3243A−Gの変異を有するミトコンドリアtRNAで生じること(非特許文献9参照)も報告されてきている。そして、このようなミトコンドリア性の各種の疾患を処置するための医薬組成物についても開発されてきている(特許文献5及び6参照)。
【0004】
一方、高齢化社会における生活習慣病や老化関連疾患の占める重要度は大きい。ミトコンドリアの機能は生活習慣病や老化、各種神経疾患と密接に関係があることが知られている。例えば、ミトコンドリアはATPを産生し大量の酸素を消費するが、ミトコンドリアが消費する酸素の0.4〜4%はATP産生に関連せず、活性酸素となることが知られている。ミトコンドリアで産生されたこの活性酸素が、細胞に障害を与え、細胞数を減少させ、細胞の機能低下や、個体の老化を促進すると考えられている。
また、癌や栄養障害などにおいては、ミトコンドリア形態の異常も報告されている。本発明によって明らかにされたタンパク質群をコードする遺伝子断片や、タンパク質を認識する抗体などを用いることにより、将来的には疾患の診断マーカーなどへの応用も期待される。また、これらのタンパク質は治療標的としても考えることができ、これらのタンパク質派生体は治療薬などへの応用も考えられる。
【0005】
したがって、ミトコンドリアの機能を正常に保ち、当該機能をうまく制御することが、老化の防止だけでなく、個体の恒常性を維持して上で極めて重要となってくる。
しかしながら、ミトコンドリアには約1500種のタンパク質が存在すると言われているが、どのような種類のタンパク質が存在し、それらのタンパク質がどのような機能を有し、どのような関連性を有しているのかと言うことは未だに解明されていない。また、ミトコンドリア膜の形態を調節する詳しい分子メカニズムや、ミトコンドリアの膜形態と機能の連関性に関しては未だ明らかにされていない。
ミトコンドリアが有する各種の機能を解明するために、近年において多くの検討がなされてきている。例えば、ミトコンドリア膜のイオン透過性に関するもの(特許文献7参照)、カスパーゼの活性化に関するもの(特許文献8参照)、タンパク質のミトコンドリアへの細胞内移動に関するもの(特許文献9参照)、ミトコンドリアDNAを用いた遺伝子検出方法に関するもの(特許文献10参照)などが報告されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−224389号
【特許文献2】特開平10−146200号
【特許文献3】特開2005−82523号
【特許文献4】特開2005−151810号
【特許文献5】特開2002−523434号
【特許文献6】特開2004−538326号
【特許文献7】特開2004−189730号
【特許文献8】特開2004−67531号
【特許文献9】特開2004−41067号
【特許文献10】特開2003−116576号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Arbustini E, Diegoli M, et al., Am J Pathol. 1998 Nov;153(5):1501-10.
【非特許文献2】Nishino I, Kobayashi O, et al., Muscle Nerve. 1998 Jan;21(1):40-7.
【非特許文献3】Ann. NY Acad. Sci., 488, 65-81, 1986
【非特許文献4】Acta haemat. 68, 241-249, 1982.
【非特許文献5】Scand. J. Gastroenterol. 33, 975-981, 1998.
【非特許文献6】Goto, Y.; Nonaka, I.; et al., Nature 348: 651-653, 1990.
【非特許文献7】Lustbader,J.W., Cirilli,M., et al., Science 304 (5669), 448-452 (2004)
【非特許文献8】Shoffner, J. M., et al., Genomics 17: 171-184, 1993.
【非特許文献9】Ouweland, J. M. W.; Lemkes, H. H. P. J.; et al., Nature Genet. 1: 368-371,1992.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように個体の恒常性を維持して上でミトコンドリアの機能は極めて重要であり、ミトコンドリアの有する多種多様な機能を個別に解析する必要もあるが、ミトコンドリアの機能を担っているタンパク質を網羅的に同定・解析し、ミトコンドリア膜の形態を調節しかつミトコンドリアの機能を調節するタンパク質群の機能や相互の関連性を解明することが望まれている。
本発明は、ミトコンドリアの機能を担っているタンパク質を網羅的に同定・解析し、ミトコンドリア膜の形態を調節しかつミトコンドリアの機能を調節するタンパク質群の機能や相互の関連性を解明するための方法を提供し、また本発明の方法によって同定・解析された新規なタンパク質及びその用途を提供し、さらにミトコンドリアの機能を調整する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ミトコンドリアを簡便にかつ効率的に単離精製する方法を検討し、次いで、得られたミトコンドリア画分から、ミトコンドリアの膜画分とマトリックス画分を分離する方法を検討し、さらに得られた膜画分におけるタンパク質を、膜貫通ドメインを持つなどの膜に強固に結合する性質を持つタンパク質群と、膜に緩く結合するタンパク質群の二つのタンパク質群に分離する方法を検討した。この結果、本発明者は、大量培養したヒト培養細胞から、細胞破砕後、遠心分離法にて粗なミトコンドリア画分を分離し、この画分を比重密度勾配遠心法にて精製することにより、高純度のミトコンドリア画分を得ることができることを見出した。そして、この精製されたミトコンドリア画分を超音波破砕した後、遠心法にて膜画分とマトリックス画分に分離し、得られた膜画分をアルカリ液にて洗浄することにより、膜に緩く結合するタンパク質群の二つのタンパク質群を分離し、残された膜画分から、膜貫通ドメインを持つなどの膜に強固に結合する性質を持つタンパク質群を得ることができることを見出した。
そして、本発明者は、このミトコンドリアの膜に強固に結合するタンパク質群を可溶化し、二次元電気泳動法により、これらのタンパク質を網羅的に解析することができることを見出した。さらに、得られたタンパク質のスポットを分離し、これらのスポットを切り抜き、ゲル内消化後ペプチドを抽出し、質量分析法およびデータベース検索にてこれらのタンパク質を同定することに成功した。
【0010】
即ち、本発明は、配列表の配列番号1〜15のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質に関する。より詳細には、本発明は、配列表の配列番号1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質に関する。
また、本発明は、配列表の配列番号1〜22のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質の群から選ばれる1種又は2種以上のタンパク質が欠損若しくは過剰発現した細胞、又はこれらのタンパク質が添加された細胞であって、ミトコンドリアの形態に異常が生じている細胞に、試験物質を添加して、当該試験物質によるミトコンドリアの形態の変化を測定することからなる、ミトコンドリアの形態を正常化させるために活性な物質をスクリーニングする方法に関する。
さらに、本発明は、配列表の配列番号1〜22のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質からなるミトコンドリア膜組織形成剤に関する。また、本発明は、配列表の配列番号1〜22のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質からなるミトコンドリア膜の形態調節剤に関する。さらに、本発明は、配列表の配列番号1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物に関する。
また、本発明は、配列表の配列番号23〜44のいずれかに記載の塩基配列、又はこれらの塩基配列のうちの連続した少なくとも20塩基の配列からなるオリゴヌクレオチドを用いて、ミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質をコードする遺伝子を検出・同定する方法に関する。
さらに、本発明は、配列表の配列番号1〜15のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質に対する抗体に関する。
【0011】
また、本発明は、培養細胞から、細胞破砕後、遠心分離法にて粗なミトコンドリア画分を分離し、この画分を比重密度勾配遠心法にて精製することにより、高純度のミトコンドリア画分を製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、精製されたミトコンドリア画分を超音波破砕し、次いで遠心法にて膜画分とマトリックス画分に分離し、得られた膜画分をアルカリ液にて洗浄することにより、膜に緩く結合するタンパク質群の二つのタンパク質群を分離し、残された膜画分から、膜貫通ドメインを持つなどの膜に強固に結合する性質を持つタンパク質群を得ることからなるミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質群を製造する方法に関する。さらに詳細には、本発明は、培養細胞から、細胞破砕後、遠心分離法にて粗なミトコンドリア画分を分離し、この画分を比重密度勾配遠心法にて精製することにより、高純度のミトコンドリア画分を得、次いで得られた精製されたミトコンドリア画分を超音波破砕し、次いで遠心法にて膜画分とマトリックス画分に分離し、得られた膜画分をアルカリ液にて洗浄することにより、膜に緩く結合するタンパク質群の二つのタンパク質群を分離し、残された膜画分から、膜貫通ドメインを持つなどの膜に強固に結合する性質を持つタンパク質群を得ることからなるミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質群を製造する方法に関する。
また、本発明は、ミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質群を含有する試料を、可溶化し、二次元電気泳動法により、これらのタンパク質群を網羅的に解析する方法に関する。
さらに、本発明は、ミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質群を含有する試料を、可溶化し、二次元電気泳動法により、これらのタンパク質群の二次元電気泳動による泳動パターンを得、得られた泳動パターンを標準泳動パターンと比較することからなるミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質群の異常を検出、同定する方法に関する。
【0012】
本発明をより詳細に説明すれば、本発明は以下の(1)〜(28)に記載のとおりである。
(1)配列表の配列番号1〜15のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質。
(2)配列表の配列番号1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質。
(3)タンパク質が、ミトコンドリアに局在するタンパク質である前記(1)又は(2)に記載のタンパク質。
(4)タンパク質が、ミトコンドリアの形態を制御又は調節する機能を有するものである前記(1)又は(2)に記載のタンパク質。
(5)タンパク質が、培養細胞を細胞破砕した後、遠心分離法にて粗なミトコンドリア画分を分離し、この画分を比重密度勾配遠心法にて精製し単離されたものである前記(1)又は(2)に記載のタンパク質。
(6)配列表の配列番号1〜22のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質の群から選ばれる1種又は2種以上のタンパク質が欠損若しくは過剰発現した細胞、又はこれらのタンパク質が添加された細胞であって、ミトコンドリアの形態に異常が生じている細胞に、試験物質を添加して、当該試験物質によるミトコンドリアの形態の変化を測定することからなる、ミトコンドリアの形態を正常化させるために活性な物質をスクリーニングする方法。
(7)タンパク質の群が、配列表の配列番号1〜15のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質の群である前記(6)に記載の方法。
(8)タンパク質の群が、配列表の配列番号19〜22のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質の群である前記(6)に記載の方法。
(9)ミトコンドリアの形態の正常化が、ミトコンドリアの凝集の抑制である前記(6)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)配列表の配列番号1〜22のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質からなるミトコンドリア膜組織形成剤。
(11)配列表の配列番号1〜22のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質からなるミトコンドリア膜の形態調節剤。
(12)配列表の配列番号1〜15、好ましくは配列番号1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物。
(13)配列表の配列番号23〜44のいずれかに記載の塩基配列、又はこれらの塩基配列のうちの連続した少なくとも20塩基の配列からなるオリゴヌクレオチドを用いて、ミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質をコードする遺伝子を検出・同定する方法。
(14)配列表の配列番号1〜15、好ましくは配列番号1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、ミトコンドリア膜組織の形成能を有するタンパク質に対する抗体。
(15)抗体が、モノクローナル抗体である前記(14)に記載の抗体。
【0013】
(16)培養細胞から、細胞破砕後、遠心分離法にて粗なミトコンドリア画分を分離し、この画分を比重密度勾配遠心法にて精製することにより、高純度のミトコンドリア画分を製造する方法。
(17)培養細胞が、ヒト細胞である前記(16)に記載の方法。
(18)ヒト細胞が、ヒトHeLa細胞である前記(17)に記載の方法。
(19)精製されたミトコンドリア画分を超音波破砕し、次いで遠心法にて膜画分とマトリックス画分に分離し、得られた膜画分をアルカリ液にて洗浄することにより、膜に緩く結合するタンパク質群の二つのタンパク質群を分離し、残された膜画分から、膜貫通ドメインを持つなどの膜に強固に結合する性質を持つタンパク質群を得ることからなるミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質群を製造する方法。
(20)ミトコンドリア画分が、ヒト細胞由来のミトコンドリア画分である前記(19)に記載の方法。
(21)培養細胞から、細胞破砕後、遠心分離法にて粗なミトコンドリア画分を分離し、この画分を比重密度勾配遠心法にて精製することにより、高純度のミトコンドリア画分を得、次いで得られた精製されたミトコンドリア画分を超音波破砕し、次いで遠心法にて膜画分とマトリックス画分に分離し、得られた膜画分をアルカリ液にて洗浄することにより、膜に緩く結合するタンパク質群の二つのタンパク質群を分離し、残された膜画分から、膜貫通ドメインを持つなどの膜に強固に結合する性質を持つタンパク質群を得ることからなるミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質群を製造する方法。
(22)培養細胞が、ヒト細胞である前記(21)に記載の方法。
(23)ヒト細胞が、ヒトHeLa細胞である前記(22)に記載の方法。
(24)ミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質群を含有する試料を、可溶化し、二次元電気泳動法により、これらのタンパク質群を網羅的に解析する方法。
(25)ミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質群を含有する試料が、請求項4〜9のいずれかに記載の方法により得られたものである前記(24)に記載の方法。
(26)ミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質群を含有する試料を、可溶化し、二次元電気泳動法により、これらのタンパク質群の二次元電気泳動による泳動パターンを得、得られた泳動パターンを標準泳動パターンと比較することからなるミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質群の異常を検出、同定する方法。
(27)ミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質群を含有する試料が、請求項4〜9のいずれかに記載の方法により得られたものである前記(26)に記載の方法。
(28)正常なミトコンドリアの機能を有する細胞から得られたミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質群を含有する試料を、可溶化し、二次元電気泳動法により、これらのタンパク質群の二次元電気泳動による泳動パターン。
【0014】
次に、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明における「ミトコンドリア」としては、ミトコンドリアを有している生物種からのものであればよく、動物であっても植物であってもよい。好ましいミトコンドリアとしては、ヒトミトコンドリアが挙げられる。ヒトミトコンドリアを対象にすることにより、ヒトの疾患や健康、老化などの予防や治療又は診断に応用することができる。
本発明における「ミトコンドリア膜組織」とは、ミトコンドリアの外膜及び/又は内膜に強固に結合する物質群、好ましくはタンパク質群をいう。典型的な「ミトコンドリア膜組織」を形成するタンパク質としては、少なくとも1個の膜貫通ドメインを持つタンパク質が挙げられる。例えば、外膜におけるミトコンドリア局在化シグナルを認識しているTOM40複合体を形成するTom40,Tom5、Tom6、Tom7、Tom22、また、内膜における膜透過装置を形成するTIM複合体を形成するTim17、Tim22、Tim23などの膜タンパク質が挙げられる。
本発明における「ミトコンドリア膜組織形成剤」とは、前記した本発明の「ミトコンドリア膜組織」を形成するための物質、好ましくはタンパク質である。ミトコンドリア膜組織には既知及び未知の物質を含めて非常に多くの物質が存在しており、それらが単独で若しくは複合して、又は相互に関連して、ミトコンドリアのATP産生やアポトーシスなどの多種多様な機能を発現させている。したがって、「ミトコンドリア膜組織」を正常に維持してゆくことは、個体の恒常性を維持して上で極めて重要なことである。本発明の「ミトコンドリア膜組織形成剤」は、正常なミトコンドリア膜組織において機能している物質、好ましくはタンパク質だけでなく、何等かの原因で欠損したり、又は機能不全となった異常なミトコンドリア膜組織を正常な状態に戻すために適用されるものを包含している。
本発明における「泳動パターン」とは、可溶化されたタンパク質群を二次元電気泳動にかけたときにできるこれらのタンパク質群によるスポットにより形成される二次元のスポットによる位置情報である。このような位置情報としては、写真や映像のような画像情報であってもよいし、X軸とY軸における数値情報であってもよい。したがって、本発明における「泳動パターン」は、目視可能な画像に限定されるものではなく、二次元電気泳動によって得られる位置情報であるということができる。
また、本発明の二次元電気泳動における展開方法としては、一次元が等電点電気泳動法で、二次元がSDS−PAGE法による分子量の違いによる展開法が好ましいがこれに限定されるものではない。一次元目及び二次元目の展開方法としては各種の方法を採用することができる。例えば、複合体解析などによく用いられる未変性アクリルアミドゲルを用いた展開法なども採用することもできるが、等電点電気泳動法とSDS−PAGE法による方法の組み合わせが再現性もよく好ましい。
本発明におけるその他の用語の意味は、当業者が通常使用している意味で用いられている。
【0015】
次に、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
まず、大量培養したヒト培養細胞HeLa細胞を破砕後、遠心分離法にて粗なミトコンドリア画分を分離した。この画分を比重密度勾配遠心法にて、高純度のミトコンドリア画分を精製した。このミトコンドリア画分を超音波破砕した後、遠心法にて膜画分とマトリックス画分に分離した。この膜画分には、膜貫通ドメインを持つなどの膜に強固に結合する性質を持つタンパク質群と、膜に緩く結合するタンパク質群の二つのタンパク質群が存在し、アルカリ液にて洗浄することにより、これらを分離した。このミトコンドリアの膜に強固に結合するタンパク質群を網羅的に解析するために、まずこれらのタンパク質を可溶化し、二次元電気泳動法にて200以上のタンパク質のスポットを分離した。これらのスポットを切り抜き、ゲル内消化後ペプチドを抽出し、質量分析法にてこれらのタンパク質を同定した。同定されたタンパク質をペプチド配列ターゲッティング(Peptide sequence tagging)法を用いてデータベース検索を行ない、スポットのタンパク質をすべて同定した。247スポットを解析し、171種類のタンパク質を同定した。
上記の方法により網羅的に同定・解析されたタンパク質群には、ミトコンドリア膜の形態を調節しかつミトコンドリアの機能を調節するタンパク質が存在すると考えられる。
【0016】
上記の方法により得られたミトコンドリアのマトリックス画分の二次元電気泳動を図1に示す。マトリックス画分と分離された膜画分の二次元電気泳動を図2に示す。そして、膜画分をアルカリ液にて洗浄して得られた膜に緩く結合するタンパク質群の二次元電気泳動を図3に示す。膜貫通ドメインを持つなどの膜に強固に結合する性質を持つタンパク質群の二次元電気泳動を図4に示す。図1〜図4の二次元電気泳動の写真の縦方向は分子量を示し、横方向は、pHを示す。
これらの二次元電気泳動により展開されたパターン中にはリン酸化されたタンパク質や、各種のアイソフォームを含まれていた。
この方法により、ミトコンドリア膜組織を形成するタンパク質の247スポットを解析し、重複を除いた171種のタンパク質を同定した。これらの171種のタンパク質をミトコンドリアの機能に基づいて分類した結果を次の表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
これらの171種のタンパク質を同定した結果、特に、酵素や骨格・シャペロンやトランスポーターなど機能の同定されているタンパク質以外のタンパク質として、以下の22種のタンパク質が得られていた。これらのタンパク質のアミノ酸配列を配列表の1〜22にそれぞれ記載する。また、これらのタンパク質をコードしている塩基配列を配列表の23〜44にそれぞれ記載する。
得られたタンパク質のアミノ酸配列に基づいてデータベースを検索したところ、次のA〜Cの3群に分けることができた。
A群:ゲノム研究においてその配列が推定されていたが、今までに単離され確認された
ことが無いタンパク質であって、その機能についても明らかにされていない
タンパク質。
配列番号1に記載のタンパク質:NP−060336(LOC54968)
hypothetical protein LOC54968
配列番号2に記載のタンパク質:NP−077027(LOC79135)
hypothetical protein LOC79135
配列番号3に記載のタンパク質:NP−001001692(FLJ45139)
FLJ45139 protein
配列番号4に記載のタンパク質:NP−775932(LOC285492)
hypothetical protein LOC285492
配列番号5に記載のタンパク質:NP−078937(LOC79714)
hypothetical protein LOC79714
配列番号6に記載のタンパク質:AAQ89151(AAQ89151)
HSAL5836
配列番号7に記載のタンパク質:NP−115716(c6orf125)
chromosome 6 open reading frame 125
配列番号8に記載のタンパク質:BAC04486(BAC04486)
unnamed protein product
配列番号9に記載のタンパク質:NP−951032(E3−3a)
nuclear protein E3-3 isoform a
配列番号10に記載のタンパク質:NP−060282(CHCHD3)
coiled-coil-helix-coiled-coil-helix domain
containing 3; CHCHD3
配列番号11に記載のタンパク質:NP−057026(CGI−12)
hypothetical protein LOC51001; CGI-12
配列番号12に記載のタンパク質:Q9H078(Q9H078SKD3)
suppressor of potassium transport defect 3; SKD3
配列番号13に記載のタンパク質:NP−060300(OCIA)
ovarian carcinoma immunoreactive antigen; OCIA
配列番号14に記載のタンパク質:AAH01837(GBAS)
glioblastoma amplified sequence; GBAS
配列番号15に記載のタンパク質:NP−149061(cat eye c5-2)
cat eye syndrome chromosome region,
candidate 5 isoform 2 precursor
【0019】
B群:機能の一部に関する知見はあるが、ミトコンドリアでの機能が明らかでない
タンパク質。
配列番号16に記載のタンパク質:NP−006308(BASP1)
brain abundant, membrane attached signal protein 1
配列番号17に記載のタンパク質:NP−002083(GRSF1)
G-rich RNA sequence binding factor 1
C群:ミトコンドリアへの局在が明らかであり、機能の一部に関する知見はあるが、
ミトコンドリアの形態への影響に関する知見がないタンパク質。
配列番号18に記載のタンパク質:NP−002625(PHB)
prohibitin; PHB
配列番号19に記載のタンパク質:NP−038470(SLP2)
stomatin-like protein 2; SLP2
配列番号20に記載のタンパク質:NP−056195(CGI−51)
CGI-51 protein
配列番号21に記載のタンパク質:NP−006109(HAX−1)
HS1 binding protein; HAX1
配列番号22に記載のタンパク質:NP−004484(HADH2)
hydroxyacyl-Coenzyme A dehydrogenase, type II; HADH2
【0020】
これらのタンパク質のうち、A群に記載されている15種のタンパク質は、ヒトゲノム解析により、遺伝子の塩基配列は知られることになったが、その機能はもとより、当該タンパク質がどこに存在し、どのような形態で存在しているのか、ということは全く知られておらず、しかもタンパク質自体は未だ人間が入手したことの無いものであり、本発明により初めて単離され、同定されたものである。したがって、これらのタンパク質は人類が初めて取得し、その作用を確認することができた新規なタンパク質である。
また、A群の中の配列番号13〜15に記載のタンパク質は、ゲノム研究などにおいてその配列が推定されていたが、今までに単離され確認されたことが無いタンパク質ではあるが、ある種の疾患との関連性が推定されていたタンパク質である。しかし、これらのタンパク質自体も未だ人間が入手したことの無いものであり、本発明により初めて単離され、同定されたものである。したがって、これらのタンパク質は人類が初めて取得し、その作用を確認することができた新規なタンパク質である。例えば、配列番号13のNP−060300と命名されているタンパク質は、卵巣癌のcDNAライブラリーから免疫スクリーニング法により染色体4p11に配座する遺伝子であるとされたものである(Biochem. Biophys. Res. Commun. 280 (1), 401-406 (2001))。また、配列番号14のAAH01837と命名されたタンパク質は、ヒト及びマウスにおける全長が15000以上のcDNAの解析から推定されたものである(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99 (26), 16899-16903 (2002))。さらに、配列番号15のNP−149061と命名されたタンパク質は、ヒトのネコ眼症候群(cat eye syndrome)のクリティカル領域及びマウスの保存されたシンテニー(synteny)の解析及び第22染色体のセントロメア周辺における候補遺伝子の探索から推定されたものである(Genome Res. 11 (6), 1053-1070 (2001))。
【0021】
一方、B群及びC群に分類されているタンパク質は、いずれも単離・確認されて、その機能もある程度は明らかにされているものである。例えば、B群の配列番号16に記載のNP−006308と命名されたタンパク質は、軸索末端におけるミリスチン酸でエステル化されるタンパク質であるBASP1ファミリーとして、その一次構造の解析と物理化学的性質の検討も報告され(Biochimie 79 (6), 373-384 (1997))、このタンパク質は一過性のリン酸化サイト及びPESTモチーフを有するに膜結合タンパク質である。また、配列番号17に記載のNP−002083と命名されたタンパク質は、保存されたG−リッチエレメントに関連しているポリ(A)+mRNA結合タンパク質であるGRSF−1として報告され(Nucleic Acids Res. 22 (12), 2334-2343 (1994))、このタンパク質は細胞質に局在し、スプライシングのされかたによるいくつかの変形が報告されているが、全長についての報告は未だなされていないものである。
このようにC群に分類されているタンパク質は、ある程度の機能は既に報告されているが、しかし、これらの機能がミトコンドリア機能と関連していることは未だ報告されていない。
C群のタンパク質は、既にミトコンドリアへの局在が明らかにされてきており、機能の一部に関する知見は報告されていきているが、ミトコンドリアの形態に影響を与えるタンパク質であることは報告されていないタンパク質である。
【0022】
これらのタンパク質のアミノ酸配列からそれらのドメイン構造を考察した結果を図5及び図6に示す。図5には配列番号1〜12のタンパク質のドメイン構造を示し、図6は配列番号13〜23のタンパク質のドメイン構造を示しており、各図の左側の名称はそれぞれの配列番号のタンパク質の名称を示している。即ち、前記した配列番号の各タンパク質において、括弧内に示した名称で表示されている。図5及び図6の各ボックスの右側の数字は各タンパク質のアミノ酸数を示している。また、図5及び図6のボックスの長さはアミノ酸長の長さの概要を示し、各ボックスにおける片斜線の部分は弱いミトコンドリアターゲットシグナル(weak MTS)であることを示し、ハッチング部分はミトコンドリアターゲットシグナル(MTS)であることを示し、黒塗りつぶし部分(原図は青色)は強い膜貫通ドメイン(strong TM)であることを示し、灰色塗りつぶし部分(原図は水色)は弱い膜貫通ドメイン(weak TM)であることを示す。図5及び図6中の「CC」はコイルドコイルドドメインであることを示し、「mTERF」は、ミトコンドリア転写終止因子(mitochondrial transcription termination factor)の保存配列であることを示し、「ANK rep」は、アンキリン リピート配列であることを示し、「ATPase」は、ATP分解酵素保存配列であることを示し、「myr」は、ミリスチル化部位保存配列であることを示し、「PEST」は、タンパク質の分解シグナルであるPEST配列であることを示し、「RRM」は、RNA認識モチーフ配列であることを示し、「Bac.Surface Ag」は、バクテリア表面抗原(Bacterial surface antigen)の保存配列であることをそれぞれ示す。
【0023】
これらのタンパク質の機能をさらに解明するために、A群のタンパク質をコードしている遺伝子を単離し、これにFLAGタグを融合させた遺伝子を真核細胞の発現ベクターにサブクローニングした後、これを培養細胞に導入し、発現する遺伝子産物の局在性やミトコンドリア形態への影響等を免疫染色にて検討した。
このためにA群に属するタンパク質であるc6orf125(配列番号7)、E3−3a(配列番号9)、及びLOC79135(配列番号2)をコードする遺伝子を、それぞれFLAGタグを付してHeLa細胞へ導入して発現させ、これをチトクロームCに対する抗体(α−cyt.c)、及びタグ標識タンパク質(α−FLAG)を用いて二重染色による免疫染色を検討した。その結果を図7及び図8に示す。図7の左側の写真はそれぞれの細胞におけるミトコンドリアの顕微鏡写真である。左から2番目の写真は、チトクロームCに対する抗体(α−cyt.c)により染色(赤色)したものを示し、左から3番目の写真は、タグ標識タンパク質(α−FLAG)で染色(緑色)したものを示し、右側の写真はこれらをマージしたものである。図8の写真は図7の拡大像を示している。
この結果、c6orf125(配列番号7)、E3−3a(配列番号9)、及びLOC79135(配列番号2)のタンパク質はいずれもミトコンドリアに局在しており、c6orf125及びE3−3aでは、ミトコンドリアは管状の形態となり、当該を管状の形態のトコンドリアの先端部に局在しており、これらのタンパク質はミトコンドリアの融合や分裂に関与するものであると考えられ、また、LOC79135ではミトコンドリアが車軸状の形態となり、このタンパク質はミトコンドリアを車軸状の形態に誘導する活性があることが示された。
【0024】
また、A群に属するタンパク質のうちのLOC79714(配列番号5)、CHCHD3(配列番号10)、及びOCIA(配列番号13)について、同様に免疫染色にて検討した。その結果を図9に示す。図9の左側の写真はそれぞれの細胞におけるミトコンドリアの顕微鏡写真である。左から2番目の写真は、チトクロームCに対する抗体(α−cyt.c)で染色(赤色)したものを示し、左から3番目の写真は、タグ標識タンパク質(α−FLAG)で染色(緑色)したものであり、右側の写真はこれらをマージしたものである。
この結果、LOC79714(配列番号5)、CHCHD3(配列番号10)、及びOCIA(配列番号13)のいずれのタンパク質もミトコンドリアに局在化しており、LOC79714及びCHCHD3では、ミトコンドリアが細胞核の近辺に凝集しており、これらのタンパク質はミトコンドリアを細胞内で凝集させる活性を有することが示された。
【0025】
次に、C群に属するPHB(配列番号18)、SLP2(配列番号19)、HADH2(配列番号22)、CGI−51(配列番号20)、及びHAX−1(配列番号21)の各タンパク質をコードする遺伝子について、同様のFLAGタグをしようして免疫染色を行なった。なお、PHB、SLP2、及びHADH2の免疫染色には、抗体としてチトクロームC抗体(cyt. C)に代えて、ミトコンドリア膜間腔(内膜と外膜の間)に局在するタンパク質OPA1(OPTIC ATROPHY 1)に対する抗体(α−OPA1)を用いた。この結果を図10に示す。図10の上の3段は、それぞれPHB、SLP2、及びHADH2の結果を示し、これらはOPA1抗体(α−OPA1)により緑色に染色され、α−FLAGタグタンパク質により赤色に染色されている。図10の下の2段はCGI−51及びHAX−1の結果を示し、これらはチトクロームCに対する抗体(α−cyt.c)により赤色に染色されており、タグ標識タンパク質(α−FLAG)により緑色に染色されている。また、図10の左側の写真はそれぞれの細胞におけるミトコンドリアの顕微鏡写真である。左から2番目の写真は、OPA1抗体(α−OPA1)により染色(緑色)したもの(上3段)、又はチトクロームCに対する抗体(α−cyt.c)により染色(赤色)したもの(下2段)を示し、左から3番目の写真は、タグ標識タンパク質(α−FLAG)で染色(赤色)したもの(上3段)、又はタグ標識タンパク質(α−FLAG)で染色(緑色)したもの(下2段)を示し、右側の写真はこれらをマージしたものである。これらの結果、本発明のC群に属するタンパク質のいずれも、ミトコンドリアの形態を凝集させる活性があることを示した。
【0026】
次に、C群に属するPHB(配列番号18)及びSLP2(配列番号19)のタンパク質について、ミトコンドリア膜電位の変化について検討してみた。PHB及びSLP2のそれぞれのカルボキシル末端にFLAGタグを融合させた融合タンパク質をコードする遺伝子をHeLa細胞に強制発現させ、これらの細胞におけるミトコンドリア膜電位を、ミトコンドリア膜電位に依存したミトコンドリア染色マーカーRh123で検出した。その結果を図11に示す。図11の上段はPHBの場合を示し、中段はSLP2の場合を示し、下段の−は遺伝子導入をしていない正常コントロールの細胞の場合を示す。図11の左側の写真はミトコンドリア染色マーカーRh123で染色(緑色)した場合を示し、右側は顕微鏡写真を示す。
これらの結果、SLP2の過剰発現細胞ではミトコンドリアの膜電位の低下が認められなかったものの、PHBの過剰発現細胞ではミトコンドリアの膜電位の低下が認められた(図11の上段の左側の写真中の矢印参照)。このことは、PHBタンパク質がミトコンドリアにおいて膜電位の調節に関わっている可能性を示しており、本発明におけるタンパク質の中には、ミトコンドリアの形態の制御だけでなく、ミトコンドリアの膜電位の制御に関連しているタンパク質が包含されていることが示された。
【0027】
以上のように、本発明で示された22種のタンパク質はミトコンドリアの形態の制御に関連しており、ミトコンドリアの膜組織を形成するための作用、及び/又はミトコンドリアの形態若しくはミトコンドリア膜の形態を調節・制御する作用を有しており、ミトコンドリアの形態の異常や、ミトコンドリア膜の形態の異常や、さらにミトコンドリアの膜構造の異常を修復させ正常化させるための試薬として有用となる。
したがって、本発明は、前記したA群に属する新規なタンパク質を提供するものである。本発明のこれらの15種のタンパク質は、それぞれ配列表の配列番号1〜15に記載されるアミノ酸配列を有するものであるが、当該アミノ酸配列は、ミトコンドリアの形態を制御又は調節することができる活性を有している範囲において、配列表に各々記載されている全アミノ酸配列における50%以下の数のアミノ酸が他のアミノ酸に置換され、同じく100%以下の数のアミノ酸が付加され、及び/又は、同じく50%以下の数のアミノ酸が欠失してなるアミノ酸配列を有するものであってもよい。本発明のタンパク質としては、配列表の配列番号1〜15に記載されているタンパク質、及び当該タンパク質と50%以上、好ましくは70%以上、又は80%以上、より好ましくは90%以上のアミノ酸配列における相同性を有するものであって、ミトコンドリアの形態を制御又は調節することができる活性を有しているタンパク質が包含される。
また、本発明は、前記したA〜C群に属するタンパク質の群から選ばれる1種又は2種以上のタンパク質からなるミトコンドリア膜組織形成剤、及びミトコンドリア膜の形態調節剤を提供するものである。
さらに、本発明は、前記したA〜C群に属する22種のタンパク質の群から選ばれる1種又は2種以上のタンパク質が欠損若しくは過剰発現した細胞、又はこれらのタンパク質が添加された細胞であって、ミトコンドリアの形態に異常が生じている細胞に、試験物質を添加して、当該試験物質によるミトコンドリアの形態の変化を測定することからなる、ミトコンドリアの形態を正常化させるために活性な物質をスクリーニングする方法を提供するものである。
【0028】
ミトコンドリアは、生体のエネルギー生産に関与しているだけではなく、活性酸素の供給や、アポトーシスにも強い関連性を有しており、拡張型心筋症、骨髄腫、胃癌、糖尿病などの各種の疾患だけでなく、栄養障害や加齢などにより形態変化を起こすことが知られている。このようなミトコンドリアの形態の変化に、本発明の22種のタンパク質は強い関連性を有しており、これらのタンパク質によりミトコンドリアの形態を制御し、調節することも可能となる。
したがって、本発明のミトコンドリア膜組織形成剤、及びミトコンドリア膜の形態調節剤は、ミトコンドリアの形態異常に起因する各種の疾患や、栄養障害や加齢などによるミトコンドリアの形態の異常を修復するための有効成分として、ミトコンドリアの形態異常に起因する各種の疾患を治療・予防するための医薬組成物の成分として有用なだけでなく、栄養障害や加齢などによる体力の減退を予防・回復するための有効成分として有用である。本発明の医薬組成物は、前記した本発明のA〜C群に属するタンパク質の群から選ばれる1種又は2種以上のタンパク質、及び製薬上許容される担体を含有してなるものである。本発明の医薬組成物における有効成分としてのタンパク質は、タンパク質自体であってもよいが、必要により当該タンパク質に対する抗体、当該タンパク質をコードする遺伝子、頭蓋タンパク質の発現を抑制するためのアンチセンスなどであってもよい。
【0029】
本発明の医薬組成物における「製薬上許容される担体」としては、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等が挙げられる。本発明の医薬組成物は、必要により、前記した製薬上許容される担体の一種以上を用いることにより、錠剤、散剤、顆粒剤、注射剤、液剤、カプセル剤、トローチ剤等の形態に製剤化することができる。本発明の医薬組成物は、経口又は非経口、好ましくは非経口投与される。非経口投与のための剤型としては、注射剤や粘膜投与剤などが挙げられる。
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の年齢、性別、体重及び症状、治療効果、投与方法、処理時間、あるいは該医薬組成物に含有される有効成分(前記したタンパクや、その抗体など)の種類などにより異なるが、通常成人一人当たり、有効成分の量として一回につき1μgから100mgの範囲で投与される。
【0030】
本発明のスクリーニング方法としては、次の(1)から(4)、
(1)前記したA〜C群に属する22種のタンパク質の群から選ばれる1種又は2種以上のタンパク質が欠損若しくは過剰発現した細胞、又はこれらのタンパク質が添加された細胞を培養し、
(2)当該培養された細胞におけるミトコンドリアの形態に異常を生じさせ、
(3)ミトコンドリアの形態に異常が生じている細胞に、試験物質を添加して、
(4)当該試験物質による、当該細胞におけるミトコンドリアの形態の変化を観察・測定する、
ことからなるものである。
この方法における細胞としては、ヒトの細胞、サルの細胞、マウスの細胞、ラットの細胞などの動物細胞、大腸菌、酵母などの微生物細胞などを使用することができる。また、これらの細胞に目的タンパク質を過剰発現させる方法としては、1又は2以上のコピー数を有する遺伝子を用いて形質転換する方法が挙げられる。形質転換方法としては当業者によく知られている通常の手法を採用することができる。また、抗体を用いて目的のタンパク質の機能を障害させたり、遺伝子を欠損させて目的のタンパク質の発現を抑制することもできる。欠損させる方法としては、突然変異法やターゲッティング法などを採用することができる。さらに、細胞種によっては、培養系に目的のタンパク質を添加することにより、目的のタンパク質の過剰発現系と同種の状況を形成してもよい。
ミトコンドリアの形態の変化を観察・測定する方法としては、顕微鏡により観察する方法、目的のタンパク質の抗体による免疫染色法、タグタンパク質による方法、GFPなどの蛍光法などの各種の方法を採用することができる。
本発明のミトコンドリアの形態を正常化させるために活性な物質をスクリーニングする方法により、活性を有すると判定された物質は、ミトコンドリアの各種の機能障害に対する有効成分として有用な物質である。これらの有効性が確認された物質は、医薬の有効成分として、また化粧品や機能性食品における成分として有用である。
【0031】
本発明の前記した各タンパク質に対する抗体を製造することもできる。したがって、本発明は、前記した本発明の22種のタンパク質に対する抗体、好ましくは特異的抗体を提供するものである。
本発明のこれらの抗体は、公知の一般的な製造方法によって製造することができる。例えば、本発明のタンパク質又はその一部のアミノ酸配列からなるタンパク質を免疫原(抗原)として、必要に応じてフロイントアジュバント(Freund's Adjuvant)とともに、哺乳動物、好ましくは、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ウマあるいはウシ、より好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモットまたはウサギに免疫することにより製造できる。ポリクローナル抗体は、当該免疫感作動物から得た血清から取得することができる。またモノクローナル抗体は、当該免疫感作動物から得た抗体産生細胞(脾臓、リンパ節、骨髄あるいは扁桃等、好ましくは脾臓のB細胞)と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマを調製し、該ハイブリドーマをクローン化し、哺乳動物の免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを免疫学的測定法(ELISAなど)により選択することによって製造することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、ミトコンドリアの機能や形態を制御又は調節するタンパク質を網羅的に同定する手法を提供するものであり、本発明の方法によりミトコンドリアの形態を制御又は調節する機能を有するタンパク質を初めて単離し特定することが可能となった。したがって、本発明は、ミトコンドリアの形態を制御又は調節する機能を有する新規なタンパク質を提供するものであり、本発明によりミトコンドリアの形態を制御又は調製するためのミトコンドリア膜組織形成剤及びミトコンドリア膜の形態調節剤が提供される。本発明のミトコンドリア膜組織形成剤及びミトコンドリア膜の形態調節剤は、ミトコンドリアの形態を正常化させることにより、ミトコンドリアの機能を正常化させ、ミトコンドリアの異常に起因する各種の疾患の治療や予防を可能とするだけでなく、栄養障害や加齢に伴うミトコンドリアの機能の減退を回復し、また当該機能を維持することを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の方法により得られたミトコンドリアのマトリックス画分の二次元電気泳動を示す図面に代わる写真である。
【図2】図2は、本発明の方法により得られたマトリックス画分と分離された膜画分の二次元電気泳動を示す図面に代わる写真である。
【図3】図3は、本発明の方法により得られた膜画分をアルカリ液にて洗浄して得られた膜に緩く結合するタンパク質群の二次元電気泳動を示す図面に代わる写真である。
【図4】図4は、本発明の方法により得られた膜貫通ドメインを持つなどの膜に強固に結合する性質を持つタンパク質群の二次元電気泳動を示す図面に代わる写真である。
【図5】図5は、本発明の配列番号1〜12で示されるタンパク質のアミノ酸数とそれらのドメイン構造を模式的に示したものである。
【図6】図6は、本発明の配列番号13〜23で示されるタンパク質のアミノ酸数とそれらのドメイン構造を模式的に示したものである。
【図7】図7は、本発明のタンパク質であるc6orf125(配列番号7)、E3−3a(配列番号9)、及びLOC79135(配列番号2)をコードする遺伝子を含有する遺伝子を、それぞれHeLa細胞へ導入して発現させたときの免疫染色の結果を示す図面に代わるカラー写真である。
【図8】図8は、本発明のタンパク質であるc6orf125(配列番号7)、E3−3a(配列番号9)、及びLOC79135(配列番号2)をコードする遺伝子を含有する遺伝子を、それぞれHeLa細胞へ導入して発現させたときの免疫染色の結果を示す図面に代わるカラー写真である。
【図9】図9は、本発明のA群に属するタンパク質のうちのLOC79714(配列番号5)、CHCHD3(配列番号10)、及びOCIA(配列番号13)をコードする遺伝子を含有する遺伝子を、それぞれHeLa細胞へ導入して発現させたときの免疫染色の結果を示す図面に代わるカラー写真である。
【図10】図10は、本発明のC群に属するPHB(配列番号18)、SLP2(配列番号19)、HADH2(配列番号22)、CGI−51(配列番号20)、及びHAX−1(配列番号21)の各タンパク質をコードする遺伝子を含有する遺伝子を、それぞれHeLa細胞へ導入して発現させたときの免疫染色の結果を示す図面に代わるカラー写真である。
【図11】図11は、本発明のC群に属するPHB(配列番号18)及びSLP2(配列番号19)のタンパク質をコードする遺伝子を含有する遺伝子を、それぞれHeLa細胞へ導入して発現させたときの、これらの細胞におけるミトコンドリア膜電位を、ミトコンドリア膜電位に依存したミトコンドリア染色マーカーRh123で検出した結果を示す図面に代わるカラー写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0035】
ミトコンドリア膜画分の単離と検定
DMEMに10%FBSを添加した培養液を用いて培養した5x10から1x10個のHeLa細胞をトリプシン処理した後に回収し、PCV(packed cell volume)を測定した。細胞塊を10xPCV量の低張液で懸濁したのち、ポッター型ホモゲナイザーでホモゲナイズした後、ショ糖液にて等張とした。これを高速冷却遠心機にて600gで、10分間、4℃にて遠心分離し、上清を細胞質画分とした。得られた細胞質画分を、さらに高速冷却遠心機にて10000gで、10分間、4℃にて遠心分離し、沈殿をミトコンドリア粗画分とした。この沈殿を、等張ショ糖液で懸濁後、密度勾配遠心法に用いた。密度勾配遠心は、OptiPrepTM(Invitrogen社製)を用いて、その35%及び13%、並びに6%Percol(Difco社製)の段階的傾斜濃度(step gradient)を用いて、20000rpmで、16時間、4℃の遠心分離を施行した後、ミトコンドリアのバンドを得た。これを等張ショ糖液で洗浄し、純ミトコンドリア画分とした。
得られた純ミトコンドリア画分を超音波で破砕した後、冷却ミクロ遠心機にて15000rpmで、10分遠心分離して非破砕ミトコンドリアを沈殿として取り除いた後、上清を卓上超遠心機にて100000rpmで、20分、4℃にて遠心分離し、沈殿を粗なミトコンドリア膜画分(A)とし、その上清をマトリックス画分(B)とした。粗な膜画分をアルカリ液にて処理したのち、この条件で超遠心分離を行い、沈殿をミトコンドリア膜に強固に結合するタンパク質群(C)とし、その上清をミトコンドリア膜に弱く結合するタンパク質群(D)とした。
これらの各ミトコンドリア画分の分画の可否を検討するために、それぞれの精製段階で二次元電気泳動にて検討した。二次元電気泳動は以下の方法で実施した。まず各々の画分約200mgのタンパク質をTCA沈殿法で精製し、7M尿素及び2Mチオ尿素を含むサンプル用緩衝液で可溶化した。これをpH3−10のレンジの非線形の等電点電気用ゲル(ImmobilineTM DryStrip pH3-10 NL: Amersham Biosciences)を用いて一次元電気泳動法を施行後、ヨードアセトアミドにてアルキル化処理して、二次元目の電気泳動に供した。二次元目の電気泳動は10%または12%のSDS−PAGEを施行し、銀染色またはCBB染色にてタンパク質のスポットを検出した。
【0036】
図1は粗なミトコンドリア膜画分(A)を用いて、また図2はマトリックス画分(B)を用いて、前述の二次元電気泳動法を用いて展開した図である。二次元目には10%SDS−PAGEを施行し、銀染色にてタンパク質のスポットを検出した。その結果、図1と図2の二つのサンプルを比較すると、マトリックス画分には可溶性のタンパク質(例えばHSP60:図1及び図2中の矢印参照)が多くみられ、超音波破細と超遠心法による分離はよく行なわれていることがわかった。
図3は、同様の方法でミトコンドリア膜に強固に結合するタンパク質群(C)について検討した結果であり、図4は同様にミトコンドリア膜に弱く結合するタンパク質群(D)について検討した結果である。なお、ゲルの染色はCBB染色法を用いた。その結果、膜タンパク質(例えばATP合成酵素dサブユニット:図3及び図4中の矢印参照)は膜に強固に結合するタンパク質群(C)に多く見られることなどから、アルカリ洗浄法による精製はよく行なわれたことがわかった。
【実施例2】
【0037】
ミトコンドリア膜に強固に結合するタンパク質群の2次元展開とタンパク質の網羅的同定
前記した実施例1で得られたミトコンドリア膜に強固に結合するタンパク質群(C)を網羅的に解析するために、この画分を改めて12%SDS−PAGEを用いて二次元電気泳動法を行い、CBB染色の染色性を高めてタンパク質を検出したところ、合計247スポットを検出した(図3参照)。
これらのスポットをすべて切り出し、トリプシンにてゲル中での消化(in gel digestion)を行った後、ペプチドを精製し、これをLC−MS/MS(ナノLCとしてParadigm MS−4と、MS/MSとしてFinigan LTQとを組み合わせて用いた。)にて分析し、ペプチド配列タギング(Peptide sequence tagging)法を用いてデータベース検索を行ない、各スポットのタンパク質をすべて同定した。247個のスポットを解析し、重複を排除して171種類のタンパク質を同定した。その結果を分類したものを表1に示した。以上の結果から、同定されたタンパク質がミトコンドリアタンパク質であり、実施例1に記載したミトコンドリアの精製標品の純度が高いことが示された。
表1で同定されたタンパク質の中で、新たにミトコンドリアの形態や機能の調節に関与する可能性のあるタンパク質に着目し、各々のタンパク質の生物学的情報の程度により以下の(A)〜(C)の3群に分類した。
A.機能が明らかにされていないタンパク質群。
B.機能の一部に関する知見はあるが、ミトコンドリアでの機能が明らかでないタンパ ク質群。
C.ミトコンドリアへの局在が明らかであり、機能の一部に関する知見はあるが、ミト コンドリアの形態への影響に関する知見がないタンパク質群。
【0038】
これらのタンパク質の中のA群に属する15種(A−1〜A−15)、B群に属する2種(B−1〜B−2)、及びC群に属する5種(C−1〜C−5)の合計22種のタンパク質について、同定した結果と一致するアミノ酸配列を有するものをデーターベースにより検索した結果を以下に示す。これらのタンパク質群の各タンパク質の検索結果に基づくアミノ酸配列と、その合致した部分アミノ酸配列(以下のアミノ酸配列中で下線が付されている部分。)を以下に示す。以下の表示では各アミノ酸はアミノ酸の1文字表記で示されている。
(1)タンパク質A−1(配列番号1に記載のタンパク質):
検索結果:NP_060336 hypothetical protein LOC54968
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):10.00%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
mlflalgspw avelplcgrr talcaaaalr
1
gprasvsras sssgpsgpva gwstgpsgaa
31
rllrrpgraq ipvywegyvr flntpsdkse
61
dgrliytgnm aravfgvkcf systsliglt
91
flpyiftqnn aisesvplpi qiifygimgs
121
ftvitpvllh fitkgyvirl yheattdtyk
151
aitynamlae tstvfhqndv kipdakhvft
181
tfyaktksll vnpvlfpnre dyihlmgydk
211
eefilymeet seekrhkddk
241 260
(下線部分は、配列合致部分を示す。以下同じ。)
【0039】
(2)タンパク質A−2(配列番号2に記載のタンパク質):
検索結果:NP_077027 hypothetical protein LOC79135
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):13.13%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
mfkviqrsvg paslslltfk vyaapkkdsp
1
pknsvkvdel slysvpegqs kyveearsql
31
eesisqlrhy cepyttwcqe tysqtkpkmq
61
slvqwgldsy dylqnappgf fprlgvigfa
91
gliglllarg skikklvypp gfmglaasly
121
ypqqaivfaq vsgerlydwg lrgyiviedl
151
wkenfqkpgn vknspgtk
181 198
【0040】
(3)タンパク質A−3(配列番号3に記載のタンパク質):
検索結果:NP_001001692 FLJ45139 protein
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's): 4.41%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
mkkrfynakt vsillvkqqn nwaissqlhh
1
qlmpnlesiw lrmekeslpr slnfdhhgiy
31
mnwqtkfmll lktvsiprsq aiftqpglgs
61
gtpqgykqsh salgwaatls cwgkdgsrql
91
swvtagssfh ksdlis
121 136
【0041】
(4)タンパク質A−4(配列番号4に記載のタンパク質):
検索結果:NP_775932 hypothetical protein LOC285492
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):10.86%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
mrlpgapalp dadflvhlhf lvqtswficn
1
flvripwasa lpdapallvi lektfpehat
31
crgcwvsgyl cwtapgncic sanvgflkie
61
ntyrqihhth mhrhththtd ksithtctdt
91
htqsqrhrlt sralrlfiln aitdtskfga
121
avffyvyclf adsvykffpf lppfr
151 175
【0042】
(5)タンパク質A−5(配列番号5に記載のタンパク質):
検索結果:NP_078937 hypothetical protein LOC79714
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):13.16%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
mtrtlcspgp sqpgekrpee valglhhrlp
1
algralghsi qqratstakt wwdryeefvg
31
lnevreaqgk vteaekvfmv arglvreare
61
dlevhqaklk evrdrldrvs redsqylela
91
tlehrmlqee krlrtaylra edserekfsl
121
fsaavreshe kertraertk nwsligsvlg
151
aligvagsty vnrvrlqelk allleaqkgp
181
vslqeaireq assysrqqrd lhnlmvdlr
211
lvhaagpgqd sgsqagsppt rdrdvdvlsa
241
alkeqlshsr qvhscleglr eqldglektc
271
sqmagvvqlv ksaahpglve padgampsfl
301
leqgsmilal sdteqrleaq vnrntiystl
331
vtcvtfvatl pvlymlfkas
361 380
【0043】
(6)タンパク質A−6(配列番号6に記載のタンパク質):
検索結果:AAQ89151 HSAL5836
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):31.46%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
mhsalatall llipllllrr ffdgsalreg
1
gsrekpgpsr rrwaghspep wrsptlrsgp
31
gfpsyplgvp afvfispgps psqwalpcl
61 89
【0044】
(7)タンパク質A−7(配列番号7に記載のタンパク質):
検索結果:NP_115716 chromosome 6 open reading frame 125
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):53.13%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
maasryrrfl klceewpvde tkrgrdlgay
1
lrqrvaqafr egentqvaep eacdqmyesl
31
arlhsnyykh kyprprdtsf sglsleeyk
61
ilstdtleel keidkgmwkk lqekfapkgp
91
eedhka
121 126
【0045】
(8)タンパク質A−8(配列番号8に記載のタンパク質):
検索結果:BAC04486 unnamed protein product
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):18.60%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
mksklpppsg rlcshswrtg sgaapggsag
1
aaegffagtv qqaardktar qrpmargsse
31
pespaarrfs ipgsvqghld avgksrsgdi
61
gsslrveagd krtqasperq phcgahdaqg
91
ehheaqeig
121 129
【0046】
(9)タンパク質A−9(配列番号9に記載のタンパク質):
検索結果:NP_951032 nuclear protein E3-3 isoform a
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):35.33%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
matalalrsl yrarpslrcp pvelpwaprr
1
ghrlspadde lyqrtrisll qreaaqamyi
31
dsynsrgfmi ngnrvlgpca llphsvvqwn
61
vgshqdited sfslfwllep rieivvvgtg
91
drterlqsqv lqamrqrgia vevqdtpnac
121
atfnflcheg rvtgaalipp pggtsltslg
151
qaaq
181 184
【0047】
(10)タンパク質A−10(配列番号10に記載のタンパク質):
検索結果:NP_060282 coiled-coil-helix-coiled-coil-helix domain
containing 3; CHCHD3
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):39.21%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
mggttstrrv tfeadeneni tvvkgirlse
1
nvidrmkess psgsksqrys gaygasvsde
31
elkrrvaeel aleqakkese dqkrlkqake
61
ldreraaane qltrailrer icseeeraka
91
khlarqleek drvlkkqdaf ykeqlarlee
121
rssefyrvtt eqyqkaaeev eakfkryesh
151
pvcadlqaki lqcyrenthq tlkcsalatq
181
ymhcvnhakq smlekgg
211 227
【0048】
(11)タンパク質A−11(配列番号11に記載のタンパク質):
検索結果:NP_057026 hypothetical protein LOC51001 ; CGI-12
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):41.25%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
malsaqqipr wfnsvklrsl inaaqltkrf
1
trpartllhg fsaqpqissd ncflqwgfkt
31
yrtsslwnss qstssssqen nsaqssllps
61
mneqsqktqn issfdselfl eeldelppls
91
pmqpiseeea iqiiadpplp pasftlrdyv
121
dhsetlqklv llgvdlskie khpeaanlll
151
rldfekdikq mllflkdvgi ednqlgaflt
181
knhaifsedl enlktrvayl hsknfskadv
211
aqmvrkapfl lnfsverldn rlgffqkele
241
lsvkktrdlv vrlprlltgs lepvkenmk
271
yrlelgfkhn eiqhmitrip kmltankmkl
301
tetfdfvhnv msiphhiivk fpqvfntrlf
331
kvkerhlflt ylgraqydpa kpnyisldk
361
vsipdeifce eiakasvqdf ekflktl
391 417
【0049】
(12)タンパク質A−12(配列番号12に記載のタンパク質):
検索結果:Q9H078 suppressor of potassium transport defect 3; SKD3
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):30.41%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
MLGSLVLRRK ALAPRLLLRL LRSPTLRGHG
1
GASGRNVTTG SLGEPQWLRV ATGGRPGTSP
31
ALFSGRGAAT GGRQGGRFDT KCLAAATWGR
61
LPGPEETLPG QDSWNGVPSR AGLGMCALAA
91
ALVVHCYSKS PSNKDAALLE AARANNMQEV
121
SRLLSEGADV NAKHRLGWTA LMVAAINRNN
151
SVVQVLLAAG ADPNLGDDFS SVYKTAKEQG
181
IHSLEDGGQD GASRHITNQW TSALEFRRWL
211
GLPAGVLITR EDDFNNRLNN RASFKGCTAL
241
HYAVLADDYR TVKELLDGGA NPLQRNEMGH
271
TPLDYAREGE VMKLLRTSEA KYQEKQRKRE
301
AEERRRFPLE QRLKEHIIGQ ESAIATVGAA
331
IRRKENGWYD EEHPLVFLFL GSSGIGKTEL
361
AKQTAKYMHK DAKKGFIRLD MSEFQERHEV
391
AKFIGSPPGY VGHEEGGQLT KKLKQCPNAV
421
VLFDEVDKAH PDVLTIMLQL FDEGRLTDGK
451
GKTIDCKDAI FIMTSNVASD EIAQHALQLR
481
QEALEMSRNR IAENLGDVQI SDKITISKNF
511
KENVIRPILK AHFRRDEFLG RINEIVYFLP
541
FCHSELIQLV NKELNFWAKR AKQRHNITLL
571
WDREVADVLV DGYNVHYGAR SIKHEVERR
601
VNQLAAAYEQ DLLPGGCTLR ITVEDSDKQL
631
LKSPELPSPQ AEKRLPKLRL EIIDKDSKTR
661
RLDIRAPLHP EKVCNTI
691 707
【0050】
(13)タンパク質A−13(配列番号13に記載のタンパク質):
検索結果:NP_060300 ovarian carcinoma immunoreactive antigen; OCIA
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):13.47%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
mngradfrep naevprpiph igpdyiptee
1
errvfaecnd esfwfrsvpl aatsmlitqg
31
liskgilssh pkygsipkli lacimgyfag
61
klsyvktcqe kfkklenspl gealrsgqar
91
rssppghyyq kskydssvsg qssfvtspaa
121
dniemlphye pipfsssmne saptgitdhi
151
vqgpdpnlee spkrknitye elrnknresy
181
evsltqktdp svrpmhervp kkevkvnkyg
211
dtwde
241 245
【0051】
(14)タンパク質A−14(配列番号14に記載のタンパク質):
検索結果:AAH01837 glioblastoma amplified sequence; GBAS
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's): 9.44%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
maarvlrarg aawaggllqr aapcsllprl
1
rtwtsssnrs redswlkslf vrkvdprkda
31
hsnllakket snlyklqfhn vkpecleayn
61
icqevlpki hedkhypctl vgtwntwyge
91
qdqavhlwry eggypaltev mnklrenkef
121
lefrkarsdm llsrknqlll efsfwnepvp
151
sgpniyelr syqlrpgtmi ewgnywarai
181
rfrqdgneav ggffsqigql ymvhhlwayr
211
dlqtredirn aawhkhgwee lvyytvpliq
241
emesrimipl ktsplq
271 286
【0052】
(15)タンパク質A−15(配列番号15に記載のタンパク質):
検索結果:NP_149061 cat eye syndrome chromosome region,
candidate 5 isoform 2 precursor
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's): 3.87%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
maawgcvaal gaarglcwra araaaglqgr
1
parrcyavgp aqspptfgfl ldidgvlvrg
31
hrvipaalka frrlvnsqgq lrvpvvfvtn
61
agnilqhska qelsallgce vdadqvilsh
91
spmklfseyh ekrmlvsgqg pvmenaqglg
121
frnvvtvdel rmafplldmv dlerrlkttp
151
lprndfprie gvlllgepvr wetslqlimd
181
vllsngspga glatppyphl pvlasnmdll
211
wmaeakmprf ghgtfllcle tiyqkvtgke
241
lryeglmgkp siltyqyaed lirrqaerrg
271
waapirklya vgdnpmsdvy ganlfhqylq
301
kathdgapel gaggtrqqqp sasqscisil
331
vctgvynprn pqstepvlgg geppfhghrd
361
lcfspglmea shvvndvnea vqlvfrkegw
391
ale
421 423
【0053】
(16)タンパク質B−1(配列番号16に記載のタンパク質):
検索結果:NP_006308 brain abundant, membrane attached
signal protein 1
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):76.21%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
mggklskkkk gynvndekak ekdkkaegaa
1
teeegtpkes epqaaaepae akegkekpdq
31
daegkaeeke gekdaaaake eapkaepekt
61
egaaeakaep pkapeqeqaa pgpaaggeap
91
kaaeaaaapa esaapaagee pskeegepkk
121
teapaapaaq etksdgapas dskpgsseaa
151
pssketpaat eapsstpkaq gpaasaeepk
181
pveapaansd qtvtvke
211 227
【0054】
(17)タンパク質B−2(配列番号17に記載のタンパク質):
検索結果:NP_002083 G-rich RNA sequence binding factor 1
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):13.92%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
magtrwvlga llrgcgcncs scrrtgaacl
1
pfysaasypa lrasllpqsl aaaaavptrs
31
ysqeskttyl edlppppeye lapskleeev
61
ddvfliraqg lpwsctmedv lnffsdcrir
91
ngengihfll nrdgkrrgda liemeseqdv
121
qkalekhrmy mgqryvevye innedvdalm
151
kslqvksspv vndgvvrlrg lpyscnekdi
181
vdffaglniv ditfvmdyrg rrktgeayvq
211
feepemanqa llkhreeign ryieifpsrr
241
nevrthvgsy kgkkiasfpt akyitepemv
271
feehevnedi qpmtafesek eielpkevpe
301
klpeaadfgt tsslhfvhmr glpfqanaqd
331
iinffaplkp vritmeysss gkatgeadvh
361
fethedavaa mlkdrshvhh ryielflnsc
391
pkgk
421 424
【0055】
(18)タンパク質C−1(配列番号18に記載のタンパク質):
検索結果:NP_002625 prohibitin; PHB
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):29.04%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
maakvfesig kfglalavag gvvnsalynv
1
daghravifd rfrgvqdivv gegthflipw
31
vqkpiifdcr srprnvpvit gskdlqnvni
61
tlrilfrpva sqlpriftsi gedydervlp
91
sitteilksv varfdageli tqrelvsrqv
121
sddlteraat fglilddvsl thltfgkeft
151
eaveakqvaq qeaerarfvv ekaeqqkkaa
181
iisaegdska aelianslat agdglielrk
211
leaaediayq lsrsrnityl pagqsvllql
241
pq
271272
【0056】
(19)タンパク質C−2(配列番号19に記載のタンパク質):
検索結果:NP_038470 stomatin-like protein 2; SLP2
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):41.01%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
mlaraargtg alllrgslla sgraprrass
1
glprntvvlf vpqqeawvve rmgrfhrile
31
pglnilipvl driryvqslk eivinvpeqs
61
avtldnvtlq idgvlylrim dpykasygve
91
dpeyavtqla qttmrselgk lsldkvfrer
121
eslnasivda inqaadcwgi rclryeikdi
151
hvpprvkesm qmqveaerrk ratvlesegt
181
resainvaeg kkqaqilase aekaeqinqa
211
ageasavlak akakaeairi laaaltqhng
241
daaasltvae qyvsafskla kdsntillps
271
npgdvtsmva qamgvygalt kapvpgtpds
301
lssgssrdvq gtdasldeel drvkms
331 356
【0057】
(20)タンパク質C−3(配列番号20に記載のタンパク質):
検索結果:NP_056195 CGI-51 protein
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's): 9.38%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
mgtvharsle plpssgpdfg glgeeaefve
1
vepeakqeil enkdvvvqhv hfdglgrtkd
31
diiiceigdv fkaknlievm rkshearekl
61
lrlgifrqvd vlidtcqgdd alpngldvtf
91
evtelrrltg syntmvgnne gsmvlglklp
121
nllgraekvt fqfsygtket syglsffkpr
151
pgnfernfsv nlykvtgqfp wsslretdrg
181
msaeysfpiw ktshtvkweg vwrelgclsr
211
tasfavrkes ghslksslsh amvidsrnss
241
ilprrgallk vnqelagytg gdvsfikedf
271
elqlnkqlif dsvfsasfwg gmlvpigdkp
301
ssiadrfylg gptsvrgfsm hsigpqsegd
331
ylggeaywag glhlytplpf rpgqggfgel
361
frthfflnag nlcnlnygeg pkahirklae
391
cirwsygagi vlrlgniarl elnycvpmgv
421
qtgdricdgv qfgagirfl
451 469
【0058】
(21)タンパク質C−4(配列番号21に記載のタンパク質):
検索結果:NP_006109 HS1 binding protein; HAX1
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):18.64%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
mslfdlfrgf fgfpgprshr dpffggmtrd
1
edddeeeeee ggswgrgnpr fhspqhppee
31
fgfgfsfspg ggirfhdnfg fddlvrdfns
61
ifsdmgawtl pshppelpgp esetpgerlr
91
egqtlrdsml kypdshqpri fggvlesdar
121
sespqpapdw gsqrpfhrfd dvwpmdphpr
151
tredndldsq vsqeglgpvl qpqpksyfk
181
isvtkitkpd giveerrtvv dsegrtettv
211
trheadsspr gdpesprppa lddafsildl
241
flgrwfrsr
271 279
【0059】
(22)タンパク質C−5(配列番号22に記載のタンパク質):
検索結果:NP_004484 hydroxyacyl-Coenzyme A dehydrogenase,
type II; HADH2
AA’によるアミノ酸配列の一致率(protein coverage by AA's):46.36%
検索されたアミノ酸配列とその一致部分
maaacrsvkg lvavitggas glglataerl
1
vgqgasavll dlpnsggeaq akklgnncvf
31
apadvtsekd vqtalalakg kfgrvdvavn
61
cagiavaskt ynlkkgqtht ledfqrvldv
91
nlmgtfnvir lvagemgqne pdqggqrgvi
121
intasvaafe gqvgqaaysa skggivgmtl
151
piardlapig irvmtiapgl fgtplltslp
181
ekvcnflasq vpfpsrlgdp aeyahlvqai
211
ienpflngev irldgairmq p
241 261
【0060】
これらのタンパク質の中のA群に属する15種(A−1〜A−15)、B群に属する2種(B−1〜B−2)、及びC群に属する5種(C−1〜C−5)の合計22種のタンパク質についての検索結果に基づいたアミノ酸配列を配列表の配列番号1〜22に示し、その塩基配列を配列番号23〜44に示す。
これらのタンパク質のドメイン構成を、それぞれのタンパク質についてSIB(Swiss Institute of Bioinformatics)のプロテオミクスサーバーであるExPASy(Expert Protein Analysis System)にアクセスして、各種の予測ツールでドメイン構成を予測した。この結果を図5及び図6に示す。これらの結果から、同定された多くのタンパク質が予測上のミトコンドリア標的シグナル(MTS)や膜貫通ドメインなどを持つタンパク質であることが明らかとなった。
【実施例3】
【0061】
ミトコンドリア膜タンパク質群のcDNAの単離と細胞への過剰発現によるミトコンドリアへの効果の検討
実施例1及び2において単離され同定されたタンパク質群のそれぞれのcDNAをPCR法により単離し、当該タンパク質のカルボキシル末端にFLAGタグなどのタグタンパク質を融合させるような融合タンパク質をコードする遺伝子を構築し、これを動物細胞用発現ベクターに挿入したプラスミドを作製した。これらの遺伝子をHeLa細胞に導入し、発現させた。これらの発現細胞を免疫細胞染色法にて、タグ標識タンパク質とミトコンドリアのタンパク質としてチトクロームC(cyt. C)に対する抗体を用いて、二重染色を行なった。これを共焦点レーザー顕微鏡で観察した。
結果を図7に示す。この結果の拡大図を図8に示す。この結果、c6orf125およびE3−3aは、管状の形態をもつミトコンドリアの先端部に位置し、ミトコンドリアの融合や分裂に関与する可能性がある。また、LOC79135はミトコンドリアが車軸状の形態をとるように誘導する活性があることが示された。
また、タンパク質としてLOC79714、OCIA、及びCHCHD3を同様に行った結果を図9に示す。この結果、OCIAおよびCHCHD3のタンパク質はミトコンドリアに局在すること、LOC79714およびCHCHD3は、ミトコンドリアを凝集させる活性が存在することが示された。
【実施例4】
【0062】
タンパク質として、PHB、SLP2、及びHADH2、並びにCGI−51、及びHAX−1を用いて、実施例3と同様の免疫染色を行なった。なお、PHB、SLP2、及びHADH2については、ミトコンドリアのマーカーとしてcyt.Cに代えてOPA1の抗体を用いた。
この結果を図10に示す。この結果、いずれのタンパク質も、ミトコンドリアの形態を凝集させる活性があることが示された。
【実施例5】
【0063】
ミトコンドリアの膜電位に与える影響について
C群に属するタンパク質であるPHB及びSLP2のカルボキシル末端にFLAGタグを融合させた融合タンパク質をコードする遺伝子をHeLa細胞に強制発現させ、ミトコンドリア膜電位に依存したミトコンドリア染色マーカーRh123でミトコンドリアの膜電位を検出した。
結果を図11に示す。その結果、SLP2の過剰発現細胞ではミトコンドリアの膜電位の低下が認められなかったものの、PHBの過剰発現細胞ではミトコンドリアの膜電位の低下が認められた(図11の矢印)。このことは、PHBタンパク質がミトコンドリアにおいて膜電位の調節に関わっている可能性を示している。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ミトコンドリアの形態を制御又は調節することができる機能を有する新規なタンパク質及び、当該タンパク質を用いたミトコンドリア膜組織形成剤及びミトコンドリア膜の形態調節剤を提供するものであり、ミトコンドリアの形態の異常に起因する各種の疾患の治療剤や予防剤などの医薬組成物だけでなく、ミトコンドリアの形態や機能を維持するための化粧品や機能性食品などの材料として産業上の利用可能性を有するものである。
【配列表フリーテキスト】
【0065】
配列番号1:NP−060336のアミノ酸配列。
配列番号2:NP−077027のアミノ酸配列。
配列番号3:NP−001001692のアミノ酸配列。
配列番号4:NP−775932のアミノ酸配列。
配列番号5:NP−078937のアミノ酸配列。
配列番号6:AAQ89151のアミノ酸配列。
配列番号7:NP−115716のアミノ酸配列。
配列番号8:BAC04486のアミノ酸配列。
配列番号9:NP−951032のアミノ酸配列。
配列番号10:NP−060282のアミノ酸配列。
配列番号11:NP−057026のアミノ酸配列。
配列番号12:Q9H078のアミノ酸配列。
配列番号13:NP−060300のアミノ酸配列。
配列番号14:AAH01837のアミノ酸配列。
配列番号15:NP−149061のアミノ酸配列。
配列番号16:NP−006308のアミノ酸配列。
配列番号17:NP−002083のアミノ酸配列。
配列番号18:NP−002625のアミノ酸配列。
配列番号19:NP−038470のアミノ酸配列。
配列番号20:NP−056195のアミノ酸配列。
配列番号21:NP−006109のアミノ酸配列。
配列番号22:NP−004484のアミノ酸配列。
配列番号23:NP−060336の塩基配列。
配列番号24:NP−077027の塩基配列。
配列番号25:NP−001001692の塩基配列。
配列番号26:NP−775932の塩基配列。
配列番号27:NP−078937の塩基配列。
配列番号28:AAQ89151の塩基配列。
配列番号29:NP−115716の塩基配列。
配列番号30:BAC04486の塩基配列。
配列番号31:NP−951032の塩基配列。
配列番号32:NP−060282の塩基配列。
配列番号33:NP−057026の塩基配列。
配列番号34:Q9H078の塩基配列。
配列番号35:NP−060300の塩基配列。
配列番号36:AAH01837の塩基配列
配列番号37:NP−149061の塩基配列。
配列番号38:NP−006308の塩基配列。
配列番号39:NP−002083の塩基配列。
配列番号40:NP−002625の塩基配列。
配列番号41:NP−038470の塩基配列。
配列番号42:NP−056195の塩基配列。
配列番号43:NP−006109の塩基配列。
配列番号44:NP−004484の塩基配列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列表の配列番号2,7,9のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつミトコンドリア膜組織の形成能と共に、ミトコンドリアを管状又は車軸状の形態に誘導する活性を有するタンパク質を有効成分として含む、ミトコンドリアの形態の制御又は調節剤。
【請求項2】
配列表の配列番号2,7,9のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつミトコンドリア膜組織の形成能を有すると共に、ミトコンドリアを管状又は車軸状の形態に誘導する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を有効成分として含むミトコンドリアの形態の制御又は調節剤。
【請求項3】
配列表の配列番号2,7,9のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつミトコンドリア膜組織の形成能を有すると共に、ミトコンドリアを管状又は車軸状の形態に誘導する活性を有するタンパク質の群から選ばれる1種又は2種以上のタンパク質が欠損若しくは過剰発現した細胞、又はこれらのタンパク質が添加された細胞であって、ミトコンドリアの形態に異常が生じている細胞に、試験物質を添加して、当該試験物質によるミトコンドリアの形態の変化を測定することからなる、ミトコンドリアの形態を正常化させるために活性な物質をスクリーニングする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−207903(P2011−207903A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125684(P2011−125684)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【分割の表示】特願2005−311816(P2005−311816)の分割
【原出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(505246789)学校法人自治医科大学 (49)
【Fターム(参考)】