説明

ミラー装置

【課題】簡単な構成でミラーを格納する。
【解決手段】車両12では、サイドドアが完全に閉じられる際に、ドアミラー装置10の慣性機構30が車幅方向内側への慣性力によって作動されて、カウンタウエイト34が車幅方向内側へスライドされることで、ラッチ38の作動部42が上側へ回動されて、ラッチ38の係合部44が下側へ回動される。このため、バイザ24の係合孔26への係合部44先端の挿入が解除されることで、バイザ24及びミラーが付勢力によって車幅方向内側へ回動されて格納される。これにより、簡単な構成でバイザ24及びミラーを格納できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに設けられるミラーを備えたミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミラー装置としては、フロントドアが開閉される際にそれぞれドアミラー格納機構部によってドアミラーが格納及び展開されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このミラー装置では、ドアミラー格納機構部の構成が複雑である。
【特許文献1】特開2005−81878公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮し、簡単な構成でミラーを展開又は格納できるミラー装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のミラー装置は、車両のドアに設けられるミラーと、前記ドアが開けられる際及び前記ドアが閉じられる際の少なくとも一方において慣性力によって作動されて前記ミラーが展開又は格納される慣性部と、を備えている。
【0006】
請求項2に記載のミラー装置は、請求項1に記載のミラー装置において、前記ミラーを展開方向又は格納方向へ付勢するミラー付勢手段と、前記慣性部に設けられ、前記ミラーに係合する係合部材と、前記慣性部を付勢可能にされ、前記慣性部が作動された際に前記係合部材の前記ミラーへの係合が解除されて前記ミラー付勢手段によって前記ミラーが展開又は格納される慣性付勢手段と、を備えている。
【0007】
請求項3に記載のミラー装置は、請求項1又は請求項2に記載のミラー装置において、前記慣性部に設けられ、前記慣性部が作動される際に慣性力によって移動される移動部材を備えている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載のミラー装置では、車両のドアにミラーが設けられている。
【0009】
ここで、ドアが開けられる際及びドアが閉じられる際の少なくとも一方において、慣性部が慣性力によって作動されて、ミラーが展開又は格納される。このため、簡単な構成でミラーを展開又は格納することができる。
【0010】
請求項2に記載のミラー装置では、ミラー付勢手段がミラーを展開方向又は格納方向へ付勢しており、慣性部に設けられた係合部材がミラーに係合している。
【0011】
ここで、慣性付勢手段が慣性部を付勢可能にされており、慣性部が作動された際に、係合部材のミラーへの係合が解除されて、ミラー付勢手段によってミラーが展開又は格納される。このため、簡単な構成でミラーを展開又は格納することができる。
【0012】
請求項3に記載のミラー装置では、慣性部が作動される際に、移動部材が慣性力によって移動される。このため、慣性部を適切に作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図2には、本発明の実施の形態に係るドアミラー装置10(ミラー装置)が上方から見た平面図にて示されており、図3には、ドアミラー装置10が車両左斜め後方から見た斜視図にて示されている。さらに、図4には、ドアミラー装置10が適用されて構成された車両12の主要部が上方から見た平面図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外方(車両右方)を矢印OUTで示し、上方を矢印UPで示す。
【0014】
本実施の形態における車両12には、車幅方向両端部において、ドアとしてのサイドドア14(特にフロントサイドドア)が設けられており、サイドドア14は、車両前側端部において車体側に回動可能に支持されて、開閉可能にされている。これにより、サイドドア14が車幅方向外側(車両前側)へ回動されて開けられることで、車室16の車幅方向外側が開放されて、車両12に対して乗員(図示省略)が乗降可能になる(図5参照)。一方、サイドドア14が車幅方向内側(車両後側)へ回動されて閉じられることで、車室16の車幅方向外側が閉鎖される(図4参照)。また、サイドドア14は、所定回動範囲において、回動可能にされており、サイドドア14が完全に開けられる回動位置においては、サイドドア14の車幅方向外側への回動が係止されると共に、サイドドア14が完全に閉じられる回動位置においては、サイドドア14の車幅方向内側への回動が係止される。
【0015】
サイドドア14の車両前側端部かつ上下方向中間部には、車幅方向外側において、ドアミラー装置10が設けられており、ドアミラー装置10は、サイドドア14と一体に回動可能にされている。
【0016】
ドアミラー装置10の下部には、支持部材としての略半円柱状のステー18が設けられており、ステー18がサイドドア14に取り付けられることで、ドアミラー装置10がサイドドア14に取り付けられている。ステー18の上面には、円軸状の支持軸20の下端が固定されており、支持軸20は、ステー18から上方へ突出している。支持軸20は、ミラー付勢手段としての捩じりコイルスプリング22の中央部分に挿通されており、捩じりコイルスプリング22の一端は、支持軸20又はステー18に係止されている。
【0017】
ステー18の上側には、配置部材としての略直方体形容器状のバイザ24が設けられており、バイザ24は、車幅方向内側端部において支持軸20に支持されて、支持軸20を中心として回動可能にされている。バイザ24には、上記捩じりコイルスプリング22の他端が係止されており、バイザ24は、捩じりコイルスプリング22によって、車幅方向内側(車両後側)へ回動する方向へ付勢されている。バイザ24の車両後側面は、車両後側へ開放されており、バイザ24の下壁には、車幅方向内側端部において、被係合部としての矩形状の係合孔26が貫通形成されている。
【0018】
バイザ24内には、車両後側面(開放部分)近傍において、略矩形板状のミラー28が配置(設置)されており、ミラー28の表面が車両後側へ向けられることで、車室16の乗員がミラー28によって車両後側を視認可能にされている。ミラー28は、バイザ24と一体に回動可能にされており、バイザ24及びミラー28が車幅方向内側(車両後側)へ回動されることで、バイザ24及びミラー28がサイドドア14に対する突出を解除されて格納される(図4の2点鎖線参照)と共に、バイザ24及びミラー28が車幅方向外側(車両前側)へ回動されることで、バイザ24及びミラー28がサイドドア14に対して突出されて展開(復帰)される。
【0019】
上記ステー18には、慣性機構30が設けられており、慣性機構30の全周には、収容部材としての略直方体形容器状のハウジング32が設けられている。
【0020】
図1に示す如く、ハウジング32には、下壁上の内部において、慣性部を構成する移動部材としての柱状のカウンタウエイト34が設けられており、カウンタウエイト34は、断面が略直角三角形状にされて、上面が車幅方向外側へ向かうに従い上側へ向かう方向へ傾斜されている。カウンタウエイト34は、質量を大きくされると共に、車幅方向へスライド(移動)可能にされている。
【0021】
カウンタウエイト34とハウジング32の車幅方向内側壁との間には、慣性付勢手段を構成する移動付勢手段としての移動コイルスプリング36が架け渡されており、移動コイルスプリング36は、自然長にされ又は圧縮されて、カウンタウエイト34を車幅方向外側へ付勢可能にされている。
【0022】
ハウジング32内には、カウンタウエイト34の上側において、慣性部を構成する係合部材としての曲棒状のラッチ38が設けられており、ラッチ38は、ハウジング32に支持された円軸状の支軸40を中心として、上下方向へ回動(移動)可能にされている。ラッチ38の支軸40より車幅方向内側部分は、略横C字形棒状の作動部42にされており、作動部42の先端は、カウンタウエイト34の上面(傾斜面)に上側から接触している。作動部42の基端には、カウンタウエイト34が車幅方向内側から接触しており、これにより、カウンタウエイト34の車幅方向外側へのスライドが係止されている。ラッチ38の支軸40より車幅方向外側部分は、略L字形棒状の係合部44にされており、係合部44の先端は、ハウジング32の上壁を貫通して、ハウジング32の上側に突出されている。係合部44の先端は、バイザ24の係合孔26に挿入(係合)されており、係合部44が捩じりコイルスプリング22の付勢力によるバイザ24及びミラー28の車幅方向内側への回動を係止して、バイザ24及びミラー28が展開された状態にされている。
【0023】
ラッチ38の係合部44とハウジング32の下壁との間には、慣性付勢手段を構成する係合付勢手段としての係合コイルスプリング46が架け渡されており、係合コイルスプリング46は、自然長にされ又は圧縮されて、係合部44を上側へ付勢可能にされている。
【0024】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0025】
以上の構成の車両12では、サイドドア14が開けられた状態からドアミラー装置10と共に車幅方向内側へ回動されて、サイドドア14が完全に閉じられる際に、サイドドア14及びドアミラー装置10の車幅方向内側への回動が急激に停止される(サイドドア14及びドアミラー装置10に車幅方向外側への衝撃が作用する)ことで、サイドドア14及びドアミラー装置10に車幅方向内側への慣性力が作用して、ドアミラー装置10の慣性機構30が作動される。
【0026】
すなわち、カウンタウエイト34に車幅方向内側への慣性力が作用して、カウンタウエイト34が、移動コイルスプリング36及び係合コイルスプリング46の付勢力に抗して、車幅方向内側へスライドされることで、カウンタウエイト34の上面(傾斜面)によってラッチ38の作動部42が上側へ回動されて、ラッチ38の係合部44が下側へ回動される。これにより、バイザ24の係合孔26への係合部44先端の挿入が解除されて、捩じりコイルスプリング22の付勢力によるバイザ24及びミラー28の車幅方向内側への回動の係止が解除されることで、捩じりコイルスプリング22の付勢力によってバイザ24及びミラー28が車幅方向内側へ回動されて格納される。
【0027】
このため、サイドドア14が閉じられる際(特に車室16の乗員がサイドドア14を開閉して車両12から降車する際)に、バイザ24及びミラー28を自動で格納することができる。
【0028】
バイザ24及びミラー28が格納された状態では、移動コイルスプリング36の付勢力によってカウンタウエイト34がラッチ38の作動部42基端に接触されると共に、係合コイルスプリング46の付勢力によってラッチ38の係合部44先端がバイザ24の下面に当接されている。このため、捩じりコイルスプリング22の付勢力に抗してバイザ24及びミラー28を手動で車幅方向外側へ回動させることで、係合コイルスプリング46の付勢力によってラッチ38の係合部44先端がバイザ24の係合孔26に挿入されて、捩じりコイルスプリング22の付勢力によるバイザ24及びミラー28の車幅方向内側への回動が係止される。これにより、バイザ24及びミラー28を展開(復帰)させることができる。また、バイザ24及びミラー28が展開された際には、移動コイルスプリング36の付勢力によってカウンタウエイト34が初期のスライド位置(図1の実線の位置)に復帰されると共に、係合コイルスプリング46の付勢力によってラッチ38が初期の回動位置(図1の実線の位置)に復帰される。
【0029】
ここで、上述の如く、サイドドア14が完全に閉じられる際に、慣性機構30が慣性力によって作動されることで、バイザ24及びミラー28が自動で格納される。このため、簡単な構成でバイザ24及びミラー28を格納することができ、低コスト化及び軽量化を図ることができる。
【0030】
さらに、上述の如く、サイドドア14が完全に閉じられる際に、慣性力によってカウンタウエイト34が移動コイルスプリング36及び係合コイルスプリング46の付勢力に抗してスライドされることで、ラッチ38が回動されて、バイザ24の係合孔26への係合部44先端の挿入が解除される。このため、慣性機構30を適切に作動させることができる。
【0031】
なお、本実施の形態では、慣性機構30をステー18に設けてラッチ38をバイザ24に係合させた構成としたが、慣性機構30をサイドドア14に設けてラッチ38をバイザ24に係合させた構成、又は、慣性機構30をバイザ24に設けてラッチ38をステー18又はサイドドア14に係合させた構成としてもよい。
【0032】
また、本実施の形態では、慣性機構30にカウンタウエイト34及び移動コイルスプリング36を設けた構成としたが、慣性機構30にカウンタウエイト34及び移動コイルスプリング36を設けない構成としてもよい。この場合、慣性機構30が作動される際に、慣性力によってラッチ38が回動(移動)される構成にすればよい。
【0033】
さらに、本実施の形態では、サイドドア14が閉じられる際に慣性力によって慣性機構30が作動されてバイザ24及びミラー28を付勢力によって格納する構成としたが、サイドドア14が閉じられる際(特にサイドドア14が完全に閉じられる際)及びサイドドア14が開けられる際(特にサイドドア14が完全に開けられる際)の少なくとも一方において慣性力によって慣性機構30が作動(カウンタウエイト34又はラッチ38が移動)されてバイザ24及びミラー28を付勢力によって格納又は展開する構成であればよい。
【0034】
また、本実施の形態では、サイドドア14が回動されて開閉される構成としたが、サイドドア14がスライドされて開閉される構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係るドアミラー装置の主要部を示す車両後方から見た断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るドアミラー装置を示す上方から見た平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るドアミラー装置を示す車両左斜め後方から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態における車両のサイドドアが完全に閉じられた状態を示す上方から見た平面図である。
【図5】本発明の実施の形態における車両のサイドドアが完全に開けられた状態を示す上方から見た平面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 ドアミラー装置(ミラー装置)
12 車両
14 サイドドア(ドア)
22 捩じりコイルスプリング(ミラー付勢手段)
24 ミラー
34 カウンタウエイト(慣性部、移動部材)
36 移動コイルスプリング(慣性付勢手段)
38 ラッチ(慣性部、係合部材)
46 係合コイルスプリング(慣性付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設けられるミラーと、
前記ドアが開けられる際及び前記ドアが閉じられる際の少なくとも一方において慣性力によって作動されて前記ミラーが展開又は格納される慣性部と、
を備えたミラー装置。
【請求項2】
前記ミラーを展開方向又は格納方向へ付勢するミラー付勢手段と、
前記慣性部に設けられ、前記ミラーに係合する係合部材と、
前記慣性部を付勢可能にされ、前記慣性部が作動された際に前記係合部材の前記ミラーへの係合が解除されて前記ミラー付勢手段によって前記ミラーが展開又は格納される慣性付勢手段と、
を備えた請求項1記載のミラー装置。
【請求項3】
前記慣性部に設けられ、前記慣性部が作動される際に慣性力によって移動される移動部材を備えた請求項1又は請求項2記載のミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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