説明

モルタル組成物

【課題】低水比でもスラリー中の巻き込み空気量が少ないモルタル組成物を提供すること。
【解決手段】セメントと、シリカフュームと、水と、減水剤と、消泡剤と、細骨材と、高張力繊維とを含み、消泡剤は、構造単位としてオキシプロピレン、オキシエチレン及びアルキル鎖を有する化合物であり、オキシプロピレン構造単位100モルに対して、オキシエチレン構造単位が13〜22モルであり、アルキル鎖中のメチレン構造単位が41モル以下である、モルタル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、構造部材の軽量化、鉄筋使用量の削減等の要求に伴い、150N/mm以上の圧縮強度を発現し、しかも曲げ強度の高い超高強度コンクリートが提案されている。これらのコンクリートでは、セメント、ポゾラン質微粉末、骨材、高性能減水剤、金属繊維が使用され、熱養生によって超高強度化が図られている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
また、引張応力下で擬似ひずみ硬化(初期ひびわれ発生後に引張応力が上昇する挙動)を示し、変形が増大してもひび割れ幅の抑制機能を有する高じん性の繊維補強セメント複合材料が提案されている(特許文献3参照)。このセメント複合材料では、ポリビニルアルコールの等の有機短繊維によって、高じん性化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−181004号公報
【特許文献2】特開2006−298679号公報
【特許文献3】特開2000−7395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に超高強度コンクリートは、高強度を得るために材料中の空気量を可能な限り低くする必要がある。しかしながら、超高強度コンクリートは低水比で製造されるため、スラリー中に一旦空気を巻き込むと消泡しにくい特性を持っており、高強度化には限界があった。このため、低水比でも巻き込み空気量の少ない高じん性かつ高強度な材料が求められている。
【0006】
そこで本発明は、低水比でもスラリー中の巻き込み空気量が少ないモルタル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の鉱物組成及び粒度分布を有するセメントと、シリカフュームと、減水剤と、細骨材と、高張力繊維とを特定の構造を有する成分を含む消泡剤と組み合わせることで、モルタル組成物のスラリー中の空気量を低減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、セメントと、シリカフュームと、水と、減水剤と、消泡剤と、細骨材と、高張力繊維とを含み、消泡剤は、構造単位としてオキシプロピレン、オキシエチレン及びアルキル鎖を有する化合物であり、オキシプロピレン構造単位100モルに対して、オキシエチレン構造単位が13〜22モルであり、アルキル鎖中のメチレン構造単位が41モル以下であるモルタル組成物を提供する。このようなモルタル組成物は、スラリー中の巻き込み空気量が少ない。
【0009】
本発明のモルタル組成物に含まれるセメントは、CSを40.0〜75.0質量%及びCAを2.7質量%未満含有し、かつ、45μmふるい残分が25.0質量%未満であることが好ましい。
【0010】
また、細骨材は、粒径0.15mm以下の粒群を15〜85質量%、かつ、0.075mm以下の粒群を3〜20質量%含有することが好ましい。
【0011】
モルタル組成物のじん性及び強度を更に向上させる観点から、シリカフュームの平均粒子径が0.05〜2.0μmであることが好ましい。そして、本発明のモルタル組成物は、セメントを基準として、シリカヒュームを3〜30質量%含むことが好ましい。
【0012】
本発明のモルタル組成物は、セメント及び前記シリカフュームの合計量100質量部に対して、水を10〜25質量部及び減水剤を0.5〜6.0質量部含むことが好ましい。これにより、モルタル組成物のじん性及び強度がより一層向上する。
【0013】
本発明のモルタル組成物において、高張力繊維は、引張強度が100〜10000N/mm、アスペクト比が40〜250であり、モルタル組成物に対する含有量が外割りで0.3〜5.0体積%であることが好ましい。この範囲とすることで、更に高いじん性と高い圧縮強度及び引張強度を得ることができる。また、上記高張力繊維は、金属繊維、炭素繊維及びアラミド繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維であると、モルタル組成物の強度をより一層向上することができる。
【0014】
また、本発明モルタル組成物は、耐火性能を向上する観点から、有機繊維を更に含むことが好ましい。上記有機繊維は、繊度が1.0〜20dtex、アスペクト比が200〜900であり、モルタル組成物に対する含有量が外割りで0.05〜3体積%であると、モルタル組成物の耐火性能をより向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低水比でもスラリー中の巻き込み空気量が少ないモルタル組成物を提供するモルタル組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1及び2で用いた消泡剤AのH−NMRスペクトルである。
【図2】比較例1及び3で用いた消泡剤BのH−NMRスペクトルである。
【図3】比較例2及び4で用いた消泡剤CのH−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のモルタル組成物は、セメントと、シリカフュームと、水と、減水剤と、消泡剤と、細骨材と、高張力繊維とを含むものである。以下、本発明に係るモルタル組成物の好適な実施形態について説明する。
【0018】
セメントの鉱物組成は、好ましくはCS量が40.0〜75.0質量%であり、CA量が2.7質量%未満である。セメントのCS量は、好ましくは45.0〜73.0質量%、より好ましくは48.0〜70.0質量%であり、更に好ましくは50.0〜68.0質量%である。CA量は、好ましくは2.3質量%未満であり、より好ましくは2.1質量%未満であり、更に好ましくは1.9質量%未満である。CS量が40.0質量%未満では圧縮強度及び引張強度が低くなる傾向があり、75.0質量%を超えるとセメントの焼成自体が困難となる傾向がある。また、CA量が2.7質量%以上では引張強度が低くなる傾向がある。なお、CA量の下限値は特に限定されないが、0.1質量%程度である。
【0019】
セメントのCS量は、好ましくは9.5〜40.0質量%、より好ましくは10.0〜35.0質量%であり、更に好ましくは12.0〜30.0質量%である。CAF量は、好ましくは9.0〜18.0質量%、より好ましくは10.0〜15.0質量%であり、更に好ましくは11.0〜15.0質量%である。このようなセメントの鉱物組成の範囲であれば、モルタル組成物の高いじん性、高い圧縮強度、高い引張強度及び高い流動性をよりよく確保できる。
【0020】
セメントの粒度は、45μmふるい残分が、好ましくは上限で25.0質量%未満であり、より好ましくは20.0質量%であり、更に好ましくは18.0質量%であり、特に好ましくは16.0質量%である。45μmふるい残分の下限は0.0質量%であり、好ましくは1.0質量%であり、より好ましくは2.0質量%である。セメントの粒度がこの範囲であれば、高い引張強度をよりよく確保でき、また、このセメントを使用して調製したモルタルスラリーは適度な粘性があるため高張力繊維が十分に分散する。
【0021】
セメントのブレーン比表面積は、好ましくは2500〜4800cm/g、より好ましくは2800〜4000cm/g、更に好ましくは3000〜3600cm/gであり、特に好ましくは3100〜3500cm/gである。セメントのブレーン比表面積が2500cm/g未満ではモルタル組成物の強度が低くなる傾向があり、4800cm/gを超えると低水セメント比での流動性が低下する傾向がある。
【0022】
本実施形態に係るセメントの製造にあたっては、通常のセメントと特に異なる操作を行う必要は無い。上記セメントは、石灰石、珪石、スラグ、石炭灰、建設発生土、高炉ダスト等の原料の調合を目標とする鉱物組成に応じて変え、実機キルンで焼成した後、得られたクリンカーに石膏を加えて所定の粒度に粉砕することによって製造することができる。焼成するキルンとしては、一般的なNSPキルンやSPキルン等を使用することができ、粉砕には一般的なボールミル等の粉砕機が使用可能である。また、必要に応じて、2種以上のセメントを混合することもできる。
【0023】
モルタル組成物中のセメント量は、好ましくは850〜1800kg/m、より好ましくは900〜1600kg/m、更に好ましくは1000〜1500kg/mである。
【0024】
シリカフュームは、金属シリコン、フェロシリコン、電融ジルコニア等を製造する際に発生する排ガス中のダストを集塵して得られる副産物であり、主成分は、アルカリ溶液中で溶解する非晶質のSiOである。シリカフュームの平均粒子径は、好ましくは0.05〜2.0μm、より好ましくは0.10〜1.5μm、更に好ましくは0.18〜0.28μmである。このようなシリカフュームを用いることで、モルタル組成物の高いじん性、高い圧縮強度、高い引張強度及び高い流動性を確保できる。
【0025】
本実施形態のモルタル組成物において、セメントを基準としたシリカフューム含有量は、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%、更に好ましくは10〜18質量%である。また、モルタル1m当たりのシリカフュームの単位量は、好ましくは30〜600kg/m、より好ましくは50〜400kg/m、更に好ましくは100〜300kg/mである。
【0026】
減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、アミノスルホン酸系、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等を使用することができる。低水セメント比での流動性を確保する観点から、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤又は高性能AE減水剤を用いることが好ましく、ポリカルボン酸系の高性能減水剤を用いることがより好ましい。本実施形態に係るモルタル組成物は、セメントとシリカフュームの合量100質量部に対して、減水剤を好ましくは0.5〜6.0質量部、より好ましくは1.0〜4.0質量部、更に好ましくは2.5〜3.5質量部含む。また、モルタル1m当たりの減水剤の単位量は、好ましくは5〜100kg/m、より好ましくは10〜80kg/m、更に好ましくは20〜60kg/mである。
【0027】
本実施形態に係る消泡剤は、構造単位としてオキシプロピレン、オキシエチレン及びアルキル鎖を有する化合物である。この消泡剤は、オキシプロピレン構造単位100モルに対して、オキシエチレン構造単位が13〜22モル、好ましくは15〜22モルであり、アルキル鎖中のメチレン構造単位が41モル以下、好ましくは30モル以下である。これらの構造単位のモル比がこの範囲内にあると、モルタル組成物のスラリー中の巻き込み空気量が低く保たれる。
【0028】
消泡剤におけるオキシプロピレン構造単位は、式(1):
【化1】


で示すことができ、
オキシエチレン構造単位は、式(2):
【化2】


で示すことができ、
アルキル鎖中のメチレン構造単位は、式(3):
【化3】


で示すことができる。なお、式(1)及び(2)中のメチレン基は、式(3)で示すメチレン構造単位には含めないものとする。
【0029】
消泡剤の使用量は、セメントとシリカフュームの合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜2.0質量部、より好ましくは0.02〜1.5質量部、更に好ましくは0.03〜1.0質量部である。また、モルタル1m当たりの消泡剤量の単位量は、好ましくは0.1〜30kg/m、より好ましくは0.2〜24kg/m、更に好ましくは0.4〜15kg/mである。
【0030】
本実施形態に係る消泡剤としては、例えば、特殊非イオン配合型界面活性剤を好適に用いることができ、具体的には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系の化合物が挙げられる。消泡剤の形態としては、液状の化合物をそのまま用いてもよいし、液状の化合物をシリカ等の粉体に含浸させて粉末にしたものを用いることもできる。
【0031】
細骨材としては、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、石灰石骨材、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ細骨材等を使用することができる。本実施形態における細骨材は粒径0.15mm以下の粒群を好ましくは15〜85質量%、より好ましくは20〜70質量%、更に好ましくは25〜45質量%含む。15質量%未満では、モルタルスラリーの粘性が低すぎるため金属繊維が十分に分散しないおそれがある。85質量%を超えると、微粉量が多すぎて粘性が高くなり、所定のフローを出すためには水セメント比を増やす必要があるため強度低下に繋がるおそれがある。また、粒径0.075mm以下の粒群を好ましくは3〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%含む。微粒分の調製方法は、特に限定されないが、例えば、粒度の異なる細骨材を混ぜ合わせることによって調製可能である。
【0032】
モルタル1m当たりの細骨材量は、好ましくは400〜1000kg/m、より好ましくは430〜850kg/m、更に好ましくは500〜750kg/mである。
【0033】
高張力繊維としては、金属繊維、炭素繊維、アラミド繊維及び高強度ポリエチレン繊維(例えば、東洋紡株式会社製、商品名「ダイニーマ」)等が挙げられる。金属繊維として、鋼繊維、ステンレス繊維、アモルファス合金繊維等を使用することができる。高張力繊維の繊維径は0.05〜1.20mmが好ましく、0.08〜0.70mmがより好ましく、0.10〜0.35mmが更に好ましい。高張力繊維の繊維長は3〜60mmが好ましく、5〜35mmがより好ましく、7〜20mmが更に好ましい。高張力繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)は40〜250が好ましく、50〜200がより好ましく、80〜170が更に好ましい。高張力繊維の引張強度は100〜10000N/mmが好ましく、500〜5000N/mmより好ましく、2000〜3000N/mmが更に好ましい。高張力繊維の密度は、1〜20g/cmが好ましく、5〜10g/cmがより好ましい。このような高張力繊維を用いることで、モルタル組成物に高いじん性、高い圧縮強度、高い引張強度及び高い流動性を付与することができる。
【0034】
また、本実施形態に係るモルタル組成物は、モルタル組成物に対して外割りで(すなわち、モルタル組成物における、高張力繊維を除いた組成物100体積%に対して)高張力繊維を好ましくは0.3〜5.0体積%、より好ましくは0.5〜4.0体積%、更に好ましくは1.0〜2.5体積%含む。高張力繊維が0.3体積%未満では擬似ひずみ硬化を示すような高いじん性が得られない場合があり、5.0体積%を超えるとモルタルの練混ぜが困難になる場合がある。また、モルタル1mに対する高張力繊維の配合量は、外割りで好ましくは23〜393kg、より好ましくは39〜314kg、更に好ましくは79〜196kgである。
【0035】
本実施形態に係るモルタル組成物は、有機繊維を更に含むことで高い耐火性能を得ることが可能である。有機繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維等が挙げられる。
【0036】
有機繊維の繊度は1.0〜20dtexが好ましく、1.5〜15dtexがより好ましく、2.0〜4.0dtexが更に好ましい。有機繊維の引張強度は1〜6cN/dtexが好ましく、1.5〜5cN/dtexがより好ましく、2〜4cN/dtexが更に好ましい。有機繊維の伸度は400%以下が好ましく、300%以下がより好ましく、50〜200%が更に好ましい。有機繊維の繊維長は3〜30mmが好ましく、4〜20mmがより好ましく、5〜15mmが更に好ましい。有機繊維の密度は0.8〜1.5g/cmが好ましく、0.8〜1.3g/cmがより好ましく、0.85〜0.95g/cmが更に好ましい。有機繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)は、200〜900が好ましく、300〜800がより好ましく、400〜700が更に好ましい。
【0037】
このような範囲の有機繊維を添加することで、モルタル組成物の高いじん性、高い圧縮強度、高い引張強度及び高い流動性に加えて、高い耐火性能を確保できる。
【0038】
本実施形態に係るモルタル組成物は、モルタル組成物に対して外割りで(すなわち、モルタル組成物における、高張力繊維を除いた組成物100体積%に対して)有機繊維を好ましくは0.05〜3.0体積%、より好ましくは0.1〜2.0体積%、更に好ましくは0.15〜1.0体積%含む。有機繊維が0.05体積%未満では十分な耐火爆裂性が得られない場合があり、3.0体積%を超えるとモルタル組成物中への練混ぜが困難になる場合がある。また、モルタル1mに対する有機繊維量の配合量は、外割りで好ましくは0.5〜30kg、より好ましくは1〜20kg、更に好ましくは1.5〜10kgである。
【0039】
また、本実施形態に係るモルタル組成物は、セメントとシリカフュームの合計量100質量部に対して、水を好ましくは10〜25質量部、より好ましくは12〜20質量部、更に好ましくは13〜18質量部含む。モルタル1m当たりの単位水量は、好ましくは180〜280kg/m、より好ましくは200〜270kg/m、更に好ましくは210〜260kg/mである。
【0040】
本実施形態に係るモルタル組成物には、必要に応じて、膨張材、収縮低減剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、増粘剤、ガラス繊維、合成樹脂粉末、ポリマーエマルジョン、ポリマーディスパージョン等を1種以上添加してもよい。
【0041】
さらに、上記本実施形態に係るモルタル組成物に、粗骨材を適量組み合わせることにより、コンクリートを調製してもよい。粗骨材の量や、水の量は、目標圧縮強度、じん性、目標スランプに応じて適時変えればよい。粗骨材としては、砂利、砕石、石灰石骨材、高炉スラグ粗骨材、電気炉酸化スラグ粗骨材等を使用することができる。また、5mmの篩いに85質量%以上とどまる粗骨材がより好ましい。
【0042】
本実施形態に係るモルタル組成物の製造方法は、特に限定されないが、水、減水剤及び繊維材料以外の材料の一部又は全部を予め混合しておき、次に、水、減水剤を添加してミキサに入れて練り混ぜ、モルタルを製造した後、更に繊維材料をミキサに入れて練り混ぜる。モルタルの練混ぜに使用するミキサは特に限定されず、モルタル用ミキサ、二軸強制練りミキサ、パン型ミキサ、グラウトミキサ等を使用することができる。
【0043】
本発明のモルタル組成物は、高じん性、高強度が求められるPC梁、高耐久性パネル、ブロック耐震壁、橋梁の補修・補強などに特に有効である。
【0044】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0046】
[使用材料の準備]
実施例及び比較例のモルタル組成物を作製するために、以下に示す材料を準備した。
(1)セメント:
ポルトランドセメントを、石灰石、珪石、スラグ、石炭灰、建設発生土、高炉ダスト等の原料の調合を目標とする鉱物組成に応じて変え、実機キルンで焼成した後、石膏を加えて粉砕することによって調製した。得られたセメントの化学成分を、JIS R 5202:1999「ポルトランドセメントの化学分析法」に準じて測定し、下式により鉱物組成を算出した。得られたセメントの鉱物組成を表1に示す。
S量=(4.07×CaO)−(7.60×SiO)−(6.72×Al)−(1.43×Fe)−(2.85×SO
S量=(2.87×SiO)−(0.754×CS)
A量=(2.65×Al)−(1.69×Fe
AF量=3.04×Fe
【0047】
また、得られたセメントの45μmふるい残分をセメント協会標準試験方法 JCAS K−02「45μm網ふるいによるセメントの粉末度試験方法」に準じて、ブレーン比表面積をJIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に準じて測定した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
(2)シリカフューム(SF):平均粒子径0.23μm
シリカフュームの平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、商品名「LA−950V2」)を用いて測定した粒子径分布より、粒子径−通過分積算%曲線を算出し、粒子径−通過分積算%曲線より通過分積算が50体積%となる粒子径を求めた。試料分散媒は0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、測定前に出力600Wのホモジナイザーにて10分間分散処理した。粒度分布の演算はMie散乱理論に従った。粒子屈折率は1.45−0.00i、溶媒屈折率は1.333とした。各粒度の通過分積算(体積%)を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
(3)細骨材
(i)砕砂:安山岩砕砂、表乾密度2.62g/cm、粗粒率2.80、吸水率2.5質量%
(ii)珪砂:表乾密度2.63g/cm
【0052】
上記砕砂及び珪砂の粒度は、JIS A 1102−2006「骨材のふるい分け試験方法」によって測定した。次いで、砕砂及び珪砂を混合して所定の粒度になるように調整した。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
(4)減水剤:ポリカルボン酸系高性能減水剤
(5)消泡剤:
(i)消泡剤A(特殊非イオン配合型界面活性剤)
(ii)消泡剤B(ポリエーテル系化合物)
(iii)消泡剤C(ポリアルキレングリコール系化合物)
図1〜3は、上記消泡剤A〜Cをそれぞれ重メタノールに溶解し、NMR測定装置(BRUKER製、商品名「AVANCE」)を用いて測定したH−NMRスペクトルである。上記消泡剤の構造単位である、オキシプロピレン構造単位、オキシエチレン構造単位及びアルキル鎖のメチレン構造単位のモル比を、オキシプロピレン構造単位中のメチル基に由来するシグナルの積分値を基準に算出した。この内、オキシプロピレン構造単位に対するオキシエチレン構造単位のモル比を、3.5ppm付近に現れるオキシプロピレン構造単位のメチル基以外の炭化水素基に由来するシグナル及びオキシエチレン構造単位の炭化水素基に由来するシグナルの積分値からオキシプロピレン構造単位のメチル基以外の炭化水素基に由来するシグナルの積分値を差し引くことにより算出した。消泡剤中のオキシプロピレン構造単位、オキシエチレン構造単位及びアルキル鎖中のエチレン構造単位のモル比を表4に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
(6)高張力繊維:鋼繊維(東京製綱社製、商品名「CW9416」)、密度:7.87g/cm、繊維径0.16mm、繊維長13mm、アスペクト比81.25、引張強度2200N/mm
(7)有機繊維:ポリプロピレン繊維(ダイワボウポリテック社製、商品名「PZ」)、繊度2.34dtex、引張強度3.11cN/dtex、伸度126.4%、繊維長10.0mm、水分率35.2%、密度:0.91g/cm、アスペクト比588
(8)練混ぜ水:上水道水
【0057】
[モルタル組成物の作製]
モルタル組成物の作製を、表5の配合組成に基づき、以下の通りに行った。
【0058】
セメント、シリカフューム、細骨材及び消泡剤をモルタル用ホバートミキサに加え、低速で30秒間攪拌した。次に、減水剤を含む練混ぜ水をミキサ内に投入して低速で10分間、高速で3分間撹拌し、さらに、ポリプロピレン繊維及び鋼繊維を投入して低速で1分間撹拌し、モルタル組成物を作製した。
【0059】
【表5】


*1:セメント及びシリカフュームの合計量100質量%に対する水の量。
*2:減水剤中の水分は単位水量に含める。
*3:モルタル組成物に対して外割りで添加した値。
【0060】
[モルタル組成物の評価]
(1)フレッシュ性状
(試験方法)
作製したモルタル組成物を用いて、0打フロー及びスラリー中の空気量を測定した。0打フローは、JIS R 5201:−1997「セメントの物理試験方法」に準じ、落下無しの条件で測定した。スラリー中の空気量はJIS A 1128−2005「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法−空気室圧力方法」に準じ、1Lの容器を用いて測定した。
【0061】
(評価結果)
表6に、0打フローの値、及び、スラリー中の空気量の測定結果を示す。
【0062】
【表6】

【0063】
0打フローは配合No.が同じであれば消泡剤の種別によらずほぼ同じであった。
【0064】
これに対し、スラリー中の空気量は配合No.1、No.2とも実施例は比較例の6割弱程度となっており、空気量は十分低減されていた。
【0065】
以上のことから、添加する消泡剤として、特定の構造単位を特定の割合で含むものを採用すると、モルタル組成物のスラリー中の空気量を低減することができることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、シリカフュームと、水と、減水剤と、消泡剤と、細骨材と、高張力繊維とを含み、
前記消泡剤は、構造単位としてオキシプロピレン、オキシエチレン及びアルキル鎖を有する化合物であり、
前記オキシプロピレン構造単位100モルに対して、前記オキシエチレン構造単位が13〜22モルであり、前記アルキル鎖中のメチレン構造単位が41モル以下である、モルタル組成物。
【請求項2】
前記セメントは、CSを40.0〜75.0質量%及びCAを2.7質量%未満含有し、かつ、45μmふるい残分が25.0質量%未満である、請求項1に記載のモルタル組成物。
【請求項3】
前記細骨材は、粒径0.15mm以下の粒群を15〜85質量%、かつ、0.075mm以下の粒群を3〜20質量%含有する、請求項1又は2に記載のモルタル組成物。
【請求項4】
前記シリカフュームの平均粒子径が0.05〜2.0μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のモルタル組成物。
【請求項5】
前記セメントを基準として、前記シリカフュームを3〜30質量%含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のモルタル組成物。
【請求項6】
前記セメント及び前記シリカフュームの合計量100質量部に対して、水を10〜25質量部及び減水剤を0.5〜6.0質量部含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のモルタル組成物。
【請求項7】
前記高張力繊維は、引張強度が100〜10000N/mm、アスペクト比が40〜250であり、前記モルタル組成物に対する含有量が外割りで0.3〜5.0体積%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のモルタル組成物。
【請求項8】
前記高張力繊維は、金属繊維、炭素繊維及びアラミド繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のモルタル組成物。
【請求項9】
有機繊維を更に含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のモルタル組成物。
【請求項10】
前記有機繊維は、繊度が1.0〜20dtex、アスペクト比が200〜900であり、前記モルタル組成物に対する含有量が外割りで0.05〜3体積%である、請求項9に記載のモルタル組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−171806(P2012−171806A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32187(P2011−32187)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】