説明

モータ駆動装置及びアナログ電子時計

【課題】モータを駆動するときの状態が誤動作を起こしやすい所定状態のときでも適切な駆動パルスによって駆動できるようにする。
【解決手段】少なくともモータ6、7の駆動電力を供給する2次電池2と、モータ6、7を駆動するときの状態が所定状態か否かを検出する状態検出手段と、前記状態検出手段による検出結果に応じた間隔で2次電池2の電圧を検出する電池電圧検出部10と、相互にエネルギが異なる複数種類の駆動パルスの中から電池電圧検出部10の検出結果に応じたエネルギの駆動パルスを選択してモータ6、7を駆動する制御手段とを備えて成り、電池電圧検出部10は、前記状態検出手段が、モータ6、7を駆動するときの状態が前記所定状態であることを検出したときは、前記所定状態でないことを検出したときよりも短い間隔で2次電池2の電圧を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動装置及び前記モータ駆動装置を用いたアナログ電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アナログ電子時計の時刻針駆動等の用途にステッピングモータが使用されている。
例えば、電源として2次電池を使用すると共に光の強さにより電圧変動が激しい太陽電池によって前記2次電池を充電するようにした電子時計において、電源電圧を検出し検出電圧の範囲に応じて、モータ駆動パルスのエネルギを変化させるようにした電子時計が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
前記従来の電子時計は、所定期間(例えば5秒又は10秒)毎に2次電池の電池電圧を検出し、電池電圧に応じた適切なパルス幅のモータ駆動パルスを生成してモータを駆動するようにしている。
【0003】
しかしながら、2次電池は図8に示すように、電圧変動が大きいという特性を有している。図8は2次電池の電圧と容量(mAh)との関係を示す特性図である。図8に示すように、2次電池の電圧が所定電圧以下のとき(領域A)や、満充電領域付近のように所定電圧を超えるとき(領域B)は、電圧変動が大きいため、電池電圧の検出が遅れると適切な駆動パルスで駆動することができず、モータが誤動作を起こす恐れがある。
【0004】
また、太陽電池は受光する光の強さによって発電電圧が大きく変動するため、充電時の状態によっては2次電池の電圧が大きく変動してしまう。図9は2次電池の電圧が充電の有無によって変動する様子を示す図である。図9に示すように、モータの駆動によって2次電池が消耗するときは、直線Cのように電池電圧は緩やかに低下して行くが、充電が開始すると、直線Dのように電池電圧が急激に上昇してしまう。したがって、充電時に電池電圧の検出が遅れると適切な駆動パルスで駆動することができず、モータが誤動作を起こす恐れがある。
【0005】
また、クロノグラフ機能を備えたアナログ電子時計では、計測した時間を表すクロノグラフ針は秒針等の時刻針に比べて短い間隔で高速運針駆動される。図10は、時刻針及びクロノグラフ針の運針駆動と、2次電池の充電状態及び非充電状態を対応付けた説明図である。
図10において、時刻針駆動用の時刻モータおよびクロノグラフ針駆動用のクロノグラフモータは主駆動パルスP1で駆動されるが、クロノグラフモータは時刻モータに比べて短い間隔で高速駆動される。時刻モータを駆動する前に2次電池の電圧検出タイミングが各々発生して電池電圧を検出し、電池電圧に応じたエネルギの主駆動パルスP1−1、P1−2(エネルギはP1−1<P1−2)で時刻モータやクロノグラフモータを駆動する。
【0006】
領域I、IIIにおいては2次電池が充電中であるため、エネルギの小さい主駆動パルスP1−1でも時刻モータやクロノグラフモータを正常に駆動することができる。しかしながら、領域IIに入って2次電池の充電が停止すると(放電状態)、電池電圧が低下して行く。
時刻針用モータの駆動は、各駆動の前に電圧検出を行い、そのときの電池電圧に応じた主駆動パルスで駆動するため誤動作することはない。また、領域II−2においても、2次電池の電圧検出が行われるため、適切な主駆動パルスP1−2によってクロノグラフモータが駆動され、誤動作が生じる恐れはない。しかしながら、クロノグラフモータの駆動の場合は、領域II−1では電池電圧が検出されないため、主駆動パルスP1−1ではクロノグラフモータを回転できず誤動作が生じる恐れがある。時刻モータの場合でも、時刻針を高速運針するときには前記同様に誤動作の恐れがある。
【0007】
このように、前記従来の電子時計では、モータを駆動する状態が所定状態((1)2次電池が放電して電圧が低い時又は満充電付近のように高い時、(2)2次電池充電時、あるいは、(3)高速運針時で所定期間内に充電もしくは放電が起こり、2次電池電圧が急変動した時)のとき、適切な駆動パルスが選択されず、モータが誤作動を起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−238484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記問題点に鑑み成されたもので、モータを駆動するときの状態が誤動作を起こしやすい所定状態のときでも適切な駆動パルスによって駆動できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、少なくともモータの駆動電力を供給する2次電池と、前記モータを駆動するときの状態が所定状態か否かを検出する状態検出手段と、前記状態検出手段による検出結果に応じた間隔で前記2次電池の電圧を検出する電圧検出手段と、相互にエネルギが異なる複数種類の駆動パルスの中から前記電圧検出手段の検出結果に応じたエネルギの駆動パルスを選択して前記モータを駆動する制御手段とを備えて成り、前記電圧検出手段は、前記状態検出手段が、前記モータを駆動するときの状態が前記所定状態であることを検出したときは、前記所定状態でないことを検出したときよりも短い間隔で前記2次電池の電圧を検出することを特徴とするモータ駆動装置が提供される。
また、本発明によれば、時刻針を回転するモータと、前記モータを駆動するモータ駆動装置とを有するアナログ電子時計において、前記モータ駆動装置を用いて成ることを特徴とするアナログ電子時計が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るモータ駆動装置によれば、モータの駆動状態が誤動作を起こしやすい所定状態のときでも適切な駆動パルスによって駆動することが可能になる。
また、本発明に係るアナログ電子時計によれば、モータの駆動状態が誤動作を起こしやすい所定状態のときでも適切な駆動パルスによって駆動することが可能になるため、正確な運針動作を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置を用いたアナログ電子時計のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置及びアナログ電子時計のフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置及びアナログ電子時計の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置及びアナログ電子時計の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置及びアナログ電子時計のフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施の形態に係るモータ駆動装置及びアナログ電子時計のフローチャートである。
【図7】本発明の他の実施の形態に係るモータ駆動装置及びアナログ電子時計の説明図である。
【図8】2次電池の電圧−容量特性図である。
【図9】2次電池の充電特性図である。
【図10】従来のアナログ電子時計の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置を用いたアナログ電子時計のブロック図で、クロノグラフ時計の例を示している。
図1において、アナログ電子時計200は、発電手段あるいは充電手段としての太陽電池1、電源としての2次電池2、時刻針を運針駆動する時刻モータ6、計測した時間を表示するためのクロノグラフ針(図示せず)を運針駆動するクロノグラフモータ7、時間計測(クロノグラフ)動作の開始と停止を指示するためのスタート/ストップスイッチ8、計測した時間を0にリセットするためのリセットスイッチ9、モータ駆動装置100を備えている。
【0014】
太陽電池1が光を受光して発電し、2次電池2を充電する。2次電池2は、アナログ電子時計100の各電子的構成要素に駆動電力を供給する電源であり、又、少なくともモータ6、7に駆動電力を供給する電源である。
モータ6、7は周知構成の時計用ステッピングモータであり、時刻モータ6は所定の第1間隔で駆動される第1ステッピングモータ、クロノグラフモータ7は前記第1間隔よりも短い所定の第2間隔で駆動される第2ステッピングモータである。時刻モータ6はモータ駆動制御部5によって駆動され、時刻針(例えば時針・分針・秒針、図示せず)を運針駆動することによって現在時刻を表示させる。クロノグラフモータ7はクロノグラフ針(図示せず)を運針駆動することによって計測した時間を表示させる。
【0015】
スタート/ストップスイッチ8は、時間計測動作の開始と停止を交互に指示するためのスイッチである。時間計測を開始していない状態でスタート/ストップスイッチを操作することにより、時間計測動作を開始させる。時間計測を行っている状態でスタート/ストップスイッチを操作することにより、時間計測動作を停止させる。時間計測終了後、リセットスイッチ9を操作することによって計測済みの時間を0にリセットしてクロノグラフ針を帰零させる。尚、時間計測中にリセットスイッチ9を操作することによっても計測時間を0にリセットさせて、クロノグラフ針を帰零させることができる。
【0016】
モータ駆動装置100は、発振制御部3、発振制御部3と共に発振回路を構成する水晶振動子4、モータ駆動制御部5、2次電池2の電圧を検出する電池電圧検出部10、2次電池2が太陽電池1によって充電中か否かを検出すると共に2次電池2から太陽電池1側へ電流が流れるのを防止する充電検出逆流防止部11、相互にエネルギの異なる複数種類の主駆動パルスP1や前記各主駆動パルスP1よりもエネルギの大きい補正駆動パルスP2の中から選択する駆動パルスを指示するパルス選択制御部12、2次電池2の電圧を検出するタイミングを制御する電圧検出タイミング制御部13を備えている。
【0017】
電圧検出タイミング制御部13は、パルス選択制御部12からの検出間隔設定信号に対応する間隔で電圧検出を行わせるための検出タイミング信号をパルス選択制御部12に出力する。
電池電圧検出部10は、パルス選択制御部12からの検出サンプリング信号に応答して2次電池2の電圧を検出し、前記電圧を表す電圧検出信号をパルス選択制御部12に出力する。充電検出逆流防止部11は、太陽電池1の電圧が2次電池2の電圧よりも高い場合は充電中であることを表す充電検出信号をパルス選択制御部12に出力し、太陽電池1の電圧が2次電池2の電圧よりも高くない場合は充電中でないことを表す充電検出信号をパルス選択制御部12に出力する。
【0018】
モータ駆動制御部5は、発振制御部3及び水晶振動子4によって構成される発振回路から入力された所定周波数の信号を分周し、計時動作の基準となる時計信号を生成して計時動作を行う。モータ駆動制御部5は、予め定めた所定周期で運針タイミングが発生する毎に、パルス選択制御部12に対して運針タイミング信号を出力する。モータ駆動制御部5は、運針タイミングが発生する毎に、パルス選択制御部12からのパルス選択信号に対応するエネルギの駆動パルスによってモータ6、7を駆動する。また、モータ駆動制御部5は、スタート/ストップスイッチ8によって時間計測開始指示が入力されると、時間計測中であることを表すクロノグラフRUN信号をパルス選択制御部12に出力する。
【0019】
詳細は後述するが、パルス選択制御部12は、電池電圧検出部10からの電圧検出信号、充電検出逆流防止部11からの充電検出信号、モータ駆動制御部5からのクロノグラフRUN信号に応答して、電池電圧検出部10に対する検出サンプリング信号の供給間隔を変更制御して、電池電圧検出部10による2次電池2の電圧検出間隔を制御する。また、パルス選択制御部12は、電圧検出間隔を変更制御する場合、電圧検出タイミング制御部13へ新たな検出タイミングを表す検出間隔設定信号を出力する。電圧検出タイミング制御部13は、前記検出間隔設定信号に対応する間隔で検出タイミング信号をパルス選択制御部12に出力する。パルス選択制御部12は、前記各検出タイミング信号に応答して電池電圧検出部10に検出サンプリング信号を出力する。
【0020】
ここで、太陽電池1は充電手段または発電手段を構成している。電池電圧検出部10及び電圧検出タイミング制御部13は電圧検出手段を構成している。電池電圧検出部10、充電検出逆流防止部11、パルス選択制御部12及び電圧検出タイミング制御部13は状態検出手段を構成している。発振制御部3、水晶振動子4、モータ駆動制御部5及びパルス選択制御部12は制御手段を構成している。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態の動作を示すフローチャートで、電圧検出間隔の変更処理を示すフローチャートである。
図3は、本発明の実施の形態の動作説明図である。
図4は、本発明の動作説明図で、クロノグラフ針運針時の動作を示す図である。
図5は、本発明の実施の形態の動作を示すフローチャートで、モータ6、7の駆動動作を示すフローチャートである。
以下、図1〜図5を用いて、本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置及びアナログ電子時計の動作を詳細に説明する。
【0022】
先ず、初期状態として、電池電圧検出部10が2次電池2の電圧を検出する電圧検出間隔は5秒(s)毎又は10秒(s)毎に設定されているものとする。
パルス選択制御部12は、モータ駆動制御部5から、時間計測動作が行われていることを表すクロノグラフRUN信号を受けた後(図2のステップS201)、モータ駆動制御部5から運針タイミングが到来したことを表す運針タイミング信号を受けていない場合(ステップS202)、電圧検出タイミング制御部13から電圧検出タイミング信号を受信したか否か(即ち、2次電池2の電圧を検出するタイミングが到来したか否か)を判定する(ステップS203)。
【0023】
パルス選択制御部12は、処理ステップS203において電圧検出タイミングが到来したと判定すると、検出サンプリング信号を電池電圧検出部10に出力して2次電池2の電圧を検出させる(ステップS204)。
電池電圧検出部10は検出サンプリング信号に応答して2次電池2の電圧を検出し、2次電池2の電圧を表す電圧検出信号をパルス選択制御部12に出力する。
【0024】
パルス選択制御部12は、電池電圧検出部10からの電圧検出信号に基づいて、「2次電池の電圧が所定の第1電圧(例えば満充電付近の電圧)を超えた状態又は前記第1電圧よりも低い第2電圧以下の状態」ではない(即ち、2次電池の電圧が所定の第1電圧(例えば満充電付近の電圧)を超えた状態ではなく且つ前記第1電圧よりも低い第2電圧以下の状態でもない)と判定すると(ステップS205)、2次電池2の電圧検出間隔を初期状態と同じく5秒(s)毎又は10秒(s)毎に設定する(ステップS206)。
次に、パルス選択制御部12は、充電検出逆流防止部11からの充電検出信号に基づいて、2次電池2が太陽電池1によって充電中ではないと判定すると(ステップS207)、2次電池2の電圧検出間隔を初期状態と同じく5秒(s)毎又は10秒(s)毎に設定する(ステップS208)。
【0025】
次に、パルス選択制御部12は、自己の記憶部(図示せず)に予め記憶しておいた図3のテーブルを参照して、前記電圧検出信号に基づいて駆動パルスを選択し、処理ステップS201に戻る(ステップS209)。図3のテーブルの例では、2次電池2の電圧が所定の第1電圧(例えば満充電付近の高電圧)を超える場合には矩形波のパルス幅が最も小さい主駆動パルスP1−1を選択し、2次電池2の電圧が前記第1電圧以下で前記第2電圧を超える場合(通常電圧)には矩形波のパルス幅が主駆動パルスP1−1より大きい主駆動パルスP1−2を選択し、2次電池2の電圧が前記第2電圧以下の場合(低電圧)には矩形波のパルス幅が主駆動パルスP1−2より大きい主駆動パルスP1−3を選択する。
【0026】
このように、2次電池2の電圧が低くなるにしたがって、主駆動パルスP1のパルス幅を大きくすることにより、電圧低下による駆動エネルギの減少が生じないようにしている。これにより、2次電池2の電圧が低下した場合でもモータ6、7を確実に回転させることができ、又、2次電池2の電圧が高いときにはモータ6、7を過剰なエネルギの主駆動パルスP1で駆動することを防止でき、消費電力を抑制することが可能になる。
【0027】
尚、主駆動パルスP1を、矩形波状に構成せず、櫛歯状の複数のパルスによって構成した場合には、電圧変化に伴って、櫛歯のパルス数やデューティ比を変えることにより、電圧低下によって駆動エネルギが減少しないようにしてもよい。また、電圧変化に伴って、波高値を変えることにより、電圧低下によって駆動エネルギが減少しないようにしてもよい。
【0028】
パルス選択制御部12は、処理ステップS207において2次電池2が太陽電池1によって充電中であると判定すると、2次電池2の電圧検出間隔を初期状態よりも短い間隔(本実施の形態では1秒(s)間隔)に変更し(ステップS210)、処理ステップS209に移行する。2次電池2が充電中の場合は2次電池の電圧が高くなるため、電圧検出間隔を短くすることにより、素早く適切なエネルギの駆動パルスに変更することが可能になる。
【0029】
パルス選択制御部12は、処理ステップS205において2次電池2の電圧が第1電圧を超える又は第2電圧以下であると判定すると、2次電池2の電圧検出間隔を初期状態よりも短い間隔(本実施の形態では1秒(s)間隔)に変更し(ステップS211)、処理ステップS209に移行する。
パルス選択制御部12は、処理ステップS203において電圧検出タイミングが到来していないと判定した場合は処理ステップS207に移行する。
【0030】
パルス選択制御部12は、処理ステップS202において運針タイミングが発生したと判定した場合には処理ステップS204に移行して2次電池2の電圧を検出する。これにより、図4に示すようにクロノグラフ針を運針する毎に2次電池2の電圧が検出されることになる。
また、パルス選択制御部12は、処理ステップS201においてクロノグラフRUN信号を受けていないと判定した場合には処理ステップS203に移行する。
以後、処理ステップS201〜S211の処理を所定周期で繰り返す。
【0031】
以上のように、クロノグラフ動作時は、クロノグラフ針の運針タイミングが到来する毎に2次電池2の電池電圧を検出する。クロノグラフ非動作時は、所定の電圧検出タイミングが到来する毎に2次電池2の電池電圧を検出し、電圧検出間隔を前記電池電圧に対応する間隔に設定し、又、2次電池2の電圧に応じた駆動パルスに設定する。また、2次電池が充電中の場合には非充電の場合よりも電圧検出間隔を短くし、又、2次電池2の電池電圧に応じた駆動パルスに設定するようにしている。
【0032】
したがって、モータ6、7を駆動するときの状態が所定状態であることを検出したときは、前記所定状態でないことを検出したときよりも短い間隔で2次電池2の電圧を検出するため、2次電池の電圧を正確に検出することが可能になる。よって、2次電池2の電圧に対応する適切な駆動パルスでモータ6、7を駆動することが可能になり、モータ6、7をより確実に回転することができ、又、省電力化が可能になる。
【0033】
図5に示すように、パルス選択制御部12は上記のようにして設定した駆動パルスを用いてモータ6、7を駆動する。
図5において、モータ駆動制御部5は、スタート/ストップスイッチ(スイッチA)8が操作されたと判定した場合(ステップS501)、時間計測動作が行われていないときは(ステップS502)、時間計測動作を開始し、パルス選択制御部12にクロノグラフRUN信号を出力した後(ステップS503)、処理ステップS505に移行する。
【0034】
モータ駆動制御部5は、処理ステップS502において時間計測動作が行われていると判定したときは、時間計測動作を停止した後(ステップS504)、処理ステップS505に移行する。
モータ駆動制御部5は、処理ステップS501においてスタート/ストップスイッチ(スイッチA)8が操作されていないと判定した場合、処理ステップS505に移行する。 モータ駆動制御部5は、処理ステップS505において、リセットスイッチ(スイッチB)9が操作されたか否かを判定する。
【0035】
モータ駆動制御部5は、処理ステップS505においてリセットスイッチ(スイッチB)9が操作されたと判定した場合において、時間計測動作が行われていないと判定したときは(ステップS506)、計測した時間をリセットする(ステップS507)。
次にモータ駆動制御部5は、クロノグラフ針を駆動するタイミングが到来したと判定すると(ステップS508)、前述したようにして設定された主駆動パルスP1の情報を読み込み(ステップS509)、当該駆動パルスP1でクロノグラフモータ7を駆動する(ステップS510)。
【0036】
次にモータ駆動制御部5は、時刻針を駆動するタイミングが到来したと判定すると(ステップS511)、設定された主駆動パルスP1の情報を読み込み(ステップS512)、当該駆動パルスP1で時刻モータ6を駆動した後(ステップS513)、処理ステップS501に戻る。
モータ駆動制御部5は、処理ステップS511において時刻針を駆動するタイミングが到来していないと判定すると、処理ステップS501に戻る。
モータ駆動制御部5は、処理ステップS508においてクロノグラフ針を駆動するタイミングが到来していないと判定すると、処理ステップS511に移行する。
【0037】
モータ駆動制御部5は、処理ステップS506において時間計測動作が行われていると判定したときは、処理ステップS508に移行する。
モータ駆動制御部5は、処理ステップS505においてリセットスイッチ(スイッチB)9が操作されていないと判定した場合は、処理ステップS508に移行する。
上記動作を繰り返すことにより、設定した駆動パルスP1によって、時刻針運針動作とクロノグラフ針運針動作が行われ、時刻表示や計測時間の表示が行われる。
【0038】
図6は、本発明の他の実施の形態の動作を示すフローチャートで、電圧検出間隔の変更処理を示すフローチャートである。図6において図2と同一処理を行う部分については同一符号を付している。
図7は、本他の実施の形態の動作説明図である。
図1、図3〜図5に関しては、本他の実施の形態も前記実施の形態と同じである。
【0039】
前記実施の形態では、モータを駆動するときの状態が所定状態のときは前記所定状態でないときよりも短い間隔で2次電池2の電圧を検出するように構成し、前記所定状態の例として、2次電池2が所定の第1電圧を超えた状態又は第1電圧よりも小さい第2電圧以下の状態、2次電池2が充電中の状態、あるいは、第2ステッピングモータ7が駆動されている状態を挙げたが、本他の実施の形態では更に、2次電池2の電圧変化率が所定範囲を超える場合は電圧変化率が前記所定範囲以下の場合よりも電圧検出間隔を短くするように構成している。
【0040】
以下、図1、図3〜図7を用いて、本他の実施の形態に係るモータ駆動装置及びアナログ電子時計の動作を、前記実施の形態と相違する部分について説明する。
図6の処理ステップS203においてパルス選択制御部12は、前記実施の形態と同様に、電圧検出タイミングが到来したと判定すると、検出サンプリング信号を電池電圧検出部10に出力して2次電池2の電圧を検出させる(ステップS204)。
【0041】
電池電圧検出部10は検出サンプリング信号に応答して2次電池2の電圧を検出し、検出した2次電池2の電圧(電圧検出値)を表す電圧検出信号をパルス選択制御部12に出力する。
パルス選択制御部12は、電池電圧検出部10からの電圧検出信号に基づいて、「2次電池の電圧が所定の第1電圧(例えば満充電付近の電圧)を超えた状態又は前記第1電圧よりも低い第2電圧以下の状態」か否かを判定する(ステップS205)。
【0042】
パルス選択制御部12は、処理ステップS205において2次電池の電圧が所定の第1電圧(例えば満充電付近の電圧)を超えた状態ではなく且つ前記第1電圧よりも低い第2電圧以下の状態でもないと判定した場合、前回のサイクルの処理ステップS204において電池電圧検出部10が検出した2次電池2の電圧検出値と、今回のサイクルの処理ステップS204において電池電圧検出部10が検出した2次電池2の電圧検出値とを比較し、今回検出した2次電池2の電圧検出値が前回検出した2次電池2の電圧検出値に対して所定変動範囲外か否かを判定する(ステップS601)。
【0043】
パルス選択制御部12は、図7に示すようにして、今回検出した2次電池2の電圧検出値が前回検出した2次電池2の電圧検出値に対して所定変動範囲外か否かを判定する。
図7において、横軸は電池電圧検出部10が2次電池2の電圧を検出する電圧検出タイミング、縦軸は電池電圧検出部10が検出した2次電池2の電圧検出値である。黒丸点は前回検出した2次電池2の電圧検出値の例を示し、黒三角点、黒菱形点は今回検出した2次電池2の電圧検出値の例を示している。
【0044】
前回検出した2次電池2の電圧検出値(黒丸点)を中心として所定の変動範囲(例えば±0.5V)が所定の範囲(前回の電圧検出値に対する変動範囲の閾値)として設定されている。今回検出した2次電池2の電圧検出値例のうち、黒三角点は前記所定の変動範囲内の点であり、黒菱形点は前記所定の変動範囲外の点である。変動範囲の設定方法として、前回検出した2次電池2の電圧検出値の一定割合の範囲(例えば前回検出した2次電池2の電圧検出値の±20%)に設定する等、種々の方法がある。
【0045】
パルス選択制御部12は、今回検出した電圧検出値が前回検出した電圧検出値に対して所定の変動範囲外ではない場合には、2次電池2の電圧変化率は小さいため、初期状態と同じく長い電圧検出間隔(本実施の形態では、5秒(s)毎又は10秒(s))に設定して処理ステップS207に移行する(ステップS602)。
【0046】
一方、パルス選択制御部12は、処理ステップS601において今回検出した電圧検出値が前回検出した電圧検出値に対して所定の変動範囲外の場合には、2次電池2の電圧変化率が大きく電圧変動が急変動であるため、前記長い電圧検出間隔ではモータ駆動に適切な駆動パルスに変更されない恐れがあるので、短い電圧検出間隔(本実施の形態では、1秒(s))に設定する(ステップS211)。
【0047】
以後、前記実施の形態と同様にして、処理ステップS201〜S205、S207〜S211、S601、S602の処理を所定周期で繰り返す。これにより、前記実施の形態と同様の効果を奏するばかりでなく、2次電池2の電圧の絶対値が高い場合でも、電圧変動率の大きいときは電圧検出間隔を短くすることで適切な駆動パルスでモータ6、7を駆動することが可能になる。したがって、モータ6、7をより確実に回転することができ又、省電力化が可能になるという効果を奏する。
【0048】
以上述べたように、本発明の各実施の形態に係るモータ駆動装置は、少なくともモータの駆動電力を供給する2次電池と、前記モータを駆動するときの状態が所定状態か否かを検出する状態検出手段と、前記状態検出手段による検出結果に応じた間隔で前記2次電池の電圧を検出する電圧検出手段と、相互にエネルギが異なる複数種類の駆動パルスの中から前記電圧検出手段の検出結果に応じたエネルギの駆動パルスを選択して前記モータを駆動する制御手段とを備えて成り、前記電圧検出手段は、前記状態検出手段が、前記モータを駆動するときの状態が前記所定状態であることを検出したときは、前記所定状態でないことを検出したときよりも短い間隔で前記2次電池の電圧を検出することを特徴としている。
【0049】
ここで、前記所定状態は、前記2次電池が所定の第1電圧を超えた状態、前記第1電圧よりも小さい第2電圧以下の状態、又は今回の電圧検出値が前回の電圧検出値に対する所定の変動範囲外の状態であるように構成することができる。
また、前記2次電池を充電する充電手段を有し、前記所定状態は、前記2次電池が前記充電手段によって充電中の状態であるように構成することができる。
また、前記モータとして、所定の第1間隔で駆動される第1ステッピングモータと、前記第1間隔よりも短い所定の第2間隔で駆動される第2ステッピングモータとを有し、前記所定状態は、第2ステッピングモータが前記制御手段によって駆動されている状態であるように構成することができる。
【0050】
また、前記電圧検出手段は、第2ステッピングモータが前記制御手段によって駆動される毎に前記2次電池の電圧を検出するように構成することができる。
したがって、モータを駆動するときの状態が誤動作を起こしやすい所定状態のときに2次電池の電圧を素早く検出し、適切な駆動パルスに変更して駆動することが可能になる。
また、前記2次電池の電圧が低くなるにしたがってエネルギのより大きい主駆動パルスを用いて駆動することにより、電圧低下による駆動エネルギの減少が生じないようにしているため、前記2次電池の電圧が低下した場合でも前記モータを確実に回転させることができる。また、前記2次電池の電圧が高いときには前記モータを過剰なエネルギの主駆動パルスで駆動することを防止でき、消費電力を抑制することが可能になるという効果を奏する。
【0051】
また、本発明の実施の形態に係るアナログ電子時計は、時刻針を回転するモータと、前記モータを駆動するモータ駆動装置とを有するアナログ電子時計において、前記モータ駆動装置として前述したモータ駆動装置100を用いることにより、モータを駆動するときの状態が誤動作を起こしやすい所定状態のときに2次電池の電圧を素早く検出し、適切な駆動パルスに変更して駆動することが可能になるため、運針ミスを防止することができ、又、省電力化を図り得る等の効果を奏する。
【0052】
また、本発明の実施の形態に係るアナログ電子時計は、時刻針を回転する時刻針用ステッピングモータと、クロノグラフ針を回転するクロノグラフ針用ステッピングモータと、前記各ステッピングモータを駆動するモータ駆動装置とを有するアナログ電子時計において、前記モータ駆動装置として前述したモータ駆動装置100を用いると共に、前記時刻針用ステッピングモータとして前記第1ステッピングモータを、前記クロノグラフ針用ステッピングモータとして前記第2ステッピングモータを用いることにより、前記第2ステッピングモータの運針駆動毎に前記2次電池の電圧を検出し、適切な駆動パルスに変更して駆動することが可能になるため、運針ミスを防止することができ、又、省電力化を図り得る等の効果を奏する。
【0053】
尚、本実施の形態では、クロノグラフ時計の例で説明したが、時刻針のみを運針駆動するアナログ電子時計等にも適用可能である。この場合、モータとして、時刻モータのみを用いるように構成することができる。
また、時刻針以外にも、カレンダ等を駆動するためのモータの駆動にも適用可能である。
また、モータの応用例として電子時計の例で説明したが、モータを使用する各種の電子機器に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るモータ駆動装置は、モータを使用する各種電子機器に適用可能である。
また、本発明に係るアナログ電子時計は、クロノグラフ時計、カレンダ機能付きアナログ電子腕時計、カレンダ機能付きアナログ電子置時計等の各種カレンダ機能付きアナログ電子時計をはじめ、カレンダ機能を有しない各種のアナログ電子時計にも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・太陽電池
2・・・2次電池
3・・・発振制御部
4・・・水晶振動子
5・・・モータ駆動制御部
6・・・時刻モータ
7・・・クロノグラフモータ
8・・・スタート/ストップスイッチ
9・・・リセットスイッチ
10・・・電池電圧検出部
11・・・充電検出逆流防止部
12・・・パルス選択制御部
13・・・電圧検出タイミング制御部
100・・・モータ駆動装置
200・・・アナログ電子時計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともモータの駆動電力を供給する2次電池と、前記モータを駆動するときの状態が所定状態か否かを検出する状態検出手段と、前記状態検出手段による検出結果に応じた間隔で前記2次電池の電圧を検出する電圧検出手段と、相互にエネルギが異なる複数種類の駆動パルスの中から前記電圧検出手段の検出結果に応じたエネルギの駆動パルスを選択して前記モータを駆動する制御手段とを備えて成り、
前記電圧検出手段は、前記状態検出手段が、前記モータを駆動するときの状態が前記所定状態であることを検出したときは、前記所定状態でないことを検出したときよりも短い間隔で前記2次電池の電圧を検出することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記所定状態は、前記2次電池が所定の第1電圧を超えた状態、前記第1電圧よりも小さい第2電圧以下の状態、又は今回の電圧検出値が前回の電圧検出値に対する所定の変動範囲外の状態であることを特徴とする請求項1記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記2次電池を充電する充電手段を有し、
前記所定状態は、前記2次電池が前記充電手段によって充電中の状態であることを特徴とする請求項1記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記モータとして、所定の第1間隔で駆動される第1ステッピングモータと、前記第1間隔よりも短い所定の第2間隔で駆動される第2ステッピングモータとを有し、
前記所定状態は、前記第2ステッピングモータが前記制御手段によって駆動されている状態であることを特徴とする請求項1記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記電圧検出手段は、前記第2ステッピングモータが前記制御手段によって駆動される毎に前記2次電池の電圧を検出することを特徴とする請求項4記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
時刻針を回転するモータと、前記モータを駆動するモータ駆動装置とを有するアナログ電子時計において、
前記モータ駆動装置として請求項1乃至3のいずれか一に記載のモータ駆動装置を用いて成ることを特徴とするアナログ電子時計。
【請求項7】
時刻針を回転する時刻針用ステッピングモータと、クロノグラフ針を回転するクロノグラフ針用ステッピングモータと、前記各ステッピングモータを駆動するモータ駆動装置とを有するアナログ電子時計において、
前記モータ駆動装置として請求項4又は5記載のモータ駆動装置を用いると共に、前記時刻針用ステッピングモータとして前記第1ステッピングモータを、前記クロノグラフ針用ステッピングモータとして前記第2ステッピングモータを用いて成ることを特徴とするアナログ電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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