説明

モータ駆動装置

【課題】水濡れ時に端子間で短絡が発生することによる誤動作を防止できるモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】モータの駆動を制御する制御回路2を内蔵したIC(Integrated Circuit)10において、水濡れ検出時にONするトランジスタの接続される端子i、jが、ハイレベル端子b、c、d、e、fから隔離されて、ローレベル端子h、k、l、m、nに近接して配置されている。水濡れが発生した場合、端子i、jはともにローレベルとなるので、端子i、jとローレベル端子h、k、l、m、nとの間で短絡が生じにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両における窓開閉用モータを駆動するモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図28は、車両の窓の開閉制御を行うパワーウィンドウ装置のブロック図である。操作スイッチ40は、窓50の開閉を操作するためのスイッチである。モータ駆動装置41は、操作スイッチ40の操作に基づいてモータ58を駆動し、また、モータ58の回転方向や回転速度などを制御する。モータ58の回転により、当該モータと連動する窓開閉機構(後述)が作動して、窓50の開閉が行われる。ロータリエンコーダ59は、モータ58の回転に同期したパルスを出力する。モータ駆動装置41は、このパルスに基づいてモータ58の回転速度等を算出し、モータ58の回転を制御する。
【0003】
図29は、操作スイッチ40の一例を示した概略構成図である。操作スイッチ40は、軸Qを中心としてab方向に回転可能な操作ノブ71と、この操作ノブ71と一体に設けられたロッド72と、接点(図示省略)を備えたスイッチ機構73とから構成される。74はスイッチ機構73のアクチュエータ、70は操作スイッチ40が組み込まれるスイッチユニットのカバーである。ロッド72の下端は、アクチュエータ74と係合しており、操作ノブ71がab方向に回転すると、ロッド72を介してアクチュエータ74がcd方向に移動し、その移動位置に応じてスイッチ機構73の接点が切り換えられる。
【0004】
操作ノブ71は、オート閉AC、マニュアル閉MC、中立N、マニュアル開MO、オート開AOの各位置へ切換可能となっている。図29は、操作ノブ71が中立Nの位置にある状態を示している。この位置から操作ノブ71をa方向に一定量回転させて、マニュアル閉MCの位置にすると、マニュアルモードで窓が閉じるマニュアル閉動作が行われる。この位置よりさらにa方向に操作ノブ71を回転させてオート閉ACの位置にすると、オートモードで窓が閉じるオート閉動作が行われる。また、操作ノブ71を中立Nの位置からb方向に一定量回転させて、マニュアル開MOの位置にすると、マニュアルモードで窓が開くマニュアル開動作が行われる。この位置よりさらにb方向に操作ノブ71を回転させてオート開AOの位置にすると、オートモードで窓が開くオート開動作が行われる。操作ノブ71には、図示しないバネが設けられており、回転した操作ノブ71から手を離すと、操作ノブ71はバネの力により中立Nの位置に復帰する。
【0005】
マニュアルモードの場合は、操作ノブ71がマニュアル閉MCまたはマニュアル開MOの位置に手で保持され続ける間だけ、窓の閉動作または開動作が行われる。そして、操作ノブ71から手を離してノブが中立Nの位置に復帰すると、窓の閉動作または開動作は停止する。これに対して、オートモードの場合は、一旦、操作ノブ71がオート閉ACまたはオート開AOの位置まで操作されると、その後は操作ノブ71から手を離してノブが中立Nの位置に復帰しても、窓の閉動作または開動作が継続して行われる。
【0006】
図30は、車両の各窓に設けられる窓開閉機構の一例を示した図である。窓ガラス51は、窓開閉機構52の作動により昇降動作を行う。窓開閉機構52は、支持部材53、第1アーム54、第2アーム55、ブラケット56、ガイド部材57、ピニオン60およびギヤ61から構成されている。支持部材53は、窓ガラス51の下端に取り付けられている。第1アーム54は、一端が支持部材53に係合され、他端がブラケット56に回転可能に支持されている。第2アーム55は、一端が支持部材53に係合され、他端がガイド部材57に係合されている。第1アーム54と第2アーム55とは、それぞれの中間部において軸を介して連結されている。ピニオン60は、モータ58により回転駆動される。モータ58には、ロータリエンコーダ59が連結されている。扇形のギヤ61は、第1アーム54に固定されているとともに、ピニオン60と噛合している。モータ58の回転により、ピニオン60およびギヤ61が回転して、第1アーム54が回動する。これに追随して、第2アーム55の他端が、ガイド部材57の溝に沿って横方向にスライドする。その結果、支持部材53が上下方向に移動するので、窓ガラス51が昇降し、窓50の開閉が行われる。
【0007】
上述したパワーウィンドウ装置においては、操作スイッチ40の操作状況に応じて、モータ58を正転方向または逆転方向へ駆動させ、窓50の開閉を行うようにしている。例えば、モータ58を正転方向に駆動すると窓50が開き、モータ58を逆転方向に駆動すると窓50が閉じる。モータ58の正転と逆転の制御は、モータ駆動装置41の制御回路(図示省略)において、モータ58に流れる電流の方向を切り替えることにより行う。この切替手段として、従来は機械式のリレー(有接点リレー)が用いられていた。
【0008】
また、一般にパワーウィンドウ装置では、雨水が浸入したり水没したような場合に、モータが誤動作するのを防ぐための水濡れ検出回路が設けられる。そして、水濡れ検出回路が水濡れを検出したときに、操作スイッチにより窓を開く操作が行われると、操作スイッチからの正転指令信号と、水濡れ検出回路からの検出信号とに基づいて、制御回路がモータを正転させる。それにより、窓の開動作を正常に行うことができる。
【0009】
下記の特許文献1、2には、上述したような、モータの正転・逆転を切り替えるための機械式リレーを用いた制御回路と水濡れ検出回路とを有するパワーウィンドウ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−120330号公報
【特許文献2】特開2005−65442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、機械式リレーは、コイルへの通電により可動接点を機械的に駆動して、回路の切り替えを行うものであるため、接点切替時に発生する動作音が騒音となる。そこで、機械式リレーを用いた制御回路に代えて、IC(Integrated Circuit)を用いることが考えられる。ICを用いれば、電気信号の入出力のみでモータの駆動制御を行うことができ、接点切替による動作音が発生しないので、操作時の騒音をなくすことができる。
【0012】
しかし、その一方でICは水濡れに弱く、接続端子付近が水濡れしてしまうと、端子同士が短絡してICが誤動作する恐れがある。特に、近接する端子間の電圧差が大きいと、水濡れにより、電圧の高い端子から電圧の低い端子へと電流が流れ、ICの誤動作につながる。
【0013】
そこで、本発明は、水濡れ時に端子間で短絡が発生することによる誤動作を防止できるモータ駆動装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るモータ駆動装置は、操作スイッチの操作状況に応じて、モータを正転方向または逆転方向へ駆動するモータ駆動装置であって、操作スイッチからの正転指令に基づいて、ON/OFF状態が切り替わる第1半導体スイッチング素子と、操作スイッチからの逆転指令に基づいて、ON/OFF状態が切り替わる第2半導体スイッチング素子と、第1および第2半導体スイッチング素子のON/OFF状態に応じて、モータの正転方向または逆転方向への駆動を制御する制御回路と、水濡れを検出して、第1および第2半導体スイッチング素子の動作を制御する水濡れ検出回路とを備えている。制御回路は、第1半導体スイッチング素子が接続される第1端子と、第2半導体スイッチング素子が接続される第2端子と、あらかじめ定められた基準電圧値よりも低い電圧値の信号が入力または出力されるローレベル端子と、基準電圧値よりも高い電圧値の信号が入力または出力されるハイレベル端子とを有している。
【0015】
第1の発明においては、水濡れ検出回路が水濡れを検出した場合に、第1端子および第2端子の電圧値が、基準電圧値よりも低い電圧値となる。また、第1端子および第2端子は、ハイレベル端子から隔離されて、ローレベル端子に近接して配置されている。
【0016】
このように、水濡れ時に低電圧となる第1端子および第2端子をローレベル端子に近接して配置することにより、第1端子および第2端子と、ローレベル端子との間の電位差が小さくなる。このため、水濡れ時の両端子間の短絡による制御回路の誤動作が生じにくくなる。
【0017】
第2の発明においては、水濡れ検出回路が水濡れを検出した場合に、第1端子および第2端子の電圧値が、基準電圧値よりも高い電圧値となる。また、第1端子および第2端子は、ローレベル端子から隔離されて、ハイレベル端子に近接して配置されている。
【0018】
このように、水濡れ時に高電圧となる第1端子および第2端子をハイレベル端子に近接して配置することにより、第1端子および第2端子と、ハイレベル端子との間の電位差が小さくなる。このため、水濡れ時の両端子間の短絡による制御回路の誤動作が生じにくくなる。
【0019】
上記第1および第2の発明において、水濡れ検出回路が水濡れを検出し、かつ、操作スイッチから正転指令が出力された場合に、第1端子の電圧値が、基準電圧値よりも高い電圧値となり、第2端子の電圧値が、基準電圧値よりも低い電圧値となる構成にしてもよい。また、これとは逆に、第1端子の電圧値が、基準電圧値よりも低い電圧値となり、第2端子の電圧値が、基準電圧値よりも高い電圧値となる構成にしてもよい。
【0020】
第3の発明においては、水濡れ検出回路が水濡れを検出した場合に、第1端子と第2端子の一方の端子の電圧値が、基準電圧値よりも低い電圧値となり、他方の端子の電圧値が、基準電圧値よりも高い電圧値となる。また、一方の端子は、ハイレベル端子から隔離されて、ローレベル端子に近接して配置され、他方の端子は、ローレベル端子から隔離されて、ハイレベル端子に近接して配置されている。
【0021】
このように、水濡れ時に低電圧となる端子をローレベル端子に近接して配置することにより、当該端子とローレベル端子との間の電位差が小さくなる。また、水濡れ時に高電圧となる端子をハイレベル端子に近接して配置することにより、当該端子とハイレベル端子との間の電位差が小さくなる。このため、水濡れ時の両端子間の短絡による制御回路の誤動作が生じにくくなる。
【0022】
本発明において、ローレベル端子は、典型的にはグランドと接続される端子であり、ハイレベル端子は、典型的には電源と接続される端子である。この場合、モータと接続される端子は、電圧が比較的高いことから、ハイレベル端子に近接して配置するのが好ましい。
【0023】
また、本発明では、制御回路がICのパッケージに内蔵されており、ローレベル端子はパッケージの一方の側に配置され、ハイレベル端子はパッケージの他方の側に配置されているのが好ましい。このようにすることで、第1、第2端子が、ハイレベル端子またはローレベル端子から確実に隔離されるので、水濡れ時の端子間の短絡による誤動作をより効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、水濡れ時に端子間で短絡が発生することによる誤動作を防止できるモータ駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の基本的な構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るモータ駆動装置の回路図である。
【図3】第1実施形態の通常時の動作を説明する回路図である。
【図4】第1実施形態の通常時の動作を説明する回路図である。
【図5】第1実施形態の通常時の動作を説明する回路図である。
【図6】第1実施形態の通常時の動作を説明する回路図である。
【図7】第1実施形態の水濡れ時の動作を説明する回路図である。
【図8】第1実施形態の水濡れ時の動作を説明する回路図である。
【図9】第1実施形態の水濡れ時の動作を説明する回路図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るモータ駆動装置の回路図である。
【図11】第2実施形態の通常時の動作を説明する回路図である。
【図12】第2実施形態の通常時の動作を説明する回路図である。
【図13】第2実施形態の通常時の動作を説明する回路図である。
【図14】第2実施形態の通常時の動作を説明する回路図である。
【図15】第2実施形態の水濡れ時の動作を説明する回路図である。
【図16】第2実施形態の水濡れ時の動作を説明する回路図である。
【図17】第2実施形態の水濡れ時の動作を説明する回路図である。
【図18】本発明の第3実施形態に係るモータ駆動装置の回路図である。
【図19】第3実施形態の水濡れ時の動作を説明する回路図である。
【図20】第3実施形態の水濡れ時の動作を説明する回路図である。
【図21】本発明の第4実施形態に係るモータ駆動装置の回路図である。
【図22】第4実施形態の水濡れ時の動作を説明する回路図である。
【図23】第4実施形態の水濡れ時の動作を説明する回路図である。
【図24】第1および第3実施形態に用いるICの平面図である。
【図25】第2および第4実施形態に用いるICの平面図である。
【図26】他の端子配置を有するICの平面図である。
【図27】他の端子配置を有するICの平面図である。
【図28】パワーウィンドウ装置のブロック図である。
【図29】操作スイッチの一例を示した概略構成図である。
【図30】車両の各窓に設けられる窓開閉機構の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の基本的な構成を示したブロック図である。モータ駆動装置Uは、第1半導体スイッチング素子Q1と、第2半導体スイッチング素子Q2と、制御回路2と、水濡れ検出回路3とを備えている。第1半導体スイッチング素子Q1は、操作スイッチ4からの正転指令に基づいて、ON/OFF状態が切り替わる。第2半導体スイッチング素子Q2は、操作スイッチ4からの逆転指令に基づいて、ON/OFF状態が切り替わる。制御回路2は、第1半導体スイッチング素子Q1および第2半導体スイッチング素子Q2のON/OFF状態に応じて、モータMの正転方向または逆転方向への駆動を制御する。水濡れ検出回路3は、水濡れを検出して、各半導体スイッチング素子Q1、Q2の動作を制御する。制御回路2は、第1半導体スイッチング素子Q1が接続される第1端子T1と、第2半導体スイッチング素子Q2が接続される第2端子T2と、基準電圧値よりも低い電圧値の信号が入力または出力されるローレベル端子LTと、基準電圧値よりも高い電圧値の信号が入力または出力されるハイレベル端子HTとを有している。なお、基準電圧値は、モータ駆動装置Uに接続される電源(図示省略)の電圧値と、モータ駆動装置Uに接続されるグランド(図示省略)の電圧値との間の、あらかじめ定められた電圧値である。
【0027】
以下、車両のパワーウィンドウ装置に本発明を適用した場合の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。なお、図2〜図23においては、図1と同一の部分または対応する部分に、図1と同一の符号を付してある。
【0028】
図2は、本発明の第1実施形態に係るモータ駆動装置(パワーウィンドウ装置)の回路図である。
【0029】
CPU1の入力側には、操作状況に応じて正転指令または逆転指令を出力する操作スイッチ4が接続される。操作スイッチ4から出力される正転指令S1は、モータMを正転方向に駆動して窓を開くための信号であり、抵抗R16および定電圧ダイオードZ1を介して、CPU1の窓開信号入力端子(PW−DN)へ入力される。操作スイッチ4から出力される逆転指令S2は、モータMを逆転方向に駆動して窓を閉じるための信号であり、抵抗R17および定電圧ダイオードZ2を介して、CPU1の窓閉信号入力端子(PW−UP)へ入力される。
【0030】
CPU1の出力側には、トランジスタQ1(第1半導体スイッチング素子)と、トランジスタQ2(第2半導体スイッチング素子)とが接続される。これらのトランジスタQ1、Q2は、NPN型のトランジスタである。トランジスタQ1は、正転指令S1に基づいてON/OFF状態が切り替わる。また、トランジスタQ2は、逆転指令S2に基づいてON/OFF状態が切り替わる。
【0031】
トランジスタQ1のベースは、ダイオードD1、抵抗R3およびR4を介して、CPU1の窓開信号出力端子(DN)に接続されている。トランジスタQ1のベース・エミッタ間には、抵抗R5が接続されている。トランジスタQ1のコレクタは、抵抗R2を介して電源(5V)に接続されているとともに、制御回路2の端子iに接続されている。トランジスタQ1のエミッタは接地されている。
【0032】
トランジスタQ2のベースは、ダイオードD2、抵抗R6を介して、CPU1の窓閉信号出力端子(UP)に接続されている。トランジスタQ2のベース・エミッタ間には、抵抗R7が接続されている。トランジスタQ2のコレクタは、抵抗R1を介して電源(5V)に接続されているとともに、制御回路2の端子jに接続されている。トランジスタQ2のエミッタは接地されている。
【0033】
制御回路2は、トランジスタQ1、Q2のON/OFF状態に応じて、モータMの正転方向または逆転方向への駆動を制御する回路であって、論理回路21と駆動回路22とを含む。論理回路21は、端子i、jに与えられる信号のレベルに応じて、駆動回路22を構成するFET(電界効果トランジスタ)1〜4の各ゲートへ、「H」(High)または「L」(Low)の信号を個別に出力する。FET1とFET2の接続点、およびFET3とFET4の接続点から、モータMへ駆動電圧が供給される。制御回路2は、後述するIC(Integrated Circuit)のパッケージに内蔵されている。なお、端子i、端子jは、それぞれ、図1における第1端子T1、第2端子T2に対応している。
【0034】
水濡れ検出回路3は、一対の電極パッドP1、P2と、スイッチング用のトランジスタQ3〜Q6と、抵抗R8〜R15と、ダイオードD3、D4とを備えている。電極パッドP1、P2は、水濡れ時に水によって短絡される。電極パッドP2は接地されており、電極パッドP1は抵抗R15を介して、トランジスタQ4のベースに接続されている。トランジスタQ4のエミッタは、電源(5V)に接続されている。トランジスタQ4のベース・エミッタ間には、抵抗R14が接続されている。トランジスタQ4のコレクタは、抵抗R12を介してトランジスタQ3のベースに接続されている。また、トランジスタQ4のコレクタは、ダイオードD3を介して、ダイオードD1と抵抗R3の接続点に接続されているとともに、ダイオードD4を介して、ダイオードD2と抵抗R6の接続点に接続されている。
【0035】
トランジスタQ3のベース・エミッタ間には、抵抗R13が接続されている。トランジスタQ3のエミッタは接地されている。トランジスタQ3のコレクタは、抵抗R11を介してトランジスタQ6のベースに接続されている。トランジスタQ6のエミッタは、抵抗16の一端に接続されている。トランジスタQ6のベース・エミッタ間には、抵抗R10が接続されている。トランジスタQ6のコレクタは、抵抗R8を介してトランジスタQ5のベースに接続されている。トランジスタQ5のエミッタは接地されており、コレクタは抵抗R3と抵抗R4の接続点に接続されている。トランジスタQ5のベース・エミッタ間には、抵抗R9が接続されている。
【0036】
符号Yで示したテーブルは、制御回路2の端子iに入力される信号(入力A)のレベル、および端子jに入力される信号(入力B)のレベルと、モータMによる窓開閉動作との関係を表したものである。「H」はハイレベル、「L」はローレベル、「UP」は窓が閉じる動作、「DOWN」は窓が開く動作をそれぞれ表している。「無」は窓の開閉動作が行われないことを表している。窓開閉動作の詳細については、以下で順を追って説明する。
【0037】
次に、上記構成からなる第1実施形態のモータ駆動装置の動作について説明する。
【0038】
図3は、操作スイッチ4が操作されていない場合の、通常時(水濡れの無い状態をいう。以下同様。)の回路状態を示している。操作スイッチ4からの指令がないため、CPU1の窓開信号入力端子(PW−DN)および窓閉信号入力端子(PW−UP)は、いずれも「L」レベルである。このとき、CPU1の窓開信号出力端子(DN)および窓閉信号出力端子(UP)は、いずれも「H」レベルとなっている。一方、水濡れ検出回路3においては、電極パッドP1、P2が水で短絡されていないので、トランジスタQ4はOFFであり、したがって、トランジスタQ3、Q5、Q6もOFFである。このため、トランジスタQ1のベースが「H」レベルとなって、トランジスタQ1がONし、トランジスタQ2のベースも「H」レベルとなって、トランジスタQ2がONする。トランジスタQ1がONする結果、制御回路2の端子iは、トランジスタQ1を介して接地されるので、「L」レベルとなる。また、トランジスタQ2がONする結果、制御回路2の端子jは、トランジスタQ2を介して接地されるので、端子jも「L」レベルとなる。したがって、テーブルYにおける(4)のように、入力Aが「L」、入力Bが「L」となる結果、窓の開閉動作は行われない。すなわち、この場合は、論理回路21からの出力信号により、駆動回路22のFET1〜4は全てOFFとなり、モータMは駆動されない。
【0039】
図4は、操作スイッチ4により窓の開操作が行われた場合の、通常時の回路状態を示している。操作スイッチ4からの正転指令S1により、CPU1の窓開信号入力端子(PW−DN)は「H」レベルとなる。一方、窓閉信号入力端子(PW−UP)は、「L」レベルのままである。これにより、CPU1の窓開信号出力端子(DN)は「L」レベルとなり、窓閉信号出力端子(UP)は「H」レベルとなる。一方、水濡れ検出回路3においては、図3の場合と同様、電極パッドP1、P2が水で短絡されていないので、トランジスタQ3〜Q6はOFFである。このため、トランジスタQ1のベースが「L」レベルとなって、トランジスタQ1がOFFする。一方、トランジスタQ2のベースは「H」レベルのままであり、トランジスタQ2はONを維持する。トランジスタQ1がOFF、トランジスタQ2がONとなる結果、制御回路2の端子iは「H」レベル、端子jは「L」レベルとなる。したがって、テーブルYにおける(3)のように、入力Aが「H」、入力Bが「L」となって、窓の開動作(DOWN動作)が行われる。すなわち、この場合は、論理回路21からの出力信号により、駆動回路22のFET1およびFET4がONし、FET2およびFET3がOFFして、モータMが正転方向に駆動され、窓が開く。
【0040】
図5は、操作スイッチ4により窓の閉操作が行われた場合の、通常時の回路状態を示している。操作スイッチ4からの逆転指令S2により、CPU1の窓閉信号入力端子(PW−UP)は「H」レベルとなる。一方、窓開信号入力端子(PW−DN)は「L」レベルのままである。これにより、CPU1の窓開信号出力端子(DN)は「H」レベルとなり、窓閉信号出力端子(UP)は「L」レベルとなる。一方、水濡れ検出回路3においては、図3の場合と同様、電極パッドP1、P2が水で短絡されていないので、トランジスタQ3〜Q6はOFFである。このため、トランジスタQ2のベースが「L」レベルとなって、トランジスタQ2がOFFする。一方、トランジスタQ1のベースは「H」レベルのままであり、トランジスタQ1はONを維持する。トランジスタQ1がON、トランジスタQ2がOFFとなる結果、制御回路2の端子iは「L」レベル、端子jは「H」レベルとなる。したがって、テーブルYにおける(2)のように、入力Aが「L」、入力Bが「H」となって、窓の閉動作(UP動作)が行われる。すなわち、この場合は、論理回路21からの出力信号により、駆動回路22のFET2およびFET3がONし、FET1およびFET4がOFFして、モータMが逆転方向に駆動され、窓が閉じる。
【0041】
図6は、操作スイッチ4から正転指令S1と逆転指令S2が同時に入力された場合の回路状態を示している。双方の指令が同時に入力されることは通常あり得ないが、操作スイッチ4に故障が発生した場合などに、このようなことが起こりうる。この場合は、CPU1の窓開信号出力端子(DN)および窓閉信号出力端子(UP)は、いずれも「L」レベルとなり、トランジスタQ1、Q2がともにOFFとなる。したがって、端子i、jはいずれも「H」レベルとなる。このため、テーブルYにおける(1)のように、入力Aが「H」、入力Bが「H」となる結果、窓の開閉動作は行われない。すなわち、この場合は、論理回路21からの出力信号により、駆動回路22のFET1〜4は全てOFFとなり、モータMは駆動されない。
【0042】
図7は、操作スイッチ4が操作されていない状態で、水濡れが発生した場合の回路状態を示している。この場合は、水濡れ検出回路3において、電極パッドP1、P2が水Wによって短絡される結果、トランジスタQ4がONとなる。トランジスタQ4がONすると、このトランジスタQ4のエミッタ・コレクタ間に電流が流れ、この電流がダイオードD3を介してトランジスタQ1のベースに流れる。そのため、窓開信号出力端子(DN)のレベルに関係なく、トランジスタQ1がONとなる。また、トランジスタQ4のエミッタ・コレクタ間の電流は、ダイオードD4を介してトランジスタQ2のベースに流れる。そのため、窓閉信号出力端子(UP)のレベルに関係なく、トランジスタQ2もONとなる。一方、トランジスタQ4のエミッタ・コレクタ間の電流は、トランジスタQ3のベースにも流れるが、トランジスタQ6がOFFであるので、トランジスタQ3はONせずOFF状態にある。また、トランジスタQ5もOFF状態にある。トランジスタQ1、Q2がONすることで、端子i、jはともに「L」レベルとなる。したがって、水濡れ発生時に、操作スイッチ4が操作(次に述べる開操作)されなければ、テーブルYにおける(4)のように、入力Aが「L」、入力Bが「L」となって、窓の開閉動作は行われない。
【0043】
次に、図7の状態において、操作スイッチ4により窓の開操作が行われると、図8に示すように、正転指令S1により、CPU1の窓開信号入力端子(PW−DN)は「H」レベルとなる。一方、窓閉信号入力端子(PW−UP)は、「L」レベルのままである。これにより、CPU1の窓開信号出力端子(DN)は「L」レベルとなり、窓閉信号出力端子(UP)は「H」レベルとなる。一方、水濡れ検出回路3においては、電極パッドP1、P2が水Wによって短絡され、トランジスタQ4がONしているので、トランジスタQ4のエミッタ・コレクタ間に電流が流れる。しかるに、図7の場合と異なり、正転指令S1によってトランジスタQ3がONとなるので、トランジスタQ6がONとなり、この結果トランジスタQ5もONとなる。したがって、トランジスタQ5のONにより、トランジスタQ1のベースが「L」レベルとなって、トランジスタQ1がOFFする。一方、トランジスタQ2のベースは「H」レベルのままであり、トランジスタQ2はONを維持する。トランジスタQ1がOFF、トランジスタQ2がONとなる結果、制御回路2の端子iは「H」レベル、端子jは「L」レベルとなる。したがって、テーブルYにおける(3)のように、入力Aが「H」、入力Bが「L」となって、窓の開動作(DOWN動作)が行われる。すなわち、水濡れ時に操作スイッチ4により窓の開操作が行われると、モータMが正転方向に駆動され、窓が開く。
【0044】
一方、図7の状態において、操作スイッチ4により閉操作が行われても、窓の閉動作は行われない。この場合は、図9に示すように、操作スイッチ4からの逆転指令S2により、CPU1の窓閉信号入力端子(PW−UP)は「H」レベル、窓開信号入力端子(PW−DN)は「L」レベルとなる。したがって、窓開信号出力端子(DN)は「H」レベル、窓閉信号出力端子(UP)は「L」レベルとなる。一方、水濡れ検出回路3のトランジスタQ3、Q6はONしないので、トランジスタQ5もOFFとなる。したがって、トランジスタQ1のベースは「H」レベルとなるので、トランジスタQ1はONする。また、窓閉信号出力端子(UP)は「L」レベルであるが、トランジスタQ2のベースには、ダイオードD4を介してトランジスタQ4から電流が供給されるので、トランジスタQ2もONする。したがって、端子i、jはいずれも「L」レベルとなって、テーブルYにおける(4)のように、入力Aが「L」、入力Bが「L」となる結果、窓の閉動作は行われない。
【0045】
図10は、本発明の第2実施形態に係るモータ駆動装置(パワーウィンドウ装置)の回路図である。図10では、図2と同一の部分または対応する部分に、図2と同一の符号を付してある。
【0046】
CPU1の入力側には、操作状況に応じて正転指令または逆転指令を出力する操作スイッチ4が接続される。操作スイッチ4から出力される正転指令S1は、モータMを正転方向に駆動して窓を開くための信号であり、抵抗R16および定電圧ダイオードZ1を介して、CPU1の窓開信号入力端子(PW−DN)へ入力される。操作スイッチ4から出力される逆転指令S2は、モータMを逆転方向に駆動して窓を閉じるための信号であり、抵抗R17および定電圧ダイオードZ2を介して、CPU1の窓閉信号入力端子(PW−UP)へ入力される。
【0047】
CPU1の出力側には、トランジスタQ1(第1半導体スイッチング素子)と、トランジスタQ2(第2半導体スイッチング素子)とが接続される。これらのトランジスタQ1、Q2は、図2の場合と異なり、PNP型のトランジスタである。トランジスタQ1は、正転指令S1に基づいてON/OFF状態が切り替わる。また、トランジスタQ2は、逆転指令S2に基づいてON/OFF状態が切り替わる。
【0048】
トランジスタQ1のベースは、ダイオードD1、抵抗R19を介して、CPU1の窓開信号出力端子(DN)に接続されている。トランジスタQ1のベース・エミッタ間には、抵抗R18が接続されている。トランジスタQ1のコレクタは、制御回路2の端子iに接続されているとともに、抵抗R20を介して接地されている。トランジスタQ1のエミッタは、電源(5V)に接続されている。
【0049】
トランジスタQ2のベースは、ダイオードD2、抵抗R22、抵抗R23を介して、CPU1の窓閉信号出力端子(UP)に接続されている。トランジスタQ2のベース・エミッタ間には、抵抗R21が接続されている。トランジスタQ2のコレクタは、制御回路2の端子jに接続されているとともに、抵抗R24を介して接地されている。トランジスタQ2のエミッタは、電源(5V)に接続されている。
【0050】
制御回路2は、トランジスタQ1、Q2のON/OFF状態に応じて、モータMの正転方向または逆転方向への駆動を制御する回路であって、論理回路21と駆動回路22とを含む。論理回路21は、端子i、jに与えられる信号のレベルに応じて、駆動回路22を構成するFET(電界効果トランジスタ)1〜4の各ゲートへ、「H」(High)または「L」(Low)の信号を個別に出力する。FET1とFET2の接続点、およびFET3とFET4の接続点から、モータMへ駆動電圧が供給される。制御回路2は、後述するICのパッケージに内蔵されている。なお、端子i、端子jは、それぞれ、図1における第1端子T1、第2端子T2に対応している。
【0051】
水濡れ検出回路3は、一対の電極パッドP1、P2と、スイッチング用のトランジスタQ3、Q4、Q6と、抵抗R10、抵抗R12〜R15と、ダイオードD3、D4とを備えている。電極パッドP1、P2は、水濡れ時に水によって短絡される。電極パッドP2は接地されており、電極パッドP1は抵抗R15を介して、トランジスタQ4のベースに接続されている。トランジスタQ4のエミッタは、電源(5V)に接続されている。トランジスタQ4のベース・エミッタ間には、抵抗R14が接続されている。トランジスタQ4のコレクタは、抵抗R12を介してトランジスタQ3のベースに接続されている。トランジスタQ3のベース・エミッタ間には、抵抗R13が接続されている。トランジスタQ3のエミッタは接地されている。
【0052】
トランジスタQ3のコレクタは、ダイオードD3を介して、ダイオードD2と抵抗R23の接続点に接続されているとともに、ダイオードD4を介して、ダイオードD1と抵抗R19の接続点に接続されている。また、トランジスタQ3のコレクタは、トランジスタQ6のベースに接続されている。トランジスタQ6のエミッタは、抵抗16の一端に接続されている。トランジスタQ6のベース・エミッタ間には、抵抗R10が接続されている。トランジスタQ6のコレクタは、抵抗R22と抵抗R23の接続点に接続されている。
【0053】
符号Yで示したテーブルは、制御回路2の端子iに入力される信号(入力A)のレベル、および端子jに入力される信号(入力B)のレベルと、モータMによる窓開閉動作との関係を表したものである。「H」はハイレベル、「L」はローレベル、「UP」は窓が閉じる動作、「DOWN」は窓が開く動作をそれぞれ表している。「無」は窓の開閉動作が行われないことを表している。窓開閉動作の詳細については、以下で順を追って説明する。
【0054】
次に、上記構成からなる第2実施形態のモータ駆動装置の動作について説明する。
【0055】
図11は、操作スイッチ4が操作されていない場合の、通常時の回路状態を示している。操作スイッチ4からの指令がないため、CPU1の窓開信号入力端子(PW−DN)および窓閉信号入力端子(PW−UP)は、いずれも「L」レベルである。このとき、CPU1の窓開信号出力端子(DN)および窓閉信号出力端子(UP)は、いずれも「H」レベルとなっている。一方、水濡れ検出回路3においては、電極パッドP1、P2が水で短絡されていないので、トランジスタQ4はOFFであり、したがって、トランジスタQ3、Q6もOFFである。このため、トランジスタQ1のベースが「H」レベルとなって、トランジスタQ1がOFFし、トランジスタQ2のベースも「H」レベルとなって、トランジスタQ2がOFFする。トランジスタQ1がOFFする結果、制御回路2の端子iは「L」レベルとなる。また、トランジスタQ2がOFFする結果、制御回路2の端子jも「L」レベルとなる。したがって、テーブルYにおける(4)のように、入力Aが「L」、入力Bが「L」となる結果、窓の開閉動作は行われない。すなわち、この場合は、論理回路21からの出力信号により、駆動回路22のFET1〜4は全てOFFとなり、モータMは駆動されない。
【0056】
図12は、操作スイッチ4により窓の開操作が行われた場合の、通常時の回路状態を示している。操作スイッチ4からの正転指令S1により、CPU1の窓開信号入力端子(PW−DN)は「H」レベルとなる。一方、窓閉信号入力端子(PW−UP)は、「L」レベルのままである。これにより、CPU1の窓開信号出力端子(DN)は「L」レベルとなり、窓閉信号出力端子(UP)は「H」レベルとなる。一方、水濡れ検出回路3においては、図11の場合と同様、電極パッドP1、P2が水で短絡されていないので、トランジスタQ3、Q4、Q6はOFFである。このため、トランジスタQ1のベースが「L」レベルとなって、トランジスタQ1がONする。一方、トランジスタQ2のベースは「H」レベルのままであり、トランジスタQ2はOFFを維持する。トランジスタQ1がON、トランジスタQ2がOFFとなる結果、制御回路2の端子iは「H」レベル、端子jは「L」レベルとなる。したがって、テーブルYにおける(2)のように、入力Aが「H」、入力Bが「L」となって、窓の開動作(DOWN動作)が行われる。すなわち、この場合は、論理回路21からの出力信号により、駆動回路22のFET1およびFET4がONし、FET2およびFET3がOFFして、モータMが正転方向に駆動され、窓が開く。
【0057】
図13は、操作スイッチ4により窓の閉操作が行われた場合の、通常時の回路状態を示している。操作スイッチ4からの逆転指令S2により、CPU1の窓閉信号入力端子(PW−UP)は「H」レベルとなる。一方、窓開信号入力端子(PW−DN)は「L」レベルのままである。これにより、CPU1の窓開信号出力端子(DN)は「H」レベルとなり、窓閉信号出力端子(UP)は「L」レベルとなる。一方、水濡れ検出回路3においては、図11の場合と同様、電極パッドP1、P2が水で短絡されていないので、トランジスタQ3、Q4、Q6はOFFである。このため、トランジスタQ2のベースが「L」レベルとなって、トランジスタQ2がONする。一方、トランジスタQ1のベースは「H」レベルのままであり、トランジスタQ1はOFFを維持する。トランジスタQ1がOFF、トランジスタQ2がONとなる結果、制御回路2の端子iは「L」レベル、端子jは「H」レベルとなる。したがって、テーブルYにおける(3)のように、入力Aが「L」、入力Bが「H」となって、窓の閉動作(UP動作)が行われる。すなわち、この場合は、論理回路21からの出力信号により、駆動回路22のFET2およびFET3がONし、FET1およびFET4がOFFして、モータMが逆転方向に駆動され、窓が閉じる。
【0058】
図14は、操作スイッチ4から正転指令S1と逆転指令S2が同時に入力された場合の回路状態を示している。双方の指令が同時に入力されることは通常あり得ないが、操作スイッチ4に故障が発生した場合などに、このようなことが起こりうる。この場合は、CPU1の窓開信号出力端子(DN)および窓閉信号出力端子(UP)は、いずれも「L」レベルとなり、トランジスタQ1、Q2がともにONとなる。したがって、端子i、jはいずれも「H」レベルとなる。このため、テーブルYにおける(1)のように、入力Aが「H」、入力Bが「H」となる結果、窓の開閉動作は行われない。すなわち、この場合は、論理回路21からの出力信号により、駆動回路22のFET1〜4は全てOFFとなり、モータMは駆動されない。
【0059】
図15は、操作スイッチ4が操作されていない状態で、水濡れが発生した場合の回路状態を示している。この場合は、水濡れ検出回路3において、電極パッドP1、P2が水Wによって短絡される結果、トランジスタQ4がONとなる。トランジスタQ4がONすると、このトランジスタQ4のエミッタ・コレクタ間に電流が流れる。そして、この電流がトランジスタQ3のベースに流れるので、トランジスタQ3がONとなる。そして、トランジスタQ3のONによって、トランジスタQ1のベースが「L」レベルとなるため、窓開信号出力端子(DN)のレベルに関係なく、トランジスタQ1がONとなる。また、トランジスタQ3のONによって、ダイオードD3を介してトランジスタQ2のベースが「L」レベルとなるため、窓閉信号出力端子(UP)のレベルに関係なく、トランジスタQ2もONとなる。トランジスタQ1、Q2がONすることで、端子i、jはともに「H」レベルとなる。したがって、水濡れ発生時に、操作スイッチ4が操作(次に述べる開操作)されなければ、テーブルYにおける(1)のように、入力Aが「H」、入力Bが「H」となって、窓の開閉動作は行われない。
【0060】
次に、図15の状態において、操作スイッチ4により窓の開操作が行われると、図16に示すように、正転指令S1により、CPU1の窓開信号入力端子(PW−DN)は「H」レベルとなる。一方、窓閉信号入力端子(PW−UP)は、「L」レベルのままである。これにより、CPU1の窓開信号出力端子(DN)は「L」レベルとなり、窓閉信号出力端子(UP)は「H」レベルとなる。一方、水濡れ検出回路3においては、電極パッドP1、P2が水Wによって短絡され、トランジスタQ4、Q3がONしている。また、図15の場合と異なり、正転指令S1によってトランジスタQ6がONとなるので、トランジスタQ2のベース電位が上昇して、トランジスタQ2がOFFする。一方、トランジスタQ1のベースは「L」レベルのままであり、トランジスタQ1はONを維持する。トランジスタQ1がON、トランジスタQ2がOFFとなる結果、制御回路2の端子iは「H」レベル、端子jは「L」レベルとなる。したがって、テーブルYにおける(2)のように、入力Aが「H」、入力Bが「L」となって、窓の開動作(DOWN動作)が行われる。すなわち、水濡れ時に操作スイッチ4により窓の開操作が行われると、モータMが正転方向に駆動され、窓が開く。
【0061】
一方、図15の状態において、操作スイッチ4により閉操作が行われても、窓の閉動作は行われない。この場合は、図17に示すように、操作スイッチ4からの逆転指令S2により、CPU1の窓閉信号入力端子(PW−UP)は「H」レベル、窓開信号入力端子(PW−DN)は「L」レベルとなる。したがって、窓開信号出力端子(DN)は「H」レベル、窓閉信号出力端子(UP)は「L」レベルとなる。一方、水濡れ検出回路3のトランジスタQ6はONしないので、トランジスタQ2のベースは「L」レベルとなって、トランジスタQ2はONする。また、トランジスタQ1のベースは、トランジスタQ3がONしているため、「L」レベルとなり、トランジスタQ1もONする。したがって、端子i、jはいずれも「H」レベルとなって、テーブルYにおける(1)のように、入力Aが「H」、入力Bが「H」となる結果、窓の閉動作は行われない。
【0062】
図18は、本発明の第3実施形態に係るモータ駆動装置(パワーウィンドウ装置)の回路図である。図18では、図2と同一の部分または対応する部分に、図2と同一の符号を付してある。
【0063】
図18では、図2においてトランジスタQ1のベース側に設けられていた抵抗R3が、トランジスタQ2のベース側に設けられている。また、図2においてトランジスタQ1のベース側に接続されていたトランジスタQ5のコレクタが、図18では、トランジスタQ2のベース側に接続されている。また、図2の場合は、操作スイッチ4が操作されていない通常時には、窓開信号出力端子(DN)および窓閉信号出力端子(UP)は、いずれも「H」レベルであった(図3参照)。それに対して、図18の場合は、操作スイッチ4が操作されていない通常時には、窓開信号出力端子(DN)および窓閉信号出力端子(UP)は、いずれも「L」レベルとなる。また、テーブルYにおけるロジックが、図2の場合と異なっている。図18の回路の動作は、図2の回路の動作から容易に導出することができるので、以下では動作を簡単に説明するにとどめる。
【0064】
操作スイッチ4が操作されていない通常時には、図18のとおり、窓開信号出力端子(DN)および窓閉信号出力端子(UP)がともに「L」レベルであり、水濡れ検出回路3のトランジスタQ3〜Q6も全てOFFである。そのため、トランジスタQ1、Q2はOFFとなり、制御回路2の端子i、jは、ともに「H」レベルとなる。したがって、テーブルYにおける(1)のように、入力Aが「H」、入力Bが「H」となる結果、窓の開閉動作は行われない。
【0065】
操作スイッチ4により窓の開操作が行われると、正転指令によりCPU1の窓開信号出力端子(DN)が「H」レベルとなって、トランジスタQ1がONとなる。トランジスタQ2はOFFのままである。したがって、制御回路2の端子iは「L」レベル、端子jは「H」レベルとなるので、テーブルYにおける(3)のように、入力Aが「L」、入力Bが「H」となって、窓の開動作(DOWN動作)が行われる。
【0066】
操作スイッチ4により窓の閉操作が行われると、逆転指令によりCPU1の窓閉信号出力端子(UP)が「H」レベルとなって、トランジスタQ2がONとなる。トランジスタQ1はOFFのままである。したがって、制御回路2の端子iは「H」レベル、端子jは「L」レベルとなるので、テーブルYにおける(2)のように、入力Aが「H」、入力Bが「L」となって、窓の閉動作(UP動作)が行われる。
【0067】
操作スイッチ4の故障等により正転指令と逆転指令が同時に入力された場合は、CPU1の窓開信号出力端子(DN)と窓閉信号出力端子(UP)がともに「H」レベルとなって、トランジスタQ1、Q2がONする。この結果、制御回路2の端子i、jはいずれも「L」レベルとなるので、テーブルYにおける(4)のように、入力Aが「L」、入力Bが「L」となって、窓の開閉動作は行われない。
【0068】
また、操作スイッチ4が操作されていない状態で、水濡れが発生した場合は、図19に示すように、水濡れ検出回路3の電極パッドP1、P2が水Wによって短絡される。その結果、トランジスタQ4がONし、これによりトランジスタQ1、Q2がともにONする。この結果、制御回路2の端子i、jはいずれも「L」レベルとなるので、テーブルYにおける(4)のように、入力Aが「L」、入力Bが「L」となって、窓の開閉動作は行われない。
【0069】
次に、図19の状態において、操作スイッチ4により窓の開操作が行われると、図20に示すように、正転指令S1により、CPU1の窓開信号出力端子(DN)は「H」レベルとなる。一方、水濡れ検出回路3においては、トランジスタQ3〜Q6が全てONとなり、トランジスタQ5のONにより、トランジスタQ2がOFFする。一方、トランジスタQ1のベースは「H」レベルのため、トランジスタQ1はONする。この結果、制御回路2の端子iは「L」レベル、端子jは「H」レベルとなる。したがって、テーブルYにおける(3)のように、入力Aが「L」、入力Bが「H」となって、窓の開動作(DOWN動作)が行われる。すなわち、水濡れ時に操作スイッチ4により窓の開操作が行われると、モータMが正転方向に駆動され、窓が開く。
【0070】
一方、図19の状態において、操作スイッチ4により閉操作が行われても、窓の閉動作は行われない。この場合は、逆転指令により、CPU1の窓閉信号出力端子(UP)は「H」レベルとなる。一方、水濡れ検出回路3のトランジスタQ6はONせず、トランジスタQ5はOFFであるため、トランジスタQ2がONする。また、トランジスタQ1のベースには、ダイオードD3を介してトランジスタQ4から電流が供給されるため、トランジスタQ1もONする。したがって、端子i、jはいずれも「L」レベルとなって、テーブルYにおける(4)のように、入力Aが「L」、入力Bが「L」となる結果、窓の閉動作は行われない。
【0071】
図21は、本発明の第4実施形態に係るモータ駆動装置(パワーウィンドウ装置)の回路図である。図21では、図10と同一の部分または対応する部分に、図10と同一の符号を付してある。
【0072】
図21では、図10においてトランジスタQ2のベース側に設けられていた抵抗R23が、トランジスタQ1のベース側に設けられている。また、図10においてトランジスタQ2のベース側に接続されていたトランジスタQ6のコレクタが、図21では、トランジスタQ1のベース側に接続されている。また、図10の場合は、操作スイッチ4が操作されていない通常時には、窓開信号出力端子(DN)および窓閉信号出力端子(UP)は、いずれも「H」レベルであった(図11参照)。それに対して、図21の場合は、操作スイッチ4が操作されていない通常時には、窓開信号出力端子(DN)および窓閉信号出力端子(UP)は、いずれも「L」レベルとなる。また、テーブルYにおけるロジックが、図10の場合と異なっている。図21の回路の動作は、図10の回路の動作から容易に導出することができるので、以下では動作を簡単に説明するにとどめる。
【0073】
操作スイッチ4が操作されていない通常時には、図21のとおり、窓開信号出力端子(DN)および窓閉信号出力端子(UP)がともに「L」レベルであり、水濡れ検出回路3のトランジスタQ3、Q4、Q6も全てOFFである。そのため、トランジスタQ1、Q2はONとなり、制御回路2の端子i、jは、ともに「H」レベルとなる。したがって、テーブルYにおける(1)のように、入力Aが「H」、入力Bが「H」となる結果、窓の開閉動作は行われない。
【0074】
操作スイッチ4により窓の開操作が行われると、正転指令によりCPU1の窓開信号出力端子(DN)が「H」レベルとなって、トランジスタQ1がOFFなる。トランジスタQ2はONのままである。したがって、制御回路2の端子iは「L」レベル、端子jは「H」レベルとなるので、テーブルYにおける(2)のように、入力Aが「L」、入力Bが「H」となって、窓の開動作(DOWN動作)が行われる。
【0075】
操作スイッチ4により窓の閉操作が行われると、逆転指令によりCPU1の窓閉信号出力端子(UP)が「H」レベルとなって、トランジスタQ2がOFFとなる。トランジスタQ1はONのままである。したがって、制御回路2の端子iは「H」レベル、端子jは「L」レベルとなるので、テーブルYにおける(3)のように、入力Aが「H」、入力Bが「L」となって、窓の閉動作(UP動作)が行われる。
【0076】
操作スイッチ4の故障等により正転指令と逆転指令が同時に入力された場合は、CPU1の窓開信号出力端子(DN)と窓閉信号出力端子(UP)がともに「H」レベルとなって、トランジスタQ1、Q2がOFFする。この結果、制御回路2の端子i、jはいずれも「L」レベルとなるので、テーブルYにおける(4)のように、入力Aが「L」、入力Bが「L」となって、窓の開閉動作は行われない。
【0077】
また、操作スイッチ4が操作されていない状態で、水濡れが発生した場合は、図22に示すように、水濡れ検出回路3の電極パッドP1、P2が水Wによって短絡される結果、トランジスタQ4、Q3がONし、これによりトランジスタQ1、Q2がともにONする。この結果、制御回路2の端子i、jはいずれも「H」レベルとなるので、テーブルYにおける(1)のように、入力Aが「H」、入力Bが「H」となって、窓の開閉動作は行われない。
【0078】
次に、図22の状態において、操作スイッチ4により窓の開操作が行われると、図23に示すように、正転指令S1により、CPU1の窓開信号出力端子(DN)が「H」レベルとなる。また、水濡れ検出回路3においては、トランジスタQ3、Q4、Q6が全てONとなり、トランジスタQ6のONによって、トランジスタQ1のベース電位が上昇するため、トランジスタQ1はOFFとなる。一方、トランジスタQ2のベース電位は変化しないので、トランジスタQ2はONを維持する。この結果、制御回路2の端子iは「L」レベル、端子jは「H」レベルとなる。したがって、テーブルYにおける(2)のように、入力Aが「L」、入力Bが「H」となって、窓の開動作(DOWN動作)が行われる。すなわち、水濡れ時に操作スイッチ4により窓の開操作が行われると、モータMが正転方向に駆動され、窓が開く。
【0079】
一方、図22の状態において、操作スイッチ4により閉操作が行われても、窓の閉動作は行われない。この場合は、逆転指令により、CPU1の窓閉信号出力端子(UP)が「H」レベルとなる。しかし、水濡れ検出回路3のトランジスタQ3がONであるので、トランジスタQ2のベースは「L」レベルであり、トランジスタQ2はONを維持する。また、水濡れ検出回路3のトランジスタQ6がONしないので、トランジスタQ1のベースは「L」レベルであり、トランジスタQ1もONを維持する。したがって、端子i、jはいずれも「H」レベルとなって、テーブルYにおける(1)のように、入力Aが「H」、入力Bが「H」となる結果、窓の閉動作は行われない。
【0080】
図24は、第1実施形態(図2)および第3実施形態(図18)の制御回路2として用いるICの平面図である。IC10は、制御回路2が内蔵されたパッケージ100と、パッケージ100の一方の側に配置された第1の端子群101と、パッケージ100の他方の側に配置された第2の端子群102とを有している。
【0081】
第1の端子群101のうち、端子a、gには、モータMが接続され、端子b、c、d、e、fには、電源Vdが接続される。また、第2の端子群102のうち、端子iには、トランジスタQ1のコレクタが接続され、端子jには、トランジスタQ2のコレクタが接続される(図2、図18参照)。端子h、k、l、m、nは、グランドGへ接続される。
【0082】
電源Vdが接続される端子b、c、d、e、fは、前述の基準電圧値(電源Vdの電圧値とグランドGの電圧値との間の、あらかじめ定められた電圧値)よりも高い電圧値の信号(ここでは5V電圧)が入力されるハイレベル端子である。また、グランドGへ接続される端子h、k、l、m、nは、基準電圧値よりも低い電圧値の信号(ここでは0V電圧)が入力されるローレベル端子である。
【0083】
ところで、図24のIC10においては、トランジスタQ1、Q2の接続される端子i、jが、ハイレベル端子b、c、d、e、fから隔離されて、ローレベル端子h、k、l、m、nに近接して配置されている。このため、第2実施形態や第4実施形態においてこのIC10を採用すると、これらの実施形態の場合は、水濡れが発生した場合に、端子i、jがともに「H」レベル(基準電圧値よりも高い電圧値)となるため(図15、図22参照)、水濡れ時に端子i、jとローレベル端子h、k、l、m、nとの間の電位差が大きくなる。このため、端子間で水による短絡が発生して制御回路2が誤動作する恐れがある。
【0084】
これに対して、第1実施形態と第3実施形態において図24のIC10を採用すると、これらの実施形態の場合は、水濡れ発生時に、端子i、jがともに「L」レベル(基準電圧値よりも低い電圧値)となるため(図7、図19参照)、端子i、jとローレベル端子h、k、l、m、nとの間の電位差は無いか、あったとしてもごく小さい。このため、端子間で水による短絡が発生するのを防止することができ、仮に短絡が発生したとしても、IC10への「H」、「L」の入力には影響が殆どないので、IC10を誤動作させるには至らない。
【0085】
換言すれば、図24のように端子i、jがローレベル端子h、k、l、m、nに近接して配置されているIC10を用いる場合は、第1実施形態や第3実施形態のように、水濡れ時に操作スイッチ4からの正転指令S1がない状態で、端子i、jが「L」レベルとなる回路構成とすればよく、これにより水濡れ時の端子間短絡を有効に防止することができる。
【0086】
なお、図24では、モータMと接続される端子a、gは、電圧が比較的高いことから、ハイレベル端子b、c、d、e、fに近接して配置されている。
【0087】
図25は、第2実施形態(図10)および第4実施形態(図21)の制御回路2として用いるICの平面図である。IC20は、制御回路2が内蔵されたパッケージ200と、パッケージ200の一方の側に配置された第1の端子群201と、パッケージ200の他方の側に配置された第2の端子群202とを有している。
【0088】
第1の端子群201のうち、端子a、gには、モータMが接続され、端子b、c、d、e、fには、電源Vdが接続される。端子iには、トランジスタQ1のコレクタが接続され、端子jには、トランジスタQ2のコレクタが接続される(図10、図21参照)。また、第2の端子群202のうち、端子h、k、l、m、nは、グランドGへ接続される。
【0089】
電源Vdが接続される端子b、c、d、e、fは、基準電圧値よりも高い電圧値の信号(ここでは5V電圧)が入力されるハイレベル端子である。また、グランドGへ接続される端子h、k、l、m、nは、基準電圧値よりも低い電圧値の信号(ここでは0V電圧)が入力されるローレベル端子である。
【0090】
ところで、図25のIC20においては、トランジスタQ1、Q2の接続される端子i、jが、ローレベル端子h、k、l、m、nから隔離されて、ハイレベル端子b、c、d、e、fに近接して配置されている。このため、第1実施形態や第3実施形態においてこのIC20を採用すると、これらの実施形態の場合は、水濡れが発生した場合に、端子i、jがともに「L」レベル(基準電圧値よりも低い電圧値)となるため(図7、図19参照)、水濡れ時に端子i、jとハイレベル端子b、c、d、e、fとの間の電位差が大きくなる。このため、端子間で水による短絡が発生して制御回路2が誤動作する恐れがある。
【0091】
これに対して、第2実施形態と第4実施形態において図25のIC20を採用すると、これらの実施形態の場合は、水濡れ発生時に、端子i、jがともに「H」レベル(基準電圧値よりも高い電圧値)となるため(図15、図22参照)、端子i、jとハイレベル端子b、c、d、e、fとの間の電位差は無いか、あったとしてもごく小さい。このため、端子間で水による短絡が発生するのを防止することができ、仮に短絡が発生したとしても、IC20への「H」、「L」の入力には影響が殆どないので、IC20を誤動作させるには至らない。
【0092】
換言すれば、図25のように端子i、jがハイレベル端子b、c、d、e、fに近接して配置されているIC20を用いる場合は、第2実施形態や第4実施形態のように、水濡れ時に操作スイッチ4からの正転指令S1がない状態で、端子i、jが「H」レベルとなる回路構成とすればよく、これにより水濡れ時の端子間短絡を有効に防止することができる。
【0093】
なお、図25では、モータMと接続される端子a、gは、電圧が比較的高いことから、ハイレベル端子b、c、d、e、fに近接して配置されている。
【0094】
以上のように、図24のIC10を用いた場合は、水濡れ時に「L」レベルとなる端子i、jが、ローレベル端子h、k、l、m、nに近接して配置されている。このため、両端子間の電位差が小さくなって、水濡れ時の端子間短絡によるIC10の誤動作が生じにくくなる。また、図25のIC20を用いた場合は、水濡れ時に「H」レベルとなる端子i、jが、ハイレベル端子b、c、d、e、fに近接して配置されている。このため、両端子間の電位差が小さくなって、水濡れ時の端子間短絡によるIC20の誤動作が生じにくくなる。
【0095】
さらに、使用するICの端子配置に合わせて、水濡れ時における端子i、jの電圧が「H」レベルまたは「L」レベルとなるようにICの入力側の回路を構成することで、使用するICが、図24のIC10であっても、図25のIC20であっても、水濡れ時の端子間短絡防止に対応することができる。
【0096】
また、ローレベル端子h、k、l、m、nは、パッケージ100、200の一方の側に配置され、ハイレベル端子b、c、d、e、fは、パッケージ100、200の他方の側に配置されているので、端子i、jはハイレベル端子またはローレベル端子から確実に隔離される。このため、水濡れ時の端子間の短絡によるIC10、IC20の誤動作を、より効果的に防止することができる。
【0097】
また、第1実施形態と第3実施形態では、水濡れ時に端子i、jが「L」レベルとなるため、IC10が実装される回路基板(図示省略)において、端子i、jと接続された信号ラインの近傍にグランドラインが存在しても、これらのライン間で短絡が発生するのを防止することができる。一方、第2実施形態と第4実施形態では、水濡れ時に端子i、jが「H」レベルとなるので、ライン間の短絡防止の点では第1、第3実施形態より劣るが、水濡れ検出回路3のトランジスタ(Q3、Q4、Q6)が3つで済むので、回路構成が簡単になる。
【0098】
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。例えば、第1実施形態と第3実施形態では、水濡れ検出回路3が水濡れを検出した場合に、端子iと端子jがともに「L」レベルとなる回路構成を採用したが、水濡れ検出回路3が水濡れを検出した場合に、端子iが「L」レベルで、端子jが「H」レベルとなるような回路構成を採用してもよい。この場合は、図26に示すように、「L」レベルとなる端子iが、ハイレベル端子b、c、d、e、fから隔離されて、ローレベル端子h、k、l、m、nと近接して配置され、「H」レベルとなる端子jが、ローレベル端子h、k、l、m、nから隔離されて、ハイレベル端子b、c、d、e、fと近接して配置される。また、これとは逆に、端子iが「H」レベルで、端子jが「L」レベルとなるような回路構成を採用してもよい。この場合は、図27に示すように、「L」レベルとなる端子jが、ハイレベル端子b、c、d、e、fから隔離されて、ローレベル端子h、k、l、m、nと近接して配置され、「H」レベルとなる端子iが、ローレベル端子h、k、l、m、nから隔離されて、ハイレベル端子b、c、d、e、fと近接して配置される。なお、それぞれの場合において、テーブルYのロジックも変更される。
【0099】
同様に、第2実施形態と第4実施形態では、水濡れ検出回路3が水濡れを検出した場合に、端子iと端子jがともに「H」レベルとなる回路構成を採用したが、水濡れ検出回路3が水濡れを検出した場合に、端子iが「H」レベルで、端子jが「L」レベルとなるような回路構成を採用してもよい。この場合も、図27に示すように、「L」レベルとなる端子jがローレベル端子h、k、l、m、nと近接して配置され、「H」レベルとなる端子iがハイレベル端子b、c、d、e、fと近接して配置される。また、これとは逆に、端子iが「L」レベルで、端子jが「H」レベルとなるような回路構成を採用してもよい。この場合も、図26に示すように、「L」レベルとなる端子iが、ローレベル端子h、k、l、m、nと近接して配置され、「H」レベルとなる端子jが、ハイレベル端子b、c、d、e、fと近接して配置される。なお、それぞれの場合において、テーブルYのロジックも変更される。
【0100】
このように、水濡れ時に低電圧となる端子をローレベル端子h、k、l、m、nに近接して配置することにより、当該端子とローレベル端子h、k、l、m、nとの間の電位差が小さくなる。また、水濡れ時に高電圧となる端子をハイレベル端子b、c、d、e、fに近接して配置することにより、当該端子とハイレベル端子b、c、d、e、fとの間の電位差が小さくなる。このため、水濡れ時の端子間短絡によるIC10、IC20の誤動作が生じにくくなる。
【0101】
また、前記の各実施形態では、操作スイッチ4からの正転指令S1により窓を開動作させ、逆転指令S2により窓を閉動作させたが、これとは逆に、操作スイッチ4からの逆転指令S2により窓を開動作させ、正転指令S1により窓を閉動作させてもよい。
【0102】
また、前記の実施形態では、ハイレベル端子b、c、d、e、fとローレベル端子h、k、l、m、nは、それぞれ電源およびグランドに接続されている端子であったが、その他の信号が入力または出力される端子を含んでいてもよい。
【0103】
また、前記の実施形態では、ハイレベル端子とローレベル端子とがそれぞれ5個ずつ設けられていたが、端子の数はこれに限定されるものではなく、ICの設計に合わせて何個であってもよい。
【0104】
さらに、前記の各実施形態では、本発明をパワーウィンドウ装置に適用した場合を例に挙げたが、本発明は窓の開閉制御に限らず、例えばサンルーフの開閉制御や座席の位置制御などに用いられるモータ駆動装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 CPU
2 制御回路
3 水濡れ検出回路
4 操作スイッチ
10、20 IC
100、200 パッケージ
101、201 第1の端子群
102、202 第2の端子群
Q1 トランジスタ(第1半導体スイッチング素子)
Q2 トランジスタ(第2半導体スイッチング素子)
M モータ
G グランド
Vd 電源
b、c、d、e、f ハイレベル端子
h、k、l、m、n ローレベル端子
i 端子(第1端子)
j 端子(第2端子)
U モータ駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作スイッチの操作状況に応じて、モータを正転方向または逆転方向へ駆動するモータ駆動装置において、
前記操作スイッチからの正転指令に基づいて、ON/OFF状態が切り替わる第1半導体スイッチング素子と、
前記操作スイッチからの逆転指令に基づいて、ON/OFF状態が切り替わる第2半導体スイッチング素子と、
前記第1および第2半導体スイッチング素子のON/OFF状態に応じて、前記モータの正転方向または逆転方向への駆動を制御する制御回路と、
水濡れを検出して、前記第1および第2半導体スイッチング素子の動作を制御する水濡れ検出回路と、を備え、
前記制御回路は、前記第1半導体スイッチング素子が接続される第1端子と、前記第2半導体スイッチング素子が接続される第2端子と、あらかじめ定められた基準電圧値よりも低い電圧値の信号が入力または出力されるローレベル端子と、前記基準電圧値よりも高い電圧値の信号が入力または出力されるハイレベル端子とを有し、
前記水濡れ検出回路が水濡れを検出した場合に、前記第1端子および前記第2端子の電圧値が、前記基準電圧値よりも低い電圧値となり、
前記第1端子および前記第2端子が、前記ハイレベル端子から隔離されて、前記ローレベル端子に近接して配置されていることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
操作スイッチの操作状況に応じて、モータを正転方向または逆転方向へ駆動するモータ駆動装置において、
前記操作スイッチからの正転指令に基づいて、ON/OFF状態が切り替わる第1半導体スイッチング素子と、
前記操作スイッチからの逆転指令に基づいて、ON/OFF状態が切り替わる第2半導体スイッチング素子と、
前記第1および第2半導体スイッチング素子のON/OFF状態に応じて、前記モータの正転方向または逆転方向への駆動を制御する制御回路と、
水濡れを検出して、前記第1および第2半導体スイッチング素子の動作を制御する水濡れ検出回路と、を備え、
前記制御回路は、前記第1半導体スイッチング素子が接続される第1端子と、前記第2半導体スイッチング素子が接続される第2端子と、あらかじめ定められた基準電圧値よりも低い電圧値の信号が入力または出力されるローレベル端子と、前記基準電圧値よりも高い電圧値の信号が入力または出力されるハイレベル端子とを有し、
前記水濡れ検出回路が水濡れを検出した場合に、前記第1端子および前記第2端子の電圧値が、前記基準電圧値よりも高い電圧値となり、
前記第1端子および前記第2端子が、前記ローレベル端子から隔離されて、前記ハイレベル端子に近接して配置されていることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモータ駆動装置において、
前記水濡れ検出回路が水濡れを検出し、かつ、前記操作スイッチから正転指令が出力された場合に、前記第1端子の電圧値が、前記基準電圧値よりも高い電圧値となり、前記第2端子の電圧値が、前記基準電圧値よりも低い電圧値となることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のモータ駆動装置において、
前記水濡れ検出回路が水濡れを検出し、かつ、前記操作スイッチから正転指令が出力された場合に、前記第1端子の電圧値が、前記基準電圧値よりも低い電圧値となり、前記第2端子の電圧値が、前記基準電圧値よりも高い電圧値となることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項5】
操作スイッチの操作状況に応じて、モータを正転方向または逆転方向へ駆動するモータ駆動装置において、
前記操作スイッチからの正転指令に基づいて、ON/OFF状態が切り替わる第1半導体スイッチング素子と、
前記操作スイッチからの逆転指令に基づいて、ON/OFF状態が切り替わる第2半導体スイッチング素子と、
前記第1および第2半導体スイッチング素子のON/OFF状態に応じて、前記モータの正転方向または逆転方向への駆動を制御する制御回路と、
水濡れを検出して、前記第1および第2半導体スイッチング素子の動作を制御する水濡れ検出回路と、を備え、
前記制御回路は、前記第1半導体スイッチング素子が接続される第1端子と、前記第2半導体スイッチング素子が接続される第2端子と、あらかじめ定められた基準電圧値よりも低い電圧値の信号が入力または出力されるローレベル端子と、前記基準電圧値よりも高い電圧値の信号が入力または出力されるハイレベル端子とを有し、
前記水濡れ検出回路が水濡れを検出した場合に、前記第1端子と前記第2端子の一方の端子の電圧値が、前記基準電圧値よりも低い電圧値となり、他方の端子の電圧値が、前記基準電圧値よりも高い電圧値となり、
前記一方の端子が、前記ハイレベル端子から隔離されて、前記ローレベル端子に近接して配置され、前記他方の端子が、前記ローレベル端子から隔離されて、前記ハイレベル端子に近接して配置されていることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のモータ駆動装置において、
前記ローレベル端子はグランドと接続される端子であり、前記ハイレベル端子は電源と接続される端子であることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項7】
請求項6に記載のモータ駆動装置において、
前記ハイレベル端子に近接して、前記モータと接続される端子が配置されていることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のモータ駆動装置において、
前記制御回路は、IC(Integrated Circuit)のパッケージに内蔵されており、
前記ローレベル端子は、前記パッケージの一方の側に配置され、
前記ハイレベル端子は、前記パッケージの他方の側に配置されていることを特徴とするモータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2010−283976(P2010−283976A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134738(P2009−134738)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】