モータ駆動装置
【課題】接点数が少なく接点容量の小さな操作スイッチを用いて、浸水時のモータ誤動作を防止する。
【解決手段】正転用リレー2aと、逆転用リレー2bと、正転用リレー2aを駆動するトランジスタQ4と、逆転用リレー2bを駆動するトランジスタQ7と、トランジスタQ4を駆動するトランジスタQ3と、トランジスタQ7を駆動するトランジスタQ6と、モータ13を正転させるためのUPスイッチ5と、モータ13を逆転させるためのDOWNスイッチ4と、UPスイッチ5から正転指令信号が入力されたときに、トランジスタQ3をオン状態にする信号を出力し、DOWNスイッチ4から逆転指令信号が入力されたときに、トランジスタQ6をオン状態にする信号を出力するCPU11と、浸水を検知する浸水検知回路17とを設け、浸水検知時にトランジスタQ3、Q6をオフ状態にする。
【解決手段】正転用リレー2aと、逆転用リレー2bと、正転用リレー2aを駆動するトランジスタQ4と、逆転用リレー2bを駆動するトランジスタQ7と、トランジスタQ4を駆動するトランジスタQ3と、トランジスタQ7を駆動するトランジスタQ6と、モータ13を正転させるためのUPスイッチ5と、モータ13を逆転させるためのDOWNスイッチ4と、UPスイッチ5から正転指令信号が入力されたときに、トランジスタQ3をオン状態にする信号を出力し、DOWNスイッチ4から逆転指令信号が入力されたときに、トランジスタQ6をオン状態にする信号を出力するCPU11と、浸水を検知する浸水検知回路17とを設け、浸水検知時にトランジスタQ3、Q6をオフ状態にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のパワーウィンドウ装置などに用いられるモータ駆動装置に関し、特に、浸水時のモータの誤動作を防止するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータにより車両の窓を開閉するパワーウィンドウ装置においては、操作スイッチの操作状況に応じて、モータを正転方向または逆転方向へ駆動させ、窓の開閉を行うようにしている。例えば、操作スイッチを「閉」側へ操作すると、モータが正転方向に駆動されて窓が閉じ、操作スイッチを「開」側へ操作すると、モータが逆転方向に駆動されて窓が開く。モータの正転と逆転の制御は、操作スイッチからの信号に基づき、モータ駆動回路においてモータに流れる電流の方向を切り替えることにより行う。
【0003】
パワーウィンドウ装置には、雨水などが浸入したり、車両が水没したような場合に、モータ駆動回路への浸水によってモータが誤動作するのを防ぐための浸水検知機能を備えたものがある。例えば、後掲の特許文献1に記載されたパワーウィンドウ装置では、浸水検知回路が浸水を検知した場合に、窓閉用リレーと窓開用リレーを同時にONさせて、モータの両端を高電位にする。これにより、モータが駆動不能となって、浸水時のモータの誤動作が防止される。
【0004】
しかし、特許文献1の装置では、浸水時にそれぞれのリレーをONにするタイミングにずれが生じると、モータの両端が同時に高電位とならず、一方端が高電位、他方端が低電位となる状態が発生する。このため、モータに電流が流れて、モータが誤動作する恐れがある。
【0005】
一方、浸水が検知された場合に、窓閉用リレーと窓開用リレーの各コイルの両端電位を共に接地電位とすることにより、モータの誤動作を防止したパワーウィンドウ装置が、後掲の特許文献2に記載されている。この装置によれば、浸水時にリレーがONしないので、特許文献1の問題点は回避することができる。特許文献2においては、浸水が検知されたときに、各リレーのコイルに接続されたトランジスタをONさせて、各コイル両端の電位を接地電位とすることで、モータが駆動されないようにする。そして、浸水検知状態において窓を開く操作が行なわれた場合は、操作スイッチの接点を介して窓開用リレーのコイルに通電が行われ、モータが正転して窓が開くようになっている。このため、操作スイッチがコイル通電用の接点を備えている必要があるので、操作スイッチの接点の数が多くなるとともに、コイル電流に見合った容量の接点が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−36700号公報
【特許文献2】特開2001−40939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記特許文献1、2とは異なる手段によって、浸水時のモータ誤動作を防止するものである。本発明の主な課題は、接点数が少なく接点容量の小さな操作スイッチを用いて、浸水時のモータ誤動作を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るモータ駆動装置は、直流モータの一端に接続される第1接点を有し、オフ状態のときに当該モータの一端を第1接点を介して接地し、オン状態のときに当該モータの一端を第1接点を介して電源に接続する正転用リレーと、モータの他端に接続される第2接点を有し、オフ状態のときに当該モータの他端を第2接点を介して接地し、オン状態のときに当該モータの他端を第2接点を介して電源に接続する逆転用リレーと、オン状態のときに、正転用リレーをオン状態にさせる第1正転用半導体スイッチング素子と、オン状態のときに、逆転用リレーをオン状態にさせる第1逆転用半導体スイッチング素子と、オン状態のときに、第1正転用半導体スイッチング素子をオン状態にさせる第2正転用半導体スイッチング素子と、オン状態のときに、第1逆転用半導体スイッチング素子をオン状態にさせる第2逆転用半導体スイッチング素子と、モータを正転させるための正転用スイッチと、モータを逆転させるための逆転用スイッチと、正転用スイッチから正転指令信号が入力されたときに、第2正転用半導体スイッチング素子をオン状態にする信号を出力する一方、逆転用スイッチから逆転指令信号が入力されたときに、第2逆転用半導体スイッチング素子をオン状態にする信号を出力する制御手段と、浸水を検知して浸水検知信号を出力する浸水検知回路とを備えている。そして、浸水検知回路が浸水を検知したときに、浸水検知信号に基づいて、第2正転用半導体スイッチング素子および第2逆転用半導体スイッチング素子をオフ状態にする。
【0009】
このようにすると、浸水が検知された場合は、第2正転用半導体スイッチング素子と第2逆転用半導体スイッチング素子が共にオフ状態となるので、第1正転用半導体スイッチング素子と第1逆転用半導体スイッチング素子も共にオフ状態となる。このため、正転用リレーと逆転用リレーはいずれも動作せず、モータが駆動されないので、浸水時のモータ誤動作が防止される。また、操作スイッチ(正転用スイッチおよび逆転用スイッチ)の接点を通して各リレーのコイルに電流を流す必要がないので、操作スイッチは、コイル通電用の接点を備えている必要がない。したがって、接点の数が少なくなって、操作スイッチの構成を簡単にすることができる。しかも、操作スイッチの接点は、信号電流が流れる小容量の接点でよいので、コストを抑えることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、浸水検知回路が浸水を検知している状態で、逆転用スイッチから制御手段に逆転指令信号が入力された場合は、第1逆転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にする。
【0011】
このようにすると、浸水時に逆転用スイッチを操作することによって、第1逆転用半導体スイッチング素子がオン状態となり、逆転用リレーが動作してモータが逆転する。したがって、例えば車両が水没した場合でも、逆転用スイッチの操作によりモータを逆転させて、窓を開くことが可能となるので、安全を確保することができる。
【0012】
また、好ましくは、浸水検知回路が浸水を検知している状態で、正転用スイッチから制御手段に正転指令信号が入力された場合は、第1正転用半導体スイッチング素子をオフ状態に維持する。
【0013】
これにより、浸水時に正転用スイッチを操作した場合は、第1正転用半導体スイッチング素子はオフ状態のままであり、正転用リレーが動作しないので、モータが正転しない。したがって、例えば車両が水没した場合に、正転用スイッチが操作されても、モータが正転して窓が閉じることがないので、より安全を確保することができる。
【0014】
本発明では、浸水検知回路が浸水を検知している状態で、正転用スイッチから制御手段に正転指令信号が入力された場合は、第1正転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にするような構成としてもよい。
【0015】
このようにすると、正転用スイッチの操作によって、第1正転用半導体スイッチング素子がオン状態となるので、正転用リレーが動作してモータが正転する。これにより、浸水時にモータを正転させる必要がある場合に、モータの正転が可能となる。
【0016】
また、本発明では、浸水検知回路が浸水を検知している状態で、正転用スイッチから制御手段に正転指令信号が入力された場合は、第1正転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にし、浸水検知回路が浸水を検知している状態で、逆転用スイッチから制御手段に逆転指令信号が入力された場合は、第1逆転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にするような構成としてもよい。
【0017】
このようにすると、浸水時に正転用スイッチを操作した場合は、第1正転用半導体スイッチング素子がオン状態となるので、正転用リレーが動作してモータが正転する。また、浸水時に逆転用スイッチを操作した場合は、第1逆転用半導体スイッチング素子がオン状態となるので、逆転用リレーが動作してモータが逆転する。したがって、浸水時にいずれかのスイッチを操作することで、モータを所望の方向へ回転させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作スイッチの接点数が少なくて済み、また、接点容量も小さくて済むので、構成が簡単な操作スイッチを用いて、浸水時のモータ誤動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】パワーウィンドウ装置の全体的な構成を示したブロック図である。
【図2】窓開閉機構の例を示した図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るモータ駆動装置を示した回路図である。
【図4】UPスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図5】UPスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図6】UPスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図7】UPスイッチおよびAUTOスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図8】UPスイッチおよびAUTOスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図9】DOWNスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図10】DOWNスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図11】DOWNスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図12】DOWNスイッチおよびAUTOスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図13】DOWNスイッチおよびAUTOスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図14】浸水検知時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図15】浸水検知時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図16】浸水検知時にDOWNスイッチが操作された場合の回路状態の遷移を説明する図である。
【図17】浸水検知時にDOWNスイッチが操作された場合の回路状態の遷移を説明する図である。
【図18】浸水検知時にDOWNスイッチが操作された場合の回路状態の遷移を説明する図である。
【図19】浸水検知時にUPスイッチが操作された場合の回路状態の遷移を説明する図である。
【図20】浸水検知時にUPスイッチが操作された場合の回路状態の遷移を説明する図である。
【図21】本発明の第2実施形態に係るモータ駆動装置を示した回路図である。
【図22】本発明の第3実施形態に係るモータ駆動装置を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。ここでは、本発明をパワーウィンドウ装置に適用した場合を例に挙げる。
【0021】
パワーウィンドウ装置は、図1に示したように、本発明に係るモータ駆動装置100と、このモータ駆動装置100により駆動されるモータ13と、このモータ13により駆動される窓開閉機構14と、モータ13の回転数を検出する回転数検出センサ16とを備えている。モータ駆動装置100は、制御手段を構成するCPU11と、モータ13を駆動するモータ駆動回路12と、操作スイッチを有するスイッチ回路15と、浸水を検知する浸水検知回路17とを備えている。モータ駆動装置100については、後で詳細に説明する。
【0022】
図2は、窓開閉機構14の例を示した図である。窓開閉機構14は、ピニオン60、扇形ギヤ61、ブラケット62、第1アーム63、第2アーム64、ガイド部材65、および支持部材66から構成されている。
【0023】
ピニオン60は、モータ13により回転駆動される。モータ13には、回転数検出センサ16が連結されている。扇形ギヤ61は、第1アーム63に固定されているとともに、ピニオン60と噛み合っている。支持部材66は、窓ガラス51の下端に取り付けられている。第1アーム63は、一端が支持部材66に連結され、他端がブラケット62に回転可能に支持されている。第2アーム64は、一端が支持部材66に連結され、他端がガイド部材65に支持されている。第1アーム63と第2アーム64とは、それぞれの中間部において軸を介して連結されている。
【0024】
モータ13の回転により、ピニオン60および扇形ギヤ61が回転して、第1アーム63が回動する。これに追随して、第2アーム64の他端が、ガイド部材65の溝に沿って横方向にスライドする。その結果、モータ13の回転方向に応じて、支持部材66が上下方向に移動し、支持部材66と連動して窓ガラス51が昇降する。モータ13が正転すると、窓ガラス51が上昇して窓50が閉じ、モータ13が逆転すると、窓ガラス51が下降して窓50が開く。こうして、モータ13の回転により窓開閉機構14が作動することで、窓50の開閉動作が行なわれる。
【0025】
<第1実施形態>
図3は、本発明の第1実施形態に係るモータ駆動装置100を示している。図3では、図1と同一部分に同一符号を付してある。まず、図3を参照しながら、モータ駆動装置100の構成について説明する。
【0026】
CPU11は、モータ駆動装置100の全体的な動作を制御するもので、端子T1〜T6を備えている。T1は、モータ13の正転により、窓ガラス51を上昇させて窓50を閉じるための信号を出力するUP出力端子である。T2は、モータ13の逆転により、窓ガラス51を下降させて窓50を開くための信号を出力するDOWN出力端子である。T3は、モータ13を逆転させるための逆転指令信号が入力されるDOWN入力端子である。T4は、モータ13を正転させるための正転指令信号が入力されるUP入力端子である。T5は、モータ13の正転または逆転を継続させるための継続指令信号が入力されるAUTO入力端子である。T6は、回転数が入力される回転数入力端子である。出力端子T1、T2は、モータ駆動回路12に接続されており、入力端子T3〜T5は、スイッチ回路15に接続されており、入力端子T6は、回転数検出センサ16に接続されている。回転数検出センサ16は、例えば、ロータリエンコーダからなる。
【0027】
モータ駆動回路12において、モータ13は直流モータであって、その一端に正転用リレー2aの接点Y1(第1接点)が接続されているとともに、他端に逆転用リレー2bの接点Y2(第2接点)が接続されている。X1、X2は、それぞれ、正転用リレー2aおよび逆転用リレー2bのコイルである。コイルX1に通電がなく、正転用リレー2aがオフ状態のときは、接点Y1が図の状態にあって、モータ13の一端が接点Y1を介して接地される。また、コイルX2に通電がなく、逆転用リレー2bがオフ状態のときは、接点Y2が図の状態にあって、モータ13の他端が接点Y2を介して接地される。一方、コイルX1に通電され、正転用リレー2aがオン状態になると、接点Y1が切り替わって、モータ13の一端が接点Y1を介して電源B3に接続される。また、コイルX2に通電され、逆転用リレー2bがオン状態になると、接点Y2が切り替わって、モータ13の他端が接点Y2を介して電源B3に接続される。
【0028】
正転用リレー2aのコイルX1の一端は、トランジスタQ4(第1正転用半導体スイッチング素子)のコレクタに接続されており、コイルX1の他端は、接地されている。トランジスタQ4のエミッタは、電源B2に接続されている。トランジスタQ4のコレクタ・エミッタ間には、保護用のツェナーダイオードZ1が接続されている。トランジスタQ4のベース・エミッタ間には、抵抗R9が接続されている。トランジスタQ4のベースは、抵抗R8を介して、トランジスタQ3(第2正転用半導体スイッチング素子)のコレクタに接続されている。トランジスタQ3のエミッタは接地されている。トランジスタQ3のベース・エミッタ間には、抵抗R7が接続されている。トランジスタQ3のベースは、抵抗R6および抵抗R3を介して、CPU11のUP出力端子T1に接続されている。抵抗R6と抵抗R3との接続点には、トランジスタQ2のコレクタが接続されている。トランジスタQ2のエミッタは接地されている。トランジスタQ2のベース・エミッタ間には、抵抗R5が接続されている。トランジスタQ2のベースは、抵抗R4を介して、後述する浸水検知回路17のトランジスタQ1のコレクタに接続されている。
【0029】
逆転用リレー2bのコイルX2の一端は、トランジスタQ7(第1逆転用半導体スイッチング素子)のコレクタに接続されており、コイルX2の他端は、接地されている。トランジスタQ7のエミッタは、電源B2に接続されている。トランジスタQ7のコレクタ・エミッタ間には、保護用のツェナーダイオードZ2が接続されている。トランジスタQ7のベース・エミッタ間には、抵抗R16が接続されている。トランジスタQ7のベースは、抵抗R15を介して、トランジスタQ6(第2逆転用半導体スイッチング素子)のコレクタに接続されている。また、トランジスタQ7のベースは、抵抗R15およびダイオードD1を介して、後述するスイッチ回路15のDOWNスイッチ4の一端に接続されている。トランジスタQ6のエミッタは接地されている。トランジスタQ6のベース・エミッタ間には、抵抗R14が接続されている。トランジスタQ6のベースは、抵抗R13および抵抗R10を介して、CPU11のDOWN出力端子T2に接続されている。抵抗R13と抵抗R10との接続点には、トランジスタQ5のコレクタが接続されている。トランジスタQ5のエミッタは接地されている。トランジスタQ5のベース・エミッタ間には、抵抗R12が接続されている。トランジスタQ5のベースは、抵抗R11を介して、後述する浸水検知回路17のトランジスタQ1のコレクタに接続されている。
【0030】
スイッチ回路15は、操作用スイッチとして、DOWNスイッチ4(逆転用スイッチ)、UPスイッチ5(正転用スイッチ)、AUTOスイッチ6(回転継続用スイッチ)の3つのスイッチを含む。DOWNスイッチ4の一端は、ダイオードD2を介して、CPU11のDOWN入力端子T3に接続されている。ダイオードD2のアノードは、抵抗R17を介して電源B4に接続されており、ダイオードD2のカソードには、前述のダイオードD1のカソードが接続されている。DOWNスイッチ4の他端は接地されている。UPスイッチ5の一端は、CPU11のUP入力端子T4に接続されているとともに、抵抗R18を介して電源B5に接続されている。AUTOスイッチ6の一端は、CPU11のAUTO入力端子T5に接続されているとともに、抵抗R19を介して電源B6に接続されている。
【0031】
浸水検知回路17において、トランジスタQ1のコレクタは、抵抗R4を介して、モータ駆動回路12のトランジスタQ2のベースに接続されているとともに、抵抗R11を介して、モータ駆動回路12のトランジスタQ5のベースに接続されている。このトランジスタQ1のコレクタの電圧が、浸水検知信号としてトランジスタQ2、Q5に与えられる。トランジスタQ1のエミッタは、電源B1に接続されている。トランジスタQ1のベース・エミッタ間には、抵抗R1が接続されている。トランジスタQ1のベースは、抵抗R2を介して、浸水検知パッド1の一方の電極1aに接続されている。浸水検知パッド1の他方の電極1bは、接地されている。
【0032】
次に、上述したモータ駆動装置100の動作につき、以下の(1)〜(5)の場合に分けて説明する。
【0033】
(1)浸水のない状態でUP操作が行われた場合
【0034】
浸水のない状態では、図3のように、浸水検知パッド1の電極1a、1b間が開放されているので、トランジスタQ1はOFF状態にある。このため、浸水検知回路17からモータ駆動回路12へ浸水検知信号は出力されず、トランジスタQ2、Q5はOFF状態にある。この状態からUP操作が行われて、図4のようにUPスイッチ5がONになると、電源B5から抵抗R18およびUPスイッチ5を通って、電流が流れる。(破線矢印は電流の経路を示す。以下同様。)このため、UP入力端子T4の電位がローレベル(以下「L」と記す)となる。すなわち、UPスイッチ5からUP入力端子T4に、「L」信号である正転指令信号が入力される。
【0035】
CPU11は、UP入力端子T4に正転指令信号が入力されたことを判別すると、図5に示すように、UP出力端子T1にハイレベル(以下「H」と記す)の信号を出力する。このため、抵抗R3および抵抗R6を介して、トランジスタQ3のベースからエミッタに電流が流れ、トランジスタQ3がON状態となる。すると、トランジスタQ3のコレクタが「L」になるので、トランジスタQ4のエミッタからベースに電流が流れて、トランジスタQ4がON状態となる。トランジスタQ4がON状態になると、電源B2からトランジスタQ4のエミッタ・コレクタを通って電流が流れ、この電流は、正転用リレー2aのコイルX1に流れる。
【0036】
コイルX1に電流が流れると、図6に示すように、正転用リレー2aがON状態となって、接点Y1が接地側から電源側へ切り替わる。この結果、電源B3→接点Y1→モータ13→接点Y2→アースの経路で電流が流れて、モータ13が正転する。これにより、窓ガラス51(図2)が上昇して窓50が閉じてゆく。
【0037】
UPスイッチ5がOFFになると、UP入力端子T4が「H」となり、UP出力端子T1から「L」信号が出力される。このため、トランジスタQ3、Q4がOFF状態となるので、コイルX1に電流が流れなくなって、正転用リレー2aがOFF状態となる。その結果、接点Y1が電源側から接地側へ切り替わるので、モータ13は電流が流れなくなって停止する。これにより、窓ガラス51の上昇は停止する。
【0038】
また、図7に示すように、UPスイッチ5とAUTOスイッチ6を共にONにした場合は、UP入力端子T4に「L」信号である正転指令信号が入力され、AUTO入力端子T5に「L」信号である回転継続指令信号が入力される。これにより、UP出力端子T1には「H」信号が出力される。したがって、前記と同様に、トランジスタQ3、Q4がON状態となって、コイルX1に電流が流れ、正転用リレー2aがON状態となる。そして、接点Y1が接地側から電源側へ切り替わって、モータ13に電流が流れ、モータ13が正転して窓50が閉じてゆく。
【0039】
ここで、UPスイッチ5とAUTOスイッチ6をONにした後、図8に示すように、両スイッチ(または一方のスイッチ)をOFFにしても、UP出力端子T1からは、「H」信号が継続して出力される。このため、モータ13は正転を続け、窓ガラス51が上昇して、窓50が閉じてゆく。そして、回転数検出センサ16から回転数入力端子T6に入力される回転数が所定値になったことをCPU11が判別すると、CPU11は、UP出力端子T1からの「H」信号の出力を停止する。これにより、トランジスタQ3、Q4がOFF状態となるので、コイルX1に電流が流れなくなって、正転用リレー2aがOFF状態となる。その結果、接点Y1が電源側から接地側へ切り替わるので、モータ13は電流が流れなくなって停止する。これにより、窓ガラス51の上昇が停止して、窓50が完全に閉じた状態となる。
【0040】
(2)浸水のない状態でDOWN操作が行われた場合
【0041】
浸水のない状態では、図3のように、浸水検知パッド1の電極1a、1b間が開放されているので、トランジスタQ1はOFF状態にある。このため、浸水検知回路17からモータ駆動回路12へ浸水検知信号は出力されず、トランジスタQ2、Q5はOFF状態にある。この状態からDOWN操作が行われて、図9のようにDOWNスイッチ4がONになると、電源B4から抵抗R17、ダイオードD2、およびDOWNスイッチ4を通って、電流が流れる。このため、DOWN入力端子T3の電位が「L」となる。すなわち、DOWNスイッチ4からDOWN入力端子T3に、「L」信号である逆転指令信号が入力される。
【0042】
CPU11は、DOWN入力端子T3に逆転指令信号が入力されたことを判別すると、図10に示すように、DOWN出力端子T2に「H」信号を出力する。このため、抵抗R10および抵抗R13を介して、トランジスタQ6のベースからエミッタに電流が流れ、トランジスタQ6がON状態となる。すると、トランジスタQ6のコレクタが「L」になるので、トランジスタQ7のエミッタからベースに電流が流れて、トランジスタQ7がON状態となる。トランジスタQ7がON状態になると、電源B2からトランジスタQ7のエミッタ・コレクタを通って電流が流れ、この電流は、逆転用リレー2bのコイルX2に流れる。
【0043】
コイルX2に電流が流れると、図11に示すように、逆転用リレー2bがON状態となって、接点Y2が接地側から電源側へ切り替わる。この結果、電源B3→接点Y2→モータ13→接点Y1→アースの経路で電流が流れて、モータ13が逆転する。これにより、窓ガラス51(図2)が下降して窓50が開いてゆく。
【0044】
DOWNスイッチ4がOFFになると、DOWN入力端子T3が「H」となり、DOWN出力端子T2から「L」信号が出力される。このため、トランジスタQ6、Q7がOFF状態となるので、コイルX2に電流が流れなくなって、逆転用リレー2bがOFF状態となる。その結果、接点Y2が電源側から接地側へ切り替わるので、モータ13は電流が流れなくなって停止する。これにより、窓ガラス51の下降は停止する。
【0045】
また、図12に示すように、DOWNスイッチ4とAUTOスイッチ6を共にONにした場合は、DOWN入力端子T3に「L」信号である逆転指令信号が入力され、AUTO入力端子T5に「L」信号である回転継続指令信号が入力される。これにより、DOWN出力端子T2には「H」信号が出力される。したがって、前記と同様に、トランジスタQ6、Q7がON状態となって、コイルX2に電流が流れ、逆転用リレー2bがON状態となる。そして、接点Y2が接地側から電源側へ切り替わって、モータ13に電流が流れ、モータ13が逆転して窓50が開いてゆく。
【0046】
ここで、DOWNスイッチ4とAUTOスイッチ6をONにした後、図13に示すように、両スイッチ(または一方のスイッチ)をOFFにしても、DOWN出力端子T2からは、「H」信号が継続して出力される。このため、モータ13は逆転を続け、窓ガラス51が下降して、窓50が開いてゆく。そして、回転数検出センサ16から回転数入力端子T6に入力される回転数が所定値になったことをCPU11が判別すると、CPU11は、DOWN出力端子T2からの「H」信号の出力を停止する。これにより、トランジスタQ6、Q7がOFF状態となるので、コイルX2に電流が流れなくなって、逆転用リレー2bがOFF状態となる。その結果、接点Y2が電源側から接地側へ切り替わるので、モータ13は電流が流れなくなって停止する。これにより、窓ガラス51の下降が停止して、窓50が完全に開いた状態となる。
【0047】
(3)浸水が生じた場合
【0048】
雨水の浸入や車両の水没などによって、モータ駆動回路100への浸水が生じた場合は、図14に示すように、浸水検知パッド1の電極1a、1b間が水により導通する。このため、図15に示すように、トランジスタQ1のエミッタからベースに電流が流れて、トランジスタQ1はON状態となる。すると、電源B1からトランジスタQ1のエミッタ・コレクタを通って電流が流れ、トランジスタQ1のコレクタが「L」となる。このため、浸水検知回路17からモータ駆動回路12へ「L」信号である浸水検知信号が出力される。
【0049】
この浸水検知信号により、モータ駆動回路12のトランジスタQ2はON状態となる。その結果、トランジスタQ3のベースが「L」となって、トランジスタQ3がOFF状態となるとともに、トランジスタQ4のベースが「H」となって、トランジスタQ4がOFF状態となる。また、浸水検知信号により、モータ駆動回路12のトランジスタQ5もON状態となる。その結果、トランジスタQ6のベースが「L」となって、トランジスタQ6がOFF状態となるとともに、トランジスタQ7のベースが「H」となって、トランジスタQ7がOFF状態となる。
【0050】
こうして、浸水が生じた場合には、浸水検知回路17から出力される浸水検知信号に基づいて、トランジスタQ4、Q7が共にOFF状態となるので、正転用リレー2aのコイルX1にも、逆転用リレー2bのコイルX2にも、電流は流れない。したがって、両リレーの接点Y1、Y2が電源側に切り替わらないので、電源B3からモータ13に通電がされず、モータ13は回転しない。これにより、浸水時において、スイッチ4〜6を操作していないにもかかわらずモータ13が動作して、不用意に窓の開閉動作が行われるのを防止することができる。
【0051】
(4)浸水状態でDOWN操作が行われた場合
【0052】
浸水が生じた状態では、トランジスタQ1がON状態となって、浸水検知回路17から浸水検知信号が出力されるので、図15で説明したように、トランジスタQ4、Q7がいずれもOFF状態となる。この状態から、図16に示すように、DOWNスイッチ4をONにすると、図17に示すように、トランジスタQ7のベースが、抵抗R15、ダイオードD1、およびDOWNスイッチ4を介して接地される。このため、トランジスタQ7のベースが「L」となって、トランジスタQ7は強制的にON状態となる。一方、トランジスタQ4はOFF状態のままである。
【0053】
トランジスタQ7がON状態になることにより、電源B2からトランジスタQ7を通って、逆転用リレー2bのコイルX2に電流が流れる。したがって、図18に示すように、逆転用リレー2bがON状態となって、接点Y2が接地側から電源側へ切り替わる。この結果、電源B3→接点Y2→モータ13→接点Y1→アースの経路で電流が流れて、モータ13が逆転する。これにより、窓ガラス51が下降して窓50が開いてゆく。
【0054】
こうして、浸水時にDOWNスイッチ4を操作した場合は、モータ13が逆転して窓50が開くようになっているので、車両が水没した場合でも、DOWNスイッチ4の操作により窓を開いて、脱出することが可能となる。これによって、安全を確保することができる。
【0055】
(5)浸水状態でUP操作が行われた場合
【0056】
浸水が生じた状態では、トランジスタQ1がON状態となって、浸水検知回路17から浸水検知信号が出力されるので、図15で説明したように、トランジスタQ4、Q7がいずれもOFF状態となる。この状態から、図19に示すように、UPスイッチ5をONにすると、図20に示すように、UPスイッチ5からUP入力端子T4に、「L」信号である正転指令信号が入力される。CPU11は、UP入力端子T4に正転指令信号が入力されたことを判別すると、UP出力端子T1に「H」信号を出力する。しかし、浸水検知回路17からの浸水検知信号により、トランジスタQ2がON状態となっているので、UP出力端子T1から「H」信号が出力されても、トランジスタQ3はOFF状態を維持する。したがって、トランジスタQ4もOFF状態のままであるから、正転用リレー2aのコイルX1に電流が流れず、正転用リレー2aはONしない。よって、接点Y1が電源側へ切り替わらないので、電源B3からモータ13に電流が流れず、モータ13は正転しない。
【0057】
こうして、浸水時にUPスイッチ5を操作した場合は、モータ13が正転しないようになっているので、車両が水没した場合にUPスイッチ5を操作しても、窓が閉じることがない。このため、窓からの脱出が妨げられることはなく、より安全を確保することができる。
【0058】
以上述べた第1実施形態によれば、浸水が検知された場合に、トランジスタQ3、Q6が共にオフ状態となるので、トランジスタQ4、Q7も共にオフ状態となる。このため、正転用リレー2aと逆転用リレー2bはいずれも動作せず、モータ13が駆動されないので、浸水時のモータ13の誤動作が防止される。
【0059】
また、操作スイッチ(スイッチ4〜6)の接点を通して各リレー2a、2bのコイルX1、X2に電流を流す必要がないので、操作スイッチは、コイル通電用の接点を備えている必要がない。したがって、前掲の特許文献2の装置と比べて、接点の数が少なくて済み、操作スイッチの構成を簡単にすることができる。しかも、操作スイッチの接点は、信号電流が流れる小容量の接点でよいので、コストを抑えることができる。
【0060】
また、第1実施形態では、正転用リレー2aおよび逆転用リレー2bの前段に設けたトランジスタQ2〜Q7の動作により、浸水時に各リレーのコイルX1、X2に電流が流れないようにしている。このため、トランジスタ回路の部分を樹脂で被覆しておけば、浸水によってトランジスタ回路で短絡やリークが発生するおそれはなく、浸水時のモータ13の誤動作をより有効に防止することができる。
【0061】
<第2実施形態>
図21は、本発明の第2実施形態に係るモータ駆動装置200を示している。図21において、図3と同一部分または対応する部分には同一符号を付してある。前述の第1実施形態に係るモータ駆動装置100では、浸水時にDOWNスイッチ4を操作することで、モータ13を逆転させて窓50を開くようにした。これに対し、図21のモータ駆動装置200では、浸水時にUPスイッチ5を操作することで、モータ13を正転させて窓50を閉じるようにしている。
【0062】
モータ駆動装置200においては、トランジスタQ4のベースが、抵抗R8およびダイオードD3を介して、UPスイッチ5の一端に接続されている。UPスイッチ5の一端は、ダイオードD4を介して、CPU11のUP入力端子T4に接続されている。ダイオードD4のアノードは、抵抗R18を介して電源B5に接続されており、ダイオードD4のカソードには、ダイオードD3のカソードが接続されている。UPスイッチ5の他端は接地されている。
【0063】
浸水時にUPスイッチ5が操作された場合の動作は、以下のようになる。浸水が生じた状態では、トランジスタQ1がON状態となって、浸水検知回路17から浸水検知信号が出力されるので、図15で説明したように、トランジスタQ4、Q7がいずれもOFF状態となる。この状態から、UPスイッチ5をONにすると、トランジスタQ4のベースが、抵抗R8、ダイオードD3、およびUPスイッチ5を介して接地される。このため、トランジスタQ4のベースが「L」となって、トランジスタQ4は強制的にON状態となる。一方、トランジスタQ7はOFF状態のままである。
【0064】
トランジスタQ4がON状態になることにより、電源B2からトランジスタQ4を通って、正転用リレー2aのコイルX1に電流が流れる。したがって、正転用リレー2aがON状態となって、接点Y1が接地側から電源側へ切り替わる。この結果、電源B3→接点Y1→モータ13→接点Y2→アースの経路で電流が流れて、モータ13が正転する。これにより、窓ガラス51が上昇して窓50が閉じてゆく。
【0065】
また、浸水時にDOWNスイッチ4が操作された場合は、DOWN出力端子T2に「H」信号が出力されるが、浸水検知信号により、トランジスタQ5がON状態となっているので、トランジスタQ6はOFF状態を維持する。したがって、トランジスタQ7もOFF状態のままであるから、逆転用リレー2bのコイルX2に電流が流れず、逆転用リレー2bはONしない。よって、接点Y2が電源側へ切り替わらないので、電源B3からモータ13に電流が流れず、モータ13は逆転しない。
【0066】
このように、第2実施形態のモータ駆動装置200では、浸水時にUPスイッチ5が操作されると、モータ13が正転して窓50が閉じるようになっている。このため、例えば、窓50から雨水が浸入してモータ駆動回路12に浸水が生じた場合に、窓50を閉じて雨水の浸入を防ぐことができる。第2実施形態のその他の効果については、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0067】
<第3実施形態>
図22は、本発明の第3実施形態に係るモータ駆動装置300を示している。図22において、図3と同一部分または対応する部分には同一符号を付してある。第3実施形態に係るモータ駆動装置300は、第1実施形態に係るモータ駆動装置100の機能と、第2実施形態に係るモータ駆動装置200の機能とを併せ持ったものである。
【0068】
モータ駆動装置300においては、トランジスタQ7のベースが、抵抗R15およびダイオードD5を介して、DOWNスイッチ4の一端に接続されている。DOWNスイッチ4の一端は、ダイオードD7を介して、CPU11のDOWN入力端子T3に接続されている。ダイオードD7のアノードは、抵抗R17を介して電源B4に接続されており、ダイオードD7のカソードには、ダイオードD5のカソードが接続されている。DOWNスイッチ4の他端は接地されている。
【0069】
さらに、トランジスタQ4のベースが、抵抗R8およびダイオードD6を介して、UPスイッチ5の一端に接続されている。UPスイッチ5の一端は、ダイオードD8を介して、CPU11のUP入力端子T4に接続されている。ダイオードD8のアノードは、抵抗R18を介して電源B5に接続されており、ダイオードD8のカソードには、ダイオードD6のカソードが接続されている。UPスイッチ5の他端は接地されている。
【0070】
浸水時にDOWNスイッチ4が操作された場合の動作は、以下のようになる。浸水が生じた状態では、トランジスタQ1がON状態となって、浸水検知回路17から浸水検知信号が出力されるので、図15で説明したように、トランジスタQ4、Q7がいずれもOFF状態となる。この状態から、DOWNスイッチ4をONにすると、トランジスタQ7のベースが、抵抗R15、ダイオードD5、およびDOWNスイッチ4を介して接地される。このため、トランジスタQ7のベースが「L」となって、トランジスタQ7は強制的にON状態となる。一方、トランジスタQ4はOFF状態のままである。
【0071】
トランジスタQ7がON状態になることにより、電源B2からトランジスタQ7を通って、逆転用リレー2bのコイルX2に電流が流れる。したがって、逆転用リレー2bがON状態となって、接点Y2が接地側から電源側へ切り替わる。この結果、電源B3→接点Y2→モータ13→接点Y1→アースの経路で電流が流れて、モータ13が逆転する。これにより、窓ガラス51が下降して窓50が開いてゆく。
【0072】
また、浸水時にUPスイッチ5が操作された場合の動作は、以下のようになる。浸水が生じた状態では、トランジスタQ1がON状態となって、浸水検知回路17から浸水検知信号が出力されるので、図15で説明したように、トランジスタQ4、Q7がいずれもOFF状態となる。この状態から、UPスイッチ5をONにすると、トランジスタQ4のベースが、抵抗R8、ダイオードD6、およびUPスイッチ5を介して接地される。このため、トランジスタQ4のベースが「L」となって、トランジスタQ4は強制的にON状態となる。一方、トランジスタQ7はOFF状態のままである。
【0073】
トランジスタQ4がON状態になることにより、電源B2からトランジスタQ4を通って、正転用リレー2aのコイルX1に電流が流れる。したがって、正転用リレー2aがON状態となって、接点Y1が接地側から電源側へ切り替わる。この結果、電源B3→接点Y1→モータ13→接点Y2→アースの経路で電流が流れて、モータ13が正転する。これにより、窓ガラス51が上昇して窓50が閉じてゆく。
【0074】
なお、浸水時にDOWNスイッチ4とUPスイッチ5が同時に操作された場合は、トランジスタQ4、Q7が共にON状態になるので、正転用リレー2aと逆転用リレー2bの双方がON状態となる。このため、接点Y1、Y2が共に接地側から電源側へ切り替わるが、このとき、モータ13の一端と他端が共に電源B3に接続されて同電位となるので、モータ13は正転も逆転もしない。
【0075】
このように、第3実施形態のモータ駆動装置300では、浸水時にDOWNスイッチ4が操作されると、モータ13が逆転して窓50が開き、浸水時にUPスイッチ5が操作されると、モータ13が正転して窓50が閉じるようになっている。このため、浸水時にいずれかのスイッチ4、5を操作することで、モータを所望の方向へ回転させることができる。第3実施形態のその他の効果については、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0076】
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。例えば、前記の第1実施形態では、浸水時にDOWNスイッチ4が操作された場合に、トランジスタQ7のベースを、抵抗R15、ダイオードD1、およびDOWNスイッチ4を介して接地することで、トランジスタQ7を強制的にON状態とした(図17)。これに代えて、浸水検知回路17からの浸水検知信号をCPU11に取り込み、浸水時にDOWNスイッチ4が操作された場合(すなわち、浸水検知信号と逆転指令信号がCPU11に入力された場合)に、トランジスタQ7を強制的にON状態にする信号を、CPU11から出力するような構成にしてもよい。この場合は、トランジスタQ2、Q5、ダイオードD1、D2、および抵抗R4、R5、R11、R12が不要となる。
【0077】
同様に、前記の第2実施形態では、浸水時にUPスイッチ5が操作された場合に、トランジスタQ4のベースを、抵抗R8、ダイオードD3、およびUPスイッチ5を介して接地することで、トランジスタQ4を強制的にON状態とした(図21)。これに代えて、浸水検知回路17からの浸水検知信号をCPU11に取り込み、浸水時にUPスイッチ5が操作された場合(すなわち、浸水検知信号と正転指令信号がCPU11に入力された場合)に、トランジスタQ4を強制的にON状態にする信号を、CPU11から出力するような構成にしてもよい。この場合は、トランジスタQ2、Q5、ダイオードD3、D4、および抵抗R4、R5、R11、R12が不要となる。
【0078】
同様に、前記の第3実施形態では、浸水時にDOWNスイッチ4が操作された場合に、トランジスタQ7のベースを、抵抗R15、ダイオードD5、およびDOWNスイッチ4を介して接地することで、トランジスタQ7を強制的にON状態とし、浸水時にUPスイッチ5が操作された場合に、トランジスタQ4のベースを、抵抗R8、ダイオードD6、およびUPスイッチ5を介して接地することで、トランジスタQ4を強制的にON状態とした(図22)。これに代えて、浸水検知回路17からの浸水検知信号をCPU11に取り込み、浸水時にDOWNスイッチ4が操作された場合(すなわち、浸水検知信号と逆転指令信号がCPU11に入力された場合)に、トランジスタQ7を強制的にON状態にする信号を、CPU11から出力し、浸水時にUPスイッチ5が操作された場合(すなわち、浸水検知信号と正転指令信号がCPU11に入力された場合)に、トランジスタQ4を強制的にON状態にする信号を、CPU11から出力するような構成にしてもよい。この場合は、トランジスタQ2、Q5、ダイオードD5〜D8、および抵抗R4、R5、R11、R12が不要となる。
【0079】
また、前記の各実施形態では、モータ駆動回路12における半導体スイッチング素子として、通常のトランジスタを使用したが、半導体スイッチング素子としてFET(電界効果トランジスタ)などを使用してもよい。
【0080】
また、前記実施形態では、正転と逆転に共通のAUTOスイッチ6を1個だけ設けた例を挙げたが、正転用のAUTOスイッチと、逆転用のAUTOスイッチとを別々に設けてもよい。
【0081】
さらに、前記実施形態では、車両のパワーウィンドウ装置に本発明を適用した例を挙げたが、本発明は、パワーウィンドウ装置に限らず、例えばサンルーフ開閉装置などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
2a 正転用リレー
2b 逆転用リレー
4 DOWNスイッチ(逆転用スイッチ)
5 UPスイッチ(正転用スイッチ)
11 CPU(制御手段)
13 モータ
17 浸水検知回路
100、200、300 モータ駆動装置
Q4 トランジスタ(第1正転用半導体スイッチング素子)
Q3 トランジスタ(第2正転用半導体スイッチング素子)
Q7 トランジスタ(第1逆転用半導体スイッチング素子)
Q6 トランジスタ(第2逆転用半導体スイッチング素子)
Y1 正転用リレーの接点(第1接点)
Y2 逆転用リレーの接点(第2接点)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のパワーウィンドウ装置などに用いられるモータ駆動装置に関し、特に、浸水時のモータの誤動作を防止するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータにより車両の窓を開閉するパワーウィンドウ装置においては、操作スイッチの操作状況に応じて、モータを正転方向または逆転方向へ駆動させ、窓の開閉を行うようにしている。例えば、操作スイッチを「閉」側へ操作すると、モータが正転方向に駆動されて窓が閉じ、操作スイッチを「開」側へ操作すると、モータが逆転方向に駆動されて窓が開く。モータの正転と逆転の制御は、操作スイッチからの信号に基づき、モータ駆動回路においてモータに流れる電流の方向を切り替えることにより行う。
【0003】
パワーウィンドウ装置には、雨水などが浸入したり、車両が水没したような場合に、モータ駆動回路への浸水によってモータが誤動作するのを防ぐための浸水検知機能を備えたものがある。例えば、後掲の特許文献1に記載されたパワーウィンドウ装置では、浸水検知回路が浸水を検知した場合に、窓閉用リレーと窓開用リレーを同時にONさせて、モータの両端を高電位にする。これにより、モータが駆動不能となって、浸水時のモータの誤動作が防止される。
【0004】
しかし、特許文献1の装置では、浸水時にそれぞれのリレーをONにするタイミングにずれが生じると、モータの両端が同時に高電位とならず、一方端が高電位、他方端が低電位となる状態が発生する。このため、モータに電流が流れて、モータが誤動作する恐れがある。
【0005】
一方、浸水が検知された場合に、窓閉用リレーと窓開用リレーの各コイルの両端電位を共に接地電位とすることにより、モータの誤動作を防止したパワーウィンドウ装置が、後掲の特許文献2に記載されている。この装置によれば、浸水時にリレーがONしないので、特許文献1の問題点は回避することができる。特許文献2においては、浸水が検知されたときに、各リレーのコイルに接続されたトランジスタをONさせて、各コイル両端の電位を接地電位とすることで、モータが駆動されないようにする。そして、浸水検知状態において窓を開く操作が行なわれた場合は、操作スイッチの接点を介して窓開用リレーのコイルに通電が行われ、モータが正転して窓が開くようになっている。このため、操作スイッチがコイル通電用の接点を備えている必要があるので、操作スイッチの接点の数が多くなるとともに、コイル電流に見合った容量の接点が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−36700号公報
【特許文献2】特開2001−40939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記特許文献1、2とは異なる手段によって、浸水時のモータ誤動作を防止するものである。本発明の主な課題は、接点数が少なく接点容量の小さな操作スイッチを用いて、浸水時のモータ誤動作を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るモータ駆動装置は、直流モータの一端に接続される第1接点を有し、オフ状態のときに当該モータの一端を第1接点を介して接地し、オン状態のときに当該モータの一端を第1接点を介して電源に接続する正転用リレーと、モータの他端に接続される第2接点を有し、オフ状態のときに当該モータの他端を第2接点を介して接地し、オン状態のときに当該モータの他端を第2接点を介して電源に接続する逆転用リレーと、オン状態のときに、正転用リレーをオン状態にさせる第1正転用半導体スイッチング素子と、オン状態のときに、逆転用リレーをオン状態にさせる第1逆転用半導体スイッチング素子と、オン状態のときに、第1正転用半導体スイッチング素子をオン状態にさせる第2正転用半導体スイッチング素子と、オン状態のときに、第1逆転用半導体スイッチング素子をオン状態にさせる第2逆転用半導体スイッチング素子と、モータを正転させるための正転用スイッチと、モータを逆転させるための逆転用スイッチと、正転用スイッチから正転指令信号が入力されたときに、第2正転用半導体スイッチング素子をオン状態にする信号を出力する一方、逆転用スイッチから逆転指令信号が入力されたときに、第2逆転用半導体スイッチング素子をオン状態にする信号を出力する制御手段と、浸水を検知して浸水検知信号を出力する浸水検知回路とを備えている。そして、浸水検知回路が浸水を検知したときに、浸水検知信号に基づいて、第2正転用半導体スイッチング素子および第2逆転用半導体スイッチング素子をオフ状態にする。
【0009】
このようにすると、浸水が検知された場合は、第2正転用半導体スイッチング素子と第2逆転用半導体スイッチング素子が共にオフ状態となるので、第1正転用半導体スイッチング素子と第1逆転用半導体スイッチング素子も共にオフ状態となる。このため、正転用リレーと逆転用リレーはいずれも動作せず、モータが駆動されないので、浸水時のモータ誤動作が防止される。また、操作スイッチ(正転用スイッチおよび逆転用スイッチ)の接点を通して各リレーのコイルに電流を流す必要がないので、操作スイッチは、コイル通電用の接点を備えている必要がない。したがって、接点の数が少なくなって、操作スイッチの構成を簡単にすることができる。しかも、操作スイッチの接点は、信号電流が流れる小容量の接点でよいので、コストを抑えることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、浸水検知回路が浸水を検知している状態で、逆転用スイッチから制御手段に逆転指令信号が入力された場合は、第1逆転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にする。
【0011】
このようにすると、浸水時に逆転用スイッチを操作することによって、第1逆転用半導体スイッチング素子がオン状態となり、逆転用リレーが動作してモータが逆転する。したがって、例えば車両が水没した場合でも、逆転用スイッチの操作によりモータを逆転させて、窓を開くことが可能となるので、安全を確保することができる。
【0012】
また、好ましくは、浸水検知回路が浸水を検知している状態で、正転用スイッチから制御手段に正転指令信号が入力された場合は、第1正転用半導体スイッチング素子をオフ状態に維持する。
【0013】
これにより、浸水時に正転用スイッチを操作した場合は、第1正転用半導体スイッチング素子はオフ状態のままであり、正転用リレーが動作しないので、モータが正転しない。したがって、例えば車両が水没した場合に、正転用スイッチが操作されても、モータが正転して窓が閉じることがないので、より安全を確保することができる。
【0014】
本発明では、浸水検知回路が浸水を検知している状態で、正転用スイッチから制御手段に正転指令信号が入力された場合は、第1正転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にするような構成としてもよい。
【0015】
このようにすると、正転用スイッチの操作によって、第1正転用半導体スイッチング素子がオン状態となるので、正転用リレーが動作してモータが正転する。これにより、浸水時にモータを正転させる必要がある場合に、モータの正転が可能となる。
【0016】
また、本発明では、浸水検知回路が浸水を検知している状態で、正転用スイッチから制御手段に正転指令信号が入力された場合は、第1正転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にし、浸水検知回路が浸水を検知している状態で、逆転用スイッチから制御手段に逆転指令信号が入力された場合は、第1逆転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にするような構成としてもよい。
【0017】
このようにすると、浸水時に正転用スイッチを操作した場合は、第1正転用半導体スイッチング素子がオン状態となるので、正転用リレーが動作してモータが正転する。また、浸水時に逆転用スイッチを操作した場合は、第1逆転用半導体スイッチング素子がオン状態となるので、逆転用リレーが動作してモータが逆転する。したがって、浸水時にいずれかのスイッチを操作することで、モータを所望の方向へ回転させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作スイッチの接点数が少なくて済み、また、接点容量も小さくて済むので、構成が簡単な操作スイッチを用いて、浸水時のモータ誤動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】パワーウィンドウ装置の全体的な構成を示したブロック図である。
【図2】窓開閉機構の例を示した図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るモータ駆動装置を示した回路図である。
【図4】UPスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図5】UPスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図6】UPスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図7】UPスイッチおよびAUTOスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図8】UPスイッチおよびAUTOスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図9】DOWNスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図10】DOWNスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図11】DOWNスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図12】DOWNスイッチおよびAUTOスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図13】DOWNスイッチおよびAUTOスイッチ操作時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図14】浸水検知時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図15】浸水検知時の回路状態の遷移を説明する図である。
【図16】浸水検知時にDOWNスイッチが操作された場合の回路状態の遷移を説明する図である。
【図17】浸水検知時にDOWNスイッチが操作された場合の回路状態の遷移を説明する図である。
【図18】浸水検知時にDOWNスイッチが操作された場合の回路状態の遷移を説明する図である。
【図19】浸水検知時にUPスイッチが操作された場合の回路状態の遷移を説明する図である。
【図20】浸水検知時にUPスイッチが操作された場合の回路状態の遷移を説明する図である。
【図21】本発明の第2実施形態に係るモータ駆動装置を示した回路図である。
【図22】本発明の第3実施形態に係るモータ駆動装置を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。ここでは、本発明をパワーウィンドウ装置に適用した場合を例に挙げる。
【0021】
パワーウィンドウ装置は、図1に示したように、本発明に係るモータ駆動装置100と、このモータ駆動装置100により駆動されるモータ13と、このモータ13により駆動される窓開閉機構14と、モータ13の回転数を検出する回転数検出センサ16とを備えている。モータ駆動装置100は、制御手段を構成するCPU11と、モータ13を駆動するモータ駆動回路12と、操作スイッチを有するスイッチ回路15と、浸水を検知する浸水検知回路17とを備えている。モータ駆動装置100については、後で詳細に説明する。
【0022】
図2は、窓開閉機構14の例を示した図である。窓開閉機構14は、ピニオン60、扇形ギヤ61、ブラケット62、第1アーム63、第2アーム64、ガイド部材65、および支持部材66から構成されている。
【0023】
ピニオン60は、モータ13により回転駆動される。モータ13には、回転数検出センサ16が連結されている。扇形ギヤ61は、第1アーム63に固定されているとともに、ピニオン60と噛み合っている。支持部材66は、窓ガラス51の下端に取り付けられている。第1アーム63は、一端が支持部材66に連結され、他端がブラケット62に回転可能に支持されている。第2アーム64は、一端が支持部材66に連結され、他端がガイド部材65に支持されている。第1アーム63と第2アーム64とは、それぞれの中間部において軸を介して連結されている。
【0024】
モータ13の回転により、ピニオン60および扇形ギヤ61が回転して、第1アーム63が回動する。これに追随して、第2アーム64の他端が、ガイド部材65の溝に沿って横方向にスライドする。その結果、モータ13の回転方向に応じて、支持部材66が上下方向に移動し、支持部材66と連動して窓ガラス51が昇降する。モータ13が正転すると、窓ガラス51が上昇して窓50が閉じ、モータ13が逆転すると、窓ガラス51が下降して窓50が開く。こうして、モータ13の回転により窓開閉機構14が作動することで、窓50の開閉動作が行なわれる。
【0025】
<第1実施形態>
図3は、本発明の第1実施形態に係るモータ駆動装置100を示している。図3では、図1と同一部分に同一符号を付してある。まず、図3を参照しながら、モータ駆動装置100の構成について説明する。
【0026】
CPU11は、モータ駆動装置100の全体的な動作を制御するもので、端子T1〜T6を備えている。T1は、モータ13の正転により、窓ガラス51を上昇させて窓50を閉じるための信号を出力するUP出力端子である。T2は、モータ13の逆転により、窓ガラス51を下降させて窓50を開くための信号を出力するDOWN出力端子である。T3は、モータ13を逆転させるための逆転指令信号が入力されるDOWN入力端子である。T4は、モータ13を正転させるための正転指令信号が入力されるUP入力端子である。T5は、モータ13の正転または逆転を継続させるための継続指令信号が入力されるAUTO入力端子である。T6は、回転数が入力される回転数入力端子である。出力端子T1、T2は、モータ駆動回路12に接続されており、入力端子T3〜T5は、スイッチ回路15に接続されており、入力端子T6は、回転数検出センサ16に接続されている。回転数検出センサ16は、例えば、ロータリエンコーダからなる。
【0027】
モータ駆動回路12において、モータ13は直流モータであって、その一端に正転用リレー2aの接点Y1(第1接点)が接続されているとともに、他端に逆転用リレー2bの接点Y2(第2接点)が接続されている。X1、X2は、それぞれ、正転用リレー2aおよび逆転用リレー2bのコイルである。コイルX1に通電がなく、正転用リレー2aがオフ状態のときは、接点Y1が図の状態にあって、モータ13の一端が接点Y1を介して接地される。また、コイルX2に通電がなく、逆転用リレー2bがオフ状態のときは、接点Y2が図の状態にあって、モータ13の他端が接点Y2を介して接地される。一方、コイルX1に通電され、正転用リレー2aがオン状態になると、接点Y1が切り替わって、モータ13の一端が接点Y1を介して電源B3に接続される。また、コイルX2に通電され、逆転用リレー2bがオン状態になると、接点Y2が切り替わって、モータ13の他端が接点Y2を介して電源B3に接続される。
【0028】
正転用リレー2aのコイルX1の一端は、トランジスタQ4(第1正転用半導体スイッチング素子)のコレクタに接続されており、コイルX1の他端は、接地されている。トランジスタQ4のエミッタは、電源B2に接続されている。トランジスタQ4のコレクタ・エミッタ間には、保護用のツェナーダイオードZ1が接続されている。トランジスタQ4のベース・エミッタ間には、抵抗R9が接続されている。トランジスタQ4のベースは、抵抗R8を介して、トランジスタQ3(第2正転用半導体スイッチング素子)のコレクタに接続されている。トランジスタQ3のエミッタは接地されている。トランジスタQ3のベース・エミッタ間には、抵抗R7が接続されている。トランジスタQ3のベースは、抵抗R6および抵抗R3を介して、CPU11のUP出力端子T1に接続されている。抵抗R6と抵抗R3との接続点には、トランジスタQ2のコレクタが接続されている。トランジスタQ2のエミッタは接地されている。トランジスタQ2のベース・エミッタ間には、抵抗R5が接続されている。トランジスタQ2のベースは、抵抗R4を介して、後述する浸水検知回路17のトランジスタQ1のコレクタに接続されている。
【0029】
逆転用リレー2bのコイルX2の一端は、トランジスタQ7(第1逆転用半導体スイッチング素子)のコレクタに接続されており、コイルX2の他端は、接地されている。トランジスタQ7のエミッタは、電源B2に接続されている。トランジスタQ7のコレクタ・エミッタ間には、保護用のツェナーダイオードZ2が接続されている。トランジスタQ7のベース・エミッタ間には、抵抗R16が接続されている。トランジスタQ7のベースは、抵抗R15を介して、トランジスタQ6(第2逆転用半導体スイッチング素子)のコレクタに接続されている。また、トランジスタQ7のベースは、抵抗R15およびダイオードD1を介して、後述するスイッチ回路15のDOWNスイッチ4の一端に接続されている。トランジスタQ6のエミッタは接地されている。トランジスタQ6のベース・エミッタ間には、抵抗R14が接続されている。トランジスタQ6のベースは、抵抗R13および抵抗R10を介して、CPU11のDOWN出力端子T2に接続されている。抵抗R13と抵抗R10との接続点には、トランジスタQ5のコレクタが接続されている。トランジスタQ5のエミッタは接地されている。トランジスタQ5のベース・エミッタ間には、抵抗R12が接続されている。トランジスタQ5のベースは、抵抗R11を介して、後述する浸水検知回路17のトランジスタQ1のコレクタに接続されている。
【0030】
スイッチ回路15は、操作用スイッチとして、DOWNスイッチ4(逆転用スイッチ)、UPスイッチ5(正転用スイッチ)、AUTOスイッチ6(回転継続用スイッチ)の3つのスイッチを含む。DOWNスイッチ4の一端は、ダイオードD2を介して、CPU11のDOWN入力端子T3に接続されている。ダイオードD2のアノードは、抵抗R17を介して電源B4に接続されており、ダイオードD2のカソードには、前述のダイオードD1のカソードが接続されている。DOWNスイッチ4の他端は接地されている。UPスイッチ5の一端は、CPU11のUP入力端子T4に接続されているとともに、抵抗R18を介して電源B5に接続されている。AUTOスイッチ6の一端は、CPU11のAUTO入力端子T5に接続されているとともに、抵抗R19を介して電源B6に接続されている。
【0031】
浸水検知回路17において、トランジスタQ1のコレクタは、抵抗R4を介して、モータ駆動回路12のトランジスタQ2のベースに接続されているとともに、抵抗R11を介して、モータ駆動回路12のトランジスタQ5のベースに接続されている。このトランジスタQ1のコレクタの電圧が、浸水検知信号としてトランジスタQ2、Q5に与えられる。トランジスタQ1のエミッタは、電源B1に接続されている。トランジスタQ1のベース・エミッタ間には、抵抗R1が接続されている。トランジスタQ1のベースは、抵抗R2を介して、浸水検知パッド1の一方の電極1aに接続されている。浸水検知パッド1の他方の電極1bは、接地されている。
【0032】
次に、上述したモータ駆動装置100の動作につき、以下の(1)〜(5)の場合に分けて説明する。
【0033】
(1)浸水のない状態でUP操作が行われた場合
【0034】
浸水のない状態では、図3のように、浸水検知パッド1の電極1a、1b間が開放されているので、トランジスタQ1はOFF状態にある。このため、浸水検知回路17からモータ駆動回路12へ浸水検知信号は出力されず、トランジスタQ2、Q5はOFF状態にある。この状態からUP操作が行われて、図4のようにUPスイッチ5がONになると、電源B5から抵抗R18およびUPスイッチ5を通って、電流が流れる。(破線矢印は電流の経路を示す。以下同様。)このため、UP入力端子T4の電位がローレベル(以下「L」と記す)となる。すなわち、UPスイッチ5からUP入力端子T4に、「L」信号である正転指令信号が入力される。
【0035】
CPU11は、UP入力端子T4に正転指令信号が入力されたことを判別すると、図5に示すように、UP出力端子T1にハイレベル(以下「H」と記す)の信号を出力する。このため、抵抗R3および抵抗R6を介して、トランジスタQ3のベースからエミッタに電流が流れ、トランジスタQ3がON状態となる。すると、トランジスタQ3のコレクタが「L」になるので、トランジスタQ4のエミッタからベースに電流が流れて、トランジスタQ4がON状態となる。トランジスタQ4がON状態になると、電源B2からトランジスタQ4のエミッタ・コレクタを通って電流が流れ、この電流は、正転用リレー2aのコイルX1に流れる。
【0036】
コイルX1に電流が流れると、図6に示すように、正転用リレー2aがON状態となって、接点Y1が接地側から電源側へ切り替わる。この結果、電源B3→接点Y1→モータ13→接点Y2→アースの経路で電流が流れて、モータ13が正転する。これにより、窓ガラス51(図2)が上昇して窓50が閉じてゆく。
【0037】
UPスイッチ5がOFFになると、UP入力端子T4が「H」となり、UP出力端子T1から「L」信号が出力される。このため、トランジスタQ3、Q4がOFF状態となるので、コイルX1に電流が流れなくなって、正転用リレー2aがOFF状態となる。その結果、接点Y1が電源側から接地側へ切り替わるので、モータ13は電流が流れなくなって停止する。これにより、窓ガラス51の上昇は停止する。
【0038】
また、図7に示すように、UPスイッチ5とAUTOスイッチ6を共にONにした場合は、UP入力端子T4に「L」信号である正転指令信号が入力され、AUTO入力端子T5に「L」信号である回転継続指令信号が入力される。これにより、UP出力端子T1には「H」信号が出力される。したがって、前記と同様に、トランジスタQ3、Q4がON状態となって、コイルX1に電流が流れ、正転用リレー2aがON状態となる。そして、接点Y1が接地側から電源側へ切り替わって、モータ13に電流が流れ、モータ13が正転して窓50が閉じてゆく。
【0039】
ここで、UPスイッチ5とAUTOスイッチ6をONにした後、図8に示すように、両スイッチ(または一方のスイッチ)をOFFにしても、UP出力端子T1からは、「H」信号が継続して出力される。このため、モータ13は正転を続け、窓ガラス51が上昇して、窓50が閉じてゆく。そして、回転数検出センサ16から回転数入力端子T6に入力される回転数が所定値になったことをCPU11が判別すると、CPU11は、UP出力端子T1からの「H」信号の出力を停止する。これにより、トランジスタQ3、Q4がOFF状態となるので、コイルX1に電流が流れなくなって、正転用リレー2aがOFF状態となる。その結果、接点Y1が電源側から接地側へ切り替わるので、モータ13は電流が流れなくなって停止する。これにより、窓ガラス51の上昇が停止して、窓50が完全に閉じた状態となる。
【0040】
(2)浸水のない状態でDOWN操作が行われた場合
【0041】
浸水のない状態では、図3のように、浸水検知パッド1の電極1a、1b間が開放されているので、トランジスタQ1はOFF状態にある。このため、浸水検知回路17からモータ駆動回路12へ浸水検知信号は出力されず、トランジスタQ2、Q5はOFF状態にある。この状態からDOWN操作が行われて、図9のようにDOWNスイッチ4がONになると、電源B4から抵抗R17、ダイオードD2、およびDOWNスイッチ4を通って、電流が流れる。このため、DOWN入力端子T3の電位が「L」となる。すなわち、DOWNスイッチ4からDOWN入力端子T3に、「L」信号である逆転指令信号が入力される。
【0042】
CPU11は、DOWN入力端子T3に逆転指令信号が入力されたことを判別すると、図10に示すように、DOWN出力端子T2に「H」信号を出力する。このため、抵抗R10および抵抗R13を介して、トランジスタQ6のベースからエミッタに電流が流れ、トランジスタQ6がON状態となる。すると、トランジスタQ6のコレクタが「L」になるので、トランジスタQ7のエミッタからベースに電流が流れて、トランジスタQ7がON状態となる。トランジスタQ7がON状態になると、電源B2からトランジスタQ7のエミッタ・コレクタを通って電流が流れ、この電流は、逆転用リレー2bのコイルX2に流れる。
【0043】
コイルX2に電流が流れると、図11に示すように、逆転用リレー2bがON状態となって、接点Y2が接地側から電源側へ切り替わる。この結果、電源B3→接点Y2→モータ13→接点Y1→アースの経路で電流が流れて、モータ13が逆転する。これにより、窓ガラス51(図2)が下降して窓50が開いてゆく。
【0044】
DOWNスイッチ4がOFFになると、DOWN入力端子T3が「H」となり、DOWN出力端子T2から「L」信号が出力される。このため、トランジスタQ6、Q7がOFF状態となるので、コイルX2に電流が流れなくなって、逆転用リレー2bがOFF状態となる。その結果、接点Y2が電源側から接地側へ切り替わるので、モータ13は電流が流れなくなって停止する。これにより、窓ガラス51の下降は停止する。
【0045】
また、図12に示すように、DOWNスイッチ4とAUTOスイッチ6を共にONにした場合は、DOWN入力端子T3に「L」信号である逆転指令信号が入力され、AUTO入力端子T5に「L」信号である回転継続指令信号が入力される。これにより、DOWN出力端子T2には「H」信号が出力される。したがって、前記と同様に、トランジスタQ6、Q7がON状態となって、コイルX2に電流が流れ、逆転用リレー2bがON状態となる。そして、接点Y2が接地側から電源側へ切り替わって、モータ13に電流が流れ、モータ13が逆転して窓50が開いてゆく。
【0046】
ここで、DOWNスイッチ4とAUTOスイッチ6をONにした後、図13に示すように、両スイッチ(または一方のスイッチ)をOFFにしても、DOWN出力端子T2からは、「H」信号が継続して出力される。このため、モータ13は逆転を続け、窓ガラス51が下降して、窓50が開いてゆく。そして、回転数検出センサ16から回転数入力端子T6に入力される回転数が所定値になったことをCPU11が判別すると、CPU11は、DOWN出力端子T2からの「H」信号の出力を停止する。これにより、トランジスタQ6、Q7がOFF状態となるので、コイルX2に電流が流れなくなって、逆転用リレー2bがOFF状態となる。その結果、接点Y2が電源側から接地側へ切り替わるので、モータ13は電流が流れなくなって停止する。これにより、窓ガラス51の下降が停止して、窓50が完全に開いた状態となる。
【0047】
(3)浸水が生じた場合
【0048】
雨水の浸入や車両の水没などによって、モータ駆動回路100への浸水が生じた場合は、図14に示すように、浸水検知パッド1の電極1a、1b間が水により導通する。このため、図15に示すように、トランジスタQ1のエミッタからベースに電流が流れて、トランジスタQ1はON状態となる。すると、電源B1からトランジスタQ1のエミッタ・コレクタを通って電流が流れ、トランジスタQ1のコレクタが「L」となる。このため、浸水検知回路17からモータ駆動回路12へ「L」信号である浸水検知信号が出力される。
【0049】
この浸水検知信号により、モータ駆動回路12のトランジスタQ2はON状態となる。その結果、トランジスタQ3のベースが「L」となって、トランジスタQ3がOFF状態となるとともに、トランジスタQ4のベースが「H」となって、トランジスタQ4がOFF状態となる。また、浸水検知信号により、モータ駆動回路12のトランジスタQ5もON状態となる。その結果、トランジスタQ6のベースが「L」となって、トランジスタQ6がOFF状態となるとともに、トランジスタQ7のベースが「H」となって、トランジスタQ7がOFF状態となる。
【0050】
こうして、浸水が生じた場合には、浸水検知回路17から出力される浸水検知信号に基づいて、トランジスタQ4、Q7が共にOFF状態となるので、正転用リレー2aのコイルX1にも、逆転用リレー2bのコイルX2にも、電流は流れない。したがって、両リレーの接点Y1、Y2が電源側に切り替わらないので、電源B3からモータ13に通電がされず、モータ13は回転しない。これにより、浸水時において、スイッチ4〜6を操作していないにもかかわらずモータ13が動作して、不用意に窓の開閉動作が行われるのを防止することができる。
【0051】
(4)浸水状態でDOWN操作が行われた場合
【0052】
浸水が生じた状態では、トランジスタQ1がON状態となって、浸水検知回路17から浸水検知信号が出力されるので、図15で説明したように、トランジスタQ4、Q7がいずれもOFF状態となる。この状態から、図16に示すように、DOWNスイッチ4をONにすると、図17に示すように、トランジスタQ7のベースが、抵抗R15、ダイオードD1、およびDOWNスイッチ4を介して接地される。このため、トランジスタQ7のベースが「L」となって、トランジスタQ7は強制的にON状態となる。一方、トランジスタQ4はOFF状態のままである。
【0053】
トランジスタQ7がON状態になることにより、電源B2からトランジスタQ7を通って、逆転用リレー2bのコイルX2に電流が流れる。したがって、図18に示すように、逆転用リレー2bがON状態となって、接点Y2が接地側から電源側へ切り替わる。この結果、電源B3→接点Y2→モータ13→接点Y1→アースの経路で電流が流れて、モータ13が逆転する。これにより、窓ガラス51が下降して窓50が開いてゆく。
【0054】
こうして、浸水時にDOWNスイッチ4を操作した場合は、モータ13が逆転して窓50が開くようになっているので、車両が水没した場合でも、DOWNスイッチ4の操作により窓を開いて、脱出することが可能となる。これによって、安全を確保することができる。
【0055】
(5)浸水状態でUP操作が行われた場合
【0056】
浸水が生じた状態では、トランジスタQ1がON状態となって、浸水検知回路17から浸水検知信号が出力されるので、図15で説明したように、トランジスタQ4、Q7がいずれもOFF状態となる。この状態から、図19に示すように、UPスイッチ5をONにすると、図20に示すように、UPスイッチ5からUP入力端子T4に、「L」信号である正転指令信号が入力される。CPU11は、UP入力端子T4に正転指令信号が入力されたことを判別すると、UP出力端子T1に「H」信号を出力する。しかし、浸水検知回路17からの浸水検知信号により、トランジスタQ2がON状態となっているので、UP出力端子T1から「H」信号が出力されても、トランジスタQ3はOFF状態を維持する。したがって、トランジスタQ4もOFF状態のままであるから、正転用リレー2aのコイルX1に電流が流れず、正転用リレー2aはONしない。よって、接点Y1が電源側へ切り替わらないので、電源B3からモータ13に電流が流れず、モータ13は正転しない。
【0057】
こうして、浸水時にUPスイッチ5を操作した場合は、モータ13が正転しないようになっているので、車両が水没した場合にUPスイッチ5を操作しても、窓が閉じることがない。このため、窓からの脱出が妨げられることはなく、より安全を確保することができる。
【0058】
以上述べた第1実施形態によれば、浸水が検知された場合に、トランジスタQ3、Q6が共にオフ状態となるので、トランジスタQ4、Q7も共にオフ状態となる。このため、正転用リレー2aと逆転用リレー2bはいずれも動作せず、モータ13が駆動されないので、浸水時のモータ13の誤動作が防止される。
【0059】
また、操作スイッチ(スイッチ4〜6)の接点を通して各リレー2a、2bのコイルX1、X2に電流を流す必要がないので、操作スイッチは、コイル通電用の接点を備えている必要がない。したがって、前掲の特許文献2の装置と比べて、接点の数が少なくて済み、操作スイッチの構成を簡単にすることができる。しかも、操作スイッチの接点は、信号電流が流れる小容量の接点でよいので、コストを抑えることができる。
【0060】
また、第1実施形態では、正転用リレー2aおよび逆転用リレー2bの前段に設けたトランジスタQ2〜Q7の動作により、浸水時に各リレーのコイルX1、X2に電流が流れないようにしている。このため、トランジスタ回路の部分を樹脂で被覆しておけば、浸水によってトランジスタ回路で短絡やリークが発生するおそれはなく、浸水時のモータ13の誤動作をより有効に防止することができる。
【0061】
<第2実施形態>
図21は、本発明の第2実施形態に係るモータ駆動装置200を示している。図21において、図3と同一部分または対応する部分には同一符号を付してある。前述の第1実施形態に係るモータ駆動装置100では、浸水時にDOWNスイッチ4を操作することで、モータ13を逆転させて窓50を開くようにした。これに対し、図21のモータ駆動装置200では、浸水時にUPスイッチ5を操作することで、モータ13を正転させて窓50を閉じるようにしている。
【0062】
モータ駆動装置200においては、トランジスタQ4のベースが、抵抗R8およびダイオードD3を介して、UPスイッチ5の一端に接続されている。UPスイッチ5の一端は、ダイオードD4を介して、CPU11のUP入力端子T4に接続されている。ダイオードD4のアノードは、抵抗R18を介して電源B5に接続されており、ダイオードD4のカソードには、ダイオードD3のカソードが接続されている。UPスイッチ5の他端は接地されている。
【0063】
浸水時にUPスイッチ5が操作された場合の動作は、以下のようになる。浸水が生じた状態では、トランジスタQ1がON状態となって、浸水検知回路17から浸水検知信号が出力されるので、図15で説明したように、トランジスタQ4、Q7がいずれもOFF状態となる。この状態から、UPスイッチ5をONにすると、トランジスタQ4のベースが、抵抗R8、ダイオードD3、およびUPスイッチ5を介して接地される。このため、トランジスタQ4のベースが「L」となって、トランジスタQ4は強制的にON状態となる。一方、トランジスタQ7はOFF状態のままである。
【0064】
トランジスタQ4がON状態になることにより、電源B2からトランジスタQ4を通って、正転用リレー2aのコイルX1に電流が流れる。したがって、正転用リレー2aがON状態となって、接点Y1が接地側から電源側へ切り替わる。この結果、電源B3→接点Y1→モータ13→接点Y2→アースの経路で電流が流れて、モータ13が正転する。これにより、窓ガラス51が上昇して窓50が閉じてゆく。
【0065】
また、浸水時にDOWNスイッチ4が操作された場合は、DOWN出力端子T2に「H」信号が出力されるが、浸水検知信号により、トランジスタQ5がON状態となっているので、トランジスタQ6はOFF状態を維持する。したがって、トランジスタQ7もOFF状態のままであるから、逆転用リレー2bのコイルX2に電流が流れず、逆転用リレー2bはONしない。よって、接点Y2が電源側へ切り替わらないので、電源B3からモータ13に電流が流れず、モータ13は逆転しない。
【0066】
このように、第2実施形態のモータ駆動装置200では、浸水時にUPスイッチ5が操作されると、モータ13が正転して窓50が閉じるようになっている。このため、例えば、窓50から雨水が浸入してモータ駆動回路12に浸水が生じた場合に、窓50を閉じて雨水の浸入を防ぐことができる。第2実施形態のその他の効果については、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0067】
<第3実施形態>
図22は、本発明の第3実施形態に係るモータ駆動装置300を示している。図22において、図3と同一部分または対応する部分には同一符号を付してある。第3実施形態に係るモータ駆動装置300は、第1実施形態に係るモータ駆動装置100の機能と、第2実施形態に係るモータ駆動装置200の機能とを併せ持ったものである。
【0068】
モータ駆動装置300においては、トランジスタQ7のベースが、抵抗R15およびダイオードD5を介して、DOWNスイッチ4の一端に接続されている。DOWNスイッチ4の一端は、ダイオードD7を介して、CPU11のDOWN入力端子T3に接続されている。ダイオードD7のアノードは、抵抗R17を介して電源B4に接続されており、ダイオードD7のカソードには、ダイオードD5のカソードが接続されている。DOWNスイッチ4の他端は接地されている。
【0069】
さらに、トランジスタQ4のベースが、抵抗R8およびダイオードD6を介して、UPスイッチ5の一端に接続されている。UPスイッチ5の一端は、ダイオードD8を介して、CPU11のUP入力端子T4に接続されている。ダイオードD8のアノードは、抵抗R18を介して電源B5に接続されており、ダイオードD8のカソードには、ダイオードD6のカソードが接続されている。UPスイッチ5の他端は接地されている。
【0070】
浸水時にDOWNスイッチ4が操作された場合の動作は、以下のようになる。浸水が生じた状態では、トランジスタQ1がON状態となって、浸水検知回路17から浸水検知信号が出力されるので、図15で説明したように、トランジスタQ4、Q7がいずれもOFF状態となる。この状態から、DOWNスイッチ4をONにすると、トランジスタQ7のベースが、抵抗R15、ダイオードD5、およびDOWNスイッチ4を介して接地される。このため、トランジスタQ7のベースが「L」となって、トランジスタQ7は強制的にON状態となる。一方、トランジスタQ4はOFF状態のままである。
【0071】
トランジスタQ7がON状態になることにより、電源B2からトランジスタQ7を通って、逆転用リレー2bのコイルX2に電流が流れる。したがって、逆転用リレー2bがON状態となって、接点Y2が接地側から電源側へ切り替わる。この結果、電源B3→接点Y2→モータ13→接点Y1→アースの経路で電流が流れて、モータ13が逆転する。これにより、窓ガラス51が下降して窓50が開いてゆく。
【0072】
また、浸水時にUPスイッチ5が操作された場合の動作は、以下のようになる。浸水が生じた状態では、トランジスタQ1がON状態となって、浸水検知回路17から浸水検知信号が出力されるので、図15で説明したように、トランジスタQ4、Q7がいずれもOFF状態となる。この状態から、UPスイッチ5をONにすると、トランジスタQ4のベースが、抵抗R8、ダイオードD6、およびUPスイッチ5を介して接地される。このため、トランジスタQ4のベースが「L」となって、トランジスタQ4は強制的にON状態となる。一方、トランジスタQ7はOFF状態のままである。
【0073】
トランジスタQ4がON状態になることにより、電源B2からトランジスタQ4を通って、正転用リレー2aのコイルX1に電流が流れる。したがって、正転用リレー2aがON状態となって、接点Y1が接地側から電源側へ切り替わる。この結果、電源B3→接点Y1→モータ13→接点Y2→アースの経路で電流が流れて、モータ13が正転する。これにより、窓ガラス51が上昇して窓50が閉じてゆく。
【0074】
なお、浸水時にDOWNスイッチ4とUPスイッチ5が同時に操作された場合は、トランジスタQ4、Q7が共にON状態になるので、正転用リレー2aと逆転用リレー2bの双方がON状態となる。このため、接点Y1、Y2が共に接地側から電源側へ切り替わるが、このとき、モータ13の一端と他端が共に電源B3に接続されて同電位となるので、モータ13は正転も逆転もしない。
【0075】
このように、第3実施形態のモータ駆動装置300では、浸水時にDOWNスイッチ4が操作されると、モータ13が逆転して窓50が開き、浸水時にUPスイッチ5が操作されると、モータ13が正転して窓50が閉じるようになっている。このため、浸水時にいずれかのスイッチ4、5を操作することで、モータを所望の方向へ回転させることができる。第3実施形態のその他の効果については、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0076】
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。例えば、前記の第1実施形態では、浸水時にDOWNスイッチ4が操作された場合に、トランジスタQ7のベースを、抵抗R15、ダイオードD1、およびDOWNスイッチ4を介して接地することで、トランジスタQ7を強制的にON状態とした(図17)。これに代えて、浸水検知回路17からの浸水検知信号をCPU11に取り込み、浸水時にDOWNスイッチ4が操作された場合(すなわち、浸水検知信号と逆転指令信号がCPU11に入力された場合)に、トランジスタQ7を強制的にON状態にする信号を、CPU11から出力するような構成にしてもよい。この場合は、トランジスタQ2、Q5、ダイオードD1、D2、および抵抗R4、R5、R11、R12が不要となる。
【0077】
同様に、前記の第2実施形態では、浸水時にUPスイッチ5が操作された場合に、トランジスタQ4のベースを、抵抗R8、ダイオードD3、およびUPスイッチ5を介して接地することで、トランジスタQ4を強制的にON状態とした(図21)。これに代えて、浸水検知回路17からの浸水検知信号をCPU11に取り込み、浸水時にUPスイッチ5が操作された場合(すなわち、浸水検知信号と正転指令信号がCPU11に入力された場合)に、トランジスタQ4を強制的にON状態にする信号を、CPU11から出力するような構成にしてもよい。この場合は、トランジスタQ2、Q5、ダイオードD3、D4、および抵抗R4、R5、R11、R12が不要となる。
【0078】
同様に、前記の第3実施形態では、浸水時にDOWNスイッチ4が操作された場合に、トランジスタQ7のベースを、抵抗R15、ダイオードD5、およびDOWNスイッチ4を介して接地することで、トランジスタQ7を強制的にON状態とし、浸水時にUPスイッチ5が操作された場合に、トランジスタQ4のベースを、抵抗R8、ダイオードD6、およびUPスイッチ5を介して接地することで、トランジスタQ4を強制的にON状態とした(図22)。これに代えて、浸水検知回路17からの浸水検知信号をCPU11に取り込み、浸水時にDOWNスイッチ4が操作された場合(すなわち、浸水検知信号と逆転指令信号がCPU11に入力された場合)に、トランジスタQ7を強制的にON状態にする信号を、CPU11から出力し、浸水時にUPスイッチ5が操作された場合(すなわち、浸水検知信号と正転指令信号がCPU11に入力された場合)に、トランジスタQ4を強制的にON状態にする信号を、CPU11から出力するような構成にしてもよい。この場合は、トランジスタQ2、Q5、ダイオードD5〜D8、および抵抗R4、R5、R11、R12が不要となる。
【0079】
また、前記の各実施形態では、モータ駆動回路12における半導体スイッチング素子として、通常のトランジスタを使用したが、半導体スイッチング素子としてFET(電界効果トランジスタ)などを使用してもよい。
【0080】
また、前記実施形態では、正転と逆転に共通のAUTOスイッチ6を1個だけ設けた例を挙げたが、正転用のAUTOスイッチと、逆転用のAUTOスイッチとを別々に設けてもよい。
【0081】
さらに、前記実施形態では、車両のパワーウィンドウ装置に本発明を適用した例を挙げたが、本発明は、パワーウィンドウ装置に限らず、例えばサンルーフ開閉装置などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
2a 正転用リレー
2b 逆転用リレー
4 DOWNスイッチ(逆転用スイッチ)
5 UPスイッチ(正転用スイッチ)
11 CPU(制御手段)
13 モータ
17 浸水検知回路
100、200、300 モータ駆動装置
Q4 トランジスタ(第1正転用半導体スイッチング素子)
Q3 トランジスタ(第2正転用半導体スイッチング素子)
Q7 トランジスタ(第1逆転用半導体スイッチング素子)
Q6 トランジスタ(第2逆転用半導体スイッチング素子)
Y1 正転用リレーの接点(第1接点)
Y2 逆転用リレーの接点(第2接点)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流モータの一端に接続される第1接点を有し、オフ状態のときに当該モータの一端を前記第1接点を介して接地し、オン状態のときに当該モータの一端を前記第1接点を介して電源に接続する正転用リレーと、
前記モータの他端に接続される第2接点を有し、オフ状態のときに当該モータの他端を前記第2接点を介して接地し、オン状態のときに当該モータの他端を前記第2接点を介して電源に接続する逆転用リレーと、
オン状態のときに、前記正転用リレーをオン状態にさせる第1正転用半導体スイッチング素子と、
オン状態のときに、前記逆転用リレーをオン状態にさせる第1逆転用半導体スイッチング素子と、
オン状態のときに、前記第1正転用半導体スイッチング素子をオン状態にさせる第2正転用半導体スイッチング素子と、
オン状態のときに、前記第1逆転用半導体スイッチング素子をオン状態にさせる第2逆転用半導体スイッチング素子と、
前記モータを正転させるための正転用スイッチと、
前記モータを逆転させるための逆転用スイッチと、
前記正転用スイッチから正転指令信号が入力されたときに、前記第2正転用半導体スイッチング素子をオン状態にする信号を出力する一方、前記逆転用スイッチから逆転指令信号が入力されたときに、前記第2逆転用半導体スイッチング素子をオン状態にする信号を出力する制御手段と、
浸水を検知して浸水検知信号を出力する浸水検知回路と、を備え、
前記浸水検知回路が浸水を検知したときに、前記浸水検知信号に基づいて、前記第2正転用半導体スイッチング素子および前記第2逆転用半導体スイッチング素子をオフ状態にすることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動装置において、
前記浸水検知回路が浸水を検知している状態で、前記逆転用スイッチから前記制御手段に前記逆転指令信号が入力された場合は、前記第1逆転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にすることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ駆動装置において、
前記浸水検知回路が浸水を検知している状態で、前記正転用スイッチから前記制御手段に前記正転指令信号が入力された場合は、前記第1正転用半導体スイッチング素子をオフ状態に維持することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項4】
請求項1に記載のモータ駆動装置において、
前記浸水検知回路が浸水を検知している状態で、前記正転用スイッチから前記制御手段に前記正転指令信号が入力された場合は、前記第1正転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にすることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項5】
請求項1に記載のモータ駆動装置において、
前記浸水検知回路が浸水を検知している状態で、前記正転用スイッチから前記制御手段に前記正転指令信号が入力された場合は、前記第1正転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にし、
前記浸水検知回路が浸水を検知している状態で、前記逆転用スイッチから前記制御手段に前記逆転指令信号が入力された場合は、前記第1逆転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にすることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項1】
直流モータの一端に接続される第1接点を有し、オフ状態のときに当該モータの一端を前記第1接点を介して接地し、オン状態のときに当該モータの一端を前記第1接点を介して電源に接続する正転用リレーと、
前記モータの他端に接続される第2接点を有し、オフ状態のときに当該モータの他端を前記第2接点を介して接地し、オン状態のときに当該モータの他端を前記第2接点を介して電源に接続する逆転用リレーと、
オン状態のときに、前記正転用リレーをオン状態にさせる第1正転用半導体スイッチング素子と、
オン状態のときに、前記逆転用リレーをオン状態にさせる第1逆転用半導体スイッチング素子と、
オン状態のときに、前記第1正転用半導体スイッチング素子をオン状態にさせる第2正転用半導体スイッチング素子と、
オン状態のときに、前記第1逆転用半導体スイッチング素子をオン状態にさせる第2逆転用半導体スイッチング素子と、
前記モータを正転させるための正転用スイッチと、
前記モータを逆転させるための逆転用スイッチと、
前記正転用スイッチから正転指令信号が入力されたときに、前記第2正転用半導体スイッチング素子をオン状態にする信号を出力する一方、前記逆転用スイッチから逆転指令信号が入力されたときに、前記第2逆転用半導体スイッチング素子をオン状態にする信号を出力する制御手段と、
浸水を検知して浸水検知信号を出力する浸水検知回路と、を備え、
前記浸水検知回路が浸水を検知したときに、前記浸水検知信号に基づいて、前記第2正転用半導体スイッチング素子および前記第2逆転用半導体スイッチング素子をオフ状態にすることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動装置において、
前記浸水検知回路が浸水を検知している状態で、前記逆転用スイッチから前記制御手段に前記逆転指令信号が入力された場合は、前記第1逆転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にすることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ駆動装置において、
前記浸水検知回路が浸水を検知している状態で、前記正転用スイッチから前記制御手段に前記正転指令信号が入力された場合は、前記第1正転用半導体スイッチング素子をオフ状態に維持することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項4】
請求項1に記載のモータ駆動装置において、
前記浸水検知回路が浸水を検知している状態で、前記正転用スイッチから前記制御手段に前記正転指令信号が入力された場合は、前記第1正転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にすることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項5】
請求項1に記載のモータ駆動装置において、
前記浸水検知回路が浸水を検知している状態で、前記正転用スイッチから前記制御手段に前記正転指令信号が入力された場合は、前記第1正転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にし、
前記浸水検知回路が浸水を検知している状態で、前記逆転用スイッチから前記制御手段に前記逆転指令信号が入力された場合は、前記第1逆転用半導体スイッチング素子を強制的にオン状態にすることを特徴とするモータ駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−81914(P2012−81914A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231305(P2010−231305)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]