説明

ラック式の穀物乾燥設備を備えた穀物共同乾燥貯蔵施設

【課題】ラック式の穀物乾燥設備の乾燥効率を低下することなく、穀物の食味値を加味した個別貯蔵を可能にしたラック式の穀物乾燥設備を備えた穀物共同乾燥貯蔵施設を提供する。
【解決手段】
ラック式の穀物乾燥設備2において、荷受穀物サンプルの食味値を食味計16で測定している間に荷受穀物を多段ラック19にコンテナ搬送して乾燥を開始し、当該コンテナ(荷受穀物)の乾燥が仕上がるまでに前記荷受穀物サンプルの食味値の測定が行われるようにしたので、荷受の際に荷受穀物を待機させることなく乾燥が行えるとともに、前記コンテナ(荷受穀物)の乾燥が仕上がったときには、当該コンテナの穀物を測定した前記荷受穀物サンプルの食味値に基づいて、他の食味値の穀物と区別して貯蔵設備(サイロ28a・・・等)に搬送して個別貯蔵ができ、食味値による穀物の出荷やブレンド等が行え、生産者も自分の穀物を飯米として必要量を持ち帰ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米や麦等の穀物共同乾燥貯蔵施設に関し、特に、ラック式の穀物乾燥設備を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の穀物共同乾燥貯蔵施設としては、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。このラック式の穀物乾燥設備は、品種が異なる荷受穀物や外観品位の程度が異なる荷受穀物などが互いに混ざり合わないように、生産者の荷受穀物がそれぞれ別々の乾燥コンテナに供給して乾燥を行うものである。このラック式の乾燥フローとしては、まず、荷受穀物が入った各乾燥コンテナをスタッカークレーンによって乾燥用の多段ラック(棚)に収納し、この後に、各乾燥コンテナの内部の穀物に乾燥風を下方から通風して乾燥し、通風乾燥が例えば8時間経過すると、その乾燥中の乾燥コンテナを多段ラックから取出して反転機に掛けて穀物を排出し、該穀物を別の乾燥コンテナに移し替え、穀物水分値が仕上がり水分値に到達していない場合には再度、前記乾燥ラックに搬送して乾燥し、乾燥状態を管理しながら乾燥ムラが生じないように乾燥を仕上げるというフローになっている。
【0003】
また、乾燥が終了した乾燥コンテナは、出荷の時期まで多段ラックにて貯蔵するか、又は、前記スタッカークレーンによって該当乾燥コンテナを反転機に掛けて穀物を排出し、昇降機やコンベア等の搬送手段を介してサイロ等の貯蔵設備に移送して品種ごとに別々のサイロに貯蔵し、出荷の時期になると、品種を選択して出荷がなされている。
【0004】
【特許文献1】特開平11‐173754号公報(ラック乾燥)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記ラック式の穀物乾燥設備には、以下の問題点があった。すなわち、前記ラック式の穀物乾燥設備は、生産者の穀物ごとに個別乾燥はできても、乾燥後の穀物は、前述のように、前記サイロ等に品種別に一括供給して貯蔵するものであるので、穀物の食味値に基づいて個別貯蔵することができておらず、出荷の際に、穀物の食味値を考慮し選択的に出荷することができなかった。
そこで、本発明は、上記問題点にかんがみ、ラック式の穀物乾燥設備の乾燥効率を低下することなく、穀物の食味値を加味した個別貯蔵を可能にしたラック式の穀物乾燥設備を備えた穀物共同乾燥貯蔵施設を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1により、
生産者が搬入した穀物を荷受する荷受ホッパー(8)と、該荷受ホッパーに投入して搬送されてきた荷受穀物のサンプルを採取して水分測定を行うとともに荷受穀物の計量を行い、計量後の荷受穀物を、多孔状の底板を備えかつ上方を開放した箱状のコンテナに供給する荷受計量部(10)と、該荷受計量部で荷受穀物を供給したコンテナを多段ラックに搬送・搬出する搬送部(20)と、前記多段ラックの各ラックに搬送・載置したコンテナの下部に連結して乾燥風を供給する乾燥風供給部(21)と、前記多段ラックで乾燥中のコンテナを搬送部によって搬出して反転装置に載置し当該コンテナを反転して穀物を排出し、この排出した穀物のサンプルを採取して穀物水分値を測定する一方、排出した穀物を別のコンテナに供給する反転充填部(24)と、前記荷受計量部(10)、搬送部(20)及び反転充填部(24)のそれぞれと接続して荷受穀物を個別乾燥するようにこれらの稼動を制御するラック乾燥制御部(6)とを有するラック式の穀物乾燥設備(2)と、
該ラック式の穀物乾燥設備で乾燥が終了した穀物を貯蔵する複数の貯蔵部(28a・・・)及び穀物を搬送する搬送手段(30,31,32)を有する貯蔵設備(3)とを備えた穀物共同乾燥貯蔵施設(1)において、
前記ラック式の穀物乾燥設備(2)は、荷受計量部(10)で採取して搬送手段(10a)を介して搬送された荷受穀物のサンプルを乾燥するテスト乾燥装置(14)を備えるとともに該テスト乾燥装置で乾燥した荷受穀物サンプルの食味値を測定する食味計(16)を備え、前記ラック乾燥制御部(6)は、前記テスト乾燥装置が行う荷受穀物サンプルの乾燥及び前記食味計が行う荷受穀物サンプルの測定が終了するのを待つことなく、前記荷受穀物を多段ラック(19)に搬送して乾燥を開始させるとともに、当該荷受穀物の乾燥が終了するまでに前記サンプルの食味値の測定を完了させ、この測定食味値に基づいて、乾燥終了した前記荷受穀物を前記貯蔵設備(3)の貯蔵部(28a・・・)に個別貯蔵するように前記搬送手段(30,31,32)を切換える、という技術的手段を講じた。
【0007】
また、前記ラック式の穀物乾燥設備(2)は、荷受穀物サンプルの整粒・未熟粒の割合を測定する自主検定装置(15)及び荷受穀物サンプルの胴割粒等の検査を行う穀粒品位判定装置(17)備え、前記自主検定装置(15)及び/又は穀粒品位判定装置(17)の各測定結果も考慮して当該乾燥後の穀物を前記貯蔵設備(3)の貯蔵部(28a・・・)に個別貯蔵させるとよい。
【0008】
さらに、前記ラック乾燥制御部(6)は、荷受の際に検査官等が判定して入力した荷受穀物の第一品位ランク情報と、少なくとも前記食味計(16)を備えなる穀物分析部(5)が出力する品位の測定データから判定した第二品位ランク情報とから荷受穀物の総合品位判定を行い、該総合品位判定結果に基づいて当該乾燥後の穀物を前記貯蔵部(28a・・・)に個別貯蔵させるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の穀物共同乾燥貯蔵施設によれば、ラック式の穀物乾燥設備において、荷受穀物サンプルの食味値を食味計で測定している間に当該荷受穀物を多段ラックにコンテナ搬送して乾燥を開始し、当該コンテナ(荷受穀物)の乾燥が仕上がるまでに該荷受穀物サンプルの食味値の測定が完了するようにしたので、前記コンテナ(荷受穀物)の乾燥が仕上がったときには、当該コンテナの荷受穀物サンプルの測定食味値に基づいて、ラック乾燥制御部の指示により、他の食味値の穀物と区別して貯蔵設備(サイロ等)に搬送して個別貯蔵でき、これにより、食味値による穀物の出荷やブレンド等が行えるとともに、生産者は他の生産者の穀物が混じっていない自分の穀物を飯米として必要量を籾摺り等を行って持ち帰ることができる。また、荷受の際には、荷受穀物サンプルをテスト乾燥して食味値の測定が終了するのを待つことなく、荷受穀物を入れたコンテナを多段ラックに搬送して乾燥を開始できるので、乾燥効率も低下しない。さらに、各生産者に対しては、生産者が荷受した穀物の食味値(真の品質)に基づく重量単価で清算し、その金額を支払うことも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に、本発明の穀物共同乾燥貯蔵施設1を示す。該穀物共同乾燥貯蔵施設1は、ラック式穀物乾燥設備2、サイロ貯蔵部3及び籾摺調製・精選・出荷部(図示せず)を構成してなる。以下の説明において、荷受穀物は、籾(もみ)とする。
【0011】
ラック式穀物乾燥設備2:(図1参照)
ラック式穀物乾燥設備2は、荷受部4と、穀物分析部5、荷受・ラック制御部(ラック乾燥制御部)6及びラック式乾燥部7とから構成される。
【0012】
荷受部4:(図1参照)
荷受部4は、生産者がトラック等によって搬送してきた収穫生籾を荷受する荷受ホッパー8と、前記荷受籾に混入した夾雑物等を選別除去する粗選機9と、該粗選機9によって粗選した荷受籾の計量等を行ってコンテナKに充填する計量充填部(荷受計量部)10とを備えるとともに、前記荷受ホッパー8、粗選機9及び計量充填部10の各間を接続する昇降機11,12を備えてなる。前記計量充填部10は、籾サンプルの採取装置と水分計13とが装備され、また、籾サンプルを後述の穀物分析部5に搬送するための任意の搬送手段10aが前記採取装置に接続してある。前記水分計13での測定水分値は、前記荷受・ラック制御部6に送られるようになっている。なお、前記搬送手段10aは、例えば公知のエアー搬送手段を用いることができる。
【0013】
前記荷受ホッパー8の近傍には荷受受付部を設け、該荷受受付部においては、生産者が荷受受付用紙に、「氏名」、これから荷受する「収穫生籾の品種」や「無農薬栽培か否か(第一品位ランク情報)」等を記入する場所となっており、この記入用紙の情報は、係員が後述する荷受・ラック制御部(パソコン)7に入力するようになっている。なお、前記コンテナKの構成は、多孔状の底板を備え上方を開放にした箱型形状をなしている。
【0014】
本発明における第一品位ランク情報については、上記では「無農薬栽培か否か」としたがこれ以外に、測定時間が長く掛からない品位項目とし、例えば、荷受籾サンプルを脱ぷした玄米の品位を検査官が目視によってランク付け(1<優>、2、3)した項目などを適宜追加することもできる。
【0015】
穀物分析部5:(図1参照)
前記穀物分析部5は、前記計量充填部10から搬送手段10aによって搬送されてきた籾サンプルを乾燥するテスト乾燥装置14と、該テスト乾燥装置14で乾燥した籾サンプルについて整粒/未熟粒の割合を測定する自主検定装置15とを備える。さらに、該自主検定装置15で検査した籾サンプルにおける整粒玄米の食味値を測定する食味計16や、前記整粒玄米の外観品位(着色粒や胴割粒など)を判定する穀粒品位判定装置17も備える。前記水分計13、テスト乾燥装置14、自主検定装置15、食味計16及び穀粒品位判定装置17は、公知のものを使用すればよく詳細説明は省略する。
【0016】
前記穀物分析部5には、さらに、品位判定部(パソコン)18を設ける。該品位判定部18は、前記自主検定装置15、食味計16及び穀粒品位判定装置17のそれぞれから、整粒割合値、食味値及び外観品位測定値の実測データが送信されるようになっており、この各実測データに基づいて、当該籾サンプルにおける整粒割合ランク、食味ランク及び外観品位ランクの各ランク判定(1(優)、2、3)を予め設定した任意のしきい値と比較して行う。さらに前記品位判定部18は、前記整粒割合ランク、食味ランク及び外観品位ランクに基づいて、当該籾サンプルにおける第二品位ランク情報としてのA<優>、B、Cのランク判定を予め設定した任意のしきい値と比較して行い、この第二品位ランク情報(A<優>、B、C)を前記荷受・ラック制御部6に送信するようにしてある。
【0017】
荷受・ラック制御部6:
荷受・ラック制御部6は、前述のように生産者に係る「氏名」、「収穫生籾の品種」や「無農薬栽培か否か(第一品位ランク情報)」等の情報が係員によって入力されるとともに、前記計量充填部10からは計量した荷受籾の重量データが、また、前記品位判定部18からは判定した前記第二品位ランク情報(食味値ほかの品位ランクA<優>、B、C)がそれぞれ送信されるようになっている。そして、荷受・ラック制御部6は、総合品位判定表(図2)を予め設定・内蔵して、前記第一品位ランク情報(無農薬栽培か否か)と第二品位ランク情報(食味値ほかの品位ランクA<優>、B、C)とに基づいて当該籾サンプル(荷受籾)の総合品位判定を行うようになっている(図2)。また、荷受・ラック制御部6は、前記ラック式乾燥部7におけるスタッカークレーン20の稼動制御を行う。
【0018】
ラック式乾燥部7:(図1,図3参照)
ラック式穀物乾燥設備7は、前記コンテナKを複数収容可能にした多段ラック19を複数並設し、隣接した多段ラック19,19の間を走行して前記コンテナKを任意のラックに入出庫搬送する複数のスタッカークレーン(搬送部)20a,20bを備える。また、各多段ラック19には乾燥風発生装置21を隣接して配設し、該乾燥風発生装置21で生成した乾燥風が多段ラック19の各ラックに供給されるように乾燥風供給管22が乾燥風発生装置21から延設配置してある。該乾燥風供給管22の供給側端部には開閉弁23が構成してあり、コンテナKがスタッカークレーン20によってラック内に押し込まれて載置された際に、コンテナKにおける乾燥風供給管が前記開閉弁23と連結して乾燥風がコンテナ内を下から上に通風するようになっている。なお、前記開閉弁23等の詳細構造については、特許文献1を参照することとし、詳細説明は省略する。
【0019】
前記スタッカークレーン20によるコンテナKの入出庫管理や乾燥風発生装置21の湿度・温度管理等は、前記荷受・ラック制御部6によって行われる。なお、前記乾燥風供給管22における乾燥風の風量調節は、例えば、前記乾燥風供給管22の途中に配設した流量調節弁22aによって行うようにしてある。
【0020】
前記多段ラック19において、前記計量充填部10が配設された側の反対側には、反転充填部24が配設してある。該反転充填部24は、前記計量充填部10と同様に構成された第二となる計量充填部25を備え、その上方には、反転装置26を配設する。該反転装置26は、前記スタッカークレーン20によって搬出・載置されたコンテナKを反転してコンテナ内の籾を計量充填部25の計量タンク内に供給し、下部において別のコンテナKに供給して移し変えるものである。また、前記計量充填部25は籾サンプル採取装置を装備するとともに、該籾サンプルの水分値を測定する水分計(穀物水分測定部)27を装備している。該水分計27の測定データは、前記前記荷受・ラック制御部6に送られ、仕上がり水分値でない場合には、再度、当該籾を充填したコンテナKをラックに搬送して任意時間乾燥する。再乾燥に際しては、穀物は上記反転装置26による移し変え作用によって撹拌作用を受けながら別のコンテナK内に再充填されているので、むら乾燥が防止される。
【0021】
サイロ貯蔵部3:(図1参照)
サイロ貯蔵部3は、複数のサイロ28a,28b,28c・・・を備えるとともに、該各サイロ28a,28b,28c・・・に乾燥籾を搬送する搬送手段29を備える。該搬送手段29は、前記ラック式乾燥部7から搬出された乾燥籾を上方に搬送する昇降機30と、複数のシュート配管等の搬送部31a,31b,31c・・・と、該搬送部31a・・・の間に配設した複数の切換弁32a,32b,32c・・・とから構成され、該切換弁32a,32b,32c・・・の切換制御は、前記荷受・ラック制御部6からの指示によって行われるようになっている。なお、前記サイロ28a,28b,28c・・・の下方には、サイロから排出された籾を、図示しない籾摺調製・精選・出荷工程に搬送する搬送コンベヤー33a,33b・・・が配設してある。
【0022】
作用:
次に、本発明の穀物共同乾燥貯蔵施設1及びラック式穀物乾燥設備2の作用を図4の作業フローを参照しながら説明する。
【0023】
ステップ1,2:
前記ラック式穀物乾燥設備2にトラック等で収穫生籾を運び込んだ生産者(仮に「Aさん」とする。)は、荷受受付部において、荷受受付用紙に「氏名」、「収穫生籾の品種」や「無農薬栽培か否か(第一品位ランク情報)」等を記入してその荷受受付用紙を係員に渡す。係員は、この用紙に記録された「無農薬栽培か否か(第一品位ランク情報、「1」か「2」)」を含んだ情報を前記荷受・ラック制御部(パソコン)7に入力する。この入力の際、具体的には、無農薬栽培の場合は品位ランク「1」を入力し、無農薬栽培でない場合は品位ランク「2」を入力する。
【0024】
ステップ3,4:
前記荷受受付が終えると生産者(Aさん)は、前記係員の指示に従って収穫生籾を荷受ホッパー8に荷受供給する。該荷受ホッパー8に荷受供給された荷受籾は前記粗選機9に搬送されて夾雑物や異物等が除去された後、前記計量充填部10に搬送され、Aさんの荷受籾の重量が計測されて該重量データが前記荷受・ラック制御部6に送られるとともに、前記採取装置が採取した籾サンプルの一部の水分値を前記水分計13で測定して前記荷受・ラック制御部6に送られる。また、前記採取装置で採取した籾サンプルの残りは、前記搬送手段10aを介して前記穀物分析部5に送られる。
【0025】
ステップ5,6,7:
重量計測等を終えたAさんの荷受籾は、前記計量充填部10において計量されながら前記コンテナK(容量約1トン)に供給され、本実施例では二つのコンテナK(コンテナNO.1,コンテナNO.2)に供給されたこととする。そして、荷受籾を供給したコンテナKは、前記荷受・ラック制御部6から指示が出され、前記スタッカークレーン20aによって多段ラック19の任意のラック内に搬送されて載置される(図5参照)。各コンテナKはラック内に載置された際に、前記乾燥風供給管22の開閉弁23と連結し、これにより、前記乾燥風発生装置21から供給される乾燥風はコンテナKの下部から生籾間を通風して上部に排風され、乾燥が開始される。このようにAさんの荷受乾燥に続いて、Bさん、Cさん、Dさんが順次同様に荷受を行う。
【0026】
ステップ8,9:
前記荷受・ラック制御部6は、前記ステップ4で測定した籾の水分値に基づいて、各ラックにおいて籾を乾燥する時間(36時間前後)を演算して定め、各乾燥時間を監視する。前記荷受・ラック制御部6は、乾燥時間(約10時間)が経過したコンテナKを検出すると、前記スタッカークレーン20bに指示を出し、当該コンテナKをラックから搬出して前記反転充填部24に掛けて反転し、当該コンテナK内の籾を前記計量充填部25に供給して撹拌作用を与えながら別のコンテナKに供給充填する。このとき、籾サンプルが採取されて水分値が計測される。
【0027】
ステップ10,11:
前記荷受・ラック制御部6は、ステップ9で測定された水分値が目標水分値以下か否かを判定し、目標水分値まで乾燥していない場合には、再度、前記コンテナKをラックに搬送され再演算された乾燥時間だけ乾燥が継続される。
【0028】
ステップ12,13:
一方、前記ステップ4において、荷受籾をサンプリングして前記穀物分析部5に搬送された籾サンプルは、前記テスト乾燥装置14に供給されて約12時間掛けてテスト乾燥され、テスト乾燥を終えた籾は前記自主検定装置15に供給される。前記自主検定装置15は、籾を籾摺りして玄米にし、これを粒大選別用の選別筒に供給して整粒玄米と未熟玄米とに選別して各重量を測定し、この重量データに基づいて整粒割合値を演算する。この演算した整粒割合値は、前記品位判定部(パソコン)18に送られる。
【0029】
ステップ14,15:
前記自主検定装置15で選別された整粒玄米は、前記食味計16と穀粒品位判定装置17のそれぞれに供給されて、食味値と穀粒品位判別値(着色粒や胴割粒などの粒数や割合値)とが計測される。計測した食味値及び穀粒品位判別値は前記品位判定部18に送られる。なお、前記自主検定装置15、食味計16及び穀粒品位判定装置17の3つのトータル測定時間は約1時間である。
【0030】
ステップ16:
前記品位判定部18は、前述した、前記自主検定装置15から送られてきた整粒割合値の実測値と、前記食味計16から送られてきた食味値の実測値と、穀粒品位判定装置17から送られてきた穀粒品位判別値の実測値と基に、それぞれを、予め設定した任意のしきい値と比較して1(優)、2、3の品位ランクに判定する。その判別結果の例を、図6に表す。図6は、生産者Aさんほかの荷受籾に関するデータ一覧であり、生産者Aさんの荷受籾については、前記整粒割合値の品位ランクは「1」に判別され、食味値の品位ランクは「1」に判別され、そして穀粒品位判別値の品位ランクは「1」に判別されたことを示す。前記品位判定部18はさらに、前記整粒割合値の品位ランク「1」、食味値の品位ランク「1」及び穀粒品位判別値の品位ランク「1」の3要素を基に、この3要素を総合した第二品位ランク情報としての品位ランクを予め設定した任意のしきい値と比較してA(優)、B、Cのいずれかに判定する。前記品位判定部18は、判定した第二品位ランク情報を前記荷受・ラック制御部6に送る。
【0031】
ステップ17:(本発明の特徴的作用)
前記荷受・ラック制御部6は、前述のようにしてそれぞれ判定・取得した、前記第一品位ランク情報(無農薬栽培「1」、無農薬栽培でない「2」)と、前記第二品位ランク情報(食味値ほか3要素のA(優)、B、C)とに基づいて、荷受籾の総合品位判定を前記総合品位判定表(図2)に従って判定する。例えば、生産者Aさんの荷受籾は、前記第一品位ランク情報が「1」で、前記第二品位ランク情報がA(優)であるため、前記総合品位判定表を参照し、総合品位ランクは「1」(優)と判定される(図6)。同様にして生産者Bさん、Cさん・・・の荷受籾も総合品位ランク判定される。これにより、各コンテナK内の籾について、食味値を含む第一、第二品位ランク情報を籾サンプルを採取してから約13時間で取得できるので、各コンテナK内の籾乾燥が仕上がる約36時間が経過するまでに、情報を取得することができる。
【0032】
ステップ18:(本発明の特徴的作用)
前記荷受・ラック制御部6は、ステップ10において、前記計量充填部25の水分計25で籾乾燥の仕上がりが確認されると、前記計量充填部25の排出切換弁を切換える指示を出し、当該乾燥籾を前記サイロ貯蔵部3に搬送する。例えば、生産者AさんのコンテナNO.1の乾燥籾については、品種が「コシヒカリ」で総合品位ランク判定が「1」であるので、前記荷受・ラック制御部6は、切換弁32a,32bを切換えて当該乾燥籾をサイロ28aに搬送して貯蔵する。また、例えば、生産者BさんのコンテナNO.3の場合は、品種が「ひとめぼれ」で総合品位ランク判定が「2」なので、サイロ28eに切換弁を切換えて搬送して貯蔵する。これにより、コンテナ乾燥によって仕上がった乾燥籾を、品種及び総合品位ランクのそれぞれが異なる他の乾燥籾と混ぜる合わせることなく個別に貯蔵することができる。
【0033】
なお、出荷に際しては、前記荷受・ラック制御部6が出荷要望の乾燥籾を選択し、該当サイロの排出弁を開いて、乾燥籾を搬送コンベヤー33を介して籾摺調製・精選・出荷工程に搬送する。なお、生産者が乾燥が仕上がった籾を飯米として持ち帰る場合には、当該生産者の乾燥籾をコンテナから空のサイロに搬送して入れ、該乾燥籾を必要量だけ同サイロから排出して籾摺調製・精選・出荷工程に搬送して籾摺り等を行って持ち帰り用に袋詰めされる。そして、前記サイロに残った籾は、前記品種と総合品位ランク判定の値に基づいて所定のサイロに搬送し貯蔵される。
【0034】
なお、本発明において、前記食味計については、食味値を算出するものに限らず、公知の近赤外線分光分析法によってタンパク質、アミロース、脂肪酸などの米の食味に影響する化学成分の含有率を検出して算出するものも対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の穀物共同乾燥貯蔵施設の全体構成図を示す。
【図2】総合品位判定表を示す。
【図3】ラック式乾燥部の縦側断面図を示す。
【図4】本発明の穀物共同乾燥貯蔵施設における作業フローを示す。
【図5】各NO.のコンテナを載置した多段ラックを示す。
【図6】各生産者の荷受籾における第一、第二品位ランク情報等を示した事例表を示す。
【符号の説明】
【0036】
1 穀物共同乾燥貯蔵施設
2 ラック式穀物乾燥設備
3 サイロ貯蔵部(貯蔵設備)
4 荷受部
5 穀物分析部
6 荷受・ラック制御部(ラック乾燥制御部)
7 ラック式乾燥部
8 荷受ホッパー
9 粗選機
10 計量充填部(荷受計量部)
10a 搬送手段
11 昇降機
12 昇降機
13 水分計
14 テスト乾燥装置
15 自主検定装置
16 食味計
17 穀粒品位判定装置
18 品位判定部
19 多段ラック
20a スタッカークレーン(搬送部)
20b スタッカークレーン(搬送部)
21 乾燥風発生装置
22 乾燥風供給管
22a 流量調節弁
23 開閉弁
24 反転充填部
25 計量充填部
26 反転装置
27 水分計(穀物水分測定部)
28a サイロ(貯蔵部)
28b サイロ(貯蔵部)
28c サイロ(貯蔵部)
28d サイロ(貯蔵部)
28e サイロ(貯蔵部)
28f サイロ(貯蔵部)
29 搬送手段
30 昇降機
31a 搬送部
31b 搬送部
31c 搬送部
32a 切換弁
32b 切換弁
32c 切換弁
33a 搬送コンベヤー
33b 搬送コンベヤー
K コンテナ
R ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産者が搬入した穀物を荷受する荷受ホッパー(8)と、該荷受ホッパーに投入して搬送されてきた荷受穀物のサンプルを採取して水分測定を行うとともに荷受穀物の計量を行い、計量後の荷受穀物を、多孔状の底板を備えかつ上方を開放した箱状のコンテナに供給する荷受計量部(10)と、該荷受計量部で荷受穀物を供給したコンテナを多段ラックに搬送・搬出する搬送部(20)と、前記多段ラックの各ラックに搬送・載置したコンテナの下部に連結して乾燥風を供給する乾燥風供給部(21)と、前記多段ラックで乾燥中のコンテナを搬送部によって搬出して反転装置に載置し当該コンテナを反転して穀物を排出し、この排出した穀物のサンプルを採取して穀物水分値を測定する一方、排出した穀物を別のコンテナに供給する反転充填部(24)と、前記荷受計量部(10)、搬送部(20)及び反転充填部(24)のそれぞれと接続して荷受穀物を個別乾燥するようにこれらの稼動を制御するラック乾燥制御部(6)とを有するラック式の穀物乾燥設備(2)と、
該ラック式の穀物乾燥設備で乾燥が終了した穀物を貯蔵する複数の貯蔵部(28a・・・)及び穀物を搬送する搬送手段(30,31,32)を有する貯蔵設備(3)とを備えた穀物共同乾燥貯蔵施設(1)において、
前記ラック式の穀物乾燥設備(2)は、荷受計量部(10)で採取して搬送手段(10a)を介して搬送された荷受穀物のサンプルを乾燥するテスト乾燥装置(14)を備えるとともに該テスト乾燥装置で乾燥した荷受穀物サンプルの食味値を測定する食味計(16)を備え、前記ラック乾燥制御部(6)は、前記テスト乾燥装置が行う荷受穀物サンプルの乾燥及び前記食味計が行う荷受穀物サンプルの測定が終了するのを待つことなく、前記荷受穀物を多段ラック(19)に搬送して乾燥を開始させるとともに、当該荷受穀物の乾燥が終了するまでに前記サンプルの食味値の測定を完了させ、この測定食味値に基づいて、乾燥終了した前記荷受穀物を前記貯蔵設備(3)の貯蔵部(28a・・・)に個別貯蔵するように前記搬送手段(30,31,32)を切換えることを特徴とするラック式の穀物乾燥設備を備えた穀物共同乾燥貯蔵施設。
【請求項2】
前記ラック式の穀物乾燥設備(2)は、荷受穀物サンプルの整粒・未熟粒の割合を測定する自主検定装置(15)及び荷受穀物サンプルの胴割粒等の検査を行う穀粒品位判定装置(17)備え、前記自主検定装置(15)及び/又は穀粒品位判定装置(17)の各測定結果も考慮して当該乾燥後の穀物を前記貯蔵設備(3)の貯蔵部(28a・・・)に個別貯蔵する請求項1に記載のラック式の穀物乾燥設備を備えた穀物共同乾燥貯蔵施設。
【請求項3】
前記ラック乾燥制御部(6)は、荷受の際に検査官等が判定して入力した荷受穀物の第一品位ランク情報と、少なくとも前記食味計(16)を備えなる穀物分析部(5)が出力する品位の測定データから判定した第二品位ランク情報とから荷受穀物の総合品位判定を行い、該総合品位判定結果に基づいて当該乾燥後の穀物を前記貯蔵部(28a・・・)に個別貯蔵する請求項1又は請求項2に記載のラック式の穀物乾燥設備を備えた穀物共同乾燥貯蔵施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−65912(P2009−65912A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238442(P2007−238442)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】