説明

レジストパターンの形成方法および垂直磁気記録ヘッドの製造方法

【課題】レジストパターンの立体形状を十分に制御することが可能なレジストパターンの形成方法を提供する。
【解決手段】レジスト膜を選択的に露光して現像することにより、フレアポイントに対応する位置P3に突起部63Tを有する前準備レジストパターン63を形成したのち、その前準備レジストパターン63を加熱することにより、主磁極層を形成するためのレジストパターンを形成する。加熱工程において、前準備レジストパターン63に突起部63Tが形成されていることにより熱収縮の影響が緩和されるため、位置P3において前準備レジストパターン63が丸みを帯びにくくなる。しかも、加熱工程では、前準備レジストパターン63が熱流動および熱収縮することにより、開口部63Kにおける内壁が傾斜すると共に突起部63Tが後退する。これにより、フォトレジストパターンの立体形状が所望の立体形状に近くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光現像処理を使用したレジストパターンの形成方法およびそれを応用した垂直磁気記録ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種デバイスの製造分野において、所望のパターン形状となるように導電膜または磁性膜などの各種パターン膜を形成したり、あるいは所望の範囲において被処理体に対してエッチング処理またはドーピング処理などの各種選択的処理を施すために、レジストパターンが広く利用されている。このレジストパターンは、一般に、レジスト膜を形成したのち、フォトリソグラフィ法を使用してレジスト膜を露光・現像することにより形成されている。
【0003】
このレジストパターンの形成方法に関しては、既に多くの技術が提案されている。具体的には、垂直磁気記録ヘッドの製造分野では、断面形状が逆台形型となるように磁極層を形成するために、フォトリソグラフィ法を使用してレジスト膜に開口を形成したのち、その開口が次第に広がるようにレジスト膜を熱変形させる方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。また、半導体装置の製造分野では、回路パターンのパターン形状を設計通りに設定するために、突起部(セリフ)が設けられたマスクや、位相シフト領域および非位相シフト領域を有するマスクを使用する方法が知られている(例えば、特許文献4,5参照。)。
【特許文献1】特開2002−197611号公報
【特許文献2】特開2002−197613号公報
【特許文献3】特開2002−197615号公報
【特許文献4】特表2000−511303号公報
【特許文献5】特許第2710967号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、デバイスサイズが益々微小化する傾向にあり、それに伴ってレジストパターンの立体形状に関する要求精度が一層高まりつつある最近の技術動向を考慮すると、上記した従来のレジストパターンの形成方法では、その形成精度が今や十分であるとは言えない。特に、磁極層のパターン形状(特にフレアポイントにおける磁極層の幅)が記録性能に影響を及ぼす垂直磁気記録ヘッドの製造分野では、磁極層を高精度に形成するためにレジストパターンの立体形状を十分に制御する必要がある。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、レジストパターンの立体形状を十分に制御することが可能なレジストパターンの形成方法および磁極層を高精度に形成することが可能な垂直磁気記録ヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1のレジストパターンの形成方法は、凸状の角部を有するレジストパターンを形成する方法であり、レジスト膜を形成する第1の工程と、角部に対応する位置に突起部が形成されるようにレジスト膜を選択的に露光して現像する第2の工程と、レジスト膜を加熱して突起部を消失させる第3の工程とを含むものである。また、本発明の第2のレジストパターンの形成方法は、凹状の角部を有するレジストパターンを形成する方法であり、レジスト膜を形成する第1の工程と、角部に対応する位置に窪み部が形成されるようにレジスト膜を選択的に露光して現像する第2の工程と、レジスト膜を加熱して窪み部を消失させる第3の工程とを含むものである。これらの第1および第2のレジストパターンの形成方法では、加熱工程において、レジスト膜に突起部または窪み部が形成されていることにより熱収縮の影響が緩和されるため、それらの突起部または窪み部が形成されている箇所においてレジスト膜が丸みを帯びにくくなる。しかも、加熱工程では、レジスト膜が熱流動および熱収縮することにより、壁面が傾斜すると共に突起部または窪み部が消失する。これにより、加熱後のレジスト膜の立体形状が所望の立体形状に近くなる。なお、「凸状の角部」とは、0°よりも大きく180°よりも小さい範囲内の角度をなす角部であり、一方、「凹状の角部」とは180°よりも大きく360°よりも小さい範囲内の角度をなす角部である。
【0007】
また、本発明の垂直磁気記録ヘッドの製造方法は、記録トラック幅を規定する一定幅からそれよりも大きな幅に広がる磁極層を備えた垂直磁気記録ヘッドを製造する方法であり、レジスト膜を形成する第1の工程と、磁極層の幅が一定幅から広がり始める位置に対応する位置に突起部が形成されるようにレジスト膜を選択的に露光して現像する第2の工程と、レジスト膜を加熱して突起部を消失させる第3の工程と、突起部を消失させたレジスト膜以外の領域に磁極層を形成する第4の工程とを含むものである。この垂直磁気記録ヘッドの製造方法では、加熱後のレジスト膜の立体形状が所望の立体形状に近くなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレジストパターンの形成方法によれば、レジスト膜を形成し、引き続きレジストパターンの凸状または凹状の角部に対応する位置にそれぞれ突起部または窪み部が形成されるようにレジスト膜を選択的に露光して現像したのち、そのレジスト膜を加熱して突起部または窪み部を消失させるようにしたので、レジストパターンの立体形状を十分に制御することができる。このレジストパターンの形成方法を応用した垂直磁気記録ヘッドの製造方法では、磁極層を高精度に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[第1の実施の形態]
図1〜図10は、第1の実施の形態に係るレジストパターンの形成方法の応用例として、垂直磁気記録ヘッドを搭載した薄膜磁気ヘッドの製造方法を説明するためのものである。図1および図2は、それぞれ薄膜磁気ヘッドの断面構成および平面構成を表しており、図1のうちの(A),(B)は、それぞれエアベアリング面50に平行および垂直な断面を示している。図3は、図1(A)に示した主磁極層12の断面構成を拡大して示している。図4〜図9は、薄膜磁気ヘッドの製造方法を説明するためのものであり、(A),(B)は、それぞれ図2に示した領域Rを抜粋および拡大した平面構成および断面構成を示している。なお、図4〜図9のうちの(B)は、(A)に示したM−M線に沿った断面を示している。図10は、図4(A)に示したマスク62の輪郭を拡大して表している。
【0011】
以下では、図1〜図3を参照して薄膜磁気ヘッドの全体構成に関して簡単に説明したのち、図1〜図10を参照して薄膜磁気ヘッドの製造方法について説明する。
【0012】
この薄膜磁気ヘッドは、例えば、記録処理および再生処理の双方を実行可能な複合型ヘッドであり、図1に示したように、アルティック(Al2 3 ・TiC)製の基板1と、絶縁層2と、再生ヘッド部100Aと、分離層9と、記録ヘッド部100Bと、オーバーコート層19とが一端においてエアベアリング面50を構成するようにこの順に積層されたものである。
【0013】
再生ヘッド部100Aは、巨大磁気抵抗効果(GMR;giant magneto-resistive effect)またはトンネル磁気抵抗効果(TMR;tunneling magneto-resistive effect)などを利用して再生処理を実行するものであり、下部リードシールド層3と、エアベアリング面50に露出するようにMR素子8が埋設されたシールドギャップ膜4と、上部リードシールド層20とがこの順に積層されたものである。この上部リードシールド層20は、例えば、非磁性層6を挟んで2つの磁性層5,7が積層された3層構造を有している。
【0014】
記録ヘッド部100Bは、垂直記録方式の記録処理を実行する垂直磁気記録ヘッドであり、絶縁層11,13により周囲を埋設された磁極層30と、磁気連結用の開口(バックギャップ14BG)が設けられたギャップ層14と、絶縁層17により埋設されたスパイラル型の薄膜コイル16と、磁性層40とがこの順に積層されたもの(いわゆるシールド型ヘッド)である。磁極層30は、例えば、エアベアリング面50から後退した補助磁極層10と、エアベアリング面50に露出した主磁極層12とがこの順に積層されたものである。この主磁極層12は、例えば、図2に示したように、略羽子板型のパターン形状を有しており、エアベアリング面50から順に、記録トラック幅を規定する一定幅W1を有する先端部12Aと、それよりも大きな幅を有する後端部12Bとを含んでいる。ここでは、例えば、後端部12Bの幅が次第に広がったのちに一定となっており、その広がり角度θ(先端部12Aの延在方向と後端部12Bの外縁との間の角度)は0°よりも大きく90°よりも小さい範囲内である。この主磁極層12の幅が一定幅W1から広がり始める位置は、いわゆるフレアポイントFPである。このフレアポイントFPは、主磁極層12の内部を後端部12Bから先端部12Aへ向かって磁束が流れる際に、その先端部12Aに十分な量の磁束を供給するために磁束が絞り込まれる位置であり、記録性能に寄与する重要な因子である。先端部12Aは、図3に示したように、上側(トレーリング側)に位置する上端縁E1(幅W1)および下側(リーディング側)に位置する下端縁E2(幅W2)をそれぞれ長辺および短辺とする逆台形型の断面形状を有しており、その逆台形型の形状は、エアベリング面50に露出した露出面においても同様である。磁性層40は、ギャップ層14を挟んで磁極層30(先端部12A)に対向するライトシールド層15と、エアベアリング面50に近い側および遠い側においてそれぞれライトシールド層15および磁極層30に連結されたリターンヨーク層18とがこの順に積層されたものである。なお、絶縁層17のうちのエアベアリング面50に最も近い端縁の位置はスロートハイトゼロ位置TPであり、そのスロートハイトゼロ位置TPとエアベアリング面50との間の距離はスロートハイトTHである。なお、図1および図2では、例えば、スロートハイトゼロ位置TPがフレアポイントFPに一致している場合を示している。また、図2では、記録ヘッド部100Bのうちの主要な構成要素のみを示している。
【0015】
この薄膜磁気ヘッドは、既存の薄膜プロセスを使用して基板1上に絶縁層2からオーバーコート層19に至る一連の構成要素を順に積層形成したのち、例えば機械加工や研磨加工を使用してエアベアリング面50を形成することにより製造される。この「既存の薄膜プロセス」とは、例えば、めっき法またはスパッタリング法に代表される膜形成技術、フォトリソグラフィ法に代表されるパターニング技術、ドライエッチング法またはウェットエッチング法に代表されるエッチング技術、ならびに化学機械研磨(CMP;chemical mechanical polishing )法に代表される研磨技術などである。
【0016】
本実施の形態に係るレジストパターンの形成方法を応用して主磁極層12を形成する際には、まず、図4に示したように、例えばスピンコート法などを使用して補助磁極層10および絶縁層11(図4では補助磁極層10を図示せず)の表面にポジ型レジストを塗布することによりレジスト膜61を形成したのち、そのレジスト膜61上に露光用のマスク62を配置する。
【0017】
このマスク62は、主磁極層12のパターン形状を反映した開口部62Kを有する開口型のマスクであり、後工程において形成されるレジストパターン64のうちの凸状の角部64C(位置P4;図6)に対応する位置P2に、突起部62Tを有している。この突起部62Tは、開口部62Kを部分的に狭めるために、その開口部62Kを挟んで互いに対向するように2つ設けられている。開口部62Kは、後工程においてレジスト膜61を露光・現像および加熱することによりレジストパターン64(図6)を形成した際に、そのレジストパターン64のうちの開口部64Kの開口形状が主磁極層12(図2)のパターン形状に一致することとなるような開口形状を有しており、開口部62Kのうちの最狭幅領域(突起部62Tが設けられている領域を除く)の幅W3(図4)は、主磁極層12のうちの先端部12Aの幅W1(図3)よりも小さくなっているのが好ましい。主磁極層12の広がり角度θ(図2)に対応するマスク62の開口広がり角度ωは、その広がり角度θにほぼ等しくなっている。なお、上記した「開口型」とは、開口部を有するフレームパターン型のマスク構造を意味しており、「孤立型」に相対する概念である。この「孤立型」とは、開口部を有しない孤立パターン型のマスク構造を意味している。
【0018】
突起部62Tは、例えば、図10に示したように、突起長さTL1および突起幅TWを有しており、後工程において形成される前準備レジストパターン63のうちの突起部63T(図5)よりも大きくなっている。この「突起部62T(図4)が突起部63T(図5)よりも大きい」とは、突起長さTL1および突起幅TW(図10)が突起部63Tよりも突起部62Tにおいて大きいことを意味している。この突起部62Tを有するマスク62の輪郭は、例えば、突起部62Tを有しないマスク(基準マスクN)の角点Cを基準として、その基準マスクNに対して角点Cに中心が位置するように正方形型の突起パターンSを重ね合わせた場合に、それらの基準マスクNおよび突起パターンSの投影形状の輪郭に等しくなるように画定されている。この場合には、突起長さTL1と突起幅TWとの間に、TW=2×TL1の関係が成立する。なお、突起長さTL1および突起幅TWは、後工程において前準備レジストパターン63およびレジストパターン64を形成可能な範囲において、任意に設定可能である。具体的な一例を挙げるとすれば、突起長さTL1は約50nm以上であるのが好ましい。
【0019】
なお、図4(A)に示したM−M線は、後工程においてエアベアリング面50となる位置に対応している。また、S−S線は、フレアポイントFPに対応する位置を示している。これらの事項は、図5(A)〜図9(A)に関しても同様である。
【0020】
レジスト膜61上にマスク62を配置したのち(図4)、フォトリソグラフィ法を使用してレジスト膜61を選択的に露光・現像する。すなわち、レジスト膜61に対してマスク62越しに露光用の光Lを照射したのち、現像液を使用して露光部分を除去することにより、図5に示したように、開口部63K(最狭幅領域の幅W4)を有する前準備レジストパターン63を形成する。この前準備レジストパターン63は、レジストパターン64(図6)を形成するための前準備パターンである。この場合には、マスク62の突起部62T(位置P2;図4)に対応する位置P3に、突起長さTL2を有する突起部63Tが設けられる。フォトリソグラフィ工程では、露光量などのレジストプリント条件に応じて、露光前後における幅W3,W4間の大小関係および突起長さTL1,TL2間の大小関係を任意に調整可能である。なお、フォトリソグラフィ工程において使用する露光装置(露光条件)および現像液の種類は、任意に設定可能である。
【0021】
ここでは、例えば、図4に示したように、レジスト膜61上にマスク62を配置することにより、平行露光光を使用してマスク62のパターン形状をレジスト膜61に転写するコンタクト露光法を採用しているが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、マスク62をレジスト膜61から離して配置することにより転写するプロキシミティ露光法を採用してもよい。この場合には、もちろん、レジスト膜61とマスク62との間に光学系を有するいわゆるミラープロジェクション、ステッパまたはスキャナなどの同倍または縮小露光機を使用してもよい。
【0022】
続いて、前準備レジストパターン63(図5)を加熱することにより、図6に示したように、開口部64Kを有するレジストパターン64を形成する。この加熱工程では、表面張力の影響を受けて前準備レジストパターン63が熱流動および熱収縮することにより、開口部63Kにおいて内壁が傾斜すると共に突起部63Tが後退して消失する(図5)。これにより、図6に示したように、開口部64Kが絶縁層11から離れるにしたがって次第に広くなり、すなわち開口部64Kの下端幅が上記した幅W4よりも大きな幅W2になると共に上端幅が下端幅W2よりも大きな幅W5になる。また、突起部63Tが消失するまで前準備レジストパターン63を加熱することにより、位置P3(図5)に対応する位置P4(図6)に突起部63Tが残存せず、その位置P4における角部64C(図6)がほぼ尖鋭(シャープ)になる。上記した一連の位置P2〜P4は、主磁極層12のフレアポイントFP(位置P1;図2)に対応する位置である。なお、前準備レジストパターン63(図5)の加熱温度および加熱時間などの条件は、熱流動性および熱収縮性などの特性に応じて任意に設定可能である。
【0023】
上記した「角部64C(図6)がほぼ尖鋭になる」とは、角部64Cが丸みを帯びるものの、その丸みを帯びる傾向が著しく緩和されることを意味している。より具体的には、角部64Cが不可避的に丸みを帯びてしまうことを考慮して、その丸みを帯びた部分の範囲の広狭を評価するために丸み範囲D(nm)を定義した場合に、その丸み範囲Dが(例えば50nm以下まで)十分に小さくなることを意味している。この「丸み範囲D」とは、角部64Cを画定する2つの内壁の延在面(内壁のうちの平坦部の表面を延長した仮想面)を考えた場合に、それらの延在面が実際の内壁の表面から外れている範囲におけるY軸方向の寸法であり、その角部64Cの尖鋭さ(丸みを帯びない程度)を表す指標である。レジストパターン64(図6)を形成する場合には、加熱時間と内壁の傾斜角度および突起部63T(図5)の後退量との間の相関を調べることにより、内壁の傾斜角度が所望の角度になると共に突起部63Tが消失する条件をあらかじめ決定しておくのが好ましい。
【0024】
続いて、図7に示したように、例えばめっき法またはスパッタリング法などを使用して、レジストパターン64の開口部64Kに主磁極層12を形成する。この場合には、例えば、主磁極層12の上端幅が幅W1(図3)よりも大きく幅W5よりも小さな幅W6になるようにする。なお、主磁極層12の下端幅は、幅W2になる。この主磁極層12を形成するためにめっき法を使用する場合には、例えば、絶縁層11上にレジストパターン64を形成する前にシード層を形成しておき、そのレジストパターン64を形成したのちにシード層を使用してめっき膜を成長させるようにする。こののち、図8に示したように、例えばアッシング法などを使用してレジストパターン64を除去する。なお、めっき法を使用した場合には、例えばドライエッチングなどを使用してシード層のうちの不要部分を除去する。
【0025】
最後に、図9に示したように、主磁極層12およびその周辺を覆うように絶縁層13を形成したのち、例えばCMP法を使用して少なくとも主磁極層12が露出するまで絶縁層13を研磨することにより、主磁極層12の周囲に絶縁層13を埋設する。この場合には、例えば、絶縁層13と共に主磁極層12を併せて研磨することにより、その主磁極層12の上端幅が幅W1に等しくなるように研磨量を調整する。これにより、レジストパターン64を使用した主磁極層12の形成工程が完了する。
【0026】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、位置P2に突起部62Tを有するマスク62を使用してレジスト膜61を露光・現像することにより(図4)、位置P3に突起部63Tを有する前準備レジストパターン63を形成し(図5)、引き続き前準備レジストパターン63を加熱して突起部63Tを消失させることにより、位置P4に突起部を有しないレジストパターン64を形成している(図6)。この場合には、レジストパターン64を使用して主磁極層12を形成することにより、以下の理由により、レジストパターン64の立体形状が十分に制御されるため、主磁極層12を高精度に形成することができる。
【0027】
図11および図12は、それぞれ第1および第2の比較例の薄膜磁気ヘッドの製造方法を説明するためのものであり、(A),(B),(C)は、それぞれ図4(A),図5(A),図6(A)に対応する平面構成を示している。第1の比較例(図11)は、位置P2に突起部を有しないマスク162を使用して(A)、位置P3に突起部を有しない前準備レジストパターン163を形成したのち(B)、レジストパターン164を形成している(C)。また、第2の比較例は、位置P2に突起部262Tを有するマスク262を使用して(A)、位置P3に突起部を有しない前準備レジストパターン263を形成したのち(B)、レジストパターン264を形成している(C)。なお、第1および第2の比較例において、マスク162,262、前準備レジストパターン163,263およびレジストパターン164,264は、それぞれマスク62、前準備レジストパターン63およびレジストパターン64に対応するものであり、上記した製造手順以外の手順は、本実施の形態と同様である。
【0028】
第1の比較例(図11)では、マスク162が位置P2に突起部を有していないため(A)、前準備レジストパターン163の位置P3に突起部が形成されない(B)。この場合には、フォトリソグラフィ工程における光の回折現象および加熱工程における前準備レジストパターン163の熱収縮の影響が一切緩和されないため、フォトレジストパターン164が位置P4において著しく丸みを帯びることにより、丸み範囲Dが著しく大きくなる(C)。これにより、レジストパターン164を使用して主磁極層12を形成すると、その主磁極層12の幅がフレアポイントFPにおいて設計値(幅W1;図3)よりも大きく広がりすぎるおそれがある。
【0029】
第2の比較例(図12)では、マスク262が位置P2に突起部262Tを有しているものの(A)、その突起部262Tの大きさが十分でないため、前準備レジストパターン263の位置P3に突起部が形成されない(B)。この場合には、突起部262Tを設けたことによりフォトリソグラフィ工程における光の回折現象の影響が緩和されるものの、加熱工程における前準備レジストパターン263の熱収縮の影響が緩和されないため、フォトレジストパターン264が位置P4において大きく丸みを帯びることにより、丸み範囲Dが大きくなる(C)。このときの丸み範囲Dは、第1の比較例よりは小さくなるものの、十分に小さいとは言えない。これにより、レジストパターン264を使用して形成した主磁極層12の幅は、フレアポイントFPにおいて設計値よりも広がりすぎるおそれがある。
【0030】
これに対して、本実施の形態(図4〜図6)では、マスク62が位置P2に十分な大きさの突起部62Tを有しているため(図4(A))、前準備レジストパターン63の位置P3に突起部63Tが形成される(図5(A))。この場合には、突起部62Tを設けたことによりフォトリソグラフィ工程における光の回折現象の影響が緩和され、しかも突起部63Tを設けたことにより加熱工程における前準備レジストパターン63の熱収縮の影響が緩和されるため、フォトレジストパターン64が位置P4において丸みを帯びにくくなることにより、丸み範囲Dが第1および第2の比較例よりも著しく小さくなる(図6(A))。しかも、加熱工程において前準備レジストパターン63が熱流動および熱変形することにより、開口部63Kにおける内壁が傾斜すると共に突起部63Tが後退して消失する(図5および図6)。これにより、レジストパターン64の立体形状が所望の立体形状に近くなるため、そのレジストパターン64を使用して形成した主磁極層12では、フレアポイントFPにおいて幅が設計値に近くなる。したがって、レジストパターン64の立体形状が十分に制御されるため、主磁極層12を高精度に形成することができるのである。
【0031】
ここで、本発明の技術的意義に関して説明しておく。すなわち、露光装置の解像限界を補うことによりレジストパターンの立体形状を制御する方法としては、背景技術において説明したように、突起部(セリフ)が設けられたマスクを使用する従来技術が既に知られている。しかしながら、従来のマスクに設けられている突起部は、あくまでフォトリソグラフィ工程における光の回折現象の影響分だけを緩和するために設けられたものであり、本発明のマスク62(図4)のように、フォトリソグラフィ工程における光の回折現象の影響分および加熱工程における熱収縮の影響分の双方を緩和するために設けられたものではない。しかも、フォトリソグラフィ工程における光の回折現象の影響分だけを考慮して突起部が設けられた従来のマスクを使用する場合には、そのマスクを使用して(前準備レジストパターンを経由せずに)レジストパターンを形成する関係上、そのレジストパターンに突起部が残存していては困るため、当然ながら、本発明の前準備レジストパターン63(図5)のように、形成途中のレジストパターンに突起部が設けられることはない。これらのことから、本発明の技術的意義は、フォトリソグラフィ工程および加熱工程における形崩れを緩和することを目的として、意図的に形成途中のレジストパターン(前準備レジストパターン63)に突起部を設ける点にある。
【0032】
なお、本実施の形態では、図4に示したように、前準備レジストパターン63(図5)およびレジストパターン64(図6)を形成するためにポジ型レジスト(レジスト膜61)および開口型のマスク(マスク62)を使用したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、図4に対応する図13に示したように、ネガ型レジスト(レジスト膜65)および孤立型のマスク(マスク66)を使用してもよい。この場合には、ネガ型レジストを塗布することによりレジスト膜65を形成したのち、そのレジスト膜65上にマスク66を配置する。このマスク66は、マスク62のうちの開口部62Kおよび非開口部が互いに反転したパターン形状を有しており、位置P2に突起部62Tに代えて窪み部66Hを有している。これらのレジスト膜65およびマスク66を使用したフォトリソグラフィ工程以降の工程は、レジスト膜61およびマスク62を使用した場合と同様である。この場合においても、図5および図6に示した前準備レジストパターン63およびレジストパターン64を形成可能であるため、同様の効果を得ることができる。
【0033】
また、本実施の形態では、図10に示したように、突起部62Tの輪郭を画定するに当たり、正方形型の突起パターンSの中心が基準マスクNの角点Cに位置するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、突起パターンSのパターン形状や、基準マスクNと突起パターンSとの間の位置関係などは、任意に設定可能である。
【0034】
また、本実施の形態では、レジストパターンの形成方法を垂直磁気記録ヘッドの製造方法に応用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、垂直磁気記録ヘッド以外の他の各種デバイスの製造方法に応用してもよい。この場合におけるレジストパターンの使用用途は、上記した主磁極層12などの各種パターン膜形成処理に限らず、エッチング処理およびドーピング処理などの各種選択的処理であってもよい。この場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0035】
[第2の実施の形態]
図14および図15は、第2の実施の形態に係るレジストパターンの形成方法を説明するためのものであり、それぞれ平面構成および断面構成を表している。図15のうちの(A)〜(C)は、それぞれ図14のうちの(A)〜(C)に示したM−M線に沿った断面を示している。
【0036】
このレジストパターンの形成方法は、開口型のレジストパターン64(図6)を形成した上記第1の実施の形態とは異なり、孤立型のレジストパターン75(図14(C),図15(C))を形成するものである。このレジストパターン75は、例えば、垂直磁気記録ヘッドを含む各種デバイスの製造分野において、各種パターン膜形成処理および各種選択的処理に使用可能である。
【0037】
レジストパターン75を形成する際には、まず、図14(A)および図15(A)に示したように、例えばスピンコート法などを使用して下地71の表面にポジ型レジストを塗布することによりレジスト膜72を形成したのち、そのレジスト膜72上に、露光用のマスク73(最狭幅領域の幅W7)を配置する。このマスク73は、後工程において形成されるレジストパターン75のパターン形状を反映した孤立型のマスクであり、そのレジストパターン75のうちの凸状の角部75C(位置P7)に対応する位置P5に、突起部73Tを有している。基準マスクN(角点C)と突起パターンSとの間の位置関係に基づいて画定される突起部73Tの輪郭の画定原理は、上記第1の実施の形態において突起部62Tに関して説明した場合と同様である。なお、下地71は、例えば、各種基板であってもよいし、あるいは各種膜であってもよい。
【0038】
続いて、フォトリソグラフィ法を使用してレジスト膜72を露光・現像することにより、図14(B)および図15(B)に示したように、前準備レジストパターン74(最狭幅領域の幅W8)を形成する。このフォトリソグラフィ工程では、マスク73のうちの突起部73T(位置P5)に対応する位置P6に、突起部74Tが丸みを帯びるように設けられる。なお、露光前後における幅W7,W8間の大小関係は、露光量などのレジストプリント条件に応じて任意に調整可能である。
【0039】
続いて、前準備レジストパターン74を加熱することにより、図14(C)および図15(C)に示したように、レジストパターン75を形成する。この加熱工程では、表面張力の影響を受けて前準備レジストパターン74が熱流動および熱収縮することにより、外壁が傾斜すると共に突起部74Tが後退して消失する。これにより、レジストパターン75が下地71から離れるにしたがって次第に狭まり、すなわちレジストパターン75の下端幅が上記した幅W8よりも小さな幅W9になると共に上端幅が下端幅W9よりも小さな幅W10になる。また、突起部74Tが消失することにより、位置P7における角部75Cがほぼ尖鋭になる。これにより、レジストパターン75の形成工程が完了する。
【0040】
本実施の形態に係るレジストパターンの形成方法では、位置P5に突起部73Tを有するマスク73を使用してレジスト膜72を露光・現像することにより(図14(A),図15(A))、位置P6に突起部74Tを有する前準備レジストパターン74を形成したのち(図14(B),図15(B))、その前準備レジストパターン74を加熱して突起部74Tを消失させることにより、位置P7に突起部を有しないレジストパターン75を形成している(図14(C),図15(C))。この場合には、上記第1の実施の形態と同様の作用により、マスクおよび前準備レジストパターンのいずれにも突起部を設けない場合、あるいはマスクのみに突起部を設けて前準備レジストパターンに突起部を設けない場合と比較して、丸み範囲Dが著しく小さくなるため、レジストパターン75の立体形状を十分に制御することができる。これにより、レジストパターン75を使用した各種パターン膜形成処理および各種選択的処理を高精度に行うことができる。
【0041】
なお、本実施の形態では、図14および図15に示したように、前準備レジストパターン74およびレジストパターン75形成するためにポジ型レジスト(レジスト膜72)および孤立型のマスク(マスク73)を使用したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、図14(A)および図15(A)に対応する図16(A),(B)に示したように、ネガ型レジスト(レジスト膜76)および開口型のマスク(マスク77)を使用してもよい。この場合には、ネガ型レジストを塗布することによりレジスト膜76を形成したのち、そのレジスト膜76上に、開口部77Kを有するマスク77を配置する。このマスク77は、マスク73のうちの孤立パターン部および非孤立パターン部が互いに反転したパターン形状を有しており、位置P7に窪み77Hを有している。これらのレジスト膜76およびマスク77を使用したフォトリソグラフィ工程以降の工程は、レジスト膜72およびマスク73を使用した場合と同様である。この場合においても、図14(B),(C)および図15(B),(C)に示した前準備レジストパターン74およびレジストパターン75を形成可能であるため、同様の効果を得ることができる。
【0042】
本実施の形態に係るレジストパターンの形成方法に関する上記以外の手順、作用および変形例などは、上記第1の実施の形態と同様である。
【0043】
[第3の実施の形態]
図17および図18は、第3の実施の形態に係るレジストパターンの形成方法を説明するためのものであり、それぞれ平面構成および断面構成を示している。図18のうちの(A)〜(C)は、それぞれ図17のうちの(A)〜(C)に示したM−M線に沿った断面を示している。なお、図17および図18では、上記第2の実施の形態において説明した構成要素と同一の要素に同一の符号を付している。
【0044】
このレジストパターンの形成方法は、孤立型のレジストパターン75を形成した上記第2の実施の形態とは異なり、開口型のレジストパターン85(図17(C),図18(C))を形成するものである。
【0045】
レジストパターン85を形成する際には、まず、図17(A)および図18(A)に示したように、上記第2の実施の形態において説明した手順を経ることにより下地71上にレジスト膜72を形成したのち、そのレジスト膜72上に、露光用のマスク83を配置する。このマスク83は、後工程において形成されるレジストパターン85のパターン形状を反映した開口部83K(最狭幅領域の幅W11)を有する開口型のマスクであり、そのレジストパターン85のうちの凹状の角部85C(位置P10)に対応する位置P8に、窪み部83H(窪み深さHL1)を有している。この窪み部83Hの輪郭の画定原理は、上記第1の実施の形態において図13を参照して説明した窪み部66Hの場合と同様である。
【0046】
続いて、フォトリソグラフィ法を使用してレジスト膜72を露光・現像することにより、図17(B)および図18(B)に示したように、開口部84K(最狭幅領域の幅W12)を有する前準備レジストパターン84を形成する。このフォトリソグラフィ工程では、マスク83のうちの窪み部83H(位置P8)に対応する位置P9に、窪み部84H(窪み深さHL2)が丸みを帯びるように設けられる。なお、露光前後における幅W11,W12間の大小関係および窪み深さHL1,HL2間の大小関係は、露光量などのレジストプリント条件に応じて任意に調整可能である。
【0047】
続いて、前準備レジストパターン84を加熱することにより、図17(C)および図18(C)に示したように、開口部85Kを有するレジストパターン85を形成する。この加熱工程では、表面張力の影響を受けて前準備レジストパターン84が熱流動および熱収縮することにより、内壁が傾斜すると共に窪み部84Hが消失する。これにより、開口部85Kが下地71から離れるにしたがって次第に広がり、すなわち開口部85Kの下端幅が上記した幅W12よりも大きな幅W13になると共に上端幅が下端幅W13よりも大きな幅W14になる。また、窪み部84Hが消失することにより、位置P10における角部85Cがほぼ尖鋭になる。これにより、レジストパターン85の形成工程が完了する。
【0048】
本実施の形態に係るレジストパターンの形成方法では、位置P8に窪み部83Hを有するマスク83を使用してレジスト膜72を露光・現像することにより(図17(A),図18(A))、位置P9に窪み部84Hを有する前準備レジストパターン84を形成したのち(図17(B),図18(B))、その前準備レジストパターン84を加熱して窪み部84Hを消失させることにより、位置P10に窪み部を有しないレジストパターン85を形成している(図17(C),図18(C))。この場合には、以下の理由により、レジストパターン85の立体形状を十分に制御することができる。
【0049】
図19および図20は、それぞれ第1および第2の比較例のレジストパターンの形成方法を説明するためのものであり、(A)〜(C)は、それぞれ図17(A)〜(C)に対応する平面構成を示している。第1の比較例(図19)は、位置P8に窪み部を有しないマスク183を使用して(A)、位置P9に窪み部を有しない前準備レジストパターン184を形成したのち(B)、レジストパターン185を形成している(C)。また、第2の比較例(図20)は、位置P8に窪み部283Hを有するマスク283を使用して(A)、位置P9に窪み部を有しない前準備レジストパターン284を形成したのち(B)、レジストパターン285を形成している(C)。図19および図20のうちの(A)〜(C)に示したM−M線に沿った断面構成は、それぞれ図18に示した(A)〜(C)の断面構成と同様である。なお、第1および第2の比較例において、マスク183,283、前準備レジストパターン184,284およびレジストパターン185,285は、それぞれマスク83、前準備レジストパターン84およびレジストパターン85に対応するものであり、上記した製造手順以外の手順は、本実施の形態と同様である。
【0050】
第1の比較例(図19)では、マスク183が位置P8に窪み部を有していないため(A)、前準備レジストパターン184の位置P9に窪み部が形成されない(B)。この場合には、フォトリソグラフィ工程における光の回折現象および加熱工程における前準備レジストパターン184の熱収縮の影響が一切緩和されないため、フォトレジストパターン185が位置P10において著しく丸みを帯びることにより、丸み範囲Dが著しく大きくなる(C)。
【0051】
第2の比較例(図20)では、マスク283が位置P8に窪み部283Hを有しているものの(A)、その窪み部283Hの大きさが十分でないため、前準備レジストパターン284の位置P9に窪み部が形成されない(B)。この場合には、窪み部283Hを設けたことによりフォトリソグラフィ工程における光の回折現象の影響が緩和されるものの、加熱工程における前準備レジストパターン284の熱収縮の影響が緩和されないため、フォトレジストパターン285が位置P10において大きく丸みを帯びることにより、丸み範囲Dが大きくなる(C)。このときの丸み範囲Dは、第1の比較例よりは小さくなるものの、十分ではない。
【0052】
これに対して、本実施の形態(図17および図18)では、マスク83が位置P8に十分な大きさの窪み部83Hを有しているため(図17(A))、前準備レジストパターン84の位置P9に窪み部84Hが形成される(図17(B))。この場合には、窪み部83Hを設けたことによりフォトリソグラフィ工程における光の回折現象の影響が緩和され、しかも窪み部83Hを設けたことにより加熱工程における前準備レジストパターン84の熱収縮の影響が緩和されるため、フォトレジストパターン85が位置P10において丸みを帯びにくくなることにより、丸み範囲Dが第1および第2の比較例よりも著しく小さくなる(図17(C))。しかも、加熱工程において前準備レジストパターン84が熱流動および熱変形することにより、開口部84Kにおける内壁が傾斜すると共に窪み部84Hが消失する。したがって、レジストパターン85の立体形状が所望の立体形状に近くなるため、そのレジストパターン85の立体形状を十分に制御することができるのである。
【0053】
なお、本実施の形態では、図17および図18に示したように、前準備レジストパターン84およびレジストパターン85を形成するためにポジ型レジスト(レジスト膜72)および開口型のマスク(マスク83)を使用したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、図17(A)および図18(A)にそれぞれ対応する図21(A),(B)に示したように、ネガ型レジスト(レジスト膜86)および孤立型のマスク(マスク87)を使用してもよい。この場合には、ネガ型レジストを塗布することによりレジスト膜86を形成したのち、そのレジスト膜86上にマスク87を配置する。このマスク87は、マスク83のうちの開口部83Kおよび非開口部が互いに反転したパターン形状を有しており、位置P8に窪み部83Hに代えて突起部87Tを有している。これらのレジスト膜86およびマスク87を使用したフォトリソグラフィ工程以降の工程は、レジスト膜72およびマスク83を使用した場合と同様である。この場合においても、図17および図18に示した前準備レジストパターン84およびレジストパターン85を形成可能であるため、同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0054】
次に、本発明に関する実施例について説明する。
【0055】
まず、第1の実施の形態において説明したレジストパターンの形成方法を使用してレジストパターンを形成したところ、表1に示した結果が得られた。表1は、レジストパターンの形成過程における各部の寸法を表しており、その各部の寸法として、マスクの突起長さTL1(nm)、前準備レジストパターンの突起長さTL2(nm)およびレジストパターンの丸み範囲D(nm)を示している。なお、表1では、本発明の各部寸法を比較評価するために、図11および図12に示した第1および第2の比較例の各部寸法も併せて示している。
【0056】
レジストパターンの形成手順は、以下の通りである。まず、スピンコート法を使用してシリコン基板の表面にAZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のポジ型レジストAZ5105Pを塗布することにより、0.5μmの厚さとなるようにレジスト膜を形成した。続いて、レジスト膜上に、図4(A)、図11(A)および図12(A)に示した開口型のマスク(幅W3=300nm,開口広がり角度ω=30°)を配置した。このマスクの突起長さTL1としては、表1に示したように、本発明ならびに第1および第2の比較例においてそれぞれ50nm,30nm,0nmに設定した。続いて、露光装置(KrFエキシマレーザステッパ;露光エネルギー=30mJ/cm2 ,フォーカス=0μm)を使用してレジスト膜を露光したのち、現像液(テトラメチルアンモニウム2.38%水溶液)を使用してレジスト膜を現像することにより、図5(A)、図11(B)および図12(B)に示した前準備レジストパターン(幅W4=290nm)を形成した。最後に、ホットプレートを使用して前準備レジストパターンを加熱することにより(加熱温度=180℃,加熱時間=15分)、図6(A)、図11(C)および図12(C)に示したレジストパターン(幅W2=310nm)を形成した。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示した結果から判るように、前準備レジストパターンの突起長さTL2は、本発明ならびに第1および第2の比較例においてそれぞれ20nm,0nm,0nmとなり、本発明のみにおいて前準備レジストパターンに突起部が設けられた。この結果、レジストパターンの丸み範囲Dは、本発明ならびに第1および第2の比較例においてそれぞれ30nm,100nm,180nmとなり、第1および第2の比較例よりも本発明において著しく小さくなった。このことから、本発明では、前準備レジストパターンに突起部を設けることにより、レジストパターンの立体形状を十分に制御可能であることが確認された。
【0059】
次に、第3の実施の形態において説明したレジストパターンの形成方法を使用してレジストパターンを形成したところ、表2に示した結果が得られた。表2は、レジストパターンの形成過程における各部の寸法を表しており、その各部の寸法として、マスクの窪み深さHL1(nm)、前準備レジストパターンの窪み深さHL2(nm)およびレジストパターンの丸み範囲D(nm)を示している。なお、表2では、本発明の各部寸法を比較評価するために、図19および図20に示した第1および第2の比較例の各部寸法も併せて示している。
【0060】
レジストパターンの形成手順は、図17(A)、図19(A)および図20(A)に示したマスク(幅W11=5μm)を使用した点を除いて、上記した第1の実施の形態のレジストパターンを形成した場合と同様である。この場合には、マスクの窪み深さHL1として、表2に示したように、本発明ならびに第1および第2の比較例においてそれぞれ70nm,30nm,0nmに設定した。
【0061】
【表2】

【0062】
表2に示した結果から判るように、前準備レジストパターンの窪み深さHL2は、本発明ならびに第1および第2の比較例においてそれぞれ30nm,0nm,0nmとなり、本発明のみにおいて前準備レジストパターンに窪み部が設けられた。この結果、レジストパターンの丸み範囲Dは、本発明ならびに第1および第2の比較例においてそれぞれ50nm,120nm,200nmとなり、第1および第2の比較例よりも本発明において著しく小さくなった。このことから、本発明では、前準備レジストパターンに窪み部を設けることにより、レジストパターンの立体形状を十分に制御可能であることが確認された。
【0063】
以上、いくつかの実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記各実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。具体的には、例えば、上記第1の実施の形態では、本発明のレジストパターンの形成方法を応用可能なデバイスとして垂直磁気記録ヘッドを例示したが、その垂直磁気記録ヘッド以外の他のデバイスとしては、薄膜インダクタ、薄膜センサ、薄膜アクチュエータ、半導体デバイスおよびこれらを搭載した装置などが挙げられる。これらに応用した場合においても、同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係るレジストパターンの形成方法は、垂直磁気記録ヘッドなどの各種デバイスの製造方法に応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るレジストパターンの形成方法を応用した薄膜磁気ヘッドの製造方法を使用して製造される薄膜磁気ヘッドの断面構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した薄膜磁気ヘッドの平面構成を表す平面図である。
【図3】図1(A)に示した主磁極層の断面構成を拡大して表す断面図である。
【図4】薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を説明するための平面図および断面図である。
【図5】図4に続く工程を説明するための平面図および断面図である。
【図6】図5に続く工程を説明するための平面図および断面図である。
【図7】図6に続く工程を説明するための平面図および断面図である。
【図8】図7に続く工程を説明するための平面図および断面図である。
【図9】図8に続く工程を説明するための平面図および断面図である。
【図10】図4に示したマスクの輪郭を拡大して表す平面図である。
【図11】第1の比較例の薄膜磁気ヘッドの製造方法を説明するための平面図である。
【図12】第2の比較例の薄膜磁気ヘッドの製造方法を説明するための平面図である。
【図13】薄膜磁気ヘッドの製造方法に関する変形例を説明するための平面図および断面図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係るレジストパターンの形成方法を説明するための平面図である。
【図15】図14に対応する断面図である。
【図16】レジストパターンの形成方法に関する変形例を説明するための平面図および断面図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係るレジストパターンの形成方法を説明するための平面図である。
【図18】図17に対応する断面図である。
【図19】第1の比較例のレジストパターンの形成方法を説明するための平面図である。
【図20】第2の比較例のレジストパターンの形成方法を説明するための平面図である。
【図21】レジストパターンの形成方法に関する変形例を説明するための平面図および断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1…基板、2,11,13,17…絶縁層、3…下部リードシールド層、4…シールドギャップ膜、5,7…磁性層、6…非磁性層、8…MR素子、9…分離層、10…補助磁極層、12…主磁極層、12A…先端部、12B…後端部、14…ギャップ層、14BG…バックギャップ、15…ライトシールド層、16…薄膜コイル、18…リターンヨーク層、19…オーバーコート層、20…上部リードシールド層、30…磁極層、40…磁性層、50…エアベアリング面、61,65,72,76,86…レジスト膜、62,66,73,77,83,87…マスク、62K,63K,64K,77K,83K,84K,85K…開口部、62T,63T,73T,74T,87T…突起部、63,74,84…前準備レジストパターン、64,75,85…レジストパターン、64C,75C,85C…角部、66H,77H,83H,84H…窪み部、71…下地、100A…再生ヘッド部、100B…記録ヘッド部、C…角点、D…丸み範囲、E1…上端縁、E2…下端縁、FP…フレアポイント、HL1,HL2…窪み深さ、L…露光用の光、N…基準マスク、P1〜P10…位置、S…突起パターン、TH…スロートハイト、TL1,TL2…突起長さ、TP…スロートハイトゼロ位置、TW…突起幅、W1〜W14…幅、θ…広がり角度、ω…開口広がり角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸状の角部を有するレジストパターンを形成する方法であって、
レジスト膜を形成する第1の工程と、
前記角部に対応する位置に突起部が形成されるように前記レジスト膜を選択的に露光して現像する第2の工程と、
前記レジスト膜を加熱して前記突起部を消失させる第3の工程と
を含むことを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項2】
凹状の角部を有するレジストパターンを形成する方法であって、
レジスト膜を形成する第1の工程と、
前記角部に対応する位置に窪み部が形成されるように前記レジスト膜を選択的に露光して現像する第2の工程と、
前記レジスト膜を加熱して前記窪み部を消失させる第3の工程と
を含むことを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項3】
記録トラック幅を規定する一定幅からそれよりも大きな幅に広がる磁極層を備えた垂直磁気記録ヘッドを製造する方法であって、
レジスト膜を形成する第1の工程と、
前記磁極層の幅が一定幅から広がり始める位置に対応する位置に突起部が形成されるように前記レジスト膜を選択的に露光して現像する第2の工程と、
前記レジスト膜を加熱して前記突起部を消失させる第3の工程と、
前記突起部を消失させた前記レジスト膜以外の領域に前記磁極層を形成する第4の工程と
を含むことを特徴とする垂直磁気記録ヘッドの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2007−279373(P2007−279373A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105343(P2006−105343)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】