説明

レッグウェア

【課題】足親指に対して外側に向く方向の力を十分加えることができ、しかも簡単に履くことができるレッグウェアを提供すること。
【解決手段】靴下1のフート部7に、ゴム糸を用いて編成された爪先側サポート23を設け、この爪先側サポート23から親指部13に至るまで、ゴム糸を用いて編成されたサイドサポート25を設ける。これにより、靴下1の着用時、サイドサポート25が非着用状態の形状に戻ろうとする力(白抜き矢印X参照)が踵側へ働き、その力を利用して、着用者の足の親指を収容する親指部13の側面に対して、踵側へ引っ張る力を加えることができる。その結果、着用者の足の親指に対して人差し指(第2指から離れる側に向く方向の力(白抜き矢印Y参照)を加えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レッグウェア、より詳しくは、外反母趾対策用のレッグウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外反母趾対策用の靴下やサポータが注目されている。
この種の靴下として、たとえば、中足関節部である第1中足骨骨頭部と第5中足骨骨頭部と、ゴムに絡ませながら織り込まれた強度の強い糸からなり、リスフラン関節部である第1中足骨基底部と第5中足骨基底部を固定し、足の横アーチ(中足関節部)と縦アーチ(リスフラン関節部)を形成するための締め付け部とを有する、外反母趾および内反小指矯正用靴下が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、サポータとして、たとえば、ズレ防止ベルト、各種クッション材、および複数の係止用マジック(登録商標)ファスナを備え、外反母趾と内反小指の患部である親指と第2指間、第4指と第5指間を離すために、親指と第2指間の指間パットおよび第4指と第5指間の指間パットが設けられた、外反母趾および内反小指矯正用サポータが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−161344号公報
【特許文献2】特開2007−167180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の靴下ように、足の中足関節およびリスフラン関節を締め付けて固定するだけでは、足の親指に対して外側に向く方向の力を十分加えることは困難であり、外反母趾対策が十分施されているとは言い難い。
また、特許文献2のサポータは、装着の際に、展開されている各種ベルト類(ズレ防止ベルト、係止用マジック(登録商標)ファスナ)を一つずつ、足に適合するように係止する必要があるため、その装着が非常に手間である。
【0006】
本発明の目的は、足親指に対して外側に向く方向の力を十分加えることができ、しかも簡単に履くことができるレッグウェアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、弾性糸を用いて編成された伸縮性の高い弾性部を選択的に有する連続した編み組織からなるレッグウェアであって、足の親指が挿入される第1挿入部、および親指以外の他の足の指が挿入される第2挿入部を有し、前記第1挿入部が前記第2挿入部から独立して袋状に形成された爪先部と、前記爪先部の後端と連続して編成されたフート部とを含み、前記弾性部は、編地のコースに沿って環状に形成され、着用状態において足の甲および足底を締め付ける第1締め付け部と、前記第1挿入部および前記第1締め付け部に跨るように線状に形成され、着用状態において親指から拇趾球にかけて足の側面に接する線状部とを含み、前記第1挿入部は、着用状態においては、前記線状部が着用者の親指の側面の形状に沿って伸びることにより、当該親指の付け根から先端に向かう方向に延出しており、非着用状態においては、前記線状部が元の形状まで縮むことにより、前記第2挿入部側とは反対側の側面が前記第1締め付け部側に引っ張られて、前記第2挿入部から離れる方向に曲がっている、レッグウェアである。
【0008】
この構成によれば、人がこのレッグウェアを着用したときに、当該レッグウェアの第1締め付け部が、その弾性力により着用者の足の甲および足底に固定される。また、その固定とともに、固定された第1締め付け部から第1挿入部に跨る伸縮性の高い線状部が、着用者の足の親指の形状に沿って伸び、親指から拇趾球にかけて足の側面に接する。これにより、線状部が元の形状に戻ろうとする力を利用して、着用者の足の親指を収容する第1挿入部の側面(第2挿入部側とは反対側の側面)に対して、踵側へ引っ張る力を加えることができる。その結果、第1挿入部に対して第2挿入部から離れる方向の力が加わるので、着用者の足の親指に対して外側(人差し指(第2指)から離れる側)に向く方向の力を加えることができる。
【0009】
しかも、第1締め付け部による足の甲および足底の締め付けにより、線状部が第1挿入部を引っ張る際の支点が固定されるので、線状部が足の側面に対してずれることを抑制できる。そのため、第1挿入部に対して力を良好に伝えることができる。
さらに、第1挿入部を区画する編み生地を着用者の足の親指に直接引っ掛けることにより、当該親指を外側に引っ張るので、足の中足関節およびリスフラン関節を締め付けることにより足の親指を外側に向けようとする場合よりも、大きな力を親指に加えることができる。
【0010】
これらの結果、本発明によれば、着用者の足の親指に対して外側(人差し指(第2指)から離れる側)に向く方向の力を十分加えることができる。よって、外反母趾対策に適したレッグウェアを提供することができる。
また、レッグウェアが、弾性部を含めて連続した編み組織からなるので、着用者は、フート部を介して爪先部まで足を通すことにより、簡単に履くことができる。よって、着用時の手間が少なくて済む。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、フート部の後端と連続して編成された踵部と、前記踵部の上端と連続して編成されたレッグ部とをさらに含み、前記弾性部は、編地のコースに沿って環状に形成され、着用状態において足の甲からアキレス腱側および土踏まず側の2方向に編地のコースに沿って回りこむ第2締め付け部をさらに含み、前記線状部は、前記第1締め付け部および前記第2締め付け部に跨る部分を有している、請求項1に記載のレッグウェアである。
【0012】
この構成では、第2締め付け部の土踏まず側に回りこむ部分により、線状部が第1挿入部を引っ張る際の支点がさらに固定される。これにより、第1締め付け部と線状部との交点および第2締め付け部と線状部との交点の合計2つの支点が固定されることになる。そして、この2つの支点に跨る線状部の弾性力により、第1挿入部に対してより大きな力を加えることができる。しかも、第2締め付け部はアキレス腱側に回りこむ部分も有しているので、当該部分の締め付けにより、足の側面に対する線状部のずれの発生を一層抑制することができる。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、前記フート部の足の甲側には、少なくとも前記第1締め付け部、前記線状部および前記第2締め付け部により区画された開口が形成されている、請求項2に記載のレッグウェアである。
この構成では、第1締め付け部、線状部および第2締め付け部により区画される領域に編み組織が形成されている場合よりも、第1締め付け部、線状部および第2締め付け部それぞれの弾性力の分散を抑制することができる。その結果、足の甲、足底および足首に各締め付け部を良好に固定できるとともに、線状部の弾性力を、第1挿入部に対して効率よく伝えることができる。
【0014】
また、着用者の足の甲と足底との間に適当な温度差を発生させることができるので、着用後の快適性にも優れる。
また、請求項4記載の発明は、前記第2締め付け部は、前記開口の周縁部に沿ってメッシュ編みにより編成されたメッシュ部を有する、請求項3に記載のレッグウェアである。
この構成では、歩行時に曲げ伸ばし動作が頻繁に行なわれ、第2締め付け部による締め度合が大きくなりやすい足首付近の編み組織をメッシュ編みにすることにより、当該箇所における痒みの発生などを抑制することができる。
【0015】
また、請求項5記載の発明は、前記弾性部は、前記第1挿入部における親指の爪側の部分および親指の底側の部分に選択的に形成され、前記線状部から前記第2挿入部に近づく方向に屈曲する屈曲部をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のレッグウェアである。
この構成では、着用状態において屈曲部の弾性力により、第1挿入部における親指の爪側および親指の底側の両方に対して、第2挿入部から離れる方向の力を直接加えることができる。その結果、着用者の足の親指に対して、外側(人差し指(第2指)から離れる側)に向く方向の力をより良好に加えることができる。
【0016】
また、請求項6記載の発明は、前記屈曲部には、前記第1挿入部における前記第2挿入部に近い側の端部において、前記爪側の部分と前記底側の部分との間に隙間が設けられている、請求項5に記載のレッグウェアである。
この構成では、屈曲部に隙間が設けられているため、足の親指の爪溝が、屈曲部の編み組織(弾性糸を用いて編成された組織)により押圧されることを防止することができる。そのため、着用後の快適性に優れる。
【0017】
また、請求項7記載の発明は、前記第2挿入部は、着用状態において、足の小指を覆う袋部と、当該袋部から独立して形成され、足の小指以外の他の足の指の先端部を露出させるための開口部とを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のレッグウェアである。
この構成では、歩行時の接地圧が足の親指および足の小指に比べて小さい、人差し指(第2指)、中指(第3指)および薬指(第4指)の先端部を爪先部から露出させることができる。これにより、歩行の際、5本の指で地面をしっかり捉えることができる。
【0018】
また、請求項8記載の発明は、前記第1挿入部における前記第2挿入部に近い側の端部のコース数が、前記第2挿入部から遠い側の端部のコース数よりも多い、請求項1〜7のいずれか一項に記載のレッグウェアである。
この構成では、第2挿入部に対する第1挿入部の傾斜角を大きくすることができるので、着用者の足の親指に対して、外側(人差し指(第2指)から離れる側)に向く方向に、より大きな力を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る靴下の平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る靴下の底面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る靴下の正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る靴下の背面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る靴下の右側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る靴下の左側面図である。
【図7】図3のA−A切断面における断面図である。
【図8】図1〜図6に示す靴下の着用状態を正面から見た図である。
【図9】図1〜図6に示す靴下の着用状態を右斜め上方から見た図である。
【図10】図1〜図6に示す靴下の着用状態を左斜め上方から見た図である。
【図11】着用状態における爪先部の拡大図であって、親指部の爪側編み組織を省略して示す図である。
【図12】着用状態における爪先部の拡大図であって、親指部の爪側編み組織を透視して示す図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る靴下の変形例を示す図(着用状態の図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図6は、本発明の一実施形態に係る靴下を示す図であって、図1が平面図、図2が底面図、図3が正面図、図4が背面図、図5が右側面図、図6が左側面図である。また、図7は、図3のA−A切断面における断面図である。なお、図1〜7では、左足用のみを表している。
【0021】
本発明の一実施形態に係るレッグウェアとしての外反母趾対策用の靴下1は、たとえば、スニーカーソックスであって、前後方向に対向する少なくとも前後一対の針床を有する横編機(たとえば、株式会社島精機製作所製「SWG061N」)を用いて編成された編み組織からなる。
この靴下1の編み組織は、縫製や接着剤により別々の編み組織からなる複数のパーツが継ぎ接ぎされて編成されたものではなく、当該靴下1の複数の部位を編成する編み組織が互いに編みループで繋がって編成されており、通常の伸縮性(第1の伸縮性)を有するベース部2(図1〜図6の白抜きの領域)と、このベース部2と連続して編成され、当該ベース部2の伸縮性よりも高い伸縮性(第2の伸縮性)を有する弾性部3(図1〜図6のハッチングの施された領域)とを含んでいる。
【0022】
ベース部2は、本実施形態では、たとえば、ナイロン表糸(たとえば、東レ株式会社製「キュープ(登録商標)」など)およびFTY(Filament Twisted Yarn)裏糸(たとえば、旭化成株式会社製「ポリウレタン×ナイロン=70×70」など)を用いて、平編みにより編成されている。
一方、弾性部3は、本実施形態では、たとえば、ナイロン表糸(たとえば、東レ株式会社製「キュープ(登録商標)」など)および弾性糸としてのゴム裏糸(たとえば、東レ・オペロンテックス株式会社製「ライクラ(登録商標)」、旭化成せんい株式会社製「ロイカ(登録商標)」など」を用いて、平編みにより編成されている。
【0023】
なお、用いられる糸の太さは、靴下1の各部位に必要な伸縮性に応じて適宜のものを選択すればよい。たとえば、ナイロン表糸としては、70D(デニール)の単糸を2本撚り合わせた双糸の3本使い(双糸3本を表糸として使用)、FTY裏糸は70/70(70D・ポリウレタン×70D・ナイロン)程度の糸、ゴム裏糸としては、560D程度の芯糸(ポリウレタン)を70D程度のカバリング糸(ナイロン)でダブルカバリングしたDCY(Double Covering Yarn)を選択することができる。
【0024】
また、ベース部2の表糸および弾性部3の表糸は、同じ材質および同じ太さのものであることが好ましい。両者に同じ表糸を用いることにより、靴下1全体としての質感や触り心地などのばらつきをなくすことができる。
このような編み組織を有する当該靴下1は、複数の部位として、履き口側から爪先側へ向かって順に、口ゴム部4、レッグ部5、踵部6、フート部7および爪先部8を一体的に有している。
【0025】
口ゴム部4は、筒状に形成されており、この口ゴム部4の下端と連続して、レッグ部5が筒状に形成されている。
踵部6は、レッグ部5における後側(アキレス腱側)下端と連続して形成されており、踵部6の爪先側端およびレッグ部5における前側(足甲側)下端と連続して、フート部7が筒状に形成されている。そして、フート部7の爪先側端と連続して、爪先部8が形成されている。
【0026】
踵部6には、その編み組織を編成する際に生じるY状のゴアライン9,9が左右両側に形成されている。ゴアライン9,9は、足の甲側におけるレッグ部5とフート部7との境界(切替え位置)の目安となるものである。具体的には、足の甲部側におけるレッグ部5とフート部7との切替え位置は、一方のゴアライン9の足の甲側端と他方のゴアライン9の足の甲側端とを結ぶコース(横方向の編み目列)によって設定されており、当該コースよりも爪先側がフート部7の編み組織であり、その反対側がレッグ部5の編み組織である。また、ゴアライン9,9は、フート部7の足の甲側としての足甲部10と足底側としての足底部11との境界の目安にもなっており、足甲部10と足底部11との境界は、両方のゴアライン9,9の足の甲側端を通るウェール(縦方向の編み目列)によって設定されている。
【0027】
フート部7の足甲部10には、着用状態において着用者の足の甲を露出させる、踵から爪先へ向かう方向(以下、足長方向という。)に長手な略長方形状の開口12が形成されている。この開口12は、たとえば、足長方向に直交する足幅方向における足甲部10の両端(足甲部10と足底部11との境界をなすウェール)からそれぞれ4〜16ウェール目の両ウェール間の領域において、足の甲側におけるレッグ部5とフート部7との切替え位置をなすコースから爪先部8へ向かう方向に8〜16コース分の編み組織が省略されることにより形成されている。
【0028】
爪先部8は、足の親指が挿入される第1挿入部としての親指部13と、足の小指が挿入される小指部14と、親指部13と小指部14との間に設けられ、それ以外の指(人差し指(第2指)、中指(第3指)および薬指(第4指))が挿入される中間部15とを、互いに独立して有している。親指部13および小指部14は、いずれもその先端が閉塞された袋状に形成されている。また、本実施形態では、小指部14および中間部15が、本発明の第2挿入部の一形態を表している。
【0029】
袋状の親指部13は、その基端側に形成された筒状部16と、筒状部16の先端を閉塞する先端部17とを有している。先端部17には、その編み組織を編成する際に生じるゴアライン18,19が左右両側に形成されている。これらゴアライン18,19が形成されることにより、先端部17の各コースにおける編み目の数は、先端部17と筒状部16との境界(切替え位置)をなすコースから先端に向かうに従って減っている。
【0030】
ゴアライン18,19は、足の内側(人差し指から遠い側)の内側ゴアライン18と、足の外側(人差し指に近い側)の外側ゴアライン19とを含んでいる。本実施形態では、外側ゴアライン19よりも内側ゴアライン18を長くすることにより、親指部13の先端部17の形状が、人差し指に近い側において略曲線で画成されるのに対し、人差し指から遠い側において略直線で画成されている。これにより、先端部17において、人差し指に近い側に比べて遠い側の膨らみ度合が小さくなっている。
【0031】
また、内側ゴアライン18および外側ゴアライン19は、親指部13の爪側の部分としての爪側部20と底側の部分としての指底部21との境界の目安にもなっており、爪側部20と指底部21との境界は、両方のゴアライン9の爪先側端を通るウェールによって設定されている。
中間部15は、その先端が開口部22として開放された筒状に形成されている。これにより、着用者は、歩行時の接地圧が足の親指および足の小指に比べて小さい、人差し指、中指および薬指の先端部を爪先部8から露出させることができる。そのため、歩行の際、5本の指で地面をしっかり捉えることができる。
【0032】
このような構成を有する靴下1において、弾性部3は、レッグ部5、フート部7および爪先部8に跨るように選択的に形成されている。
具体的には、弾性部3は、フート部7における爪先部8との切替え位置に沿って環状に形成され、着用者の拇趾球および小趾球を含む指の付け根付近をサポートする(締め付ける)第1締め付け部としての爪先側サポート23と、レッグ部5およびフート部7における踵部6との切替え位置に沿ってそれぞれ環状に形成され、着用者の足首および土踏まず(踵の前後両側)を足の甲側から一体的にサポートする第2締め付け部としての踵側サポート24と、踵側サポート24から足甲部10と足底部11との境界に沿って、爪先側サポート23を介して筒状部16と先端部17との切替え位置まで延びる線状部としてのサイドサポート25と、筒状部16においてサイドサポート25から爪側部20および指底部21の両側に鉤状に屈曲する屈曲部としての指サポート26とを有している。
【0033】
爪先側サポート23は、たとえば、フート部7と爪先部8との切替え位置をなすコースから踵側へ向かう方向に15〜40コース分の編み組織により編成されており、フート部7の開口12の爪先側縁部を区画している。
踵側サポート24は、たとえば、レッグ部5側の部分がレッグ部5と踵部6との切替え位置をなすコースから口ゴム部4へ向かう方向に20〜40コース分の編み組織により編成されている。一方、フート部7側の部分がフート部7と踵部6との切替え位置をなすコースから爪先部8へ向かう方向に20〜40コース分の編み組織により編成されている。また、踵側サポート24のフート側部分は、その足甲部10に編成された箇所が、フート部7の開口12の踵側縁部を区画し、メッシュ編みにより編成されたメッシュ部27となっている。
【0034】
サイドサポート25は、フート部7の開口12の足の内側縁部を区画しており、たとえば、足甲部10と足底部11との境界をなすウェール(爪側部20と指底部21との境界をなすウェール)から足の甲側および足底側の両側に向かう方向に4〜16ウェール分ずつの一定幅の編み組織により編成されている。
指サポート26は、爪側部の部分28が、筒状部16と先端部17との切替え位置をなすコースから踵側へ向かう方向に8〜20コース分、かつ、内側ゴアライン18の基端から外側ゴアライン19へ向かう方向に30〜45ウェール分の一定幅の編み組織により編成されている。一方、指底部の部分29が、筒状部16と先端部17との切替え位置をなすコースから踵側へ向かう方向に40〜55コース分、かつ、内側ゴアライン18の基端から外側ゴアライン19の基端まで、つまり、筒状部16の指底部21のウェール数に相当するウェール分の一定幅の編み組織により編成されている。指底部の部分29のウェール数よりも爪側部の部分28のウェール数が少なくされることにより、指サポート26には、爪側部20における足の外側端部において、5〜15ウェール分の隙間30が設けられている。この隙間30部分は、ベース部2の編み組織として編成されている。
【0035】
また、親指部13において、中間部15に近い側の端部のコース数Aは、サイドサポート25の中間部15に近い側の端部のコース数Bよりも多く、たとえば、A/B=2/1程度とされている。これにより、中間部15に対する親指部13の傾斜角を大きくすることができる。そのため、着用者の足の親指に対して、足の内側(人差し指(第2指)から離れる側)に向く方向に、より大きな力を加えることができる。
【0036】
弾性部3が上記のように靴下1の編み組織の一部として選択的に形成されることにより、この靴下1では、非着用状態において、サイドサポート25および指サポート26が元の形状に縮むことにより、親指部13の足の内側側面が踵側に引っ張られて、親指部13が中間部15から離れる方向に曲がっている。
次に、図8〜図12を参照して、靴下1の着用状態を説明するとともに、この靴下1を履いたときの効果を説明する。
【0037】
図8〜図10は、図1〜図6に示す靴下1の着用状態を示す図であって、図8が正面から見た図、図9が右斜め上方から見た図、図10が左斜め上方から見た図である。また、図11は、着用状態における爪先部8の拡大図であって、親指部13の爪側編み組織を省略して示す図である。図12は、着用状態における爪先部8の拡大図であって、親指部13の爪側編み組織を透視して示す図である。
【0038】
まず、図8〜図10を参照して、着用者がこの靴下1を履いたときには、靴下1の爪先側サポート23が、その弾性力により着用者の足の拇趾球および小趾球を含む爪先付近に固定される。また、靴下1の踵側サポート24が足首および土踏まずを締め付けることにより、踵部6が踵を覆うように固定される。
そして、サイドサポート25は、爪先側サポート23および踵側サポート24とのそれぞれの交点を支点として着用者の足の親指の形状に沿って伸びることにより、親指から拇趾球にかけて足の側面に接することになる。また、サイドサポート25から屈曲する指サポート26も親指の形状に沿って伸び、親指に爪側および指底側の両側から接することとなる。
【0039】
これにより、2つの支点で固定されたサイドサポート25が非着用状態の形状に戻ろうとする力(図10の白抜き矢印X参照)が踵側へ働き、その力を利用して、着用者の足の親指を収容する親指部13の側面に対して、踵側へ引っ張る力を加えることができる。その結果、親指部13に対して中間部15から離れる方向の力が加わるので、着用者の足の親指に対して足の内側(人差し指(第2指)から離れる側)に向く方向の力(図8〜図10の白抜き矢印Y参照)を加えることができる。さらに、指サポート26が非着用状態の形状に戻ろうとする力により、親指に対して中間部15から離れる方向の力が直接加わる。
【0040】
また、爪先側サポート23および踵側サポート24による締め付けにより、サイドサポート25が親指部13を引っ張る際の支点が2点固定されるので、サイドサポート25が足の側面に対してずれることを抑制できる。そのため、親指部13に対して力を良好に伝えることができる。
さらに、親指部13を区画する編み生地を着用者の足の親指に直接引っ掛けることにより、当該親指を外側に引っ張るので、足の中足関節およびリスフラン関節を締め付けることにより足の親指を外側に向けようとする場合よりも、大きな力を親指に加えることができる。
【0041】
これらの結果、この靴下1によれば、着用者の足の親指に対して人差し指(第2指)から離れる側に向く方向の力を十分加えることができる。よって、外反母趾対策に適した靴下を提供することができる。
また、この靴下1は、ベース部2および弾性部3が連続して編成された編み組織からなるので、着用者は、口ゴム部4を介して爪先部8まで足を挿入することにより、簡単に履くことができる。よって、着用時の手間が少なくて済む。
【0042】
また、フート部7の足甲部10に、爪先側サポート23、サイドサポート25および踵側サポート24により区画される開口12が形成されているので、これらのサポートに区画される領域に編み組織が形成されている場合よりも、爪先側サポート23、サイドサポート25および踵側サポート24それぞれの弾性力の分散を抑制することができる。その結果、爪先側サポート23および踵側サポート24を良好に固定できるとともに、サイドサポート25の弾性力を、親指部13に対して効率よく伝えることができる。また、着用者の足の甲と足底との間に適当な温度差を発生させることができるので、着用後の快適性にも優れる。
【0043】
また、開口12の踵側縁部を区画する踵側サポート24のフート側部分が、メッシュ編みにより編成されたメッシュ部27となっている。つまり、歩行時に曲げ伸ばし動作が頻繁に行なわれ、踵側サポート24による締め度合が大きくなりやすい足首付近の編み組織をメッシュ編みにすることにより、当該箇所における痒みの発生などを抑制することができる。
【0044】
次いで、図11を参照して、この靴下1では、親指部13が人差し指(第2指)から離れる方向に引っ張られるので、親指部13における人差し指から遠い側の端部の生地が着用後にだぶつきやすい。具体的には、内側ゴアライン18とゴアライン19の長さが同じであると、図11の二点鎖線で示されるように、親指部13の先端部17の形状が、人差し指から遠い側においても略曲線で画成されて、人差し指に近い側とほぼ同じ膨らみ度合になり、生地のだぶつきが生じやすい。しかしながら、この靴下1では、親指部13の先端部17の形状が、人差し指から遠い側において略直線で画成されていることにより、先端部17において、人差し指に近い側に比べて遠い側の膨らみ度合が小さくなっている。これにより、人差し指から遠い側における生地のだぶつきを抑えることができる。
【0045】
また、図12を参照して、指サポート26には、爪側部20における足の外側端部に、ベース部2の編み組織からなる隙間30が設けられている。そのため、着用時、足の親指の爪溝31はベース部2の編み組織により押圧され、弾性部3のように押圧力の強い編み組織により押圧されることがない。よって、爪の痛みなどの発生を防止することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、スニーカーソックスを一例として採り上げたが、本発明は、たとえば、ひざ下丈のハイソックス、ひざ上丈のオーバーザニーソックス、太もも丈のストッキング、腰丈のタイツ、さらには、図13に示すように、爪先部8、フート部7および口ゴム部4のみを有するつま先ソックス32など、各種レッグウェアに適用することができる。
【0047】
また、前述の実施形態では、ベース部2および弾性部3の編み組織は、いずれも平編みにより編成されているとしたが、たとえば、パール編み、リブ編み、タック編みなど、各種編成方法により編成することができる。
また、靴下1における地面との接地面に樹脂(たとえば、シリコン樹脂)を接着することにより、滑り止めを形成してもよい。たとえば、親指部13の裏面、小指部14の裏面、フート部7における拇趾球および小趾球を覆う箇所、および踵部6の裏面のそれぞれに、点状の滑り止めを形成することができる。
【0048】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 靴下
3 弾性部
5 レッグ部
6 踵部
7 フート部
8 爪先部
10 足甲部
11 足底部
13 親指部
14 小指部
15 中間部
20 爪側部
21 指底部
22 開口部
23 爪先側サポート
24 踵側サポート
26 指サポート
27 メッシュ部
28 爪側部の部分
29 指底部の部分
30 隙間
32 つま先ソックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性糸を用いて編成された伸縮性の高い弾性部を選択的に有する連続した編み組織からなるレッグウェアであって、
足の親指が挿入される第1挿入部、および親指以外の他の足の指が挿入される第2挿入部を有し、前記第1挿入部が前記第2挿入部から独立して袋状に形成された爪先部と、
前記爪先部の後端と連続して編成されたフート部とを含み、
前記弾性部は、
編地のコースに沿って環状に形成され、着用状態において足の甲および足底を締め付ける第1締め付け部と、
前記第1挿入部および前記第1締め付け部に跨るように線状に形成され、着用状態において親指から拇趾球にかけて足の側面に接する線状部とを含み、
前記第1挿入部は、
着用状態においては、前記線状部が着用者の親指の側面の形状に沿って伸びることにより、当該親指の付け根から先端に向かう方向に延出しており、
非着用状態においては、前記線状部が元の形状まで縮むことにより、前記第2挿入部側とは反対側の側面が前記第1締め付け部側に引っ張られて、前記第2挿入部から離れる方向に曲がっている、レッグウェア。
【請求項2】
フート部の後端と連続して編成された踵部と、
前記踵部の上端と連続して編成されたレッグ部とをさらに含み、
前記弾性部は、編地のコースに沿って環状に形成され、着用状態において足の甲からアキレス腱側および土踏まず側の2方向に編地のコースに沿って回りこむ第2締め付け部をさらに含み、
前記線状部は、前記第1締め付け部および前記第2締め付け部に跨る部分を有している、請求項1に記載のレッグウェア。
【請求項3】
前記フート部の足の甲側には、少なくとも前記第1締め付け部、前記線状部および前記第2締め付け部により区画された開口が形成されている、請求項2に記載のレッグウェア。
【請求項4】
前記第2締め付け部は、前記開口の周縁部に沿ってメッシュ編みにより編成されたメッシュ部を有する、請求項3に記載のレッグウェア。
【請求項5】
前記弾性部は、前記第1挿入部における親指の爪側の部分および親指の底側の部分に選択的に形成され、前記線状部から前記第2挿入部に近づく方向に屈曲する屈曲部をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のレッグウェア。
【請求項6】
前記屈曲部には、前記第1挿入部における前記第2挿入部に近い側の端部において、前記爪側の部分と前記底側の部分との間に隙間が設けられている、請求項5に記載のレッグウェア。
【請求項7】
前記第2挿入部は、着用状態において、足の小指を覆う袋部と、当該袋部から独立して形成され、足の小指以外の他の足の指の先端部を露出させるための開口部とを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のレッグウェア。
【請求項8】
前記第1挿入部における前記第2挿入部に近い側の端部のコース数が、前記第2挿入部から遠い側の端部のコース数よりも多い、請求項1〜7のいずれか一項に記載のレッグウェア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−34718(P2012−34718A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174639(P2010−174639)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(510203108)
【Fターム(参考)】