レンジフード消火装置
【課題】天ぷら火災に対し周囲に油を飛散させることなく少ない量の消火薬剤で確実に消火可能とする。
【解決手段】 レンジフード消火装置1は、ガスレンジのバーナーに相対したレンジフードの位置に装着される消火薬液4を収納した容器本体2と、容器本体2に装着され、所定温度に加熱された際に作動して消火薬液4を自然流下させる感熱ヘッドとを備える。感熱ヘッド3は可溶部材9が溶解した際に、段付穴6を開口して連通棒7を鍔部7bが段付穴大径部に当接する位置に落下させ、封止部材11で閉鎖している空気導入穴10を開口すると同時に、鍔部7bの流出穴8を通してノズル5から消火薬液4を自然流下させる。
【解決手段】 レンジフード消火装置1は、ガスレンジのバーナーに相対したレンジフードの位置に装着される消火薬液4を収納した容器本体2と、容器本体2に装着され、所定温度に加熱された際に作動して消火薬液4を自然流下させる感熱ヘッドとを備える。感熱ヘッド3は可溶部材9が溶解した際に、段付穴6を開口して連通棒7を鍔部7bが段付穴大径部に当接する位置に落下させ、封止部材11で閉鎖している空気導入穴10を開口すると同時に、鍔部7bの流出穴8を通してノズル5から消火薬液4を自然流下させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジフードに装着されてガスレンジにかけた天ぷら鍋などの油火災を消火するレンジフード消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅用のレンジフード消火装置としては、蓄圧型と加圧型が主流である。蓄圧型のレンジフード消火装置は、容器内に消火薬剤と共に窒素等の不活性ガスを予め充填し、一定の圧力に加圧しておき、火災感知部の作動によってノズルから消火薬剤を加圧放出する。また加圧型のレンジフード消火装置は、小型の圧力容器(ボンベ)に窒素ガス等の不活性ガスを充填し、火災感知部の作動によって圧力容器の封板が破れ、別の容器内に無加圧で充填されていた消火薬剤を加圧して放出する。
【0003】
これらのレンジフード消火装置は、いずれも圧力により消火薬剤を放出しているため、作動した際に、ノズルから天ぷら鍋を含む広範囲に勢いよく噴霧状態で消火薬剤が放出される。
【0004】
一方、消火剤を収納した容器の両端をワイヤによりレンジフードの下部に吊るしておき、天ぷら火災による熱もしくは炎によって容器自体を溶融させ、これにより容器内の消火剤を天ぷら鍋に落下させて消火するようにしている。
【特許文献1】特開平5−337212号
【特許文献2】特開平10―127803号
【特許文献3】特開2002−306624号
【特許文献4】特許第3127411号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のレンジフード消火装置にあっては、次の問題がある。まず従来の圧力により消火薬剤を放出するレンジフード消火装置にあっては、
第一に、消火薬剤が広範囲に放出され、台所を汚し、後始末が大変となること、
第二に、高温の油が飛び散るため、近くに人がいた場合に危険であること、
第三に、充填した消火薬剤は鍋以外にも放出されるため、天ぷら火災を消火するのに必要な量に、安全率を掛けた量が保持することが必要となること、
第四に、消火薬剤の量が多くなるために容器の大きさが大きくなること、
第五に、内部圧力がかかるため、所定の耐圧性能を有する容器を使用する必要があること、
などの問題があった。
【0006】
また容器自体が溶解して内部の消火剤を放出するレンジフード消火装置は、紐で吊るした容器が炎の熱により溶解することで消火剤を落下させているため、容器の溶解する位置は構造上限定されず、天ぷら鍋の中に確実に消火薬剤が注入される保証がない。また容器が熱で溶ける際に一度に大量の消火薬剤が天ぷら鍋に落下するために、高温の油が周辺に大きく飛び散り、近傍の人に対する安全上の問題がある。更に高温で燃焼している天ぷら油の中に消火薬剤を投入した場合に、炎が大きくなり、爆燃の状態を起こす可能性もある。
【0007】
本発明は、天ぷら火災に対し周囲に油を飛散させることなく少ない量の消火薬剤で確実に消火できるレンジフード消火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、レンジフード消火装置において、ガスレンジのバーナーに相対したレンジフードの位置に装着される消火薬液を無加圧状態で収納した容器本体と、容器本体に装着され、所定温度に加熱された際に作動して消火薬液を自然流下させる感熱ヘッドと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、容器本体に、感熱ヘッドの作動に伴って容器内を外気に連通する通気部を設ける。また容器本体に、感熱ヘッドの作動に伴って作動検出信号を外部に出力する警報スイッチを設けても良い。
【0010】
本発明のレンジフード消火装置の感熱ヘッドの第一形態として、感熱ヘッドは、
容器本体の底部に装着され、開口穴を備えたノズルと、
ノズルの開口穴を閉鎖し、所定温度に加熱された際に溶融する可溶部材と、
容器内部に前記可溶部材が溶解した際に連動して下降する連動棒と、
容器上部に開口した空気導入穴を内側から閉鎖する封止部材と、
を備え、可溶部材が溶解した際に、開口穴を開口して連通棒を落下させ、封止部材を下降させて空気導入穴を開口すると同時に、ノズルから消火薬液を自然流下させる。
【0011】
本発明のレンジフード消火装置における感熱ヘッドの第二形態として、感熱ヘッドは、
容器本体の底部に装着され、開口穴を備えたノズルと、
容器本体内に収納されたチェーンと、
ノズルの開口穴を閉鎖する可溶部材と、
を備え、可溶部材が溶解した際に、開口穴を開放すると共にチェーンを開口穴から落下させ、チェーンに沿って消火薬液を自然流下させる。
【0012】
本発明のレンジフード消火装置における感熱ヘッドの第三形態として、感熱ヘッドは、
容器本体の底部に装着され、開口穴を備えたノズルと、
容器本体内に収納されたチェーンに連結される連通棒と、
連通棒に載置され、連通棒を押下げ荷重を付与する錘部材と、
ノズルの開口穴を閉鎖する可溶部材と、
を備え、可溶部材が溶解した際に、開口穴を開放すると共に開口穴に錘部材を残して連通棒をチェーンと共に落下させ、チェーンに沿って消火薬液を自然流下させる。
【0013】
本発明の感熱ヘッドの第二形態と第三形態につき、ノズルに、下端を可溶部材で閉鎖し上端を容器本体内に開口し、可溶部材の溶解時に容器本体内を外気に連通させる通気パイプを設ける。
【0014】
本発明のレンジフード消火装置における感熱ヘッドの第四形態として、感熱ヘッドは、
容器本体の底部に装着され、開口穴を封止板で閉鎖したノズルと、
ノズルよりも容器本体の上方に配置した通し穴を備えたホルダ部材と、
ホルダ部材の通し穴に摺動自在に挿入され、下端にノズルの封止板を破るカッターを形成すると共に上端をホルダ部材を貫通して外部に取り出した作動軸と、
作動軸の上端に熱感知板を固着し、所定温度で溶融する可溶部材と、
作動軸をヘッドの封止板の方向に付勢するバネ部材と、
備え、可溶部材が溶融した際に、熱感知板を作動軸から離脱させると同時に、バネ部材の力により作動軸を下方に駆動して先端のカッター部により封止板を破って消火薬液をヘッドから自然流下させる。
【0015】
本発明のレンジフード消火装置における感熱ヘッドの第五形態として、感熱ヘッドは、
容器本体の底部に装着され、開口穴を形成したノズルと、
ノズルよりも前記容器本体の上方に配置した通し穴を備えたホルダ部材と、
ホルダ部材の通し穴に摺動自在に挿入され、下端に前記ヘッドの開口穴を閉鎖するバルブシートを設ける共に上部をホルダ部材を貫通して外部に取り出した容器内に連通する作動軸と、
作動軸の上端に熱感知板を固着し、所定温度で溶融する可溶部材と、
バルブシートを開放する方向に作動軸を付勢するバネ部材と、
備え、可溶部材が溶融した際に、熱感知板を作動軸から離脱させると同時に、バネ部材の力により作動軸を上方に駆動してバルブシートによる開口穴の閉鎖を解除してヘッドから消火薬液を自然流下させる。
【0016】
ここで本発明のレンジフード消火装置における感熱ヘッドの第四形態および第五形態について、作動軸は中空穴を備え、可溶部材が溶解した際に、作動軸の中空穴を介して容器内を外気に連通させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、消火薬液を無加圧として天ぷら火災の際に自由落下により天ぷら鍋に流し込むことにより、油が大きく飛び散ることを防止し、また人への危険性も確実に回避できる。
【0018】
また感熱ヘッドのノズル穴をレンジのバーナーに乗せた鍋の直上に位置するように調整してレンジフードに設置することで、放出位置が特定されるため、確実に消火薬液を天ぷら鍋に流し込むことができる。
【0019】
また無加圧でしかも直上からの自然流出による消火薬液の放出となるため、消火薬液は100パーセント天ぷら鍋に投入され、このため消火薬剤の飛散による損失を考慮する必要がなく、消火薬液の貯蔵量を減らすことができ、容器の軽量化と小型化が可能となる。
【0020】
また消火薬液は、静かにしかも少量ずつの天ぷら鍋に投入されるため、爆燃現象や炎の瞬間的な燃え上がりが防止できる。
【0021】
また感熱ヘッドの作動に連動したスイッチの作動で簡単に外部に対し警報信号を発することにもできる。
【0022】
また無加圧としたことで、蓄圧ガス等の漏れによる機能の消滅や低下というリスクが無くなり、ガス圧力のチェックが不要で圧力計も不要であり、更に定期点検やメンテナンスも不要になり、常に安定した消火性能を維持した装置を供給できる。
【0023】
また高圧ガスの取扱いに配慮する必要が無くなり、一般消費者に対して安全の維持と確保が容易になる。
【0024】
更に、容器本体の上部に感熱ヘッドの熱感知板を配置する構造とした場合には、容器本体の下部に熱感知板を配置した場合の器具等を当てて消火装置の誤作動や故障の原因となる問題を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明によるレンジフード消火装置の第1実施形態の説明図である。図1において、本発明のレンジフード消火装置1は、レンジフードに取り付けられる容器本体2の下部に感知ヘッド3を装着している。容器本体2は耐熱性のプラスチック材料で形成されており、内部に無加圧状態で消火薬液4を貯蔵している。
【0026】
感知ヘッド3は容器本体2の下部にノズル5を固着しており、ノズル5は下方に開口した段付穴6を備えている。ノズル5の段付穴6には、連通棒7の下部7aが位置した状態で、天ぷら火災による所定温度で溶融する易融性金属を用いた可溶部材9により固定されている。連通棒7は消火薬液4を貯蔵した容器本体2に収納されており、途中に鍔部7bを形成している。連通棒7の鍔部7bの内周側には流出穴8が複数開口されている。
【0027】
ノズル5に相対した容器本体2の上部には空気導入穴10が開口されている。空気導入穴10の内側には封止部材11が配置され、連通棒7の鍔部7bと容器本体2の内側に形成したバネ受け13との間に設けたコイルバネ12の押圧により、空気導入穴10を閉鎖している。この空気導入穴10とコイルバネ12により押圧された封止部材11により通気部が構成される。コイルバネ12は同時に、可溶部材9によりノズル5の段付穴6に固着された連通棒7を下方に押圧している。
【0028】
更に、空気導入穴10を封止する封止部材11に対しては、容器本体2の外部に設けた警報スイッチ14が配置されており、この状態で警報スイッチ14は、スイッチノブを封止部材11により押し込まれ、スイッチオフの状態となっている。
【0029】
図2は図1のレンジフード消火装置の天ぷら火災による作動状態の説明図である。図1のレンジフード消火装置1は、例えば図3(A)のようにレンジフード15に取り付けて使用している。レンジフード15に対する本発明のレンジフード消火装置1の取付位置は、ガスレンジ16のバーナー17に相対したレンジフード15の位置に取り付ける。このためバーナー17に例えば天ぷら鍋18を乗せて調理を行った場合、天ぷら鍋18の直上に本発明のレンジフード消火装置1に設けている感熱ヘッド3が位置することになる。
【0030】
図3(A)のような使用状態で、図3(B)のように天ぷら鍋18の油が加熱して着火し、炎が上がったとすると、天ぷら鍋18の火災による炎及び熱を受けてレンジフード消火装置1の感熱ヘッド3が作動する。
【0031】
レンジフード消火装置1の作動状態は、図1におけるノズル5の下部を閉鎖している可溶部材9が、天ぷら火災による熱を受けて溶ける。可溶部材9が溶けると、図2に示すように、連通棒7の支えがなくなることで、連通棒7は落下して鍔部7bが段付穴6の段部6aに当接し、この連通棒7の落下に伴い、コイルバネ12で押圧していた封止部材11も落下し、空気導入穴10を開く。また、封止部材11の落下で警報スイッチ14のスイッチノブの押込みが解除され、警報スイッチ14がオンすることで外部に警報信号を出力することができる。
【0032】
可溶部材9の溶け出しで落下した連通棒7は、鍔部7bが段付穴6の段部6aに当接し、この状態で、容器本体2内に貯蔵している消火薬液4は、鍔部7bに開口している流出穴8を通って下方に向けて自然に流出される。消火薬剤4aの一部は連通棒7の下部7aを伝わって下方に落下する。
【0033】
このため図3(B)のように、感熱ヘッド3の作動によりレンジフード消火装置1から消火薬液4が火災を起こしている天ぷら鍋18上に筋状に垂れ落ちながら流れ込み、火災を起こしている油との化学反応により油をゲル状に固形化し、火災を消火することができる。
【0034】
感熱ヘッド3が作動した際のレンジフード消火装置1から自然に流れ落ちる消火薬液4は極めて静かに火災を起こしている天ぷら鍋18の中に流れ落ち、消火薬液4の自然流下によって、火災を起こしている天ぷら鍋18の油が周囲に飛び散るようなことは一切起きない。
【0035】
また、レンジフード消火装置1の感熱ヘッド3は、ガスレンジ16のバーナー17に相対した位置に配置されており、バーナー17に乗せた天ぷら鍋18に対し正確に位置決めされているため、感熱ヘッド3の作動で流出した消火薬液4は正確に、火災を起こしている天ぷら鍋18に注入され、容器本体2に貯蔵している消火薬液4を全て火災を起こしている天ぷら鍋18に投入して100%の消火効率を実現できる。
【0036】
更に、火災を起こしている天ぷら鍋18に従来のように消火薬液を投入した場合、爆燃現象や炎が大きく燃え上がる危険な状態を起こしているが、本発明にあっては、感熱ヘッド3の作動で消火薬液4は自然流下により細い筋となって火災を起こしている天ぷら鍋18に流れ落ちて投入されるため、消火薬液4の投入により火災を起こしている天ぷら鍋18が爆燃現象を起こしたり、炎が大きく燃え上がるような事態を確実に防止できる。
【0037】
ここで本願発明者らの実験によれば、感熱ヘッド3が作動した際に消火薬液4を自然落下により注入する流出穴8の開口面積としては、その合計面積を例えば直径数ミリメートル程度とすることで、良好な、油の飛び散りのない消火性能が確認されている。
【0038】
また、容器本体2に貯蔵している消火薬液4の貯蔵量としては、火災時に、消火薬液4の全量が火災を起こしている天ぷら鍋18に自然流下により投入できるため、通常、天ぷら鍋18での調理に使用する油の使用量に見合った消火薬液4の量でよく、消火薬液4の投入時における周囲への飛散による不足分を考慮する必要がないため、消火薬液4の貯蔵量を少なくし、結果として容器本体2の体積及びサイズを小さくすることができる。これによって、レンジフード消火装置1自体の小型軽量化が図られ、レンジフード5に対する取付けが簡単にできることになる。
【0039】
なお、図1においては、可溶部材9自体が連通棒7を固着しているが、これに限らず、可溶部材9が溶融したときに連通棒7が落下する構成であれば良い。連通棒7と封止部材11は一体で形成してあっても良い。
【0040】
図4は本発明によるレンジフード消火装置の第2実施形態の説明図であり、この実施形態にあっては、天ぷら火災による作動時に、ヘッドから火災を起こしている天ぷら鍋にチェーンを下ろし、チェーンに沿って消火薬液4を自然流下により天ぷら鍋に投入するようにしたことを特徴とする。
【0041】
図4において、レンジフード消火装置1の容器ほんたい2の下部にはノズル5が固着され、段付穴6の開口部を可溶部材9で閉鎖し、同時に可溶部材9で内部に収納した連通棒7の下部7aを固着している。連通棒7の上部7cには、容器本体2の上部に形成したチェーン収納部22に一端を固定して収納したチェーン21の先端が連結されている。
【0042】
連通棒7の中間に形成した鍔部7bにはリテーナ23が装着され、リテーナ23と容器本体2の上部内壁に形成したバネ受け13との間に、コイルバネ12を配置し、連通棒7を下方に押圧している。
【0043】
このようなチェーン21を使用した図4の実施形態にあっては、レンジフードに取り付けた使用状態で、天ぷら火災による炎や熱を受けて可溶部材9が溶けると、コイルバネ12の力でリテーナ23を介して連通棒7が段付穴6から押し出され、リテーナ23は段部6aに当接して止まるが、連通棒7はノズル5からチェーン21を引き出しながら落下し、火災を起こしている天ぷら鍋に入る。落下したチェーン21は後端部に設けた径の大きい止め輪が容器本体2に引っ掛かって吊るされる。
【0044】
このためノズル5の開口した段付穴6からの消火薬液4は、段部6aに当接したリテーナ23の通し穴から、更に、連通棒7を吊り下げているチェーン21に沿って、火災を起こしている天ぷら鍋の中に、自然流下により滑らかに流れ込むことになる。
【0045】
また図4の実施形態にあっては、容器本体2の上部に図1の実施形態のような空気導入口を設けていないが、可溶部材9の溶け出しにより下部に十分なサイズの段付穴6が開口され、且つ吊り下げられたチェーン21を通って消火薬液4が流れ出すため、上部に空気穴がなくても滑らかに容器本体2の中から消火薬液4を、自然流下により火災を起こしている天ぷら鍋に投入することができる。
【0046】
また消火薬液4は、連通棒7を吊り下げているチェーン21に沿って流れ落ちるため、途中で周囲に飛散するようなことはなく、消火薬液4を投入する際の飛散を、より確実に防止することができる。なお図4の実施形態で使用するチェーン21としては、金属製のビーズチェーンなどを使用することが望ましいが、天ぷら油や炎で溶けない耐熱性のある材質であれば良い。また、チェーン21の長さは、連通棒7が天ぷら鍋の直上で止まるようにしても良く、この場合は連通棒7が天ぷら鍋に入らないため、油が飛び散ることがない。
【0047】
図5は本発明によるレンジフード消火装置の第3実施形態の説明図であり、この第3実施形態にあっては、図4の第2実施形態について、更に、通気パイプを設けるようにしたことを特徴とする。
【0048】
図5において、レンジフード消火装置1における容器本体2に設けた感熱ヘッド3の構造は図4の第2実施形態と同じであり、更に通気パイプ24を設けている。通気パイプ24を設けるため、図5の実施形態にあっては、ノズル5の下部をフラットとして下面にリング状の凹部を形成しており、この下端凹部に通気パイプ24の下部を位置させて開口している。通気パイプ24の上部は、容器本体2の上端の消火薬液4の貯蔵状態で空洞となる部分に開口している。
【0049】
この図5の第3実施形態にあっては、天ぷら火災による炎や熱を受けて可溶部材9が溶け落ちると、連通棒7がチェーン21を引き出しながら落下し、同時に可溶部材9が溶け落ちることで通気パイプ24の下端が開口し、通気パイプ24によって容器本体2の上部の中空部が外部に連通し、消火薬液4を、開口した段付穴6、具体的には段部6aに当接したリテーナ23の通し穴を通して自然流下させることができる。
【0050】
なお、連通棒7はチェーン21を下方へ引き出すものであれば良く、形状は限定されない。望ましくは、連通棒7が消火薬液4を消火対象物へ導く形状が良い。
【0051】
図6は本発明によるレンジフード消火装置の第4実施形態の説明図である。図6の第4実施形態にあっては、図4の第3実施形態で使用している連通棒7を押し下げるコイルスプリング12を廃止し、その代わりに錘部材25を用いたことを特徴とする。
【0052】
容器本体2の下部に設けられた感熱ヘッド3におけるノズル5は、段付穴6の開口部を可溶部材9で閉鎖すると同時に、連通棒7の下部7aを固着している。連通棒7は鍔部7bを中間に有し、この鍔部7bの上部に通し穴を備えた錘部材25を装着し、上部7cにはチェーン収納部22から引き出したチェーン21の先端を連結している。
【0053】
この図6の第4実施形態にあっては、天ぷら火災による炎や熱を受けて可溶部材9が溶け落ちると、錘部材25の重量により連通棒7が下方に落下し、チェーン21を引っ張りながら、火災を起こしている天ぷら鍋に落ち込むことになる。錘部材23は段付穴6の段部に当接し、錘部材25の通し穴を通り且つチェーン21に沿って容器本体2内の消火薬液4を自然流下により、火災を起こしている天ぷら鍋に流し落とすことになる。
【0054】
このように錘部材25を用いて連通棒7を押圧することで、コイルバネを使用した場合に比べ感熱ヘッド3の構造を簡単にすることができる。
【0055】
図7は本発明によるレンジフード消火装置の第5実施形態の説明図であり、この第5実施形態にあっては、図6の第4実施形態について、更に、通気パイプを設けるようにしたことを特徴とする。
【0056】
図7において、レンジフード消火装置1における容器本体2に設けた感熱ヘッド3の構造は図6の第4実施形態と同じであり、更に通気パイプ24を設けている。通気パイプ24を設けるため、図7の実施形態にあっては、ノズル5の下部をフラットとして下面にリング状の凹部を形成しており、この下端凹部に通気パイプ24の下部を位置させて開口している。通気パイプ24の上部は、容器本体2の上端の消火薬液4の貯蔵状態で空洞となる部分に開口している。
【0057】
この図7の第5実施形態にあっては、天ぷら火災による炎や熱を受けて可溶部材9が溶け落ちると、連通棒7がチェーン21を引き出しながら落下し、同時に可溶部材9が溶け落ちることで通気パイプ24の下端が開口し、通気パイプ24によって容器本体2の上部の中空部が外部に連通し、消火薬液4を、開口した段付穴6、具体的には段部6aに当接したリテーナ23の通し穴を通して自然流下させることができる。
【0058】
図8は本発明によるレンジフード消火装置の第6実施形態の説明図であり、この第6実施形態にあっては、感熱ヘッド3における熱感知板を容器本体2の上部に設けるようにしたことを特徴とする。
【0059】
図8において、レンジフード消火装置1の容器本体2の下部には、流出穴27aを備えた取付ベース27が溶接などにより固定されており、取付ベース27の下部開口のネジ部に対し両側をパッキング29で挟んだ封止板28をノズル26の流出穴26aに対するネジ込みで閉鎖固定している。
【0060】
一方、ノズル26に相対した容器本体2の上部には取付ネジ穴を備えた取付ベース33が溶接などにより固定され、取付ベース33に対しホルダー34をネジ込み固定している。ホルダー34に対しては作動軸30がOリング35を通して摺動自在に組み込まれている。作動軸30は中空穴43を備えた中空軸であり、下部先端を斜めに切ることでカッター31を形成し、カッター31に続いて外周部を切り欠いたスリット32を形成している。
【0061】
スリット32の上部には止め輪41が固定され、その上部に平ワッシャー42を設けており、平ワッシャ−42とホルダー34との間にコイルバネ40を組み込んでいる。ホルダー34から上部に取り出した作動軸30の先端には熱感知板36が配置され、熱感知板36は可溶部材37により作動軸30の上端に固定されている。
【0062】
熱感知板36とホルダー34との間にはコイルバネ38が組み込まれ、熱感知板36を上方に押圧している。熱感知板36はチェーン39により容器本体2に連結されて脱落を防止している。更に作動軸30のホルダー34内におけるOリング35の下側の位置には、空気導入穴44が開口されている。
【0063】
なお、コイルバネ38は熱感知板36を分解方向に付勢する第1バネ部材として機能し、またコイルバネ40は作動軸30を封止板28の方向に付勢する第2バネ部材として機能する。
【0064】
図9は図8のレンジフード消火装置の天ぷら火災による作動状態の説明図である。
【0065】
図8のレンジフード消火装置1の取付状態において、天ぷら火災による炎や熱を受けて、容器本体2の上部に配置している熱感知板36が加熱され、可溶部材37が所定の溶解温度に達すると溶け、熱感知板36はコイルバネ38のバネ力で飛散し、中空穴43が外気に開放されると同時に、作動軸30の上端の支持が解除される。
【0066】
このため作動軸30はコイルバネ40の力で図9に示すように下方に押し出され、先端に形成したカッター31がノズル26の封止板28を突き破る。このため封止板28に穴が開き、容器本体2内の消火薬液4は作動軸30のスリット32を通って先端のカッター31の部分から下方に自然流下により流出される。
【0067】
また、このとき作動軸30に形成した空気導入穴44が容器本体2内の消火薬液4の上部空洞に位置し、外気を導入して消火薬液4の自然流下を促す。また可溶部材37の溶解により外れた熱感知板36は、チェーン39により吊り下げられることで周囲への飛び出しが防止されている。
【0068】
ここで図8の第6実施形態にあっては、容器本体2の上部に熱感知板36を設けているため、レンジフードに取り付けた際に容器本体2の下側に対する熱感知板36の取付部分の飛び出しが抑えられ、下側に飛び出した熱感知板36に器具等が当たって破損したり誤作動することを確実に防止できる。
【0069】
また、熱感知板36を容器本体2の上部に設けていた場合、天ぷら火災による熱はレンジフードの下面に当たって効率よく熱感知板36を加熱することができ、天ぷら火災に対する加熱効率は容器本体2の下部に設けている場合と同等もしくはそれ以上とすることができる。
【0070】
なお、図8の作動軸30が封止板28を開けた際に、図4に示すようなチェーン及び連通棒がバーナの方へ落下して消火を行うようにしても良い。
【0071】
図10は本発明によるレンジフード消火装置の第7実施形態の説明図であり、この第7実施形態にあっては、図8の第6実施形態に警報信号を出力する警報スイッチを設けたことを特徴とする。
【0072】
図10において、容器本体2の上部に設けた感熱ヘッド3における熱感知板36に対し、マイクロスイッチを用いた警報スイッチ45のスイッチレバー46を当接させ、この状態で警報スイッチ46のスイッチ接点をスイッチレバー46による押込みでオフ状態としている。それ以外の構成は図8の第6実施形態と同じである。
【0073】
このような警報スイッチ45を設けたレンジフード消火装置1にあっては、天ぷら火災による熱で可溶部材37が溶けて、コイルバネ38の力により熱感知板36が飛ばされると、図11に示すように、スイッチレバー46の押圧が解除され、スイッチノブが飛び出すことで警報スイッチ45のスイッチ接点がオンし、外部に対し警報信号を出力することができる。
【0074】
図12は本発明によるレンジフード消火装置の第8実施形態の説明図であり、図8の第6実施形態と同様、容器本体2の上部に熱感知板36を設けた場合の実施形態である。
【0075】
図12において、レンジフード消火装置1の感熱ヘッド3は、容器本体2の下部に流出穴48を形成したノズル47を溶接などにより固定しており、この流出穴48の内側にバルブシート55を介して作動軸50を配置している。
【0076】
作動軸50は中空穴52を備えた中空軸であり、容器本体2のノズル47に相対した位置に固定された取付ベース33にねじ込んだホルダー34に対し摺動自在に組み込まれている。ホルダー34は、この実施形態にあっては、上部に環状溝を備えたフランジ部37aを形成し、作動軸50の中にコイルバネ51を組み込んだ状態で上部に熱感知板36を配置し、熱感知板36を可溶部材37によりフランジ部37aに固着している。
【0077】
作動軸50は、容器本体2内の消火薬液4に浸かった位置の側面に吸気開口56を形成している。また作動軸50の途中には止め輪53が装着され、止め輪53とノズル47の内側との間にコイルバネ54を組み込んでいる。
【0078】
ここでコイルバネ51は可溶部材37で固着した熱感知板36を分解方向に付勢する第3バネ部材として機能し、またコイルバネ54は作動軸54をバルブシート55を開放する方向に付勢する第4バネ部材として機能する。
【0079】
次に図12の第8実施形態の天ぷら火災による作動を説明する。天ぷら火災による炎や熱を受けて熱感知部材36を付着している可溶部材37が溶けると、コイルバネ51の力により熱感知部材36が押し外されて図13に示すように分解し、チェーン39を介して熱感知板36は吊り下げられる。
【0080】
この熱感知板36の分解離脱に伴いコイルバネ51により作動軸50に加わる力が解除され、作動軸50はコイルバネ54により押し上げられ、バルブシート55が流出穴48から離れて流路を開く。このため容器本体2内の消火薬液4は、開放した流出穴48を通って自然に落下され、火災を起こしている天ぷら鍋に静かに注入されて消火することができる。
【0081】
なお図12の実施形態についても、図10の実施形態と同様、警報スイッチ45のスイッチレバー46を熱感知板36に対し設けることで、天ぷら火災による作動時に警報信号を外部に出力させることができる。
【0082】
また図8の感熱ヘッドは,容器本体直上配置に限らず、多少容器本体斜め上方もしくは側方に配置してあっても良く、これによりレンジフード消火装置の高さをより抑えることができる。
【0083】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明によるレンジフード消火装置の第1実施形態の説明図
【図2】図1のレンジフード消火装置の作動状態の説明図
【図3】図1のレンジフード消火装置の使用状態と天ぷら火災時の作動状態の説明図
【図4】本発明によるレンジフード消火装置の第2実施形態の説明図
【図5】本発明によるレンジフード消火装置の第3実施形態の説明図
【図6】本発明によるレンジフード消火装置の第4実施形態の説明図
【図7】本発明によるレンジフード消火装置の第5実施形態の説明図
【図8】本発明によるレンジフード消火装置の第6実施形態の説明図
【図9】図8のレンジフード装置の作動状態の説明図
【図10】本発明によるレンジフード消火装置の第7実施形態の説明図
【図11】図10のレンジフード消火装置の作動状態の説明図
【図12】本発明によるレンジフード消火装置の第8実施形態の説明図
【図13】図12のレンジフード消火装置の作動状態の説明図
【符号の説明】
【0085】
1:レンジフード消火装置
2:容器本体
3:感熱ヘッド
4:消火薬液
5,26,47:ノズル
6:段付穴
6a:段部
7:連通棒
7b:鍔部
8,26a,48:流出穴
9,37:可溶部材
10,44:空気導入穴
11:封止部材
12,38,40,51,54:コイルバネ
13:バネ受け
14,45:警報スイッチ
15:レンジフード
16:ガスレンジ
17:バーナー
18:天ぷら鍋
21,39:チェーン
22:チェーン収納部
23:リテーナ
24:通気パイプ
25:錘部材
27,33:取付ベース
28:封止板
29:パッキング
30,50:作動軸
31:カッター
32:スリット
34:ホルダー
35:Oリング
36:熱感知板
41,53:止め輪
42:平ワッシャー
43,52:中空軸
45:警報スイッチ
46:スイッチレバー
55:バルブシート
56:吸気開口
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジフードに装着されてガスレンジにかけた天ぷら鍋などの油火災を消火するレンジフード消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅用のレンジフード消火装置としては、蓄圧型と加圧型が主流である。蓄圧型のレンジフード消火装置は、容器内に消火薬剤と共に窒素等の不活性ガスを予め充填し、一定の圧力に加圧しておき、火災感知部の作動によってノズルから消火薬剤を加圧放出する。また加圧型のレンジフード消火装置は、小型の圧力容器(ボンベ)に窒素ガス等の不活性ガスを充填し、火災感知部の作動によって圧力容器の封板が破れ、別の容器内に無加圧で充填されていた消火薬剤を加圧して放出する。
【0003】
これらのレンジフード消火装置は、いずれも圧力により消火薬剤を放出しているため、作動した際に、ノズルから天ぷら鍋を含む広範囲に勢いよく噴霧状態で消火薬剤が放出される。
【0004】
一方、消火剤を収納した容器の両端をワイヤによりレンジフードの下部に吊るしておき、天ぷら火災による熱もしくは炎によって容器自体を溶融させ、これにより容器内の消火剤を天ぷら鍋に落下させて消火するようにしている。
【特許文献1】特開平5−337212号
【特許文献2】特開平10―127803号
【特許文献3】特開2002−306624号
【特許文献4】特許第3127411号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のレンジフード消火装置にあっては、次の問題がある。まず従来の圧力により消火薬剤を放出するレンジフード消火装置にあっては、
第一に、消火薬剤が広範囲に放出され、台所を汚し、後始末が大変となること、
第二に、高温の油が飛び散るため、近くに人がいた場合に危険であること、
第三に、充填した消火薬剤は鍋以外にも放出されるため、天ぷら火災を消火するのに必要な量に、安全率を掛けた量が保持することが必要となること、
第四に、消火薬剤の量が多くなるために容器の大きさが大きくなること、
第五に、内部圧力がかかるため、所定の耐圧性能を有する容器を使用する必要があること、
などの問題があった。
【0006】
また容器自体が溶解して内部の消火剤を放出するレンジフード消火装置は、紐で吊るした容器が炎の熱により溶解することで消火剤を落下させているため、容器の溶解する位置は構造上限定されず、天ぷら鍋の中に確実に消火薬剤が注入される保証がない。また容器が熱で溶ける際に一度に大量の消火薬剤が天ぷら鍋に落下するために、高温の油が周辺に大きく飛び散り、近傍の人に対する安全上の問題がある。更に高温で燃焼している天ぷら油の中に消火薬剤を投入した場合に、炎が大きくなり、爆燃の状態を起こす可能性もある。
【0007】
本発明は、天ぷら火災に対し周囲に油を飛散させることなく少ない量の消火薬剤で確実に消火できるレンジフード消火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、レンジフード消火装置において、ガスレンジのバーナーに相対したレンジフードの位置に装着される消火薬液を無加圧状態で収納した容器本体と、容器本体に装着され、所定温度に加熱された際に作動して消火薬液を自然流下させる感熱ヘッドと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、容器本体に、感熱ヘッドの作動に伴って容器内を外気に連通する通気部を設ける。また容器本体に、感熱ヘッドの作動に伴って作動検出信号を外部に出力する警報スイッチを設けても良い。
【0010】
本発明のレンジフード消火装置の感熱ヘッドの第一形態として、感熱ヘッドは、
容器本体の底部に装着され、開口穴を備えたノズルと、
ノズルの開口穴を閉鎖し、所定温度に加熱された際に溶融する可溶部材と、
容器内部に前記可溶部材が溶解した際に連動して下降する連動棒と、
容器上部に開口した空気導入穴を内側から閉鎖する封止部材と、
を備え、可溶部材が溶解した際に、開口穴を開口して連通棒を落下させ、封止部材を下降させて空気導入穴を開口すると同時に、ノズルから消火薬液を自然流下させる。
【0011】
本発明のレンジフード消火装置における感熱ヘッドの第二形態として、感熱ヘッドは、
容器本体の底部に装着され、開口穴を備えたノズルと、
容器本体内に収納されたチェーンと、
ノズルの開口穴を閉鎖する可溶部材と、
を備え、可溶部材が溶解した際に、開口穴を開放すると共にチェーンを開口穴から落下させ、チェーンに沿って消火薬液を自然流下させる。
【0012】
本発明のレンジフード消火装置における感熱ヘッドの第三形態として、感熱ヘッドは、
容器本体の底部に装着され、開口穴を備えたノズルと、
容器本体内に収納されたチェーンに連結される連通棒と、
連通棒に載置され、連通棒を押下げ荷重を付与する錘部材と、
ノズルの開口穴を閉鎖する可溶部材と、
を備え、可溶部材が溶解した際に、開口穴を開放すると共に開口穴に錘部材を残して連通棒をチェーンと共に落下させ、チェーンに沿って消火薬液を自然流下させる。
【0013】
本発明の感熱ヘッドの第二形態と第三形態につき、ノズルに、下端を可溶部材で閉鎖し上端を容器本体内に開口し、可溶部材の溶解時に容器本体内を外気に連通させる通気パイプを設ける。
【0014】
本発明のレンジフード消火装置における感熱ヘッドの第四形態として、感熱ヘッドは、
容器本体の底部に装着され、開口穴を封止板で閉鎖したノズルと、
ノズルよりも容器本体の上方に配置した通し穴を備えたホルダ部材と、
ホルダ部材の通し穴に摺動自在に挿入され、下端にノズルの封止板を破るカッターを形成すると共に上端をホルダ部材を貫通して外部に取り出した作動軸と、
作動軸の上端に熱感知板を固着し、所定温度で溶融する可溶部材と、
作動軸をヘッドの封止板の方向に付勢するバネ部材と、
備え、可溶部材が溶融した際に、熱感知板を作動軸から離脱させると同時に、バネ部材の力により作動軸を下方に駆動して先端のカッター部により封止板を破って消火薬液をヘッドから自然流下させる。
【0015】
本発明のレンジフード消火装置における感熱ヘッドの第五形態として、感熱ヘッドは、
容器本体の底部に装着され、開口穴を形成したノズルと、
ノズルよりも前記容器本体の上方に配置した通し穴を備えたホルダ部材と、
ホルダ部材の通し穴に摺動自在に挿入され、下端に前記ヘッドの開口穴を閉鎖するバルブシートを設ける共に上部をホルダ部材を貫通して外部に取り出した容器内に連通する作動軸と、
作動軸の上端に熱感知板を固着し、所定温度で溶融する可溶部材と、
バルブシートを開放する方向に作動軸を付勢するバネ部材と、
備え、可溶部材が溶融した際に、熱感知板を作動軸から離脱させると同時に、バネ部材の力により作動軸を上方に駆動してバルブシートによる開口穴の閉鎖を解除してヘッドから消火薬液を自然流下させる。
【0016】
ここで本発明のレンジフード消火装置における感熱ヘッドの第四形態および第五形態について、作動軸は中空穴を備え、可溶部材が溶解した際に、作動軸の中空穴を介して容器内を外気に連通させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、消火薬液を無加圧として天ぷら火災の際に自由落下により天ぷら鍋に流し込むことにより、油が大きく飛び散ることを防止し、また人への危険性も確実に回避できる。
【0018】
また感熱ヘッドのノズル穴をレンジのバーナーに乗せた鍋の直上に位置するように調整してレンジフードに設置することで、放出位置が特定されるため、確実に消火薬液を天ぷら鍋に流し込むことができる。
【0019】
また無加圧でしかも直上からの自然流出による消火薬液の放出となるため、消火薬液は100パーセント天ぷら鍋に投入され、このため消火薬剤の飛散による損失を考慮する必要がなく、消火薬液の貯蔵量を減らすことができ、容器の軽量化と小型化が可能となる。
【0020】
また消火薬液は、静かにしかも少量ずつの天ぷら鍋に投入されるため、爆燃現象や炎の瞬間的な燃え上がりが防止できる。
【0021】
また感熱ヘッドの作動に連動したスイッチの作動で簡単に外部に対し警報信号を発することにもできる。
【0022】
また無加圧としたことで、蓄圧ガス等の漏れによる機能の消滅や低下というリスクが無くなり、ガス圧力のチェックが不要で圧力計も不要であり、更に定期点検やメンテナンスも不要になり、常に安定した消火性能を維持した装置を供給できる。
【0023】
また高圧ガスの取扱いに配慮する必要が無くなり、一般消費者に対して安全の維持と確保が容易になる。
【0024】
更に、容器本体の上部に感熱ヘッドの熱感知板を配置する構造とした場合には、容器本体の下部に熱感知板を配置した場合の器具等を当てて消火装置の誤作動や故障の原因となる問題を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明によるレンジフード消火装置の第1実施形態の説明図である。図1において、本発明のレンジフード消火装置1は、レンジフードに取り付けられる容器本体2の下部に感知ヘッド3を装着している。容器本体2は耐熱性のプラスチック材料で形成されており、内部に無加圧状態で消火薬液4を貯蔵している。
【0026】
感知ヘッド3は容器本体2の下部にノズル5を固着しており、ノズル5は下方に開口した段付穴6を備えている。ノズル5の段付穴6には、連通棒7の下部7aが位置した状態で、天ぷら火災による所定温度で溶融する易融性金属を用いた可溶部材9により固定されている。連通棒7は消火薬液4を貯蔵した容器本体2に収納されており、途中に鍔部7bを形成している。連通棒7の鍔部7bの内周側には流出穴8が複数開口されている。
【0027】
ノズル5に相対した容器本体2の上部には空気導入穴10が開口されている。空気導入穴10の内側には封止部材11が配置され、連通棒7の鍔部7bと容器本体2の内側に形成したバネ受け13との間に設けたコイルバネ12の押圧により、空気導入穴10を閉鎖している。この空気導入穴10とコイルバネ12により押圧された封止部材11により通気部が構成される。コイルバネ12は同時に、可溶部材9によりノズル5の段付穴6に固着された連通棒7を下方に押圧している。
【0028】
更に、空気導入穴10を封止する封止部材11に対しては、容器本体2の外部に設けた警報スイッチ14が配置されており、この状態で警報スイッチ14は、スイッチノブを封止部材11により押し込まれ、スイッチオフの状態となっている。
【0029】
図2は図1のレンジフード消火装置の天ぷら火災による作動状態の説明図である。図1のレンジフード消火装置1は、例えば図3(A)のようにレンジフード15に取り付けて使用している。レンジフード15に対する本発明のレンジフード消火装置1の取付位置は、ガスレンジ16のバーナー17に相対したレンジフード15の位置に取り付ける。このためバーナー17に例えば天ぷら鍋18を乗せて調理を行った場合、天ぷら鍋18の直上に本発明のレンジフード消火装置1に設けている感熱ヘッド3が位置することになる。
【0030】
図3(A)のような使用状態で、図3(B)のように天ぷら鍋18の油が加熱して着火し、炎が上がったとすると、天ぷら鍋18の火災による炎及び熱を受けてレンジフード消火装置1の感熱ヘッド3が作動する。
【0031】
レンジフード消火装置1の作動状態は、図1におけるノズル5の下部を閉鎖している可溶部材9が、天ぷら火災による熱を受けて溶ける。可溶部材9が溶けると、図2に示すように、連通棒7の支えがなくなることで、連通棒7は落下して鍔部7bが段付穴6の段部6aに当接し、この連通棒7の落下に伴い、コイルバネ12で押圧していた封止部材11も落下し、空気導入穴10を開く。また、封止部材11の落下で警報スイッチ14のスイッチノブの押込みが解除され、警報スイッチ14がオンすることで外部に警報信号を出力することができる。
【0032】
可溶部材9の溶け出しで落下した連通棒7は、鍔部7bが段付穴6の段部6aに当接し、この状態で、容器本体2内に貯蔵している消火薬液4は、鍔部7bに開口している流出穴8を通って下方に向けて自然に流出される。消火薬剤4aの一部は連通棒7の下部7aを伝わって下方に落下する。
【0033】
このため図3(B)のように、感熱ヘッド3の作動によりレンジフード消火装置1から消火薬液4が火災を起こしている天ぷら鍋18上に筋状に垂れ落ちながら流れ込み、火災を起こしている油との化学反応により油をゲル状に固形化し、火災を消火することができる。
【0034】
感熱ヘッド3が作動した際のレンジフード消火装置1から自然に流れ落ちる消火薬液4は極めて静かに火災を起こしている天ぷら鍋18の中に流れ落ち、消火薬液4の自然流下によって、火災を起こしている天ぷら鍋18の油が周囲に飛び散るようなことは一切起きない。
【0035】
また、レンジフード消火装置1の感熱ヘッド3は、ガスレンジ16のバーナー17に相対した位置に配置されており、バーナー17に乗せた天ぷら鍋18に対し正確に位置決めされているため、感熱ヘッド3の作動で流出した消火薬液4は正確に、火災を起こしている天ぷら鍋18に注入され、容器本体2に貯蔵している消火薬液4を全て火災を起こしている天ぷら鍋18に投入して100%の消火効率を実現できる。
【0036】
更に、火災を起こしている天ぷら鍋18に従来のように消火薬液を投入した場合、爆燃現象や炎が大きく燃え上がる危険な状態を起こしているが、本発明にあっては、感熱ヘッド3の作動で消火薬液4は自然流下により細い筋となって火災を起こしている天ぷら鍋18に流れ落ちて投入されるため、消火薬液4の投入により火災を起こしている天ぷら鍋18が爆燃現象を起こしたり、炎が大きく燃え上がるような事態を確実に防止できる。
【0037】
ここで本願発明者らの実験によれば、感熱ヘッド3が作動した際に消火薬液4を自然落下により注入する流出穴8の開口面積としては、その合計面積を例えば直径数ミリメートル程度とすることで、良好な、油の飛び散りのない消火性能が確認されている。
【0038】
また、容器本体2に貯蔵している消火薬液4の貯蔵量としては、火災時に、消火薬液4の全量が火災を起こしている天ぷら鍋18に自然流下により投入できるため、通常、天ぷら鍋18での調理に使用する油の使用量に見合った消火薬液4の量でよく、消火薬液4の投入時における周囲への飛散による不足分を考慮する必要がないため、消火薬液4の貯蔵量を少なくし、結果として容器本体2の体積及びサイズを小さくすることができる。これによって、レンジフード消火装置1自体の小型軽量化が図られ、レンジフード5に対する取付けが簡単にできることになる。
【0039】
なお、図1においては、可溶部材9自体が連通棒7を固着しているが、これに限らず、可溶部材9が溶融したときに連通棒7が落下する構成であれば良い。連通棒7と封止部材11は一体で形成してあっても良い。
【0040】
図4は本発明によるレンジフード消火装置の第2実施形態の説明図であり、この実施形態にあっては、天ぷら火災による作動時に、ヘッドから火災を起こしている天ぷら鍋にチェーンを下ろし、チェーンに沿って消火薬液4を自然流下により天ぷら鍋に投入するようにしたことを特徴とする。
【0041】
図4において、レンジフード消火装置1の容器ほんたい2の下部にはノズル5が固着され、段付穴6の開口部を可溶部材9で閉鎖し、同時に可溶部材9で内部に収納した連通棒7の下部7aを固着している。連通棒7の上部7cには、容器本体2の上部に形成したチェーン収納部22に一端を固定して収納したチェーン21の先端が連結されている。
【0042】
連通棒7の中間に形成した鍔部7bにはリテーナ23が装着され、リテーナ23と容器本体2の上部内壁に形成したバネ受け13との間に、コイルバネ12を配置し、連通棒7を下方に押圧している。
【0043】
このようなチェーン21を使用した図4の実施形態にあっては、レンジフードに取り付けた使用状態で、天ぷら火災による炎や熱を受けて可溶部材9が溶けると、コイルバネ12の力でリテーナ23を介して連通棒7が段付穴6から押し出され、リテーナ23は段部6aに当接して止まるが、連通棒7はノズル5からチェーン21を引き出しながら落下し、火災を起こしている天ぷら鍋に入る。落下したチェーン21は後端部に設けた径の大きい止め輪が容器本体2に引っ掛かって吊るされる。
【0044】
このためノズル5の開口した段付穴6からの消火薬液4は、段部6aに当接したリテーナ23の通し穴から、更に、連通棒7を吊り下げているチェーン21に沿って、火災を起こしている天ぷら鍋の中に、自然流下により滑らかに流れ込むことになる。
【0045】
また図4の実施形態にあっては、容器本体2の上部に図1の実施形態のような空気導入口を設けていないが、可溶部材9の溶け出しにより下部に十分なサイズの段付穴6が開口され、且つ吊り下げられたチェーン21を通って消火薬液4が流れ出すため、上部に空気穴がなくても滑らかに容器本体2の中から消火薬液4を、自然流下により火災を起こしている天ぷら鍋に投入することができる。
【0046】
また消火薬液4は、連通棒7を吊り下げているチェーン21に沿って流れ落ちるため、途中で周囲に飛散するようなことはなく、消火薬液4を投入する際の飛散を、より確実に防止することができる。なお図4の実施形態で使用するチェーン21としては、金属製のビーズチェーンなどを使用することが望ましいが、天ぷら油や炎で溶けない耐熱性のある材質であれば良い。また、チェーン21の長さは、連通棒7が天ぷら鍋の直上で止まるようにしても良く、この場合は連通棒7が天ぷら鍋に入らないため、油が飛び散ることがない。
【0047】
図5は本発明によるレンジフード消火装置の第3実施形態の説明図であり、この第3実施形態にあっては、図4の第2実施形態について、更に、通気パイプを設けるようにしたことを特徴とする。
【0048】
図5において、レンジフード消火装置1における容器本体2に設けた感熱ヘッド3の構造は図4の第2実施形態と同じであり、更に通気パイプ24を設けている。通気パイプ24を設けるため、図5の実施形態にあっては、ノズル5の下部をフラットとして下面にリング状の凹部を形成しており、この下端凹部に通気パイプ24の下部を位置させて開口している。通気パイプ24の上部は、容器本体2の上端の消火薬液4の貯蔵状態で空洞となる部分に開口している。
【0049】
この図5の第3実施形態にあっては、天ぷら火災による炎や熱を受けて可溶部材9が溶け落ちると、連通棒7がチェーン21を引き出しながら落下し、同時に可溶部材9が溶け落ちることで通気パイプ24の下端が開口し、通気パイプ24によって容器本体2の上部の中空部が外部に連通し、消火薬液4を、開口した段付穴6、具体的には段部6aに当接したリテーナ23の通し穴を通して自然流下させることができる。
【0050】
なお、連通棒7はチェーン21を下方へ引き出すものであれば良く、形状は限定されない。望ましくは、連通棒7が消火薬液4を消火対象物へ導く形状が良い。
【0051】
図6は本発明によるレンジフード消火装置の第4実施形態の説明図である。図6の第4実施形態にあっては、図4の第3実施形態で使用している連通棒7を押し下げるコイルスプリング12を廃止し、その代わりに錘部材25を用いたことを特徴とする。
【0052】
容器本体2の下部に設けられた感熱ヘッド3におけるノズル5は、段付穴6の開口部を可溶部材9で閉鎖すると同時に、連通棒7の下部7aを固着している。連通棒7は鍔部7bを中間に有し、この鍔部7bの上部に通し穴を備えた錘部材25を装着し、上部7cにはチェーン収納部22から引き出したチェーン21の先端を連結している。
【0053】
この図6の第4実施形態にあっては、天ぷら火災による炎や熱を受けて可溶部材9が溶け落ちると、錘部材25の重量により連通棒7が下方に落下し、チェーン21を引っ張りながら、火災を起こしている天ぷら鍋に落ち込むことになる。錘部材23は段付穴6の段部に当接し、錘部材25の通し穴を通り且つチェーン21に沿って容器本体2内の消火薬液4を自然流下により、火災を起こしている天ぷら鍋に流し落とすことになる。
【0054】
このように錘部材25を用いて連通棒7を押圧することで、コイルバネを使用した場合に比べ感熱ヘッド3の構造を簡単にすることができる。
【0055】
図7は本発明によるレンジフード消火装置の第5実施形態の説明図であり、この第5実施形態にあっては、図6の第4実施形態について、更に、通気パイプを設けるようにしたことを特徴とする。
【0056】
図7において、レンジフード消火装置1における容器本体2に設けた感熱ヘッド3の構造は図6の第4実施形態と同じであり、更に通気パイプ24を設けている。通気パイプ24を設けるため、図7の実施形態にあっては、ノズル5の下部をフラットとして下面にリング状の凹部を形成しており、この下端凹部に通気パイプ24の下部を位置させて開口している。通気パイプ24の上部は、容器本体2の上端の消火薬液4の貯蔵状態で空洞となる部分に開口している。
【0057】
この図7の第5実施形態にあっては、天ぷら火災による炎や熱を受けて可溶部材9が溶け落ちると、連通棒7がチェーン21を引き出しながら落下し、同時に可溶部材9が溶け落ちることで通気パイプ24の下端が開口し、通気パイプ24によって容器本体2の上部の中空部が外部に連通し、消火薬液4を、開口した段付穴6、具体的には段部6aに当接したリテーナ23の通し穴を通して自然流下させることができる。
【0058】
図8は本発明によるレンジフード消火装置の第6実施形態の説明図であり、この第6実施形態にあっては、感熱ヘッド3における熱感知板を容器本体2の上部に設けるようにしたことを特徴とする。
【0059】
図8において、レンジフード消火装置1の容器本体2の下部には、流出穴27aを備えた取付ベース27が溶接などにより固定されており、取付ベース27の下部開口のネジ部に対し両側をパッキング29で挟んだ封止板28をノズル26の流出穴26aに対するネジ込みで閉鎖固定している。
【0060】
一方、ノズル26に相対した容器本体2の上部には取付ネジ穴を備えた取付ベース33が溶接などにより固定され、取付ベース33に対しホルダー34をネジ込み固定している。ホルダー34に対しては作動軸30がOリング35を通して摺動自在に組み込まれている。作動軸30は中空穴43を備えた中空軸であり、下部先端を斜めに切ることでカッター31を形成し、カッター31に続いて外周部を切り欠いたスリット32を形成している。
【0061】
スリット32の上部には止め輪41が固定され、その上部に平ワッシャー42を設けており、平ワッシャ−42とホルダー34との間にコイルバネ40を組み込んでいる。ホルダー34から上部に取り出した作動軸30の先端には熱感知板36が配置され、熱感知板36は可溶部材37により作動軸30の上端に固定されている。
【0062】
熱感知板36とホルダー34との間にはコイルバネ38が組み込まれ、熱感知板36を上方に押圧している。熱感知板36はチェーン39により容器本体2に連結されて脱落を防止している。更に作動軸30のホルダー34内におけるOリング35の下側の位置には、空気導入穴44が開口されている。
【0063】
なお、コイルバネ38は熱感知板36を分解方向に付勢する第1バネ部材として機能し、またコイルバネ40は作動軸30を封止板28の方向に付勢する第2バネ部材として機能する。
【0064】
図9は図8のレンジフード消火装置の天ぷら火災による作動状態の説明図である。
【0065】
図8のレンジフード消火装置1の取付状態において、天ぷら火災による炎や熱を受けて、容器本体2の上部に配置している熱感知板36が加熱され、可溶部材37が所定の溶解温度に達すると溶け、熱感知板36はコイルバネ38のバネ力で飛散し、中空穴43が外気に開放されると同時に、作動軸30の上端の支持が解除される。
【0066】
このため作動軸30はコイルバネ40の力で図9に示すように下方に押し出され、先端に形成したカッター31がノズル26の封止板28を突き破る。このため封止板28に穴が開き、容器本体2内の消火薬液4は作動軸30のスリット32を通って先端のカッター31の部分から下方に自然流下により流出される。
【0067】
また、このとき作動軸30に形成した空気導入穴44が容器本体2内の消火薬液4の上部空洞に位置し、外気を導入して消火薬液4の自然流下を促す。また可溶部材37の溶解により外れた熱感知板36は、チェーン39により吊り下げられることで周囲への飛び出しが防止されている。
【0068】
ここで図8の第6実施形態にあっては、容器本体2の上部に熱感知板36を設けているため、レンジフードに取り付けた際に容器本体2の下側に対する熱感知板36の取付部分の飛び出しが抑えられ、下側に飛び出した熱感知板36に器具等が当たって破損したり誤作動することを確実に防止できる。
【0069】
また、熱感知板36を容器本体2の上部に設けていた場合、天ぷら火災による熱はレンジフードの下面に当たって効率よく熱感知板36を加熱することができ、天ぷら火災に対する加熱効率は容器本体2の下部に設けている場合と同等もしくはそれ以上とすることができる。
【0070】
なお、図8の作動軸30が封止板28を開けた際に、図4に示すようなチェーン及び連通棒がバーナの方へ落下して消火を行うようにしても良い。
【0071】
図10は本発明によるレンジフード消火装置の第7実施形態の説明図であり、この第7実施形態にあっては、図8の第6実施形態に警報信号を出力する警報スイッチを設けたことを特徴とする。
【0072】
図10において、容器本体2の上部に設けた感熱ヘッド3における熱感知板36に対し、マイクロスイッチを用いた警報スイッチ45のスイッチレバー46を当接させ、この状態で警報スイッチ46のスイッチ接点をスイッチレバー46による押込みでオフ状態としている。それ以外の構成は図8の第6実施形態と同じである。
【0073】
このような警報スイッチ45を設けたレンジフード消火装置1にあっては、天ぷら火災による熱で可溶部材37が溶けて、コイルバネ38の力により熱感知板36が飛ばされると、図11に示すように、スイッチレバー46の押圧が解除され、スイッチノブが飛び出すことで警報スイッチ45のスイッチ接点がオンし、外部に対し警報信号を出力することができる。
【0074】
図12は本発明によるレンジフード消火装置の第8実施形態の説明図であり、図8の第6実施形態と同様、容器本体2の上部に熱感知板36を設けた場合の実施形態である。
【0075】
図12において、レンジフード消火装置1の感熱ヘッド3は、容器本体2の下部に流出穴48を形成したノズル47を溶接などにより固定しており、この流出穴48の内側にバルブシート55を介して作動軸50を配置している。
【0076】
作動軸50は中空穴52を備えた中空軸であり、容器本体2のノズル47に相対した位置に固定された取付ベース33にねじ込んだホルダー34に対し摺動自在に組み込まれている。ホルダー34は、この実施形態にあっては、上部に環状溝を備えたフランジ部37aを形成し、作動軸50の中にコイルバネ51を組み込んだ状態で上部に熱感知板36を配置し、熱感知板36を可溶部材37によりフランジ部37aに固着している。
【0077】
作動軸50は、容器本体2内の消火薬液4に浸かった位置の側面に吸気開口56を形成している。また作動軸50の途中には止め輪53が装着され、止め輪53とノズル47の内側との間にコイルバネ54を組み込んでいる。
【0078】
ここでコイルバネ51は可溶部材37で固着した熱感知板36を分解方向に付勢する第3バネ部材として機能し、またコイルバネ54は作動軸54をバルブシート55を開放する方向に付勢する第4バネ部材として機能する。
【0079】
次に図12の第8実施形態の天ぷら火災による作動を説明する。天ぷら火災による炎や熱を受けて熱感知部材36を付着している可溶部材37が溶けると、コイルバネ51の力により熱感知部材36が押し外されて図13に示すように分解し、チェーン39を介して熱感知板36は吊り下げられる。
【0080】
この熱感知板36の分解離脱に伴いコイルバネ51により作動軸50に加わる力が解除され、作動軸50はコイルバネ54により押し上げられ、バルブシート55が流出穴48から離れて流路を開く。このため容器本体2内の消火薬液4は、開放した流出穴48を通って自然に落下され、火災を起こしている天ぷら鍋に静かに注入されて消火することができる。
【0081】
なお図12の実施形態についても、図10の実施形態と同様、警報スイッチ45のスイッチレバー46を熱感知板36に対し設けることで、天ぷら火災による作動時に警報信号を外部に出力させることができる。
【0082】
また図8の感熱ヘッドは,容器本体直上配置に限らず、多少容器本体斜め上方もしくは側方に配置してあっても良く、これによりレンジフード消火装置の高さをより抑えることができる。
【0083】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明によるレンジフード消火装置の第1実施形態の説明図
【図2】図1のレンジフード消火装置の作動状態の説明図
【図3】図1のレンジフード消火装置の使用状態と天ぷら火災時の作動状態の説明図
【図4】本発明によるレンジフード消火装置の第2実施形態の説明図
【図5】本発明によるレンジフード消火装置の第3実施形態の説明図
【図6】本発明によるレンジフード消火装置の第4実施形態の説明図
【図7】本発明によるレンジフード消火装置の第5実施形態の説明図
【図8】本発明によるレンジフード消火装置の第6実施形態の説明図
【図9】図8のレンジフード装置の作動状態の説明図
【図10】本発明によるレンジフード消火装置の第7実施形態の説明図
【図11】図10のレンジフード消火装置の作動状態の説明図
【図12】本発明によるレンジフード消火装置の第8実施形態の説明図
【図13】図12のレンジフード消火装置の作動状態の説明図
【符号の説明】
【0085】
1:レンジフード消火装置
2:容器本体
3:感熱ヘッド
4:消火薬液
5,26,47:ノズル
6:段付穴
6a:段部
7:連通棒
7b:鍔部
8,26a,48:流出穴
9,37:可溶部材
10,44:空気導入穴
11:封止部材
12,38,40,51,54:コイルバネ
13:バネ受け
14,45:警報スイッチ
15:レンジフード
16:ガスレンジ
17:バーナー
18:天ぷら鍋
21,39:チェーン
22:チェーン収納部
23:リテーナ
24:通気パイプ
25:錘部材
27,33:取付ベース
28:封止板
29:パッキング
30,50:作動軸
31:カッター
32:スリット
34:ホルダー
35:Oリング
36:熱感知板
41,53:止め輪
42:平ワッシャー
43,52:中空軸
45:警報スイッチ
46:スイッチレバー
55:バルブシート
56:吸気開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスレンジのバーナーに相対したレンジフードの位置に装着される消火薬液を無加圧状態で収納した容器本体と、
前記容器本体に装着され、所定温度に加熱された際に作動して前記消火薬液を自然流下させる感熱ヘッドと、
を備えたことを特徴とするレンジフード消火装置.
【請求項2】
請求項1記載のレンジフード消火装置に於いて、前記容器本体に、前記感熱ヘッドの作動に伴って容器内を外気に連通する通気部を設けたことを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項3】
請求項1記載のレンジフード消火装置に於いて、前記容器本体に、前記感熱ヘッドの作動に伴って作動検出信号を外部に出力する警報スイッチを設けたことを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項4】
請求項1記載のレンジフード消火装置に於いて、前記感熱ヘッドは、
前記容器本体の底部に装着され、開口穴を備えたノズルと、
前記ノズルの開口穴を閉鎖し、所定温度に加熱された際に溶融する可溶部材と、
前記容器内部に前記可溶部材が溶解した際に連動して下降する連動棒と、
容器上部に開口した空気導入穴を内側から閉鎖する封止部材と、
を備え、前記可溶部材が溶解した際に、前記開口穴を開口して前記連通棒を落下させ、前記封止部材を下降させて前記空気導入穴を開口すると同時に、前記ノズルから消火薬液を自然流下させることを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項5】
請求項1記載のレンジフード消火装置に於いて、前記感熱ヘッドは、
前記容器本体の底部に装着され、開口穴を備えたノズルと、
前記容器本体内に収納されたチェーンと、
前記ノズルの開口穴を閉鎖する可溶部材と、
を備え、前記可溶部材が溶解した際に、前記開口穴を開放すると共に前記チェーンを開口穴から落下させ、前記チェーンに沿って前記消火薬液を自然流下させることを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項6】
請求項1記載のレンジフード消火装置に於いて、前記感熱ヘッドは、
前記容器本体の底部に装着され、開口穴を備えたノズルと、
前記容器本体内に収納されたチェーンに連結される連通棒と、
前記連通棒に載置され、前記連通棒を押下げ荷重を付与する錘部材と、
前記ノズルの開口穴を閉鎖する可溶部材と、
を備え、前記可溶部材が溶解した際に、前記開口穴を開放すると共に前記開口穴に前記錘部材を残して前記連通棒を前記チェーンと共に落下させ、前記チェーンに沿って前記消火薬液を自然流下させることを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載のレンジフード消火装置に於いて、前記ノズルに、下端を前記可溶部材で閉鎖し上端を前記容器本体内に開口し、前記可溶部材の溶解時に前記容器本体内を外気に連通させる通気パイプを設けたことを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項8】
請求項1記載のレンジフード消火装置に於いて、前記感熱ヘッドは、
前記容器本体の底部に装着され、開口穴を封止板で閉鎖したノズルと、
前記ノズルよりも前記容器本体の上方に配置した通し穴を備えたホルダ部材と、
前記ホルダ部材の通し穴に摺動自在に挿入され、下端に前記ノズルの封止板を破るカッターを形成すると共に上端を前記ホルダ部材を貫通して外部に取り出した作動軸と、
前記作動軸の上端に熱感知板を固着し、所定温度で溶融する可溶部材と、
前記作動軸を前記ヘッドの封止板の方向に付勢するバネ部材と、
備え、前記可溶部材が溶融した際に、前記熱感知板を作動軸から離脱させると同時に、前記バネ部材の力により前記作動軸を下方に駆動して先端のカッター部により前記封止板を破って消火薬液を前記ヘッドから自然流下させることを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項9】
請求項1記載のレンジフード消火装置に於いて、前記感熱ヘッドは、
前記容器本体の底部に装着され、開口穴を形成したノズルと、
前記ノズルよりも前記容器本体の上方に配置した通し穴を備えたホルダ部材と、
前記ホルダ部材の通し穴に摺動自在に挿入され、下端に前記ヘッドの開口穴を閉鎖するバルブシートを設ける共に上部をホルダ部材を貫通して外部に取り出した容器内に連通する作動軸と、
前記作動軸の上端に熱感知板を固着し、所定温度で溶融する可溶部材と、
前記バルブシートを開放する方向に前記作動軸を付勢するバネ部材と、
備え、前記可溶部材が溶融した際に、前記熱感知板を作動軸から離脱させると同時に、前記バネ部材の力により前記作動軸を上方に駆動して前記バルブシートによる開口穴の閉鎖を解除して前記ヘッドから消火薬液を自然流下させることを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項10】
請求項8又は9記載のレンジフード消火装置に於いて、前記作動軸は中空穴を備え、前記可溶部材が溶解した際に、前記作動軸の中空穴を介して容器内を外気に連通させることを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項1】
ガスレンジのバーナーに相対したレンジフードの位置に装着される消火薬液を無加圧状態で収納した容器本体と、
前記容器本体に装着され、所定温度に加熱された際に作動して前記消火薬液を自然流下させる感熱ヘッドと、
を備えたことを特徴とするレンジフード消火装置.
【請求項2】
請求項1記載のレンジフード消火装置に於いて、前記容器本体に、前記感熱ヘッドの作動に伴って容器内を外気に連通する通気部を設けたことを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項3】
請求項1記載のレンジフード消火装置に於いて、前記容器本体に、前記感熱ヘッドの作動に伴って作動検出信号を外部に出力する警報スイッチを設けたことを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項4】
請求項1記載のレンジフード消火装置に於いて、前記感熱ヘッドは、
前記容器本体の底部に装着され、開口穴を備えたノズルと、
前記ノズルの開口穴を閉鎖し、所定温度に加熱された際に溶融する可溶部材と、
前記容器内部に前記可溶部材が溶解した際に連動して下降する連動棒と、
容器上部に開口した空気導入穴を内側から閉鎖する封止部材と、
を備え、前記可溶部材が溶解した際に、前記開口穴を開口して前記連通棒を落下させ、前記封止部材を下降させて前記空気導入穴を開口すると同時に、前記ノズルから消火薬液を自然流下させることを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項5】
請求項1記載のレンジフード消火装置に於いて、前記感熱ヘッドは、
前記容器本体の底部に装着され、開口穴を備えたノズルと、
前記容器本体内に収納されたチェーンと、
前記ノズルの開口穴を閉鎖する可溶部材と、
を備え、前記可溶部材が溶解した際に、前記開口穴を開放すると共に前記チェーンを開口穴から落下させ、前記チェーンに沿って前記消火薬液を自然流下させることを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項6】
請求項1記載のレンジフード消火装置に於いて、前記感熱ヘッドは、
前記容器本体の底部に装着され、開口穴を備えたノズルと、
前記容器本体内に収納されたチェーンに連結される連通棒と、
前記連通棒に載置され、前記連通棒を押下げ荷重を付与する錘部材と、
前記ノズルの開口穴を閉鎖する可溶部材と、
を備え、前記可溶部材が溶解した際に、前記開口穴を開放すると共に前記開口穴に前記錘部材を残して前記連通棒を前記チェーンと共に落下させ、前記チェーンに沿って前記消火薬液を自然流下させることを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載のレンジフード消火装置に於いて、前記ノズルに、下端を前記可溶部材で閉鎖し上端を前記容器本体内に開口し、前記可溶部材の溶解時に前記容器本体内を外気に連通させる通気パイプを設けたことを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項8】
請求項1記載のレンジフード消火装置に於いて、前記感熱ヘッドは、
前記容器本体の底部に装着され、開口穴を封止板で閉鎖したノズルと、
前記ノズルよりも前記容器本体の上方に配置した通し穴を備えたホルダ部材と、
前記ホルダ部材の通し穴に摺動自在に挿入され、下端に前記ノズルの封止板を破るカッターを形成すると共に上端を前記ホルダ部材を貫通して外部に取り出した作動軸と、
前記作動軸の上端に熱感知板を固着し、所定温度で溶融する可溶部材と、
前記作動軸を前記ヘッドの封止板の方向に付勢するバネ部材と、
備え、前記可溶部材が溶融した際に、前記熱感知板を作動軸から離脱させると同時に、前記バネ部材の力により前記作動軸を下方に駆動して先端のカッター部により前記封止板を破って消火薬液を前記ヘッドから自然流下させることを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項9】
請求項1記載のレンジフード消火装置に於いて、前記感熱ヘッドは、
前記容器本体の底部に装着され、開口穴を形成したノズルと、
前記ノズルよりも前記容器本体の上方に配置した通し穴を備えたホルダ部材と、
前記ホルダ部材の通し穴に摺動自在に挿入され、下端に前記ヘッドの開口穴を閉鎖するバルブシートを設ける共に上部をホルダ部材を貫通して外部に取り出した容器内に連通する作動軸と、
前記作動軸の上端に熱感知板を固着し、所定温度で溶融する可溶部材と、
前記バルブシートを開放する方向に前記作動軸を付勢するバネ部材と、
備え、前記可溶部材が溶融した際に、前記熱感知板を作動軸から離脱させると同時に、前記バネ部材の力により前記作動軸を上方に駆動して前記バルブシートによる開口穴の閉鎖を解除して前記ヘッドから消火薬液を自然流下させることを特徴とするレンジフード消火装置。
【請求項10】
請求項8又は9記載のレンジフード消火装置に於いて、前記作動軸は中空穴を備え、前記可溶部材が溶解した際に、前記作動軸の中空穴を介して容器内を外気に連通させることを特徴とするレンジフード消火装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−340956(P2006−340956A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170693(P2005−170693)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000192073)株式会社モリタ (80)
【出願人】(301065744)株式会社モリタユージー (5)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000192073)株式会社モリタ (80)
【出願人】(301065744)株式会社モリタユージー (5)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】
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