説明

レーザ光源およびそれを用いたガス検知装置

【課題】吸収線の中心波長が1.2μmより短い検知対象ガスを高い精度で検知するためのレーザ光源およびそれを用いたガス検知装置を提供する。
【解決手段】所定の波長幅(変調周波数)で波長変調されたレーザ光(変調光a)を出力する変調光出力部11と、変調光aを伝搬させる光ファイバ12と、光ファイバ12を伝搬するレーザ光をラマン増幅させるための励起光bを光ファイバ12へ出力する励起光出力部13と、光ファイバ12を伝搬してラマン増幅されたラマン増幅後の変調光a'の波長を非線形光学効果により短い波長に変換する波長変換素子14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源およびそれを用いたガス検知装置に関し、特に、検知対象ガスの吸収線を利用してガス検知を行うためのレーザ光源およびそれを用いたガス検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に関して、地球温暖化ガスの排出削減、大気汚染物質の監視等のため、大気中の特定のガスを検知するという技術が必要とされている。ガスの検知に当たっては、従来からガスクロマトグラフ等の化学式のガス検知装置が用いられてきた。しかしながら、このような化学的測定を行うガス検知装置では、簡易な測定、迅速な測定を行うことが困難であった。
【0003】
ところで、メタン、酸素、二酸化炭素、アセチレン、アンモニア等のガスは、分子の回転や構成原子間の振動等に応じた特定波長の光を吸収することが知られている。一般的にガス分子は、赤外領域の電磁波を吸収する。例えばメタンは1.6μm、3.3μm、7μmの波長の光を吸収し、酸素は760nmの波長の光を吸収する。
【0004】
そこで、この現象を利用した分光式のガス検知装置が開発された。このような分光式のガス検知装置は、測定対象の空間に特定波長のレーザ光を出射しその減衰状態を測定することにより、極めて簡便かつ迅速に検知対象ガスの有無、濃度を検知することができる。
【0005】
一般的にガスの吸収線は極めて急峻であるため、高精度なガス検出を実現するためには、上述の分光式のガス検知装置に用いられるレーザ光源は単一縦モードのレーザ発振が可能であることが好ましい。
【0006】
このような要求に応えるレーザ光源としては分布帰還型(DFB:Distributed FeedBack)半導体レーザが挙げられる。分布帰還型半導体レーザは、光導波路に光の導波方向に沿った周期構造を設け、周期構造のピッチの長さと光導波路の屈折率によって定まる特定波長の単一縦モードのレーザ発振を実現するものである。
【0007】
DFB半導体レーザを備えたガス検知装置は、例えば図8に示すように、半導体レーザモジュール100と、受光器102と、ガス検知部103と、を備えている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたガス検知装置においては、DFB半導体レーザが組込まれた半導体レーザモジュール100から出射されるレーザ光が、測定雰囲気中の被測定ガス101を透過して受光器102へ入射される。
【0008】
ここで、被測定ガス101は、例えば、図9に示す中心波長λ0の吸収特性Aを有する。半導体レーザモジュール100が備えるDFB半導体レーザは、図9に示すように、中心電流値I0(バイアス電流値)を中心に、振幅Iw、変調周波数f1(例えば10kHz)で変調された駆動電流Idが印加されることにより、中心波長λ0を中心に振幅λw(例えば10pm)、変調周波数f1で振動するレーザ光を被測定ガス101に出射するようになっている。
【0009】
吸収特性Aは中心波長λ0に極小点を有するため、変調周波数f1で振動するレーザ光は、被測定ガス101を透過することにより、変調周波数f1の2倍の周波数f2(=20kHz)の振動成分を含むこととなる。
【0010】
受光器102の受光素子102aは、被測定ガス101を透過した上述のレーザ光を受光して受光電流に変換するようになっている。ガス検知部103は、受光器102で得られた受光電流を電流電圧変換器104にて電圧信号に変換するようになっている。
【0011】
さらに、ガス検知部103は、その電圧信号に含まれる変調周波数f1=10kHzの信号成分である基本波電圧信号h1、および、変調周波数f1=10kHzの2倍の周波数f2(=20kHz)の信号成分である2倍波電圧信号h2を基本波信号検出器105および2倍波信号検出器106によりそれぞれ検出するようになっている。そして、基本波2倍波割算部107は、この2倍波電圧信号h2の振幅H2と基本波電圧信号h1の振幅H1との比(H2/H1)をガス濃度に対応する検出値D(=H2/H1)として出力するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−326199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に開示された従来のガス検知装置において、例えば酸素の吸収線(760nm)を検出するためには、GaAs基板とそれにエピタキシャル成長可能な材料からなる発振波長が760nmのDFB半導体レーザを用いることが考えられる。
【0014】
しかしながら、このようなGaAs系のDFB半導体レーザは、InP基板とそれにエピタキシャル成長可能な材料からなる発振波長が1.2μm以上のInP系のDFB半導体レーザと比較して、結晶欠陥の発生による半導体結晶の光学的特性の急激な劣化が起こりやすい。それゆえに、GaAs系のDFB半導体レーザをガス検知装置の光源として用いた場合には、信頼性の面で不安があった。
【0015】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、吸収線の中心波長が1.2μmより短い検知対象ガスを高い精度で検知するためのレーザ光源およびそれを用いたガス検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のレーザ光源は、所定の波長幅で波長変調されたレーザ光を出力する変調光出力部と、前記レーザ光を伝搬させる光ファイバと、前記光ファイバを伝搬するレーザ光をラマン増幅させるための励起光を該光ファイバへ出力する励起光出力部と、前記光ファイバを伝搬してラマン増幅されたレーザ光の波長を非線形光学効果により短い波長に変換する波長変換素子と、を備える構成を有している。
【0017】
この構成により、波長変換素子の変換効率を上昇させることができるため、InP系の半導体発光素子を用いて、吸収線の中心波長が1.2μmより短い検知対象ガスを高い精度で検知可能なガス検知装置用のレーザ光源を実現できる。
【0018】
また、本発明のレーザ光源は、前記波長変換素子が、前記光ファイバを伝搬してラマン増幅されたレーザ光を第2高調波に変換するSHG素子である構成を有していてもよい。また、本発明のレーザ光源は、前記励起光出力部が、複数の縦モードを有する励起光を出射する半導体レーザを備える構成を有していてもよい。また、本発明のレーザ光源は、前記変調光出力部が、単一縦モードのレーザ光を出射する半導体レーザを備える構成を有していていもよい。
【0019】
本発明のガス検知装置は、上記のレーザ光源を備え、該レーザ光源は、検知対象ガスが有する複数の吸収線のうちの1つの吸収線の波長を中心に所定の波長幅で波長変調されたレーザ光を測定雰囲気に出射し、前記測定雰囲気中を透過した前記レーザ光を測定光として受光し、該測定光に応じた受光信号を出力する受光部と、前記受光信号から検出される前記波長変調の変調周波数の基本波信号および2倍波信号の比に基づいて前記測定雰囲気中に含まれる前記検知対象ガスのガス濃度を算出するガス検知部と、を備える構成を有している。
【0020】
この構成により、上記のレーザ光源を備えるため、吸収線の中心波長が1.2μmより短い検知対象ガスを高い精度で検知することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、吸収線の中心波長が1.2μmより短い検知対象ガスを高い精度で検知するためのレーザ光源およびそれを用いたガス検知装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態のレーザ光源の構成を示すブロック図
【図2】本発明の第1の実施形態のレーザ光源に使用される半導体レーザの光の導波方向に沿った断面図
【図3】本発明の第1の実施形態のレーザ光源が備える励起光出力部の構成を示すブロック図
【図4】励起光の中心波長と利得との関係を示すグラフ
【図5】本発明の第1の実施形態のレーザ光源が備える波長変換素子の斜視図
【図6】本発明の第1の実施形態のレーザ光源の構成を示す側面図
【図7】本発明に係るガス検知装置の構成を示すブロック図
【図8】従来のガス検知装置の構成を示すブロック図
【図9】被測定ガスの吸収特性と変調信号との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るレーザ光源およびそれを用いたガス検知装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
本発明に係るレーザ光源の第1の実施形態を図1〜図6を用いて説明する。図1は本実施形態のレーザ光源1の構成を示すブロック図である。
【0025】
即ち、図1に示すように、レーザ光源1は、所定の波長幅(変調周波数)で波長変調されたレーザ光(以下、変調光と記す)aを出力する変調光出力部11と、変調光aを伝搬させる光ファイバ12と、光ファイバ12を伝搬するレーザ光をラマン増幅させるための励起光bを光ファイバ12へ出力する励起光出力部13と、光ファイバ12を伝搬したラマン増幅後の変調光a'の波長を非線形光学効果により短い波長に変換する波長変換素子14と、を備える。なお、図1には、レーザ光源1の励起方式が後方励起の場合を示しているが、励起方式は前方励起であっても双方向励起であってもよい。
【0026】
変調光出力部11は、所定の波長幅(変調周波数)で波長変調されたレーザ光である変調光aを出射する半導体レーザ15と、変調光aを生成するための駆動電流Idを半導体レーザ15に印加するレーザ駆動部16と、を備える。ここで、駆動電流Idは、中心電流値I0を中心に、振幅Iw、変調周波数f1(例えば10kHz)で変調された電流である。
【0027】
半導体レーザ15は、例えば、単一縦モードでレーザ発振する分布帰還型(DFB:Distributed FeedBack)半導体レーザである。DFB半導体レーザは、光導波路に光の導波方向に沿った周期構造を備えており、周期構造のピッチの長さと光導波路の屈折率によって定まる特定波長の単一縦モードのレーザ発振を実現するものである。
【0028】
ここで、変調光出力部11が備える半導体レーザ15の具体的な構成例を図2に示す。図2は、半導体レーザ15を光の導波方向に沿って切断した断面図である。
【0029】
即ち、変調光出力部11が備える半導体レーザ15は、例えば、n型InP(インジウム・リン)からなるn型半導体基板151の上に、n型InPクラッド層152、n型InGaAsP(インジウム・ガリウム・砒素・リン)からなるSCH層(光閉じ込め層)153、InGaAsPからなる多重量子井戸層(MQW)を含む活性層154、p型InGaAsPからなるSCH層155、p型InPクラッド層156、p型InGaAs(インジウム・ガリウム・砒素)からなるコンタクト層157が順次積層されて構成される。
【0030】
さらに、SCH層155とp型InPクラッド層156との間には回折格子158が形成され、コンタクト層157上には上部電極159、n型半導体基板151の下面には下部電極160が蒸着形成されている。
【0031】
また、半導体レーザ15は、劈開によって形成された後方端面15aおよび出射端面15bを備えている。活性層154は、後方端面15aから出射端面15bにかけて設けられており、駆動電流Idが上部電極159と下部電極160との間に供給されることによってレーザ光を生成し、生成したレーザ光を出射端面15bから出射する構成を有している。なお、後方端面15aおよび出射端面15bには、反射率を調整するためのコーティングが施されていてもよい。
【0032】
半導体レーザ15から出射されるレーザ光の波長λは、上述の駆動電流Idに応じて変動する。これにより、図1に示した変調光出力部11は、中心波長λaを中心に振幅λw(例えば10pm)、変調周波数f1で振動するレーザ光である変調光aを出力するようになっている。ここで、中心波長λaは、中心電流値I0が半導体レーザ15に印加された場合の発振波長である。
【0033】
なお、上記の半導体レーザ15を構成する各層の組成比、ドープされる不純物の種類および量は、出射される変調光aの中心波長λaが所望の波長(例えば1520nm)となるように適宜調整すればよい。
【0034】
励起光出力部13は、励起光bを出力する光源部17と、光源部17から出力された励起光bを光ファイバ12へ出力する合波器18と、合波器18から出力されるラマン増幅後の変調光a'が入射される光ファイバ19と、を備える。
【0035】
光源部17は、複数の縦モード発振可能な1つの半導体レーザからなっていてもよい。変調光aの中心波長λaが例えば1520nmである場合には、ラマン増幅用の励起光bの複数の縦モードの中心波長λbは約1420nmであればよい。
【0036】
あるいは、光源部17は、複数の中心波長λ1〜λn(λ1<・・・<λn)(n≧2)を有する励起光bを出射する複数の半導体レーザからなっていてもよい。変調光aの中心波長λaが1520nmである場合には、最小の中心波長λ1と最大の中心波長λnとの間に変調光aの波長よりも約100nm短い波長(約1420nm)が含まれるようにすればよい。なお、図3には、励起光bの中心波長として2つの波長λ1、λ2を用いた例を図示している。これらの中心波長λ1、λ2のレーザ光はそれぞれ複数の縦モードを有している。
【0037】
光源部17は、図3のブロック図に示すように、偏波面が互いに異なる波長λ1のレーザ光をそれぞれ出射する2つの半導体レーザ31A、31Bと、偏波面が互いに異なる波長λ2のレーザ光をそれぞれ出射する2つの半導体レーザ31C、31Dと、半導体レーザ31A〜31Dからの出射光の波長λ1、λ2を安定化するための外部共振器としてのFBG(Fiber Bragg Grating)32A、32B、32C、32Dと、を備えている。
【0038】
さらに、光源部17は、FBG32A、32Bからの出射光を偏波合成する偏波合成器33と、FBG32C、32Dからの出射光を偏波合成する偏波合成器34と、偏波合成器33、34からの出力光を合波して励起光bを生成し、生成された励起光bを合波器18に出力する合波器35と、を備えている。
【0039】
なお、半導体レーザ31A〜31Dから各偏波合成器33、34の間は偏波保持ファイバ36で接続され、偏波面が異なる2つのレーザ光が各偏波合成器33、34で合成されるようになっている。
【0040】
図4は、中心波長λ1、λ2を有する励起光bと利得との関係を模式的に示すグラフである。光ファイバ12に入射された励起光bにより、光ファイバ12において中心波長λ1、λ2から約100nm程度長波長側に利得gが生じる。この状態で光ファイバ12に利得gの波長帯域の変調光aが入射されると変調光aがラマン増幅されて変調光a'となる(誘導ラマン散乱)。
【0041】
次に、本実施形態のレーザ光源1が備える波長変換素子14について説明する。波長変換素子14は、分極反転構造が形成されたLiNbO3(リチウムナイオベート)、LiTaO3(リチウムタンタレート)、などの複屈折率を有する非線形光学結晶からなるSHG(Second harmonic generation)素子であり、非線形光学効果により、入射された中心波長λaのレーザ光(変調光a')を中心波長λa/2の第2高調波に変換するようになっている。
【0042】
図5は、波長変換素子14の概略構成を示す斜視図である。即ち、波長変換素子14は、例えば、LiNbO3にMgOがドープされた非線形光学結晶からなる基板141と、基板141のZ軸と平行な自発分極の向きを反転させた複数の分極反転部142a、142b、142c、・・・が周期的に形成されてなる周期分極反転構造142と、周期分極反転構造142に沿って延びる光導波路143と、が形成されてなるものである。
【0043】
ここで、レーザ光源1における上述の励起光出力部13および波長変換素子14の具体的な配置例を図6に示す。図6に示すように、励起光出力部13が備える光ファイバ19の出射端面19aと波長変換素子14の入射端面14aとの間にコリメートレンズ20および集光レンズ21と、波長変換素子14の出射端面14b側に集光レンズ22と、が配置される。この構成により、光ファイバ19からの変調光a'が波長変換素子14の入射端面14aを介して光導波路143に入射され、出射端面14bから第2高調波が出射されるようになっている。
【0044】
ところで、波長変換素子14の変換効率は入力光パワーが大きいほど高くなる。半導体レーザ15から出射される変調光aの光パワーの上限値は100mW程度であり、仮に、100mWの光パワーを有する1520nmの変調光aを波長変換素子14に直接入射させる場合には、波長変換素子14の変換効率は10%程度となる。つまり、波長変換素子14から出力される第2高調波(760nm)の光パワーは10mW程度となってしまう。
【0045】
そこで、本実施形態のレーザ光源1では、半導体レーザ15を備えた変調光出力部11と波長変換素子14との間に、ラマン増幅用の励起光bを出力する励起光出力部13を備えることにより、変調光aの光パワーを大幅に増大させてから波長変換素子14に入射させている。例えば、ラマン増幅により変調光a(1520nm)の光パワーを200mWに増幅させれば、波長変換素子14の変換効率は20%程度に上昇し、40mWの光パワーの第2高調波(760nm)を得られるようになる。
【0046】
あるいは、単一縦モードでレーザ発振する半導体レーザ15は、高出力発振させると多モード化しやすく歩留まりが低いため、変調光aの光パワーを10〜20mW程度に抑えて、500mW以上の励起光b(1420nm)で変調光aの光パワーを10〜13dB程度ラマン増幅させる構成としてもよい。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のレーザ光源は、InP系の半導体レーザと、該半導体レーザから出射された変調光の波長を短い波長に変換する波長変換素子と、を備えることにより、吸収線の中心波長が1.2μmより短い検知対象ガスを高い精度で検知できるガス検知装置用のレーザ光源として適用可能である。
【0048】
また、本実施形態のレーザ光源は、変調光出力部から出力される変調光をラマン増幅することにより、変調光の光パワーを大幅に増大させることができる。これにより、波長変換素子における変調光に対する変換効率を上昇させることができるため、ガス検知装置用の高出力のレーザ光源を実現できる。
【0049】
また、本実施形態のレーザ光源は、ラマン増幅により、任意の波長の変調光を増幅することができるため、様々なガス検知装置に適用可能である。
【0050】
(第2の実施形態)
第1の実施形態のレーザ光源を備えたガス検知装置の実施形態について図7を用いて説明する。図7は本実施形態のガス検知装置の構成を示すブロック図である。
【0051】
即ち、本実施形態のガス検知装置は、検知対象ガスが有する複数の吸収線のうちの1つの吸収線の波長を中心に所定の波長幅(変調周波数f1)で波長変調されたレーザ光を測定雰囲気3に出射するレーザ光源1と、測定雰囲気3中を透過した該レーザ光を測定光として受光し、該測定光に応じた受光信号を出力する受光部4と、を備える。
【0052】
また、本実施形態のガス検知装置は、受光部4から出力された受光信号から検出される変調周波数f1の基本波信号および2倍波信号の比に基づいて測定雰囲気3中に含まれる検知対象ガスのガス濃度を算出するガス検知部5と、を備える。
【0053】
受光部4は、例えばフォトダイオード等の受光素子からなり、受光した光の受光量に応じた受光信号を出力するようになっている。
【0054】
ガス検知部5は、受光部4から出力された電流信号である受光信号を電圧信号に変換する電流電圧変換器51と、電流電圧変換器51によって変換された電圧信号に含まれる変調周波数f1の信号成分である基本波電圧信号h1を検出する基本波信号検出器52と、該電圧信号に含まれる変調周波数f1の2倍の周波数f2の信号成分である2倍波電圧信号h2を検出する2倍波信号検出器53と、2倍波信号検出器53によって検出された2倍波電圧信号h2の振幅H2を基本波信号検出器52によって検出された基本波電圧信号h1の振幅H1で割り算して得られる値を測定雰囲気3に含まれる検知対象ガスのガス濃度に対応する検出値D(=H2/H1)として出力する基本波2倍波割算部54と、を備える。
【0055】
なお、このような信号操作(割り算)を行うのは、受光部4によって受光された光が測定雰囲気3の透過以外の理由によってもある程度のレベル変動を生じるため、そのレベル変動を除去して正確なガス濃度検出を行うためである。
【0056】
電流電圧変換器51は、受光部4から出力された受光信号を電圧信号に変換して増幅する機能を有するプリアンプを備えている。なお、電流電圧変換器51が備えるプリアンプにおいては、基本波電圧信号h1および2倍波電圧信号h2が基本波信号検出器52および2倍波信号検出器53において同等の検出可能なレベルになるように、それぞれの信号に対する増幅度が適切な値に設定されていることが好ましい。
【0057】
次に、以上のように構成された本実施形態のガス検知装置の動作について説明する。
まず、レーザ駆動部16によって半導体レーザ15の上部電極159と下部電極160との間に、中心電流値I0、振幅Iw、変調周波数f1の駆動電流Idが印加されることにより、活性層154内部が発光状態となる(図1、図2参照)。
【0058】
活性層154で生成された光は、活性層154に沿って伝搬し、後方端面15aと出射端面15bで構成された共振器において、駆動電流Idに応じた波長λで発振する。ここで、波長λの中心波長λaは、中心電流値I0が半導体レーザ15に印加された場合の発振波長である。
【0059】
これにより、中心波長λaを中心に振幅λw(例えば10pm)、変調周波数f1で振動するレーザ光である変調光aが半導体レーザ15から光ファイバ12へ出射される。光ファイバ12には、変調光aの進行方向と逆向きの励起光bが励起光出力部13から入射されている。
【0060】
変調光aは、励起光bによりラマン増幅されて変調光a'となり、波長変換素子14へ入射される。波長変換素子14では、入射された変調光a'の中心波長λaおよび振幅λwがともに半波長化される。半波長化された変調光a'(第2高調波)は測定雰囲気3へ出射される。
【0061】
波長変換素子14から測定雰囲気3へ出射された第2高調波は、測定雰囲気3を透過して受光部4に受光されて電流信号である受光信号に変換される。受光信号は、ガス検知部5に入力される。
【0062】
受光信号は、電流電圧変換器51に入力されて電圧信号に変換される。電圧信号はガス検知部5の基本波信号検出器52および2倍波信号検出器53に入力され、基本波電圧信号h1および2倍波電圧信号h2が検出される。基本波2倍波割算部54によって、2倍波電圧信号h2の振幅H2を基本波電圧信号h1の振幅H1で割り算して得られる値が、測定雰囲気3に含まれる検知対象ガスのガス濃度に対応する検出値D(=H2/H1)として出力される。
【0063】
なお、例えば、検知対象ガスが酸素(吸収線の中心波長が760nm)である場合には、変調光aの中心波長λaが1520nmとなるように、半導体レーザ15を構成する各層の組成比、ドープされる不純物の種類および量を調整することにより、酸素のガス濃度を検出することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のガス検知装置は、第1の実施形態のレーザ光源を備えるため、吸収線の中心波長が1.2μmより短い検知対象ガスを高い精度で検知することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 レーザ光源
3 測定雰囲気
4 受光部
5 ガス検知部
11 変調光出力部
12 光ファイバ
13 励起光出力部
14、43 波長変換素子
15 半導体レーザ
41 光源部
42 合波器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長幅で波長変調されたレーザ光を出力する変調光出力部(11)と、
前記レーザ光を伝搬させる光ファイバ(12)と、
前記光ファイバを伝搬するレーザ光をラマン増幅させるための励起光を該光ファイバへ出力する励起光出力部(13)と、
前記光ファイバを伝搬してラマン増幅されたレーザ光の波長を非線形光学効果により短い波長に変換する波長変換素子(14)と、を備えるレーザ光源。
【請求項2】
前記波長変換素子が、前記光ファイバを伝搬してラマン増幅されたレーザ光を第2高調波に変換するSHG素子である請求項1に記載のレーザ光源。
【請求項3】
前記励起光出力部が、複数の縦モードを有する励起光を出射する半導体レーザを備える請求項1または請求項2に記載のレーザ光源。
【請求項4】
前記変調光出力部が、単一縦モードのレーザ光を出射する半導体レーザ(15)を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザ光源。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザ光源(1)を備え、該レーザ光源は、検知対象ガスが有する複数の吸収線のうちの1つの吸収線の波長を中心に所定の波長幅で波長変調されたレーザ光を測定雰囲気(3)に出射し、
前記測定雰囲気中を透過した前記レーザ光を測定光として受光し、該測定光に応じた受光信号を出力する受光部(4)と、
前記受光信号から検出される前記波長変調の変調周波数の基本波信号および2倍波信号の比に基づいて前記測定雰囲気中に含まれる前記検知対象ガスのガス濃度を算出するガス検知部(5)と、を備えるガス検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−154093(P2011−154093A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14314(P2010−14314)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】