説明

ロボットのツールの位置の微調整方法及びロボット制御システム

【課題】
教示位置の微調整時の操作手順が減るため、教示時間を低減させることが可能であり、回転操作手段の操作のみで予め定められた動作座標系の予め定められた進行方向の座標軸に沿って移動させることができ、位置の微調整時の教示を楽に行うことができるロボットのツールの位置の微調整方法及びロボット制御システムを提供する。
【解決手段】
回転操作部材13をエンターキー11aにより溶接トーチTの位置の微調整操作手段として割付する。回転操作部材13が操作された際、回転操作部材13の回転量及び回転方向をロータリエンコーダ14に検出させて、回転量及び回転方向をコントローラ20に通知する。コントローラ20のCPU21が、回転量の単位毎に予め定めた寸動量で、かつ、回転方向と対応して、予め定められたツール座標系のZ軸に沿って、ロボットRを動作制御し、溶接トーチTの位置の微調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットのツールの位置の微調整方法及びロボット制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットのエンドエフェクタに設けられたツール先端の教示位置を微調整する場合、教示装置に設けられたキーボードを操作することにより行われている。具体的には、下記の手順で行われている。
【0003】
教示装置の操作者は、キーボード上の手動速度選択キーを操作して最初に手動速度を寸動速度(例えば、インチング速度)に設定し、次に、キーボード上の座標系選択キーを操作して座標系をツール座標系に設定し、この後、操作者は教示装置に設けられたキーボード上のZ軸操作キー(Z軸プラス方向動作キー及びZ軸マイナス方向動作キーの2種を含む)を押すことにより、前記ツールの先端の位置調整を行う。
【0004】
なお、特許文献1では、教示装置にジョグダイアルを設けた技術が提案されている。特許文献1では、このジョグダイアルを回転操作する場合、ロボットアームの動作座標の1つを指定する動作キーを同時に使用するようにしている。この動作キーが指定する動作座標に沿って、ジョグダイアルの回転方向と、回転量に応じて細かなツール先端の教示位置の調整ができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−269883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のようにトーチ先端の教示位置の微調整を行う場合、従来のキー操作では、ロボットの手動速度を変更し、座標系の設定を切り替える必要があり、複数の手順を踏む必要があった。ここで設定を間違えると、トーチ先端は意図せぬ移動量で動作し、異なる座標系での動作を行う危険性があった。又、動作対象軸のプラス方向/マイナス方向の操作キーを押し替える必要があり、微調整を行う際、隣接キーへ頻繁に指を移動させる必要があり、操作が煩わしかった。
【0007】
又、特許文献1では、ジョグダイアルを回転操作する場合、ロボットアームの動作座標の1つを指定する動作キーを同時に押圧使用するようにしていることから、動作キーの操作を伴う分、操作者の操作が煩わしくなる問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ロボットの移動速度を寸動速度に設定する工程、ツールの座標系を動作座標系に設定する工程の2工程の作業が必要でなくなり、教示位置の微調整時の操作手順が減るため、教示時間を低減させることが可能であり、さらに、位置の微調整操作する場合は、回転操作手段の操作のみで予め定められた動作座標系の予め定められた進行方向の座標軸に沿って移動させることができ、位置の微調整時の教示を楽に行うことができるロボットのツールの位置の微調整方法及びロボット制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、教示装置に設けられた回転操作手段を、教示装置に設けられた割付手段により、ロボットのエンドエフェクタに設けられたツールの位置の微調整操作手段として、割付する段階と、前記回転操作手段が操作された際、該回転操作手段の回転量及び回転方向を検出手段に検出させて、該回転量及び回転方向をコントローラに通知する段階と、前記コントローラに設けられた制御手段が、通知された前記回転量の単位毎に、予め定めた寸動量で、かつ、前記回転方向と対応して、予め定められた動作座標系の予め定められた進行方向の座標軸に沿って、ロボットを動作制御して、前記ツールの位置の微調整をすることを特徴とするロボットのツールの位置の微調整方法を要旨とするものである。
【0010】
請求項2の発明は、回転操作手段と、該回転操作手段の回転量及び回転方向を検出する検出手段と、前記回転操作手段を、ロボットのエンドエフェクタに設けられたツールの位置の微調整操作手段として割付する割付手段とを備えた教示装置と、前記回転操作手段の回転量の単位に応じた寸動量及び動作座標系を記憶する記憶手段及びロボットを動作制御する制御手段を備えたコントローラとを含むロボット制御システムであって、前記回転操作手段が前記割付手段により前記位置の微調整操作手段として割り付けられた際には、前記教示装置は、前記検出手段が検出した、回転量及び回転方向を前記コントローラに通知し、前記制御手段は、通知された前記回転量の単位毎に前記寸動量で、かつ、前記回転方向と対応して、前記動作座標系の予め定められた進行方向の座標軸に沿って、ロボットを動作制御することを特徴とするロボット制御システムを要旨とするものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2において、前記ツールが、アーク溶接を行う溶接トーチであり、前記動作座標系がツール座標系であり、前記回転方向と対応して、前記動作座標系の予め定められた進行方向の座標軸が、前記ツール座標系のワイヤのリトラクト方向に沿った座標軸であり、前記制御手段は、通知された前記回転量の単位毎に前記寸動量で、かつ前記ツール座標系のワイヤのリトラクト方向に沿った座標軸に沿って、ロボットを動作制御することを特徴とする。 請求項4の発明は、請求項2において、前記ツールが、アーク溶接を行う溶接トーチであり、前記動作座標系が溶接線座標系であり、前記回転方向と対応して、前記動作座標系の予め定められた進行方向の座標軸が、前記溶接線座標系の溶接方向に沿った座標軸であり、前記制御手段は、通知された前記回転量の単位毎に前記寸動量で、かつ、前記溶接線座標系の溶接方向に沿った座標軸に沿って、ロボットを動作制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、操作者は、ロボットの移動速度を寸動速度に設定する工程、ツールの座標系を動作座標系に設定する工程の2工程の作業が必要でなくなり、教示位置の微調整時の操作手順が減るため、教示時間を低減させることが可能となるロボットのツールの位置の微調整方法を提供できる。又、請求項1の発明によれば、軸操作キーの押し替えを行なわず、回転操作手段の回転だけで、直感的な教示位置の微調整作業が可能となる。さらに、微調整操作する場合は、回転操作手段の操作のみで予め定められた動作座標系の予め定められた進行方向の座標軸に沿って移動させることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、操作者は、ロボットの移動速度を寸動速度に設定する工程、ツールの座標系を動作座標系に設定する工程の2工程の作業が必要でなくなり、教示位置の微調整時の操作手順が減るため、教示時間を低減させることが可能となるロボット制御システムを提供できる。
【0014】
請求項3の発明は、アーク溶接ロボットを制御するロボット制御システムにおいて、ツール座標系のワイヤのリトラクト方向に沿った座標軸に沿って位置の微調整を行う場合、請求項2の効果を容易に実現できる。
【0015】
請求項4の発明は、アーク溶接ロボットを制御するロボット制御システムにおいて、溶接座標系の溶接方向に沿った座標軸に沿って位置の微調整を行う場合、請求項2の効果を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を具体化した一実施形態のロボット制御システムの構成を示すブロック図。
【図2】ツール座標系の説明図。
【図3】(a)〜(e)は溶接線座標系の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、アーク溶接ロボットを制御するロボット制御システムに具体化した一実施形態を図1及び図2に従って説明する。
図1に示すように、ロボット制御システムは、教示装置としてのティーチペンダント(以下、TPという)10と、ロボットRを動作制御するコントローラ20とから構成されている。
【0018】
TP10はキーボード11、デッドマンスイッチ(イネーブルスイッチともいう)12、回転操作手段としての回転操作部材13、及び回転操作部材13の回転方向及び回転量を検出する検出手段としてのロータリエンコーダ14が設けられている。TP10は、CPU15、ROM16、RAM17を備えている。CPU15は、中央演算処理装置である。ROM16には、ロボットR等の操作やコントローラ20との通信をCPU15が実行するための各種制御プログラムとその制御定数が格納される。RAM17は、CPU15のワーキングエリアとして用いられ、計算途中のデータが一時的に格納される。
【0019】
又、CPU15は、キーボード11の入力操作により生成された各種の教示データ、デッドマンスイッチ12のオン/オフ信号及びロータリエンコーダ14が検出した検出信号をTP10に接続されたコントローラ20に対して図示しない通信部を介して通知する。
【0020】
前記ロータリエンコーダ14の検出信号により、回転操作部材13の回転方向(正転方向、逆転方向を含む)及び回転量が検出される。前記回転量は、ロータリエンコーダ14が、回転操作部材13の回転量に比例したパルス信号(検出信号)を検出するため、このパルス数を図示しないカウンタにてカウントすることにより、操作された回転量が分かる。又、回転方向は、ロータリエンコーダ14が例えば、2相パルスを出力することにより、正転か、逆転しているが分かる、すなわち、回転方向が分かる。
【0021】
前記回転操作部材13は、通常は、TP10に設けられた表示装置(図示しない)の表示画面に表示されたメニューの項目間をポインタが移動するための操作道具として使用されるものである。前記メニューの項目には、複数の項目があり、そのうちの1つに後述する「回転操作部材による教示位置の微調整操作項目」が含まれている。
【0022】
そして、後述するエンターキー11aによる教示位置の微調整操作項目の設定がない通常の場合には、回転操作部材13が回転操作されると、ロータリエンコーダ14の検出信号に基づく回転方向に応じてCPU15が、図示しない表示装置のポインタをメニューの項目に移動させることが可能である。
【0023】
コントローラ20は、ワーク(作業対象物)Wに対してアーク溶接を自動で行うようにロボットRを制御するものである。コントローラ20は、制御手段としてのCPU21、ROM22、RAM23及び記憶装置24の各部を備えたコンピュータで構成されている。前記ROM22には、コントローラ20が制御対象とするロボットRの動作制御を実行するための制御プログラム等の各種制御プログラムとその制御定数が格納されている。RAM23は、CPU21のワーキングエリアとして用いられ、計算途中のデータが一時的に格納される。
【0024】
記憶装置24には、ロボットRの作業が教示されたデータや、制御プログラムの実行条件、キー割付テーブル、ならびに各種の制御変数が格納される。又、記憶装置24には、教示モードで、TP10から送られたコマンドやパラメータに基づいて、作業手順である作業プログラムが登録されている。又、記憶装置24は、コントローラ20が、教示モードに設定されているか、再生モードに設定されているかのモード状態を記憶する。このモード設定は、TP10からのモードの設定指示等により行われる。なお、本実施形態では記憶装置24は、ハードディスクにて構成しているが、ハードディスクに限定するものではなく、他の読出し書換可能な記憶装置であってもよい。
【0025】
図1において、主制御部25は、前記コンピュータが実行する機能ブロックで示したものである。
図1に示すように、主制御部25は、回転操作部材機能割付部25a、解釈実行部25b、動作パラメータ設定部25c、及び動作制御部25dを含む。回転操作部材機能割付部25aは、前記キー割付テーブルにより構成されている。回転操作部材機能割付部25aは、溶接トーチTの位置の微調整操作を行う前に、TP10の回転操作部材13を回転操作して、図示しない表示装置に表示されたメニューのうち、「回転操作部材による教示位置の微調整操作項目」を選択し、キーボード11のエンターキー11aの押圧操作により、記憶装置24から読み出され、RAM23に展開される。エンターキー11aは、割付手段に相当する。
【0026】
回転操作部材機能割付部25a(キー割付テーブル)では、具体的には、回転操作部材13の「正転」は、動作座標系としてのツール座標系におけるZ軸のプラス方向の移動コマンドに割付けられている。又、回転操作部材13の「逆転」は、ツール座標系におけるZ軸のマイナス方向の移動コマンドに割付けられている。
【0027】
図2は、ツール座標系を示している。ツール座標系においては、ワイヤWaのリトラクト方向をZ軸のプラス方向としている。又、図2に示すように、本実施形態では、ロボットRの6軸目の回転中心線OとZ軸方向線Zaで形成される平面上であって、Z軸に垂直な方向がX軸であり、トーチ正面方向がX軸のプラス方向となる。又、X軸とZ軸に垂直な方向がY軸であり、その方向は、右手直交座標系に従う。
【0028】
回転操作部材13の単位毎の「回転量」は、寸動量(移動量)に割付けられている。なお、単位とは所定数のパルスの値である。この寸動量はロボットRに許容されている最低移動量が好ましいが、限定されるものではない。
【0029】
解釈実行部25bは、位置の微調整操作時に、ロータリエンコーダ14の検出信号に基づいて、回転操作部材13の回転方向及び回転量を解釈し、解釈結果に応じて、すなわち、回転方向が正転、逆転、及び回転量に応じて、回転操作部材機能割付部25aを参照して、Z軸のプラス方向の移動コマンド、或いは、Z軸のマイナス方向の移動コマンド、並びに、回転量に応じた寸動量の倍数を動作パラメータ設定部25cに出力する。動作パラメータ設定部25cは、入力した移動コマンド、及び回転量に応じた寸動量の倍数に基づいて、動作パラメータ、すなわち、位置の微調整操作を行うための前記制御定数を設定し、動作制御部25dに前記移動コマンド、寸動量の倍数、制御定数を出力する。動作制御部25dは、前記移動コマンド、寸動量の倍数、制御定数に基づいて、ロボットRを制御する。
【0030】
ロボットRは、フロア等に固定されるベース部材Raと、複数の軸を介して連結された複数のアームRbとを備える。最も先端側に位置するアームRb先端部のエンドエフェクタRcには、ツールとしての溶接トーチTが設けられている。溶接トーチTは、溶加材としてのワイヤWaを内装し、図示しない送給装置によって送り出されたワイヤWaの先端とワークWとの間にアークを発生させ、その熱でワイヤWaを溶着させることによりワークWに対して溶接を施す。アームRb間には複数のモータ(図示しない)が配設されており、モータの駆動によって溶接トーチTを前後左右に自在に移動できるように構成されている。
【0031】
コントローラ20は、前記モータを駆動制御することにより、予め設定された教示データの主軌道に沿って溶接トーチTを動作させる。又、コントローラ20は、溶接電流及び溶接電圧といった溶接条件を図示しない溶接電源に対して出力し、該溶接電源から図示しないパワーケーブルを通じて供給される電力によって溶接作業を行わせる。
【0032】
(作用)
上記のように構成されたロボット制御システムの作用を説明する。
操作者は、TP10を操作して、教示モードにした状態で、溶接トーチTの位置の微調整操作を行う場合、TP10の回転操作部材13を回転操作して、図示しない表示装置に表示されたメニューのうち、「回転操作部材による教示位置の微調整操作項目」を選択し、キーボード11のエンターキー11aを押圧操作する。この操作により、コントローラ20の主制御部25は、記憶装置24から読み出された、回転操作部材機能割付部25a(キー割付テーブル)が、RAM23に展開される。
【0033】
この後、操作者は、デッドマンスイッチ12を押下した状態(オン状態)で、回転操作部材13の位置の微調整のために回転操作する。回転操作部材13の回転操作は、ロータリエンコーダ14により検出されて、その検出信号は、コントローラ20に送出(通知)される。
【0034】
コントローラ20の解釈実行部25bは、ロータリエンコーダ14の検出信号に基づいて、回転操作部材13の回転方向及び回転量を解釈し、解釈結果に応じて、すなわち、回転方向が正転、逆転、及び回転量に応じて、回転操作部材機能割付部25aを参照して、Z軸のプラス方向の移動コマンド、或いは、Z軸のマイナス方向の移動コマンド、並びに、回転量に応じた寸動量の倍数を動作パラメータ設定部25cに出力する。
【0035】
そして、動作パラメータ設定部25cは、入力した移動コマンド、及び回転量に応じた寸動量の倍数に基づいて、動作パラメータ、すなわち、位置の微調整操作を行うための前記制御定数を設定し、動作制御部25dに前記移動コマンド、寸動量の倍数、制御定数を動作制御部25dに出力する。動作制御部25dは、前記移動コマンド、寸動量の倍数、制御定数に基づいて、ロボットRを制御する。
【0036】
さて、本実施形態によれば、以下のような特徴がある。
(1) 本実施形態の位置の微調整方法では、TP10(教示装置)に設けられた回転操作部材13(回転操作手段)を、TP10に設けられたエンターキー11a(割付手段)により、溶接トーチT(ツール)の位置の微調整操作手段として、割付する。次に、回転操作部材13が操作された際、回転操作部材13の回転量及び回転方向をロータリエンコーダ14(検出手段)に検出させて、該回転量及び回転方向をコントローラ20に通知する。次に、コントローラ20のCPU21(制御手段)が、通知された前記回転量の単位毎に、予め定めた寸動量で、かつ、前記回転方向と対応して、予め定められたツール座標系(動作座標系)の予め定められたZ軸(進行方向の座標軸)に沿って、ロボットRを動作制御して、溶接トーチT(ツール)の位置の微調整を行う。
【0037】
この結果、本実施形態の位置の微調整方法によれば、操作者は、ロボットRの移動速度を寸動速度に設定する工程、溶接トーチTの座標系を動作座標系に設定する工程の2工程の作業が必要でなくなる。そして、教示位置の微調整時の操作手順が減るため、教示時間を低減させることができる。又、本実施形態の位置の微調整方法によれば、軸操作キーの押し替えを行なわず、回転操作部材13の回転だけで、直感的な教示位置の微調整作業が可能となる。さらに、位置の微調整操作する場合は、回転操作部材13の操作のみで予め定められたツール座標系の予め定められたZ軸に沿って移動させることができる。
【0038】
(2) 本実施形態のロボット制御システムによれば、回転操作部材13(回転操作手段)がエンターキー11a(割付手段)により位置の微調整操作手段として割り付けられた際には、TP10は、ロータリエンコーダ14が検出した、回転量及び回転方向をコントローラ20に通知する。コントローラ20のCPU21(制御手段)は、通知された回転量の単位毎に前記寸動量で、かつ、回転方向と対応して、ツール座標系の予め定められたZ軸に沿って、ロボットRを動作制御する。
【0039】
この結果、本実施形態のロボット制御システムによれば、従来の微調整を行う際には、キー操作で、複数の設定の切り替えが必要となっていたが、本実施形態では、それらの設定をひとまとまりの機能として取り扱うことで、設定ミスを防止し、操作手順を減らすことができる。又、従来は、位置の微調整を行う際、動作対象軸のプラス方向/マイナス方向キーの押し替えが必要となっていたが、回転操作部材13の回転によりこのプラス方向/マイナス方向への動作を回転量の単位に応じた寸動量で行えることにより、直感的な微調整が可能となり、操作性が格段に向上することができる。
【0040】
(3) 本実施形態のロボット制御システムによれば、動作座標系をツール座標系とした。そして、回転操作部材13の回転方向と対応して、ツール座標系の予め定められたZ軸が、ツール座標系のワイヤWaのリトラクト方向に沿った座標軸としている。そして、コントローラ20のCPU21は、通知された回転量の単位毎に寸動量で、かつツール座標系のワイヤWaのリトラクト方向に沿ったZ軸に沿って、ロボットRを動作制御する。この結果、アーク溶接ロボットを制御するロボット制御システムにおいて、ツール座標系のワイヤWaのリトラクト方向に沿ったZ軸に沿って位置の微調整を行う場合、上記(2)の効果を容易に実現できる。
【0041】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記実施形態では、ツール座標系としたが、溶接線座標系にしてもよい。溶接線座標系を、図3(a)〜(e)を参照して説明する。
【0042】
溶接線座標系は、まず、溶接方向(Z軸)に垂直な平面Hを考え、次に、図3(b)に示すようにZ軸に垂直な平面Hに対して溶接トーチTを投影する。投影した後の、溶接トーチTのリトラクト方向がX軸のプラス方向となる(図3(c)参照)。Y軸は、右手直交座標系で、Z軸とX軸に直交する方向となる。なお、図3(c)、(d)においては、W1,W2はワークである。
【0043】
本実施形態において、動作座標系を溶接線座標系にした場合、すでに教示された溶接線上における各教示点を溶接方向に微調整することができる。
・ 前記実施形態では、溶接ロボットのロボット制御システムに具体化したが、溶接ロボットのロボット制御システムに限定されるものではなく、溶接トーチではないツールの位置の微調整を行うロボット制御システムに適用できることは勿論である。
【0044】
・ 前記実施形態では、回転操作部材13により、図示しない表示装置のメニューの項目の中から、「回転操作部材による教示位置の微調整操作項目」を選択し、キーボード11のエンターキーを押圧操作した。この代わりに、回転操作部材13を回転可能に可能支持するだけでなく、回転操作部材13を、回転可能に軸支した軸に対して直交方向、又は軸方向に押圧移動可能に設けて、その押圧移動により、オン作動するスイッチを設けるようにしてもよい。この場合、このスイッチの押圧操作を、前記エンターキーの操作と代替することができる。このスイッチは、割付手段に相当する。
【0045】
・ 前記実施形態では、回転操作部材13により、図示しない表示装置のメニューの項目の中から、「回転操作部材による教示位置の微調整操作項目」を選択するようにしたが、この代わりに、位置の微調整操作を行う前に、TP10のキーボード11に設けられた機能設定キー(図示しない)を操作することにより、回転操作部材による教示位置の微調整操作項目を宣言するようにしてもよい。この場合は、操作者は、機能設定キーの押下すると、このキー操作に基づいて、微調整操作手段が設定される。この場合、機能設定キーは、割付手段に相当する。
【0046】
・ 前記実施形態では、アーク溶接ロボットのロボット制御システムに具体化したが、アーク溶接ロボットのロボット制御システムに限定されるものではなく、微調整移動による教示を行うためのロボット制御システムに適用できる。
【符号の説明】
【0047】
10…TP(教示装置)、11a…エンターキー(割付手段)、
13…回転操作部材(回転操作手段)、
14…ロータリエンコーダ(検出手段)、20…コントローラ、
21…CPU(制御手段)、T…溶接トーチ(ツール)、
Wa…ワイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
教示装置に設けられた回転操作手段を、教示装置に設けられた割付手段により、ロボットのエンドエフェクタに設けられたツールの位置の微調整操作手段として、割付する段階と、
前記回転操作手段が操作された際、該回転操作手段の回転量及び回転方向を検出手段に検出させて、該回転量及び回転方向をコントローラに通知する段階と、
前記コントローラに設けられた制御手段が、通知された前記回転量の単位毎に、予め定めた寸動量で、かつ、前記回転方向と対応して、予め定められた動作座標系の予め定められた進行方向の座標軸に沿って、ロボットを動作制御して、前記ツールの位置の微調整をすることを特徴とするロボットのツールの位置の微調整方法。
【請求項2】
回転操作手段と、該回転操作手段の回転量及び回転方向を検出する検出手段と、前記回転操作手段を、ロボットのエンドエフェクタに設けられたツールの位置の微調整操作手段として割付する割付手段とを備えた教示装置と、前記回転操作手段の回転量の単位に応じた寸動量及び動作座標系を記憶する記憶手段及びロボットを動作制御する制御手段を備えたコントローラとを含むロボット制御システムであって、
前記回転操作手段が前記割付手段により前記位置の微調整操作手段として割り付けられた際には、前記教示装置は、前記検出手段が検出した、回転量及び回転方向を前記コントローラに通知し、
前記制御手段は、通知された前記回転量の単位毎に前記寸動量で、かつ、前記回転方向と対応して、前記動作座標系の予め定められた進行方向の座標軸に沿って、ロボットを動作制御することを特徴とするロボット制御システム。
【請求項3】
前記ツールが、アーク溶接を行う溶接トーチであり、
前記動作座標系がツール座標系であり、
前記回転方向と対応して、前記動作座標系の予め定められた進行方向の座標軸が、前記ツール座標系のワイヤのリトラクト方向に沿った座標軸であり、
前記制御手段は、通知された前記回転量の単位毎に前記寸動量で、かつ前記ツール座標系のワイヤのリトラクト方向に沿った座標軸に沿って、ロボットを動作制御することを特徴とする請求項2に記載のロボット制御システム。
【請求項4】
前記ツールが、アーク溶接を行う溶接トーチであり、
前記動作座標系が溶接線座標系であり、
前記回転方向と対応して、前記動作座標系の予め定められた進行方向の座標軸が、前記溶接線座標系の溶接方向に沿った座標軸であり、
前記制御手段は、通知された前記回転量の単位毎に前記寸動量で、かつ、前記溶接線座標系の溶接方向に沿った座標軸に沿って、ロボットを動作制御することを特徴とする請求項2に記載のロボット制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−67895(P2011−67895A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220403(P2009−220403)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】