説明

ロボット制御装置およびロボットシステム

【課題】複数台のロボットで構成されるロボットシステムにおいて、各ロボットの動作を総合的かつ容易に制御することができるグラフィック言語を備えるロボットシステムを提供する。
【解決手段】複数台のロボットと、ロボットプログラムに基づいて制御するロボット制御装置10と、ロボット制御装置10に接続されロボットプログラムを表示するロボット教示装置11とからなり、ロボット制御装置10は1台以上のロボットを同時に制御するロボットシステムにおいて、1台以上のロボットを任意に組み合わせて1つのユニットを定義するユニット登録部1と、ユニット毎にタスクを割り当てるタスク登録部2と、タスク毎にロボットプログラムをグラフィックプログラムとして作成可能とするグラフィック言語処理部3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のロボットを制御するロボット制御装置およびそのロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のロボットを制御するロボット制御装置の従来のプログラムとしては、図7に示すようなシーケンスプログラムがあった。図7の第1シーケンスプログラムにおいてその縦欄にはステップ1からステップ2,3,・・・とステップが記述され、横欄にはロボットRB1、RB2及びRB3の各々をシーケンス制御するためのR1項、R2項及びR3項が記述されている。同一行は同一ステップであり、並列して処理される。各ステップの処理は、1つ前のステップの処理が完了した後に開始される。
各R項は、F欄と、作業欄と、部品欄と、ツール欄と、場所欄とからなる。F欄は、前ステップからの継続処理の有無を表しており、例えばR3項のステップ2のF欄のように矢印が記述されている場合には、1つ前のステップ1の処理がステップ2においても継続処理されることを示す(特許文献1参照)。
また、複数のロボット動作プログラムを表示する従来の装置について、図8〜図10を使って説明する。図8は、動作プログラム/状態表示部の表示画面の表示領域を、マスタタスク表示領域71、サブ1タスク表示領域72、サブ2タスク表示領域73、状態表示領域74に分割し、図9のフローチャートに従って同期して動く複数の動作プログラムを図10に示すように連動させながら表示する。 図10は左側に図9のフローチャートを、右側には図8のロボットの各動作プログラムによる状態表示画面を示し、図9のフローチャートにより図8の表示が制御される様子を示している。(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−67709号公報(第3頁右列第46行〜第4頁左列第17行、図2)
【特許文献2】特開平11−48178号公報(第3頁右列第33行〜第4頁左列第3行、図2、図3、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の発明は、ロボット毎に並列処理を行う場合に各々のロボットに対しプログラムを作成可能である点については有効である。しかしながら、複数のロボットが、ある作業単位で並列して処理を行うのか、または同期して処理を行うのかなどを操作者が総合的に判断することができない。
例えばワークに対し溶接を行う作業では、ワークをジグにセットする工程、溶接を施工する工程、ワークを反転する工程、溶接を施工する工程、次工程へワークを搬送する工程など複数の作業工程から構成されている。
特許文献1に記載の発明では、操作者は作業工程に関連して現在どの作業工程なのか、またはこの作業工程から次工程へはどのような条件で実行が遷移するのかなどについてはプログラムを見ることでしか判断することができないという問題があった。
一方、特許文献2記載の発明では、表示画面にはロボットの動作プログラムがそのまま表示されており、熟練した操作者以外には表示内容の意味が分かりづらいという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術が有していた問題を解決するものであり、作業工程に関連して現在どの作業工程なのか、またはこの作業工程から次工程へはどのような条件で実行が遷移するのかなどについて簡単に判断することができ、また、熟練者でなくても表示内容の意味が分かるロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ロボット制御装置に係り、 複数台のロボットのうち1台以上をロボットプログラムに基づいて同時に制御するロボット制御装置であって、前記複数台のロボットのうち1台以上を任意に組み合わせてユニットとして定義するユニット登録部と、前記ユニット毎にタスクを割り当てるタスク登録部と、前記ロボットプログラムを前記タスク毎にグラフィカルなプログラムとして作成するグラフィック言語処理部と、を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のロボット制御装置において、前記グラフィック言語処理部が、教示装置の表示手段の各行に時系列に実行するシーケンス番号を表示し、各列に前記タスクにて実行する前記ロボットプログラムを表示することを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のロボット制御装置において、前記グラフィック言語処理部が、現在のステップの実行終了後に、次のステップに実行を遷移させることを特徴としている。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載のロボット制御装置において、前記グラフィック言語処理部が、現在のステップの実行終了後に、前記ロボット制御装置に対する外部からの入力信号に基づいて所定のステップに実行を遷移させることを特徴としている。
【0010】
請求項5記載の発明は、ロボットシステムに係り、複数台のロボットと、前記複数台のロボットのうち1台以上をロボットプログラムに基づいて同時に制御するロボット制御装置と、前記ロボット制御装置に接続され前記ロボットプログラムの表示手段および編集手段を備えたロボット教示装置と、からなるロボットシステムにおいて、前記ロボット制御装置が請求項1〜4のいずれか1項記載のロボット制御装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
以上のような構成によって、本発明のロボットシステムは、特別な言語を習熟することなく複数のロボットの作業シーケンスを容易に作成できるという格段の効果をもたらすものであり、また、ロボットの作業実行中においては、実行状態をグラフィック表示することにより、操作者は現在の稼動状況を総合的に判断することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態として図1〜図6に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明のロボットシステムの構成図である。
図1において、R1、R2、R3、R4は、関節部に電動サーボモータを備えるロボットである。ここでロボットとは、一般的にポジショナと言われているものも含む。すなわち関節駆動部を備えるものを指す。以下の実施例においては、6軸の多関節ロボットを用いた場合を想定して説明する。
ロボット制御装置10は、ロボットR1、R2、R3、R4を制御する。本実施例では4台の例で説明するが、2台以上であればよい。また、ロボット制御装置についても、本実施例では1台の例で説明するが、複数のロボット制御装置が各々ロボットを制御する構成でもよい。
ロボット制御装置10には、教示装置11が接続されている。教示装置11は、操作者が操作する各種キーと、表示画面12を備えている。表示画面12には、操作者のキー操作に基づいて、後述するグラフィカルなソフトウェアボタンが表示される。ソフトウェアボタンは操作者が現在選択できる項目を表示しており、操作者がそのボタンを選択することでそのボタンに対応した画面やメッセージが新たに表示される。
操作者は、教示装置11のキーを操作してロボットR1〜R4のうち所望するロボットを動作させ、その位置を登録することができる。また、表示画面12に表示された命令を選択または入力することにより、ロボットの動作や作業をプログラムすることができる。
【0014】
教示装置11を操作して作成されたロボットプログラムは、ロボット制御装置10内の記憶部に格納される。ロボットプログラムは、教示装置11やその他の外部からの信号により実行が開始される。ロボットプログラムはロボット制御装置10内のプログラム実行部5にて実行され、サーボ制御部6にロボットの各関節のサーボモータに対する指令を出力する。各ロボットは以上の過程でロボットプログラムに基づいて制御される。
【0015】
ユニット登録部1は、複数のロボットの組み合わせをユニットとして登録する。
登録は、操作者が教示装置11のキーを操作して表示画面12に図2に示す表を表示させ、さらに教示装置11のキーを操作することで行う。
図2の例では、ユニット1(U1)にはロボットR1が、ユニット2(U2)にはロボットR2が、ユニット3(U3)にはロボットR1とロボットR2がそれぞれ登録されている。図2では、ユニットの登録数を99までとしているが、ロボット制御装置10に接続するロボットの台数や作業内容に応じて登録数を可変としてもよい。
【0016】
続いて、タスク登録部2について図3を用いて説明する。
タスク登録部2は、ユニット登録部1にて登録されたユニットとタスクの関係を登録するものである。タスクとは、ロボット制御装置10内で互いに独立して実行される作業単位である。
図3の例ではタスクはT0からT8まであり、タスク毎に、作業を行うユニットを設定できる。この設定についても、操作者が教示装置11のキーを操作して行う。タスクT2のように1つのタスクに複数のユニット(U2とU3)を割り付けることもできる。ただし、タスクT0は他のタスクを統制する特別なタスクであるため、ユニットの割り付けは行わない。
【0017】
次に、グラフィック言語処理部3について説明する。
グラフィック言語処理部3は、教示装置11のキー操作により図4に示す画面を表示画面12に表示する。
図4において、列方向に並ぶT0、T1、T2は前述のタスクを表し、行方向に並ぶ0〜5はシーケンス番号を表す。シーケンス番号とはロボットプログラムを構成する最小単位の命令ごとに割り当てられる番号である。
操作者は、教示装置11のキーおよび表示画面12上のソフトウェアボタン41〜44を操作し、プログラム領域40にソフトウェアボタンや条件を配置していくことで、グラフィカルなプログラムを作成することができる。
ここで、ソフトウェアボタン41〜44について説明する。
ソフトウェアボタン41は、ステップを意味する。ステップとはユニットが行う一連の作業をまとめたもので、「ST」と数字の組み合わせによって識別される。操作者はソフトウェアボタン41を選択時に、続いて教示装置11のキーを操作してステップに割り当てる数字を入力する。なお、ステップ0(ST000)はタスクT0で実行される。
ソフトウェアボタン42は、プログラムの実行の遷移を指定する際にソフトウェアボタン43または44と組み合わせて使用する。
ソフトウェアボタン43は条件つきのジャンプ機能であり、指定された条件が成立した場合、指定されたステップへプログラムの実行を遷移させるものである。
一方、ソフトウェアボタン44は無条件のジャンプ機能であり、無条件に指定されたステップへ実行を遷移させるものである。
条件の指定はソフトウェアボタン43、44を選択時に操作者が教示装置11のキーを操作して行う。
図4に示すようにソフトウェアボタンには文字のみならずその意味に即したマークが併記されており、これにより熟練した操作者でなくともプログラムの意味や流れについて容易に理解することができる。
【0018】
図5は作成したグラフィックプログラムの一例である。
図5のシーケンス番号2を例として説明する。シーケンス番号2は条件つきジャンプであり、その下に記述されている「IN10 ST001」とは、ロボット制御装置10内の入力信号番号10番に対して外部からの信号が入信した場合に、ステップ1(ST001)へ実行を遷移させることを意味している。
シーケンス番号5の行にある通り、ST001ではタスクT1にてP100が、タスクT2にてP200が実行される。P100、P200はそれぞれロボットプログラム100、ロボットプログラム200を示す。これらのロボットプログラムはステップを構成する要素であり、ロボットの動作命令が記述されていて記憶部に格納される。
さらに、シーケンス番号3、4も同様に、外部からの信号が入信した場合にそれぞれステップ2(ST002)、ステップ3(ST003)へ実行を遷移させることを意味している。
【0019】
プログラム変換部4は、操作者が作成した図5のようなグラフィックプログラムをロボットプログラムに変換する。グラフィックプログラムからロボットプログラムへの変換は、教示装置11のキー操作により実行することができる。
図5に示すグラフィックプログラムのシーケンス番号0〜4の部分をロボットプログラムに変換した場合の例を図6に示す。前述のように、変換されたロボットプログラムは記憶部に格納される。
シーケンス番号0〜4ではタスクT0のみしか記述されておらず、前述のようにタスクT0は他のタスクを統率するタスクであるため、ロボットを動作させる命令は図6には含まれていない。
【0020】
続いて、前述のようにして作成されたロボットプログラムの実行(プレイバック)について説明する。
操作者が教示装置11のキーを操作して記憶部に格納されたロボットプログラムから所望するものを選択すると、プログラム変換部4は先程とは逆にそのロボットプログラムをグラフィックプログラムへと変換し、表示画面12に表示する。
さらに、操作者が教示装置11のキーを操作することにより、選択したロボットプログラムをプレイバックさせることができる。具体的には、前述のようにロボット制御装置10内のプログラム実行部5が図6のようなロボットプログラムを解釈してサーボ制御部6に指令を出力し、各ロボットが作業を行う。
図5の例では、ステップ1(ST001)へジャンプするとタスクT1でロボットプログラム100(P100)を実行し、タスクT2でロボットプログラム200(P200)を実行するが、タスクT1にロボットR1とR2とを組み合わせたユニットを割り付け、タスクT2にロボットR3とR4とを組み合わせたユニットを割り付けた場合、ロボットプログラム100(P100)ではロボットR1、R2の2台の協調動作を実行し、ロボットプログラム200(P200)ではロボットR3、R4の2台の協調動作を実行する。この際、2つのロボットプログラムは並列に実行される。
また、プレイバック時においては、操作者が視認しやすいように表示画面12がモノクロ表示の場合にはプログラム領域40内の実行中の部分のみ反転表示にしたり、表示画面12が多色表示対応の場合にはプログラム領域40内の実行中の部分のみ色を変えたりして、プログラム内の現在の実行箇所を提示する。
【0021】
以上のように、本発明のロボットシステムによれば、特別な言語を習熟することなく複数のロボットの作業シーケンスを容易に作成できるという格段の効果をもたらすものであり、また、ロボットの作業実行中においては、実行状態をグラフィック表示することにより、操作者は現在の稼動状況を総合的に判断することができるようになるので、複数台のロボットを制御するロボットシステムであれば広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のロボットシステム構成図である。
【図2】図1に示すユニット登録画面の例を示す図である。
【図3】図1に示すタスク登録画面の例を示す図である。
【図4】図1に示すグラフィックプログラムの作成画面の例を示す図である。
【図5】図4に示す画面上で作成したグラフィックプログラムの例を示す図である。
【図6】図5に示すグラフィックプログラム例に対応するロボットプログラムを示す図である。
【図7】従来技術のシーケンスプログラムを示す図である。
【図8】従来技術の表示画面の領域分割の図である。
【図9】従来技術の処理を説明するフローチャートである。
【図10】従来技術の表示が制御される様子を表す図である。
【符号の説明】
【0023】
R1、R2,R3,R4 ロボット
1 ユニット登録部
2 タスク登録部
3 グラフィック言語処理部
4 プログラム変換部
5 プログラム実行部
6 サーボ制御部
10 ロボット制御装置
11 教示装置
40 プログラム領域
41 ステップを意味するソフトウェアボタン
42 遷移を意味するソフトウェアボタン
43 条件つきジャンプを意味するソフトウェアボタン
44 無条件ジャンプを意味するソフトウェアボタン
71 マスタタスク表示領域
72 サブ1タスク表示領域
73 サブ2タスク表示領域
74 制御状態表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のロボットのうち1台以上をロボットプログラムに基づいて同時に制御するロボット制御装置であって、前記複数台のロボットのうち1台以上を任意に組み合わせてユニットとして定義するユニット登録部と、前記ユニット毎にタスクを割り当てるタスク登録部と、前記ロボットプログラムを前記タスク毎にグラフィカルなプログラムとして作成するグラフィック言語処理部と、を備えることを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
前記グラフィック言語処理部は、教示装置の表示手段の各行に時系列に実行するシーケンス番号を表示し、各列に前記タスクにて実行する前記ロボットプログラムを表示することを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記グラフィック言語処理部は、現在のステップの実行が終了した後、次のステップに実行を遷移させることを特徴とする請求項2記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記グラフィック言語処理部は、現在のステップの実行が終了した後、前記ロボット制御装置に対する外部からの入力信号に基づいて所定のステップに実行を遷移させることを特徴とする請求項2または3記載のロボット制御装置。
【請求項5】
複数台のロボットと、前記複数台のロボットのうち1台以上をロボットプログラムに基づいて同時に制御するロボット制御装置と、前記ロボット制御装置に接続され前記ロボットプログラムの表示手段および編集手段を備えたロボット教示装置と、からなるロボットシステムにおいて、
前記ロボット制御装置が請求項1〜4のいずれか1項記載のロボット制御装置であることを特徴とするロボットシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−130577(P2006−130577A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319169(P2004−319169)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】