説明

ロータリ耕耘装置

【課題】耕耘爪の上方を覆うロータリカバーの後部にリヤカバーを上下回動可能に軸支したロータリ耕耘装置において、前記リヤカバーを所定の回動位置で固定する作業を一人で行えるようにする。
【解決手段】ロータリカバー16の後部にリヤカバー20を上下回動可能に軸支すると共に、ロータリカバー16側に固設したブラケット21に装着した吊りロッド23,23を介してリヤカバー20を吊持し、且つ該リヤカバー20を所定の回動位置に固定可能にロックレバー39に連係して作動するロック手段41を設け、更に前記ロックレバー39の操作に対してロック手段41のリヤカバー20のロック側への作動を一時的に遅延させる作動調整機構Aをオイルダンパー43を用いて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の機体後部に装着して圃場を耕耘するロータリ耕耘装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の機体後部に備える昇降リンク機構を介して装着されるロータリ耕耘装置においては、耕耘爪の上方を覆うロータリカバーの後部にリヤカバーを上下回動可能に軸支し、このロータリカバーとリヤカバーを耕耘軸を中心として一体的に前後回動するように構成すると共に、ロータリ耕耘装置の上部に固設した左右一対のトップマストに貫通軸架する支軸を設け、該支軸の一側端部に、ロータリカバーとリヤカバーとを作業条件に適した位置に一体的に回動調節する操作レバーを軸着する一方、当該支軸の他側端部に、リヤカバーを適宜の上下回動位置で固定するためのロックレバーを軸着してなるロータリ耕耘装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−157003号公報(第2−4頁、図5−図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したリヤカバーは耕耘作業時における耕深を検出する機能を有するほか、リヤカバーを下方位置に固定して耕耘土塊を土寄せする作業や、中間位置に固定して畦立作業を行ったり、上方位置に固定することによって洗車や畝盛り作業を行えるようになっている。そしてこの場合、通常の耕耘作業である標準耕や代掻き作業においては、ロータリカバー側に固設したブラケットにリヤカバーを吊持している吊りロッドのロックをロックレバーによって解除し、当該リヤカバーを自由に上下回動させることができるようになっている。一方、自由に上下回動可能な状態にあるリヤカバーを所定の回動高さ位置で固定する際は、先ずリヤカバーの後端部を持って所望の回動高さ位置に回動させ、次いでロックレバーによる吊りロッドのロック、即ち所定のリヤカバーの高さ位置で当該リヤカバーを固定しなければならなかった。
【0004】
しかし、前記リヤカバーは比較的重量が重く、しかもロータリ耕耘装置が大型化するほど更に重量が重くなるので、一人でリヤカバーの後端部を持って当該リヤカバーを上下回動させながら、所望の高さ位置でロックレバーによる吊りロッドのロックを行うことは容易な作業ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、耕耘爪の上方を覆うロータリカバーの後部にリヤカバーを上下回動可能に軸支すると共に、ロータリカバー側に固設したブラケットに装着した吊りロッドを介してリヤカバーを吊持し、また、該リヤカバーを所定の回動位置に固定可能にロックレバーに連係して作動するロック手段を設けたロータリ耕耘装置において、前記ロックレバーの操作に対してロック手段のリヤカバーのロック側への作動を一時的に遅延させる作動調整機構を設けたことを第1の特徴としている。
そして、前記作動調整機構をオイルダンパーを用いて構成したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、ロータリカバー側に固設したブラケットに装着した吊りロッドを介してリヤカバーを吊持し、また、該リヤカバーを所定の回動位置に固定可能にロックレバーに連係して作動するロック手段を設けたロータリ耕耘装置において、前記ロックレバーの操作に対してロック手段のリヤカバーのロック側への作動を一時的に遅延させる作動調整機構を設けたことによって、リヤカバーを所定の回動位置に固定する際は、ロックレバーをロック解除側からロック側に操作し、前記作動調整機構によるロック手段のロック側への作動が一時的に遅延している間に、リヤカバーの後端部を持って所望の高さ位置にリヤカバーを回動させて保持していれば、遅延後に自動的に吊りロッドのロックがなされるので、当該リヤカバーを所定の回動位置に固定する作業を一人で容易に行うことができるようになる。
そして、請求項2の発明によれば、前記作動調整機構をオイルダンパーを用いて構成したことによって、オイルダンパーの油室内で圧縮されたオイルがリリーフバルブを通過する際の抵抗力(減衰力)を利用して、当該作動調整機構を簡単な機構によって構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図5に示すように、トラクタ1の機体後部に備える昇降リンク機構2を介して装着されるロータリ耕耘装置3は、中央部にギヤケース4が設けてあり、このギヤケース4の上部には、側面視で略V字状に形成した2枚のプレートからなる側板5a,5bを所定の間隔で対向させて立設したトップマスト5備えている。そして、トップマスト5の前側上部は、昇降リンク機構2に備えるオートヒッチ6に連結ピン7を介して連結されると共に、当該トップマスト5は、図示しない尾輪や畦立器などを装着するためのツールバー8をネジ式調節装置9を介して上下角度調節自在に支持している。
【0008】
また、ギヤケース4の両側には、左右一対の筒状アーム10,11を配設すると共に、
筒状アーム10の左端側には、ロータリ耕耘装置2の伝動ケースであるチェンケース12を、また筒状アーム11の右端側には、サイドプレート13を固設している。そして、複数本の耕耘爪14を装着した耕耘軸15をチェンケース12とサイドプレート13の下部に軸支すると共に、チェンケース12に内装した伝動機構によって耕耘軸15が回転駆動するようになっている。
【0009】
また、上述した耕耘爪14の上方には、側面視で円弧状に形成した天板16aと、その左右両側に設けた側板16b,16bとからなるロータリカバー16を設けている。そして、ロータリカバー16を構成する天板16aの中央後部上面に補強板17を固設すると共に、この補強板17上にロータリカバー16を前後回動可能に支持するブラケット18を固設している。更に詳しくは、ブラケット18は、2枚のプレートからなる側板18a,18bを所定の間隔で対向させて立設した構成になっており、両側板18a,18bの後部側は、ロータリカバー16の後端部より後方に突出すると共に前後方向に向く長穴H,Hを穿設してある。
【0010】
そして、ロータリカバー16の後部に断面が略楕円形のパイプからなる中間カバー19を装着すると共に、この中間カバー19を介してリヤカバー20を上下回動可能に軸支している。尚、中間カバー19には左右2箇所に一対の側板21a,21bからなる吊持用ブラケット21が固設してあり、該ブラケット21とリヤカバー20側に設けた一対の側板22a,22bからなるブラケット22とを介して、リヤカバー20の左右の吊りロッド23,23を上下移動自在に支持すると共に、両吊りロッド23,23の下端部をブラケット22に回動自在に軸支している。
【0011】
また、中間カバー19の中央部上面には、平面視でコの字状に形成すると共に、その開口部24aをロータリカバー16側に向けたブラケット24を固設している。更に詳しくは、ブラケット24の両側板24b,24cをロータリカバー16のブラケット18の両側板18a,18bに外嵌すると共に、当該ブラケット24の両側板24b,24cの前端部側を、ロータリブラケット18の両側板18a,18bに穿設した前後方向の長穴H,Hに連結ピン25を用いて連結することによって、図中P1を回動支点とする中間カバー19の所定量の上下揺動を可能にしている。尚、中間カバー19は、上下回動位置で固定するようにしてもよい。そして、ブラケット24の閉塞部24dには、リヤカバー20を上下回動可能に軸支する支軸26の中間部を支えるサポート金具27を螺設している。
【0012】
尚、ロータリカバー16のブラケット18の側板18aには、側面視で逆L字状の支持部材28を固設すると共に、該支持部材28にゴム製の緩衝材29を取り付けている。この緩衝材29は、ロータリカバー16、中間カバー19及びリヤカバー20を前方に回動させた時、ギヤケース4に当接してガタ付きを防止するものである。
【0013】
また、図6及び図7に示すように、トップマスト5を構成する左右の側板5a,5bの下部には、回動自在な支軸30を貫通軸架すると共に、この支軸30には、両側板5a,5b間に位置して当該支軸30と一体に回動する作動アーム31を設けている。そして、作動アーム31の先端部には、基端部をロータリカバー16のブラケット18の側板18a,18bの間にピン32を用いて連結してなるロッド33の先端部を、ピン34を用いて連結している。
【0014】
上述した支軸30の一端、即ちトップマスト5の側板5b側には、当該支軸30に対して直交方向に貫通し、且つ付勢弾機35を捲装した連結ピン36を介してロータリカバー16を前後回動させる操作レバー37を軸着している。そして、この操作レバー37は、トップマスト5の側板5bの上部に固設した操作プレート38のガイド孔38aに沿って前後方向に回動操作できるようになっている。
【0015】
一方、支軸30の他端、即ちトップマスト5の側板5a側には、リヤカバー20を所定の回動位置に固定、または前記固定を解除してリヤカバー20を自由回動させるロックレバー39を軸着している。即ち、ロックレバー39は、その基端部に逆L字状に曲げ形成した支持プレート39aを固設し、この支持プレート39aの垂下部を介して支軸30に嵌合すると共に、トップマスト5の側板5aの中央部に固設した操作ボックス40のガイド孔40aに沿って前後方向に回動操作できるようになっている。つまり、上述したロックレバー39とロータリカバー16を回動させる操作レバー37とは、支軸30の両端部に設けてあり、当該ロックレバー39の回動支点と操作レバー37の回動支点は同一軸に構成されていることになる。
【0016】
そして、図6〜図8にロックレバー39と左右の吊りロッド23,23との関連構成を示すように、当該ロックレバー39に連係して作動するロック手段41によって、リヤカバー20の左右の吊りロッド23,23をロックできるように構成している。更に詳しくは、ロック手段41に連係するロックレバー39側の左右のワイヤー42L,42Rの策端金具42a,42aには長穴H1が設けてあり、この策端金具42a,42aの先端にオイルダンパー43のピストンロッド43aの先端部を連結すると共に、両ワイヤー42L,42Rの策端金具42a,42aの長穴H1に、ロックレバー39の基端部に固設した支持プレート39aの垂下部から外側に向けて立設させたピン39bを挿通している。
【0017】
尚、オイルダンパー43の基端部43bは、操作ボックス40に連結してあり、本発明では、ロックレバー39に連係して作動するロック手段41により、リヤカバー20の左右の吊りロッド23,23をロックする際、オイルダンパー43のピストンロッド43aがそれまでの圧縮状態から復帰する時、当該オイルダンパー43の油室内で圧縮されたオイルが図示しないリリーフバルブを通過することによって抵抗力(減衰力)が発生するので、この抵抗力を利用して、ロックレバー39操作によるロック手段41のロック解除側からロック側への作動を一時的に遅延させる作動調整機構Aを構成している。
【0018】
また、左右のワイヤー42L,42Rのアウターケーシングの先端部42bを、操作ボックス40の後側板40bに取り付ける一方、アウターケーシングの後端部42cを、吊持用ブラケット21の左右側板21a,21b間に跨設する連結軸44に形成した中空ボス44a側に取り付けると共に、この中空ボス44aに延出するインナーケーブルの後端に、圧縮スプリング45を介してロック方向に付勢されるロックピン46を設けることにより、上述したロック手段41を構成している。
【0019】
そして、図7にB矢印で示すように、ロックレバー39を操作ボックス40に形成したガイド孔40aに沿って前後に回動操作することにより、ロックピン46を、左右の吊りロッド23,23の軸方向に形成した複数の係合穴23a,・・・に係脱させることができるようになっている。尚、吊持用ブラケット21とブラケット22の間には、圧縮スプリング47を介装すると共に、両吊りロッド23,23の上端部にも圧縮スプリング48を介装している。
【0020】
更に、左右の吊りロッド23,23の上端には、ストッパープレート50が固設してあり、このストッパープレート50は、両吊りロッド23,23のロック状態が解除された時、下端部がピン49を介してリヤカバー20側のブラケット22に回動自在に軸支されると共に、上部が連結軸44のスライド孔44bに挿通して上下移動する両吊りロッド23,23の下限ストッパー、即ち支軸26を回動中心として自由に上下回動するリヤカバー20の下限ストッパーとして作用するようになっている。
【0021】
ところで、通常の標準耕耘作業や代掻き作業等においては、ロックレバー39を図7に二点鎖線で示す如くロック解除側に操作してリヤカバー20を自由に上下回動させている。この状態では、左右のワイヤー42L,42Rのインナーケーブルは、図中C矢印方向に引かれ、左右の吊りロッド23,23の複数の係合穴23aに係合可能なロックピン46が解除方向に完全に引き戻されると共に、オイルダンパー43のピストンロッド43aは縮作動し、オイルダンパー43の油室内に内装されている図示しない圧縮スプリングによって、当該ピストンロッド43aは伸作動方向に付勢されている。
【0022】
そして、リヤカバー20を自由に上下回動させる標準耕耘作業や代掻き作業状態から、リヤカバー20を下方位置に固定して耕耘土塊を土寄せする作業や、中間位置に固定しての畦立作業、または上方位置に固定しての洗車や畝盛り作業が行なえるように切り換える際は、上述したようにロック解除側に操作されているロックレバー39を図7に実線で示すロック側へ操作する。この時、オイルダンパー43のピストンロッド43aは、オイルダンパー43の油室内に内装されている圧縮スプリングによって伸作動しようとするが、
当該オイルダンパー43の油室内で圧縮されたオイルがリリーフバルブを通過して抵抗力(減衰力)が発生し、この抵抗力に抗してピストンロッド43aの前記伸作動が低速で徐々になされる。
【0023】
即ち、オイルダンパー43の油室内で圧縮されたオイルがリリーフバルブを通過する際の抵抗力(減衰力)を利用して、ロックレバー39に連係するロック手段41のロック側への作動を一時的に(数秒間)遅延させる作動調整機構Aを簡単な機構によって構成することができると共に、前記ロック手段41を構成するロックピン46の左右の吊りロッド23,23の係合穴23aへの係合動作が一時的に遅延している間に、リヤカバー20の後端部を持って所望の高さ位置にリヤカバー20を回動させて保持していれば、遅延後に自動的に両吊りロッド23,23のロックがなされるので、当該リヤカバー20を所定の回動位置に固定する作業を一人で容易に行うことができるようになる。また、エアーダンパーを用いて上述した作動調整機構Aを構成することも可能である。
【0024】
尚、上述したロック手段41に連係するロックレバー39側の左右のワイヤー42L,42Rの策端金具42a,42aに設けた長穴H1は、ロックレバー39とロック手段41との間に介装したオイルダンパー43の抵抗力による、左右の吊りロッド23,23の係合穴23aへのロックピン46の係合動作が徐々になされることを融通している。また、ロックレバー39は、支軸30を中心にロック解除位置とロック位置とに亘り、左右のワイヤー42L,42Rの張力により支点越えをして両位置に保持されるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】深耕作業時におけるロータリ耕耘装置の側面図。
【図2】代掻き作業時におけるロータリ耕耘装置の側面図。
【図3】土寄せ作業時におけるロータリ耕耘装置の側面図。
【図4】ロータリ耕耘装置の平面図。
【図5】ロータリ耕耘装置の斜視図。
【図6】作動調整機構の構成を示す要部背面図。
【図7】作動調整機構の構成を示す要部側面図。
【図8】吊りロッドの縦断面図。
【符号の説明】
【0026】
14 耕耘爪
16 ロータリカバー
19 中間カバー
20 リヤカバー
21 支持ブラケット
23 吊りロッド
39 ロックレバー
41 ロック手段
43 オイルダンパー
A 作動調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘爪(14)の上方を覆うロータリカバー(16)の後部にリヤカバー(20)を上下回動可能に軸支すると共に、ロータリカバー(16)側に固設したブラケット(21)に装着した吊りロッド(23,23)を介してリヤカバー(20)を吊持し、また、該リヤカバー(20)を所定の回動位置に固定可能にロックレバー(39)に連係して作動するロック手段(41)を設けたロータリ耕耘装置において、前記ロックレバー(39)の操作に対してロック手段(41)のリヤカバー(20)のロック側への作動を一時的に遅延させる作動調整機構(A)を設けたことを特徴とするロータリ耕耘装置。
【請求項2】
前記作動調整機構(A)をオイルダンパー(43)を用いて構成したことを特徴とする請求項1に記載のロータリ耕耘装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−53971(P2007−53971A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243517(P2005−243517)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】