説明

ロータ振れ調整治具

【課題】微妙な調整作業が容易で、引摺り試験の試験時間も飛躍的に短縮できるロータ振れ調整治具を提供する。
【解決手段】ディスクブレーキのロータ振れに基づく各種データを取得する引摺り試験装置に使用されるロータ振れ調整治具において、試験装置の回転軸10に装着される起動側治具20に対して、ロータ1に装着されるロータ側治具30を、互いの回転軸心の交差角度を調整可能に連結して構成したことにより、それぞれの治具20、30を回転軸10およびロータ1に装着したままで、互いの回転軸心の交差角度を調整できるので、試験前のロータ振れの微妙な調整作業が容易で、引摺り試験の試験時間も飛躍的に短縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキのロータ振れに基づく各種データを取得する引摺り試験装置に使用されるロータ振れ調整治具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において使用されるディスクブレーキ装置にあって、パッド部材により挟圧されて制動が行われるブレーキロータは、足廻りやロータ自身による精度の影響で、ロータは1回転する毎にインナやアウタに振れて元に戻るため、精度が悪いとその振れ量も大きくなる。さらに繰り返し制動によるロータの高温熱倒れや冷却後の復帰も相俟って、ロータ側面とパッドとの間の不均一な接触摺動によるジャダー等の引摺り現象が見られるようになる。その引摺り現象の分析・把握のために、回転軸に対してロータの側面が傾斜したロータの振れを実験的に作り出した引摺り試験(例えば下記非特許文献1参照)が行われている。従来の引摺り試験では、試験装置の回転軸に対するロータの振れを調整して設定するには、前記回転軸へのロータの取付面に適宜選定された厚みのシムを偏在させて挟持させ、またその挟持深さを調整することにより行っていた。
【非特許文献1】JASO−C448−89(自動車規格)引摺り試験
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来のような引摺り試験では、試験毎に異なったロータの振れ角度を調整して設定するには、適宜選定された異なった厚みのシムを試験装置の回転軸の取付面とロータの取付面との間に挟持して介在させる必要があり、その都度、ボルト等により取り付けられたロータを試験装置の回転軸から取り外さなければならず、振れの微妙な調整作業に多大の時間を要していた。また、シムでは振れのきれいなサインカーブをうまく作りづらく、自然にできるロータ振れを再現させることは困難であった。
【0004】
そこで本発明は、前記従来の引摺り試験における課題を解決して、振れの微妙な調整作業が容易で、引摺り試験の試験時間も飛躍的に短縮できるロータ振れ調整治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため本発明は、ディスクブレーキのロータ振れに基づく各種データを取得する引摺り試験装置に使用されるロータ振れ調整治具において、試験装置の回転軸に装着される起動側治具に対して、ロータに装着されるロータ側治具を、互いの回転軸心の交差角度を調整可能に連結して構成したことを特徴とする。また本発明は、前記互いの治具の連結部として、起動側治具とロータ側治具のいずれか一方から突出形成した板状の連結突起部をいずれか他方に形成した連結溝部に係合させて板面連結部を構成するとともに、ロータ側治具を揺動可能に構成して、調整具により起動側治具とロータ側治具との間の互いの回転軸心の交差角度を調整できるように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記試験装置の回転軸心上でいずれか他方の治具の板面連結部に対して直交配置された支軸を中心としてロータ側治具を揺動可能に構成するとともに、1つまたは複数の調整具により起動側治具とロータ側治具との間の互いの回転軸心の交差角度を調整できるように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記調整具は、前記板面連結部の板面内で直径上の両端部に、回転軸と平行に配設した一対の調整ボルトから構成したことを特徴とする。また本発明は、前記板状の連結突起部と連結溝部との揺動摺接面が円弧状に形成されたことを特徴とする。また本発明は、互いの連結面が近接付勢されかつ一方に対して他方が傾動可能に構成された起動側治具とロータ側治具とを、回転軸上に配置した連結具を介して連結するように構成するとともに、複数の調整具により起動側治具とロータ側治具との間の互いの回転軸心の交差角度を調整できるようにしたことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ディスクブレーキのロータ振れに基づく各種データを取得する引摺り試験装置に使用されるロータ振れ調整治具において、試験装置の回転軸に装着される起動側治具に対して、ロータに装着されるロータ側治具を、互いの回転軸心の交差角度を調整可能に連結して構成したことにより、それぞれの治具を回転軸およびロータに装着したままで、互いの回転軸心の交差角度を調整できるので、調整作業が容易で、引摺り試験の試験時間も飛躍的に短縮できる。
【0007】
また、前記互いの治具の連結部として、起動側治具とロータ側治具のいずれか一方から突出形成した板状の連結突起部をいずれか他方に形成した連結溝部に係合させて板面連結部を構成するとともに、ロータ側治具を揺動可能に構成して、調整具により起動側治具とロータ側治具との間の互いの回転軸心の交差角度を調整できるように構成した場合は、ロータの傾動に必要最低限の板面連結部によりその面内にて円滑にガイドされて、精度よく互いの回転軸心の交差角度を調整できる上、回転軸とロータとの間の回転トルクが板面連結部を介して面圧低く高い強度で伝達することができる。さらに、前記試験装置の回転軸心上でいずれか他方の治具の板面連結部に対して直交配置された支軸を中心としてロータ側治具を揺動可能に構成するとともに、1つまたは複数の調整具により起動側治具とロータ側治具との間の互いの回転軸心の交差角度を調整できるように構成した場合は、それぞれの治具が、支軸を中心とした高い強度に裏打ちされて、板面連結部の面内でのガイドされた揺動を確実なものとすることができる。
【0008】
さらにまた、前記調整具は、前記板面連結部の板面内で直径上の両端部に、回転軸と平行に配設した一対の調整ボルトから構成した場合は、互いの治具が揺動した際に、最も大きく隙間が変動する部位にて一対の調整ボルトがロータ振れを負担するので、ロータ振れの調整を効率良く行うことができる。また、前記板状の連結突起部と連結溝部との揺動摺接面が円弧状に形成された場合は、調整具による治具同士の揺動調整を円滑に行うことができる上、ロータに対して引摺りトルクから発生する軸方向の分力を円弧状の揺動摺接面にも分散させることができる。
【0009】
さらに、互いの連結面が近接付勢されかつ一方に対して他方が傾動可能に構成された起動側治具とロータ側治具とを、回転軸上に配置した連結具を介して連結するように構成するとともに、複数の調整具により起動側治具とロータ側治具との間の互いの回転軸心の交差角度を調整できるようにした場合は、互いの治具の連結面が平面状であっても、回転軸上に配置した連結具を支点として、複数の調整具により互いの回転軸心の交差角度を調整することができるので、治具の構造が簡素化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のロータ振れ調整治具を実施するための好適な形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明のロータ振れ調整治具の第1実施例を示す要部断面図、図2は本発明のロータ振れ調整治具が使用される引摺り試験装置の全体概略図、図3は本発明のロータ振れ調整治具の第2実施例を示す要部断面図、図4は本発明のロータ振れ調整治具の第3実施例を示す要部分解斜視図、図5は本発明のロータ振れ調整治具の第4実施例を示す要部断面図である。本発明のロータ振れ調整治具の基本的な構成は、図1に示すように、ディスクブレーキのロータ振れに基づく各種データを取得する引摺り試験装置に使用されるロータ振れ調整治具において、試験装置の回転軸10に装着される起動側治具20に対して、ロータ1に装着されるロータ側治具30を、互いの回転軸心の交差角度を調整可能に連結して構成したことを特徴とする。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明のロータ振れ調整治具の第1実施例を示す要部断面図である。各部材の取付形態については後述する図4の第3実施例にて詳述する。本実施例のものは、起動側治具20に貫通配設され回転軸上の支軸ボルト2を中心としてロータ側治具30が揺動調整される。ロータ側治具30から起動側治具20に向けて突出形成される板状等の連結突起部33が、起動側治具20にその回転軸と同軸上に貫通穿設された嵌合孔21に挿入されて支軸ボルト2にて支持されている。前記嵌合孔21には、後述する試験装置の回転軸10が整合して嵌合され、図示省略の後述する第3実施例のものと同様の固定ボルト4(図示省略)にて接続される。
【0012】
本実施例では、板状等の連結突起部33の板面内で直径上の両端部にて、回転軸と平行に配設した一対の調整ボルト5、5(下部の調整ボルト5は図示省略)を起動側治具20内においてL字形のレンチ等により螺合進退させることにより、起動側治具20とロータ側治具30との間の互いの回転軸心の交差角度の調整、すなわちブレーキロータ(以下ロータという)1の振れ角度を調整することができる。この手法によって同一のロータを振れ量別に測定でき、データの比較において信頼性が高まるという効果が得られる。なお、本実施例では、起動側治具20にその回転軸と同軸上に貫通穿設された嵌合孔21については、試験装置の回転軸10を受け入れる側は回転軸10の嵌合突起11と同様に円形断面とし、ロータ側治具30の板状の連結突起部33を受け入れる側は板状の連結突起部33と整合する板状の溝としてもよいし、板状の溝を貫通させて、回転軸10側の嵌合突起11をそれに整合する板状体とすることもできる。
【0013】
図2は本発明のロータ振れ調整治具が使用される引摺り試験装置の全体概略図である。。引摺り試験装置は、マスタシリンダ115、バキュームポンプ117、台座移動用モータ111等を収容・設置した台枠101の上面にディスクブレーキキャリパ108が設置された静止支柱102と、該静止支柱102に対してロータ107を回転かつ傾動可能に取り付けた回転軸105(図1および図4では符号10)を軸支する可動支柱103を軸方向に移動可能に設置して構成される。マスタシリンダ115は、エアーサーボ制御により正圧管路120、管路122を通じてディスクブレーキキャリパ108に所定圧のエアーを供給する。バキュームポンプ117は、第1負圧管路121Aを通じてバキュームタンク116からエアーを吸引し、該バキュームタンク116は、第2負圧管路121B、管路122を通じてディスクブレーキキャリパ108に負圧を掛けることができる。管路122と正圧管路120および第2負圧管路121Bとの間の分岐部には切換弁123が配設され、ディスクブレーキキャリパ108への正圧と負圧を供給して、加圧解除、ピストン戻しと解除がなされる。
【0014】
静止支柱102は台枠101の上面の一方側に起立固定され、その上部に水平に支持軸104が支持固定される。該支持軸104の回転軸側の端部に取付板等を介してディスクブレーキキャリパ108が取り付けられる。支持軸104の外側端部には、ディスクブレーキキャリパ108がロータ107(図1〜図3では符号1)からの回転動作がなされた際にパッド等に接触して支持軸104に発生する引摺りトルクを検出するトルク検出アーム118と検出器であるロードセル119が配設される。前記静止支柱102に対して、可動支柱103が台枠101の上面の他方側に軸方向に移動可能に起立設置される。可動支柱103は、レール等(図示省略)を介して台枠101の上面に移動手段によりスライド自在に設置された可動台座114上に固定される。可動台座114は、台枠101内に収容された台座移動用モータ111からの動力を得て、適宜の伝達手段例えばプーリーベルト112等を介して螺子スピンドル113の回転に伴って螺子スピンドル113と螺合する手段を有して軸方向に移動できる。移動手段は、台座移動用モータ111、プーリーベルト112、螺子スピンドル113および可動台座114から構成される。
【0015】
前記可動支柱103の上部には水平に回転軸105が軸支され、可動支柱103の上方に回転軸105に平行に設置された回転軸用サーボモータ109から動力を得て、可動支柱103の外側に配置された適宜の伝達手段例えばプーリーベルト110等を介して回転自在に構成される。回転軸105の内側にはロータ振れ調整治具106を介してロータ107が装着される。ロータ振れ調整治具106は、回転軸105に装着される起動側治具とロータ107に装着されるロータ側治具とから構成され、これら起動側治具とロータ側治具とは、支軸106A(図1および図4では符号2)を介して揺動首振り自在でかつその揺動角度を調整して固定できるように構成されている。その揺動角度の調整は、起動側治具とロータ側治具との間の隙間を調整ボルト等の進退により行われる。それにより、試験開始前に、所望のロータ振れを容易に設定することができる。ここで符号124は、可動台座114等の可動部に設置されロータ107の側面の軸方向に配設されてロータの振れを計測するダイヤル変位計を示す。ロータ107の軸方向移動量も計測するなら、ダイヤル変位計124を台枠101等の静止部に設置してもよい。
【実施例2】
【0016】
図3は本発明のロータ振れ調整治具の第2実施例を示す要部断面図である。本実施例では、前記第1および後述するる第3実施例のもののように、ロータ側治具30の揺動中心に配設される支軸ボルト2は廃止されている。したがって、ロータ側治具30から突出形成される連結板状等の突起部33は、回転軸10の嵌合突起(図示省略)ための嵌合孔21の出口近傍のガイド部に嵌合係止され、その上下の治具20、30の対向面間に形成された円弧状のR部からなる揺動保持部25、35との当接、および板状等の連結突起部33の板面内で直径上の両端部に螺合配設された一対の調整ボルト5、5とによって、起動側治具20とロータ側治具30との互いの回転軸心の交差角度の調整、すなわちロータ1の振れ角度を調整することができる。好適には、起動側治具20の円弧面25のRの方をロータ側治具30の円弧面35のrの方より大きくして構成される。
【実施例3】
【0017】
図4は本発明のロータ振れ調整治具の第3実施例を示す要部分解斜視図である。本実施例のロータ振れ調整治具は、前記図2のディスクブレーキ引摺り試験装置の回転軸10(105)にブレーキロータ1(107)を取り付けるのに使用されるもので、回転軸10に装着される起動側治具20とロータ1に装着されるロータ側治具30とから構成される。回転軸10と起動側治具20とは、回転軸10から回転軸と同心状に軸方向に突出形成された嵌合突起11と、該嵌合突起11と整合して起動側治具20の対向端面に刻設された有底状の嵌合穴21との嵌合により連結される。回転軸10の起動側治具20との接続端面において嵌合突起11の周囲の円周上に例えば4個の有底状の螺合穴12が形成され、これらの螺合穴12に対応して、起動側治具20を貫通して軸方向に4つのボルト孔22が穿設される。これらのボルト孔22に固定ボルト4が挿入・螺合され、かつ前記嵌合突起11と嵌合穴21とが整合嵌合されて、回転軸10と起動側治具20とが接続される。
【0018】
ロータ1とロータ側治具30とは、ロータ側治具30から回転軸と同心上に軸方向に突出形成された嵌合突起31と、該嵌合突起31と整合してロータ1の対向端面に刻設された貫通状の嵌合孔6との嵌合により連結される。ロータ側治具30のロータ1との接続端面において嵌合突起31の周囲の円周上に例えば4個の有底状の螺合穴32が形成され、これらの螺合穴32に対応して、ロータ1を貫通して軸方向に4つのボルト孔(図示省略)が穿設され、これらのボルト孔に固定ボルト(図示省略)が挿入・螺合され、かつ前記嵌合突起31と嵌合孔6とが整合嵌合されて、ロータ側治具30とロータ1とが接続される。
【0019】
前記起動側治具20とロータ側治具30とを接続して連結するには、本実施例では、互いの治具の連結部として、ロータ側治具30から直径上で突出形成した板状の連結突起部33を起動側治具20の対向面に形成した連結溝部23に係合させて板面連結部を構成するとともに、ロータ側治具30を起動側治具20に対して揺動可能に構成したものである。本実施例では、起動側治具20とロータ側治具30との間の互いの回転軸心の交差角度を調整するための構成として、前記試験装置の回転軸10の軸心上でロータ側治具30の板面連結部に対して直交配置され、起動側治具20の連結溝部23およびロータ側連結治具30における連結突起部33の支軸ボルト孔34を直交状に貫通する支軸ボルト2からなる支軸を中心としてロータ側治具30を揺動可能に構成したものである。支軸ボルト2の先端の螺子部には支軸ナット3が螺合されて抜止めされ、これらはロータ側治具30の脱落を防ぐことができる。
【0020】
前記板面連結部の板面内で直径上の両端部に、回転軸と平行に配設した一対の調整ボルト5、5を起動側治具20内においてL字形のレンチ等により螺合進退させることにより、起動側治具20とロータ側治具30との間の互いの回転軸心の交差角度の調整、すなわちロータ1の振れ角度を調整することができる。一対の調整ボルト5、5は、板面連結部の板面内で直径上の両端部に配設されている。また、本実施例では、前記板状の連結突起部33と連結溝部23との揺動摺接面が円弧状に形成されているので、調整ボルト5、5等の調整具による治具20、30同士の揺動調整を円滑に行うことができる上、ロータ1に対して引摺りトルクから発生する軸方向の分力を円弧状の揺動摺接面にも分散させることができる。
【0021】
かくして、本実施例では、それぞれの治具20、30が、支軸ボルト2を中心とした高い強度に裏打ちされて、板面連結部の面内でのガイドされた揺動を確実なものとすることができ、ロータ1の傾動に必要最低限の板面連結部によりその面内にて円滑にガイドされて、精度よく互いの回転軸心の交差角度、すなわちロータ振れを調整できる上、回転軸とロータ1との間の回転トルクが板面連結部を介して面圧低く高い強度で伝達することができる。なお、前記一対の調整ボルト5、5の組合せに代えて、例えば、上側部分のみに、長孔を設けた帯状の連結部材を起動側治具20とロータ側治具30に渡設し、それぞれの治具に螺合したビスと長孔との間で起動側治具20とロータ側治具30との間の隙間を調整することで、ロータ1の振れ角度を調整するようなことを排除するものではない。
【実施例4】
【0022】
図5は本発明のロータ振れ調整治具の第4実施例を示す要部断面図である。本実施例のものは、起動側治具20あるいはロータ側治具30に連結突起部33等を形成せずに、それらの連結対向面が平面状に形成されている。つまり、互いの連結面がばねにより近接付勢されかつ一方に対して他方が傾動可能に構成された起動側治具20とロータ側治具30とを、回転軸の軸心上に配置した連結具40を介して連結するように構成したものである。図示の例では、起動側治具20の回転軸心上に形成された螺子孔あるいはスプライン孔(スプライン孔の場合は、軸方向への抜止め部材が設置される)42に対して、連結具41が螺合ないしスプライン嵌合される。連結具41の軸部の外周には縦断面がL字形のリテーナ43が螺合され、該リテーナ43の大径フランジ47とロータ側治具30の小径フランジ48との間に皿ばね44等の付勢手段が介設される。
【0023】
ロータ側治具30の小径フランジ48の内径側にはリテーナ43の外周との間に隙間45を設けて、ロータ側治具30の起動側治具20に対する揺動調整を可能にする。リテーナ43の連結具41の軸部の外周への螺合調整により、前記皿ばね44のイニシャル付勢力を調整できる。連結対向面の両治具間に介設された剪断ピン7は、両治具間の伝達駆動力を受け持つ。このように構成したので、互いの治具20、30の連結面が平面状であっても、回転軸心上に配置した連結具41を支点として複数の調整ボルト5等の調整具により起動側治具20とロータ側治具30との間の互いの回転軸心の交差角度、すなわちロータの振れ角度を調整できるので、各治具の構造が簡素化される。また、いずれの実施例の場合も、ロータ摺動面にダイヤル変位計124(図2)を軸方向にセットし、所望のロータ振れ量(例えば50μm)にセットされたかどうかを、ダイヤル変位計124を見ながら調整ボルト5を調整する。
【0024】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、試験装置の回転軸の形状、形態、起動側治具の回転軸へのおよびロータ側治具のロータへの装着形態(その断面形状を含む嵌合突起と嵌合穴あるいは嵌合孔との嵌合形態、いずれの側に嵌合突起を形成するか、螺合穴と固定ボルト等の螺合形態等)、起動側治具とロータ側治具との連結形態(円弧状の揺動摺接面を形成した板状連結面を介した連結突起部および連結溝部による連結形態や円弧状の揺動摺接面を廃した連結形態、板面連結部に対して直交配置された支軸を中心としたロータ側治具の揺動形態等の他、支軸を廃した円弧状の揺動摺接面による連結形態等)、調整具の形状、形式(回転軸と平行に配設螺合した調整ボルトの進退による両治具間の隙間調整他、隙間を調整する適宜の形態、例えば、起動側治具とロータ側治具に渡設し長孔を設けた帯状の連結部材と、各治具に螺合するビスの緊締による隙間調整形態等)、配設部位(板面連結部の板面内で直径上の両端部等、好適には起動側治具側に設置されるが、ロータ側治具側に設置することもできる。)、起動側治具とロータ側治具との連結対向面が平面状に形成された場合で、互いの連結面の近接付勢形態(皿ばねの他、圧縮コイルばね、波形ばね等)、連結具の形状、形式、連結形態、調整具の配列形態(各治具の連結面のこじり挙動が生じない調整ボルト等の配列等)等については適宜選定できる。また、本発明は、引摺り試験機に基づいて述べてきたが、他のベンチテスト試験機、ステアリング変形に伴う確認試験であるノックバック試験機、簡単な制動等の解析試験機、ロータ振れを説明するプレゼンテーション等での説明用の展示等に用いることができる。実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のロータ振れ調整治具の第1実施例を示す要部断面図である。
【図2】本発明のロータ振れ調整治具が使用される引摺り試験装置の全体概略図である。
【図3】本発明のロータ振れ調整治具の第2実施例を示す要部断面図である。
【図4】本発明のロータ振れ調整治具の第3実施例を示す要部分解斜視図である。
【図5】本発明のロータ振れ調整治具の第4実施例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ロータ
2 支軸(ボルト)
3 支軸ナット
4 固定ボルト
5 調整具(ボルト
6 嵌合孔
10 (試験装置の)回転軸
11 嵌合突起
12 螺合穴
20 起動側治具
21 嵌合穴(孔)
22 ボルト孔
23 連結溝部
30 ロータ側治具
31 嵌合突起
32 ボルト孔
33 連結突起部
34 支軸ボルト孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクブレーキのロータ振れに基づく各種データを取得する引摺り試験装置に使用されるロータ振れ調整治具において、試験装置の回転軸に装着される起動側治具に対して、ロータに装着されるロータ側治具を、互いの回転軸心の交差角度を調整可能に連結して構成したことを特徴とするロータ振れ調整治具。
【請求項2】
前記互いの治具の連結部として、起動側治具とロータ側治具のいずれか一方から突出形成した板状の連結突起部をいずれか他方に形成した連結溝部に係合させて板面連結部を構成するとともに、ロータ側治具を揺動可能に構成して、調整具により起動側治具とロータ側治具との間の互いの回転軸心の交差角度を調整できるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のロータ振れ調整治具。
【請求項3】
前記試験装置の回転軸心上でいずれか他方の治具の板面連結部に対して直交配置された支軸を中心としてロータ側治具を揺動可能に構成するとともに、1つまたは複数の調整具により起動側治具とロータ側治具との間の互いの回転軸心の交差角度を調整できるように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載のロータ振れ調整治具。
【請求項4】
前記調整具は、前記板面連結部の板面内で直径上の両端部に、回転軸と平行に配設した一対の調整ボルトから構成したことを特徴とする請求項2または3に記載のロータ振れ調整治具。
【請求項5】
前記板状の連結突起部と連結溝部との揺動摺接面が円弧状に形成されたことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のロータ振れ調整治具。
【請求項6】
互いの連結面が近接付勢されかつ一方に対して他方が傾動可能に構成された起動側治具とロータ側治具とを、回転軸心上に配置した連結具を介して連結するように構成するとともに、複数の調整具により起動側治具とロータ側治具との間の互いの回転軸心の交差角度を調整できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のロータ振れ調整治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−145188(P2010−145188A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321720(P2008−321720)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】