ワーク加工方法およびワーク加工装置
【課題】X軸方向、Y軸方向の軸送りの直交ズレの影響を受けることなく高精度な加工を可能にする。
【解決手段】チャックテーブル上でXY直交座標系のY方向に所定距離だけ離間配置された複数のY方向基準パターンを用い、少なくとも2つのY方向基準パターンPY6,PY8を所定距離α移動させて撮像手段の視野範囲E1,E2に位置付けて撮像してその位置情報を求め、求められたこれら位置情報および移動距離αに基づきX軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角を求め、対象となるワークの加工に際しては直交ズレ角に基づいて所望の加工位置の設計座標値を補正して加工手段を位置付けるようにした。
【解決手段】チャックテーブル上でXY直交座標系のY方向に所定距離だけ離間配置された複数のY方向基準パターンを用い、少なくとも2つのY方向基準パターンPY6,PY8を所定距離α移動させて撮像手段の視野範囲E1,E2に位置付けて撮像してその位置情報を求め、求められたこれら位置情報および移動距離αに基づきX軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角を求め、対象となるワークの加工に際しては直交ズレ角に基づいて所望の加工位置の設計座標値を補正して加工手段を位置付けるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばワークの所望位置に細孔を形成する如き、ワーク加工方法およびワーク加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状の半導体ウエーハの表面の分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスが形成される。そして、このような半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って分割し個々の半導体チップを製造している。ここで、製品の小型化、高機能化を図るため、複数の半導体チップを積創始、積層された半導体チップの電極を接続するモジュール構造が実用化されている。このモジュール構造には、半導体ウエーハの電極が形成された箇所に貫通孔(ビアホール)を形成し、この貫通孔に電極と接続するアルミニウム等の導電性材料を埋め込む構造が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような貫通孔を形成するための加工を効率よく形成することができるレーザ加工装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。このようなレーザ加工装置では、ワークを保持するチャックテーブルとワークにレーザ光線を照射するレーザ光線照射手段とをX軸方向に相対的に移動させるX軸方向送り手段と、チャックテーブルとレーザ光線照射手段とをY軸方向に相対的に移動させるY軸方向送り手段とを備え、レーザ光線照射手段をワークの所望の位置に位置付けて貫通孔を形成するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−163323号公報
【特許文献2】特開2006−247674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなレーザ加工装置は、X軸方向送り手段とY軸方向送り手段との送り方向が直交するように設計・製造されるが、現実には、その直交精度が十分に調整・維持できない場合がある。
【0006】
よって、このようなX軸方向、Y軸方向の送り手段に直交ズレがあると、ワーク上の所望の位置に位置付けて貫通孔を形成する際に、直交ズレの影響を受けて所望の位置からずれた箇所に貫通孔を形成してしまうこととなり、高精度な加工要求に応えることができないものとなってしまう。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、X軸方向、Y軸方向の軸送りの直交ズレの影響を受けることなく高精度な加工が可能なワーク加工方法およびワーク加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるワーク加工方法は、ワークを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたワークを加工する加工手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをXY直交座標系のX方向に平行なX軸方向に相対的に移動させる第1の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをX軸方向に略直交するY軸方向に相対的に移動させる第2の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なX軸方向位置を検出する第1の位置検出手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なY軸方向位置を検出する第2の位置検出手段と、前記加工手段との位置関係が固定されて、前記チャックテーブルに保持されたワークを撮像する撮像手段と、を備える加工装置を用いて、前記チャックテーブルに保持されたワークのXY直交座標系における所望の加工位置に前記加工手段で加工させるワーク加工方法であって、前記チャックテーブル上でXY直交座標系のY方向に所定距離だけ離間配置された複数のY方向基準パターンをX軸方向に対して直交するよう位置決めして用い、前記チャックテーブルと前記加工手段とを順次相対的に所定距離だけ移動させて前記撮像手段によって順次撮像した少なくとも2つの前記Y方向基準パターンの位置情報を求め、求められたこれらY方向基準パターンの位置情報および移動距離に基づきX軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角を求める直交ズレ角算出工程と、XY直交座標系における設計座標値が設定された所望の加工位置を含むワークを前記チャックテーブルに保持させるワーク保持工程と、前記チャックテーブル上に保持されたワークの所望の加工位置の加工に際して、前記直交ズレ角算出工程で算出された前記直交ズレ角に基づいて該所望の加工位置の設計座標値に補正を施し、補正された設計座標値に基づいて前記チャックテーブルと前記加工手段とを相対的に移動させ前記加工手段を当該設計座標値の加工位置に位置付けて加工させる加工制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかるワーク加工方法は、上記発明において、前記加工制御工程は、前記直交ズレ角に基づき所望の加工位置の設計座標値のX座標値に補正を施し、前記第1の送り手段による送り量を前記第1の位置検出手段に従い制御するとともに、所望の加工位置の設計座標値のY座標値に基づいて前記第2の送り手段による送り量を1次元でリニアに制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかるワーク加工方法は、上記発明において、前記加工制御工程は、前記直交ズレ角に基づき所望の加工位置の設計座標値のX座標値およびY座標値に補正を施し、前記第1の送り手段および前記第2の送り手段による送り量を前記第1の位置検出手段および前記第2の位置検出手段に従い制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかるワーク加工装置は、ワークを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたワークを加工する加工手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをXY直交座標系のX方向に平行なX軸方向に相対的に移動させる第1の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをX軸方向に略直交するY軸方向に相対的に移動させる第2の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なX軸方向位置を検出する第1の位置検出手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なY軸方向位置を検出する第2の位置検出手段と、前記加工手段との位置関係が固定されて、前記チャックテーブルに保持されたワークを撮像する撮像手段と、を備え、前記チャックテーブルに保持されたワークのXY直交座標系における所望の加工位置に前記加工手段で加工するワーク加工装置であって、前記チャックテーブル上でXY直交座標系のY方向に所定距離だけ離間配置された複数のY方向基準パターンをX軸方向に対して直交するよう位置決めして用い、前記チャックテーブルと前記加工手段とを順次相対的に所定距離だけ移動させて前記撮像手段によって順次撮像した少なくとも2つの前記Y方向基準パターンの位置情報を求め、求められたこれらY方向基準パターンの位置情報および移動距離に基づきX軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角を求める直交ズレ角算出手段と、XY直交座標系における設計座標値が設定された所望の加工位置を含み、前記チャックテーブル上に保持されたワークの所望の加工位置の加工に際して、前記直交ズレ角算出手段で算出された前記直交ズレ角に基づいて該所望の加工位置の設計座標値に補正を施し、補正された設計座標値に基づいて前記チャックテーブルと前記加工手段とを相対的に移動させ前記加工手段を当該設計座標値の加工位置に位置付けて加工させる加工制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるワーク加工方法およびワーク加工装置によれば、チャックテーブル上でXY直交座標系のY方向に所定距離だけ離間配置された複数のY方向基準パターンを用い、少なくとも2つのY方向基準パターンを撮像手段に位置付けて撮像してその位置情報を求め、求められたこれら位置情報および移動距離に基づきX軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角を求め、対象となるワークの加工に際しては直交ズレ角に基づいて所望の加工位置の設計座標値を補正して加工手段を位置付けるようにしたので、X軸方向、Y軸方向の軸送りの直交ズレの影響を受けることなく所望の加工位置に対して高精度に加工を行わせることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態であるワーク加工方法およびワーク加工装置について図面を参照して説明する。本実施の形態は、ワーク加工装置として、ワークの所望の加工位置にレーザ光線の照射によりビアホール(貫通孔)を形成するレーザ加工装置への適用例で説明するが、本発明は、このようなレーザ加工装置に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本実施の形態のレーザ加工装置の制御系の一部を含め主要部を示す外観斜視図である。本実施の形態のレーザ加工装置1は、チャックテーブル2と、加工手段であるレーザ光線照射ユニット3と、第1の送り手段4と、第2の送り手段5と、第1の位置検出手段6と、第2の位置検出手段7と、撮像手段8と、制御手段10とを備えている。
【0015】
チャックテーブル2は、多孔性材料から形成された吸着チャック21を備え、この吸着チャック21上に加工対象となるワークを図示しない吸引手段によって保持するとともに、円筒部材22内に配設された図示しないパルスモータによって回転可能とされている。また、チャックテーブル2には、後述する環状フレームを固定するためのクランプ23が配設されている。
【0016】
また、レーザ光線照射ユニット3は、先端に装着された集光器31がチャックテーブル2に対して上空から対向するように固定基台11上に固定的に配置されたもので、集光器31からパルスレーザ光線を照射する。また、撮像手段8は、集光器31との位置関係が固定された状態でレーザ光線照射ユニット3の一部に配設されてチャックテーブル2に対向し、チャックテーブル2に保持されたワークを撮像するためのものである。この撮像手段8は、ワークを照明する照明手段と、この照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、この光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を制御手段10に送る。
【0017】
また、本実施の形態のレーザ加工装置1におけるXY直交座標系のX方向、Y方向を図1中の矢印で示す方向にとった場合、第1の送り手段4は、チャックテーブル2をレーザ光線照射ユニット3に対してX方向に平行なX軸方向に移動させるためのものであり、第2の送り手段5は、チャックテーブル2をレーザ光線照射ユニット3に対してX軸方向に略直交するY軸方向に移動させるためのものである。ここで、第2の送り手段5は、チャックテーブル2とともに第1の送り手段4を搭載した滑動ブロック51と、この滑動ブロック51をY軸方向に移動させるための一対の案内レール52と、一対の案内レール52間に平行に配設されたボールねじ53と、このボールねじ53を回転駆動するためのパルスモータ54等の駆動源とにより構成されている。ボールねじ53は、その一端が静止基台11に固定された軸受ブロック55により回転自在に支持され、他端がパルスモータ54の出力軸に連結されている。なお、ボールねじ53は、滑動ブロック51の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ねじブロックに形成された貫通雌ねじ孔に螺合され、パルスモータ54によってボールねじ53を正転および逆転駆動することにより、チャックテーブル2が搭載された滑動ブロック51は案内レール52に沿ってY軸方向に移動する。
【0018】
一方、第1の送り手段4は、チャックテーブル2を搭載した滑動ブロック41と、この滑動ブロック41をX軸方向に移動させるために滑動ブロック51上に設けられた一対の案内レール42と、一対の案内レール42間に平行に配設されたボールねじ43と、このボールねじ43を回転駆動するためのパルスモータ44等の駆動源とにより構成されている。ボールねじ43は、その一端が滑動ブロック51に固定された軸受ブロック45により回転自在に支持され、他端がパルスモータ44の出力軸に連結されている。なお、ボールねじ43は、滑動ブロック41の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ねじブロックに形成された貫通雌ねじ孔に螺合され、パルスモータ44によってボールねじ43を正転および逆転駆動することにより、チャックテーブル2が搭載された滑動ブロック41は案内レール42に沿ってX軸方向に移動する。
【0019】
また、第1の位置検出手段6は、第1の送り手段4に付設されて、チャックテーブル2とレーザ光線照射ユニット3との相対的なX軸方向位置を検出するためのものである。この第1の位置検出手段6は、滑動ブロック51上で案内レール42に沿って配設されたX軸リニアスケール61と、滑動ブロック41に配設されて滑動ブロック41とともにX軸リニアスケール61に沿って移動しこのX軸リニアスケール61を読み取る図示しないX軸読取ヘッドとからなる。X軸読取ヘッドにより読み取られた結果であるX軸座標値は、制御手段10に対して出力される。X軸読取ヘッドは、例えば1μm毎に1パルスのパルス信号を出力するように設定されている。そして、制御手段10は、入力されたパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル2に対するレーザ光線照射ユニット3の相対的なX軸方向位置を検出する。
【0020】
なお、本実施の形態のように第1の送り手段4の駆動源としてパルスモータ44を用いている場合には、パルスモータ44に駆動信号を出力する制御手段10の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル2に対するレーザ光線照射ユニット3の相対的なX軸方向位置を検出するようにしてもよい。また、第1の送り手段4の駆動源としてサーボモータを用いた場合であれば、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を制御手段10に送り、制御手段10が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル2に対するレーザ光線照射ユニット3の相対的なX軸方向位置を検出するようにしてもよい。
【0021】
同様に、第2の位置検出手段7は、第2の送り手段5に付設されて、チャックテーブル2とレーザ光線照射ユニット3との相対的なY軸方向位置を検出するためのものである。この第2の位置検出手段7は、静止基台11上で案内レール52に沿って配設されたY軸リニアスケール71と、滑動ブロック51に配設されて滑動ブロック51とともにY軸リニアスケール71に沿って移動しこのY軸リニアスケール71を読み取る図示しないY軸読取ヘッドとからなる。Y軸読取ヘッドにより読み取られた結果であるY軸座標値は、制御手段10に対して出力される。Y軸読取ヘッドは、例えば1μm毎に1パルスのパルス信号を出力するように設定されている。そして、制御手段10は、入力されたパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル2に対するレーザ光線照射ユニット3の相対的なY軸方向位置を検出する。
【0022】
なお、本実施の形態のように第2の送り手段5の駆動源としてパルスモータ54を用いている場合には、パルスモータ54に駆動信号を出力する制御手段10の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル2に対するレーザ光線照射ユニット3の相対的なY軸方向位置を検出するようにしてもよい。また、第2の送り手段5の駆動源としてサーボモータを用いた場合であれば、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を制御手段10に送り、制御手段10が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル2に対するレーザ光線照射ユニット3の相対的なY軸方向位置を検出するようにしてもよい。
【0023】
また、制御手段10は、コンピュータによって構成されたもので、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)101と、加工処理用の制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)102と、後述するワークの設計値のデータや演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)103と、カウンタ104と、入力インタフェース105および出力インタフェース106とを備えている。入力インタフェース105には、第1の位置検出手段6、第2の位置検出手段7、撮像手段8等からの検出信号が入力される。出力インタフェース106は、パルスモータ44、54、レーザ光線照射ユニット3等に制御信号を出力する。なお、RAM103は、後述する撮像されたY方向基準パターンの座標値を位置情報として格納する記憶領域であるメモリ103aおよびその他の記憶領域を備えている。また、本実施の形態のCPU101は、加工処理用の制御プログラムに従い実行される直交ズレ角算出手段、加工制御手段の機能を備えている。
【0024】
図2は、本実施の形態のレーザ加工装置1に用いられるワーク200の構成例を示す平面図であり、図3は、その一部を拡大して示す平面図である。ワーク200は、主にシリコンウエーハ、サファイアウエーハ、チップパッケージ、基板、DAF、ガラス等であって、数μmオーダの加工精度が要求されるものである。本実施の形態のワーク200は、例えば半導体ウエーハであり、その表面200aに格子状に配列された複数の分割予定ライン201によって複数の領域が区画され、区画された領域にIC,LSI等のデバイス202が各々形成されている。各デバイス202は、全て同一構成のものである。また、デバイス202の表面には各々図3に示すように複数の電極203(203a〜203j)が形成されている。なお、本実施の形態では、電極203a,203f、電極203b,203g、電極203c,203h、電極203d,203i、電極203e,203jは、XY直交座標系におけるY方向の位置(Y座標値)が同一となるように設定され、これら電極203(203a〜203j)部分に各々ビアホール(貫通孔)が形成されるものである。
【0025】
各デバイス202における電極203(203a〜203j)のY方向(図3における左右方向)の間隔A、および各デバイス202に形成された電極203における分割予定ライン201を挟んでY方向に隣接する電極、すなわち電極203e,203aの間隔Bは、各々同一間隔となるように設定されている。また、各デバイス202における電極203のX方向(図3における上下方向)の間隔C、および各デバイス形成された電極203における分割予定ライン201を挟んでX方向に隣接する電極、すなわち電極203f,203aの間隔Dは、各々同一間隔となるように設定されている。このように構成された半導体ウエーハからなるワーク200について、図2中に示す各行E1,E2,…,Enおよび各列F1,F2,…,Fnに配設されたデバイス202の個数と上記各間隔A,B,C,Dは、その設計値のデータがRAM103中の所定の記憶領域に格納されている。したがって、各電極203はワーク200上で所望の加工位置となるもので、後述のようにチャックテーブル2上に保持させてアライメントさせた状態では、電極203毎にXY直交座標系における設計座標値が予め設定されているものとなる。
【0026】
このようなレーザ加工装置1において、まず、ワーク200に形成された各デバイス202の電極203(203a〜203j)部にレーザ加工によるビアホール形成の基本動作について説明する。
【0027】
まず、上述のように構成されたワーク200は、図4に示すように、環状のフレーム210に装着されたポリオレフィン等の合成樹脂シートからなる保護テープ220に表面200aを上側にして貼着する。環状フレーム210に保護テープ220を介して支持されたワーク200は、チャックテーブル2上に保護テープ220を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによりワーク200は、保護テープ220を介してチャックテーブル2上に吸引保持される。また、フレーム210は、クランプ23によって固定される。
【0028】
上述したようにワーク200を吸引保持したチャックテーブル2は、第1、第2の送り手段4,5によって撮像手段8の直下に位置付けられる。この状態で、チャックテーブル2に保持されたワーク200に形成されている格子状の分割予定ライン201がX方向とY方向とに対して各々平行に配設されているか否かのアライメント作業を実施する。すなわち、撮像手段8によってチャックテーブル2上のワーク200を撮像し、パターンマッチング等の画像処理を実行して分割予定ライン201がXY直交座標系に合うようにアライメント作業を行う。
【0029】
次に、チャックテーブル2を移動させ、ワーク200に形成されたデバイス202中の最上位の行E1の図5において最左端のデバイス202を撮像手段8の直下に位置付け、さらにこのデバイス202に形成された電極203(203a〜203j)における図5において左上の電極203aを撮像手段8の直下に位置付ける。この状態で撮像手段8がこの電極203aを検出したら、そのX,Y座標値(a1)を制御手段10に送る。制御手段10は、このX,Y座標値(a1)を第1の送り開始位置座標値としてRAM103中の所定の記憶領域に格納する。このとき、撮像手段8とレーザ光線照射ユニット3の集光器31は、Y軸方向に所定の間隔をおいて配設されているので、Y座標値は撮像手段8と集光器31との間隔を加えた値が格納される(撮像に基づく座標値は、以下同様に処理される)。
【0030】
このようにして図5において最上位の行E1のデバイス202における第1の送り開始位置座標値(a1)を検出したら、チャックテーブル2を分割予定ライン201の間隔でX軸方向に送るとともに、Y軸方向に移動させて、図5において最上位から2番目の行E2における最左端のデバイス202を撮像手段8の直下に位置付け、さらにこのデバイス202に形成された電極203(203a〜203j)における図5において左上の電極203aを撮像手段8の直下に位置付ける。この状態で撮像手段8が電極203aを検出したら、そのX,Y座標値(a2)を制御手段10に送る。制御手段10は、このX,Y座標値(a2)を第2の送り開始位置座標値としてRAM103中の所定の記憶領域に格納する。
【0031】
以後、上述したX軸方向の送りとY軸方向の送り開始位置検出処理を図5において最下位の行Enまで繰り返し実行し、各行に形成されたデバイス202のY軸送りの開始位置座標値(a3〜an)を検出し、RAM103中の所定の記憶領域に格納する。
【0032】
次に、ワーク200の各デバイス202に形成された各電極203(203a〜203j)部分にビアホールを穿孔する穿孔工程を実施する。穿孔工程は、まず、RAM103中に格納されている第1の送り開始位置座標値(a1)に基づいて第1、第2の送り手段4,5を作動しチャックテーブル2を移動させて、第1、第2の位置検出手段6,7に従い第1の送り開始位置座標値(a1)の位置を集光器31の直下に位置付ける。この状態で、集光器31から所望の加工を施すのに必要な所定パルス分のパルスレーザ光線を照射するようにレーザ光線照射ユニット3を制御するとともに、チャックテーブル2をY軸方向に所定の移動速度で送るように第2の送り手段5を制御する。したがって、第1の送り開始位置座標値(a1)の電極203a部分に所定パルス分のパルスレーザ光線が照射される。
【0033】
一方、制御手段10は、第2の位置検出手段7のY軸読取ヘッドからの検出信号を入力しており、この検出信号をカウンタ104によってカウントしている。そして、カウント値が電極203の図3においてY方向の間隔Aに相当する値に達したら、レーザ光線照射ユニット3を作動し、集光器31から所定パルス分のパルスレーザ光線を照射するように制御する。この後も、制御手段10は、カウンタ104によるカウント値がY方向の間隔Aおよび間隔Bに達する度に、集光器31から所定パルス分のパルスレーザ光線を照射するようにレーザ光線照射ユニット3を制御する。
【0034】
そして、ワーク200のE1行の最右端のデバイス202に形成された最右端の電極203jが集光器31に達したら、集光器31から所定パルス分のパルスレーザ光線を照射するようにレーザ光線照射ユニット3を制御した後、第2の送り手段5の作動を停止してチャックテーブル2の移動を停止する。この結果、ワーク200には、各電極203(図示せず)部分にビアホール用のレーザ加工孔が形成される。
【0035】
次に、制御手段10は、集光器31に対してチャックテーブル2をX軸方向に送るように第1の送り手段4を制御する。また、制御手段10は、第1の位置検出手段6のX軸読取ヘッドからの検出信号を入力しており、この検出信号をカウンタ104によってカウントしている。そして、カウント値が電極203のX方向の間隔Cに相当する値に達したら、第1の送り手段4の作動を停止する。この結果、集光器31は電極203eと同列の電極203jの直上に位置付けられる。
【0036】
この状態で、制御手段10は、集光器31から所定パルス分のパルスレーザ光線を照射するようにレーザ光線照射ユニット3を制御するとともに、チャックテーブル2をY軸方向に所定の移動速度で送るように第2の送り手段5を制御する。そして、制御手段10は、第2の位置検出手段7のY軸読取ヘッドからの検出信号をカウンタ104によりカウントし、そのカウント値がY方向の間隔Aおよび間隔Bに達する度に、集光器31から所定パルス分のパルスレーザ光線を照射するようにレーザ光線照射ユニット3を制御する。
【0037】
そして、ワーク200のE1行の最右端に形成された電極203fが集光器31に達したら、集光器31から所定パルス分のパルスレーザ光線を照射するようにレーザ光線照射ユニット3を制御した後、第2の送り手段5の作動を停止してチャックテーブル2の移動を停止する。この結果、ワーク200には、各電極203部分にレーザ加工孔が形成される。
【0038】
以上のようにして、ワーク200のE1行のデバイス202に形成された電極203部分にレーザ加工孔が形成されたら、制御手段10は、RAM103中に格納されている第2の送り開始位置座標値(a2)に基づいて第1、第2の送り手段4,5を作動し、ワーク200のE2行のデバイス202に形成された電極203用の第2の送り開始位置座標値(a2)の位置を集光器31の直下に位置付ける。そして、レーザ光線照射ユニット3、第1、第2の送り手段4,5を制御し、ワーク200のE2行のデバイスに形成された電極203部分に上述した穿孔工程を実施する。以後、ワーク200のE3〜En行のデバイス202に形成された電極203部分に対しても上述した穿孔工程を実施する。この結果、ワーク200の各デバイス202に形成された全ての電極203部分にレーザ加工孔が形成される。
【0039】
ここで、上述した基本動作は、第1の送り手段4による送り方向であるX軸方向と第2の送り手段5による送り方向であるY軸方向とがXY直交座標系と同じく直交するとの前提によるものである。しかしながら、現実には、X軸方向とY軸方向との直交精度が十分に調整・維持できない場合(X軸方向とY軸方向とは本来直交するように設計されるが、直交状態からずれる場合があるので、本発明では、Y軸方向をX軸方向に略直交する方向と規定する)があり、直交ズレに起因して送り方向にズレによる誤差を生じてしまうことがある。本実施の形態では、このような事情を考慮し、基本動作に適正な補正処理を加えることで、所望の加工位置である各電極203部分に精度よく貫通孔を形成できるようにするものである。
【0040】
図6は、本実施の形態におけるワーク加工方法の制御例を示す概略フローチャートである。まず、CPU101により実行される直交ズレ角算出手段の機能によって、直交ズレ角算出工程を実行する。この工程は、概略的には、チャックテーブル2上でXY直交座標系のY方向に所定距離だけ離間配置された複数のY方向基準パターンPY1〜PYmをX方向に対して位置決めして用い、チャックテーブル2とレーザ光線照射ユニット3とを順次相対的に所定距離αだけ移動させて撮像手段8によって順次撮像した少なくとも2つのY方向基準パターン、例えば第1のY方向基準パターンPY6,第2のY方向基準パターンPY8の撮像視野範囲中の座標値を位置情報として求め、求められたこれら位置情報および移動距離αに基づきX軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角θを求めるものである。
【0041】
本実施の形態では、図7に示すようにY方向基準パターンPY1〜PYmを含むワーク類似のゲージワーク300を予め用意しておき、このゲージワーク300をチャックテーブル2上に吸引保持させる。このようにゲージワーク300がチャックテーブル2上にセットされることにより(ステップS1;Yes)、直交ズレ角算出工程が開始される。
【0042】
ここで、Y方向基準パターンPY1〜PYmは、ゲージワーク300がXY直交座標系に対してアライメント処理された状態で、XY直交座標系のY方向に一列(したがって、XY直交座標系においては同一X座標位置となる)で等間隔(例えば、α/2)となるように離間配置されたものであり、例えば、撮像手段8の撮像範囲内に十分収まる同じ大きさで矩形状に形成されている。なお、本実施の形態では、m=9とし、9個のY方向基準パターンを設けているが、最低限2個あればよい。また、ゲージワーク300上には、X方向に一列で等間隔となるように離間配置されたX方向基準パターンPX1〜PXmも設けられている。チャックテーブル2上に保持されたゲージワーク300は、例えば図7に示すように、第1の送り手段4による送り方向であるX軸方向にXY直交座標系のX方向が平行となるように撮像手段8によるX方向基準パターンPX1〜PXmの撮像画像を用いた画像処理によってアライメント処理される。このようなアライメント処理によって、Y方向基準パターンPY1〜PYmはX方向およびX軸方向に対して直交するように位置決めされる。
【0043】
ゲージワーク300のセット、アライメントが終了したら、例えばゲージワーク300上のY方向基準パターンPY6をターゲットとして第1、第2の送り手段4,5によってチャックテーブル2を移動させてY方向基準パターンPY6を撮像手段8の第1の視野範囲E1内に位置付け、撮像手段8でY方向基準パターンPY6を含めて撮像する。そして、図9に示すように、例えばY方向基準パターンPY6の一角の点Aの座標値(X1,Y1)を検出する(ステップS2)。検出した点Aの座標値(X1,Y1)のデータはメモリ103aに格納される。
【0044】
次いで、図10に示すように、例えばゲージワーク300上のY方向基準パターンPY6から所定距離α離れたY方向基準パターンPY8をターゲットとし、第2の送り手段5によってチャックテーブル2を移動させて第2の位置検出手段7による移動位置の検出結果に従って所定距離α分だけY軸方向に移動した位置で停止させ、Y方向基準パターンPY8を撮像手段8の第2の視野範囲E2内に位置付け、撮像手段8でY方向基準パターンPY8を含めて撮像する。そして、図11に示すように、例えばY方向基準パターンPY8の対応する一角の点Bの座標値(X2,Y2)を検出する(ステップS3)。検出した点Bの座標値(X2,Y2)のデータはメモリ103aに格納される。
【0045】
この際、X軸方向とY軸方向とに直交ズレがなければ、撮像手段8の視野範囲内における点A,Bは同じ座標値、すなわち、X2=X1、Y2=Y1となるはずである。ところが、図7等に示すように、X軸方向に対してY軸方向に直交ズレがあると、X2≠X1、Y2≠Y1となってしまう。よって、この関係を示す図12を参照すれば、点Aから点Bをターゲットとして撮像手段8の視野範囲をY軸方向に所定距離α移動させても、Y軸方向=Y方向ではないため、Y軸の直交ズレ角θに起因して点Bは所望の点B´(X1,Y1)からずれた(X2,Y2)なる座標位置に位置することとなる。ここで、図12に示す三角形の関係によれば、X1−X2=βとすると、X軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角(Y方向に対するY軸方向の傾き角)θは、XY座標値中のX1,X2、移動距離αなる位置情報を用いることで、
θ=sin(β/α)
として算出される(ステップS4)。ここで、直交ズレ角θは、β>0(X1>X2)であれば右上がり方向(θ>0)、β<0(X1<X2)であれば右下がり方向(θ<0)と判断される。
【0046】
なお、このような直交ズレ角算出工程においては、直交ズレ角θを算出する上で、上記のような三角関数の演算式に限られるものではなく、点A,B,B´の位置情報や移動距離情報を適宜用いた三角関数や一次関数に基づき直交ズレ角θを算出するようにしてもよい。
【0047】
また、Y方向基準パターン欠け等により撮像手段8によって所望のY方向基準パターンを認識できなかった場合には、他のY方向基準パターンをターゲットとするようにしてもよい。
【0048】
直交ズレ角算出工程(ステップS1〜S4)が終了したら、ゲージワーク300を取り除いた後、図示しないワーク搬送手段によって加工処理の対象となるワーク200をチャックテーブル2上に搬送し、吸引手段を作動させて保持させる(ステップS5:ワーク保持工程)。チャックテーブル2上に保持されたワーク200は、アライメント処理により、図5に示すようなXY直交座標系に従う配置となるようにする(第1の送り手段4による送り方向であるX軸方向がX方向に平行になるようにする)。
【0049】
このようなワーク200の保持セット状態で、ワーク200の所望の加工位置にレーザ光線照射ユニット3によってレーザ光線を照射することにより貫通孔(ビアホール)を形成する穿孔工程を実行させる。この処理は、補正制御処理を伴うため、CPU101により実行される加工制御手段の機能によって、加工制御工程として実行する。まず、ワーク200上の対象となる加工位置を設定し(ステップS6)、対象となる加工位置の設計座標値を、前述のように算出された直交ズレ角θに基づいて補正する(ステップS7)。そして、補正された設計座標値に基づいて第1、第2の送り手段4,5によってチャックテーブル2を相対的に移動させ、第1、第2の位置検出手段6,7による位置検出結果に従い位置付けを行うことで、所望の加工位置をレーザ光線照射ユニット3の集光器31の直下に位置付ける(ステップS8)。この位置で、チャックテーブル2の移動を停止させ、集光器31からレーザ光線を照射させることで、加工位置(電極部分)に貫通孔(ビアホール)を形成する加工処理を実行させる(ステップS9,S10)。このような処理制御を、残りの他の加工位置についても同様に繰り返す(ステップS11)。
【0050】
ここで、図13を参照して設計座標値の補正について説明する。例えば、所望の設計座標値(X,Y)の加工位置Pに加工を行う場合、この設計座標値(X,Y)を目標として第1、第2の送り手段4,5によりチャックテーブル2を移動させ、その移動位置を第1、第2の位置検出手段6,7で管理する場合、X軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角θに起因して、この設計座標値(X,Y)からずれた位置が集光器31に対して位置付けられてしまうことになる。そこで、実際の加工に際しての位置付け目標位置は、直交ズレ角θによるずれ量を考慮し、例えばθ>0の場合であれば、(X−Y/tanθ,Y/cosθ)となるように補正し、第1の送り手段4によってチャックテーブル2を相対的にX−Y/tanθだけ送り、第2の送り手段5によってチャックテーブル2を相対的にY/cosθ分だけ送るように第1、第2の位置検出手段6,7の検出結果に従い制御することで、丁度、設計座標値(X,Y)の加工位置Pが集光器31の直下となるように制御することができる。なお、θ<0の場合であれば、(X+Y/tanθ,Y/cosθ)となるように補正すればよい。
【0051】
これにより、X軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角の影響を受けることなく所望の加工位置Pに対して高精度に加工を行わせることができる。従来のように補正をしない場合には、3〜10μm/200mm程度の誤差があったが、本実施の形態のように5mm間隔で設定されたY方向基準パターンを用いて直交ズレ角を算出し上記のように補正を行った場合には、1μm/200mm以下の誤差に収めることができたものである。
【0052】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。例えば、本実施の形態では、直交ズレ角θを算出するために、Y方向基準パターンPY1〜PYmを有する専用のゲージワーク300を用いるようにしたが、複数のY方向基準パターンのXY直交座標系における設計座標値が確定されたものであればよく、例えば、このようなY方向基準パターンを有する通常のワークであってもよい。さらには、ワークの加工痕をY方向基準パターンとして利用することで、直交ズレ角を算出するようにしてもよい。或いは、ワークを用いることなく、チャックテーブル2の表面に直接Y方向基準パターンが設けられていてもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、ゲージワーク300に関して、図7等に示すようにX方向がX軸方向と平行になるようにアライメント処理したが、X方向とX軸方向との傾き角が既知であって、Y方向基準パターンがX軸方向に対して直交するように位置決めされる状態であれば、X方向がX軸方向に対して傾きを持つようにアライメントしてもよい。もっとも、直交ズレ角θの演算処理を簡単にするためには、X方向をX軸方向と平行となるように設定するのが好ましい。
【0054】
また、このようなY方向基準パターンPY1〜PYmを用いて直交ズレ角θを算出する処理は、ワーク加工毎に毎回行うようにすれば、装置稼動中にX軸とY軸の直交度が変化したような経時的な軸送り誤差にも対処することができ、加工精度は向上するが、タクトは低下する。よって、基準パターンを用いて基準パターンズレ量を算出して記憶させる処理を行うタイミングは、要求される精度、効率等を考慮し、ワーク加工毎、カセットにセットされた一群のワーク加工毎、一日の加工開始時等、適宜設定すればよい。
【0055】
また、本実施の形態では、Y方向基準パターンPY6,PY8を撮像手段8で撮像することによって直交ズレ角θを算出するようにしたが、他の2つのY方向基準パターンを撮像手段8で撮像することによって直交ズレ角θを算出するようにしてもよい。2つのY方向基準パターンを用いて直交ズレ角θを算出する場合、Y方向になるべく離れた2つのY方向基準パターンを選択するようにすれば、算出される直交ズレ角θの精度が向上する。また、2つのY方向基準パターンだけでなく、3つ以上のY方向基準パターンをターゲットとして撮像手段8を相対的に順次移動させて撮像して各々の直交ズレ角θを算出し、得られた複数の直交ズレ角θの平均値に基づき直交ズレ角を算出するようにしてもよい。さらには、Y軸方向の傾きがY座標の位置によって異なる場合でも、2つのY方向基準パターンだけを用いて直交ズレ角を算出すると図14(a)に示すような直交ズレ角θとなる。これに対して、図14(b)に示すように各Y方向基準パターンPY1〜PYmをターゲットとして撮像手段8を相対的に順次移動させて撮像し、各Y方向基準パターンPY1〜PYm間のY座標位置に応じた直交ズレ角θ1,θ2,…、θ8,…を算出し、これらの直交ズレ角θ1,θ2,…、θ8,…をY座標位置に応じて用いて補正するようにすれば、Y軸方向の傾きがY座標の位置によって異なっていても適正な補正が可能となる。
【0056】
また、本実施の形態では、算出された直交ズレ角θに基づき、所望の加工位置の設計座標値のX座標値およびY座標値に補正を施し、第1、第2の送り手段4,5による送り量を第1、第2の位置検出手段6,7に従い制御するようにしたが、直交ズレ角に基づいて所望の加工位置の設計座標値のX座標値に補正を施し、第1の送り手段4による送り量を第1の位置検出手段6に従い制御するとともに、所望の加工位置の設計座標値のY座標値に基づいて第2の送り手段4による送り量を、図示しないレーザ測長器等を用いて、1次元でリニアに制御するようにしてもよい。
【0057】
これは、下方に位置してY軸方向の送りを行わせる第2の送り手段5と、第2の送り手段5に搭載されてX軸方向の送りを行わせる第1の送り手段4とでは、軸送りに際して生ずる機械的な誤差の大きさに差があり、第2の送り手段5による送りはY軸方向には直線的で比較的安定しているのに対して、第1の送り手段4による送りはブレやすいためである。そこで、Y軸方向の送り制御は、従来から行われているレーザ測長器等による1次元リニア制御で行わせるようにしてもよい。
【0058】
また、本実施の形態は、レーザ加工により貫通孔(ビアホール)を形成する加工例についての適用例で説明したが、このような適用例に限らず、所望の加工位置に加工を施すものであれば、同様に適用可能である。例えば、ワーク200の分割予定ライン201に沿った破線カットや、分割予定ライン201に沿ってワーク200内の所定位置間を切断する内内カットにも適用可能である。また、加工手段としても、レーザ光線照射ユニット3を用いるレーザ加工に限らず、例えば、円盤状のブレードを用いてワークの所望の加工位置にチョッパカットを施すような場合にも同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態のレーザ加工装置の制御系の一部を含め主要部を示す外観斜視図である。
【図2】本実施の形態のレーザ加工装置に用いられるワークの構成例を示す平面図である。
【図3】ワークの一部を拡大して示す平面図である。
【図4】フレームに装着されたワークを示す斜視図である。
【図5】ワークがチャックテーブルの所定位置に保持された状態における座標との関係を示す説明図である。
【図6】本実施の形態におけるワーク加工方法の制御例を示す概略フローチャートである。
【図7】ゲージワークにおけるY方向基準パターン例を示す説明図である。
【図8】Y方向基準パターンPY6に位置付けた視野範囲E1の例を示す説明図である。
【図9】視野範囲E1の撮像例を示す説明図である。
【図10】所定距離α移動させてY方向基準パターンPY8に位置付けた視野範囲E2の例を示す説明図である。
【図11】視野範囲E2の撮像例を示す説明図である。
【図12】直交ズレ角θの算出に関する説明図である。
【図13】直交ズレ角θに基づく送り量の補正例を示す説明図である。
【図14】2点補正例と多点補正例とを対比して示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 レーザ加工装置
2 チャックテーブル
3 レーザ光線照射手段
4 第1の送り手段
5 第2の送り手段
6 第1の位置検出手段
7 第2の位置検出手段
8 撮像手段
200 ワーク
300 ゲージワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばワークの所望位置に細孔を形成する如き、ワーク加工方法およびワーク加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状の半導体ウエーハの表面の分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスが形成される。そして、このような半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って分割し個々の半導体チップを製造している。ここで、製品の小型化、高機能化を図るため、複数の半導体チップを積創始、積層された半導体チップの電極を接続するモジュール構造が実用化されている。このモジュール構造には、半導体ウエーハの電極が形成された箇所に貫通孔(ビアホール)を形成し、この貫通孔に電極と接続するアルミニウム等の導電性材料を埋め込む構造が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような貫通孔を形成するための加工を効率よく形成することができるレーザ加工装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。このようなレーザ加工装置では、ワークを保持するチャックテーブルとワークにレーザ光線を照射するレーザ光線照射手段とをX軸方向に相対的に移動させるX軸方向送り手段と、チャックテーブルとレーザ光線照射手段とをY軸方向に相対的に移動させるY軸方向送り手段とを備え、レーザ光線照射手段をワークの所望の位置に位置付けて貫通孔を形成するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−163323号公報
【特許文献2】特開2006−247674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなレーザ加工装置は、X軸方向送り手段とY軸方向送り手段との送り方向が直交するように設計・製造されるが、現実には、その直交精度が十分に調整・維持できない場合がある。
【0006】
よって、このようなX軸方向、Y軸方向の送り手段に直交ズレがあると、ワーク上の所望の位置に位置付けて貫通孔を形成する際に、直交ズレの影響を受けて所望の位置からずれた箇所に貫通孔を形成してしまうこととなり、高精度な加工要求に応えることができないものとなってしまう。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、X軸方向、Y軸方向の軸送りの直交ズレの影響を受けることなく高精度な加工が可能なワーク加工方法およびワーク加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるワーク加工方法は、ワークを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたワークを加工する加工手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをXY直交座標系のX方向に平行なX軸方向に相対的に移動させる第1の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをX軸方向に略直交するY軸方向に相対的に移動させる第2の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なX軸方向位置を検出する第1の位置検出手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なY軸方向位置を検出する第2の位置検出手段と、前記加工手段との位置関係が固定されて、前記チャックテーブルに保持されたワークを撮像する撮像手段と、を備える加工装置を用いて、前記チャックテーブルに保持されたワークのXY直交座標系における所望の加工位置に前記加工手段で加工させるワーク加工方法であって、前記チャックテーブル上でXY直交座標系のY方向に所定距離だけ離間配置された複数のY方向基準パターンをX軸方向に対して直交するよう位置決めして用い、前記チャックテーブルと前記加工手段とを順次相対的に所定距離だけ移動させて前記撮像手段によって順次撮像した少なくとも2つの前記Y方向基準パターンの位置情報を求め、求められたこれらY方向基準パターンの位置情報および移動距離に基づきX軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角を求める直交ズレ角算出工程と、XY直交座標系における設計座標値が設定された所望の加工位置を含むワークを前記チャックテーブルに保持させるワーク保持工程と、前記チャックテーブル上に保持されたワークの所望の加工位置の加工に際して、前記直交ズレ角算出工程で算出された前記直交ズレ角に基づいて該所望の加工位置の設計座標値に補正を施し、補正された設計座標値に基づいて前記チャックテーブルと前記加工手段とを相対的に移動させ前記加工手段を当該設計座標値の加工位置に位置付けて加工させる加工制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかるワーク加工方法は、上記発明において、前記加工制御工程は、前記直交ズレ角に基づき所望の加工位置の設計座標値のX座標値に補正を施し、前記第1の送り手段による送り量を前記第1の位置検出手段に従い制御するとともに、所望の加工位置の設計座標値のY座標値に基づいて前記第2の送り手段による送り量を1次元でリニアに制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかるワーク加工方法は、上記発明において、前記加工制御工程は、前記直交ズレ角に基づき所望の加工位置の設計座標値のX座標値およびY座標値に補正を施し、前記第1の送り手段および前記第2の送り手段による送り量を前記第1の位置検出手段および前記第2の位置検出手段に従い制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかるワーク加工装置は、ワークを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたワークを加工する加工手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをXY直交座標系のX方向に平行なX軸方向に相対的に移動させる第1の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをX軸方向に略直交するY軸方向に相対的に移動させる第2の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なX軸方向位置を検出する第1の位置検出手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なY軸方向位置を検出する第2の位置検出手段と、前記加工手段との位置関係が固定されて、前記チャックテーブルに保持されたワークを撮像する撮像手段と、を備え、前記チャックテーブルに保持されたワークのXY直交座標系における所望の加工位置に前記加工手段で加工するワーク加工装置であって、前記チャックテーブル上でXY直交座標系のY方向に所定距離だけ離間配置された複数のY方向基準パターンをX軸方向に対して直交するよう位置決めして用い、前記チャックテーブルと前記加工手段とを順次相対的に所定距離だけ移動させて前記撮像手段によって順次撮像した少なくとも2つの前記Y方向基準パターンの位置情報を求め、求められたこれらY方向基準パターンの位置情報および移動距離に基づきX軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角を求める直交ズレ角算出手段と、XY直交座標系における設計座標値が設定された所望の加工位置を含み、前記チャックテーブル上に保持されたワークの所望の加工位置の加工に際して、前記直交ズレ角算出手段で算出された前記直交ズレ角に基づいて該所望の加工位置の設計座標値に補正を施し、補正された設計座標値に基づいて前記チャックテーブルと前記加工手段とを相対的に移動させ前記加工手段を当該設計座標値の加工位置に位置付けて加工させる加工制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるワーク加工方法およびワーク加工装置によれば、チャックテーブル上でXY直交座標系のY方向に所定距離だけ離間配置された複数のY方向基準パターンを用い、少なくとも2つのY方向基準パターンを撮像手段に位置付けて撮像してその位置情報を求め、求められたこれら位置情報および移動距離に基づきX軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角を求め、対象となるワークの加工に際しては直交ズレ角に基づいて所望の加工位置の設計座標値を補正して加工手段を位置付けるようにしたので、X軸方向、Y軸方向の軸送りの直交ズレの影響を受けることなく所望の加工位置に対して高精度に加工を行わせることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態であるワーク加工方法およびワーク加工装置について図面を参照して説明する。本実施の形態は、ワーク加工装置として、ワークの所望の加工位置にレーザ光線の照射によりビアホール(貫通孔)を形成するレーザ加工装置への適用例で説明するが、本発明は、このようなレーザ加工装置に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本実施の形態のレーザ加工装置の制御系の一部を含め主要部を示す外観斜視図である。本実施の形態のレーザ加工装置1は、チャックテーブル2と、加工手段であるレーザ光線照射ユニット3と、第1の送り手段4と、第2の送り手段5と、第1の位置検出手段6と、第2の位置検出手段7と、撮像手段8と、制御手段10とを備えている。
【0015】
チャックテーブル2は、多孔性材料から形成された吸着チャック21を備え、この吸着チャック21上に加工対象となるワークを図示しない吸引手段によって保持するとともに、円筒部材22内に配設された図示しないパルスモータによって回転可能とされている。また、チャックテーブル2には、後述する環状フレームを固定するためのクランプ23が配設されている。
【0016】
また、レーザ光線照射ユニット3は、先端に装着された集光器31がチャックテーブル2に対して上空から対向するように固定基台11上に固定的に配置されたもので、集光器31からパルスレーザ光線を照射する。また、撮像手段8は、集光器31との位置関係が固定された状態でレーザ光線照射ユニット3の一部に配設されてチャックテーブル2に対向し、チャックテーブル2に保持されたワークを撮像するためのものである。この撮像手段8は、ワークを照明する照明手段と、この照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、この光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を制御手段10に送る。
【0017】
また、本実施の形態のレーザ加工装置1におけるXY直交座標系のX方向、Y方向を図1中の矢印で示す方向にとった場合、第1の送り手段4は、チャックテーブル2をレーザ光線照射ユニット3に対してX方向に平行なX軸方向に移動させるためのものであり、第2の送り手段5は、チャックテーブル2をレーザ光線照射ユニット3に対してX軸方向に略直交するY軸方向に移動させるためのものである。ここで、第2の送り手段5は、チャックテーブル2とともに第1の送り手段4を搭載した滑動ブロック51と、この滑動ブロック51をY軸方向に移動させるための一対の案内レール52と、一対の案内レール52間に平行に配設されたボールねじ53と、このボールねじ53を回転駆動するためのパルスモータ54等の駆動源とにより構成されている。ボールねじ53は、その一端が静止基台11に固定された軸受ブロック55により回転自在に支持され、他端がパルスモータ54の出力軸に連結されている。なお、ボールねじ53は、滑動ブロック51の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ねじブロックに形成された貫通雌ねじ孔に螺合され、パルスモータ54によってボールねじ53を正転および逆転駆動することにより、チャックテーブル2が搭載された滑動ブロック51は案内レール52に沿ってY軸方向に移動する。
【0018】
一方、第1の送り手段4は、チャックテーブル2を搭載した滑動ブロック41と、この滑動ブロック41をX軸方向に移動させるために滑動ブロック51上に設けられた一対の案内レール42と、一対の案内レール42間に平行に配設されたボールねじ43と、このボールねじ43を回転駆動するためのパルスモータ44等の駆動源とにより構成されている。ボールねじ43は、その一端が滑動ブロック51に固定された軸受ブロック45により回転自在に支持され、他端がパルスモータ44の出力軸に連結されている。なお、ボールねじ43は、滑動ブロック41の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ねじブロックに形成された貫通雌ねじ孔に螺合され、パルスモータ44によってボールねじ43を正転および逆転駆動することにより、チャックテーブル2が搭載された滑動ブロック41は案内レール42に沿ってX軸方向に移動する。
【0019】
また、第1の位置検出手段6は、第1の送り手段4に付設されて、チャックテーブル2とレーザ光線照射ユニット3との相対的なX軸方向位置を検出するためのものである。この第1の位置検出手段6は、滑動ブロック51上で案内レール42に沿って配設されたX軸リニアスケール61と、滑動ブロック41に配設されて滑動ブロック41とともにX軸リニアスケール61に沿って移動しこのX軸リニアスケール61を読み取る図示しないX軸読取ヘッドとからなる。X軸読取ヘッドにより読み取られた結果であるX軸座標値は、制御手段10に対して出力される。X軸読取ヘッドは、例えば1μm毎に1パルスのパルス信号を出力するように設定されている。そして、制御手段10は、入力されたパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル2に対するレーザ光線照射ユニット3の相対的なX軸方向位置を検出する。
【0020】
なお、本実施の形態のように第1の送り手段4の駆動源としてパルスモータ44を用いている場合には、パルスモータ44に駆動信号を出力する制御手段10の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル2に対するレーザ光線照射ユニット3の相対的なX軸方向位置を検出するようにしてもよい。また、第1の送り手段4の駆動源としてサーボモータを用いた場合であれば、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を制御手段10に送り、制御手段10が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル2に対するレーザ光線照射ユニット3の相対的なX軸方向位置を検出するようにしてもよい。
【0021】
同様に、第2の位置検出手段7は、第2の送り手段5に付設されて、チャックテーブル2とレーザ光線照射ユニット3との相対的なY軸方向位置を検出するためのものである。この第2の位置検出手段7は、静止基台11上で案内レール52に沿って配設されたY軸リニアスケール71と、滑動ブロック51に配設されて滑動ブロック51とともにY軸リニアスケール71に沿って移動しこのY軸リニアスケール71を読み取る図示しないY軸読取ヘッドとからなる。Y軸読取ヘッドにより読み取られた結果であるY軸座標値は、制御手段10に対して出力される。Y軸読取ヘッドは、例えば1μm毎に1パルスのパルス信号を出力するように設定されている。そして、制御手段10は、入力されたパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル2に対するレーザ光線照射ユニット3の相対的なY軸方向位置を検出する。
【0022】
なお、本実施の形態のように第2の送り手段5の駆動源としてパルスモータ54を用いている場合には、パルスモータ54に駆動信号を出力する制御手段10の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル2に対するレーザ光線照射ユニット3の相対的なY軸方向位置を検出するようにしてもよい。また、第2の送り手段5の駆動源としてサーボモータを用いた場合であれば、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を制御手段10に送り、制御手段10が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル2に対するレーザ光線照射ユニット3の相対的なY軸方向位置を検出するようにしてもよい。
【0023】
また、制御手段10は、コンピュータによって構成されたもので、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)101と、加工処理用の制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)102と、後述するワークの設計値のデータや演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)103と、カウンタ104と、入力インタフェース105および出力インタフェース106とを備えている。入力インタフェース105には、第1の位置検出手段6、第2の位置検出手段7、撮像手段8等からの検出信号が入力される。出力インタフェース106は、パルスモータ44、54、レーザ光線照射ユニット3等に制御信号を出力する。なお、RAM103は、後述する撮像されたY方向基準パターンの座標値を位置情報として格納する記憶領域であるメモリ103aおよびその他の記憶領域を備えている。また、本実施の形態のCPU101は、加工処理用の制御プログラムに従い実行される直交ズレ角算出手段、加工制御手段の機能を備えている。
【0024】
図2は、本実施の形態のレーザ加工装置1に用いられるワーク200の構成例を示す平面図であり、図3は、その一部を拡大して示す平面図である。ワーク200は、主にシリコンウエーハ、サファイアウエーハ、チップパッケージ、基板、DAF、ガラス等であって、数μmオーダの加工精度が要求されるものである。本実施の形態のワーク200は、例えば半導体ウエーハであり、その表面200aに格子状に配列された複数の分割予定ライン201によって複数の領域が区画され、区画された領域にIC,LSI等のデバイス202が各々形成されている。各デバイス202は、全て同一構成のものである。また、デバイス202の表面には各々図3に示すように複数の電極203(203a〜203j)が形成されている。なお、本実施の形態では、電極203a,203f、電極203b,203g、電極203c,203h、電極203d,203i、電極203e,203jは、XY直交座標系におけるY方向の位置(Y座標値)が同一となるように設定され、これら電極203(203a〜203j)部分に各々ビアホール(貫通孔)が形成されるものである。
【0025】
各デバイス202における電極203(203a〜203j)のY方向(図3における左右方向)の間隔A、および各デバイス202に形成された電極203における分割予定ライン201を挟んでY方向に隣接する電極、すなわち電極203e,203aの間隔Bは、各々同一間隔となるように設定されている。また、各デバイス202における電極203のX方向(図3における上下方向)の間隔C、および各デバイス形成された電極203における分割予定ライン201を挟んでX方向に隣接する電極、すなわち電極203f,203aの間隔Dは、各々同一間隔となるように設定されている。このように構成された半導体ウエーハからなるワーク200について、図2中に示す各行E1,E2,…,Enおよび各列F1,F2,…,Fnに配設されたデバイス202の個数と上記各間隔A,B,C,Dは、その設計値のデータがRAM103中の所定の記憶領域に格納されている。したがって、各電極203はワーク200上で所望の加工位置となるもので、後述のようにチャックテーブル2上に保持させてアライメントさせた状態では、電極203毎にXY直交座標系における設計座標値が予め設定されているものとなる。
【0026】
このようなレーザ加工装置1において、まず、ワーク200に形成された各デバイス202の電極203(203a〜203j)部にレーザ加工によるビアホール形成の基本動作について説明する。
【0027】
まず、上述のように構成されたワーク200は、図4に示すように、環状のフレーム210に装着されたポリオレフィン等の合成樹脂シートからなる保護テープ220に表面200aを上側にして貼着する。環状フレーム210に保護テープ220を介して支持されたワーク200は、チャックテーブル2上に保護テープ220を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによりワーク200は、保護テープ220を介してチャックテーブル2上に吸引保持される。また、フレーム210は、クランプ23によって固定される。
【0028】
上述したようにワーク200を吸引保持したチャックテーブル2は、第1、第2の送り手段4,5によって撮像手段8の直下に位置付けられる。この状態で、チャックテーブル2に保持されたワーク200に形成されている格子状の分割予定ライン201がX方向とY方向とに対して各々平行に配設されているか否かのアライメント作業を実施する。すなわち、撮像手段8によってチャックテーブル2上のワーク200を撮像し、パターンマッチング等の画像処理を実行して分割予定ライン201がXY直交座標系に合うようにアライメント作業を行う。
【0029】
次に、チャックテーブル2を移動させ、ワーク200に形成されたデバイス202中の最上位の行E1の図5において最左端のデバイス202を撮像手段8の直下に位置付け、さらにこのデバイス202に形成された電極203(203a〜203j)における図5において左上の電極203aを撮像手段8の直下に位置付ける。この状態で撮像手段8がこの電極203aを検出したら、そのX,Y座標値(a1)を制御手段10に送る。制御手段10は、このX,Y座標値(a1)を第1の送り開始位置座標値としてRAM103中の所定の記憶領域に格納する。このとき、撮像手段8とレーザ光線照射ユニット3の集光器31は、Y軸方向に所定の間隔をおいて配設されているので、Y座標値は撮像手段8と集光器31との間隔を加えた値が格納される(撮像に基づく座標値は、以下同様に処理される)。
【0030】
このようにして図5において最上位の行E1のデバイス202における第1の送り開始位置座標値(a1)を検出したら、チャックテーブル2を分割予定ライン201の間隔でX軸方向に送るとともに、Y軸方向に移動させて、図5において最上位から2番目の行E2における最左端のデバイス202を撮像手段8の直下に位置付け、さらにこのデバイス202に形成された電極203(203a〜203j)における図5において左上の電極203aを撮像手段8の直下に位置付ける。この状態で撮像手段8が電極203aを検出したら、そのX,Y座標値(a2)を制御手段10に送る。制御手段10は、このX,Y座標値(a2)を第2の送り開始位置座標値としてRAM103中の所定の記憶領域に格納する。
【0031】
以後、上述したX軸方向の送りとY軸方向の送り開始位置検出処理を図5において最下位の行Enまで繰り返し実行し、各行に形成されたデバイス202のY軸送りの開始位置座標値(a3〜an)を検出し、RAM103中の所定の記憶領域に格納する。
【0032】
次に、ワーク200の各デバイス202に形成された各電極203(203a〜203j)部分にビアホールを穿孔する穿孔工程を実施する。穿孔工程は、まず、RAM103中に格納されている第1の送り開始位置座標値(a1)に基づいて第1、第2の送り手段4,5を作動しチャックテーブル2を移動させて、第1、第2の位置検出手段6,7に従い第1の送り開始位置座標値(a1)の位置を集光器31の直下に位置付ける。この状態で、集光器31から所望の加工を施すのに必要な所定パルス分のパルスレーザ光線を照射するようにレーザ光線照射ユニット3を制御するとともに、チャックテーブル2をY軸方向に所定の移動速度で送るように第2の送り手段5を制御する。したがって、第1の送り開始位置座標値(a1)の電極203a部分に所定パルス分のパルスレーザ光線が照射される。
【0033】
一方、制御手段10は、第2の位置検出手段7のY軸読取ヘッドからの検出信号を入力しており、この検出信号をカウンタ104によってカウントしている。そして、カウント値が電極203の図3においてY方向の間隔Aに相当する値に達したら、レーザ光線照射ユニット3を作動し、集光器31から所定パルス分のパルスレーザ光線を照射するように制御する。この後も、制御手段10は、カウンタ104によるカウント値がY方向の間隔Aおよび間隔Bに達する度に、集光器31から所定パルス分のパルスレーザ光線を照射するようにレーザ光線照射ユニット3を制御する。
【0034】
そして、ワーク200のE1行の最右端のデバイス202に形成された最右端の電極203jが集光器31に達したら、集光器31から所定パルス分のパルスレーザ光線を照射するようにレーザ光線照射ユニット3を制御した後、第2の送り手段5の作動を停止してチャックテーブル2の移動を停止する。この結果、ワーク200には、各電極203(図示せず)部分にビアホール用のレーザ加工孔が形成される。
【0035】
次に、制御手段10は、集光器31に対してチャックテーブル2をX軸方向に送るように第1の送り手段4を制御する。また、制御手段10は、第1の位置検出手段6のX軸読取ヘッドからの検出信号を入力しており、この検出信号をカウンタ104によってカウントしている。そして、カウント値が電極203のX方向の間隔Cに相当する値に達したら、第1の送り手段4の作動を停止する。この結果、集光器31は電極203eと同列の電極203jの直上に位置付けられる。
【0036】
この状態で、制御手段10は、集光器31から所定パルス分のパルスレーザ光線を照射するようにレーザ光線照射ユニット3を制御するとともに、チャックテーブル2をY軸方向に所定の移動速度で送るように第2の送り手段5を制御する。そして、制御手段10は、第2の位置検出手段7のY軸読取ヘッドからの検出信号をカウンタ104によりカウントし、そのカウント値がY方向の間隔Aおよび間隔Bに達する度に、集光器31から所定パルス分のパルスレーザ光線を照射するようにレーザ光線照射ユニット3を制御する。
【0037】
そして、ワーク200のE1行の最右端に形成された電極203fが集光器31に達したら、集光器31から所定パルス分のパルスレーザ光線を照射するようにレーザ光線照射ユニット3を制御した後、第2の送り手段5の作動を停止してチャックテーブル2の移動を停止する。この結果、ワーク200には、各電極203部分にレーザ加工孔が形成される。
【0038】
以上のようにして、ワーク200のE1行のデバイス202に形成された電極203部分にレーザ加工孔が形成されたら、制御手段10は、RAM103中に格納されている第2の送り開始位置座標値(a2)に基づいて第1、第2の送り手段4,5を作動し、ワーク200のE2行のデバイス202に形成された電極203用の第2の送り開始位置座標値(a2)の位置を集光器31の直下に位置付ける。そして、レーザ光線照射ユニット3、第1、第2の送り手段4,5を制御し、ワーク200のE2行のデバイスに形成された電極203部分に上述した穿孔工程を実施する。以後、ワーク200のE3〜En行のデバイス202に形成された電極203部分に対しても上述した穿孔工程を実施する。この結果、ワーク200の各デバイス202に形成された全ての電極203部分にレーザ加工孔が形成される。
【0039】
ここで、上述した基本動作は、第1の送り手段4による送り方向であるX軸方向と第2の送り手段5による送り方向であるY軸方向とがXY直交座標系と同じく直交するとの前提によるものである。しかしながら、現実には、X軸方向とY軸方向との直交精度が十分に調整・維持できない場合(X軸方向とY軸方向とは本来直交するように設計されるが、直交状態からずれる場合があるので、本発明では、Y軸方向をX軸方向に略直交する方向と規定する)があり、直交ズレに起因して送り方向にズレによる誤差を生じてしまうことがある。本実施の形態では、このような事情を考慮し、基本動作に適正な補正処理を加えることで、所望の加工位置である各電極203部分に精度よく貫通孔を形成できるようにするものである。
【0040】
図6は、本実施の形態におけるワーク加工方法の制御例を示す概略フローチャートである。まず、CPU101により実行される直交ズレ角算出手段の機能によって、直交ズレ角算出工程を実行する。この工程は、概略的には、チャックテーブル2上でXY直交座標系のY方向に所定距離だけ離間配置された複数のY方向基準パターンPY1〜PYmをX方向に対して位置決めして用い、チャックテーブル2とレーザ光線照射ユニット3とを順次相対的に所定距離αだけ移動させて撮像手段8によって順次撮像した少なくとも2つのY方向基準パターン、例えば第1のY方向基準パターンPY6,第2のY方向基準パターンPY8の撮像視野範囲中の座標値を位置情報として求め、求められたこれら位置情報および移動距離αに基づきX軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角θを求めるものである。
【0041】
本実施の形態では、図7に示すようにY方向基準パターンPY1〜PYmを含むワーク類似のゲージワーク300を予め用意しておき、このゲージワーク300をチャックテーブル2上に吸引保持させる。このようにゲージワーク300がチャックテーブル2上にセットされることにより(ステップS1;Yes)、直交ズレ角算出工程が開始される。
【0042】
ここで、Y方向基準パターンPY1〜PYmは、ゲージワーク300がXY直交座標系に対してアライメント処理された状態で、XY直交座標系のY方向に一列(したがって、XY直交座標系においては同一X座標位置となる)で等間隔(例えば、α/2)となるように離間配置されたものであり、例えば、撮像手段8の撮像範囲内に十分収まる同じ大きさで矩形状に形成されている。なお、本実施の形態では、m=9とし、9個のY方向基準パターンを設けているが、最低限2個あればよい。また、ゲージワーク300上には、X方向に一列で等間隔となるように離間配置されたX方向基準パターンPX1〜PXmも設けられている。チャックテーブル2上に保持されたゲージワーク300は、例えば図7に示すように、第1の送り手段4による送り方向であるX軸方向にXY直交座標系のX方向が平行となるように撮像手段8によるX方向基準パターンPX1〜PXmの撮像画像を用いた画像処理によってアライメント処理される。このようなアライメント処理によって、Y方向基準パターンPY1〜PYmはX方向およびX軸方向に対して直交するように位置決めされる。
【0043】
ゲージワーク300のセット、アライメントが終了したら、例えばゲージワーク300上のY方向基準パターンPY6をターゲットとして第1、第2の送り手段4,5によってチャックテーブル2を移動させてY方向基準パターンPY6を撮像手段8の第1の視野範囲E1内に位置付け、撮像手段8でY方向基準パターンPY6を含めて撮像する。そして、図9に示すように、例えばY方向基準パターンPY6の一角の点Aの座標値(X1,Y1)を検出する(ステップS2)。検出した点Aの座標値(X1,Y1)のデータはメモリ103aに格納される。
【0044】
次いで、図10に示すように、例えばゲージワーク300上のY方向基準パターンPY6から所定距離α離れたY方向基準パターンPY8をターゲットとし、第2の送り手段5によってチャックテーブル2を移動させて第2の位置検出手段7による移動位置の検出結果に従って所定距離α分だけY軸方向に移動した位置で停止させ、Y方向基準パターンPY8を撮像手段8の第2の視野範囲E2内に位置付け、撮像手段8でY方向基準パターンPY8を含めて撮像する。そして、図11に示すように、例えばY方向基準パターンPY8の対応する一角の点Bの座標値(X2,Y2)を検出する(ステップS3)。検出した点Bの座標値(X2,Y2)のデータはメモリ103aに格納される。
【0045】
この際、X軸方向とY軸方向とに直交ズレがなければ、撮像手段8の視野範囲内における点A,Bは同じ座標値、すなわち、X2=X1、Y2=Y1となるはずである。ところが、図7等に示すように、X軸方向に対してY軸方向に直交ズレがあると、X2≠X1、Y2≠Y1となってしまう。よって、この関係を示す図12を参照すれば、点Aから点Bをターゲットとして撮像手段8の視野範囲をY軸方向に所定距離α移動させても、Y軸方向=Y方向ではないため、Y軸の直交ズレ角θに起因して点Bは所望の点B´(X1,Y1)からずれた(X2,Y2)なる座標位置に位置することとなる。ここで、図12に示す三角形の関係によれば、X1−X2=βとすると、X軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角(Y方向に対するY軸方向の傾き角)θは、XY座標値中のX1,X2、移動距離αなる位置情報を用いることで、
θ=sin(β/α)
として算出される(ステップS4)。ここで、直交ズレ角θは、β>0(X1>X2)であれば右上がり方向(θ>0)、β<0(X1<X2)であれば右下がり方向(θ<0)と判断される。
【0046】
なお、このような直交ズレ角算出工程においては、直交ズレ角θを算出する上で、上記のような三角関数の演算式に限られるものではなく、点A,B,B´の位置情報や移動距離情報を適宜用いた三角関数や一次関数に基づき直交ズレ角θを算出するようにしてもよい。
【0047】
また、Y方向基準パターン欠け等により撮像手段8によって所望のY方向基準パターンを認識できなかった場合には、他のY方向基準パターンをターゲットとするようにしてもよい。
【0048】
直交ズレ角算出工程(ステップS1〜S4)が終了したら、ゲージワーク300を取り除いた後、図示しないワーク搬送手段によって加工処理の対象となるワーク200をチャックテーブル2上に搬送し、吸引手段を作動させて保持させる(ステップS5:ワーク保持工程)。チャックテーブル2上に保持されたワーク200は、アライメント処理により、図5に示すようなXY直交座標系に従う配置となるようにする(第1の送り手段4による送り方向であるX軸方向がX方向に平行になるようにする)。
【0049】
このようなワーク200の保持セット状態で、ワーク200の所望の加工位置にレーザ光線照射ユニット3によってレーザ光線を照射することにより貫通孔(ビアホール)を形成する穿孔工程を実行させる。この処理は、補正制御処理を伴うため、CPU101により実行される加工制御手段の機能によって、加工制御工程として実行する。まず、ワーク200上の対象となる加工位置を設定し(ステップS6)、対象となる加工位置の設計座標値を、前述のように算出された直交ズレ角θに基づいて補正する(ステップS7)。そして、補正された設計座標値に基づいて第1、第2の送り手段4,5によってチャックテーブル2を相対的に移動させ、第1、第2の位置検出手段6,7による位置検出結果に従い位置付けを行うことで、所望の加工位置をレーザ光線照射ユニット3の集光器31の直下に位置付ける(ステップS8)。この位置で、チャックテーブル2の移動を停止させ、集光器31からレーザ光線を照射させることで、加工位置(電極部分)に貫通孔(ビアホール)を形成する加工処理を実行させる(ステップS9,S10)。このような処理制御を、残りの他の加工位置についても同様に繰り返す(ステップS11)。
【0050】
ここで、図13を参照して設計座標値の補正について説明する。例えば、所望の設計座標値(X,Y)の加工位置Pに加工を行う場合、この設計座標値(X,Y)を目標として第1、第2の送り手段4,5によりチャックテーブル2を移動させ、その移動位置を第1、第2の位置検出手段6,7で管理する場合、X軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角θに起因して、この設計座標値(X,Y)からずれた位置が集光器31に対して位置付けられてしまうことになる。そこで、実際の加工に際しての位置付け目標位置は、直交ズレ角θによるずれ量を考慮し、例えばθ>0の場合であれば、(X−Y/tanθ,Y/cosθ)となるように補正し、第1の送り手段4によってチャックテーブル2を相対的にX−Y/tanθだけ送り、第2の送り手段5によってチャックテーブル2を相対的にY/cosθ分だけ送るように第1、第2の位置検出手段6,7の検出結果に従い制御することで、丁度、設計座標値(X,Y)の加工位置Pが集光器31の直下となるように制御することができる。なお、θ<0の場合であれば、(X+Y/tanθ,Y/cosθ)となるように補正すればよい。
【0051】
これにより、X軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角の影響を受けることなく所望の加工位置Pに対して高精度に加工を行わせることができる。従来のように補正をしない場合には、3〜10μm/200mm程度の誤差があったが、本実施の形態のように5mm間隔で設定されたY方向基準パターンを用いて直交ズレ角を算出し上記のように補正を行った場合には、1μm/200mm以下の誤差に収めることができたものである。
【0052】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。例えば、本実施の形態では、直交ズレ角θを算出するために、Y方向基準パターンPY1〜PYmを有する専用のゲージワーク300を用いるようにしたが、複数のY方向基準パターンのXY直交座標系における設計座標値が確定されたものであればよく、例えば、このようなY方向基準パターンを有する通常のワークであってもよい。さらには、ワークの加工痕をY方向基準パターンとして利用することで、直交ズレ角を算出するようにしてもよい。或いは、ワークを用いることなく、チャックテーブル2の表面に直接Y方向基準パターンが設けられていてもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、ゲージワーク300に関して、図7等に示すようにX方向がX軸方向と平行になるようにアライメント処理したが、X方向とX軸方向との傾き角が既知であって、Y方向基準パターンがX軸方向に対して直交するように位置決めされる状態であれば、X方向がX軸方向に対して傾きを持つようにアライメントしてもよい。もっとも、直交ズレ角θの演算処理を簡単にするためには、X方向をX軸方向と平行となるように設定するのが好ましい。
【0054】
また、このようなY方向基準パターンPY1〜PYmを用いて直交ズレ角θを算出する処理は、ワーク加工毎に毎回行うようにすれば、装置稼動中にX軸とY軸の直交度が変化したような経時的な軸送り誤差にも対処することができ、加工精度は向上するが、タクトは低下する。よって、基準パターンを用いて基準パターンズレ量を算出して記憶させる処理を行うタイミングは、要求される精度、効率等を考慮し、ワーク加工毎、カセットにセットされた一群のワーク加工毎、一日の加工開始時等、適宜設定すればよい。
【0055】
また、本実施の形態では、Y方向基準パターンPY6,PY8を撮像手段8で撮像することによって直交ズレ角θを算出するようにしたが、他の2つのY方向基準パターンを撮像手段8で撮像することによって直交ズレ角θを算出するようにしてもよい。2つのY方向基準パターンを用いて直交ズレ角θを算出する場合、Y方向になるべく離れた2つのY方向基準パターンを選択するようにすれば、算出される直交ズレ角θの精度が向上する。また、2つのY方向基準パターンだけでなく、3つ以上のY方向基準パターンをターゲットとして撮像手段8を相対的に順次移動させて撮像して各々の直交ズレ角θを算出し、得られた複数の直交ズレ角θの平均値に基づき直交ズレ角を算出するようにしてもよい。さらには、Y軸方向の傾きがY座標の位置によって異なる場合でも、2つのY方向基準パターンだけを用いて直交ズレ角を算出すると図14(a)に示すような直交ズレ角θとなる。これに対して、図14(b)に示すように各Y方向基準パターンPY1〜PYmをターゲットとして撮像手段8を相対的に順次移動させて撮像し、各Y方向基準パターンPY1〜PYm間のY座標位置に応じた直交ズレ角θ1,θ2,…、θ8,…を算出し、これらの直交ズレ角θ1,θ2,…、θ8,…をY座標位置に応じて用いて補正するようにすれば、Y軸方向の傾きがY座標の位置によって異なっていても適正な補正が可能となる。
【0056】
また、本実施の形態では、算出された直交ズレ角θに基づき、所望の加工位置の設計座標値のX座標値およびY座標値に補正を施し、第1、第2の送り手段4,5による送り量を第1、第2の位置検出手段6,7に従い制御するようにしたが、直交ズレ角に基づいて所望の加工位置の設計座標値のX座標値に補正を施し、第1の送り手段4による送り量を第1の位置検出手段6に従い制御するとともに、所望の加工位置の設計座標値のY座標値に基づいて第2の送り手段4による送り量を、図示しないレーザ測長器等を用いて、1次元でリニアに制御するようにしてもよい。
【0057】
これは、下方に位置してY軸方向の送りを行わせる第2の送り手段5と、第2の送り手段5に搭載されてX軸方向の送りを行わせる第1の送り手段4とでは、軸送りに際して生ずる機械的な誤差の大きさに差があり、第2の送り手段5による送りはY軸方向には直線的で比較的安定しているのに対して、第1の送り手段4による送りはブレやすいためである。そこで、Y軸方向の送り制御は、従来から行われているレーザ測長器等による1次元リニア制御で行わせるようにしてもよい。
【0058】
また、本実施の形態は、レーザ加工により貫通孔(ビアホール)を形成する加工例についての適用例で説明したが、このような適用例に限らず、所望の加工位置に加工を施すものであれば、同様に適用可能である。例えば、ワーク200の分割予定ライン201に沿った破線カットや、分割予定ライン201に沿ってワーク200内の所定位置間を切断する内内カットにも適用可能である。また、加工手段としても、レーザ光線照射ユニット3を用いるレーザ加工に限らず、例えば、円盤状のブレードを用いてワークの所望の加工位置にチョッパカットを施すような場合にも同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態のレーザ加工装置の制御系の一部を含め主要部を示す外観斜視図である。
【図2】本実施の形態のレーザ加工装置に用いられるワークの構成例を示す平面図である。
【図3】ワークの一部を拡大して示す平面図である。
【図4】フレームに装着されたワークを示す斜視図である。
【図5】ワークがチャックテーブルの所定位置に保持された状態における座標との関係を示す説明図である。
【図6】本実施の形態におけるワーク加工方法の制御例を示す概略フローチャートである。
【図7】ゲージワークにおけるY方向基準パターン例を示す説明図である。
【図8】Y方向基準パターンPY6に位置付けた視野範囲E1の例を示す説明図である。
【図9】視野範囲E1の撮像例を示す説明図である。
【図10】所定距離α移動させてY方向基準パターンPY8に位置付けた視野範囲E2の例を示す説明図である。
【図11】視野範囲E2の撮像例を示す説明図である。
【図12】直交ズレ角θの算出に関する説明図である。
【図13】直交ズレ角θに基づく送り量の補正例を示す説明図である。
【図14】2点補正例と多点補正例とを対比して示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 レーザ加工装置
2 チャックテーブル
3 レーザ光線照射手段
4 第1の送り手段
5 第2の送り手段
6 第1の位置検出手段
7 第2の位置検出手段
8 撮像手段
200 ワーク
300 ゲージワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたワークを加工する加工手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをXY直交座標系のX方向に平行なX軸方向に相対的に移動させる第1の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをX軸方向に略直交するY軸方向に相対的に移動させる第2の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なX軸方向位置を検出する第1の位置検出手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なY軸方向位置を検出する第2の位置検出手段と、前記加工手段との位置関係が固定されて、前記チャックテーブルに保持されたワークを撮像する撮像手段と、を備える加工装置を用いて、前記チャックテーブルに保持されたワークのXY直交座標系における所望の加工位置に前記加工手段で加工させるワーク加工方法であって、
前記チャックテーブル上でXY直交座標系のY方向に所定距離だけ離間配置された複数のY方向基準パターンをX軸方向に対して直交するよう位置決めして用い、前記チャックテーブルと前記加工手段とを順次相対的に所定距離だけ移動させて前記撮像手段によって順次撮像した少なくとも2つの前記Y方向基準パターンの位置情報を求め、求められたこれらY方向基準パターンの位置情報および移動距離に基づきX軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角を求める直交ズレ角算出工程と、
XY直交座標系における設計座標値が設定された所望の加工位置を含むワークを前記チャックテーブルに保持させるワーク保持工程と、
前記チャックテーブル上に保持されたワークの所望の加工位置の加工に際して、前記直交ズレ角算出工程で算出された前記直交ズレ角に基づいて該所望の加工位置の設計座標値に補正を施し、補正された設計座標値に基づいて前記チャックテーブルと前記加工手段とを相対的に移動させ前記加工手段を当該設計座標値の加工位置に位置付けて加工させる加工制御工程と、
を含むことを特徴とするワーク加工方法。
【請求項2】
前記加工制御工程は、前記直交ズレ角に基づき所望の加工位置の設計座標値のX座標値に補正を施し、前記第1の送り手段による送り量を前記第1の位置検出手段に従い制御するとともに、所望の加工位置の設計座標値のY座標値に基づいて前記第2の送り手段による送り量を1次元でリニアに制御することを特徴とする請求項1に記載のワーク加工方法。
【請求項3】
前記加工制御工程は、前記直交ズレ角に基づき所望の加工位置の設計座標値のX座標値およびY座標値に補正を施し、前記第1の送り手段および前記第2の送り手段による送り量を前記第1の位置検出手段および前記第2の位置検出手段に従い制御することを特徴とする請求項1に記載のワーク加工方法。
【請求項4】
ワークを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたワークを加工する加工手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをXY直交座標系のX方向に平行なX軸方向に相対的に移動させる第1の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをX軸方向に略直交するY軸方向に相対的に移動させる第2の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なX軸方向位置を検出する第1の位置検出手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なY軸方向位置を検出する第2の位置検出手段と、前記加工手段との位置関係が固定されて、前記チャックテーブルに保持されたワークを撮像する撮像手段と、を備え、前記チャックテーブルに保持されたワークのXY直交座標系における所望の加工位置に前記加工手段で加工するワーク加工装置であって、
前記チャックテーブル上でXY直交座標系のY方向に所定距離だけ離間配置された複数のY方向基準パターンをX軸方向に対して直交するよう位置決めして用い、前記チャックテーブルと前記加工手段とを順次相対的に所定距離だけ移動させて前記撮像手段によって順次撮像した少なくとも2つの前記Y方向基準パターンの位置情報を求め、求められたこれらY方向基準パターンの位置情報および移動距離に基づきX軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角を求める直交ズレ角算出手段と、
XY直交座標系における設計座標値が設定された所望の加工位置を含み、前記チャックテーブル上に保持されたワークの所望の加工位置の加工に際して、前記直交ズレ角算出手段で算出された前記直交ズレ角に基づいて該所望の加工位置の設計座標値に補正を施し、補正された設計座標値に基づいて前記チャックテーブルと前記加工手段とを相対的に移動させ前記加工手段を当該設計座標値の加工位置に位置付けて加工させる加工制御手段と、
を備えることを特徴とするワーク加工装置。
【請求項1】
ワークを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたワークを加工する加工手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをXY直交座標系のX方向に平行なX軸方向に相対的に移動させる第1の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをX軸方向に略直交するY軸方向に相対的に移動させる第2の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なX軸方向位置を検出する第1の位置検出手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なY軸方向位置を検出する第2の位置検出手段と、前記加工手段との位置関係が固定されて、前記チャックテーブルに保持されたワークを撮像する撮像手段と、を備える加工装置を用いて、前記チャックテーブルに保持されたワークのXY直交座標系における所望の加工位置に前記加工手段で加工させるワーク加工方法であって、
前記チャックテーブル上でXY直交座標系のY方向に所定距離だけ離間配置された複数のY方向基準パターンをX軸方向に対して直交するよう位置決めして用い、前記チャックテーブルと前記加工手段とを順次相対的に所定距離だけ移動させて前記撮像手段によって順次撮像した少なくとも2つの前記Y方向基準パターンの位置情報を求め、求められたこれらY方向基準パターンの位置情報および移動距離に基づきX軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角を求める直交ズレ角算出工程と、
XY直交座標系における設計座標値が設定された所望の加工位置を含むワークを前記チャックテーブルに保持させるワーク保持工程と、
前記チャックテーブル上に保持されたワークの所望の加工位置の加工に際して、前記直交ズレ角算出工程で算出された前記直交ズレ角に基づいて該所望の加工位置の設計座標値に補正を施し、補正された設計座標値に基づいて前記チャックテーブルと前記加工手段とを相対的に移動させ前記加工手段を当該設計座標値の加工位置に位置付けて加工させる加工制御工程と、
を含むことを特徴とするワーク加工方法。
【請求項2】
前記加工制御工程は、前記直交ズレ角に基づき所望の加工位置の設計座標値のX座標値に補正を施し、前記第1の送り手段による送り量を前記第1の位置検出手段に従い制御するとともに、所望の加工位置の設計座標値のY座標値に基づいて前記第2の送り手段による送り量を1次元でリニアに制御することを特徴とする請求項1に記載のワーク加工方法。
【請求項3】
前記加工制御工程は、前記直交ズレ角に基づき所望の加工位置の設計座標値のX座標値およびY座標値に補正を施し、前記第1の送り手段および前記第2の送り手段による送り量を前記第1の位置検出手段および前記第2の位置検出手段に従い制御することを特徴とする請求項1に記載のワーク加工方法。
【請求項4】
ワークを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたワークを加工する加工手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをXY直交座標系のX方向に平行なX軸方向に相対的に移動させる第1の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段とをX軸方向に略直交するY軸方向に相対的に移動させる第2の送り手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なX軸方向位置を検出する第1の位置検出手段と、前記チャックテーブルと前記加工手段との相対的なY軸方向位置を検出する第2の位置検出手段と、前記加工手段との位置関係が固定されて、前記チャックテーブルに保持されたワークを撮像する撮像手段と、を備え、前記チャックテーブルに保持されたワークのXY直交座標系における所望の加工位置に前記加工手段で加工するワーク加工装置であって、
前記チャックテーブル上でXY直交座標系のY方向に所定距離だけ離間配置された複数のY方向基準パターンをX軸方向に対して直交するよう位置決めして用い、前記チャックテーブルと前記加工手段とを順次相対的に所定距離だけ移動させて前記撮像手段によって順次撮像した少なくとも2つの前記Y方向基準パターンの位置情報を求め、求められたこれらY方向基準パターンの位置情報および移動距離に基づきX軸方向に対するY軸方向の直交ズレ角を求める直交ズレ角算出手段と、
XY直交座標系における設計座標値が設定された所望の加工位置を含み、前記チャックテーブル上に保持されたワークの所望の加工位置の加工に際して、前記直交ズレ角算出手段で算出された前記直交ズレ角に基づいて該所望の加工位置の設計座標値に補正を施し、補正された設計座標値に基づいて前記チャックテーブルと前記加工手段とを相対的に移動させ前記加工手段を当該設計座標値の加工位置に位置付けて加工させる加工制御手段と、
を備えることを特徴とするワーク加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−223440(P2009−223440A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64881(P2008−64881)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
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