説明

ワーク搬送装置およびワーク搬送方法

【課題】台車の側壁に隣接するワークが傾いている場合でも、そのワークを把持部で確実に把持することができるワーク搬送装置およびワーク搬送方法を提供する。
【解決手段】ワーク用ハンド部220の把持部221の中心部が、回動部112の回転軸Oから第1アーム部211の他端部に向けて延在する中心軸線Pから所定間隔Lをおいて配置されている。把持部221の中心線Rと第1アーム部211の中心軸線Pとの間隔Lを適宜設定することにより、第1アーム部211および第2アーム部212と台車Dの側壁D1との間の間隔を大きく設定することができる。図4に示すように、台車Dの側壁D1に隣接するワークWの姿勢が傾いている場合、第1アーム部211および第2アーム部212を台車Dの側壁D1に対して傾斜させても、第1アーム部211および第2アーム部212は台車Dの側壁D1と干渉しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車中のワークをハンド部で把持して搬送するワーク搬送装置およびワーク搬送方法に係り、特に、ワークの搬送時にハンド部と台車との干渉を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
台車内にワークを載置したり、台車から取り出すために搬送装置が使用される。搬送装置は6軸ロボット等のロボットを備え、ロボットのロボットアーム部の先端部にハンド部が取り付けられている。
【0003】
ハンド部は、一端部がロボットの回動部に回転可能に設けられたアーム部を備えている。アーム部の他端部には、ワークを把持する把持部が設けられている。把持部は、たとえば拡径部がワークの孔部の内周部に当接してワークを把持するホールクランプ部を有している(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−254071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワークは、台車内で面内方向に並べて配置されるとともに、中敷きを介して垂直方向に積層されている。中敷きが、中央部で上方に向かって凸状に撓んだ状態にある場合、台車の側壁に隣接するワークの姿勢は側壁に向かって傾いている。
【0006】
たとえば図7に示すように姿勢が傾いているワークWをハンド部2の把持部4で把持する場合、把持部4のホールクランプ部の拡径部をワークWの孔部Hに挿入するために、アーム部3を回動部1の回転軸O回りに回転させることにより、アーム部3を台車Dの側壁D1に対して傾斜させる必要がある。しかしながら、この場合、ハンド部2のアーム部3が台車Dの側壁D1と干渉してしまうため、把持部4でワークWを把持することができない。
【0007】
したがって、本発明は、台車の側壁に隣接するワークが傾いている場合でも、そのワークを把持部で確実に把持することができるワーク搬送装置およびワーク搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワーク搬送装置は、ハンド部と、ハンド部を回転可能に支持する回動部とを備え、ハンド部は、一端部が回動部に設けられたアーム部と、アーム部の他端部に設けられるとともにワークを把持する把持部とを有し、把持部の中心部は、回動部の回転中心からアーム部の他端部に向けて延在する中心軸線から所定間隔をおいて配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のワーク搬送装置では、ハンド部の把持部の中心部が、回動部の回転中心からアーム部の他端部に向けて延在する中心軸線から所定間隔をおいて配置されているから、把持部で台車の側壁に隣接するワークを把持する場合、把持部の中心部が中心軸線上に配置される場合と比較して、アーム部と台車の側壁との間の間隔を大きく設定することができる。具体的には図6に示すハンド部12では、把持部14の中心線Rとアーム部13の中心軸線Pとの間の間隔Lを適宜設定することにより、アーム部13と台車Dの側壁D1との間の間隔を大きく設定することができる。したがって、台車Dの側壁D1に隣接するワークWの姿勢が傾いているとき、アーム部13を回動部11の回転軸O回りに回転させてアーム部13を台車Dの側壁D1に対して傾斜させても、アーム部13は台車Dの側壁D1と干渉しない。
【0010】
このように本発明のワーク搬送装置では、台車の側壁に隣接するワークが傾いている場合でも、把持部は、そのワークを確実に把持することができる。特に、把持部がホールクランプ部を有し、その拡径部がワークの孔部の内周部に当接することによりワークを把持する態様では、拡径部をワークの孔部の内周部に確実に挿入することができるから、上記効果を効果的に得ることができる。
【0011】
本発明のワーク搬送装置は種々の構成を用いることができる。たとえば回動部とアーム部との間には、中心軸線回りにハンド部を旋回可能とする旋回機構が設けられている態様を用いることができる。アーム部の中心軸線に関して把持部とは反対側にワーク検出手段等の他の手段がハンド部に設けられている場合、台車の側壁に隣接するワークを把持するとき、他の手段が台車の他の側壁と干渉する虞があるが、上記態様では、ハンド部を台車内に挿入する際に、旋回機構を用いて中心軸線回りにハンド部を適宜回転させることにより、他の手段と台車の側壁との干渉を防止することができる。
【0012】
本発明のワーク搬送方法は、本発明のワーク搬送装置を用い、台車内で姿勢が傾いているワークを把持して搬送するワーク搬送方法であって、ワークの姿勢の傾きに応じて、アーム部を回転させることにより、アーム部の傾きを調整し、把持部によりワークを把持することを特徴とする。
【0013】
本発明のワーク搬送方法は、本発明のワーク搬送装置と同様な効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のワーク搬送装置あるいはワーク搬送方法によれば、台車の側壁に隣接するワークが傾いている場合でも、そのワークを把持部で確実に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るワーク搬送装置の全体構成を表す概略側面図である。
【図2】図1に示すワーク搬送装置の一部構成を表し、(A)はハンド装置の概略構成を表す側断面図、(B)は(A)とは垂直な方向のハンド装置の一部の概略構成を表す側断面図である。
【図3】図2に示すワーク搬送装置の把持部のホールクランプ部およびガイドピン部の位置関係を説明するための図であって、ワークの概略構成を表す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るワーク搬送装置の動作状態を表す側断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るワーク搬送装置の旋回機構の機能を説明するための図であって、(A)は旋回機構を用いた本発明例を表す概略平面図、(B)旋回機構を用いない従来例を表す概略平面図である。
【図6】本発明のワーク搬送装置の具体例の動作を説明するための図であって、ハンド部の概略構成を表す側断面図である。
【図7】従来のワーク搬送装置の具体例の動作の問題点を説明するための図であって、ハンド部の概略構成を表す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)実施形態の構成
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るワーク搬送装置100の全体構成を表す概略側面図である。図2は、ワーク搬送装置100の一部構成を表し、(A)はハンド装置120の概略構成を表す側断面図、(B)はハンド装置120の一部の概略構成を表す側断面図である。図2(A)は、ハンド装置120が回動部112の回転軸O回りに回転する面内方向に平行に切断した側断面図であり、図2(B)は、図2(A)の側断面に垂直な面で切断した側断面図である。図3は、ワークWの概略構成を表し、把持部221の各部位が挿入される各孔部を示す平面図である。
【0017】
ワーク搬送装置100は、たとえば図1に示すように台車D内からのワークWの取出しを行う装置である。台車D内には、ワークWが面内方向に配列されるとともに、中敷きNを介して垂直方向に積層されている。ワーク搬送装置100は6軸ロボット等のロボット110を備え、ロボット110はロボットアーム部111を有している。ロボットアーム部111の先端部には、ハンド装置120が取り付けられる取付部113が設けられている。ロボットアーム部111には、ハンド装置120を回転可能に支持する回動部112が設けられている。
【0018】
ハンド装置120は、たとえば図2に示すようにロボット110の取付部112に設けられた旋回機構130、接続部材131を介して旋回機構130に設けられたハンド部140、および、接続部材131を介して旋回機構130に設けられたワーク検出部150を備えている。旋回機構130は、中心軸線P回りにハンド部140およびワーク検出部150を旋回駆動させる機構である。
【0019】
ハンド部140は、親ハンド部210、子ハンド部であるワーク用ハンド部220、および、中敷用ハンド部230を有している。親ハンド部210は、第1アーム部211、第2アーム部212、第3アーム部213を有している。アーム部211〜213は、たとえばシリンダ機構を有しており、伸縮可能に構成されている。
【0020】
第1アーム部211の上端部は、接続部材131を介して旋回機構130に接続されている。第1アーム部211の下端部には、接続部材132を介して第2アーム部212および第3アーム部213の上端部が接続されている。第2アーム部212の下端部には、ワーク用ハンド部220の上端部が接続されている。第3アーム部213の下端部には、中敷用ハンド部230の上端部が接続されている。
【0021】
ワーク用ハンド部220の下端部には、ワークWを把持する把持部221が設けられている。把持部221は、ホールクランプ部222とガイドピン部223を有している。ホールクランプ部222の先端部には、油圧等により拡径する拡径部が設けられている。ホールクランプ部222では、拡径部が拡径してワークWの孔部H1の内周部に当接することにより、ワークWが把持される。ガイドピン部223の先端部には、位置決めのためのピンが設けられ、ピンはワークWの孔部H2に挿入される。なお、ワークWの孔部H3には、ホールクランプ部222の拡径部およびガイドピン部223のピンは挿入されない。
【0022】
本実施形態では、図2(A)に示すようにワーク用ハンド部220の把持部221の中心部が、回動部112の回転軸Oから親ハンド部210の第1アーム部211の他端部に向けて延在する中心軸線Pから離間して配置されている。具体的には、把持部221の中心線Rは、回転軸Oから第1アーム部211の他端部に向けて延在する中心軸線Pからその中心軸線Pに対する垂直方向に所定間隔Lをおいて配置されている。また、ワーク用ハンド部220は、たとえば図2(A)に示すワークWの幅方向においてワークW内にほぼ収まるとともに、たとえば図2(B)に示す長手方向においてワークW内に収まるように配設されている。
【0023】
中敷用ハンド部230の下端部の両端部には、L字状をなす一対の把持部材231が回転可能に設けられている。把持部材231の先端部には爪部が形成されている。中敷用ハンド部230では、把持部材231の爪部が中敷きNを狭持して台車Dの外に放出する。
【0024】
ワーク検出部150は、台車Dの底面に平行な面内でのワークWの位置を検出する位置検出部(たとえば二次元カメラ)と、ワークWの姿勢の傾きを検出する傾き検出部(たとえば三次元センサ)を有している。ハンド装置120の傾斜角度は、ロボット110の回動部112回りのハンド装置120の回転により調整され、その調整は、ワーク検出部150の位置検出部および傾き検出部の検出データに基づいて行われる。
【0025】
(2)実施形態の動作
ワーク搬送装置100の動作について説明する。図4は、ワーク搬送装置100の動作状態を表す側断面図である。図5は、ワーク搬送装置100の旋回機構130の機能を説明するための図であって、(A)は旋回機構130を用いた本発明例を表す概略平面図、 (B)旋回機構130を用いない従来例を表す概略平面図である。図5では、ワーク検出部150および把持部220のみ図示し、ワーク検出部150および把持部220を簡略化して図示している。
【0026】
ワーク搬送装置100では、ハンド装置120が台車Dの側壁D1,D2と干渉しないように、旋回機構130により台車Dに対するハンド部140およびワーク検出部150の相対的位置を調整した上で、ハンド装置120を台車D内に挿入する。この場合、ハンド装置120が図4に示すように台車Dの側壁D2に隣接する場合、ワーク検出部150は、側壁D2とは干渉せずにワークWの位置および傾きを検出することができる。
【0027】
ハンド部140では、親ハンド部210の第1アーム部211が、ワーク検出部150により検出されたワークWの位置および傾きのデータに基づき、ロボット110の回動部112の回転軸O回りに回転する。これにより、第1アーム部211および第2アーム部212が傾斜し、ワーク用ハンド部220の傾斜角度が調整され、把持部221の各部位のワークWの各孔部への挿入角度が決定される。
【0028】
ここで本実施形態では、図2(A)に示すようにワーク用ハンド部220の把持部221の中心部の中心線Rが、回動部112の回転軸Oから第1アーム部211の他端部に向けて延在する中心軸線Pから所定間隔Lをおいて配置されている。したがって、たとえば台車Dの側壁D1に隣接するワークWの姿勢が傾いている場合、図4に示すように第1アーム部211の上端部を側壁D1側に傾斜させても、第1アーム部211は側壁D1と干渉しない。
【0029】
具体的には、ハンド部140では、把持部221の中心線Rと第1アーム部211の中心軸線Pとの間隔Lを適宜設定することにより、第1アーム部211および第2アーム部212と台車Dの側壁D1との間の間隔を大きく設定することができる。したがって、台車Dの側壁D1に隣接するワークWの姿勢が傾いている場合、第1アーム部211および第2アーム部212を台車Dの側壁D1に対して傾斜させても、第1アーム部211および第2アーム部212は台車Dの側壁D1と干渉しない。
【0030】
次いで、ワーク用ハンド部220の第2アーム部212を適宜伸縮させることにより、ホールクランプ部222の拡径部が孔部H1内に挿入される。続いて、拡径部が拡径してワークWの孔部H1の内周部に当接することにより、ワークWが把持される。この場合、ガイドピン部223では、先端部のピンがワークWの孔部H2に挿入される。このように把持されたワークWは、ロボット110により台車Dの外部に搬送される。
【0031】
また、台車Dの側壁D2に隣接するワークWを把持するとき、たとえば図5(B)に示すように、ワーク検出部150が台車の側壁D2と干渉する虞があるが、本実施形態では、ハンド部140を台車D内に挿入する際に、たとえば図5(A)に示すように中心軸線P回りにハンド装置120を適宜回転させることにより、ハンド部140と台車Dの側壁D2との干渉を防止することができる。
【0032】
このようにハンド部140は中敷きN上に配列されたワークWを次々と把持し、ロボット110は台車Dの外部に搬送する。中敷きN上にワークWがなくなった場合、中敷用ハンド部230の把持部材231の爪部が中敷きNを狭持して台車Dの外に放出する。次いで、ハンド装置120の各部位は、上記と同様な動作を行ってワークWを次々と把持し、ロボット110は、ワークWを台車Dの外部に搬送する。
【0033】
以上のように本実施形態では、台車Dの側壁D1に隣接するワークWの姿勢が傾いているとき、第1アーム部211および第2アーム部212を台車Dの側壁D1に対して傾斜させても、第1アーム部211および第2アーム部212は台車Dの側壁D1と干渉しないから、ワークWを把持部221で確実に把持することができる。
【0034】
特に、把持部221がホールクランプ部222を有し、その拡径部がワークWの孔部H1の内周部に当接することによりワークWを把持する態様では、拡径部をワークWの孔部H1の内周部に確実に挿入することができるから、上記効果を効果的に得ることができる。また、ハンド装置120を台車D内に挿入する際に、旋回機構130を用いて中心軸線P回りにハンド装置120を適宜回転させることにより、ワーク検出部150と台車Dの側壁D2との干渉を防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
100…ワーク搬送装置、110…ロボット、112…回動部、120…ハンド装置、130…旋回機構、140…ハンド部、150…ワーク検出部、210…親ハンド部、211…第1アーム部、212…第2アーム部、213…第3アーム部、220…ワーク用ハンド部、221…把持部、222…ホールクランプ部、223…ガイドピン部、230…中敷用ハンド部、231…把持部材、D…台車、D1,D2…側壁、N…中敷き、P…中心軸、R…中心線、W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンド部と、
前記ハンド部を回転可能に支持する回動部とを備え、
前記ハンド部は、一端部が前記回動部に設けられたアーム部と、前記アーム部の他端部に設けられるとともにワークを把持する把持部とを有し、
前記把持部の中心部は、前記回動部の回転中心から前記アーム部の前記他端部に向けて延在する中心軸線から所定間隔をおいて配置されていることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
前記回動部と前記アーム部との間には、前記中心軸線回りに前記ハンド部を旋回可能とする旋回機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記把持部は、前記ワークの孔部の内周部に拡径部が当接することにより前記ワークを把持するホールクランプ部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のワーク搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のワーク搬送装置を用い、台車内で姿勢が傾いているワークを把持して搬送するワーク搬送方法において、
前記ワークの姿勢の傾きに応じて、前記アーム部を回転させることにより、前記アーム部の傾きを調整し、前記把持部により前記ワークを把持することを特徴とするワーク搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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