説明

下水道の伏越部構造

【課題】 伏越管内に堆積した土砂等の堆積物を良好に排出することができる下水道の伏越部構造を提供すること。
【解決手段】 障害物100を挟んで配設された上流側下水路1、下流側下水路2にそれぞれ連結され、障害物の両側に配設される上流側伏越室11、下流側伏越室12と、障害物の下方で上流側伏越室及び下流側伏越室を連結する伏越管13とを有する下水道の伏越部構造において、伏越管内へ空気を導入するコンプレッサ14と、伏越管の流入口19及び流出口20側に配置されて、コンプレッサにより導入された空気により伏越管の内部上方に空気溜りPを形成する空気溜り形成手段とを有し、この空気溜り形成手段は、伏越管の流入口19の上部を閉塞する上流側ゲート15と、伏越管の流出口20を覆い、下方に下部開口21を備えたケース体16とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下水道の伏越部構造に係り、特に、伏越管下流側部分及び下流側伏越室の構造を改良した下水道の伏越部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に河川、鉄道、あるいは移設が困難な地下埋設物等の障害物を横切って地下水路を敷設する必要があるような場合、障害物の存在する区間の下水道を伏越(逆サイフォン式の連通路)で構成することが多い(例えば、特許文献1、2参照)。合流式下水道の分野で採用される伏越の構成例の中に、エアクッション・サイフォンシステムを取り入れたものが知られているので(例えば、非特許文献1、2参照)、それについて以下に簡単に説明する。図5は2つのゲートでエアクッション室を形成するタイプの構造例を示している。
【0003】
この構造では、図5(A)に示すように、障害物103を挟んで上流側と下流側に上流側下水路101と下流側下水路102が設けられ、各下水路101、102に連通させて、障害物103の両側に上流側伏越室111と下流側伏越室112とが垂直に設けられている。そして、垂直に設けられた両伏越室111、112の下端間を、障害物103の下側に通した伏越管113で連結している。
【0004】
また、各伏越室111、112と伏越管113の両端の流入口115、流出口116には、これらの流入口115、流出口116を上側から閉塞するゲート117、118が昇降自在に設けられている。各ゲート117、118は図示しない駆動機構により開閉操作ができるようになっている。図5(B)のように2つのゲート117、118をある程度閉じると、伏越管113内の上部に空気溜まり(以下、エアクッション室ともいう)Pを形成することができ、ここに外部から空気を導入して封じ込めることにより、伏越管113内の下水の流れる流路断面積を小さくして下水の流れを速くすることができる。
【0005】
このゲート式のエアクッション・サイフォンシステムを運転する場合、図5(A)に示すように、通常時はゲート117、118を全開して、伏越管113の流路断面積を大きく使って下水を流す。流路断面積を大きく使った場合には緩い流れとなるので、伏越管113内に堆積物Tが溜まるおそれがある。そこで、適当なタイミングで、図5(B)に示すような堆積物除去運転を行う。この堆積物除去運転時は、ゲート117、118をある程度まで閉じる。そして、それにより伏越管113内の上部にできるエアクッション室Pに外部から空気を導入し、これを保持することにより伏越管113内の下水の流れる流路断面積を小さくして、下水の流れを速くし、堆積物Tを押し流す。このようにして、伏越管113内の堆積物を除去することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2002−348948号公報
【特許文献2】特開2003−253739号公報
【非特許文献1】「合流式下水道と伏越し」鈴木宏 著 株式会社 公共投資ジャーナル社 平成14年12月25日発行
【非特許文献2】東京都下水道局 インターネット <URL:http://www.gesui.metro.tokyo.jp/odekake/syorijyo/03_13.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、伏越管113の流出口116から流出する下水の流出量は、ゲート118による流出口116の開度によって決定されるため、流出口116から流出できなかった下水がゲート118に衝突して停滞したり逆流して、伏越管113の上流側から流れてくる下水とぶつかって合流し、伏越管113内の下流域において下水の水位が上昇してしまうことがある。この水位の上昇により、伏越管113の下流域において下水の流速が低下し、堆積物を下流側伏越室112内へ押し流すことが困難になる恐れがある。
【0008】
この伏越管113の下流域における水位の上昇は、ゲート118により伏越管113の流出口116の開度を大きくすることで解消できるが、この場合には、伏越管113内の空気溜りPが不足して、この伏越管113内を流れる下水の流路断面積が増大し、この伏越管113内を流れる下水に対し、伏越管113内の堆積物を押し流し得る流速を付与できなくなる恐れがある。
【0009】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、伏越管内に堆積した土砂等の堆積物を良好に排出することができる下水道の伏越部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、障害物を挟んで配設された上流側下水路、下流側下水路にそれぞれ連結され、上記障害物の両側に配設される上流側伏越室、下流側伏越室と、上記障害物の下方で上流側伏越室及び下流側伏越室を連結する伏越管と、を有する下水道の伏越部構造において、上記伏越管内へ空気を導入する空気導入手段と、上記伏越管の流入口及び流出口側に配置されて、上記空気導入手段により導入された空気により上記伏越管の内部上方に空気溜りを形成する空気溜り形成手段とを有し、この空気溜り形成手段は、上記伏越管の上記流入口の上部を閉塞する上流側ゲートと、上記伏越管の上記流出口を覆い、下方に下部開口を備えたケース体と、を有して構成されたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記ケース体の側方に側部開口が形成され、この側部開口の開口面積を調整する下流側ゲートが上記ケース体に設けられたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記ケース体の下部開口近傍に取込口を位置付けて、下流側伏越室の内部または当該下流側伏越室に沿ってガイドダクトが設置され、このガイドダクト内に伏越管内の空気が導入されることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、上記ガイドダクトの上端の排出口と下流側伏越室内の下水の自由水面との間に、この自由水面を上記ガイドダクトの排出口よりも高める堰が設けられたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の発明において、上記下流側伏越室内には、この下流側伏越室内へ排出される土砂等の堆積物をガイドダクトの取込口へ誘導する誘導手段が設置されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、空気導入手段により伏越管内に導入された空気は、空気溜り形成手段の上流側ゲート及びケース体によって伏越管及びケース体の内部上方に、この伏越管の長手方向に沿う空気溜りを形成する。このため、伏越管内の全長に亘り下水の流れる流路断面積を減少させて、下水の流速を上昇させることができる。また、伏越管内の下水は、流出口を経てケース体の下部開口から抵抗なくスムーズに下流側伏越室内へ流出する。これらのことから、伏越管の下流域においても、伏越管内を流れる下水の流速が適切に保持されるので、伏越管内に堆積した土砂等の堆積物を良好に排出することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、ケース体の側部開口の開口面積を下流側ゲートにより調整することによって、伏越管及びケース体の内部上方に形成される空気溜りの高さを調整することができる。また、上記下流側ゲートによりケース体の側部開口を全開操作することによって、または上記下流側ゲートをケース体内の下水の水面位置まで上昇させることによって、伏越管内を流れる下水中の浮遊物を、ケース体内に留まらせることなく下流側伏越室内へ排出することができる。特に後者の場合には、伏越管及びケース体の内部上方に空気溜りを維持し確保することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、下流側伏越室の内部または当該下流側伏越室に沿って設置されたガイドダクトの取込口が、ケース体の下部開口近傍に位置付けられて、このガイドダクト内に伏越管内の空気が導入されることから、このガイドダクト内に導入されて上昇する空気がエアリフトポンプとして機能して、伏越管からケース体を経て下流側伏越室内へ流出した下水及び堆積物をガイドダクト内へ導き、その上方へ移送することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、ガイドダクトの上端の排出口と下流側伏越室内の下水の自由水面との間に、この自由水面をガイドダクトの排出口よりも高める堰が設けられたことから、下流側伏越室内の下水の自由水面とガイドダクトの上端の排出口との水位差によって、このガイドパイプ内に下水の上昇流が発生する。このガイドパイプ内の下水の上昇流によっても、下流側伏越室内へ流出した下水及び堆積物を、ガイドダクトを通して上方へ移送することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、伏越管の流出口からケース体の下部開口を経て下流側伏越室内へ排出される土砂等の堆積物が、誘導手段によりガイドダクトの取込口へ誘導して集められるので、下流側伏越室内の堆積物の大部分を、ガイドダクトを通して上方へ移送して排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る下水道の伏越部構造の一実施形態を示す全体断面図である。図2は、図1の下流側伏越室を拡大して示す断面図である。
【0021】
ここで対象とする下水道は、汚水と雨水を同一の管渠で排出する合流式下水道であり、図1に示すように、河川等の障害物100を挟んで上流側と下流側に上流側下水路1と下流側下水路2が設けられており、障害物100を回避して両下水路1、2をつなぐために伏越部10が設けられている。この伏越部10を構成する手段として、まず、各下水路1、2に連通させて障害物100の両側に垂直な立坑4、5が設けられる。
【0022】
各立坑4、5の下部はそれぞれ上流側伏越室11と下流側伏越室12になっており、両伏越室11、12の下端間が、障害物100の下側に通した伏越管13で連結される。これら上流側伏越室11、下流側伏越室12及び伏越管13によって伏越部10が構成される。
【0023】
この伏越部10は、更に空気導入手段としてのコンプレッサ14と、空気溜り形成手段としての上流側ゲート15、ケース体16及び下流側ゲート17と、揚砂管として機能するガイドダクト18とを有する。
【0024】
上記コンプレッサ14は、伏越管13内に空気または不活性ガス等(以下単に空気と称する)を導入する。また、上記上流側ゲート15は、伏越管13の流入口19側に昇降可能に設置されて、この流入口19の上部を閉塞し、流入口19の開度を決定する。この上流側ゲート15は、図示しないガイドレールなどに沿って昇降し、同じく図示しない駆動機構により昇降駆動される。
【0025】
上記ケース体16は、図2〜図4に示すように、伏越部13の流出口20側に固定して設置されて、この流出口20を覆う例えば箱体であり、下方に下部開口21を備える。ケース体16が下流側伏越室12内に配設されることから、上記下部開口はこの下流側伏越室12内に連通する。また、ケース体16には、側方に側部開口22が形成され、この側部開口22の開口面積を前記下流側ゲート17が調整する。この下流側ゲート17は、ケース体16に設けられたガイドレール24(図3)に沿って昇降可能にケース体16に設置され、図示しない駆動機構により昇降駆動されて、側部開口22の上部を閉塞し、側部開口22の開度を決定する。上記側部開口22は、下部開口21と連続して形成される。
【0026】
上流側ゲート15が伏越管13の流入口19の上部を閉塞し、下流側ゲート17がケース体16の側部開口22の上部を閉塞した状態で、コンプレッサ14により伏越管13内へ空気を導入すると、この伏越管13の上部及びケース体16の上部に空気溜りPが、伏越管13の長手方向に沿って形成される。これにより、伏越管13及びケース体16において、下水Wが流れる流路断面積が減少し、下水Wの流速が上昇して、伏越管13内に堆積した土砂等の堆積物Tが押し流される。この伏越管13内の下水Wは、流出口20を経てケース体16内に至り、このケース体16の下部開口21及び開放された側部開口22から下流側伏越室12内へ、流れの抵抗なくスムーズに流出する。
【0027】
ここで、伏越管13内の空気溜りPの容積は、伏越管13内を流れる下水Wの流路断面積が、この伏越管13に堆積した堆積物Tを押し流すに必要な流速を確保できるように設定する。この伏越管13内の空気溜りPの容積の設定、つまり空気溜りPの保持高さMの設定は、上流側ゲート15及び下流側ゲート17の昇降位置によって決定される。
【0028】
前記ガイドダクト18は、図2に示すように、下流側伏越室12の内部に、周囲に下水Wの貯溜空間を確保した状態で立設され、上端に排出口25、下端に取込口26をそれぞれ備える。尚、このガイドダクト18は、下流側伏越室12の外部において、当該下流側伏越室12に沿って設けられてもよい。
【0029】
ガイドダクト18の上記取込口26は、ケース体16の下部開口21近傍に設けられると共に、ケース体16の側部開口22に連通して設けられる。伏越管13内へはコンプレッサ14から空気が継続的に導入されてこの伏越管13内に空気溜りPが形成されるが、この伏越管13内へ導入された空気は気泡Kとなって、ケース体16の下部開口21及び開放された側部開口22を通りガイドダクト18内へ至り、このガイドダクト18内を上昇して大気中へ放出される。空気は、気泡Kとなってガイドダクト18内を上昇することによりエアリフトポンプとして機能し、ケース体16の下部開口21等から下流側伏越室12内に流出された土砂を含む下水Wをガイドダクト18内に導き、このガイドダクト18内で上方へ移送させる。
【0030】
また、ガイドダクト18の上端の排出口25と下流側伏越室12の下水Wの自由水面との間には、この自由水面をガイドダクト18の排出口25よりも高める堰27が設けられている。この堰27により堰止められた下流側伏越室12内の下水Wの自由水面とガイドダクト18の排出口25との水位差Hによって、ガイドダクト18内に下水Wの上昇流が発生し、この上昇流によっても、下水W中に含まれる土砂等の堆積物Tがガイドダクト18内の上方へ引き上げられて移送される。ここで、上記堰27の高さは、ガイドダクト18の流路損失を考慮して、上記水位差Hによりガイドダクト18内に下水Wの上昇流を生じさせるレベルに設定される。
【0031】
更に、下流側伏越室12内には、その底部に誘導手段としての誘導斜面28が形成される。この誘導斜面28は、ケース体16の下部開口21及び開放された側部開口22を経て、下水Wと共に下流側伏越室12内に排出される伏越管13内の土砂等の堆積物Tを、ガイドダクト18の取込口26下方付近に誘導して集める。これにより、下流側伏越室12内に排出された堆積物Tの大部分が、ガイドダクト18の取込口26から取り込まれて、ガイドダクト18の上方へ移送される。
【0032】
次に、作用説明する。
下水道を運転する場合、通常時には、上流側ゲート15により伏越管13の流入口19を全開し、下流側ゲート17によりケース体16の側部開口22を全開して、伏越管13の流路断面積を大きく設定し下水Wを流す。流路断面積を大きく設定すると、伏越管13内で下水Wは遅い流れとなるので、この伏越管13内に土砂等の堆積物Tが徐々に堆積する恐れがある。そこで、適当なタイミングで堆積物除去運転、つまり清掃運転を実施する。
【0033】
この清掃運転時には、上流側ゲート15により伏越管13の流入口19を、下流側ゲート17によりケース体16の側部開口22をそれぞれ適当な開度まで閉じる。この状態で、コンプレッサ14を駆動して伏越管13内へ空気を圧送し、この伏越管13の上部及びケース体16の上部に空気溜りPを形成する。この状態を保持することにより、伏越管13内を流れる下水Wの流路断面積が小さくなり、この伏越管13内を流れる下水Wの流速が上昇して、伏越管13内の堆積物Tを押し流す。このとき、伏越管13内の下水Wは、堆積物Tと共に、伏越管13の流出口20を経てケース体16内へ至り、このケース体16の下部開口21及び開放状態の側部開口22から下流側伏越室12内へ抵抗なくスムーズに流出する。
【0034】
また、伏越管13内の空気溜りPにおける空気は、下水W中で気泡Kとなってケース体16内に至り、このケース体16の下部開口21及び開放状態の側部開口22(主に開放状態の側部開口22)を経てガイドダクト18内に至り上昇して、エアリフトポンプとして作用する。また、このガイドダクト18内には、堰27により設定される下流側伏越室12の下水Wの自由水面とガイド28の排出口25との水位差Hによって、下水Wの上昇流が発生する。これらのエアリフトポンプ及び水位差Hによる下水Wの上昇流の作用で、下流側伏越室12内に流出した下水W及び堆積物Tは、ガイドダクト18の取込口26からこのガイドダクト18内に取り込まれ、当該ガイドダクト18内を上方へ移送される。
【0035】
このような清掃運転終了後に、上流側ゲート15により伏越管13の流入口19を全開させ、下流側ゲート17によりケース体16の側部開口22を全開させて、通常時の状態に復帰させる。このケース体16の側部開口22が全開されたことで、清掃運転時に伏越管13及びケース体16内の下水W中に存在した浮遊物は、ケース体16内に留まることなく、ガイドダクト18内または下流側伏越室12内へ排出される。尚、清掃運転時にガイドダクト18の上方へ移送された堆積物Tは、適切な搬送手段を用いて搬送されて廃棄される。
【0036】
上述のような通常時と清掃時の運転の切替とは別に、下水量に差がある晴天時と雨天時とで運転の切替を実行してもよい。つまり、伏越管13は、雨天時の下水Wの流量を想定して流路断面積が設定されているので、下水Wの流量が少ない晴天時には、伏越管13内を流れる下水Wの流速が遅くなりすぎて、この伏越管13内に土砂等が堆積する恐れがある。そこで、晴天時に、伏越管13内を流れる下水Wの流速を速くするように切り替えるのである。
【0037】
具体的には、下水量が少ない晴天時に、伏越管13の流入口19を上流側ゲート15により、ケース体16の側部開口22を下流側ゲート17によりそれぞれ適当な開度になるように設定し、コンプレッサ14により伏越管13内へ空気を導入して、この伏越管13及びケース体16の内部上方に空気溜りPを形成する。これにより、伏越管13内を流れる下水Wの流路断面積を減少して、この下水Wの流速を速くする。こうすることで、伏越管13内に土砂等の堆積物Tが堆積しにくくなる。また、雨天時に下水量が増大したときには、上流側ゲート15により伏越管13の流入口19を、下流側ゲート17によりケース体16の側部開口22をそれぞれ全開させ、伏越管13内の空気溜りPを解消して、伏越管13内に下水Wが大量に流動できるようにしておく。
【0038】
以上のように構成されたことから、上記実施の形態によれば、次の効果(1)〜(5)を奏する。
(1)コンプレッサ14より伏越管13内に導入された空気は、上流側ゲート15及びケース体16によって、伏越管13の内部上方及びケース体16の内部上方に、この伏越管13の長手方向に沿う空気溜りPを形成する。このため、伏越管13内の全長に亘り下水Wの流れる流路断面積を減少させて、下水Wの流速を上昇させることができる。また、伏越管13内の下水Wは、流出口20を経てケース体16の下部開口21及び開放された側部開口22から抵抗なくスムーズに下流側伏越室12内へ流出する。これらのことから、伏越管13の下流域においても、伏越管13内を流れる下水Wの流速が適切に保持されるので、伏越管13内に堆積した土砂等の堆積物Tを良好に排出することができる。
【0039】
(2)ケース体16の側部開口22の開口面積を下流側ゲート17により調整することによって、伏越管13及びケース体16の内部上方に形成される空気溜りPの高さを調整することができる。また、上記下流側ゲート17によりケース体16の側部開口22を全開操作することによって、または下流側ゲート17をケース体16内の下水Wの水面位置まで上昇させることによって、清掃運転時に伏越管13内を流れる下水W中に存在した浮遊物を、ケース体16内に留まらせることなく下流側伏越室12内へ排出することができる。下流側ゲート17をケース体16内の下水Wの水面位置まで上昇させる場合には、伏越管13及びケース体16の内部上方に空気溜りPを維持し確保できるので好適である。
【0040】
(3)下流側伏越室12の内部に設置されたガイドダクト18の取込口26が、ケース体16の下部開口21近傍に位置付けられ、且つケース体16の側部開口22に連通して設けられて、このガイドダクト18内に伏越管13内の空気が導入される。このガイドダクト18内に導入されて上昇する空気(気泡K)がエアリフトポンプとして機能して、伏越管13からケース体16を経て下流側伏越室12内へ流出した下水W及び堆積物Tをガイドダクト18内へ導き、このガイドダクト18の上方へ移送することができる。
【0041】
(4)ガイドダクト18の上端の排出口25と下流側伏越室12内の下水Wの自由水面との間に、この自由水面をガイドダクト18の排出口25よりも高める堰27が設けられたことから、下流側伏越室12内の下水Wの自由水面とガイドダクト18の排出口25との水位差Hによって、このガイドパイプ18内に下水Wの上昇流が発生する。このガイドパイプ18内の下水Wの上昇流によっても、下流側伏越室12内へ流出した下水W及び堆積物Tを、ガイドダクト18を通して上方へ移送することができる。
【0042】
(5)伏越管13の流出口20から、ケース体16の下部開口21及び開放された側部開口22を経て下流側伏越室12内へ排出される土砂等の堆積物Tが、誘導斜面28によりガイドダクト18の取込口26付近に誘導して集められるので、下流側伏越室12内の堆積物Tの大部分を、ガイドダクト18を通して上方へ移送して排出することができる。
【0043】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態では、伏越管13の流出口20を箱体としてのケース体16が覆うものを述べたが、下方に開口するエルボ管を伏越管13の流出口20に差し込んで、このエルボ管を、下部開口を備えたケース体としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る下水道の伏越部構造の一実施形態を示す全体断面図である。
【図2】図1の下流側伏越室を拡大して示す断面図である。
【図3】図2のIII‐III線に沿う断面図である。
【図4】図2のケース体、下流側ゲート及びガイドダクトなどを示す分解斜視図である。
【図5】従来のエアクッション・サイフォンシステムを組み込んだ伏越部であり、(A)が通常時、(B)が清掃時をそれぞれ示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 上流側下水路
2 下流側下水路
10 伏越部
11 上流側伏越室
12 下流側伏越室
13 伏越管
14 コンプレッサ(空気導入手段)
15 上流側ゲート(空気溜り形成手段)
16 ケース体(空気溜り形成手段)
17 下流側ゲート(空気溜り形成手段)
18 ガイドダクト
19 伏越管の流入口
20 伏越管の流出口
21 ケース体の下部開口
22 ケース体の側部開口
25 ガイドダクトの排出口
26 ガイドダクトの取込口
27 堰
28 誘導斜面(誘導手段)
100 障害物
H 水位差
K 気泡
P 空気溜り
M 空気溜りの保持高さ
T 堆積物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物を挟んで配設された上流側下水路、下流側下水路にそれぞれ連結され、上記障害物の両側に配設される上流側伏越室、下流側伏越室と、上記障害物の下方で上流側伏越室及び下流側伏越室を連結する伏越管と、を有する下水道の伏越部構造において、
上記伏越管内へ空気を導入する空気導入手段と、
上記伏越管の流入口及び流出口側に配置されて、上記空気導入手段により導入された空気により上記伏越管の内部上方に空気溜りを形成する空気溜り形成手段とを有し、
この空気溜り形成手段は、上記伏越管の上記流入口の上部を閉塞する上流側ゲートと、上記伏越管の上記流出口を覆い、下方に下部開口を備えたケース体と、を有して構成されたことを特徴とする下水道の伏越部構造。
【請求項2】
上記ケース体の側方に側部開口が形成され、この側部開口の開口面積を調整する下流側ゲートが上記ケース体に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の下水道の伏越部構造。
【請求項3】
上記ケース体の下部開口近傍に取込口を位置付けて、下流側伏越室の内部または当該下流側伏越室に沿ってガイドダクトが設置され、このガイドダクト内に伏越管内の空気が導入されることを特徴とする請求項1または2に記載の下水道の伏越部構造。
【請求項4】
上記ガイドダクトの上端の排出口と下流側伏越室内の下水の自由水面との間に、この自由水面を上記ガイドダクトの排出口よりも高める堰が設けられたことを特徴とする請求項3に記載の下水道の伏越部構造。
【請求項5】
上記下流側伏越室内には、この下流側伏越室内へ排出される土砂等の堆積物をガイドダクトの取込口へ誘導する誘導手段が設置されたことを特徴とする請求項3または4に記載の下水道の伏越部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−46421(P2007−46421A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235015(P2005−235015)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【Fターム(参考)】