説明

下駄

【課題】台部の下面に板状の弾性部材を接着して路面からの衝撃を吸収できる構造であって、使用者の歩く動作で踵部材がすぐに磨り減ってしまわずに長持ちする下駄を提供する。
【解決手段】台部11の下面において、中央を削り取られて前方の踏み付け部11aと後方の踵部11bとが分かれて突出し、前記踏み付け部11aの下面に板状の弾性部材からなる底板部材14が接着されるとともに、前記踵部11bの下面に板状の弾性部材からなる踵部材15が接着されてなり、前記踵部材15は、前端から前方近傍までの範囲に前記底板部材14が路面に当接した状態において下面が路面に当接する平坦部分15aと、前方近傍から後端にかけての範囲に前記底板部14が路面に当接した状態において前方近傍から後端にかけて上方に傾斜し下面が路面に非接触となる上方傾斜部分15bとからなるように下駄10を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製の台部の接地面(下面)に弾性部材を貼着した下駄、特に台部の下面中央を削り取られて、台部の下面が前方の踏み付け部と後方の踵部とに分かれて突出している下駄に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下駄を履いて硬い路面を歩くと、路面からの衝撃がそのまま足に伝わり、鼻緒の前緒に差し入れている足の指を痛めることがある。そこで、路面からの衝撃を吸収し緩和するために、台部の接地面(下面)にゴムまたはプラスチックシート等の板状の弾性部材を接着した下駄が知られている。
【0003】
この種の下駄の例を図4図に示す。図4図において、下駄20は、木製の台部21の上面に鼻緒22が取り付けられている。この鼻緒22は、前緒23により折り返し部分を台部21に固定されている。また、台部21は、下面中央を削り取られて、台部の下部が前方の踏み付け部21aと後方の踵部21bとに分かれて突出している。そして、踏み付け部21aと踵部21bの下面には、板状の弾性部材からなる底板部材24、踵部材25が接着されている。図示のように、下駄20は、踏み付け部21a下面の底板部材24が路面に当接した状態において、踵部21bの下面の踵部材25は、下面が平坦で略全面が路面Gに当接する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記下駄は、路面からの衝撃を吸収し緩和するために、台部の下面にゴムまたはプラスチックシート等の板状の弾性部材からなる底板部材、踵部材を接着しているが、弾性部材は耐摩耗性が小さいので磨り減り易い。また、使用中は踵部に負荷がかかる上、使用者の歩く動作で踵部の後端が路面に擦られると、踵部材が早期に磨り減って肉薄となり、使用できなくなってしまうため改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、台部の下面に板状の弾性部材を接着して路面からの衝撃を吸収できる構造であって、使用者の歩く動作で踵部材がすぐに磨り減ってしまわずに長持ちする下駄を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために請求項1記載の発明は、台部の下面において、中央を削り取られて前方の踏み付け部と後方の踵部とが分かれて突出し、前記踏み付け部の下面に板状の弾性部材からなる底板部材が接着されるとともに、前記踵部の下面に板状の弾性部材からなる踵部材が接着されてなり、前記踵部材は、前端から前方近傍までの範囲に前記底板部材が路面に当接した状態において下面が路面に当接する平坦部分と、前方近傍から後端にかけての範囲に前記底板部材が路面に当接した状態において前方近傍から後端にかけて上方に傾斜し下面が路面に非接触となる上方傾斜部分と、からなることを特徴とする下駄である。
【0007】
また、請求項2記載の発明において、前記踵部は、下面が前方近傍から後端にかけて上方に傾斜させて形成され、踵部材は、前記踵部に接着されることにより下面が前方近傍から後端にかけて上方に傾斜している請求項1に記載の下駄である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、路面からの衝撃は吸収できるし、使用者の歩く動作で踵部の後端が路面に擦られにくいので、踵部下面に接着されている弾性部材は、早期に磨り減ってしまうことがなく長持ちする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、この発明の実施例1である下駄の斜視図、図2は、図1に示した下駄の一部欠截した側面図、図3は、図1に示した下駄の底面図である。
【0011】
図1〜図3において、下駄10は、木製の台部11、台部11に取り付けられて使用者の足の装着位置を設定する鼻緒12、鼻緒12の折り返し部分を台部11に固定する前緒13、台部11の下面前方に貼着され板状の弾性部材からなる底板部材14、及び台部11の下面後方に貼着され板状の弾性部材からなる踵部材15とから構成されている。
【0012】
台部11は、下面において、中央を削り取られて前方の踏み付け部11aと、後方の踵部11bとが分かれて突出し、中央に凹部16が形成されている。踏み付け部11aは、下面が後端から前端にかけて上方に僅かに傾斜して形成され、踵部11bは下面が前方近傍から後端にかけて上方に急な角度で傾斜して形成されている。そして、踏み付け部11aと踵部11bの下面には、底板部材14、踵部材15が接着されている。この状態において、底板部材14は、下面の傾斜が緩やかで略平坦であるが、踵部材15は、下面が前方近傍から後端にかけて上方に急な角度で傾斜している。
【0013】
そのため、踏み付け部11a下面の底板部材14が路面に当接した状態において、踵部11bの下面の踵部材15は、前端から前方近傍までの平坦部分15aが路面Gに当接し、前方近傍から後端にかけての上方傾斜部分15bは路面Gに接触しない。
【0014】
また、台部11は、前方において、上面から踏み付け部14の下面に貫通して前孔17が設けられ、後方において、上面から凹部16の下面に貫通して一対の後孔18,18が左右に離間して設けられている。
【0015】
台部11は、左右の後孔18,18に上方より鼻緒12の左右の各後緒12a,12aが挿入されて、各後緒12a,12aから延長された左右の芯縄19a、19aを台部11下面の凹部16の位置に貫通されている。そして、鼻緒12の両芯縄19a、19aは、台部11の下面において、相互に結び止められて結び部19bに形成されている。鼻緒12の折り返し部分は、二つ折りされた前緒13に挟着される。前緒13は、両端を合致されて前孔17に貫通され、台部11の下面において、両端の各芯縄を金具27に係止される。
【0016】
底板部材14には、前孔17と合致する位置に舌片14aを有する切り欠き窓部14bが設けられている。切り欠き窓部14bは、前緒13の両端を金具27に係止する作業を行うときは開放されているが、前緒13の両端が金具27に係止されると、舌片14aを切り欠き窓部14bに嵌め合わせて係止具14cにより舌片14aを係止して閉じられる。
【0017】
次に、使用者が、下駄10を履いた状態における作用について説明する。使用者が、下駄10を履くと、下駄10は、踏み付け部11a下面の底板部材14が路面に当接した状態において、踵部11bの下面の踵部材15は、前端から前方近傍までの平坦部分15aが路面に当接し、前方近傍から後端にかけての上方傾斜部分15bは路面に接触しない。したがって、下駄10は、使用者の歩く動作で踵部11b下面に接着されている踵部材15の前方近傍から後端までの上方傾斜部分15bが路面に擦られにくいので早期に磨り減ってしまうことがなく、踵部材15を長持ちさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施例1である下駄の斜視図である。
【図2】図1に示した下駄の一部欠截した側面図である。
【図3】図1に示した下駄の底面図である。
【図4】従来の下駄の側面図である。
【符号の説明】
【0019】
10,20 下駄
11,21 台部
11a,21a 踏み付け部
11b,21b 踵部
12,22 鼻緒
12a 後緒
13,23 前緒
14,24 底板部材
14a 舌片
14b 切り欠き窓部
14c 係止具
15,25 踵部材
15a 踵部材の平坦部分
15b 踵部材の上方傾斜部分
16 凹部
17 前孔
18 後孔
19a 芯縄
19b 結び部
27 金具
G 路面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台部の下面において、中央を削り取られて前方の踏み付け部と後方の踵部とが分かれて突出し、前記踏み付け部の下面に板状の弾性部材からなる底板部材が接着されるとともに、前記踵部の下面に板状の弾性部材からなる踵部材が接着されてなり、
前記踵部材は、前端から前方近傍までの範囲に前記底板部材が路面に当接した状態において下面が路面に当接する平坦部分と、前方近傍から後端にかけての範囲に前記底板部材が路面に当接した状態において前方近傍から後端にかけて上方に傾斜し下面が路面に非接触となる上方傾斜部分と、からなることを特徴とする下駄。
【請求項2】
前記踵部は、下面が前方近傍から後端にかけて上方に傾斜させて形成され、踵部材は、前記踵部に接着されることにより下面が前方近傍から後端にかけて上方に傾斜している請求項1に記載の下駄。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−136369(P2009−136369A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313185(P2007−313185)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(504160356)アンドウ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】