中空で湾曲した超弾力的医療用針
【課題】穿刺針の侵入方向に対して横方向で物質の注入あるいは吸収を行う。
【解決手段】ニチノールなどの超弾力性素材でできた針カニューレ13を含む穿刺針で構成された針アセンブリ10。患者の体内に導入するために同軸外側カニューレの通路内で真っ直ぐにすることができる予め形成した湾曲16をつくりだすために冷間加工又は熱アニール処理される。外側カニューレから展開されると、この針カニューレは予め形成された形状に戻って、その針アセンブリの侵入経路に対して横方向のエリアに物質を導入したり、そのエリアから物質を抽出することができる。この針カニューレは望ましい注入パターンを達成するために配置や形状を変えられる複数の針カニューレで構成することができる。
【解決手段】ニチノールなどの超弾力性素材でできた針カニューレ13を含む穿刺針で構成された針アセンブリ10。患者の体内に導入するために同軸外側カニューレの通路内で真っ直ぐにすることができる予め形成した湾曲16をつくりだすために冷間加工又は熱アニール処理される。外側カニューレから展開されると、この針カニューレは予め形成された形状に戻って、その針アセンブリの侵入経路に対して横方向のエリアに物質を導入したり、そのエリアから物質を抽出することができる。この針カニューレは望ましい注入パターンを達成するために配置や形状を変えられる複数の針カニューレで構成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基本的には医療装置に関するものであり、より具体的には体内での間接的アクセスを可能にするように湾曲された針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脊椎に関連する医療手順は神経破損及び大血管損傷の両方を避けるために必要とされる正確さと、通常処置箇所にアクセスするために必要となる間接経路との故に通常は複雑なものとなる。椎骨転移及び椎骨腫、苦痛を伴う又は進行性血管腫(背骨の良性損傷)、あるいは苦痛を伴う骨粗性脊髄崩壊などの脊柱状態を有する特定の患者における病状安定化及び/又は苦痛からの解放をもたらすために骨固化剤、最も普通にはメチル・メタクリレートを脊椎に注入する手順である脊椎形成を行う場合に特にそうである。標準的な処置規範は処置される脊柱の領域に依存する。頚椎の場合、15ゲージ針で前面横方向アクセスが用いられる。頚椎に近位した大型の容器は、容器と咽頭との間にアクセス箇所を設けるために放射線医師によって横方向に操作される。針を下あごの下側に導入しなければならないので、上向きアクセス・ルートが必要になる。胸部及び腰部椎骨にアクセスする場合は、一般的には、肉茎横断あるいは後部横方向アプローチに続いて大型10ゲージ針が用いられる。脊椎神経損傷を避けるため、そして椎骨体近くの組織に固化材が流出する可能性を低めるために肉茎ルートが好ましい。損傷した椎骨体に完全な充填を行うためには、反対側から二回目の肉茎横断アクセスが必要になる場合が多い。一回の注射だけでは、最初の進入平面から方向を向けなおすことができないので、標的エリア全体を充填することができない。最初のアクセス箇所から固化材を継続的に注入してもそれが対象エリア全体を充填する前に固化して、それ自体に対するバリアになってしまう傾向の故に十分な注入をもたらさない。さらに、椎骨や血管などの構造の密度の高さが通常は椎骨体内部での固化材の自由な流れを阻害してしまう。こうした手順におけるもうひとつの懸念はこれらの血管に偶発的に穴があいてしまうことである。脊椎の血管は肺に直接つながっているので、固化材が偶発的にその中に導入されてしまうと、肺塞栓症を起こしてしまう危険性が高い。
【0003】
体内、あるいは組織周辺で針カニューレの先端を十分に操作できないという点は直線型針の大きな制約となっている。医療手順を完結させるために何度も針を突き刺すのは患者に不快感を与えると同時に、漏出やその他の厄介な問題を引き起こす可能性がある。固化材を完全に注入するために十分に椎骨体にアクセスするためには、その先端を最初の角度からかなり大きな角度でたわめることができなければならない。このためにはその針がその材料を選んだ方向に向かわせるために回転できるように遠位部分で湾曲していることが必要になるであろう。縫合目的のための硬い湾曲した針は良く知られているが、穿刺針に軽い湾曲以外の工夫を加えると、そのアクセス経路及び組織、特に骨に深く進入する能力が制限されてしまう。例えば、硬い湾曲した針は、比較的真っ直ぐなアプローチで針カニューレを骨を通じて椎骨体に深く刺し込み、進入箇所に追加的な損傷を加えずにその場所に保持されるような医療手順での使用には適さないであろう。最初のアクセスは骨に突き刺すために十分な強度の真っ直ぐな針で行わなければならないが、理想的なアプローチは突き刺してから固化材を横方向に向け、その後、針を最初の経路に沿って引き抜くことであろう。処置箇所での組織の密度と抵抗とが内部注入部材が外側の貫通カニューレと同じぐらいの硬さを持っていなければならないことから、これを達成するのはやっかいである。内部部材を操作して、物質の流れを正確に制御することができるようにするためには一定程度の硬さが必要である。遠位部分が軽く曲がったステンレス・スチール穿刺針が知られているが、その針が一度外側保持カニューレの内部に入ってしまうと可塑的に変形され、最初に形成された形状に戻ることが不可能なので、横方向に注入を十分に可能にするのに必要な程度の湾曲は不可能であろう。従って、十分な充填を行うために二度目の針アクセスが必要になるであろう。
【特許文献1】米国特許No.5,597,378
【特許文献2】米国特許No.5,354,623
【非特許文献1】Engineering Aspects of Shape Memory Alloys,Butterworth−Heinerman,Boston,MAの“Linear Superelasticity in Cold−Worked Ni−Ti”,(ZadnoAND Duering) pp.414−419
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ひとつの真っ直ぐな針を用いる場合、他の医療手順で同様の問題が起きる。その一例は肝臓及び腎臓の悪性腫瘍を処置するために経皮エタノール注射が行われる腫瘍切除である。肝臓の手術不能な造血細胞悪性腫瘍の緩和処置として当初導入されたエタノール注射は特に小さな腫瘍を有する多くの患者で切除と比較して治療効果が高いことが示されている。現在の処置では、真っ直ぐな針を用いて腫瘍物質内に直接エタノールを注入し、エタノールが1つまたは複数の側穴から組織内に浸出できるようにされる。問題は、浸出物が針の経路以上に深い場所には浸透せず、従って、腫瘍のいくつかの部分が効果的に処置されないことである。腫瘍物質中により効果的にエタノールを浸透させるための装置を提供するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
頑丈な超弾力性物質でつくられ、その長さ方向の遠位部分に沿って少なくともひとつの予め形成した湾曲を有する穿刺針を用いれば、上記の問題が解決され、技術的進歩がもたらされる。この針は標的箇所への経皮導入中にほぼ真っ直ぐな方向で内側の針カニューレを保持するための二番目の中空カニューレと同軸で用いられ、それによって内側のカニューレが展開されてその予め形成された状態に弾力的に戻るようにする。外側カニューレを出たとたんに予め一定の形状を与えられたカニューレを横方向にたわめることができるので、内側穿刺針をその長さ方向の軸を中心に回転させることで、体内の異なった平面内の複数の箇所で物質を浸出、吸引することができる。これは、外側のカニューレで何回も突き刺す必要性を減らし、あるいはまったくなくしてくれる上で重要である。また、オペレータがひとつの方向から侵入を行い、その後、湾曲した内側カニューレを展開してアクセス経路に沿って別の構造があるなどの理由で直接にはアクセスできない箇所に到達することが可能になる。
【0006】
内側カニューレのための好ましい素材はニチノール(Ni−Ti)などの超弾力性形状記憶合金であるが、しかしながら他の非Ni−Ti合金も用いることができる。多孔性でマルテンサイト系からオーステナイト系に位相変化が起きる温度が装置の作動温度(例えば室温)より低いニチノール合金が選択されている。Jervisが1992年10月2日に申請し、参照によって本明細書に組み入れられる米国特許No.5,597,378で述べているように、所定の期間所定の高温に曝しつつカニューレを望ましい最終形状に保持することで超弾力性ニチノール・カニューレに永続的な湾曲を発生させることができる。このカニューレはステンレス鋼や他の金属が経験する弾性変形よりはるかに弾力的に操作することができる。ニチノール及びその他の超弾力性素材は、十分に変形されると、応力点での局所位相変化がいわゆる『応力誘発マルテンサイト』(SIM)まで変化する。そして応力が外れると、その物質は弾力的にオーステナイト状態に戻る。
【0007】
その素材に恒久的な湾曲をもたせる第二の方法は一般的にコールド・ワーキングと呼ばれるプロセスによるものである。コールド・ワーキングは超弾性カニューレに過度に応力を加えたり、過度に湾曲させる作業を伴う。湾曲領域内の素材はオーステナイトからマルテンサイトに局所的位相遷移を受け、最初の形状には戻らない。コールド・ワーキング加工されたカニューレの場合、その結果少なくとも部分的にマルテンサイト性結晶状態に固定された湾曲ゾーンの周辺に恒久的な湾曲がもたらされる。対照的に、全体的に熱アニールされたカニューレは湾曲状態もオーステナイト状態にあり、十分な曲げ応力がかかると一時的にマルテンサイト状態に移るだけである。従って、アニールされたカニューレの屈曲性はその長さ方向でほとんど変わらない。逆に、マルテンサイトを含んでいるコールド・ワーキングされたカニューレの湾曲は変形に対する抵抗性を増大させ、従って、純粋なオーステナイト・カニューレのより弾力的な湾曲よりその形状をより良く保持する。この増大した剛性は一定の臨床用装置のためには有利である。
【0008】
多くの臨床用装置に適した第一の実施の形態で、導入用套管針あるいはスタイレットは、組織へのアクセスをし易くさせ、組織が装置の遠位先端内に入り込んでしまうのを防ぐために、針の管腔サイズに応じて外側あるいは内側いずれかの針カニューレと共に用いられる。穿刺針はアクセスが達成され、套管針あるいはスタイレットが取り除かれた後、外側カニューレを通じて行われる。カニューレのサイズ、予め形成された湾曲の程度、あるいはその湾曲を形成するために用いられる方法に応じて、内側カニューレはその予め形成された湾曲が外側カニューレ内で拘束されると、外側カニューレを多少変形させる場合がある。その結果、外側カニューレは内側カニューレの湾曲に対応した箇所でその縦方向の通常の軸から多少変形される。内側カニューレが外側カニューレから広がると、それはその湾曲領域全体が内部から出てしまうまで横方向に変形する。好ましい実施の形態では、内側カニューレの遠位開口部は、内側カニューレが十分に広げられた時にその最初の長さ方向の軸から大きな角度で(好ましくは60−90度の範囲)内に向けられる。
【0009】
内側カニューレがその最初の縦方向軸からかなりの角度でたわむことが出来ることは、直線的なアクセスを行い、その後で遠位開口部の向きを調節することが必要な多数の装置で大きな利用性をもっている。これにより、針を引き出して再度刺し込む必要なしに、異なった箇所へのアクセスを可能にしてくれる。そうした手順の代表的な例は真っ直ぐな針で安定化用固化材を注入するために、血管などの壊れやすい組織に対する損傷を避けつつ椎骨体を安定化させるための完全な充填を行うために二度目の突き刺しが必要になることが多い椎骨形成である。背骨の胸部又は腰部部分に関連した標準的な単一針手順の場合、通常肉茎横断方式が用いられ、その場合、同軸ジャムシディータイプ針などのより大型の外側針カニューレが損傷した、あるいは罹病した椎骨体に導入される。外側の針は内側導入用套管針が用いられ、それがその後固化材の注入のために内側の湾曲した針と交換される。湾曲した針が横方向にたわんで回転し、複数の平面に到達できることで、注入範囲が限られている直線の針よりかなり有利になる。動作範囲が上に述べたように広がるので、本発明による湾曲した針は通常椎骨体に一度アクセスするだけで、椎骨形成を完了させることができる。このことは固化材の漏出や非標的エリアへの望ましくない注入などの患者に対する不快感とリスクを回避させてくれる。
【0010】
上の実施の形態での固化材の注入のために同軸針を使用するのに加えて、この装置は物質を吸引したり、他の装置を導入するための導管として機能するのにも適合させることができる。本発明を最初に損傷した椎骨体から組織を吸引して、その後影響を受けた椎骨のための足場として役立てるために骨移植片で包まれた炭素繊維複合ケージを導入する経皮椎骨補強術のために用いることが考えられる。
ケージが適切に配置されたら、メチル・メタクリレートあるいはその他の適切な物質を椎骨体に注入して補綴物を固定する。経皮椎骨補強術は外傷を伴うことが少なく、そして補強ケージを用いるので、骨移植片だけを用いる従来の椎骨補強術より優れた頑丈さを提供してくれる。
【0011】
本発明の別の側面で、痛みの制御及び/又は診断の一部として、同軸針を神経経路内や硬膜外スペースなどに医薬品を注入するために背骨に平行して使用するように適合化させることができる。好ましくは21ゲージ程度のこの外側針カニューレは遠位開口部内に組織が食い込むのを防ぐように傾斜をつけた内部スタイレットと共に経皮的に背骨と平行に導入することができる。このスタイレットを取出して、25ゲージ程度の湾曲した針を外側カニューレ内に挿入する。この針アセンブリを操作して患者の痛み症状の再生に役立てるための診断手順中に神経ルートに接触させる。内部穿刺針は標的箇所に向けられる際に針の通路内部に配置されるスタイレットを含むこともできる。その後このスタイレットを穿刺針から取出して、通常はクレスチン(リドカインと共に注射される)、ケナログ、あるいはメチルプレドニゾンなどの医薬品が処置される箇所に導入される。その後内側の針を外側の外皮カニューレ内に引き込んで、両方とも患者から引き出す。
【0012】
背骨に平行に使うためのよりゲージの小さな針のもうひとつの使用法はディスコグラフィー手順である。ディスコグラフィーでは、対照薬(好ましくは非イオン性対照媒体)を円盤状組織体に直接注入して、椎骨体の奇形や損傷の程度を把握する。
【0013】
本発明の別の実施の形態は導入用カニューレ内部から腫瘍内に広がってそこで傘状に開くことができる複数の湾曲針を用いて腫瘍物質内にエタノールを注入するという課題を達成することができる。従って、腫瘍の複数の箇所で注入が行われ、エタノールをより広い範囲に送りこむことができる。この処置に続いて、針カニューレをカニューレ内に引き込んで、装置を患者から取り外す。
【0014】
関連する実施の形態で、ひとつ又は複数のカニューレを穿刺針の遠位部分近くに配置する。これら近位配置されたカニューレは装置の長さ方向に沿って異なった箇所で医薬品を注入できるようにする。複数の組の針を傘状の状態に配置することによって、処置される組織の体積を増大させる。この同軸外側カニューレは複数の側面開口部を有しており、穿刺針を体内の望ましい場所に配置して外側カニューレを取出した後、近位配置針カニューレが展開できるようにしている。この同軸外側カニューレの外側ケースは、それらが複数の列になった場合、針カニューレと上記開口部が適切な位置関係となるように、側面開口部を選択的に露出させる。
【0015】
本発明は直線的なアプローチが必要で、進入経路内での邪魔になる構造物(大型血管、腸ループなど)を回避したり、医薬品を注入したり、膿を排出したり吸い取ったりすることが必要なすべての臨床状況に適用することができる。注入及び吸収に加えて、本発明は高周波数切除カテーテルやワイアー・ガイドなどの他の医療装置を体内に導入したり、あるいは向きを変えたりするための導管として機能することができる。この発明は問題の箇所に直線的にアプローチした後、湾曲した穿刺針を展開して、特に内腔分岐点などの場所や、小孔へのアクセスが必要な状況などで、装置を望ましい処置箇所に正確に向けることができる。本発明の別の利用法は穿刺針を外側拘束装置として機能することができる気管支鏡や結腸鏡などの装置に穿刺針を配置することである。視覚化された状況で、内側針を生体組織検査やその他のタイプの手順を行うために制御することができる。本発明の実施の形態を添付図面を参照して例として示すために以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は医薬品やその他の物質を横方向に注入したり吸収するための、予め形成した湾曲16を有する穿刺針11で構成される針アセンブリの例示的な実施の形態を示す図である。ここで示されているように、針アセンブリ10は穿刺針11だけで構成することもできるし、あるいは穿刺針とこの開示の一部である他の構成部品との組み合わせで構成することもできる。ここで定義されている穿刺針11は、予め形成した湾曲16を有するひとつ又は複数の針カニューレで構成されている。図1の穿刺針11は、その開示も参照によって本明細書に組み込まれる米国特許No.5,354,623に述べられているHallのものも含めて、選択された公知の技術のいずれかを用いて公知の針カニューレ13に溶接あるいはその他の方法で固着される超弾力性合金針カニューレ13と、その形状が第二の、四角型端部42から容易に区別できる第一のテーパー加工された、あるいは尖らせた端部24を有するフランジ23で構成されている。上記第一の端部24は穿刺針11の針カニューレ13に予め形成された湾曲16の向きに対応している。この湾曲はカニューレをまったくオーステンナイト状態でつくりだすための、カニューレを所定の期間非常に高い温度で変形させる公知の技術か、カニューレを望ましい恒常的な量を超えてカニューレを変形させるために大きな機械的応力をかけるステップを含むカニューレのコールド・ワーキングのいずれかによってニチノール針カニューレ13内に形成される。コールド・ワーキングは湾曲ゾーンの結晶構造の一部を少なくとも部分的にマルテンサイト状態に固定し、同時にカニューレの応力がかかっていない部分がオーステナイト状態に留まる。コールド・ワーキングNi−Ti合金は、参照で本明細書に組み込まれるEngineering Aspects of Shape Memory Alloys,Butterworth−Heinerman,Boston,MAの“Linear Superelasticity in Cold−Worked Ni−Ti”,(Zadno
AND Duering) pp.414−419に傾倒されている。ニチノールに加えて、Cu−Al−Ni、Cu−A−Ni、及びCu−Ziなどの超弾力性あるいは偽弾力性銅合金も代替針カニューレ材料として用いることができる。展開と望ましい湾曲を持続するための形状記憶の両方のために十分な硬さを有する柔軟なポリマー性素材をそれ自体単独でも、あるいは金属ひもあるいは先端などの補強金属成分との組み合わせでも用いることができる。
【0017】
本発明の穿刺針11の予め形成された湾曲16は好ましくは図1の実施の形態で針カニューレ13の長さの約25%程度の近くに針カニューレ13の遠位部分を有している。穿刺針が好ましくは10−18ゲージと大きなサイズであるので、この具体的な実施の形態も椎骨体に貫通させて椎骨体形成経皮処置を行うのに適している。より好ましい範囲は12−17ゲージで、最も好ましいカニューレ・サイズは13−15ゲージである。椎骨形成及び椎骨補強手順に関連して、大型ゲージ・カニューレは密度の高い骨物質を貫通するための強度と、椎骨体から物質を吸い取ったり、あるいはメチル・メタクリレートなどの非常に粘性の高い骨固化材を注入したりするのに十分な内腔直径を有している。穿刺針11の好ましい予め形成された湾曲16は一定の半径を有している。図1の実施の形態の場合、遠位湾曲の好ましい半径は13ゲージ針の場合約3.0cmで、14ゲージ針の場合は約2.5cmである。この例として示す実施の形態は一定の直径を持った湾曲半径を有しているが、一定の臨床的装置のためには半径を増減することも可能であろう。さらに、特殊な針構成を必要とする装置のために超弾力性カニューレに複数の湾曲をもたらすことも可能である。
【0018】
ニチノール又はその他の超弾力性合金カニューレを使用する目的は、処置箇所への経路中ではひとつの形状に拘束されて、その後、可塑性変形を受けずに予め形成された形状に展開することができるようにすることである。図2は、処置箇所に導入される際に内側の穿刺針11をほぼ真っ直ぐな形状に保持するための図1の穿刺針11と図12の同軸外側カニューレ12を含む、上に述べたような方法で同軸的に用いられる1対の針を示している。図2に示されている実施の形態は二部分針アセンブリ43であるジャムシディ・タイプの針(Manan Inc.,Northbrook)であり、骨や繊維性物質など密度が高く硬い組織にアクセスするために最も一般的に用いられている。従って、椎骨体の壁面を貫通して、その中で注入物11が広がることができるようにするのに良く適合している。この特定の実施の形態の外側針アセンブリ43は内側注入針11を収容するのに十分な大きさの内側通路21を有するステンレス鋼カニューレ19を含む同軸の外側カニューレ12で構成されている。例えば、椎骨体をアクセスするのに適した標準的な11ゲージ・ジャムシディ針が13ゲージ内側湾曲針と共に用いられるであろう。ステンレス鋼カニューレ19はハンドル26及びコネクタ・ハブ31(図3に図示)に対して近位して取付けられる。コネクタ・ハブ31は上記二部品針アセンブリ43の第二の部品である、この場合では套管針25で構成された同軸外側カニューレ導入器52を受け入れる。套管針ハブ27は同軸外側カニューレ12のハンドル26と係合する。套管針25の傾斜をつけた先端30は同軸の外側カニューレ12の遠位先端より5mm程度延びており、貫通時に役立つ。套管針25は又同軸外側カニューレ12がアクセス時に骨又はその他の物質のサンプルを食い込んでしまうのを防止する役割を果たす。
【0019】
外側の針アセンブリ43が標的箇所に向けられた後、套管針25を同軸外側カニューレ12から取出して、穿刺針11を図3に示すように同軸外側カニューレ12の通路21に挿入する。穿刺針通路15の開通性を維持し、展開中の組織食い込みを防ぐために、内側針導入用スタイレット45を同軸的に穿刺針内に導入することができる。この例として示す実施の形態では、内側導入用スタイレット45はハンドル83とポリエーテルエーテルケトン(PEEK))などの柔軟性があり、高張力ポリマー性材料でできたシャフト46を含んでおり、スタイレット45が展開後予め形成された湾曲16の輪郭線に合った形状を取る。内側穿刺針11はそれが同軸内側カニューレ12に装填されると真っ直ぐになる。穿刺針11の予め形成された湾曲16を含む領域が図に示すように同軸外側カニューレ12の先端22から延びているので、それは針カニューレ13の超弾力性によってその予め形成された形状をとる。注射を行う場合、同軸外側カニューレ12の通路に組織が食い込んでしまうのを防いでくれる内側針導入用スタイレット52が取り外される。近位ハブ14のフランジ23のテーパー加工した、又は『矢印型』端部は穿刺針11のたわみ平面29と対応している。フランジ23を操作することで、内側の湾曲した針はどちらかの方向28に回転させてたわみ面の向きを変え、先端開口部17を処置されるエリアと共に複数の位置に配置することができる。例として示す上の実施の形態で、先端17の開口部は装置の縦方向軸18から60−70度程度の範囲の角度でたわめられる。これによって、ひとつの実施の形態では、13ゲージ穿刺針11が縦方向軸18の先端から測定していずれの方向にも30mm程度の距離で横方向に到達することができる。必要なたわみの程度44は当該装置及びその装置の横方向での望ましい到達距離で決められるが、その素材に恒久的な湾曲をコールド・ワーキングでもたらそうとする場合には、カニューレのサイズによっても制限を受ける。コールド・ワーキングは椎骨形成及び密度の高い組織の生体組織検査などのいくつかの応用例で好適に使用できるより硬めの湾曲を提供してくれるが、高温を用いずにより大きなゲージのニチノール・カニューレを永続的に変形させることはより困難である。本発明のために想定されている実施の形態においては、たわみの角度は30−110度の範囲であればよく、ほとんどの場合は40−90度の範囲がより好ましい。
【0020】
図4は医薬品、造影剤、あるいはその他の非粘性薬剤を注入するための使用に適合した内側湾曲針及び外側針の二番目の実施の形態を示している。穿刺針11は近位ハブ14に取り付けられたより小さなゲージ、好ましくは25ゲージ程度の針カニューレ13で構成されている。個別針カニューレ13の予め形成された湾曲16は図1−3の実施の形態の場合よりやや小さな半径をもっている。同軸外側カニューレ12は穿刺針11の近位ハブ14を受け入れるようになった標準的な針ハブに取り付けられた好ましくは21程度のゲージの対応するサイズの針カニューレ19を含んでいる。図4に示す実施の形態は体内に導入される時に内側及び外側両方の針の内部に挿入される複数のスタイレットと共に使用される。第一のものは外側カニューレ導入用スタイレット52で、これは同軸外側カニューレ12の通路21に挿入される。同軸外側カニューレ12及び外側カニューレ導入用スタイレット52は共に患者の体内に挿入される。取り付けられた標準針ハブ47を有するステンレス鋼スタイレットで構成されたスタイレットは遠位22で同軸外側カニューレ12が組織を通路に食い込ませてしまうのを防いでいる。
この同軸外側カニューレ12が所定の位置にある時に、外側カニューレ導入用スタイレット52は同軸外側カニューレ12から引き出され、穿刺針11と第二の導入用スタイレット45は共に外側針通路21内に挿入される。より長めの穿刺針11に適合させるために外側カニューレ導入用スタイレット52より長めになっている内側針導入用スタイレット45は穿刺針が同軸外側カニューレ12から展開された場合に組織の食い込みを防ぐことによって外側カニューレ導入用スタイレットと同様の機能を果たす。
【0021】
図4及び5に示されているように、穿刺針11の近位ハブ14は内側針導入用スタイレット45のハブ53が近位ハブ14と係合してこれら2つのものの位置関係を保持する。この係合機構は近位ハブ14上の窪み50にぴったりはまるハブ53上の溶接突起物を含んでいる。ハブ53と近位ハブ14との位置的整合性を保持する目的は図5に示すように内側針導入用スタイレット45の先端の傾斜をつけた面51を穿刺針11の先端17の傾斜をつけた面と合わせることである。
【0022】
図6−8は外側針カニューレ12からの穿刺針11の広がった状況を示している。図6は同軸外側カニューレ12からの展開の最初の段階での穿刺針11を示している。穿刺針11の予め形成された湾曲16はカニューレ19によって拘束されているが、図6の実施の形態の場合と同様、その予め形成された湾曲16は穿刺針11が同軸外側カニューレ12内部にある時に外側カニューレ19を多少変形させるのに十分な硬さを持っていてもよい。軽度の変形にもかかわらず、同軸外側カニューレ12はその段階でも上に述べたようにほぼ真っ直ぐである。図7に示すように、予め形成された湾曲16が外側カニューレ19にかける応力は穿刺針11がさらに広げられると緩和され、そして、(同軸外側カニューレ12から穿刺針11の先端17の開口部までで測定した)たわみの角度44は増大する。図8に示されているように穿刺針11がさらに広がって予め形成された湾曲16を十分の露出させ、最大たわみ可能角度44をつくりだし、応力がかからない外側カニューレは真っ直ぐな形状に戻る。図6−8に示されている現象は、図4−5の実施の形態の場合と同様のより小さなゲージのカニューレを用いた場合に最も目立つものである。図1−3に示すより大きなゲージの外側カニューレの方が第二の実施例の場合より変形に対して高い抵抗性を示す。当然であるが、応力のかかった外側カニューレが変形しようという傾向は予め形成された湾曲16の硬さ及び半径と、カニューレ壁面の厚み及び用いられている素材に非常に依存している。装置導入中のこの変形が起きないようにするために、図5に示されているようなスタイレット45は予め形成された湾曲16が広げられる直前に取り外されるまでは硬化材として用いることができる。
【0023】
図9−11は肉茎横断方式による、罹病状態の椎骨体33での椎骨体形成手順を行うために本発明を用いた場合を示している。図9に示されているように、導入用套管針25を有する同軸外側カニューレ12は壁面38を通じて、椎骨体33の髄内部に導入される。肉茎方式のアクセスによって針が椎骨アーチ55の乳頭プロセス34とアクセサリー・プロセス35との間に配置される。椎骨アーチ55は椎骨体33に背面から取り付けられ、それらは椎を形成し、椎小孔36の壁面を形成する。
【0024】
同軸外側カニューレ12及び内側套管針25が椎骨体の内部領域又は髄内部に配置されると、套管針25が同軸外側カニューレ12から引き出され、穿刺針11がその場所に挿入される。図10は構造的強度を向上させるために、固化材41、最も一般的にはメタクリレートを椎骨体33に注入する穿刺針11を示している。図11に示されているように、この穿刺針11はより完全に充填したり椎骨血管網を回避するために部分的に引き出したり、回転させたりすることができる。椎骨体は完全に充填する必要がない場合でも、本発明の能力を活用しない場合は、椎骨体33内部の複数の平面で固化材を注入するために、肉茎に針を再び刺さねばならない必要性も生じるであろう。手順が改良した時点で、穿刺針11を同軸外側カニューレ12内に引き戻し、両方は椎骨体33から取出される。
【0025】
本発明の利用は背骨の関連した手順だけに限られてはいない。この装置は針で真っ直ぐにアクセスした後、間接的、あるいは横方向の注入、吸引、あるいはサンプリングを行うことが必要な体内の多くの箇所で有用性を発揮する可能性がある。例えば、内側の針は乳房の損傷など、密度の高い組織からの生体組織検査サンプルを取得するのに適している。
【0026】
本発明の別の実施の形態に関連して、図12は針アセンブリ10がエタノールやその他の医薬品を腫瘍に注入する上で有用な多重針アセンブリ70で構成されている。この針アセンブリ10は穿刺針で構成され、この穿刺針は、この実施の形態においては、それぞれ予め形成された湾曲70を有する複数の針カニューレ13、多重針アセンブリ70を拘束するための近位アセンブリ58、そして、上記多重針アセンブリ70を処置箇所に導入するための同軸外側カニューレ12で構成されている。図13に示されている多重針アセンブリ70は標準雌型ルアー取付け具などの近位ハブに取り付けられているベース・カニューレ56を含んでいる。複数の針カニューレ13は上記ベース・カニューレ56に傘上形状で均等に間隔をおいて取り付けられ、溶接接合57で所定の場所に固定されている。例として示す実施の形態では5つの針カニューレ13が用いられているが、その数は2から必要な任意の数で調節できる。他の実施の形態の場合と同様、この針カニューレ13は望ましくはニチノールでつくられており、予め形成された湾曲15をつくりだすためにアニーリングまたはコールド・ワーキング処理される。この実施の形態では、この同軸外側カニューレ12は約0.072”のO.Dと約0.06”のI.D.を有しており、個々の湾曲した針カニューレ13は0.02”のO.D.と約0.12”のI.D.を有している。図14に示すように、針カニューレ13の先端17は組織によりよく貫通するように傾斜をつけてもよい。
【0027】
多重針アセンブリ70の湾曲した針カニューレ13が広がった状態を図14に示す。針カニューレ13は多重針アセンブリ70が前進して、同軸外側カニューレ12の遠位部22で針カニューレ12の遠位部分を露出させ、それによって、十分に進められた時に外側に放射状に広がって、図13の傘状形状を取るようになるまで、同軸外側カニューレ12によって拘束される。
【0028】
図15は、同軸外側カニューレ12及び図12−14に示す多重針アセンブリ70を所定の場所に導くために使われる外側カニューレ導入用スタイレット52で構成された外側針アセンブリの側面図である。外側カニューレ導入用スタイレット52は同軸外側カニューレ12の通路内部に挿入され、外側カニューレ導入用スタイレット52の雄型近位ハブ47は外側カニューレ導入用スタイレット52が十分に前進されると、同軸外側カニューレ12の雌型近位ハブ20と係合する。この実施の形態においては、外側カニューレ導入用スタイレット52と同軸外側カニューレ12が経皮的に肝臓や腎臓に導入され、望ましい処置箇所に配置される。その後、外側カニューレ導入用スタイレット52が取り外される。次に多重針アセンブリを予め装填した近位アセンブリ58を患者の体内に留まっている同軸外側カニューレ12内を前進させる。この例示的実施の形態においては、同軸外側カニューレは0.095”のO.D.と約0.076”のI.D.を持ち、内側スタイレットのO.D.は約0.068”である。
【0029】
図16は図12の近位アセンブリ58の側面図である。この近位アセンブリ58は多重針アセンブリを収容するのに十分な大きさを有する中間カニューレ59に接続された遠位雄型アダプタ60を含んでいる。この中間カニューレ59の近位端部にはタッチー−ボースト・アダプタなどの近位アセンブリ・ハブ62に近位端部で接続される近位雌型アダプタ61が設けられている。この近位アセンブリ・ハブ62は装置の操作中医師によって利用される。図13の多重針アセンブリ70は近位ハブ62の近位端部65で内腔64内に装填され、針カニューレ13は中間カニューレ59内部に残る。次に多重針アセンブリ70を予め装填した近位アセンブリ58の遠位66が図17に示すように同軸外側カニューレの近位ハブ20内に挿入される。そして多重針アセンブリ70は近位アセンブリ58から同軸外側カニューレ12内部に前進されて、そこで図12に示されているように広げられる。次に、注射器11の近位ハブ14を介して多重針アセンブリ内にエタノールが注入される。処置が終わると、多重針アセンブリ70が同軸外側カニューレ12内に引き込まれて、針アセンブリ10全体が患者から取出される。
【0030】
図21−22は図12の針アセンブリ10のバリエーションを示しており、この針アセンブリ10では穿刺針11と同軸外側カニューレ12が多重針アセンブリ70を前進させて同軸外側カニューレ12の拘束からそれを展開させるために用いられる同軸ハンドル76に接続されている。この例示的実施の形態においては、同軸ハンドル76は多重針アセンブリ70のベース・カニューレ56上に合わさり、近位ハブ14に取り付けられる静止外側構成部品77と、近位ハブ20に近位端部で取り付けられる摺動可能な内側構成部品78を含んでいる。この摺動可能な内側構成部品78はさらに摺動可能な内側構成部品78が静止外側構成部品77に引っ込むと同軸外側カニューレ12を前進させたり引き戻したりするために医師が用いるサム・ピース79を含んでいる。図21で、針アセンブリが套管針の位置に示されており、サム・ピース79は外側の摺動可能な構成部品77の溝80内で十分に前進されている。図22は針アセンブリ10の展開状態を示しており、この状態ではサム・ピース79は溝80内で最も遠位位置に移動されている。この位置で、同軸外側カニューレ12は引き戻されて複数の針カニューレ13を十分に露出させ、これらの針カニューレ13は予め形成された湾曲を含む非拘束形状を取ることができる。なお、このタイプのハンドルは多重及び単一穿刺針の両方と共に用いることができ、導入用套管針あるいはスタイレットは不必要である。他の公知の同軸ハンドルはねじタイプ、ラチェット・タイプ、あるいはトリガー起動ハンドルなどがあり、同軸外側カニューレ12が長さ方向で穿刺針11に対して動けるようにしている。組織に貫通しやすくするように套管針またはスタイレットのための針を減らすために、同軸外側カニューレ12の遠位22を図に示すように針先状に尖らせるか、外側カニューレ通路21が常に開いているようにするために非食い込み型先端に加工することができる。上に述べた各実施の形態の場合と同様、注入物供給源あるいは吸引された物質を回収するための容器として近位ハブ14に対して注射器あるいはその他の容器を取り付けることができる。さらに、注射器などの容器を針アセンブリ10の同軸ハンドル76内部に組み込んだり、あるいはそれに一体的に取り付けることができる。
【0031】
図17−20に多重針アセンブリ70の別の実施の形態が示されており、この実施の形態では、図12の実施の形態と類似した遠位配置針74に加えて、ひとつ又は複数の組の近位配置針73が設けられている。遠位のものに近接して針カニューレ13を配置することによって、医薬品注入のより広い分散及びカバリッジが可能になる。図17に示す実施の形態では、遠位配置された針74によって構成された4つの針カニューレ構成が示されているが、穿刺針11の長さ方向に沿って配置された近位配置針73で構成される他の少なくともひとつのグループはより近位位置での同時注入を可能にしてくれる。近位配置及び遠位配置針73、74はその形状、長さ、数、そしてベース・カニューレ56への取り付け方を変更することができる(図13)。例えば、傘状形状内あるいは近位配置と遠位配置針73、74間の個別針カニューレ13はより長くしたり、他のものとは違った半径を持つようにして注入物の分布パターンを変えることができる。図17−18に示す実施の形態で、4つの近位配置針73によって構成されたひとつのグループ内の御互いに反対側を向いた針カニューレ13の各対がそれから90度ずれた位置に配置されている近接対に対して、側面開口部67と同様縦方向で位置的にずれている。取り付けに関しては、すべての針カニューレ13を単一のベース・カニューレ56に取り付けたり、個別部分が近位配置針73から遠位方向に延びて遠位配置針74と接合するようにベース・カニューレ56を分割したり、あるいは多重針アセンブリ70の針カニューレ13が分かれて、穿刺針11の長さ方向に延びるようにベース・カニューレをなくしてしまったりなど、いろいろな場合が考えられる。
【0032】
ひとつの通路を体内に導入するために針カニューレ13を拘束するために、遠位配置針73が横方向への注入するために外側に広がることができるように、カニューレ内に側面開口部67を有する同軸外側カニューレ12が用いられる。図18は図17の針アセンブリの断面図で、この図では針カニューレ13が導入位置に拘束されている。導入用カニューレ68は側面開口部67を選択的に露出させるために用いられ、針の配置は個々の針カニューレ13が時期尚早に指定されていない孔または列から出ていってしまい、多重針アセンブリ70の適切な展開を阻害してしまう可能性をもっている。そこで、遠位配置針73が展開されるまで、導入用鞘を側面開口部67上に保持することで、すべての針カニューレ13の適切な展開がより容易に達成される。図19−20は針カニューレ13が指定された側面開口部67をより容易に位置合わせできるようにするための内腔ガイド69を示している。図19で、同軸外側カニューレ12の通路21内の一連のリッジは針カニューレ13が指定された側面開口部67と位置合わせするのを援助する。図20は別の内腔ガイド69を示しており、この内腔ガイド69内部で針カニューレ13は通路21の内壁に形成された溝72内部で長さ方向に移動する。
【0033】
従って、本発明は種々の医療目的のために用いることができ、特許請求の範囲内で、上に述べた本発明の実施の形態による湾曲針の変更、修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は湾曲した針カニューレのひとつの例示的実施の形態を示す図。
【図2】図2は導入用套管針を有する外側針カニューレと内側湾曲針カニューレの平面図。
【図3】外側針カニューレ内部の内側湾曲針カニューレの平面図。
【図4】内側及び外側カニューレの第二の実施の形態を示す図。
【図5】導入用スタイレットを有する図4の内側カニューレを示す図。
【図6】外側カニューレから広がった図4の内側カニューレを示す図。
【図7】図6と同様の図。
【図8】図6と同様の図。
【図9】椎骨体内に導入された図2の装置の部分展開図。
【図10】固化材を椎骨体内に注入するための図2の部分展開図。
【図11】図10と同様の図。
【図12】本発明の第3の実施の形態を示す図。
【図13】図12の多方向穿刺針の側面図。
【図14】部分的に展開された図13の針の側面図。
【図15】図12の実施の形態で用いられる套管針導入装置の側面図。
【図16】図12の近位アセンブリの側面図。
【図17】本発明の第4の実施の形態の側面図。
【図18】展開前の図17の実施の形態の部分展開側面図。
【図19】図17に示す同軸外側カニューレの二つの実施の形態の断面図。
【図20】図19と同様の図。
【図21】本発明の第5の実施の形態を示す図。
【図22】図21と同様の図。
【技術分野】
【0001】
本発明は基本的には医療装置に関するものであり、より具体的には体内での間接的アクセスを可能にするように湾曲された針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脊椎に関連する医療手順は神経破損及び大血管損傷の両方を避けるために必要とされる正確さと、通常処置箇所にアクセスするために必要となる間接経路との故に通常は複雑なものとなる。椎骨転移及び椎骨腫、苦痛を伴う又は進行性血管腫(背骨の良性損傷)、あるいは苦痛を伴う骨粗性脊髄崩壊などの脊柱状態を有する特定の患者における病状安定化及び/又は苦痛からの解放をもたらすために骨固化剤、最も普通にはメチル・メタクリレートを脊椎に注入する手順である脊椎形成を行う場合に特にそうである。標準的な処置規範は処置される脊柱の領域に依存する。頚椎の場合、15ゲージ針で前面横方向アクセスが用いられる。頚椎に近位した大型の容器は、容器と咽頭との間にアクセス箇所を設けるために放射線医師によって横方向に操作される。針を下あごの下側に導入しなければならないので、上向きアクセス・ルートが必要になる。胸部及び腰部椎骨にアクセスする場合は、一般的には、肉茎横断あるいは後部横方向アプローチに続いて大型10ゲージ針が用いられる。脊椎神経損傷を避けるため、そして椎骨体近くの組織に固化材が流出する可能性を低めるために肉茎ルートが好ましい。損傷した椎骨体に完全な充填を行うためには、反対側から二回目の肉茎横断アクセスが必要になる場合が多い。一回の注射だけでは、最初の進入平面から方向を向けなおすことができないので、標的エリア全体を充填することができない。最初のアクセス箇所から固化材を継続的に注入してもそれが対象エリア全体を充填する前に固化して、それ自体に対するバリアになってしまう傾向の故に十分な注入をもたらさない。さらに、椎骨や血管などの構造の密度の高さが通常は椎骨体内部での固化材の自由な流れを阻害してしまう。こうした手順におけるもうひとつの懸念はこれらの血管に偶発的に穴があいてしまうことである。脊椎の血管は肺に直接つながっているので、固化材が偶発的にその中に導入されてしまうと、肺塞栓症を起こしてしまう危険性が高い。
【0003】
体内、あるいは組織周辺で針カニューレの先端を十分に操作できないという点は直線型針の大きな制約となっている。医療手順を完結させるために何度も針を突き刺すのは患者に不快感を与えると同時に、漏出やその他の厄介な問題を引き起こす可能性がある。固化材を完全に注入するために十分に椎骨体にアクセスするためには、その先端を最初の角度からかなり大きな角度でたわめることができなければならない。このためにはその針がその材料を選んだ方向に向かわせるために回転できるように遠位部分で湾曲していることが必要になるであろう。縫合目的のための硬い湾曲した針は良く知られているが、穿刺針に軽い湾曲以外の工夫を加えると、そのアクセス経路及び組織、特に骨に深く進入する能力が制限されてしまう。例えば、硬い湾曲した針は、比較的真っ直ぐなアプローチで針カニューレを骨を通じて椎骨体に深く刺し込み、進入箇所に追加的な損傷を加えずにその場所に保持されるような医療手順での使用には適さないであろう。最初のアクセスは骨に突き刺すために十分な強度の真っ直ぐな針で行わなければならないが、理想的なアプローチは突き刺してから固化材を横方向に向け、その後、針を最初の経路に沿って引き抜くことであろう。処置箇所での組織の密度と抵抗とが内部注入部材が外側の貫通カニューレと同じぐらいの硬さを持っていなければならないことから、これを達成するのはやっかいである。内部部材を操作して、物質の流れを正確に制御することができるようにするためには一定程度の硬さが必要である。遠位部分が軽く曲がったステンレス・スチール穿刺針が知られているが、その針が一度外側保持カニューレの内部に入ってしまうと可塑的に変形され、最初に形成された形状に戻ることが不可能なので、横方向に注入を十分に可能にするのに必要な程度の湾曲は不可能であろう。従って、十分な充填を行うために二度目の針アクセスが必要になるであろう。
【特許文献1】米国特許No.5,597,378
【特許文献2】米国特許No.5,354,623
【非特許文献1】Engineering Aspects of Shape Memory Alloys,Butterworth−Heinerman,Boston,MAの“Linear Superelasticity in Cold−Worked Ni−Ti”,(ZadnoAND Duering) pp.414−419
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ひとつの真っ直ぐな針を用いる場合、他の医療手順で同様の問題が起きる。その一例は肝臓及び腎臓の悪性腫瘍を処置するために経皮エタノール注射が行われる腫瘍切除である。肝臓の手術不能な造血細胞悪性腫瘍の緩和処置として当初導入されたエタノール注射は特に小さな腫瘍を有する多くの患者で切除と比較して治療効果が高いことが示されている。現在の処置では、真っ直ぐな針を用いて腫瘍物質内に直接エタノールを注入し、エタノールが1つまたは複数の側穴から組織内に浸出できるようにされる。問題は、浸出物が針の経路以上に深い場所には浸透せず、従って、腫瘍のいくつかの部分が効果的に処置されないことである。腫瘍物質中により効果的にエタノールを浸透させるための装置を提供するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
頑丈な超弾力性物質でつくられ、その長さ方向の遠位部分に沿って少なくともひとつの予め形成した湾曲を有する穿刺針を用いれば、上記の問題が解決され、技術的進歩がもたらされる。この針は標的箇所への経皮導入中にほぼ真っ直ぐな方向で内側の針カニューレを保持するための二番目の中空カニューレと同軸で用いられ、それによって内側のカニューレが展開されてその予め形成された状態に弾力的に戻るようにする。外側カニューレを出たとたんに予め一定の形状を与えられたカニューレを横方向にたわめることができるので、内側穿刺針をその長さ方向の軸を中心に回転させることで、体内の異なった平面内の複数の箇所で物質を浸出、吸引することができる。これは、外側のカニューレで何回も突き刺す必要性を減らし、あるいはまったくなくしてくれる上で重要である。また、オペレータがひとつの方向から侵入を行い、その後、湾曲した内側カニューレを展開してアクセス経路に沿って別の構造があるなどの理由で直接にはアクセスできない箇所に到達することが可能になる。
【0006】
内側カニューレのための好ましい素材はニチノール(Ni−Ti)などの超弾力性形状記憶合金であるが、しかしながら他の非Ni−Ti合金も用いることができる。多孔性でマルテンサイト系からオーステナイト系に位相変化が起きる温度が装置の作動温度(例えば室温)より低いニチノール合金が選択されている。Jervisが1992年10月2日に申請し、参照によって本明細書に組み入れられる米国特許No.5,597,378で述べているように、所定の期間所定の高温に曝しつつカニューレを望ましい最終形状に保持することで超弾力性ニチノール・カニューレに永続的な湾曲を発生させることができる。このカニューレはステンレス鋼や他の金属が経験する弾性変形よりはるかに弾力的に操作することができる。ニチノール及びその他の超弾力性素材は、十分に変形されると、応力点での局所位相変化がいわゆる『応力誘発マルテンサイト』(SIM)まで変化する。そして応力が外れると、その物質は弾力的にオーステナイト状態に戻る。
【0007】
その素材に恒久的な湾曲をもたせる第二の方法は一般的にコールド・ワーキングと呼ばれるプロセスによるものである。コールド・ワーキングは超弾性カニューレに過度に応力を加えたり、過度に湾曲させる作業を伴う。湾曲領域内の素材はオーステナイトからマルテンサイトに局所的位相遷移を受け、最初の形状には戻らない。コールド・ワーキング加工されたカニューレの場合、その結果少なくとも部分的にマルテンサイト性結晶状態に固定された湾曲ゾーンの周辺に恒久的な湾曲がもたらされる。対照的に、全体的に熱アニールされたカニューレは湾曲状態もオーステナイト状態にあり、十分な曲げ応力がかかると一時的にマルテンサイト状態に移るだけである。従って、アニールされたカニューレの屈曲性はその長さ方向でほとんど変わらない。逆に、マルテンサイトを含んでいるコールド・ワーキングされたカニューレの湾曲は変形に対する抵抗性を増大させ、従って、純粋なオーステナイト・カニューレのより弾力的な湾曲よりその形状をより良く保持する。この増大した剛性は一定の臨床用装置のためには有利である。
【0008】
多くの臨床用装置に適した第一の実施の形態で、導入用套管針あるいはスタイレットは、組織へのアクセスをし易くさせ、組織が装置の遠位先端内に入り込んでしまうのを防ぐために、針の管腔サイズに応じて外側あるいは内側いずれかの針カニューレと共に用いられる。穿刺針はアクセスが達成され、套管針あるいはスタイレットが取り除かれた後、外側カニューレを通じて行われる。カニューレのサイズ、予め形成された湾曲の程度、あるいはその湾曲を形成するために用いられる方法に応じて、内側カニューレはその予め形成された湾曲が外側カニューレ内で拘束されると、外側カニューレを多少変形させる場合がある。その結果、外側カニューレは内側カニューレの湾曲に対応した箇所でその縦方向の通常の軸から多少変形される。内側カニューレが外側カニューレから広がると、それはその湾曲領域全体が内部から出てしまうまで横方向に変形する。好ましい実施の形態では、内側カニューレの遠位開口部は、内側カニューレが十分に広げられた時にその最初の長さ方向の軸から大きな角度で(好ましくは60−90度の範囲)内に向けられる。
【0009】
内側カニューレがその最初の縦方向軸からかなりの角度でたわむことが出来ることは、直線的なアクセスを行い、その後で遠位開口部の向きを調節することが必要な多数の装置で大きな利用性をもっている。これにより、針を引き出して再度刺し込む必要なしに、異なった箇所へのアクセスを可能にしてくれる。そうした手順の代表的な例は真っ直ぐな針で安定化用固化材を注入するために、血管などの壊れやすい組織に対する損傷を避けつつ椎骨体を安定化させるための完全な充填を行うために二度目の突き刺しが必要になることが多い椎骨形成である。背骨の胸部又は腰部部分に関連した標準的な単一針手順の場合、通常肉茎横断方式が用いられ、その場合、同軸ジャムシディータイプ針などのより大型の外側針カニューレが損傷した、あるいは罹病した椎骨体に導入される。外側の針は内側導入用套管針が用いられ、それがその後固化材の注入のために内側の湾曲した針と交換される。湾曲した針が横方向にたわんで回転し、複数の平面に到達できることで、注入範囲が限られている直線の針よりかなり有利になる。動作範囲が上に述べたように広がるので、本発明による湾曲した針は通常椎骨体に一度アクセスするだけで、椎骨形成を完了させることができる。このことは固化材の漏出や非標的エリアへの望ましくない注入などの患者に対する不快感とリスクを回避させてくれる。
【0010】
上の実施の形態での固化材の注入のために同軸針を使用するのに加えて、この装置は物質を吸引したり、他の装置を導入するための導管として機能するのにも適合させることができる。本発明を最初に損傷した椎骨体から組織を吸引して、その後影響を受けた椎骨のための足場として役立てるために骨移植片で包まれた炭素繊維複合ケージを導入する経皮椎骨補強術のために用いることが考えられる。
ケージが適切に配置されたら、メチル・メタクリレートあるいはその他の適切な物質を椎骨体に注入して補綴物を固定する。経皮椎骨補強術は外傷を伴うことが少なく、そして補強ケージを用いるので、骨移植片だけを用いる従来の椎骨補強術より優れた頑丈さを提供してくれる。
【0011】
本発明の別の側面で、痛みの制御及び/又は診断の一部として、同軸針を神経経路内や硬膜外スペースなどに医薬品を注入するために背骨に平行して使用するように適合化させることができる。好ましくは21ゲージ程度のこの外側針カニューレは遠位開口部内に組織が食い込むのを防ぐように傾斜をつけた内部スタイレットと共に経皮的に背骨と平行に導入することができる。このスタイレットを取出して、25ゲージ程度の湾曲した針を外側カニューレ内に挿入する。この針アセンブリを操作して患者の痛み症状の再生に役立てるための診断手順中に神経ルートに接触させる。内部穿刺針は標的箇所に向けられる際に針の通路内部に配置されるスタイレットを含むこともできる。その後このスタイレットを穿刺針から取出して、通常はクレスチン(リドカインと共に注射される)、ケナログ、あるいはメチルプレドニゾンなどの医薬品が処置される箇所に導入される。その後内側の針を外側の外皮カニューレ内に引き込んで、両方とも患者から引き出す。
【0012】
背骨に平行に使うためのよりゲージの小さな針のもうひとつの使用法はディスコグラフィー手順である。ディスコグラフィーでは、対照薬(好ましくは非イオン性対照媒体)を円盤状組織体に直接注入して、椎骨体の奇形や損傷の程度を把握する。
【0013】
本発明の別の実施の形態は導入用カニューレ内部から腫瘍内に広がってそこで傘状に開くことができる複数の湾曲針を用いて腫瘍物質内にエタノールを注入するという課題を達成することができる。従って、腫瘍の複数の箇所で注入が行われ、エタノールをより広い範囲に送りこむことができる。この処置に続いて、針カニューレをカニューレ内に引き込んで、装置を患者から取り外す。
【0014】
関連する実施の形態で、ひとつ又は複数のカニューレを穿刺針の遠位部分近くに配置する。これら近位配置されたカニューレは装置の長さ方向に沿って異なった箇所で医薬品を注入できるようにする。複数の組の針を傘状の状態に配置することによって、処置される組織の体積を増大させる。この同軸外側カニューレは複数の側面開口部を有しており、穿刺針を体内の望ましい場所に配置して外側カニューレを取出した後、近位配置針カニューレが展開できるようにしている。この同軸外側カニューレの外側ケースは、それらが複数の列になった場合、針カニューレと上記開口部が適切な位置関係となるように、側面開口部を選択的に露出させる。
【0015】
本発明は直線的なアプローチが必要で、進入経路内での邪魔になる構造物(大型血管、腸ループなど)を回避したり、医薬品を注入したり、膿を排出したり吸い取ったりすることが必要なすべての臨床状況に適用することができる。注入及び吸収に加えて、本発明は高周波数切除カテーテルやワイアー・ガイドなどの他の医療装置を体内に導入したり、あるいは向きを変えたりするための導管として機能することができる。この発明は問題の箇所に直線的にアプローチした後、湾曲した穿刺針を展開して、特に内腔分岐点などの場所や、小孔へのアクセスが必要な状況などで、装置を望ましい処置箇所に正確に向けることができる。本発明の別の利用法は穿刺針を外側拘束装置として機能することができる気管支鏡や結腸鏡などの装置に穿刺針を配置することである。視覚化された状況で、内側針を生体組織検査やその他のタイプの手順を行うために制御することができる。本発明の実施の形態を添付図面を参照して例として示すために以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は医薬品やその他の物質を横方向に注入したり吸収するための、予め形成した湾曲16を有する穿刺針11で構成される針アセンブリの例示的な実施の形態を示す図である。ここで示されているように、針アセンブリ10は穿刺針11だけで構成することもできるし、あるいは穿刺針とこの開示の一部である他の構成部品との組み合わせで構成することもできる。ここで定義されている穿刺針11は、予め形成した湾曲16を有するひとつ又は複数の針カニューレで構成されている。図1の穿刺針11は、その開示も参照によって本明細書に組み込まれる米国特許No.5,354,623に述べられているHallのものも含めて、選択された公知の技術のいずれかを用いて公知の針カニューレ13に溶接あるいはその他の方法で固着される超弾力性合金針カニューレ13と、その形状が第二の、四角型端部42から容易に区別できる第一のテーパー加工された、あるいは尖らせた端部24を有するフランジ23で構成されている。上記第一の端部24は穿刺針11の針カニューレ13に予め形成された湾曲16の向きに対応している。この湾曲はカニューレをまったくオーステンナイト状態でつくりだすための、カニューレを所定の期間非常に高い温度で変形させる公知の技術か、カニューレを望ましい恒常的な量を超えてカニューレを変形させるために大きな機械的応力をかけるステップを含むカニューレのコールド・ワーキングのいずれかによってニチノール針カニューレ13内に形成される。コールド・ワーキングは湾曲ゾーンの結晶構造の一部を少なくとも部分的にマルテンサイト状態に固定し、同時にカニューレの応力がかかっていない部分がオーステナイト状態に留まる。コールド・ワーキングNi−Ti合金は、参照で本明細書に組み込まれるEngineering Aspects of Shape Memory Alloys,Butterworth−Heinerman,Boston,MAの“Linear Superelasticity in Cold−Worked Ni−Ti”,(Zadno
AND Duering) pp.414−419に傾倒されている。ニチノールに加えて、Cu−Al−Ni、Cu−A−Ni、及びCu−Ziなどの超弾力性あるいは偽弾力性銅合金も代替針カニューレ材料として用いることができる。展開と望ましい湾曲を持続するための形状記憶の両方のために十分な硬さを有する柔軟なポリマー性素材をそれ自体単独でも、あるいは金属ひもあるいは先端などの補強金属成分との組み合わせでも用いることができる。
【0017】
本発明の穿刺針11の予め形成された湾曲16は好ましくは図1の実施の形態で針カニューレ13の長さの約25%程度の近くに針カニューレ13の遠位部分を有している。穿刺針が好ましくは10−18ゲージと大きなサイズであるので、この具体的な実施の形態も椎骨体に貫通させて椎骨体形成経皮処置を行うのに適している。より好ましい範囲は12−17ゲージで、最も好ましいカニューレ・サイズは13−15ゲージである。椎骨形成及び椎骨補強手順に関連して、大型ゲージ・カニューレは密度の高い骨物質を貫通するための強度と、椎骨体から物質を吸い取ったり、あるいはメチル・メタクリレートなどの非常に粘性の高い骨固化材を注入したりするのに十分な内腔直径を有している。穿刺針11の好ましい予め形成された湾曲16は一定の半径を有している。図1の実施の形態の場合、遠位湾曲の好ましい半径は13ゲージ針の場合約3.0cmで、14ゲージ針の場合は約2.5cmである。この例として示す実施の形態は一定の直径を持った湾曲半径を有しているが、一定の臨床的装置のためには半径を増減することも可能であろう。さらに、特殊な針構成を必要とする装置のために超弾力性カニューレに複数の湾曲をもたらすことも可能である。
【0018】
ニチノール又はその他の超弾力性合金カニューレを使用する目的は、処置箇所への経路中ではひとつの形状に拘束されて、その後、可塑性変形を受けずに予め形成された形状に展開することができるようにすることである。図2は、処置箇所に導入される際に内側の穿刺針11をほぼ真っ直ぐな形状に保持するための図1の穿刺針11と図12の同軸外側カニューレ12を含む、上に述べたような方法で同軸的に用いられる1対の針を示している。図2に示されている実施の形態は二部分針アセンブリ43であるジャムシディ・タイプの針(Manan Inc.,Northbrook)であり、骨や繊維性物質など密度が高く硬い組織にアクセスするために最も一般的に用いられている。従って、椎骨体の壁面を貫通して、その中で注入物11が広がることができるようにするのに良く適合している。この特定の実施の形態の外側針アセンブリ43は内側注入針11を収容するのに十分な大きさの内側通路21を有するステンレス鋼カニューレ19を含む同軸の外側カニューレ12で構成されている。例えば、椎骨体をアクセスするのに適した標準的な11ゲージ・ジャムシディ針が13ゲージ内側湾曲針と共に用いられるであろう。ステンレス鋼カニューレ19はハンドル26及びコネクタ・ハブ31(図3に図示)に対して近位して取付けられる。コネクタ・ハブ31は上記二部品針アセンブリ43の第二の部品である、この場合では套管針25で構成された同軸外側カニューレ導入器52を受け入れる。套管針ハブ27は同軸外側カニューレ12のハンドル26と係合する。套管針25の傾斜をつけた先端30は同軸の外側カニューレ12の遠位先端より5mm程度延びており、貫通時に役立つ。套管針25は又同軸外側カニューレ12がアクセス時に骨又はその他の物質のサンプルを食い込んでしまうのを防止する役割を果たす。
【0019】
外側の針アセンブリ43が標的箇所に向けられた後、套管針25を同軸外側カニューレ12から取出して、穿刺針11を図3に示すように同軸外側カニューレ12の通路21に挿入する。穿刺針通路15の開通性を維持し、展開中の組織食い込みを防ぐために、内側針導入用スタイレット45を同軸的に穿刺針内に導入することができる。この例として示す実施の形態では、内側導入用スタイレット45はハンドル83とポリエーテルエーテルケトン(PEEK))などの柔軟性があり、高張力ポリマー性材料でできたシャフト46を含んでおり、スタイレット45が展開後予め形成された湾曲16の輪郭線に合った形状を取る。内側穿刺針11はそれが同軸内側カニューレ12に装填されると真っ直ぐになる。穿刺針11の予め形成された湾曲16を含む領域が図に示すように同軸外側カニューレ12の先端22から延びているので、それは針カニューレ13の超弾力性によってその予め形成された形状をとる。注射を行う場合、同軸外側カニューレ12の通路に組織が食い込んでしまうのを防いでくれる内側針導入用スタイレット52が取り外される。近位ハブ14のフランジ23のテーパー加工した、又は『矢印型』端部は穿刺針11のたわみ平面29と対応している。フランジ23を操作することで、内側の湾曲した針はどちらかの方向28に回転させてたわみ面の向きを変え、先端開口部17を処置されるエリアと共に複数の位置に配置することができる。例として示す上の実施の形態で、先端17の開口部は装置の縦方向軸18から60−70度程度の範囲の角度でたわめられる。これによって、ひとつの実施の形態では、13ゲージ穿刺針11が縦方向軸18の先端から測定していずれの方向にも30mm程度の距離で横方向に到達することができる。必要なたわみの程度44は当該装置及びその装置の横方向での望ましい到達距離で決められるが、その素材に恒久的な湾曲をコールド・ワーキングでもたらそうとする場合には、カニューレのサイズによっても制限を受ける。コールド・ワーキングは椎骨形成及び密度の高い組織の生体組織検査などのいくつかの応用例で好適に使用できるより硬めの湾曲を提供してくれるが、高温を用いずにより大きなゲージのニチノール・カニューレを永続的に変形させることはより困難である。本発明のために想定されている実施の形態においては、たわみの角度は30−110度の範囲であればよく、ほとんどの場合は40−90度の範囲がより好ましい。
【0020】
図4は医薬品、造影剤、あるいはその他の非粘性薬剤を注入するための使用に適合した内側湾曲針及び外側針の二番目の実施の形態を示している。穿刺針11は近位ハブ14に取り付けられたより小さなゲージ、好ましくは25ゲージ程度の針カニューレ13で構成されている。個別針カニューレ13の予め形成された湾曲16は図1−3の実施の形態の場合よりやや小さな半径をもっている。同軸外側カニューレ12は穿刺針11の近位ハブ14を受け入れるようになった標準的な針ハブに取り付けられた好ましくは21程度のゲージの対応するサイズの針カニューレ19を含んでいる。図4に示す実施の形態は体内に導入される時に内側及び外側両方の針の内部に挿入される複数のスタイレットと共に使用される。第一のものは外側カニューレ導入用スタイレット52で、これは同軸外側カニューレ12の通路21に挿入される。同軸外側カニューレ12及び外側カニューレ導入用スタイレット52は共に患者の体内に挿入される。取り付けられた標準針ハブ47を有するステンレス鋼スタイレットで構成されたスタイレットは遠位22で同軸外側カニューレ12が組織を通路に食い込ませてしまうのを防いでいる。
この同軸外側カニューレ12が所定の位置にある時に、外側カニューレ導入用スタイレット52は同軸外側カニューレ12から引き出され、穿刺針11と第二の導入用スタイレット45は共に外側針通路21内に挿入される。より長めの穿刺針11に適合させるために外側カニューレ導入用スタイレット52より長めになっている内側針導入用スタイレット45は穿刺針が同軸外側カニューレ12から展開された場合に組織の食い込みを防ぐことによって外側カニューレ導入用スタイレットと同様の機能を果たす。
【0021】
図4及び5に示されているように、穿刺針11の近位ハブ14は内側針導入用スタイレット45のハブ53が近位ハブ14と係合してこれら2つのものの位置関係を保持する。この係合機構は近位ハブ14上の窪み50にぴったりはまるハブ53上の溶接突起物を含んでいる。ハブ53と近位ハブ14との位置的整合性を保持する目的は図5に示すように内側針導入用スタイレット45の先端の傾斜をつけた面51を穿刺針11の先端17の傾斜をつけた面と合わせることである。
【0022】
図6−8は外側針カニューレ12からの穿刺針11の広がった状況を示している。図6は同軸外側カニューレ12からの展開の最初の段階での穿刺針11を示している。穿刺針11の予め形成された湾曲16はカニューレ19によって拘束されているが、図6の実施の形態の場合と同様、その予め形成された湾曲16は穿刺針11が同軸外側カニューレ12内部にある時に外側カニューレ19を多少変形させるのに十分な硬さを持っていてもよい。軽度の変形にもかかわらず、同軸外側カニューレ12はその段階でも上に述べたようにほぼ真っ直ぐである。図7に示すように、予め形成された湾曲16が外側カニューレ19にかける応力は穿刺針11がさらに広げられると緩和され、そして、(同軸外側カニューレ12から穿刺針11の先端17の開口部までで測定した)たわみの角度44は増大する。図8に示されているように穿刺針11がさらに広がって予め形成された湾曲16を十分の露出させ、最大たわみ可能角度44をつくりだし、応力がかからない外側カニューレは真っ直ぐな形状に戻る。図6−8に示されている現象は、図4−5の実施の形態の場合と同様のより小さなゲージのカニューレを用いた場合に最も目立つものである。図1−3に示すより大きなゲージの外側カニューレの方が第二の実施例の場合より変形に対して高い抵抗性を示す。当然であるが、応力のかかった外側カニューレが変形しようという傾向は予め形成された湾曲16の硬さ及び半径と、カニューレ壁面の厚み及び用いられている素材に非常に依存している。装置導入中のこの変形が起きないようにするために、図5に示されているようなスタイレット45は予め形成された湾曲16が広げられる直前に取り外されるまでは硬化材として用いることができる。
【0023】
図9−11は肉茎横断方式による、罹病状態の椎骨体33での椎骨体形成手順を行うために本発明を用いた場合を示している。図9に示されているように、導入用套管針25を有する同軸外側カニューレ12は壁面38を通じて、椎骨体33の髄内部に導入される。肉茎方式のアクセスによって針が椎骨アーチ55の乳頭プロセス34とアクセサリー・プロセス35との間に配置される。椎骨アーチ55は椎骨体33に背面から取り付けられ、それらは椎を形成し、椎小孔36の壁面を形成する。
【0024】
同軸外側カニューレ12及び内側套管針25が椎骨体の内部領域又は髄内部に配置されると、套管針25が同軸外側カニューレ12から引き出され、穿刺針11がその場所に挿入される。図10は構造的強度を向上させるために、固化材41、最も一般的にはメタクリレートを椎骨体33に注入する穿刺針11を示している。図11に示されているように、この穿刺針11はより完全に充填したり椎骨血管網を回避するために部分的に引き出したり、回転させたりすることができる。椎骨体は完全に充填する必要がない場合でも、本発明の能力を活用しない場合は、椎骨体33内部の複数の平面で固化材を注入するために、肉茎に針を再び刺さねばならない必要性も生じるであろう。手順が改良した時点で、穿刺針11を同軸外側カニューレ12内に引き戻し、両方は椎骨体33から取出される。
【0025】
本発明の利用は背骨の関連した手順だけに限られてはいない。この装置は針で真っ直ぐにアクセスした後、間接的、あるいは横方向の注入、吸引、あるいはサンプリングを行うことが必要な体内の多くの箇所で有用性を発揮する可能性がある。例えば、内側の針は乳房の損傷など、密度の高い組織からの生体組織検査サンプルを取得するのに適している。
【0026】
本発明の別の実施の形態に関連して、図12は針アセンブリ10がエタノールやその他の医薬品を腫瘍に注入する上で有用な多重針アセンブリ70で構成されている。この針アセンブリ10は穿刺針で構成され、この穿刺針は、この実施の形態においては、それぞれ予め形成された湾曲70を有する複数の針カニューレ13、多重針アセンブリ70を拘束するための近位アセンブリ58、そして、上記多重針アセンブリ70を処置箇所に導入するための同軸外側カニューレ12で構成されている。図13に示されている多重針アセンブリ70は標準雌型ルアー取付け具などの近位ハブに取り付けられているベース・カニューレ56を含んでいる。複数の針カニューレ13は上記ベース・カニューレ56に傘上形状で均等に間隔をおいて取り付けられ、溶接接合57で所定の場所に固定されている。例として示す実施の形態では5つの針カニューレ13が用いられているが、その数は2から必要な任意の数で調節できる。他の実施の形態の場合と同様、この針カニューレ13は望ましくはニチノールでつくられており、予め形成された湾曲15をつくりだすためにアニーリングまたはコールド・ワーキング処理される。この実施の形態では、この同軸外側カニューレ12は約0.072”のO.Dと約0.06”のI.D.を有しており、個々の湾曲した針カニューレ13は0.02”のO.D.と約0.12”のI.D.を有している。図14に示すように、針カニューレ13の先端17は組織によりよく貫通するように傾斜をつけてもよい。
【0027】
多重針アセンブリ70の湾曲した針カニューレ13が広がった状態を図14に示す。針カニューレ13は多重針アセンブリ70が前進して、同軸外側カニューレ12の遠位部22で針カニューレ12の遠位部分を露出させ、それによって、十分に進められた時に外側に放射状に広がって、図13の傘状形状を取るようになるまで、同軸外側カニューレ12によって拘束される。
【0028】
図15は、同軸外側カニューレ12及び図12−14に示す多重針アセンブリ70を所定の場所に導くために使われる外側カニューレ導入用スタイレット52で構成された外側針アセンブリの側面図である。外側カニューレ導入用スタイレット52は同軸外側カニューレ12の通路内部に挿入され、外側カニューレ導入用スタイレット52の雄型近位ハブ47は外側カニューレ導入用スタイレット52が十分に前進されると、同軸外側カニューレ12の雌型近位ハブ20と係合する。この実施の形態においては、外側カニューレ導入用スタイレット52と同軸外側カニューレ12が経皮的に肝臓や腎臓に導入され、望ましい処置箇所に配置される。その後、外側カニューレ導入用スタイレット52が取り外される。次に多重針アセンブリを予め装填した近位アセンブリ58を患者の体内に留まっている同軸外側カニューレ12内を前進させる。この例示的実施の形態においては、同軸外側カニューレは0.095”のO.D.と約0.076”のI.D.を持ち、内側スタイレットのO.D.は約0.068”である。
【0029】
図16は図12の近位アセンブリ58の側面図である。この近位アセンブリ58は多重針アセンブリを収容するのに十分な大きさを有する中間カニューレ59に接続された遠位雄型アダプタ60を含んでいる。この中間カニューレ59の近位端部にはタッチー−ボースト・アダプタなどの近位アセンブリ・ハブ62に近位端部で接続される近位雌型アダプタ61が設けられている。この近位アセンブリ・ハブ62は装置の操作中医師によって利用される。図13の多重針アセンブリ70は近位ハブ62の近位端部65で内腔64内に装填され、針カニューレ13は中間カニューレ59内部に残る。次に多重針アセンブリ70を予め装填した近位アセンブリ58の遠位66が図17に示すように同軸外側カニューレの近位ハブ20内に挿入される。そして多重針アセンブリ70は近位アセンブリ58から同軸外側カニューレ12内部に前進されて、そこで図12に示されているように広げられる。次に、注射器11の近位ハブ14を介して多重針アセンブリ内にエタノールが注入される。処置が終わると、多重針アセンブリ70が同軸外側カニューレ12内に引き込まれて、針アセンブリ10全体が患者から取出される。
【0030】
図21−22は図12の針アセンブリ10のバリエーションを示しており、この針アセンブリ10では穿刺針11と同軸外側カニューレ12が多重針アセンブリ70を前進させて同軸外側カニューレ12の拘束からそれを展開させるために用いられる同軸ハンドル76に接続されている。この例示的実施の形態においては、同軸ハンドル76は多重針アセンブリ70のベース・カニューレ56上に合わさり、近位ハブ14に取り付けられる静止外側構成部品77と、近位ハブ20に近位端部で取り付けられる摺動可能な内側構成部品78を含んでいる。この摺動可能な内側構成部品78はさらに摺動可能な内側構成部品78が静止外側構成部品77に引っ込むと同軸外側カニューレ12を前進させたり引き戻したりするために医師が用いるサム・ピース79を含んでいる。図21で、針アセンブリが套管針の位置に示されており、サム・ピース79は外側の摺動可能な構成部品77の溝80内で十分に前進されている。図22は針アセンブリ10の展開状態を示しており、この状態ではサム・ピース79は溝80内で最も遠位位置に移動されている。この位置で、同軸外側カニューレ12は引き戻されて複数の針カニューレ13を十分に露出させ、これらの針カニューレ13は予め形成された湾曲を含む非拘束形状を取ることができる。なお、このタイプのハンドルは多重及び単一穿刺針の両方と共に用いることができ、導入用套管針あるいはスタイレットは不必要である。他の公知の同軸ハンドルはねじタイプ、ラチェット・タイプ、あるいはトリガー起動ハンドルなどがあり、同軸外側カニューレ12が長さ方向で穿刺針11に対して動けるようにしている。組織に貫通しやすくするように套管針またはスタイレットのための針を減らすために、同軸外側カニューレ12の遠位22を図に示すように針先状に尖らせるか、外側カニューレ通路21が常に開いているようにするために非食い込み型先端に加工することができる。上に述べた各実施の形態の場合と同様、注入物供給源あるいは吸引された物質を回収するための容器として近位ハブ14に対して注射器あるいはその他の容器を取り付けることができる。さらに、注射器などの容器を針アセンブリ10の同軸ハンドル76内部に組み込んだり、あるいはそれに一体的に取り付けることができる。
【0031】
図17−20に多重針アセンブリ70の別の実施の形態が示されており、この実施の形態では、図12の実施の形態と類似した遠位配置針74に加えて、ひとつ又は複数の組の近位配置針73が設けられている。遠位のものに近接して針カニューレ13を配置することによって、医薬品注入のより広い分散及びカバリッジが可能になる。図17に示す実施の形態では、遠位配置された針74によって構成された4つの針カニューレ構成が示されているが、穿刺針11の長さ方向に沿って配置された近位配置針73で構成される他の少なくともひとつのグループはより近位位置での同時注入を可能にしてくれる。近位配置及び遠位配置針73、74はその形状、長さ、数、そしてベース・カニューレ56への取り付け方を変更することができる(図13)。例えば、傘状形状内あるいは近位配置と遠位配置針73、74間の個別針カニューレ13はより長くしたり、他のものとは違った半径を持つようにして注入物の分布パターンを変えることができる。図17−18に示す実施の形態で、4つの近位配置針73によって構成されたひとつのグループ内の御互いに反対側を向いた針カニューレ13の各対がそれから90度ずれた位置に配置されている近接対に対して、側面開口部67と同様縦方向で位置的にずれている。取り付けに関しては、すべての針カニューレ13を単一のベース・カニューレ56に取り付けたり、個別部分が近位配置針73から遠位方向に延びて遠位配置針74と接合するようにベース・カニューレ56を分割したり、あるいは多重針アセンブリ70の針カニューレ13が分かれて、穿刺針11の長さ方向に延びるようにベース・カニューレをなくしてしまったりなど、いろいろな場合が考えられる。
【0032】
ひとつの通路を体内に導入するために針カニューレ13を拘束するために、遠位配置針73が横方向への注入するために外側に広がることができるように、カニューレ内に側面開口部67を有する同軸外側カニューレ12が用いられる。図18は図17の針アセンブリの断面図で、この図では針カニューレ13が導入位置に拘束されている。導入用カニューレ68は側面開口部67を選択的に露出させるために用いられ、針の配置は個々の針カニューレ13が時期尚早に指定されていない孔または列から出ていってしまい、多重針アセンブリ70の適切な展開を阻害してしまう可能性をもっている。そこで、遠位配置針73が展開されるまで、導入用鞘を側面開口部67上に保持することで、すべての針カニューレ13の適切な展開がより容易に達成される。図19−20は針カニューレ13が指定された側面開口部67をより容易に位置合わせできるようにするための内腔ガイド69を示している。図19で、同軸外側カニューレ12の通路21内の一連のリッジは針カニューレ13が指定された側面開口部67と位置合わせするのを援助する。図20は別の内腔ガイド69を示しており、この内腔ガイド69内部で針カニューレ13は通路21の内壁に形成された溝72内部で長さ方向に移動する。
【0033】
従って、本発明は種々の医療目的のために用いることができ、特許請求の範囲内で、上に述べた本発明の実施の形態による湾曲針の変更、修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は湾曲した針カニューレのひとつの例示的実施の形態を示す図。
【図2】図2は導入用套管針を有する外側針カニューレと内側湾曲針カニューレの平面図。
【図3】外側針カニューレ内部の内側湾曲針カニューレの平面図。
【図4】内側及び外側カニューレの第二の実施の形態を示す図。
【図5】導入用スタイレットを有する図4の内側カニューレを示す図。
【図6】外側カニューレから広がった図4の内側カニューレを示す図。
【図7】図6と同様の図。
【図8】図6と同様の図。
【図9】椎骨体内に導入された図2の装置の部分展開図。
【図10】固化材を椎骨体内に注入するための図2の部分展開図。
【図11】図10と同様の図。
【図12】本発明の第3の実施の形態を示す図。
【図13】図12の多方向穿刺針の側面図。
【図14】部分的に展開された図13の針の側面図。
【図15】図12の実施の形態で用いられる套管針導入装置の側面図。
【図16】図12の近位アセンブリの側面図。
【図17】本発明の第4の実施の形態の側面図。
【図18】展開前の図17の実施の形態の部分展開側面図。
【図19】図17に示す同軸外側カニューレの二つの実施の形態の断面図。
【図20】図19と同様の図。
【図21】本発明の第5の実施の形態を示す図。
【図22】図21と同様の図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超弾力性材料で構成された少なくともひとつの針カニューレ(13)を含み、上記少なくともひとつのカニューレが、その非拘束状態で少なくともひとつの予め形成された湾曲(16)を有している穿刺針(10)と、ひとつの遠位(22)及びその内部を通じている通路(21)を有し、上記穿刺針(11)が上記穿刺針を第二の状態に拘束するために同軸外側カニューレの通路内部に配置できるようになっており、上記穿刺針が同軸外カニューレの遠位から摺動可能に広がることができ、それによって拘束力が外れると、上記少なくともひとつの針カニューレが基本的に非拘束状態に戻る同軸外側カニューレ(12)とからなる針アセンブリ(10)。
【請求項2】
上記同軸外側カニューレの遠位が組織に進入できるようにされた鋭い先端(81)を有している請求項1記載の針アセンブリ。
【請求項3】
上記同軸外側カニューレがさらに、同軸外側針の通路に挿入でき、上記同軸外側針と外側カニューレ導入用スタイレットが患者の体内に挿入できるようになっている外側針アセンブリ(43)を構成している外側カニューレ導入用スタイレット5を含んでいる請求項1記載の針アセンブリ。
【請求項4】
上記超弾力性材料がNi−Ti合金を含む請求項1記載の針アセンブリ。
【請求項5】
上記少なくともひとつの予め形成された湾曲が上記針カニューレの物理的湾曲によってもたらされ、上記少なくともひとつの予め形成された湾曲の超弾力的材料がマルテンサイト系結晶構造を含んでおり、針カニューレの物理的に変形されない部分は基本的にオーステナイト系結晶構造で構成されている請求項1記載の針カニューレ。
【請求項6】
上記穿刺針と同軸外側カニューレが同軸ハンドル(76)によって相互に接続されている請求項1記載の針アセンブリ。
【請求項7】
それぞれ遠位部(17)を有している複数の針カニューレ(13)を有する穿刺針(11)で、上記複数の針カニューレが非拘束状態においてはそれぞれ予め形成した湾曲(16)を有していてその角度は40−90度であり、上記予め形成した湾曲がさらに機械的に誘発したマルテンサイトで構成されており、その内側中空カニューレの直線部分がオーステナイト状Ni−Ti合金で形成され、上記複数の針カニューレが基本的には直線的な第二の状態に拘束でき、それによって外部からの拘束力が外れると、上記複数の針カニューレが基本的に非拘束状態に戻り、上記穿刺針がNi−Ti合金で構成されており、上記複数の針カニューレの予め形成された湾曲がその針カニューレを物理的に変形させることでもたらされ、各予め形成された湾曲がマルテンサイト系結晶構造を持っており、その針カニューレの非物理的変形部分が基本的にオーステナイト系結晶構造で構成されている穿刺針(11)と、遠位(22)とその内部を通じている通路(21)を有しており、上記穿刺針がその穿刺針を第二の状態に拘束するために同軸外側カニューレの通路内に配置されるようになっており、さらにその穿刺針が同軸外側カニューレの遠位から摺動可能に広げることができ、それによって拘束力が外れると、上記複数の針カニューレが基本的に非拘束状態に戻るようになっている同軸外側カニューレ(12)と、スタイレット・シャフト(46)を有しており、そのスタイレット・シャフトが上記穿刺針の通路に挿入できるようになっている内側針導入スタイレット(45)と、同軸外側針の通路に挿入可能で、上記同軸外側針と外側カニューレ導入用スタイレットが患者の体内に挿入できるようになっている外側針アセンブリ(43)で構成されるようになっている外側カニューレ導入用スタイレット(52)
とからなる針アセンブリ(10)。
【請求項1】
超弾力性材料で構成された少なくともひとつの針カニューレ(13)を含み、上記少なくともひとつのカニューレが、その非拘束状態で少なくともひとつの予め形成された湾曲(16)を有している穿刺針(10)と、ひとつの遠位(22)及びその内部を通じている通路(21)を有し、上記穿刺針(11)が上記穿刺針を第二の状態に拘束するために同軸外側カニューレの通路内部に配置できるようになっており、上記穿刺針が同軸外カニューレの遠位から摺動可能に広がることができ、それによって拘束力が外れると、上記少なくともひとつの針カニューレが基本的に非拘束状態に戻る同軸外側カニューレ(12)とからなる針アセンブリ(10)。
【請求項2】
上記同軸外側カニューレの遠位が組織に進入できるようにされた鋭い先端(81)を有している請求項1記載の針アセンブリ。
【請求項3】
上記同軸外側カニューレがさらに、同軸外側針の通路に挿入でき、上記同軸外側針と外側カニューレ導入用スタイレットが患者の体内に挿入できるようになっている外側針アセンブリ(43)を構成している外側カニューレ導入用スタイレット5を含んでいる請求項1記載の針アセンブリ。
【請求項4】
上記超弾力性材料がNi−Ti合金を含む請求項1記載の針アセンブリ。
【請求項5】
上記少なくともひとつの予め形成された湾曲が上記針カニューレの物理的湾曲によってもたらされ、上記少なくともひとつの予め形成された湾曲の超弾力的材料がマルテンサイト系結晶構造を含んでおり、針カニューレの物理的に変形されない部分は基本的にオーステナイト系結晶構造で構成されている請求項1記載の針カニューレ。
【請求項6】
上記穿刺針と同軸外側カニューレが同軸ハンドル(76)によって相互に接続されている請求項1記載の針アセンブリ。
【請求項7】
それぞれ遠位部(17)を有している複数の針カニューレ(13)を有する穿刺針(11)で、上記複数の針カニューレが非拘束状態においてはそれぞれ予め形成した湾曲(16)を有していてその角度は40−90度であり、上記予め形成した湾曲がさらに機械的に誘発したマルテンサイトで構成されており、その内側中空カニューレの直線部分がオーステナイト状Ni−Ti合金で形成され、上記複数の針カニューレが基本的には直線的な第二の状態に拘束でき、それによって外部からの拘束力が外れると、上記複数の針カニューレが基本的に非拘束状態に戻り、上記穿刺針がNi−Ti合金で構成されており、上記複数の針カニューレの予め形成された湾曲がその針カニューレを物理的に変形させることでもたらされ、各予め形成された湾曲がマルテンサイト系結晶構造を持っており、その針カニューレの非物理的変形部分が基本的にオーステナイト系結晶構造で構成されている穿刺針(11)と、遠位(22)とその内部を通じている通路(21)を有しており、上記穿刺針がその穿刺針を第二の状態に拘束するために同軸外側カニューレの通路内に配置されるようになっており、さらにその穿刺針が同軸外側カニューレの遠位から摺動可能に広げることができ、それによって拘束力が外れると、上記複数の針カニューレが基本的に非拘束状態に戻るようになっている同軸外側カニューレ(12)と、スタイレット・シャフト(46)を有しており、そのスタイレット・シャフトが上記穿刺針の通路に挿入できるようになっている内側針導入スタイレット(45)と、同軸外側針の通路に挿入可能で、上記同軸外側針と外側カニューレ導入用スタイレットが患者の体内に挿入できるようになっている外側針アセンブリ(43)で構成されるようになっている外側カニューレ導入用スタイレット(52)
とからなる針アセンブリ(10)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
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【図4】
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【図13】
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【図19】
【図20】
【図21】
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【公開番号】特開2009−537(P2009−537A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183742(P2008−183742)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【分割の表示】特願2000−586398(P2000−586398)の分割
【原出願日】平成11年12月9日(1999.12.9)
【出願人】(502274071)クック インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【分割の表示】特願2000−586398(P2000−586398)の分割
【原出願日】平成11年12月9日(1999.12.9)
【出願人】(502274071)クック インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】
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