説明

串又は楊枝を用いて無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法と、椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の栽培方法

【課題】椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝の種付け、栽培方法において、農薬の使用の有無について、明らかにする。
【解決手段】通気性の殺菌済み袋に子実体片と数本の楊枝を入れて密封し、子実体片と数本の楊枝を入れた袋を熱湯中で処理し、数日後、楊枝に菌糸を種付け、菌糸付き楊枝を、雑菌侵入防止テープを備えた多数本の楊枝を収容した別の袋に刺し込み、別の袋への雑菌の侵入を防止し、別の袋で多数本の楊枝に菌糸を生成する無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ等の茸種付け方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、串又は楊枝を用いて無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法と、椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の楊枝を用いて無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ等の茸種付け方法と、茸栽培と原木茸の栽培方法、又はこれに類似する椎茸、シメジ、マンネンタケ等の茸種付け方法としては、本出願人が提案する特開2002−84884がある。この発明の内容は、基本的には、「殺菌した通気性を備えた袋に多数本の楊枝を入れて密封し、密封の袋に、子実体片を挿入して茸菌を種付けする所作で元菌を生成する椎茸、シメジ、マンネンタケ等の茸種付け方法」と「通気性を備えた袋内に種付け部を有する原木を入れ、原木を袋とともに煮沸殺菌し、袋を密閉した後、袋にスポンジ等の介在物を設け、介在物を介して種菌付きの楊枝を袋に刺し込み、種菌付きの楊枝を殺菌した原木の種付け部に設け、楊枝付き原木を仮伏せした後、地中に埋設して本伏せする茸の栽培方法」である。
【特許文献1】特開平2002−84884
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記文献(1)は、極めて短期間、略2週間程度を得れば元菌を生成できることから、効率的であり、その経済効果は大である。またこの元菌の生成が簡便かつ確実に行える。これらの特徴を有するこの該文献(1)は産業界に副音をもたらすことは明らかである。
【0004】
しかし、当該文献(1)は農薬の有無に関する手当てが明確に開示されていないことから、昨今の注目を集めている無農薬栽培、又は無農薬に関する要望に対し、必ずしも十分とは云えないと考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、この文献(1)の特徴を発揮しつつ、さらに改良を加えることで昨今の略完全無農薬栽培、又は無農薬栽培に対応できる無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法と、略完全無農薬栽培、又は無農薬栽培に対応できる原木茸・鹿角霊芝の栽培方法とを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、略完全無農薬栽培、又は無農薬栽培に対応できる無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法を提供し、菌糸の生成の短縮化を図りつつ、簡易かつ確実な種付けを図って業界又は市井の要望に応えることを意図する。また本発明は、この種付け方法の提供を介して昨今の要望に応答できる無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸の提供と、又は健康に役立つ無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸の提供とを意図する。
【0007】
請求項1は、通気性を備えた袋に子実体片と数本の楊枝を入れて密封し、この子実体片と数本の楊枝を入れた通気性を備えた袋を熱湯の中で処理した後、数日を得てこの楊枝に菌糸を種付け、この菌糸付き楊枝を、雑菌侵入防止テープ・スポンジ等の雑菌侵入防止手段を備えた多数本の楊枝を収容した別の袋に刺し込み、この刺し込みを前記雑菌侵入防止手段より行って、当該別の袋への雑菌の侵入を防止しながら、この別の袋で多数本の楊枝に菌糸を生成する構成とした無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の目的を達成すること、また袋内への雑菌の侵入を防止し、無菌状態での培養(菌糸の生成)を意図する。
【0009】
請求項2は、請求項1に記載の雑菌侵入防止手段を介して刺し込むに際し、前記菌糸付き楊枝を、浄水で略1秒程濯ぐ構成とした無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1の目的を達成すること、また子実体片と数本の楊枝を入れた袋の無菌状態を確保すること等を意図する。
【0011】
請求項3は、請求項1に記載の子実体片と数本の楊枝を入れた袋を熱湯の中で処理する際の処理時間を、略10秒〜15秒程度とした無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法である。
【0012】
請求項4の発明は、略完全無農薬栽培、又は無農薬栽培に対応できる無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法を利用し、昨今の要望に応答できる無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸の提供と、又は健康に役立つ無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸の提供とを意図する。また本発明は栽培方法の短縮化、簡便化と汎用化を図ること、又は菌糸付きの楊枝を前記袋への刺し込み本数を適宜変更し、菌の蔓延期間を早めるようにすること等を意図する。
【0013】
請求項4は、通気性を備えた袋内に種付け部を有する原木を入れ、この袋内の空気を排気し、この原木を略真空状態に密閉した袋内に設け、当該原木を袋とともに常圧殺菌し、この袋に雑菌侵入防止テープ・スポンジ等の雑菌侵入防止手段を設け、この雑菌侵入防止手段を介して、請求項1〜3に記載の種付け方法で得られた菌糸付きの楊枝を前記袋に一本又は数本刺し込み、この菌糸付きの楊枝を前記殺菌した原木の種付け部に設け、この楊枝付き原木を仮伏せした後、地中又は植木鉢に埋設して本伏せする構成とした無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の栽培方法である。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4の目的を達成すること、また袋内への雑菌の侵入を防止し、無菌状態での培養(菌糸の生成)を意図する。
【0015】
請求項5は、請求項4に記載の栽培方法において、雑菌侵入防止手段を袋に接着し、この雑菌侵入防止手段に楊枝を刺し込んで、当該楊枝を袋に固定かつ密着させる構成とした無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の栽培方法である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明は、通気性を備えた袋に子実体片と数本の楊枝を入れて密封し、子実体片と数本の楊枝を入れた通気性を備えた袋を熱湯の中で処理した後、数日を得て楊枝に菌糸を種付け、菌糸付き楊枝を、雑菌侵入防止テープ・スポンジ等の雑菌侵入防止手段を備えた多数本の楊枝を収容した別の袋に刺し込み、刺し込みを雑菌侵入防止手段より行って、別の袋への雑菌の侵入を防止しながら、別の袋で多数本の楊枝に菌糸を生成する無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法である。
【0017】
従って、請求項1は、略完全無農薬栽培、又は無農薬栽培に対応できる無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法を提供し、菌糸の生成の短縮化を図りつつ、簡易かつ確実な種付けを図って業界又は市井の要望に応え得る特徴がある。また本発明は、この種付け方法の提供を介して昨今の要望に応答できる無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸の提供と、又は健康に役立つ無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸の提供とが図れる特徴がある。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1に記載の雑菌侵入防止手段を介して刺し込むに際し、菌糸付き楊枝を、浄水で略1秒程濯ぐ構成とした無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法である。
【0019】
従って、請求項2は、請求項1の目的を達成できること、また袋内への雑菌の侵入を防止し、無菌状態での培養(菌糸の生成)が図れること等の特徴がある。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1に記載の子実体片と数本の楊枝を入れた袋を熱湯の中で処理する際の処理時間を、略10〜15秒程度とした無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法である。
【0021】
従って、請求項3は、請求項1の目的を達成できること、また子実体片と数本の楊枝を入れた袋の無菌状態を確保できること等の特徴がある。
【0022】
請求項4の発明は、通気性を備えた袋内に種付け部を有する原木を入れ、袋内の空気を排気し、原木を略真空状態に密閉した袋内に設け、原木を袋とともに常圧殺菌し、袋に雑菌侵入防止テープ・スポンジ等の雑菌侵入防止手段を設け、雑菌侵入防止手段を介して、請求項1〜3に記載の種付け方法で得られた菌糸付きの楊枝を袋に一本又は数本刺し込み、菌糸付きの楊枝を殺菌した原木の種付け部に設け、楊枝付き原木を仮伏せした後、地中又は植木鉢に埋設して本伏せする構成とした無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の栽培方法である。
【0023】
従って、請求項4は、略完全無農薬栽培、又は無農薬栽培に対応できる無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法を利用し、昨今の要望に応答できる無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸の提供と、又は健康に役立つ無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸の提供とが図れる特徴がある。また本発明は栽培方法の短縮化、簡便化と汎用化等が図れる実益がある。また本発明は菌糸付きの楊枝の袋への刺し込み本数を適宜変更することで、菌の蔓延期間を早めることができること等の特徴がある。
【0024】
請求項5の発明は、請求項4に記載の栽培方法において、雑菌侵入防止手段を袋に接着し、この雑菌侵入防止手段に楊枝を刺し込んで、当該楊枝を袋に固定かつ密着させる構成とした無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の栽培方法である。
【0025】
従って、請求項5は、請求項4の目的を達成できること、また袋内への雑菌の侵入を防止し、無菌状態での培養(菌糸の生成)が図れること等の特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の一例を説明する。
図1〜図17は袋で多数本の楊枝に菌糸を生成する無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ等の茸種付け方法であり、この方法の好ましい一例を説明する。山野で自生するマンネンタケ(霊芝)を採取する(図1)。このマンネンタケは新鮮で傷がない子実体1であり、この子実体1の汚れ、各種の異物等をペーパー等で落とし、原則として水洗いはしない。何故ならこの水洗いで、雑菌を吸い込む危険性があること、また通常は、子実体1は純粋菌であり、この汚れ、各種の異物等はその表面に付着していることから、前記の落とし作業で十分であり問題はない。この子実体1の一部を適当な大きさにカットし、子実体片2を作る(図2)。そして、他に用意するものは通気性を備えた袋3と、この袋に収容される米糠の養分が付与された殺菌済の串又は楊枝4(市販の楊枝が簡便である)とがある(図3)。そして、袋3から取出した一本又は数本の楊枝4を子実体片2に添接し、輪ゴム、紐等の緊締具5で固止する(図4)。この楊枝4付き子実体片2を通気性のある袋3(厚みが略0.01mmが理想である)に収容し、その後、袋3内の空気を抜き取るとともに、この抜き取った袋3の端を輪ゴム、紐、絞り付け等の緊締手段5a等の緊締具5で結縛する(図5〜図7)。そして、この楊枝4付き子実体片2を収容した袋3を、押さえ器具を利用して熱湯の中に浸漬し、この熱湯の中で楊枝4付き子実体片2を収容した袋3を略10秒〜15秒程度殺菌する(図8、図9)。この殺菌が終了した時点で取出し、楊枝4付き子実体片2の近傍の袋3を捻り密封する。この密封箇所の略1cm程度離して余分の袋30をカットする(図10、図11)。尚、前記熱湯殺菌による略10秒〜15秒程度殺菌による菌の死滅深さは、子実体片2の略3mm程度である。従って、当該子実体片2の略3mm程度以上の内部は生菌であることと、この子実体片2の表面に付着した雑菌は略完全に死滅する(図12)。その後、殺菌済の楊枝4付き子実体片2を収容した袋3を暗所に置き、マンネンタケの培養に対して必要温度27℃〜30℃であるが、この袋3内の子実体片2は生長期であるから自然温度の環境下で培養する。尚、菌糸の生長は前記熱湯殺菌の衝撃で一旦停止するが、常温雰囲気下では生長を始め1〜2日目には子実体片2に菌糸が確認できるとともに、その後、1〜2日目には楊枝4に菌糸が確認できる。この菌糸が確認できたものは菌糸付き楊枝4であって、元菌用楊枝種菌40となる(図12参照)。
【0027】
この元菌用楊枝種菌40を利用し、同種の多数本の楊枝種菌40aを製造する方法を説明すると、適宜の鍋に、鍋底から5cm程度水を入れ、この中に市販の楊枝4を多数本、例えば、500本〜1000本と米糠20gを入れる(図13、図14)。この米糠を入れる理由は、主として、楊枝4の物性が茸の培養に適さない白樺、又はその他の材料であっても、この白樺等の材料に米糠を含滲させることで、この楊枝4を培養に適する物性に変化させることが可能となる。この500本〜1000本の楊枝4と米糠とを入れた鍋を沸騰させた後、略10分間程火に掛け、楊枝4内に米糠の養分が浸透した時点で取出し、新聞紙の上で広げて乾燥する(図15)。この乾燥は湿度を略65%程度確保して行い。この乾燥後、例えば、50本単位で頭を揃えながら輪ゴムで結束し、袋3に入れてこの袋3内の空気を抜き密封しながら、袋3内への雑菌の侵入を防止する(図16、図17)。この空気を抜く方法として簡便な例では、袋3の上方の略2/3を数回(3回程度)捻り上げるように行うことが簡便であること、また袋3内の空気を確実に抜き出すことができること、又は後述する殺菌の際に、袋3内に外気が入らず雑菌による汚染を防止できること等の利点がある(図18)。この空気を抜き出し、捻り上げた50本の楊枝4が収容された袋3を複数枚束ね(一袋の場合もあり得る)、この束ねた上方を輪ゴムで絡げる(図19)。束ねた袋3を鍋の中に収容されている5cm程の水の中に浸漬し、鍋の蓋を閉めた後、沸騰してから略10分程殺菌する(図20)。この殺菌後、束ねた輪ゴムを切り一袋ずつ取出した袋3を捻りながら、この袋3の空気を排除して縛り上げる(図21)。その後、縛り上げた箇所の近傍から余分の袋30をカットする(図22−1)。この袋3に収容された殺菌済み楊枝400が培地6(培地6とする)となる(図22−2)。前記の取出し、カット等の作業を各袋3に対して行い。その後、火を切り、鍋を下ろす。そして、この培地6の適所に一箇所の雑菌侵入防止テープ7・スポンジ等の雑菌侵入防止手段を設ける(図23)。この楊枝入り殺菌袋培地6に雑菌侵入防止テープ7を貼り、子実体片2に添えてある元菌用楊枝種菌40(菌糸感染楊枝)を引き抜き浄水8で略1秒程濯ぎ(この濯ぐ理由は、菌糸感染楊枝が外気に触れると空中に漂う雑菌が直ぐに付着する。これを浄水8で緩め浮遊させることにある)雑菌侵入防止テープ7を通して培地6に刺し込み、これを暗所に7日前後、温度27℃〜30℃で培養することにより楊枝種菌40aが完成する(図24〜図27)。この作業で、楊枝種菌40aが製造できるので、極めて効率的であって、目的とする鹿角霊芝の培養には最適であり、またコストの低廉化、市井への安価な提供に道を開くことになる等の特徴がある。以上の状況は、実施及び/又は培養実験において確認できた。図28は所定の時間(略10秒〜15秒程度)により、この子実体片2の略3mmまで熱湯の処理で殺菌できる範囲であり、この内側は生の菌糸が生殖する範囲であり、この状況を拡大図において示しているが、前記の実施及び/又は培養実験において確認できた。
【0028】
そして、この楊枝種菌40aを刺し込み培養するマンネンタケの原木9として使用できるものは、クヌギ、ナラ、トチ等の硬い素材であり、太さは直径で略15cmで、長さを略13cmとする(図29)。この原木9には略中央に深さ(楊枝種菌40aを刺し込み可能な深さ)及び/又は幅3mm程度の切込み900を胴切り方式で設け、この切込み900を2箇所又は3箇所設ける。また原木9に適宜深さで、直径が略3mm程度の孔(図示せず)を数個開設する。この切込み900及び/又は孔は前記楊枝種菌40a用の刺し込み用の手段である(図30〜図32)。このようにして構成した加工原木9aを、通気性を備えた厚みが略0.03mm〜略0.04mm程度の袋10で隠蔽する(図33)。そして、加工原木9aを覆った袋10内の空気を掃除機等の手段を利用し吸引し、その余分の袋1000を括り(捻り上げ)、その括った余分の袋1000を側面に輪ゴム11で緊締する(図34)。この輪ゴム11で緊締し、袋10で隠蔽した加工原木9aを、蒸し機12(蒸し手段)内に適宜の数を入れ、加工原木9aを常圧の下で蒸し上げながら殺菌する。例えば、略98℃で略5時間殺菌をする(図35)。この蒸し上げた袋10及び加工原木9aを常温で戻すが、この常温に戻す過程において、順次、内蔵する僅かな空気の収縮で袋10が加工原木9aの外周面に密着するが破れることはない(掃除機等の手段を利用し、袋10内の空気を吸引した結果である。図36、図37参照)。この袋10が加工原木9aに密着した状態で、胴切りした箇所に雑菌侵入防止テープ7を貼り付ける。この例では、雑菌侵入防止テープ7は望ましくは、厚みが2mm〜3mm、面積が1.5cm角とすることで、楊枝種菌40aの刺し込み時に雑菌の侵入を略完全に防止できる。次に刺し込み時の雑菌の侵入を防止する一例を説明すると、培地6より引抜いた楊枝種菌40aが空中の雑菌を拾うので、この雑菌を浄水8で略1秒程度濯いで取り除くとともに、前記雑菌侵入防止テープ7から刺し込む際に、この楊枝種菌40aに少なくとも付着する雑菌及び/又は浄水8、塵等を雑菌侵入防止テープ7の弾性圧迫を利用して搾り出し、密封された加工原木9a内への雑菌及び/又は浄水8の侵入を防止する(図40〜図42)。従って、この弾性圧迫を確保する厚み及び/又は面積を備えた雑菌侵入防止テープ7が必要となる。以上のような操作によって、袋10内の加工原木9aには純粋菌糸のみが生殖する。また楊枝種菌40aからの雑菌及び/又は外気の侵入防止を図るために、余分の楊枝40bを切落し、この箇所を油性ボンド、接着剤等でシール13することで、培養原木901が製造できる(図43)。
【0029】
以上の操作を介して複数の培養原木901を段積みにして仮伏せ作業をする。この例では、段積みにして培養原木901の全体をカバー14で隠蔽し、直射日光を防ぎ、かつ略27℃〜略30℃程度の状況下で、略30日〜略40日程度を経過した段階で培養原木901に菌糸が蔓延し、仮伏が終了する。尚、この仮伏では、原則として散水、薬剤等を一切なくして無農薬栽培を行う。
【0030】
本発明の自然温度による鹿角霊芝の栽培は、本状時期を4月中旬頃行う。その作業を説明すると、菌糸が蔓延した培養原木901の袋10を外し、水はけの良い土壌Gに木口面すれすれに埋める。本状込みは直射日光を避けるため寒冷紗を掛けて明3分、暗7分の割合で陰を作る。そして、5月に入ると子実体1の発芽を見る。この時期においては自然温度の変化は激しいが、茎は気温の上昇とともに伸び5月20日を過ぎる頃では、この茎の長さは、普通略6cm〜10cm位である。この頃から茎の先端が平たくなり、傘の様子を見せ始める。この傘の様子を見せ始める以前、茎が4cm〜5cm位生長した頃、断熱材を利用して伏せた株の周りを全て囲い略100%の暗闇にする。この霊芝は暗闇の中では傘を開かず、茎のみが生長を続ける。尚、下部を本状した直後から暗闇にすると子実体1は発芽してそのまま平地を這い続けて不自然な生長をすることが多い。そのため、始めは明3分、暗7分の陰を作り、4cm〜5cm位まで上昇、生長してから暗闇にすると、霊芝は枝分れしながら上昇生長を続ける。1本で生長するものもある。枝分れする霊芝は鹿角霊芝、1本で生長する霊芝を一角霊芝と云う。建屋20(側壁)の高さは60cm以上が好ましい。屋根21は15°程度の勾配を確保し、降った雨水が囲いの中に流入、散水できるように囲い内の天井22にも多少の勾配を作り、各所に孔(図示せず)を設けて散水できるように工夫する。この屋根21は蝶番210により開閉自在とする。そして、例えば、干天時には開いて散水するに便利であり、また霊芝の生長具合を視認できるので重宝する。その後、7月に入ると、外気は、最低気温が25℃で、最高気温が30℃を越す日が多くなり、この建屋20の室温も外気の変化とともに上昇する。そこで、建屋20に断熱材等を付設し、この上昇を緩和する。例えば、この断熱材を活用することで、湿度を略85%〜95%程に保つことができるため、霊芝の生長には適している。そのため7月中の温度の上昇にもかかわらず、順調に生長する。そして、その茎の長さが35cm以上になってから、時期としては8月1日前後を目安として収穫する。この栽培は自宅の庭先又は畑でできる栽培方法である(図44〜図45)。また量産は、この拡大に於いて可能である。
【0031】
また家庭の狭い場所、ベランダ等に於いても、簡易に栽培できる方法がある。例えば、小屋における鹿角霊芝の栽培な方法であり、この植木鉢株は各家庭の日陰での栽培であり、その一例を説明すると、竹ひご、番線等の枠体23を利用して、この枠体23を植木鉢24に立設し、この枠体23にビニール25、毛布、布等を被せて暗闇を作るとともに、その天井の開放部250を紐26で縛り、必要時に開放できる構造とする。この例では自然の温湿度を利用して栽培し、必要によりビニール25を開放して散水する(図46−1、図46−2)。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】霊芝であり本発明の子実体の全体の一例を示した模式図
【図2】子実体片の一例を示した模式図
【図3】多数本の楊枝の一例を示した模式図
【図4】子実体片に輪ゴムで殺菌済の数本の楊枝を添接した状態の一例を示した模式図
【図5】袋に殺菌済の数本の楊枝及び子実体片を収容した状態の一例を示した模式図
【図6】子実体片及び数本の楊枝を収容した袋の空気を抜く状態の一例を示した模式図
【図7】子実体片及び数本の楊枝を収容した袋を縛った(括った)状態の一例を示した模式図
【図8】加熱殺菌する器具(鍋)の一例を示した縮尺模式図
【図9】図8に示した鍋に子実体片及び数本の楊枝を収容した袋を浸漬する状態の一例を示した模式図
【図10】煮沸(熱湯殺菌)した殺菌済の数本の楊枝を収容した殺菌済の袋の一例を示した模式図
【図11】図10に示した袋を捻って密封した後に、余分の袋をカットする状態の一例を示した模式図
【図12】図11に示した袋を捻り密封した後に、余分の袋をカットした状態における元菌用楊枝種菌の一例を示した模式図
【図13】本発明の殺菌済み数本の楊枝を製造するための鍋の一例を示した模式図
【図14】図13に示した鍋の沸騰状態の一例を示した模式図
【図15】殺菌済み数本の楊枝を新聞紙の上で乾燥する状態の一例を示した模式図
【図16】殺菌済み数本の楊枝を輪ゴムで束ねて、この殺菌済み多数本の楊枝でなる培地(培地とする)の一例を示した模式図
【図17】培地を袋内に収容した状態の一例を示した模式図
【図18】培地を収容した袋を捻り上げた状態の一例を示した模式図
【図19】図18で作成した培地を収容した袋を数袋束ねた状態の一例を示した模式図
【図20】図19で束ねた培地を収容した袋を鍋に入れて熱湯殺菌する状態の一例を示した模式図
【図21】図20で熱湯殺菌した培地を収容した袋を鍋より取出した状態の一例を示した模式図
【図22−1】取出した熱湯殺菌した培地を収容した袋の余分な箇所をカットした状態の一例を示した模式図
【図22−2】殺菌済み楊枝でなる培地の一例を示した模式図
【図23】培地に雑菌侵入防止テープを貼り付けた(設けた)状態の一例を示した模式図
【図24】図12の殺菌済の袋を開放し、元菌用の楊枝種菌を取出した一例を示す模式図
【図25】図24で取出した元菌用楊枝種菌を浄水で濯ぐ状態の一例を示した模式図
【図26】図24で濯いだ元菌用楊枝種菌を培地に刺し込む状態の一例を示した模式図
【図27】図24で濯いだ元菌用楊枝種菌を培地に刺し込んだ状態の一例を示した模式図
【図28】子実体片の熱湯処理で雑菌が死滅する領域と、生菌との領域との一例を示した拡大模式図
【図29】原木の一例を示した模式図
【図30】図29で示した原木に鋸等の器具で切込みを入れる状態の一例を示した断面模式図
【図31】原木の数箇所に切込みを入れた状態の一例を示した断面模式図
【図32】原木の三箇所に切込みを入れた状態の一例を示した模式図
【図33】加工原木を袋に収容した状態の一例を示した模式図
【図34】加工原木を袋で覆った状態の一例を示した模式図
【図35】袋で覆った加工原木を蒸し機で蒸し上げる状態の一例を示した模式図
【図36】袋で覆った加工原木が蒸し上がった状態の一例を示した模式図
【図37】袋で覆った加工原木が蒸し上がり、袋が加工原木に密着した状態の一例を示した模式図
【図38】培地の楊枝種菌の一例を示す模式図
【図39】培地の楊枝種菌を取出した状態の一例を示す模式図
【図40】図39により取出した楊枝種菌を浄水で濯ぐ状態の一例を示す模式図
【図41】図40で浄水で濯いだ楊枝種菌を加工原木に貼り付けた雑菌侵入防止テープより刺し込みにかかる状態の一例を示す模式図
【図42】図40で浄水で濯いだ楊枝種菌を加工原木に貼り付けた雑菌侵入防止テープより刺し込んだ状態の一例を示す模式図
【図43】図41で加工原木に楊枝種菌を刺し込み、余分の楊枝を切落しシールし、培養原木ができた状態の一例を示す模式図
【図44】培養原木を段積みしカバーで隠蔽し、仮伏せ作業をする状態の一例を示した模式図
【図45】屋外に設けた建屋で培養原木を本伏せ作業する状態の一例を示した模式図
【図46−1】培養原木をカバーした植木鉢で本伏せ作業する状態の一例を示した模式図
【図46−2】図46−1のカバーを開放した状態の平面図
【符号の説明】
【0033】
1 子実体
2 子実体片
3 袋
30 余分の袋
300 殺菌済み袋
4 楊枝
40 元菌用楊枝種菌
40a 楊枝種菌
40b 余分の楊枝
400 殺菌済み楊枝
5 緊締具
5a 緊締手段
6 培地
7 雑菌侵入防止テープ
8 浄水
9 原木
9a 加工原木
900 切込み
901 培養原木
901a 上面
10 袋
1000 余分の袋
11 輪ゴム
12 蒸し機
13 シール
14 カバー
20 建屋
21 屋根
210 蝶番
22 天井
23 枠体
24 植木鉢
25 ビニール
250 開放部
26 紐
G 土壌
W 鹿角霊芝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を備えた袋に子実体片と数本の楊枝を入れて密封し、この子実体片と数本の楊枝を入れた通気性を備えた袋を熱湯の中で処理した後、数日を得てこの楊枝に菌糸を種付け、この菌糸付き楊枝を、雑菌侵入防止テープ・スポンジ等の雑菌侵入防止手段を備えた多数本の楊枝を収容した別の袋に刺し込み、この刺し込みを前記雑菌侵入防止手段より行って、当該別の袋への雑菌の侵入を防止しながら、この別の袋で多数本の楊枝に菌糸を生成する構成とした無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法。
【請求項2】
請求項1に記載の雑菌侵入防止手段を介して刺し込むに際し、前記菌糸付き楊枝を、浄水で略1秒程濯ぐ構成とした無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法。
【請求項3】
請求項1に記載の子実体片と数本の楊枝を入れた袋を熱湯の中で処理する際の処理時間を、略10〜15秒程度とした無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の茸種付け方法。
【請求項4】
通気性を備えた袋内に種付け部を有する原木を入れ、この袋内の空気を排気し、この原木を略真空状態に密閉した袋内に設け、当該原木を袋とともに常圧殺菌し、この袋に雑菌侵入防止テープ・スポンジ等の雑菌侵入防止手段を設け、この雑菌侵入防止手段を介して、請求項1〜3に記載の種付け方法で得られた菌糸付きの楊枝を前記袋に刺し込み、この菌糸付きの楊枝を前記殺菌した原木の種付け部に設け、この楊枝付き原木を仮伏せした後、地中又は植木鉢に埋設して本伏せする構成とした無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の栽培方法。
【請求項5】
請求項4に記載の栽培方法において、雑菌侵入防止手段を袋に接着し、この雑菌侵入防止手段に楊枝を刺し込んで、当該楊枝を袋に固定かつ密着させる構成とした無農薬による椎茸、シメジ、マンネンタケ、鹿角霊芝等の栽培方法。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22−1】
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【図22−2】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46−1】
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【図46−2】
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【公開番号】特開2006−101749(P2006−101749A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291792(P2004−291792)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(500436891)
【Fターム(参考)】