説明

乗員保護装置

本発明は、乗員保護装置用のエアバッグに関する。本発明の目的は、乗員を最適に保護し、しかも、少ない材料費で経済的に製造可能である乗員保護装置用のエアバッグを提供することである。本発明によれば、この目的は、相互に流れが連通している少なくとも2つの部分エアバッグを有するエアバッグを提供することによって達成される。少なくとも1つの引張装置が、少なくとも2つの部分エアバッグを互いの方向に引張り、同時に張力を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員保護装置用エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグを有する乗員保護装置は、周知のように長年にわたって自動車に使われている。また、車体に対してエアバッグを所定の位置に配置するために、阻止ストラップによってエアバッグを車体に固定することも知られている(DE10129581A1、DE10126322、DE10021577)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、乗員を最適に保護することができ、しかも最小限のコストにて経済的に製造可能である乗員保護装置用エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、本発明に係る請求項1の特徴を有するエアバッグによって実現される。本発明に係るエアバッグの有用な発展形態が従属項に記載されている。
【0005】
本発明に係るエアバッグは、相互に流れが連通している(互いに流体が流通できる)少なくとも2つの部分エアバッグを有し、少なくとも1つの引張装置が、少なくとも2つの部分エアバッグを互いに向かい合う方向へと引張り、相互に固定するように構成されている。
【0006】
本発明に係るエアバッグの大きな利点は、最小限の材料にて、自動車の「問題領域」にも適用可能であるということにある。このことを自動車の前部サイドウィンドウ、ひいては前部ピラー(Aピラー)の領域をカバーすることを企図したエアバッグを一例として説明する。以下に記載する詳細は、後部ピラー(CピラーまたはDピラー)と後部サイドウィンドウにも同様に適用可能である。
【0007】
Aピラー領域においては、基本的に、湾曲した形状を有して延びる上部「ウィンドウコード」(ウィンドウ帯部ともいう。以下においてはウィンドウの上縁部と前部ウィンドウの側縁部とからなるウィンドウの上縁部全体を上部「ウィンドウコード」という)が、対応するウィンドウ下縁部より長いという問題が存する。乗員を保護するべく、エアバッグが窓ガラス全体をカバーすると、エアバッグの下縁部は、上部ルーフ支材とAピラーに固定されているエアバッグの上縁部よりも短くできる。しかし、このようなエアバッグ材料の材料削減は、エアバッグをルーフ支材ピラー及び前部Aピラーの領域に設けられている収容部(エアバッグモジュール、収容コンテナまたは収容チューブ)内に畳んで収納することができない(エアバッグの下縁部が単に短すぎるため)ので不可能である。ルーフ支材及びAピラーに設けられた収容部を有する一部構成のエアバッグを収容部に畳んで収納することができるようにするためには、エアバッグの下縁部の長さを過剰に長くしてエアバッグをカットしなければならない。つまり、ルーフ支材及びAピラーに設けられた収容部を有する一体構成のエアバッグの場合、畳んで収容部に収納することができるようにするには、エアバッグの下縁部は、少なくとも上部「ウィンドウコード」の長さに相当するようにしなくてはならない。しかし、このように過剰に長くすると、材料が無駄に必要となる。エアバッグの下縁部が「過剰に長い」ことには更に別の問題がある。すなわち、エアバッグ材料が過剰であるということは、エアバッグの下縁部の領域においてエアバッグが曲り易い状態、または「内側の張力」がないことを意味する。その結果、エアバッグの下縁部は、事故の際に横方向の力を吸収し難くなり、横風から回転することさえもある。これを避けるために、一体構成のエアバッグは、エアバッグ下縁部の領域、すなわちウィンドウ下縁部近傍において車体に固定しなければならないであろう。
【0008】
本発明に係るエアバッグの場合、少なくとも2つの部分エアバッグに分割されているので、上記のような問題(不必要な材料消費やエアバッグを車体に固定する必要)が生じない。このエアバッグ分割によって、一方の部分エアバッグを、例えば、ウィンドウ上縁部(またはルーフ支材)の長さに合わせ、他方の部分エアバッグを前部ウィンドウ側縁部(またはAピラー)の長さに合わせることが可能になり、エアバッグ材料を「過剰な大きさ」にカットする必要がなくなる。
【0009】
本発明の更なる利点は、本発明に係る複部構成のエアバッグが、部分エアバッグを連結する引張装置によって、一部構成のエアバッグの場合と実質的に同様の内側の安定性と張力を有していることである。すなわち部分エアバッグが、引張装置によって相互に移動不能とされ、あるいは些少しか移動できくなるため、エアバッグを車体に固定する必要がなくなる。
【0010】
要約すると、本発明に係るエアバッグは、「問題ゾーン」において部分エアバッグに分割されていることによって、一部構成のエアバッグ(複数の部分的エアバッグを有さない一体構成のエアバッグ)よりも材料を節約でき、内側の安定性と張力の損失がなく、更に固定の必要性が生じない。
【0011】
本発明に係るエアバッグにおいては、引張装置を引張ケーブルによって簡単かつ有用に構成することが可能である。引張ケーブルの一方の端部が、2つの部分エアバッグ間の連結部でエアバッグに固定され、他方の端部が、2つの部分エアバッグのうちの一方の連結部とは反対側の端部に固定され、他方の部分エアバッグが、引張ケーブルに直接的または間接的に連結されている。このような構成を有する本発明に係るエアバッグにおいて、引張装置は、実質的に2つの部分エアバッグのうちの一方の上に設けられた1本の引張ケーブルによって構成されている。
【0012】
この場合、引張ケーブルを他方の部分エアバッグと固定するには、引張ケーブルが引張されるガイドによって行うのが好ましい。この種のガイドは、他方の部分エアバッグの気密開口部によって特に簡単で有利に構成すること可能である。
【0013】
あるいはガイドは、他方の部分エアバッグに直接的または間接的に固定されているループによって構成することも可能である。
【0014】
上記したように、本発明に係るエアバッグは、自動車の「問題ゾーン」に有利に用いることが可能である。問題ゾーンは例えば自動車の前部及び後部ピラーであるから、エアバッグが、Aピラーおよび/またはCピラー(またはDピラー)領域で用いられる頭部側エアバッグによって構成するのが有利である。
【0015】
頭部側エアバッグにて構成される場合、自動車のサイドウィンドウ及び全側面をエアバッグでカバーして乗員を最適に保護するため、一方の部分エアバッグが前部又は後部ピラーの領域に未膨張の状態で(直接的または間接的に)固定可能であり、他方の部分エアバッグが、自動車のルーフ支材の領域に固定可能であることが好ましい。一方の部分エアバッグが、膨張状態で、前部(または後部ピラー)に沿って略平行に広がり、他方の部分エアバッグがルーフ支材から略垂直方向下方に広がることが好ましい。
【0016】
自動車の全側面をカバーするには、エアバッグが、少なくとも3つの部分エアバッグを有し、そのうちの第1の部分エアバッグが前部ピラーの領域に固定され、第2の部分エアバッグがルーフ支材の領域に固定され、第3の部分エアバッグが後部ピラーの領域に固定されていることが好ましい。この種の部分エアバッグの場合、自動車のAピラーの領域の前部「問題ゾーン」もCピラーの領域の後部「問題ゾーン」も三部構成のエアバッグ1つでカバーされる。
【0017】
3つの部分エアバッグを有するエアバッグの場合、少なくとも2つの引張装置が設けられ、車体前部に設けられた第1の引張装置が第1及び第2の部分エアバッグを相互に固定し、第2の引張装置が第2及び第3の部分エアバッグを相互に固定することが好ましい。2つの引張装置によって、適宜に、3つの部分エアバッグが相互に連結され、位置決めされる。
【0018】
エアバッグが、エアバッグの中央部で引張装置によって相互に固定された2つの部分エアバッグを有する場合、自動車の全側面をカバーすることが可能である。エアバッグの中央部が、自動車の中央ピラー、特にBピラー領域に配置されていることが好ましい。引張装置が、自動車の上部ベルト偏向装置の領域に配置されていると、ベルト装置、特に上部ベルト偏向装置が、事故の際にエアバッグの展開を妨げないよう容易に設定できる。
【0019】
引張装置が、エアバッグによる要保護領域以外の箇所に配置されていることが好ましい。
【0020】
ガスが充填され、自動車のサイドウィンドウから身体部が投げ出され、あるいは物が外に落ちるのを効果的に防止することが可能な保護エアバッグが、引張装置の領域に設けられていないので、エアバッグは、引張装置の少なくとも一方の領域に布製帆材を有すると有利である。布製帆材は、協働する引張装置によって構成されるエアバッグ領域の「窓」(保護の隙間)を被覆するためのものである。
【0021】
布製帆材は略三角形とされ、および/又は、対応する引張装置によって固定されていることが好ましい。
【0022】
また、エアバッグが更に布製帆材を有すると有利である。更なる布製帆材は、乗員の保護のための「ガスの充填」を必要としない箇所に設けられることが好ましく、例えば、身体部が「外に出る」または「投げ出される」ことがないようにするために、ウィンドウ部の遮蔽のみを行うものである。
【0023】
また、エアバッグが、自動車のサイドウィンドウの少なくとも1つの下縁部に支持部材を有し、事故の際にエアバッグがサイドウィンドウ領域内で偏ることが防止されているように構成するのが好ましい。
【0024】
事故の際には、「ウィンドウコード」の上部を必ずしもカバーする必要がないので、材料削減およびエアバッグの固定性向上のため、当該「ウィンドウコード」は少なくとも部分的に開いたままになっているか、あるいはエアバッグが存在しない状態とされている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1には、非膨張状態のエアバッグ10(頭部側エアバッグ)が示されている。エアバッグ10は、部分エアバッグ20(第1部分エアバッグあるいはエアバッグ第1部分)と部分エアバッグ30(第2部分エアバッグあるいはエアバッグ第2部分)を有する。2つの部分エアバッグ20,30は、連結部(連結領域)40で相互に連結され、流れが連通している。
【0026】
引張ケーブル50が、第1部分エアバッグ20に固定されている。この場合、引張ケーブル50の一方の端部60は、例えば、2つの部分エアバッグ20,30間の連結部40でエアバッグ10に縫付または接着されている。引張ケーブル50の他方の端部70は、第1部分エアバッグ20の連結部40とは反対側の端部に固定されている。
【0027】
引張ケーブル50は、連結ケーブル90を介して第2部分エアバッグ30に連結されているループ80により、引張される。連結ケーブル90は、第2部分エアバッグ30の連結部40とは反対側の端部に取り付けられている。
【0028】
図1では、第2部分エアバッグ30は、部分的に折り畳まれている。矢印100は、第2部分エアバッグ30が例えばジグザグ状に折り畳まれ、部分エアバッグパッケージ110が形成された状態を示す。エアバッグ10には、固定ループ120a,120b,120cが設けられ、エアバッグ10を車体に固定することが可能である。
【0029】
図2には、図1によるエアバッグ10が自動車に装着された状態が示されている。符号200は、自動車の前部サイドウィンドウを示している。ガラス窓200は、湾曲した輪郭の上部「ウィンドウコード(ウィンドウ帯部)」を有し、上部ウィンドウコードは、上部ルーフ支材210に隣接するウィンドウ上縁部220と、Aピラー230に隣接する前部ウィンドウ側縁部240とを有する。上部ウィンドウコードは、ほぼ水平に延びるウィンドウ下縁部250に隣接する。
【0030】
図2に示されるように、ウィンドウコードは、ウィンドウ下縁部250より相当程度長く構成されている。ルーフ支材210とAピラー230の領域に構成される収容スペース(エアバッグモジュール、収容コンテナまたは収容チューブ)に一体構造のエアバッグを収容しようとすると、エアバッグの下縁部は、ウィンドウ下縁部250よりかなり長くなくてはならない。さもなければ、エアバッグの下縁部が短すぎることになる。従って、一体構造のエアバッグの場合、折り畳んで収容スペースに収めることを可能とするには、エアバッグの下縁部の長さを相当に長く、少なくとも「ウィンドウコード」の長さにする必要がある。最初に述べたように、エアバッグの下縁部は、エアバッグに要求される内部安定性と張力を実現するべく、例えば車体に固定することによって張設する必要が生じてくる。
【0031】
この問題は、図2による実施形態の場合、異なる手法で解決される。つまり、エアバッグ10が、2つの部分エアバッグ20,30に分割されている。この場合、第1部分エアバッグ20は、ほぼAピラー230全体に沿って車体に直接、正確には2つの固定ループ120b,120cを介することで固定される。第2部分エアバッグ30は、2つの固定ループ120a,120bを介して上縁部が直接ルーフ支材210に取り付けられる。勿論、エアバッグ10を固定するために3つ以上の固定ループを用いることも可能である。
【0032】
図2には、既に膨張した状態の第1部分エアバッグ20と、まだ膨張していない状態の第2部分エアバッグ30が示されている。矢印300は、第2部分エアバッグ30または部分エアバッグパッケージ(エアバッグのパッケージ部分)110の膨張方向を示す。例えば、エアバッグ10は、第1部分エアバッグ20が、実質的に最初に展開し、次いで第2部分エアバッグ30が膨張する。
【0033】
ループ80は、部分エアバッグパッケージ110の膨張時に、引張ケーブル50に沿って下方に動き、その過程で、2つの部分エアバッグ20,30をそれぞれ互いの方向に引張る。その結果、2つの部分エアバッグ20,30は、相互に固定される。完全に膨張したエアバッグ10が、固定状態として図3に示されている。図から理解されるように、第1部分エアバッグ20が、自動車のAピラー230領域に固定され、引張ケーブル50によって第2部分エアバッグ30に固定されている。第2部分エアバッグ30は、上端部分がルーフ支材210に連結され、下端部分が連結ケーブル90とループ80を介して引張ケーブル50と第2部分エアバッグ30に固定されている。
【0034】
また、図3に示されているように、「窓」255が、エアバッグ10の引張ケーブル50とループ80の領域に形成される。この「窓」は、例えば布製帆材によって被覆または閉鎖することが可能である(図8〜10に示す第3実施形態を参照)。
【0035】
すなわち、エアバッグ10を2つの部分エアバッグ20,30に区分化することによって、エアバッグの固定作用を最大限のものにするとともに、エアバッグに必要な材料を最小限としつつ、窓ガラス200を最適に被覆することが可能となる。すなわち、エアバッグ10においては、エアバッグを2つの部分エアバッグ20,30に区分化しているため、ウィンドウ下縁部250の領域におけるエアバッグ10の長さを過剰に長くする必要がない。また、引張ケーブル50とループ80と連結ケーブル90によって形成される「内側」引張装置によって、エアバッグ10は、実質的に、細いエアバッグ縁部の領域で固定され、曲がりにくいように引張されている。
【0036】
完璧を期すために、エアバッグ10は、自動車の前部Aピラーの領域においてだけでなく、後部ピラー(Cピラー、Dピラー)の領域においても同様に区分化が可能であり、同様の部分エアバッグを備えることが可能である。エアバッグ10は、例えば、3つの部分エアバッグを有することができ、そのうち1つが前部Aピラーに、もう1つが後部Cピラーに割り当てられてもよい。これらの部分エアバッグは同様の引張装置によって相互に連結されることができる。
【0037】
また、図1〜3のエアバッグ10は、更に、別の引張装置によって車体に固定することも可能である。エアバッグを車体に固定する引張装置は、例えば、冒頭に記載したドイツ公開特許10129581に記載されている。エアバッグ10をルーフ支材210及び/又はAピラー230に直接固定する代わりに、例えば、上記のドイツ公開特許に記載されている「車体の固定装置」によって間接的に固定してもよい。
【0038】
図4〜6は、本発明に係るエアバッグの第2の実施形態を示している。
図4には、折り畳まれる前のエアバッグ400が示されている。エアバッグ400は、エアバッグ400の中央部で引張装置によって相互に固定された2つの部分エアバッグ410,420を有する。この引張装置は、部分エアバッグ420に取り付けられている引張ケーブル430と、部分エアバッグ410に取り付けられているスライドループ440とによって構成されている。図4の場合、スライドループ440は、まだ「空いている」ので、引張ケーブル430に摺動状に取付可能である。
【0039】
図4における符号445は、エアバッグ400がジグザグ状(蛇腹状)に折り畳まれる際の折り畳み線を示す。更に、エアバッグ400は、エアバッグ400を車体に固定することができる固定ループ450a,450b,450cを有する。
【0040】
図5には、ジグザグ状に折り畳まれた折り畳み後のエアバッグ400が示されている。図から分かるように、スライドループ440は、引張ケーブル430に嵌合されるか、または、引張ケーブル430上を摺動状に固定される。
【0041】
図6には、自動車への装着時のエアバッグ400が示されている。固定ループ450bは、自動車のBピラー500領域においてルーフ支材510に固定される。固定ループ450cは、前部Aピラー520に取り付けられ、固定ループ450aは、後部Cピラー530に取り付けられる。エアバッグ400は、Cピラー530からAピラー520にかけて渡された「湾曲した」形状を有するエアバッグモジュール540に収容されている。
【0042】
図7には、展開した状態のエアバッグ400が示されている。引張ケーブル430とループ440によって構成された固定装置は、Bピラー500の領域、正確には、シートベルトの上部ベルト偏向装置550の領域に位置している。
【0043】
部分エアバッグ420は、前部サイドウィンドウ560を覆い、部分エアバッグ410は、後部サイドウィンドウ570を覆う。しかしこれらの被覆は完全なものではなく、乗員の保護に必要な部分に限定されている。後部ウィンドウコード600領域、および前部ウィンドウコード610領域には、「開いた」ままで、エアバッグによってカバーされていない部分620,630がある。また、2つのサイドウィンドウ560,570の下縁部660,670と2つの部分エアバッグ410,420の下縁部との間にも開いたままの隙間がある。
【0044】
図8〜10は、本発明によるエアバッグ800の第3の実施形態を示している。
図8には、折り畳まれる前のエアバッグ800が示されている。エアバッグ800は、当該エアバッグ800を車体に固定するための固定ループ810a,810b,810cを有する。引張ケーブル820が部分エアバッグ830に取り付けられ、スライドループ840が部分エアバッグ850に取り付けられている。部分エアバッグ830には、布製帆材855が隣接して設けられている。帆材855には、エアバッグ800の膨張時にガスが充填されない。図10と併せて、以下の説明から明らかとされるが、帆材855は、事故の際に、身体部分または物体が自動車のサイドウィンドウ900から投げ出されないようにするためのものである。
【0045】
図9には、自動車への装着時のエアバッグ800が示されている。固定ループ810aは、自動車のBピラー860の領域でルーフ支材870に固定される。固定ループ810bは、ルーフ支材から前部Aピラー880への移行箇所に取り付けられ、固定ループ810cは、前部Aピラー880に取り付けられる。エアバッグ800は、Bピラー860からAピラー880にかけて渡された「湾曲した」形状を有するエアバッグモジュールに収容されている。
【0046】
更に、スライドループ840が、引張ケーブル820に嵌合されるか、または、引張ケーブル820上を摺動状に固定される。布製帆材855は、固定ポイント890で引張ケーブル820に固定される。この固定ポイント890も、摺動状に構成されていてもよい。
【0047】
図10には、展開した状態のエアバッグが示されている。引張ケーブル820とループ840によって構成された固定装置が、2つの部分エアバッグ830,850を共に引張って相互に固定する。この過程において、布製帆材855にも同様に張力が加わるため、サイドウィンドウ900が被覆または遮蔽され、事故の際に身体部分などがサイドウィンドウ900から投げ出されるといった事態が生じない。布製帆材855によって、図3に示す第1実施形態の場合と同様に(符号255参照)、エアバッグ領域に「窓」ができることはない。
【0048】
さらにスライドループ840の代わりに、リング等を用いることも可能である。この場合、リング等と張ケーブル820との間の摩擦が極力小さく設定されるという点のみが重要である。同じことが図1〜7に示す第1実施形態および第2実施形態にも当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るエアバッグの一実施形態を示す図であり、自動車に装着する前の未膨張の状態を示す。
【図2】図1に示すエアバッグが自動車に装着された後で、一部膨張した状態を示す。
【図3】図1及び図2に係るエアバッグが完全に膨張した状態を示す。
【図4】本発明に係るエアバッグの第2の実施形態を示す図であり、エアバッグが折り畳まれる前の状態を示す。
【図5】図4によるエアバッグの自動車に装着前の折り畳まれた状態を示す。
【図6】図4及び図5に係るエアバッグが自動車に装着された際の状態を示す。
【図7】図6に係るエアバッグが膨張した状態を示す。
【図8】本発明に係るエアバッグにつき、布製帆材を有する第3の実施形態を示す図である(エアバッグが折り畳まれる前の状態)。
【図9】図8に係るエアバッグが自動車に装着された後の状態を示す。
【図10】図9に係るエアバッグが展開した状態を示す。
【符号の説明】
【0050】
10 エアバッグ
20 第1部分エアバッグ
30 第2部分エアバッグ
40 連結部
50 引張ケーブル
60 一方の端部
70 他方の端部
80 ループ
90 連結ケーブル
100 矢印
110 部分エアバッグパッケージ
120a,120b,120c 固定ループ
200 窓ガラス
210 ルーフ支材
220 ウィンドウ上縁部
230 Aピラー
240 前部ウィンドウ側縁部
250 ウィンドウ下縁部
300 矢印
400 エアバッグ
410 部分エアバッグ
420 部分エアバッグ
430 引張ケーブル
440 スライドループ
450a,450b,450c 固定ループ
445 折り畳み線
500 Bピラー
510 ルーフ支材
520 Aピラー
530 Cピラー
540 エアバッグモジュール
550 ベルト偏向装置
560 前部サイドウィンドウ
570 後部サイドウィンドウ
600 後部ウィンドウコード
610 前部ウィンドウコード
620 開いたままの部分
630 開いたままの部分
660 下縁部
670 下縁部
800 エアバッグ
810a,810b,810c 固定ループ
820 引張ケーブル
830 部分エアバッグ
840 スライドループ
850 部分エアバッグ
855 布製帆材
860 Bピラー
870 ルーフ支材
880 Aピラー
890 固定ポイント
900 サイドウィンドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に流れが連通した状態の少なくとも2つの部分エアバッグ(20,30)を有し、少なくとも1つの引張装置が、前記少なくとも2つの部分エアバッグを互いに向かい合う方向へと引張り、相互に固定することを特徴とする乗員保護装置用のエアバッグ(10)。
【請求項2】
前記引張装置が引張ケーブル(50)を有し、
当該引張ケーブル(50)の一方の端部(60)が、前記2つの部分エアバッグ(20,30)間の連結部(40)にてエアバッグ(10)に固定され、
他方の端部(70)が、前記2つの部分エアバッグのうちの一方(20)の連結部(40)とは反対側の端部に固定され、
他方の部分エアバッグ(30)が、前記引張ケーブル(50)に対し、直接または間接的に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
前記他方の部分エアバッグ(30)が、前記引張ケーブル(50)が引張されるガイド(80)を有することを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ。
【請求項4】
前記ガイドが、前記他方の部分エアバッグ(30)の気密状の開口部によって構成されていることを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項5】
前記ガイドが、前記他方の部分エアバッグ(30)に固定されているループ(80)によって構成されていることを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項6】
前記エアバッグが頭部側エアバッグであることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載のエアバッグ。
【請求項7】
前記一方の部分エアバッグ(20)が前部及び後部ピラー領域に固定され、前記他方の部分エアバッグ(30)が、自動車のルーフ支材(210)領域に固定されていることを特徴とする請求項6に記載のエアバッグ。
【請求項8】
前記部分エアバッグ(20,30)は、膨張状態において、前記一方の部分エアバッグ(20)が前部または後部ピラー(230)に沿って広がり、前記他方の部分エアバッグ(30)が前記ルーフ支材(210)から略垂直方向下方に広がるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載のエアバッグ。
【請求項9】
前記エアバッグ(10)が、少なくとも3つの部分エアバッグを有し、そのうちの第1の部分エアバッグが前記前部ピラー領域に固定され、第2の部分エアバッグが前記ルーフ支材領域に固定され、第3の部分エアバッグが前記後部ピラー領域に固定されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のエアバッグ。
【請求項10】
2つの引張装置が設けられており、
車体前部に設けられた第1の引張装置が、前記第1及び第2の部分エアバッグを相互に固定し、
第2の引張装置が、前記第2および第3の部分エアバッグを相互に固定することを特徴とする請求項9に記載のエアバッグ。
【請求項11】
エアバッグ(400)が、エアバッグ(400)の中央部において、引張装置(430,440)によって相互に固定された2つの部分エアバッグ(410,420)を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のエアバッグ。
【請求項12】
前記エアバッグの中央部が、自動車の中央ピラー、特に、Bピラー(500)の領域に配置されていることを特徴とする請求項11に記載のエアバッグ。
【請求項13】
前記引張装置が、自動車の上部ベルト偏向装置(550)領域に配置されていることを特徴とする請求項11又は12に記載のエアバッグ。
【請求項14】
前記引張装置が、前記エアバッグによる保護必要領域以外の箇所に配置されていることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載のエアバッグ。
【請求項15】
エアバッグ(800)が、少なくとも1つの引張装置領域に布製帆材(855)を有することを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載のエアバッグ。
【請求項16】
前記布製帆材(855)が、対応する引張装置(820,840)によって構成されるエアバッグ領域の窓(255)を被覆することを特徴とする請求項15に記載のエアバッグ。
【請求項17】
前記布製帆材(855)が略三角形であることを特徴とする請求項15に記載のエアバッグ。
【請求項18】
各布製帆材(855)が、対応する引張装置(820,840,890)によって固定されることを特徴とする請求項15,16又は17に記載のエアバッグ。
【請求項19】
更に布製帆材を有することを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載のエアバッグ。
【請求項20】
前記エアバッグ(800)が、自動車のサイドウィンドウ(560,570)の下縁部(660,670)のうちの少なくとも一方に、少なくとも1つの支持部材を有し、事故の際に、当該支持部材によって、前記エアバッグがサイドウィンドウ領域内で偏ることが防止されていることを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載のエアバッグ。
【請求項21】
自動車のサイドウィンドウ(560,570)のウィンドウコード(610,600)が部分的に開いたままになっていることを特徴とする請求項1から20のいずれかに記載のエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−517166(P2006−517166A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501478(P2006−501478)
【出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【国際出願番号】PCT/DE2004/000131
【国際公開番号】WO2004/069609
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000108591)TKJ株式会社 (111)
【Fターム(参考)】