説明

乗用型田植機における施肥ポンプの配置及び配管構造

【課題】側条用施肥ポンプの良好なメンテナンス性を維持しつつ、左右の施肥タンク内の流動性肥料を均等に消費できるようにして、流動性肥料の補給サイクルを可及的に長くするとともに、機体の左右バランスを良好に保つ。
【解決手段】走行機体1の左右両側に施肥タンク7L、7Rを備える乗用型田植機において、施肥タンク7L、7R内の流動性肥料を複数の側条用施肥ノズル8Aに送る側条用施肥ポンプ9Aを備え、左右いずれか一方の施肥タンク7Rの下方に全条分の側条用施肥ポンプ9Aを並列状に配置すると共に、左右の施肥タンク7L、7Rを連結する連結管10の中央分岐部から側条用施肥ポンプ9Aに配管する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の左右両側に施肥タンクを備えた乗用型田植機における施肥ポンプの配置及び配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
機体の左右両側に施肥タンクを備え、施肥タンク内の流動性肥料を施肥ノズルから土中に施す乗用型田植機が知られている。例えば、特許文献1に示される乗用型田植機は、施肥タンク内の流動性肥料を複数の側条用施肥ノズルに送る側条用施肥ポンプと、施肥タンク内の流動性肥料を複数の深層用施肥ノズルに送る深層用施肥ポンプとを備えており、苗植付作業と同時に、側条と深層の二段に施肥を行うように構成されている。
【0003】
また、特許文献1に示される乗用型田植機では、左右いずれか一方の施肥タンクの下方に側条用施肥ポンプを配置し、他方の施肥タンクの下方に深層用施肥ポンプを配置しているので、機体の側部から施肥ポンプを容易にメンテナンスできるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−82507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示される乗用型田植機では、一方の施肥タンク内の流動性肥料を側条施肥に用い、他方の施肥タンク内の流動性肥料を深層施肥に用いるので、側条施肥と深層施肥の施肥量の違いから、左右の施肥タンク内の流動性肥料が均等に消費されず、いわゆる片減りが発生するという問題がある。そして、片減りが発生すると、流動性肥料の補給サイクルが短くなるだけでなく、機体の左右バランスを崩す惧れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、機体の左右両側に施肥タンクを備える乗用型田植機において、前記施肥タンク内の流動性肥料を複数の側条用施肥ノズルに送る側条用施肥ポンプを備え、左右いずれか一方の施肥タンクの下方に全条分の側条用施肥ポンプを並列状に配置すると共に、左右の施肥タンクを連結する連結管の中央分岐部から側条用施肥ポンプに配管したことを特徴とする。
また、請求項2の発明は、前記施肥タンク内の流動性肥料を複数の深層用施肥ノズルに送る深層用施肥ポンプを備え、左右いずれか他方の施肥タンクの下方に全条分の深層用施肥ポンプを並列状に配置すると共に、左右の施肥タンクを連結する連結管の中央分岐部から深層用施肥ポンプに配管したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明とすることにより、側条用施肥ポンプの良好なメンテナンス性を維持しつつ、左右の施肥タンク内の流動性肥料を均等に消費できるので、流動性肥料の補給サイクルを可及的に長くできるだけでなく、機体の左右バランスを良好に保つことができる。
また、請求項2の発明とすることにより、側条用施肥ポンプ及び深層用施肥ポンプを備える乗用型田植機においても、施肥ポンプの良好なメンテナンス性を維持しつつ、左右の施肥タンク内の流動性肥料を均等に消費することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】乗用型田植機の側面図である。
【図2】乗用型田植機の平面図である。
【図3】施肥ポンプの配置及び配管構成を示す正面図である。
【図4】施肥ポンプの配置及び配管構成を左上前方から見た斜視図である。
【図5】施肥ポンプの配置及び配管構成を右下後方から見た斜視図である。
【図6】施肥ポンプの配置及び配管構成の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1は乗用型田植機の走行機体であって、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付作業機3が連結されている。植付作業機3には、前高後低状に傾斜した苗載台4が設けられ、ここに複数のマット苗が左右並列状に載置される。苗載台4に載置されたマット苗は、苗載台4の傾斜や縦送り機構5の送り作用により苗載台4の下端部まで移送される。苗載台4の下端部近傍には、植付爪を備える植付機構6が設けられており、この植付機構6によってマット苗が分離され、圃場に植え付けられる。
【0010】
図1〜図5に示すように、本発明に係る乗用型田植機には、施肥装置が設けられている。施肥装置は、走行機体1側に設けられる施肥タンク7と、植付作業機3側に設けられる施肥ノズル8と、施肥タンク7内の流動性肥料を施肥ノズル8に送る施肥ポンプ9と、施肥ポンプ9から施肥ノズル8に至る肥料送り経路で肥料の詰まりを検知する詰まり検知部Kとを備えて構成されている。施肥タンク7は、2つ備えており、機体前部の左右両側に振分け状に配置されている。
【0011】
本実施形態の乗用型田植機は、2種類の施肥を同時に行うように構成されている。一方の施肥は、植付条の側方に沿い、土中の比較的浅い層に流動性肥料を吐出する側条施肥であり、他方の施肥は、2列の植付条の中間位置で、土中の比較的深い層に流動性肥料を吐出する深層施肥である。そのため、乗用型田植機は、側条用施肥ノズル8Aと深層用施肥ノズル8Bを別個に備えると共に、側条用施肥ポンプ9Aと深層用施肥ポンプ9Bも別個に備えている。深層用施肥ノズル8Bは、側条用施肥ノズル8Aよりも長尺に形成され、先端の吐出口を側条用施肥ノズル8Aよりも深い位置にセットして施肥作業を行う。尚、図1は、格納姿勢の側条用施肥ノズル8A及び深層用施肥ノズル8Bを示している。
【0012】
次に、本発明の特徴である施肥ポンプ9A、9Bの配置及び配管構造について、図3〜図6を参照して説明する。
【0013】
各施肥ポンプ9A、9Bは、それぞれ、施肥条数分(例えば、側条施肥6条分、深層施肥3条分)の定容量ポンプを並列状に組み込んでユニット化されており、図示しないトランスミッションから入力軸9aに入力される動力でポンプ駆動する。また、各施肥ポンプ9A、9Bは、ぞれぞれ、変速機構9bを備えており、各変速機構9bの変速操作にもとづいて、側条施肥量と深層施肥量を別個に調節することができる。
【0014】
側条用施肥ポンプ9Aは、左右いずれか一方の施肥タンク7Rの下方に全条分が並列状に配置され、深層用施肥ポンプ9Bは、他方の施肥タンク7Lの下方に全条分が並列状に配置される。このようにすると、走行機体1の側部から各施肥ポンプ9A、9Bを容易にメンテナンスでき、しかも、各施肥ポンプ9A、9Bが個別に変速機構9bを備えるので、両施肥ポンプ9A、9B間に動力伝動経路を構成することなく、トランスミッションから左右にポンプ駆動軸(図示せず)を突出するだけで、両施肥ポンプ9A、9Bを駆動させることが可能になる。
【0015】
左右の施肥タンク7L、7Rは、連結管10を介して互いに連結されている。連結管10は、左側の施肥タンク7Lに接続される左側連結管10Lと、右側の施肥タンク7Rに接続される右側連結管10Rと、左右の連結管10L、10R同士を連結する中央分岐ユニット(中央分岐部)11とを備えて構成されている。中央分岐ユニット11は、各連結管10L、10Rが接続される2つの入口11aと、それらの合流部から分岐される2つの出口11bとを備えており、一方の出口11bは、ホース12を介して側条用施肥ポンプ9Aに接続され、他方の出口11bは、ホース13を介して深層用施肥ポンプ9Bに接続される。尚、図中の符号14は、各施肥ポンプ9A、9Bから後方へ配管される施肥条数分の施肥管、符号15は、施肥ポンプ9A、9Bの洗浄時などに使用されるドレンホース、符号16は、不使用時にドレンホース15を支持するドレンホース支持具である。
【0016】
つまり、走行機体1の左右両側に施肥タンク7L、7Rを備える乗用型田植機において、施肥タンク7L、7R内の流動性肥料を複数の側条用施肥ノズル8Aに送る側条用施肥ポンプ9Aと、施肥タンク7L、7R内の流動性肥料を複数の深層用施肥ノズル8Bに送る深層用施肥ポンプ9Bとを備え、左右いずれか一方の施肥タンク7Rの下方に全条分の側条用施肥ポンプ9Aを並列状に配置すると共に、左右の施肥タンク7L、7Rを連結する連結管10の中央分岐部から側条用施肥ポンプ9Aに配管し、さらに、左右いずれか他方の施肥タンク7Lの下方に全条分の深層用施肥ポンプ9Bを並列状に配置すると共に、連結管10の中央分岐部から深層用施肥ポンプ9Bに配管したので、両施肥ポンプ9A、9Bの良好なメンテナンス性を維持しつつ、左右の施肥タンク7L、7R内の流動性肥料を均等に消費することができる。その結果、施肥タンク7L、7R内における流動性肥料の片減りを防止し、流動性肥料の補給サイクルを可及的に長くできるだけでなく、機体の左右バランスを良好に保つことができる。
【0017】
以上、側条用施肥ポンプ9A及び深層用施肥ポンプ9Bを備える乗用型田植機を例示して本発明の実施形態を説明したが、本実施形態の配管構造は、深層用施肥ポンプ9Bの有無などに応じて柔軟に変更することができる。例えば、深層用施肥ポンプ9Bを設けない仕様の乗用型田植機では、図6に示すように、ホース13を省き、中央分岐ユニット11の出口11bをキャップ17で塞ぐ。
【0018】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、走行機体1の左右両側に施肥タンク7L、7Rを備える乗用型田植機において、施肥タンク7L、7R内の流動性肥料を複数の側条用施肥ノズル8Aに送る側条用施肥ポンプ9Aを備え、左右いずれか一方の施肥タンク7Rの下方に全条分の側条用施肥ポンプ9Aを並列状に配置すると共に、左右の施肥タンク7L、7Rを連結する連結管10の中央分岐部から側条用施肥ポンプ9Aに配管したので、側条用施肥ポンプ9Aの良好なメンテナンス性を維持しつつ、左右の施肥タンク7L、7R内の流動性肥料を均等に消費でき、その結果、流動性肥料の補給サイクルを可及的に長くできるだけでなく、機体の左右バランスを良好に保つことができる。
【0019】
また、本実施形態の乗用型田植機は、施肥タンク7L、7R内の流動性肥料を複数の深層用施肥ノズル8Bに送る深層用施肥ポンプ9Bを備え、左右いずれか他方の施肥タンク7Lの下方に全条分の深層用施肥ポンプ9Bを並列状に配置すると共に、左右の施肥タンク7L、7Rを連結する連結管10の中央分岐部から深層用施肥ポンプ9Bに配管したので、側条用施肥ポンプ9A及び深層用施肥ポンプ9Bを備える乗用型田植機においても、施肥ポンプ9A、9Bの良好なメンテナンス性を維持しつつ、左右の施肥タンク7L、7R内の流動性肥料を均等に消費することができる。
【0020】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、特許請求の範囲内で任意の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0021】
1 走行機体
3 植付作業機
7L 左側施肥タンク
7R 右側施肥タンク
8A 側条用施肥ノズル
8B 深層用施肥ノズル
9A 側条用施肥ポンプ
9B 深層用施肥ポンプ
10 連結管
11 中央分岐ユニット
12 ホース
13 ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の左右両側に施肥タンクを備える乗用型田植機において、前記施肥タンク内の流動性肥料を複数の側条用施肥ノズルに送る側条用施肥ポンプを備え、左右いずれか一方の施肥タンクの下方に全条分の側条用施肥ポンプを並列状に配置すると共に、左右の施肥タンクを連結する連結管の中央分岐部から側条用施肥ポンプに配管したことを特徴とする乗用型田植機における施肥ポンプの配置及び配管構造。
【請求項2】
前記施肥タンク内の流動性肥料を複数の深層用施肥ノズルに送る深層用施肥ポンプを備え、左右いずれか他方の施肥タンクの下方に全条分の深層用施肥ポンプを並列状に配置すると共に、左右の施肥タンクを連結する連結管の中央分岐部から深層用施肥ポンプに配管したことを特徴とする請求項1記載の乗用型田植機における施肥ポンプの配置及び配管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−172313(P2010−172313A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21211(P2009−21211)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】