乗用型苗植機
【課題】 走行車両の後部に昇降用リンク装置を介して苗植装置を装着し、該苗植装置を苗載台と苗植付具とフロートとを備えて構成した乗用型苗植機において、左右に各々設けた線引きマーカにより圃場の泥面上にはっきりとしたマークを施して、次工程で容易に機体を直進走行させることができると共に、線引きマーカの収納で前後にスペースをあまり要さず、機体の前後長の短縮化を図ることを課題とする。
【解決手段】 剛体のマーカチューブ(80a)と、該マーカチューブ(80a)の先端に取り付けた弾性体のマーカアーム(80b)と、該マーカアーム(80b)の先端部に設けた線引き体(80b2)とを備える線引きマーカ(80)を機体の左右に各々設け、苗載台(43)の上端部近傍に設けた回動支点(80b1)回りにマーカアーム(80b)を回動可能に設けた。
【解決手段】 剛体のマーカチューブ(80a)と、該マーカチューブ(80a)の先端に取り付けた弾性体のマーカアーム(80b)と、該マーカアーム(80b)の先端部に設けた線引き体(80b2)とを備える線引きマーカ(80)を機体の左右に各々設け、苗載台(43)の上端部近傍に設けた回動支点(80b1)回りにマーカアーム(80b)を回動可能に設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクター等の走行車両に各種苗植装置を装着した乗用型田植機・乗用型野菜移植機・乗用型い草移植機等の乗用型苗植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車両の後部に昇降用リンク装置を介してフロートを装備し、苗植装置を装着した乗用型苗植機においては、苗植装置は苗植付時にはフロートが圃場面に接する位置に下ろされ、機体旋回時には苗植装置の昇降用リンク装置を上動させてフロートが接地しない高い位置まで上昇させて、機体の旋回を行う。
【0003】
この苗植装置を機体旋回時以外で、一時的に使用しないとき、または苗植機を倉庫などに収納するときには苗植装置を地面より浮かせることで苗植付具などの破損を防止する必要がある。このための部材として特開2000−60226号公報などは苗植装置を地面から浮かせるためのスタンドを取り付けている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−60226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行車両の後部に昇降用リンク装置を介して苗植装置を装着し、該苗植装置を苗載台と苗植付具とフロートとを備えて構成した乗用型苗植機において、機体の左右に各々設けた線引きマーカにより圃場の泥面上にはっきりとしたマークを施して、次工程で容易に機体を直進走行させることができると共に、線引きマーカの収納で前後にスペースを要さず、機体の前後長の短縮化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、走行車両(1)の後部に昇降用リンク装置(2)を介して苗植装置(3)を装着し、該苗植装置(3)を苗載台(43)と苗植付具(44)とフロート(45,46)とを備えて構成した乗用型苗植機において、剛体のマーカチューブ(80a)と、該マーカチューブ(80a)の先端に取り付けた弾性体のマーカアーム(80b)と、該マーカアーム(80b)の先端部に設けた線引き体(80b2)とを備える線引きマーカ(80)を機体の左右に各々設け、苗載台(43)の上端部近傍に設けた回動支点(80b1)回りにマーカアーム(80b)を回動可能に設けた乗用型苗植機とした。
【発明の効果】
【0006】
よって、走行車両(1)の後部に昇降用リンク装置(2)を介して苗植装置(3)を装着し、該苗植装置(3)を苗載台(43)と苗植付具(44)とフロート(45,46)とを備えて構成した乗用型苗植機において、剛体のマーカチューブ(80a)と、該マーカチューブ(80a)の先端に取り付けた弾性体のマーカアーム(80b)と、該マーカアーム(80b)の先端部に設けた線引き体(80b2)とを備える線引きマーカ(80)を機体の左右に各々設け、苗載台(43)の上端部近傍に設けた回動支点(80b1)回りにマーカアーム(80b)を回動可能に設けたので、回動支点(80b1)回りのマーカアーム(80b)の回動による線引きマーカ(80)の収納で前後にスペースを要さず、機体の前後長の短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一実施例である8条植え乗用型田植機を図面に基づき詳細に説明する。
図1には乗用型田植機の左側面図、図2には乗用型田植機の平面図、図3には乗用型田植機の動力伝達機構図をそれぞれ示す。走行車両1は、その後部に昇降用リンク装置2で苗植装置の一種である田植装置3を装着すると共に施肥装置4を設け、全体で乗用施肥田植機として構成されている。走行車両1は、駆動輪である左右各一対の前輪6,6および後輪7,7を有する四輪駆動車両である。
【0008】
本明細書では車両1の前進方向に向かって左、右方向をそれぞれ左、右といい、車両1の前進方向を前、後進方向を後という。
左右メインフレーム10,10の前部にミッションケース11がボルトにて固定され、左右メインフレーム10,10上には水冷式のエンジン12が搭載されており、該ミッションケース11の後部上面に油圧ポンプ13が一体に組み付けられ、またミッションケース11の前部からステアリングポスト14が上方に突設されている。
【0009】
そして、ステアリングポスト14の上端部にステアリングハンドル16と操作パネル17が設けられている。機体の上部には操縦用のフロアとなる合成樹脂よりステップが一体に形成された機体カバー19が取り付けられ、エンジン12の上方部に操縦席20が設置されている(操縦席20は、機体カバー19後部上面に取付けられている)。前輪6,6は、ミッションケース11の左右側方に変向可能に設けた前輪支持ケース22,22に軸支されている。また、後輪7,7は、ローリング杆23の左右両端部に一体に取り付けた後輪支持ケース24,24に軸支されている。ローリング杆23は左右メインフレーム10,10の後端部を連結した横フレーム10aに突設したローリング軸25で進行方向と垂直な面内で回動自在に支持されている。
【0010】
また、左右メインフレーム10,10の前部には両者を繋ぐ平面視コ字状の前部連結フレーム10bの下部が溶接固定され、その前部連結フレーム10bの上部に左右方向に延びる前横パイプフレーム10cが溶接固定され、更に、その前横パイプフレーム10cに上方に向けてL字状鋼板よりなる支持板10d…が溶接固定されている。そして、支持板10d…の上部に左右に2本づつ設けたカバー支持パイプ10e…の前部がボルトにて固定されている。
【0011】
そして、図3に示すようにカバー支持パイプ10e…の各後部は、左右方向に延びる後横パイプフレーム10fにて一体に溶接固定されている。この後横パイプフレーム10fは、左右メインフレーム10,10の後端部に溶接された昇降用リンク装置2の前部を回動自在に支持する左右縦フレーム10g,10gの上部より前方に向けて延びる支持フレーム10hの前端に溶接した横角パイプ10iに連結材10j,10jを介して連結固定されている。
【0012】
そして、前記機体カバー19の後半部は、上記のカバー支持パイプ10e…及び後横パイプフレーム10f上に載置されて支持固定されている。
一方、カバー支持パイプ10e…のうち右内側に設けたカバー支持パイプ10eには、ラジエータ固定アーム10k,10kが溶接固定してあり、このラジエータ固定アーム10k,10kにエンジン12のラジエータ12aがボルトにて固定されている。即ち、エンジン12は左右メインフレーム10,10上に搭載され、ラジエータ12aはカバー支持パイプ10eに固定されて、両者は別部材に装着された構成となっている。
【0013】
従って、ラジエータ12aはエンジン12に直接取付けられておらず、エンジン12の振動を直接受けないので破損することが少なく、然も、エンジン12の側方で機体カバー19を支持する部材であるカバー支持パイプ10eにて支持できて、機体構成が簡潔なものとなり、軽量でコンパクトな田植機を得ることができる。
【0014】
エンジン12の回転動力は、ベルト31(図3)を介して油圧ポンプ13の駆動軸であるカウンタ軸32に伝えられ、さらに該カウンタ軸32からベルト33を介してHST4の入力軸35に伝えられ、HST4の出力軸36からベルトを介してミッション入力軸34に伝えられる。
【0015】
なお、ミッション入力軸34上には、メインクラッチ38が設けられており、HST4の駆動力はメインクラッチ38を介してミッション入力軸34に伝動される。
このように、ラジエータ12aと左右反対側のエンジン12側方に伝動系が配置されており、即ち、エンジン12の左右一側にはラジエータ12aを配置し、エンジン12の左右他側には伝動系が配置されているので、機体の左右バランスが良くて、しかも機体構成が小型化できて走行性能の優れた田植機を得ることができる。
【0016】
次に、苗植装置3は、走行車両1に昇降用リンク装置2で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と苗植装置3の構成について説明する。先ず、走行車両1に基部が回動自在に設けた一般的な油圧シリンダー39のピストン上端部を昇降用リンク装置2に連結し、走行車両1に設けた油圧ポンプ13にて油圧シリンダー39に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー39のピストンを伸進・縮退させて昇降用リンク装置2に連結した苗植装置3が上下動されるように構成されている。
【0017】
苗植装置3は、昇降用リンク装置2の後部にローリング軸を介してローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース42と、該植付伝動ケース42に設けられた支持部材に支持されて機体左右方向に往復動する苗載台43と、該苗載台43の左右移動のためのレールであり、各条の苗取出口を備えた苗受板41と、植付伝動ケース42の後端部に装着され前記苗載台43の下端より1株分づつの苗を分割して圃場に植え付ける苗植付具44…と、植付伝動ケース42の下部にその後部が枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体であるセンターフロート45、サイドフロート46…等にて構成されている。センターフロート45とサイドフロート46…は、圃場を整地すると共に苗植付具44…にて苗が植付けられる圃場の前方を整地すべく設けられている。
【0018】
PTO伝動軸49は、その両端にユニバーサルジョイントを有し、施肥駆動ケース48の動力を苗植装置3の植付伝動ケース42に伝達するために設けている。センターフロート45前部の上下位置を検出するポテンショメータにより構成されるセンターフロートセンサー49は、センターフロート45の前部上面とリンクにより連携されている。そして、センターフロートセンサー49のセンターフロート45前部の上下位置検出に基づいて、制御装置(図示せず)の苗植装置3の昇降手段によりソレノイド油圧バルブ(図示せず)を制御して油圧シリンダー39にて苗植装置3の上下位置を制御するように構成されている。
【0019】
即ち、センターフロート45の前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられた時には油圧ポンプ13にてミッションケース11内から汲み出された圧油を油圧シリンダー39に送り込んでピストンを突出させ昇降用リンク装置2を上動させて苗植装置3を所定位置まで上昇させ、また、センターフロート45の前部が適正範囲以上に下がった時には油圧シリンダー39内の圧油をミッションケース11内に戻して昇降用リンク装置2を下動させて苗植装置3を所定位置まで下降させ、そして、センターフロート45の前部が適正範囲にあるとき(苗植装置3が適正な所定位置にある時)には油圧シリンダー39内の圧油の出入りを止めて苗植装置3を一定位置に保持させるように設けられている。このように、センターフロート45を苗植装置3の自動高さ制御のための接地センサーとして用いている。
【0020】
昇降用リンク装置2の上部リンク2aの途中に油圧式のピッチングシリンダ53を設けて、該ピッチングシリンダ53の伸縮動によって上部リンク2aの長さが変更されて、苗植装置3を走行車両1に対して駆動ピッチング動できるようにしてある。構成を詳述すると、前上部リンク2aを中空の角パイプ材にて構成し、後上部リンク2bの前端に固定した嵌合部材2cを前上部リンク2aの後端部に摺動自在に嵌入した状態とし、前上部リンク2aに固定したピッチングシリンダ53の進退するピストン53a先端を後上部リンク2b側に固定している。従って、ピッチングシリンダ53に圧油が供給・排出されてピストン53aが進退することにより、後上部リンク2bの前端に固定した嵌合部材2cが前上部リンク2aの後端部内で摺動し、上部リンクの長さが変更される。
【0021】
一方、走行車両1の前後方向での傾斜角を検出する傾斜センサ54をメインフレーム10上に設け、走行車両1の前後傾斜姿勢の変化に拘わらずに苗植装置3の圃場面に対する前後傾斜姿勢を所定の姿勢に維持するように、傾斜センサ54の検出情報に基づいて制御装置(図示せず)のピッチング制御手段によりピッチングシリンダ53の制御弁(図示せず)を切換作動させる。
【0022】
図2に示すセンターフロート45とサイドフロート46の代わりに図4に示す形状の二条用のセンターフロート45’と二条用のサイドフロート46’と小型の一条用のフロート47をセンターフロート45’とサイドフロート46’との間に一対設けた構成としても良い。
【0023】
このとき、フロート47の底面高さをサイドフロート46’に比べて若干浮かして取り付けることで、上下に動き易いサイズの小さいフロート47による圃場面にフロート跡が形成され難くなる。
【0024】
図5に苗植装置3の苗植付具44の拡大側面図を示すように植付伝動ケース42に植付部スタンド50が取り付けられている。該植付部スタンド50は、上下方向に延びる第一部位50aと該第一部位50aから屈曲して前後方向に延びる第二部位50bと該第二部位50bから屈曲して左右方向に延びる第三部位50cと前記第一部位50aの端部に設けた取付基部50dとを備え、左右の第二部位50bと第三部位50cとで平面視門型の形状である。
【0025】
該植付部スタンド50は180度反転可能な構成であり、植付部スタンド50を圃場面に下ろす場合には植付部スタンド50を図5の破線で示す位置に配置して左右の第二部位50bと第三部位50cとで圃場面を支持するのでフロート45〜47の損傷を防ぐ。また、植付部スタンド50を圃場面から離す場合には図5の実線で示す位置に植付部スタンド50を反転させると、苗植付具44により苗植付ができる。また、植付部スタンド50を図5の実線で示す位置に配置すると、機体の後進時に植付部スタンド50の左右の第二部位50bと第三部位50cが苗植付具44をガードするので、苗植付具44が障害物に衝突するおそれがない。ガード状態では、第三部位50cが、苗植付具44と左右位置が同じで該苗植付具44より上位に位置する。スタンド状態では、第三部位50cが、フロート45〜47を支持する植付深さ調節軸の下方位置の近傍で該植付深さ調節軸より前側に位置する。このように、植付部スタンド50を180度反転可能にしたので、該スタンド50が苗植付具44の支持とガードの両方の機能を奏することができる。
【0026】
また、図5の苗植付具44の拡大側面図に示すように、一対の同一形状の植付部スタンド50の取付基部50dを植付伝動ケース42の上下に取付可能に取付部42aを設けると、苗植付具44の苗植付作業時と苗植付具44の格納時にそれぞれ対応した取付部42aに植付部スタンド50を取り付けることができる。すなわち、植付伝動ケース42の下部に取り付けた植付部スタンド50を苗植付具44の苗植付作業時には植付伝動ケース42の上部に付け替えることで苗植付具44の後部をガードして破損防止を図ることができる。
【0027】
苗植付具44の苗植付作業時に図5に示す植付部スタンド50を植付伝動ケース42の上部に配置する場合には、該スタンド50の後方端部の位置が苗植付具44の後端部より後方位置に張り出すような構成にすることで、苗植付具44の後方部のガードをより確実に行うことができる。
【0028】
また、図1、図2に示すように苗植装置3の後方両端部には植付伝動ケース42に取り付けた苗受板41を保護するための苗受板ガード51が設けられている。前記苗受板ガード51は図6(a)に右側苗受板ガード51の拡大斜視図を示し、図6(b)に図6(a)のA−A線断面図を示す。
【0029】
苗受板ガード51の基部には苗受板ガード51を挟み込む支持部材52が設けてあり、該支持部材52と苗受板ガード51が重なる部分に回動支点52aを設け、該回動支点52aに上下方向に貫通する苗受板ガード51の支持軸51aを差し込む。また該回動支点52からずれた位置であって、苗受板ガード51と支持部材52が当接する部位において、苗受板ガード51には凹部51bを、支持部材52には凸部52bをそれぞれ設けて、苗受板ガード51が図6(a)に示す位置に保持させるように前記凹部51bに凸部52bを陥入させている。
【0030】
機体の前進で苗受板ガード51に一定値以上の負荷が加わると、支持軸51aを回動支点として苗受板ガード51が矢印B方向(後側)に折れ曲がって苗受板ガード51の破損を防止できる。また、倉庫への機体格納時等、苗受板ガード51を回動させて機体の左右幅を縮小することができる。そして上記構成により苗受板ガード51が折れ曲がっても元に容易に戻すことができる。
【0031】
また、図2に示すように、HSTレバー40と畦クラッチレバー67を隣接する位置に左右に並べて並列に配置し、それらの回動支点を同軸とするか又は近くに配置した。
そして、HSTレバーガイド40aを畦クラッチレバーガイド67aと並列状に同一ガイドプレート69に設けたので、部品の統合でコストダウンが図れ、設計スペースを小さくできる。
【0032】
また図2に示すようにHSTレバー40と操縦席20の間に株間レバー68を設けた。株間レバー68は機体進行方向の前後の苗の植付け間隔を調整するレバーであり、走行速度に対する苗植付具の回動連動速度を変えることで株間を調整することができる。
【0033】
株間レバー68を畦クラッチレバー67と左右に並べて並列に配置することで、苗の植付に関するレバー67,68を手元に集中して配置し、株間の切替も操縦席20に座ったまま調節できる。
【0034】
本実施例の苗植機では、図7に示すように燃料用のメインタンク70に増設用としてサブタンク71を設け、サブタンク71からフィルター72とポンプ73を介してエンジン12に燃料を供給し、またエンジン12から回収した燃料をメインタンク70に戻す燃料の循環経路74を設け、常に燃料を循環経路74内で流動させ、燃料の劣化を防ぐ構成とする。
【0035】
また、常に燃料を循環経路74内で流動させるために、サブタンク71のエア抜きブリーザ75をメインタンク70に接続している。
また、図2に示すように機体前部左右には予備苗載台77(図1には図示せず)を設け、機体前部中央には直進走行の指標とするセンターマスコット78を設け、さらに機体の左右両側に左右線引きマーカ80,80をそれぞれ設けている。
【0036】
図8(図8(a)は苗載台43の上部付近の左側面図、図8(b)は苗載台43の上部付近の左部分の背面図)に示すように線引きマーカ80は剛体のマーカチューブ80aの先端に弾性体からなるマーカアーム80bを取り付けたものであり、苗載台43の上端部近傍で上端より下方にマーカアーム80bの回動支点80b1を設ける。
【0037】
線引きマーカ80は苗植付作業時に次工程の機体中心位置に相当する圃場面に線を引くものであって、マーカアーム80bの先端部には二股状の線引き体80b2が設けられている。
【0038】
従って、この左右線引きマーカ80、80のいずれか一方が、次工程の苗植付作業側のマーカアーム80bの先端部の線引き体80b2を圃場の泥面に接当させた状態で機体を前進させると、線引き体80b2が泥面上に線を引いていくので、圃場の泥面上にはっきりとしたマークが施されて、次工程で、このはっきりとしたマークにセンターマスコット78を合わせて操縦者は機体を操向すれば、容易に機体を直進走行させることができて、能率良く良好な田植え作業が行える。
【0039】
図8(a)と図8(b)の各円A,円B付近の拡大図をそれぞれ図8(c)と図8(d)に示す。
剛体のマーカチューブ80aの先端部80a1を扁平状にして弾性体からなるマーカアーム80bの取付部とし、取付部から適当距離L(図8(b))離れた位置で扁平状にしたマーカチューブ先端部80a1の一部を機体前方側にL字状に折り曲げ、その前端中央部をU字状の切欠80a11を設けこの切欠部分でマーカアーム80bを保持させる。
【0040】
線引マーカ80を圃場面に下ろす場合には、マーカアーム80bを前方にたわませて、前記切欠部分80a11から外し、取付部を回動させることでマーカアーム80bが機体側方外側に回動される。
【0041】
また、図9の斜視図に示す別実施例の右線引きマーカ90を用いても良い。図9に示す線引きマーカ90は、マーカアーム90aの先端に線引き輪体90bとその外周部に合成樹脂製のスコップ状の泥掻揚げ片90c…が一定間隔で一体に形成されており、更に、各泥掻揚げ片90c…の左右中央位置には細い突起輪体90dが一体に形成されている。
【0042】
従って、この左右線引きマーカ90のマーカアーム90aを中心軸とする線引き輪体90bを圃場の泥面に接当させた状態で機体を前進させると、線引き輪体90bが回転して、各泥掻揚げ片90c…が次々と泥を掬い上げて泥面上に泥の塊を落とし、且つ、突起輪体90dが泥面上に線を引いていくので、圃場の泥面上にはっきりとしたマークが施されて、次工程でこのはっきりとしたマークにセンターマスコット78を合わせて操縦者は機体を操向すれば、容易に機体を直進走行させることができて、能率良く良好な田植え作業が行える。
【0043】
前記線引き輪体90bの一部縦断面と該線引き輪体90bの回転支持軸であるマーカアーム90aの一部は螺旋部90a1としており、該マーカアーム90aには一体のプレート90a2が固着している。そして、マーカアーム90aを苗植装置3の支持部91に挿入し、前記プレート90a2にスプリング92の端部を引っかけて固定している。またマーカアーム90aの支持部91への挿入は脱着用スプリング92でワンタッチで行える。
【0044】
この線引きマーカ90はマーカアーム90aに螺旋部90a1があるので、圃場面に凹凸があっても矢印A方向(線引き輪体90bの平面に対して上下方向)または矢印B方向(マーカアーム90aに沿った方向)に線引き輪体90bが揺動可能であり、圃場面にマーカ跡が明瞭に形成される。
【0045】
また、図10は別実施例の線引きマーカ90の線引き輪体90bとマーカアーム90aの断面を示す図であるが、線引き輪体90bの回転を若干妨げるゴム製の抵抗板94を線引き輪体90bとマーカアーム90aの間に設けている。このため、抵抗板94により線引き輪体90bの回転は変速され、一定速度の回転に比べて高い泥の山が形成される。これは、雨天時の田植えでは圃場の水位が増し、マーカ跡が確認し難くなるので、図10に示す構成は雨天時の田植えに好都合である。
【0046】
また、ゴム製の抵抗板94は、田植機の運搬時に線引き輪体90bの回転が抑えられ、また田植機の旋回時に線引き輪体90bを上昇させた場合に、慣性により線引き輪体90bが回転してオペレータに泥が飛び散ることを防止できる。
【0047】
図11に側面図を示す別実施例の線引きマーカ96は、点線で示す作業時から実線で示す収納時に回動すると、線引きマーカ96が機体の横幅方向の長さを小さくする効果がある。線引きの作用・不作用状態に切り替えるためのマーカーアーム96aと、マーカーアーム96aを支持する支持アーム96bとがあって、マーカーアーム96aと支持アーム96bとの回動方向が共に同じ方向(回動軸心が共に前後方向に向く)から、走行車体1と苗載台43との間に線引きマーカ96を配置した構成において、該マーカ96の収納で前後にスペースをあまり要さず、また回転式の線引き部分96cは苗載台43と干渉しないように該苗載台43より上方に位置するように収納できるので、機体の前後長の短縮化が図れ、作業時は短いマーカーアーム96aが作動するだけだから、作動の精度が安定し、また作業者への泥はねを抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、乗用型田植機・乗用型野菜移植機・乗用型い草移植機等の乗用型苗植機として利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例である8条植え乗用型田植機を示す全体左側面図である。
【図2】図1の乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】図1の乗用型田植機の走行車両の伝動構成を示す概略平面図である。
【図4】図1に示す乗用型田植機の複数のフロートの配置を示す平面図である。
【図5】図1に示す乗用型田植機の苗植付具の側面図である。
【図6】図1に示す乗用型田植機の苗植装置部分の苗受板ガイドの斜視図である。
【図7】図1に示す乗用型田植機の燃料タンク系統の概念図である。
【図8】図1に示す乗用型田植機の苗載台の上部付近の左側面図(図8(a))、苗載台の上部付近の左部分の背面図(図8(b))、図8(a)の各円A付近の拡大図(図8(c))、図8(b)の円B付近の拡大図(図8(d))である。
【図9】図1に示す乗用型田植機の線引きマーカの一例を示す斜視図である。
【図10】図9の線引きマーカの変形例を示す一部縦断面図である。
【図11】図1に示す乗用型田植機の線引きマーカの一例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0050】
1:走行車両、2:昇降用リンク装置、3:苗植装置、43:苗載台、44:苗植付具、45:フロート、80:線引きマーカ、80a:マーカチューブ、80b:マーカアーム、80b1:回動支点、80b2:線引き体
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクター等の走行車両に各種苗植装置を装着した乗用型田植機・乗用型野菜移植機・乗用型い草移植機等の乗用型苗植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車両の後部に昇降用リンク装置を介してフロートを装備し、苗植装置を装着した乗用型苗植機においては、苗植装置は苗植付時にはフロートが圃場面に接する位置に下ろされ、機体旋回時には苗植装置の昇降用リンク装置を上動させてフロートが接地しない高い位置まで上昇させて、機体の旋回を行う。
【0003】
この苗植装置を機体旋回時以外で、一時的に使用しないとき、または苗植機を倉庫などに収納するときには苗植装置を地面より浮かせることで苗植付具などの破損を防止する必要がある。このための部材として特開2000−60226号公報などは苗植装置を地面から浮かせるためのスタンドを取り付けている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−60226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行車両の後部に昇降用リンク装置を介して苗植装置を装着し、該苗植装置を苗載台と苗植付具とフロートとを備えて構成した乗用型苗植機において、機体の左右に各々設けた線引きマーカにより圃場の泥面上にはっきりとしたマークを施して、次工程で容易に機体を直進走行させることができると共に、線引きマーカの収納で前後にスペースを要さず、機体の前後長の短縮化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、走行車両(1)の後部に昇降用リンク装置(2)を介して苗植装置(3)を装着し、該苗植装置(3)を苗載台(43)と苗植付具(44)とフロート(45,46)とを備えて構成した乗用型苗植機において、剛体のマーカチューブ(80a)と、該マーカチューブ(80a)の先端に取り付けた弾性体のマーカアーム(80b)と、該マーカアーム(80b)の先端部に設けた線引き体(80b2)とを備える線引きマーカ(80)を機体の左右に各々設け、苗載台(43)の上端部近傍に設けた回動支点(80b1)回りにマーカアーム(80b)を回動可能に設けた乗用型苗植機とした。
【発明の効果】
【0006】
よって、走行車両(1)の後部に昇降用リンク装置(2)を介して苗植装置(3)を装着し、該苗植装置(3)を苗載台(43)と苗植付具(44)とフロート(45,46)とを備えて構成した乗用型苗植機において、剛体のマーカチューブ(80a)と、該マーカチューブ(80a)の先端に取り付けた弾性体のマーカアーム(80b)と、該マーカアーム(80b)の先端部に設けた線引き体(80b2)とを備える線引きマーカ(80)を機体の左右に各々設け、苗載台(43)の上端部近傍に設けた回動支点(80b1)回りにマーカアーム(80b)を回動可能に設けたので、回動支点(80b1)回りのマーカアーム(80b)の回動による線引きマーカ(80)の収納で前後にスペースを要さず、機体の前後長の短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一実施例である8条植え乗用型田植機を図面に基づき詳細に説明する。
図1には乗用型田植機の左側面図、図2には乗用型田植機の平面図、図3には乗用型田植機の動力伝達機構図をそれぞれ示す。走行車両1は、その後部に昇降用リンク装置2で苗植装置の一種である田植装置3を装着すると共に施肥装置4を設け、全体で乗用施肥田植機として構成されている。走行車両1は、駆動輪である左右各一対の前輪6,6および後輪7,7を有する四輪駆動車両である。
【0008】
本明細書では車両1の前進方向に向かって左、右方向をそれぞれ左、右といい、車両1の前進方向を前、後進方向を後という。
左右メインフレーム10,10の前部にミッションケース11がボルトにて固定され、左右メインフレーム10,10上には水冷式のエンジン12が搭載されており、該ミッションケース11の後部上面に油圧ポンプ13が一体に組み付けられ、またミッションケース11の前部からステアリングポスト14が上方に突設されている。
【0009】
そして、ステアリングポスト14の上端部にステアリングハンドル16と操作パネル17が設けられている。機体の上部には操縦用のフロアとなる合成樹脂よりステップが一体に形成された機体カバー19が取り付けられ、エンジン12の上方部に操縦席20が設置されている(操縦席20は、機体カバー19後部上面に取付けられている)。前輪6,6は、ミッションケース11の左右側方に変向可能に設けた前輪支持ケース22,22に軸支されている。また、後輪7,7は、ローリング杆23の左右両端部に一体に取り付けた後輪支持ケース24,24に軸支されている。ローリング杆23は左右メインフレーム10,10の後端部を連結した横フレーム10aに突設したローリング軸25で進行方向と垂直な面内で回動自在に支持されている。
【0010】
また、左右メインフレーム10,10の前部には両者を繋ぐ平面視コ字状の前部連結フレーム10bの下部が溶接固定され、その前部連結フレーム10bの上部に左右方向に延びる前横パイプフレーム10cが溶接固定され、更に、その前横パイプフレーム10cに上方に向けてL字状鋼板よりなる支持板10d…が溶接固定されている。そして、支持板10d…の上部に左右に2本づつ設けたカバー支持パイプ10e…の前部がボルトにて固定されている。
【0011】
そして、図3に示すようにカバー支持パイプ10e…の各後部は、左右方向に延びる後横パイプフレーム10fにて一体に溶接固定されている。この後横パイプフレーム10fは、左右メインフレーム10,10の後端部に溶接された昇降用リンク装置2の前部を回動自在に支持する左右縦フレーム10g,10gの上部より前方に向けて延びる支持フレーム10hの前端に溶接した横角パイプ10iに連結材10j,10jを介して連結固定されている。
【0012】
そして、前記機体カバー19の後半部は、上記のカバー支持パイプ10e…及び後横パイプフレーム10f上に載置されて支持固定されている。
一方、カバー支持パイプ10e…のうち右内側に設けたカバー支持パイプ10eには、ラジエータ固定アーム10k,10kが溶接固定してあり、このラジエータ固定アーム10k,10kにエンジン12のラジエータ12aがボルトにて固定されている。即ち、エンジン12は左右メインフレーム10,10上に搭載され、ラジエータ12aはカバー支持パイプ10eに固定されて、両者は別部材に装着された構成となっている。
【0013】
従って、ラジエータ12aはエンジン12に直接取付けられておらず、エンジン12の振動を直接受けないので破損することが少なく、然も、エンジン12の側方で機体カバー19を支持する部材であるカバー支持パイプ10eにて支持できて、機体構成が簡潔なものとなり、軽量でコンパクトな田植機を得ることができる。
【0014】
エンジン12の回転動力は、ベルト31(図3)を介して油圧ポンプ13の駆動軸であるカウンタ軸32に伝えられ、さらに該カウンタ軸32からベルト33を介してHST4の入力軸35に伝えられ、HST4の出力軸36からベルトを介してミッション入力軸34に伝えられる。
【0015】
なお、ミッション入力軸34上には、メインクラッチ38が設けられており、HST4の駆動力はメインクラッチ38を介してミッション入力軸34に伝動される。
このように、ラジエータ12aと左右反対側のエンジン12側方に伝動系が配置されており、即ち、エンジン12の左右一側にはラジエータ12aを配置し、エンジン12の左右他側には伝動系が配置されているので、機体の左右バランスが良くて、しかも機体構成が小型化できて走行性能の優れた田植機を得ることができる。
【0016】
次に、苗植装置3は、走行車両1に昇降用リンク装置2で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と苗植装置3の構成について説明する。先ず、走行車両1に基部が回動自在に設けた一般的な油圧シリンダー39のピストン上端部を昇降用リンク装置2に連結し、走行車両1に設けた油圧ポンプ13にて油圧シリンダー39に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー39のピストンを伸進・縮退させて昇降用リンク装置2に連結した苗植装置3が上下動されるように構成されている。
【0017】
苗植装置3は、昇降用リンク装置2の後部にローリング軸を介してローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース42と、該植付伝動ケース42に設けられた支持部材に支持されて機体左右方向に往復動する苗載台43と、該苗載台43の左右移動のためのレールであり、各条の苗取出口を備えた苗受板41と、植付伝動ケース42の後端部に装着され前記苗載台43の下端より1株分づつの苗を分割して圃場に植え付ける苗植付具44…と、植付伝動ケース42の下部にその後部が枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体であるセンターフロート45、サイドフロート46…等にて構成されている。センターフロート45とサイドフロート46…は、圃場を整地すると共に苗植付具44…にて苗が植付けられる圃場の前方を整地すべく設けられている。
【0018】
PTO伝動軸49は、その両端にユニバーサルジョイントを有し、施肥駆動ケース48の動力を苗植装置3の植付伝動ケース42に伝達するために設けている。センターフロート45前部の上下位置を検出するポテンショメータにより構成されるセンターフロートセンサー49は、センターフロート45の前部上面とリンクにより連携されている。そして、センターフロートセンサー49のセンターフロート45前部の上下位置検出に基づいて、制御装置(図示せず)の苗植装置3の昇降手段によりソレノイド油圧バルブ(図示せず)を制御して油圧シリンダー39にて苗植装置3の上下位置を制御するように構成されている。
【0019】
即ち、センターフロート45の前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられた時には油圧ポンプ13にてミッションケース11内から汲み出された圧油を油圧シリンダー39に送り込んでピストンを突出させ昇降用リンク装置2を上動させて苗植装置3を所定位置まで上昇させ、また、センターフロート45の前部が適正範囲以上に下がった時には油圧シリンダー39内の圧油をミッションケース11内に戻して昇降用リンク装置2を下動させて苗植装置3を所定位置まで下降させ、そして、センターフロート45の前部が適正範囲にあるとき(苗植装置3が適正な所定位置にある時)には油圧シリンダー39内の圧油の出入りを止めて苗植装置3を一定位置に保持させるように設けられている。このように、センターフロート45を苗植装置3の自動高さ制御のための接地センサーとして用いている。
【0020】
昇降用リンク装置2の上部リンク2aの途中に油圧式のピッチングシリンダ53を設けて、該ピッチングシリンダ53の伸縮動によって上部リンク2aの長さが変更されて、苗植装置3を走行車両1に対して駆動ピッチング動できるようにしてある。構成を詳述すると、前上部リンク2aを中空の角パイプ材にて構成し、後上部リンク2bの前端に固定した嵌合部材2cを前上部リンク2aの後端部に摺動自在に嵌入した状態とし、前上部リンク2aに固定したピッチングシリンダ53の進退するピストン53a先端を後上部リンク2b側に固定している。従って、ピッチングシリンダ53に圧油が供給・排出されてピストン53aが進退することにより、後上部リンク2bの前端に固定した嵌合部材2cが前上部リンク2aの後端部内で摺動し、上部リンクの長さが変更される。
【0021】
一方、走行車両1の前後方向での傾斜角を検出する傾斜センサ54をメインフレーム10上に設け、走行車両1の前後傾斜姿勢の変化に拘わらずに苗植装置3の圃場面に対する前後傾斜姿勢を所定の姿勢に維持するように、傾斜センサ54の検出情報に基づいて制御装置(図示せず)のピッチング制御手段によりピッチングシリンダ53の制御弁(図示せず)を切換作動させる。
【0022】
図2に示すセンターフロート45とサイドフロート46の代わりに図4に示す形状の二条用のセンターフロート45’と二条用のサイドフロート46’と小型の一条用のフロート47をセンターフロート45’とサイドフロート46’との間に一対設けた構成としても良い。
【0023】
このとき、フロート47の底面高さをサイドフロート46’に比べて若干浮かして取り付けることで、上下に動き易いサイズの小さいフロート47による圃場面にフロート跡が形成され難くなる。
【0024】
図5に苗植装置3の苗植付具44の拡大側面図を示すように植付伝動ケース42に植付部スタンド50が取り付けられている。該植付部スタンド50は、上下方向に延びる第一部位50aと該第一部位50aから屈曲して前後方向に延びる第二部位50bと該第二部位50bから屈曲して左右方向に延びる第三部位50cと前記第一部位50aの端部に設けた取付基部50dとを備え、左右の第二部位50bと第三部位50cとで平面視門型の形状である。
【0025】
該植付部スタンド50は180度反転可能な構成であり、植付部スタンド50を圃場面に下ろす場合には植付部スタンド50を図5の破線で示す位置に配置して左右の第二部位50bと第三部位50cとで圃場面を支持するのでフロート45〜47の損傷を防ぐ。また、植付部スタンド50を圃場面から離す場合には図5の実線で示す位置に植付部スタンド50を反転させると、苗植付具44により苗植付ができる。また、植付部スタンド50を図5の実線で示す位置に配置すると、機体の後進時に植付部スタンド50の左右の第二部位50bと第三部位50cが苗植付具44をガードするので、苗植付具44が障害物に衝突するおそれがない。ガード状態では、第三部位50cが、苗植付具44と左右位置が同じで該苗植付具44より上位に位置する。スタンド状態では、第三部位50cが、フロート45〜47を支持する植付深さ調節軸の下方位置の近傍で該植付深さ調節軸より前側に位置する。このように、植付部スタンド50を180度反転可能にしたので、該スタンド50が苗植付具44の支持とガードの両方の機能を奏することができる。
【0026】
また、図5の苗植付具44の拡大側面図に示すように、一対の同一形状の植付部スタンド50の取付基部50dを植付伝動ケース42の上下に取付可能に取付部42aを設けると、苗植付具44の苗植付作業時と苗植付具44の格納時にそれぞれ対応した取付部42aに植付部スタンド50を取り付けることができる。すなわち、植付伝動ケース42の下部に取り付けた植付部スタンド50を苗植付具44の苗植付作業時には植付伝動ケース42の上部に付け替えることで苗植付具44の後部をガードして破損防止を図ることができる。
【0027】
苗植付具44の苗植付作業時に図5に示す植付部スタンド50を植付伝動ケース42の上部に配置する場合には、該スタンド50の後方端部の位置が苗植付具44の後端部より後方位置に張り出すような構成にすることで、苗植付具44の後方部のガードをより確実に行うことができる。
【0028】
また、図1、図2に示すように苗植装置3の後方両端部には植付伝動ケース42に取り付けた苗受板41を保護するための苗受板ガード51が設けられている。前記苗受板ガード51は図6(a)に右側苗受板ガード51の拡大斜視図を示し、図6(b)に図6(a)のA−A線断面図を示す。
【0029】
苗受板ガード51の基部には苗受板ガード51を挟み込む支持部材52が設けてあり、該支持部材52と苗受板ガード51が重なる部分に回動支点52aを設け、該回動支点52aに上下方向に貫通する苗受板ガード51の支持軸51aを差し込む。また該回動支点52からずれた位置であって、苗受板ガード51と支持部材52が当接する部位において、苗受板ガード51には凹部51bを、支持部材52には凸部52bをそれぞれ設けて、苗受板ガード51が図6(a)に示す位置に保持させるように前記凹部51bに凸部52bを陥入させている。
【0030】
機体の前進で苗受板ガード51に一定値以上の負荷が加わると、支持軸51aを回動支点として苗受板ガード51が矢印B方向(後側)に折れ曲がって苗受板ガード51の破損を防止できる。また、倉庫への機体格納時等、苗受板ガード51を回動させて機体の左右幅を縮小することができる。そして上記構成により苗受板ガード51が折れ曲がっても元に容易に戻すことができる。
【0031】
また、図2に示すように、HSTレバー40と畦クラッチレバー67を隣接する位置に左右に並べて並列に配置し、それらの回動支点を同軸とするか又は近くに配置した。
そして、HSTレバーガイド40aを畦クラッチレバーガイド67aと並列状に同一ガイドプレート69に設けたので、部品の統合でコストダウンが図れ、設計スペースを小さくできる。
【0032】
また図2に示すようにHSTレバー40と操縦席20の間に株間レバー68を設けた。株間レバー68は機体進行方向の前後の苗の植付け間隔を調整するレバーであり、走行速度に対する苗植付具の回動連動速度を変えることで株間を調整することができる。
【0033】
株間レバー68を畦クラッチレバー67と左右に並べて並列に配置することで、苗の植付に関するレバー67,68を手元に集中して配置し、株間の切替も操縦席20に座ったまま調節できる。
【0034】
本実施例の苗植機では、図7に示すように燃料用のメインタンク70に増設用としてサブタンク71を設け、サブタンク71からフィルター72とポンプ73を介してエンジン12に燃料を供給し、またエンジン12から回収した燃料をメインタンク70に戻す燃料の循環経路74を設け、常に燃料を循環経路74内で流動させ、燃料の劣化を防ぐ構成とする。
【0035】
また、常に燃料を循環経路74内で流動させるために、サブタンク71のエア抜きブリーザ75をメインタンク70に接続している。
また、図2に示すように機体前部左右には予備苗載台77(図1には図示せず)を設け、機体前部中央には直進走行の指標とするセンターマスコット78を設け、さらに機体の左右両側に左右線引きマーカ80,80をそれぞれ設けている。
【0036】
図8(図8(a)は苗載台43の上部付近の左側面図、図8(b)は苗載台43の上部付近の左部分の背面図)に示すように線引きマーカ80は剛体のマーカチューブ80aの先端に弾性体からなるマーカアーム80bを取り付けたものであり、苗載台43の上端部近傍で上端より下方にマーカアーム80bの回動支点80b1を設ける。
【0037】
線引きマーカ80は苗植付作業時に次工程の機体中心位置に相当する圃場面に線を引くものであって、マーカアーム80bの先端部には二股状の線引き体80b2が設けられている。
【0038】
従って、この左右線引きマーカ80、80のいずれか一方が、次工程の苗植付作業側のマーカアーム80bの先端部の線引き体80b2を圃場の泥面に接当させた状態で機体を前進させると、線引き体80b2が泥面上に線を引いていくので、圃場の泥面上にはっきりとしたマークが施されて、次工程で、このはっきりとしたマークにセンターマスコット78を合わせて操縦者は機体を操向すれば、容易に機体を直進走行させることができて、能率良く良好な田植え作業が行える。
【0039】
図8(a)と図8(b)の各円A,円B付近の拡大図をそれぞれ図8(c)と図8(d)に示す。
剛体のマーカチューブ80aの先端部80a1を扁平状にして弾性体からなるマーカアーム80bの取付部とし、取付部から適当距離L(図8(b))離れた位置で扁平状にしたマーカチューブ先端部80a1の一部を機体前方側にL字状に折り曲げ、その前端中央部をU字状の切欠80a11を設けこの切欠部分でマーカアーム80bを保持させる。
【0040】
線引マーカ80を圃場面に下ろす場合には、マーカアーム80bを前方にたわませて、前記切欠部分80a11から外し、取付部を回動させることでマーカアーム80bが機体側方外側に回動される。
【0041】
また、図9の斜視図に示す別実施例の右線引きマーカ90を用いても良い。図9に示す線引きマーカ90は、マーカアーム90aの先端に線引き輪体90bとその外周部に合成樹脂製のスコップ状の泥掻揚げ片90c…が一定間隔で一体に形成されており、更に、各泥掻揚げ片90c…の左右中央位置には細い突起輪体90dが一体に形成されている。
【0042】
従って、この左右線引きマーカ90のマーカアーム90aを中心軸とする線引き輪体90bを圃場の泥面に接当させた状態で機体を前進させると、線引き輪体90bが回転して、各泥掻揚げ片90c…が次々と泥を掬い上げて泥面上に泥の塊を落とし、且つ、突起輪体90dが泥面上に線を引いていくので、圃場の泥面上にはっきりとしたマークが施されて、次工程でこのはっきりとしたマークにセンターマスコット78を合わせて操縦者は機体を操向すれば、容易に機体を直進走行させることができて、能率良く良好な田植え作業が行える。
【0043】
前記線引き輪体90bの一部縦断面と該線引き輪体90bの回転支持軸であるマーカアーム90aの一部は螺旋部90a1としており、該マーカアーム90aには一体のプレート90a2が固着している。そして、マーカアーム90aを苗植装置3の支持部91に挿入し、前記プレート90a2にスプリング92の端部を引っかけて固定している。またマーカアーム90aの支持部91への挿入は脱着用スプリング92でワンタッチで行える。
【0044】
この線引きマーカ90はマーカアーム90aに螺旋部90a1があるので、圃場面に凹凸があっても矢印A方向(線引き輪体90bの平面に対して上下方向)または矢印B方向(マーカアーム90aに沿った方向)に線引き輪体90bが揺動可能であり、圃場面にマーカ跡が明瞭に形成される。
【0045】
また、図10は別実施例の線引きマーカ90の線引き輪体90bとマーカアーム90aの断面を示す図であるが、線引き輪体90bの回転を若干妨げるゴム製の抵抗板94を線引き輪体90bとマーカアーム90aの間に設けている。このため、抵抗板94により線引き輪体90bの回転は変速され、一定速度の回転に比べて高い泥の山が形成される。これは、雨天時の田植えでは圃場の水位が増し、マーカ跡が確認し難くなるので、図10に示す構成は雨天時の田植えに好都合である。
【0046】
また、ゴム製の抵抗板94は、田植機の運搬時に線引き輪体90bの回転が抑えられ、また田植機の旋回時に線引き輪体90bを上昇させた場合に、慣性により線引き輪体90bが回転してオペレータに泥が飛び散ることを防止できる。
【0047】
図11に側面図を示す別実施例の線引きマーカ96は、点線で示す作業時から実線で示す収納時に回動すると、線引きマーカ96が機体の横幅方向の長さを小さくする効果がある。線引きの作用・不作用状態に切り替えるためのマーカーアーム96aと、マーカーアーム96aを支持する支持アーム96bとがあって、マーカーアーム96aと支持アーム96bとの回動方向が共に同じ方向(回動軸心が共に前後方向に向く)から、走行車体1と苗載台43との間に線引きマーカ96を配置した構成において、該マーカ96の収納で前後にスペースをあまり要さず、また回転式の線引き部分96cは苗載台43と干渉しないように該苗載台43より上方に位置するように収納できるので、機体の前後長の短縮化が図れ、作業時は短いマーカーアーム96aが作動するだけだから、作動の精度が安定し、また作業者への泥はねを抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、乗用型田植機・乗用型野菜移植機・乗用型い草移植機等の乗用型苗植機として利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例である8条植え乗用型田植機を示す全体左側面図である。
【図2】図1の乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】図1の乗用型田植機の走行車両の伝動構成を示す概略平面図である。
【図4】図1に示す乗用型田植機の複数のフロートの配置を示す平面図である。
【図5】図1に示す乗用型田植機の苗植付具の側面図である。
【図6】図1に示す乗用型田植機の苗植装置部分の苗受板ガイドの斜視図である。
【図7】図1に示す乗用型田植機の燃料タンク系統の概念図である。
【図8】図1に示す乗用型田植機の苗載台の上部付近の左側面図(図8(a))、苗載台の上部付近の左部分の背面図(図8(b))、図8(a)の各円A付近の拡大図(図8(c))、図8(b)の円B付近の拡大図(図8(d))である。
【図9】図1に示す乗用型田植機の線引きマーカの一例を示す斜視図である。
【図10】図9の線引きマーカの変形例を示す一部縦断面図である。
【図11】図1に示す乗用型田植機の線引きマーカの一例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0050】
1:走行車両、2:昇降用リンク装置、3:苗植装置、43:苗載台、44:苗植付具、45:フロート、80:線引きマーカ、80a:マーカチューブ、80b:マーカアーム、80b1:回動支点、80b2:線引き体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両(1)の後部に昇降用リンク装置(2)を介して苗植装置(3)を装着し、該苗植装置(3)を苗載台(43)と苗植付具(44)とフロート(45,46)とを備えて構成した乗用型苗植機において、剛体のマーカチューブ(80a)と、該マーカチューブ(80a)の先端に取り付けた弾性体のマーカアーム(80b)と、該マーカアーム(80b)の先端部に設けた線引き体(80b2)とを備える線引きマーカ(80)を機体の左右に各々設け、苗載台(43)の上端部近傍に設けた回動支点(80b1)回りにマーカアーム(80b)を回動可能に設けた乗用型苗植機。
【請求項1】
走行車両(1)の後部に昇降用リンク装置(2)を介して苗植装置(3)を装着し、該苗植装置(3)を苗載台(43)と苗植付具(44)とフロート(45,46)とを備えて構成した乗用型苗植機において、剛体のマーカチューブ(80a)と、該マーカチューブ(80a)の先端に取り付けた弾性体のマーカアーム(80b)と、該マーカアーム(80b)の先端部に設けた線引き体(80b2)とを備える線引きマーカ(80)を機体の左右に各々設け、苗載台(43)の上端部近傍に設けた回動支点(80b1)回りにマーカアーム(80b)を回動可能に設けた乗用型苗植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−283987(P2008−283987A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196546(P2008−196546)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【分割の表示】特願2007−64360(P2007−64360)の分割
【原出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【分割の表示】特願2007−64360(P2007−64360)の分割
【原出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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