説明

乗用芝刈機

【課題】フロントモーアとブロアの作動とその停止のタイミングのずれにより、刈り取った草の搬送路で詰まりが生じないようにしたフロントモーアを備えた乗用芝刈機を提供すること。
【解決手段】機体2の前方に配置したモーア6で刈り取った後の草をコレクタ16に送風搬送するためのブロア17を設け、該ブロア17への動力伝動機構を経由してモーア6を駆動する動力伝動機構A(A1、A2)を設け、ブロア17への伝動機構A1を入切するブロア駆動用クラッチ27の下流側にモーア6を駆動する伝動機構A2を入切するモーア駆動用クラッチ36を設ける。こうしてブロア駆動用クラッチ27を切るとモーア6への動力伝動も断たれるため、モーア6が駆動しているにも拘わらず、ブロア17が停止してしまうといった誤作動が発生してモーア6で刈り取った後の草がコレクタ16に送風搬送する通路で詰まるおそれがなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝刈りなどの対地作業を行うモーアを機体の下方腹部に搭載した乗用芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用芝刈機は、芝刈機(モーア)で刈り取った草をシュータ及びダクトを介して機体後部のコレクタに集草する構成としている。また、コレクタへ刈り取った草をエアー搬送するために設けたブロアとモーア駆動のためと機体を走行させるためにエンジンからの動力を伝達する動力伝動装置が用いられる。
芝刈機(モーア)を機体前部に装着した、いわゆるフロントモーア型乗用芝刈機がEP0,840,998(B1)号公報などに開示されている。これらの先行技術は機体の後部に位置させたエンジンからミッションケース及びブロアへの伝動機構を備えている。
【特許文献1】EP0,840,998(B1)号特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1記載の発明の乗用芝刈機では、エンジンからミッションケースを経由して、その後方に配置されているブロアと乗用芝刈機の前端部に配置されているフロントモーアに動力をそれぞれ伝達している。そして前記乗用芝刈機はフロントモーアで芝刈りを行い、刈り取った草をブロアによる送風搬送力で機体後方に取り付けたコレクタに送る構成を備えている。
【0004】
しかし、上記特許文献1記載の発明の乗用芝刈機ではフロントモーアの作動停止とブロアの作動停止をそれぞれ別個に独立して行う構成であるので、場合によってはブロアの作動が停止したときにも、まだフロントモーアが作動しているということがあり、このときにはフロントモーアで刈り取った草が作動停止しているブロア部分で詰まることがある。
【0005】
本発明の課題は、フロントモーアとブロアの作動とその停止のタイミングのずれにより発生する刈り取った草の搬送路での詰まりを防ぐことができるフロントモーアを備えた乗用芝刈機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、機体(2)と、該機体(2)の前進方向である前方に配置した草を刈り取るためのモーア(6)と、前記モーア(6)で刈り取った後の草をコレクタ(16)に送風搬送するためのブロア(17)を設けた乗用芝刈機において、ブロア(17)への動力伝動機構(A1)と、該動力伝動機構(A1)を経由してモーア(6)を駆動する動力伝動機構(A2)からなる動力伝動機構(A)を設け、該動力伝動機構(A)には前記ブロア(17)への伝動機構(A1)を入切するブロア駆動用クラッチ(27)と、その下流側にモーア(6)を駆動する伝動機構(A2)を入切するモーア駆動用クラッチ(36)を設けた乗用芝刈機である。
【0007】
請求項2記載の発明は、ブロア駆動用クラッチ(27)とモーア駆動用クラッチ(36)を単一のスイッチ(65)の操作で入切できる構成とし、該スイッチ(65)のオン時にはブロア駆動用クラッチ(27)が先に入り、次いでモーア駆動用クラッチ(36)が入り、前記スイッチ(65)のオフ時にはモーア駆動用クラッチ(36)が先に切れ、次いでブロア駆動用クラッチ(27)が切りとなるようにタイムラグを設ける制御装置(63)を備えた請求項1記載の乗用芝刈機である。
【0008】
請求項3記載の発明は、コレクタ(16)に、該コレクタ(16)に設けた扉(16a)の開閉検出センサ(66)を設け、コレクタ(16)の扉(16a)が開いた時には制御装置(63)はブロア駆動用クラッチ(27)とモーア駆動用クラッチ(36)をほぼ同時に切りとする構成を備えた請求項2記載の乗用芝刈機である。
【0009】
請求項4記載の発明は、ブロア駆動用の回転軸(32)を汎用PTO軸と共用とし、かつ、PTOモード切替スイッチ(67)を設け、ブロア駆動用の回転軸(32)を汎用PTO軸として用いる時には制御装置(63)は、ブロア駆動用クラッチ(27)は入りとし、モーア駆動用クラッチ(36)は切りとする制御を行う構成を備えた請求項1〜3のいずれかに記載の乗用芝刈機である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、ブロア駆動用クラッチ(27)を切るとモーア(6)への動力伝動も断たれるため、モーア(6)が駆動しているにも拘わらず、ブロア(17)が停止してしまうといった誤作動が発生して、モーア(6)で刈り取った後の草がコレクタ(16)に送風搬送する通路で詰まりが生じるおそれがない。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、スイッチ(65)のオフ時にブロア(17)が作動しているとコレクタ(16)に送風搬送する通路で詰まりが生じることを防止できる。また、スイッチ(65)のオン時にはブロア駆動用クラッチ(27)が先に入り、次いでモーア駆動用クラッチ(36)が入るようにタイムラグをおくためエンジン回転の急激な落ち込みを防止できる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、ブロア駆動用クラッチ(27)とモーア駆動用クラッチ(36)がオンのままコレクタ(16)の扉(16a)を開くと、コレクタ(16)内の草が外部にこぼれるので、これをふせぐために、コレクタ(16)の扉(16a)が開いたことが開閉検出センサ(66)で検出されると、ブロア(17)とモーア(6)が同時に作動停止するようにして安全を確保する。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、ブロア駆動用の回転軸(32)を汎用PTO軸として用いる時にはモーア(6)は不要になるのでモーア駆動用クラッチ(36)は切りとする制御により動力ロスが発生しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
本実施例の乗用芝刈機の要部左側面図を図1に示し、本実施例の乗用芝刈機の正断面図を図2に示し、モーアと前輪駆動部の平面図を図3に示す。なお、本発明では芝刈機の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左側、右側といい、前進方向を前側、後進方向を後側ということにする。
【0015】
走行機体2の前部と後部にそれぞれ前輪3、3と後輪4、4を備え、機体2の前部の下方には縦軸回りに回転するカッター5を有するモーア6が設けられる。
機体2の前部上方のフロア7にはステアリングコラム8を立設し、該コラム8の上部にはハンドル10が設けられている。またハンドル10の後方には操縦席11を設け、該操縦席11の後方にエンジン12などを覆うボンネット14が配置されており、該ボンネット14上方にコレクタ16が設けられている。
【0016】
前記モーア6は機体2に対し、図示は省略しているが、前後のリンクで平行リンクを構成して上下に昇降自在の構成となっている。そして、後側リンクを外して前側リンクを機体に固定することにより、モーア6は前側支点で後側がフリーの状態となるが、このとき、機体をゆっくりと後退させることにより、モーア6の後端は地面に保持される状態となった、前側が持ち上がる、いわゆるフリップアップの状態なり、モーア6の点検のための準備作業を能率的にかつ容易になし得る。
【0017】
上記概略の構成部材を備えたモーア(芝刈機)6の作動機構などを図4の動力伝達機構を示す側面図を含めて説明する。
エンジン12の出力軸12aをエンジン12の前方に出し、自在継手軸15を介して該出力軸12aからミッションケース24内の動力伝達機構に動力を伝達するためのミッション入力軸25に動力が伝達される。また、ミッションケース24内に設けられた入力軸25に伝達されたエンジン動力は動力伝達機構のブロア・モーア駆動系Aと走行駆動系Bにそれぞれ動力が分配される。
【0018】
ブロア・モーア駆動系Aは、前記入力軸25にカップリング25aを介して入力軸25と一体の回転軸25bに設けられブロア・モーア駆動系Aへのエンジン動力を入切するブロア駆動用クラッチ27、該クラッチ27の入りに連動するクラッチ出力軸27a、該クラッチ出力軸27aと一体で順次動力伝達するクラッチ出力ギヤ28、中間伝動ギヤ29、入力ギア31及び該入力ギア31を軸上に設けたブロア駆動軸32の組合せからなるブロア駆動系A1と前記入力ギア31とカウンタギア33とギア34を順次経由して伝達される動力を入切するモーア駆動用クラッチ36と該クラッチ36からの動力で駆動するモーア用PTO軸37からなるモーア駆動系A2が設けられている。
【0019】
なお、図4ではモーア駆動用クラッチ36がミッションケース24又はブロアケース18の下方に配置されているように記載しているが、この図は展開図であり、実際には図2に示すようにモーア用PTO軸37はブロアケース18の左側に配置されている。
【0020】
また、走行駆動系Bは入力軸25に固着された走行用ギア40からの動力が伝達されるカウンタギア41と該カウンタギア41と噛合する静油圧式無段変速装置の入力用ギア42と該入力用ギア42の固着したポンプ駆動軸43から成る。
【0021】
さらに入力軸25の下方に静油圧式無段変速装置が配置され、上記ポンプ駆動軸43で駆動する油圧ポンプ45、油圧ポンプ45からの油圧動力で駆動する油圧モータ46、該油圧モータ46の出力軸(油圧モータ軸)47、出力軸47上のドライブピニオン49に噛合うベベルギア50a、中間ギヤ50bなどからなる減速機構50、この減速機構50の中間ギヤ50bに噛み合うデフギヤ51a、及び図外ピニオンギヤ等を備えるデフ機構51に動力が伝達される。
【0022】
またミッションケース24から左右外部に突出した前記デフ機構51の出力軸52の突出軸部からの動力は図1、図2に示す前輪伝動ケース23L,23R内に設けられたスプロケット52L,52Rとチェン54L,54Rを介して左右の前輪駆動軸53L,53R(図2)にそれぞれ伝達され、左右のファイナルケース64L,64R(図3)を介して左右の前輪3L,3Rを回転させる。
【0023】
上記ミッションケース24と左右車軸伝動ケース23L,23Rとにより門型フレームが構成され、このような、いわゆるポータルミッションタイプの動力伝動機構により、前記ブロワ17を前輪駆動軸53L,53R間に配置することで、前輪3,3間にブロワ17を配置することができ、ブロア17とモーア6の距離が近くなり、刈り取った芝草などの搬送性能が向上する。
【0024】
また、静油圧式無段変速装置の入力ギヤ42を用いて油圧モータ軸47を左右後輪4,4の駆動軸に動力を伝達する入力軸56と同じ位置となるように油圧ポンプ45、モータ46を配置する。
【0025】
さらに、走行駆動系Bを構成する走行用ギヤ40、カウンタギヤ41及び入力ギヤ42のギヤ群を経て油圧ポンプ軸43が駆動されるが、油圧ポンプ軸43の入力回転をエンジン回転より高くなるよう設定することができるのでエンジン12自体の回転数を低くでき、低騒音化できる。
【0026】
また、上記構成からなる走行駆動系Bを用いて油圧ポンプ45、モータ46をエンジン12より低い位置に配置出来るため、後輪4の駆動用の入力軸56と油圧モータ軸47を同軸化することができ、4WD入力の簡素化が可能となる。
【0027】
その上、後輪4の駆動用の入力軸56を油圧モータ軸47と同軸としているので後輪4の駆動系が簡素となり、後輪駆動軸56と油圧モータ軸47の連結部に自在継手を用いる必要がなく、簡素な動力伝達系統が得られる。
【0028】
さらに、ミッションケース24内の動力伝動機構への入力軸25の前方にブロア・モーア伝動系Aのブロア駆動用クラッチ27を設け、また静油圧式無段変速装置45,46への走行伝動系Bのギア群とブロア・モーア伝動系Aのギア群の間に前輪駆動用の減速機構50と前輪駆動用のデフ機構51を配置することで、芝刈り機の前後長を短縮しつつ、動力伝動機構の地上からの高さをできるだけ高く維持することができる。
また、ブロア駆動用クラッチ27とモーア駆動用クラッチ36を設けたことでブロア・モーア駆動系Aを走行駆動系Bとは独立してオン/オフが可能となる。
【0029】
また、ブロア17を内装したブロアケース18が操縦席11の下方で前輪3,3の間に配置されており、エンジン12の出力によりブロア17が作動する。ブロアケース18の上部にはブロアケース18とコレクタ16を繋ぐ芝草搬送用のダクト20が設けられている。さらに、ブロア17とモーア6の間には側面視後上がり形状のシュータ21が配置されていて、モーア6により刈り取られた芝草は、モーアデッキ6aの後部中央の排出口から短筒状の案内ガイド部(出口部)6b及び端部をこのガイド部6bに重合させて折曲姿勢可能に設ける前記シュータ21を経由してブロア17に送られ、さらにダクト20を経由して後方のコレクタ16に空気搬送される。なお、モーア6のカッタ5の回転によって起風されるので、該起風もブロア風による刈り取られた草のコレクタ16へ向けての空気搬送の一助となる。
【0030】
また、図2に示すように左右前輪伝動ケース23L,23Rの間にブロア17を配置し、該ブロア17の後方にダクト20を接続し、該ダクト20は操縦席11の側方を通りコレクタ16に刈り取った芝草等を収納できる構成になっている。
従って、容積の大きなブロア17を前輪3,3の間に配置することができ、芝刈り機の全体の高さを比較的低く抑えることができると同時に芝草等の気流搬送部が操縦席11と干渉することを防ぐことができる。
またダクト20が操縦席11に対して左右方向に変位するため、機体2の前後方向でダクト20を操縦席11とほぼ同じ位置に配置でき、従来技術に比べて機体2の全長が短縮化できると同時に操縦席11のスペースも拡大できる。
【0031】
また、ブロア・モーア駆動系Aはブロア17の入切用のブロア駆動用クラッチ27と該クラッチ27の動力伝達下流部にモーア駆動用クラッチ36を配置したので、ブロア駆動用クラッチ27が切りになるとモーア6への動力伝達も断たれるため、モーア6が駆動しているにも拘わらず、ブロア17が停止しているといった誤作動の発生を防止できる。従って、ブロア17を切った後もモーア6が作動していることで、ブロア17、ダクト20及びシュータ21などの刈り取った草の送風搬送系に草が詰まることが無くなる。
【0032】
上記ブロア駆動用クラッチ27とモーア駆動用クラッチ36をそれぞれソレノイドバルブ61とソレノイドバルブ62(図4)とコントローラ63を用いる油圧制御装置で入切する構成とし、該油圧制御装置は単一のPTOスイッチ65の操作でオン・オフできる構成とし、図5に示すタイムチャートに示すように、PTOスイッチ65のオン時にはブロワ駆動用クラッチ27を接続後、一定時間経過してからモーア駆動用クラッチ36がオンとなるようにし、また、PTOスイッチ65がオフのときにはモーア駆動用クラッチ36のオフの後に一定時間が経過してからブロワ駆動用クラッチ27がオフとなるようにタイミング制御をする。
【0033】
こうして単一のPTOスイッチ65の操作でブロワ17とモーア6のオン・オフ制御ができるので省力化が図れ、スイッチオフ時にブロア17やシュータ21などでの草詰まりを防止できる。またスイッチオン時はタイムラグをおくためにエンジン回転の急激な落ち込みを防止することができる。
【0034】
また、コレクタ16の収容刈草の排出口に設けた開閉扉16aの開閉検出センサ66を設け、図6のタイムチャートに示すようにコレクタ16の開閉扉16aが開いている時にはモーア6とブロア17が同時にオフになるようにすると、ブロア駆動用クラッチ27とモーア駆動用クラッチ36が共にオンのままでコレクタ16の開閉扉16aを開いたとき、両方のクラッチ27,36がオフとなって、安全の確保ができる。このとき、モーア6とブロワ17のオン/オフに時間差を設けることでモーア作業時の草詰まりを予防できる。
【0035】
さらに、PTOモード切替スイッチ67を設け、該モード切替スイッチ67の切替でブロア駆動軸32を除雪作業などの汎用作業用のPTO駆動軸として用いる場合とモーア作業用のモーア駆動軸として用いる場合とに切り替えることによって、汎用作業時はブロア駆動用クラッチ27のみをオンとし、モーア駆動用クラッチ36をオフとする構成にしても良い。
【0036】
なお、除雪作業などの汎用作業用のPTO駆動軸としてブロア駆動軸32を用いる場合には、ブロア17とモーア6は取り外し、ブロア駆動軸32に図外除雪機用入力軸に接続する自在継手軸の端部を取り付けて、除雪機のオーガや排出ブロワを駆動しながら除雪する構成とする。図7にこの構成のタイムチャートを示す。
【0037】
図7において、PTOモード切替スイッチ67がオンのときは「汎用モード」選択、オフのときは「モーアモード」選択するものと予め設定しておく。
そこで、PTOモード切替スイッチ67がオンで、PTOスイッチ65をオンとすると、図7(a)に示す汎用モードのタイムチャートが設定され、ブロア駆動用クラッチ27のみを作動させ、モーア駆動クラッチ36はオフのまま継続される。また、ブロアクラッチ27のオンとモーアクラッチ36のオフ状態でPTOスイッチ65がオフされると、モーア駆動クラッチ36は何等切り換わることなくオフを継続し、ブロア駆動クラッチ27はオフとなって伝動は遮断される。このように、汎用モード選択の際にはPTOスイッチ65による切替でブロア駆動クラッチ27を入り切り制御するのみである。
【0038】
一方、PTOモード切替スイッチ67がオフで、PTOスイッチ65がオンされると、図7(b)に示すモーアモードのタイムチャートが設定され、モーア作業に適するクラッチ制御が行われる。即ち、PTOスイッチ65がオンされると、直ちにブロア駆動クラッチ27がオンし、やや遅れてモーア駆動クラッチ36がオンする。モーア作業を行った後、PTOスイッチ65をオフすると、先ずモーア駆動クラッチ36がオフし、続いてブロア駆動クラッチ27がオフして作業終了状態となる。
このように汎用作業機を使用する場合には汎用PTO軸であるブロア駆動軸32のみがオンとなり、モーア駆動軸37がオフであるので動力ロスが少なくなる。
【0039】
なお、図4に示すようにブロア駆動軸32を延長してPTOスプライン32aを設け、PTOスプライン32aをPTO用の出力軸として利用可能にする。
上記構成でブロア17をブロア駆動軸32から外すと、PTO用スプライン32aが利用でき、またはブロア17を外すことなくPTOの出力軸としてPTO用スプライン32aを使用することも可能である。
【0040】
またPTOスプライン32aを利用しない時には、PTOスプライン32aの外周部に保護カバー32bを設けることで、コレクタ16の使用時に草でPTOスプライン32aが摩耗するのを防ぐことができる。保護カバー32bをPTOスプライン32a基部側のブロア駆動軸32の取付部32cに取り付けるには、ブロア17を駆動軸32に固定するためのナットと同じようにネジにより取付部32cに固定する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、家庭用、産業用の乗用芝刈機として有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例の乗用芝刈機の要部左側面図である。
【図2】図1の乗用芝刈機のブロア配置を説明する要部正断面図である。
【図3】図1の乗用芝刈機のモーアと前輪駆動部の平面図である。
【図4】図1の乗用芝刈機の動力伝達系統を説明する要部左側面図である。
【図5】図1の乗用芝刈機のブロア駆動用クラッチとモーア駆動用クラッチの作動用のタイムチャートの一例である。
【図6】図1の乗用芝刈機のブロア駆動用クラッチとモーア駆動用クラッチの作動用のタイムチャートの一例である。
【図7】図1の乗用芝刈機のブロア駆動用クラッチとモーア駆動用クラッチの作動用のタイムチャートの一例である。
【符号の説明】
【0043】
2 走行機体 3 前輪
4 後輪 5 カッター
6 モーア 6a モーアデッキ
6b 案内ガイド部 7 フロア
8 ステアリングコラム 10 ハンドル
11 操縦席 12 エンジン
12a エンジン出力軸 13 ラジエータ
14 ボンネット 15 自在継手軸
16 コレクタ 16a コレクタ開閉扉
17 ブロア 18 ブロアケース
20 ダクト 21 シュータ
23 前輪伝動ケース 24 ミッションケース
25 ミッション入力軸 25a カップリング
25b 回転軸 27 ブロア駆動用クラッチ
27a クラッチ出力軸
28,29,31,33,34,40,49 ギア
32 ブロア駆動軸 32a PTOスプライン
32b 保護カバー 32c 取付部
36 モーア駆動用クラッチ 37 モーア用PTO軸
41 カウンタギア 42 入力用ギア
43 油圧ポンプ駆動軸 45 油圧ポンプ
46 油圧モータ 47 油圧モータ軸
49 ドライブピニオン 50 減速機構
50a ベベルギヤ 50b 中間ギヤ
51 デフ機構 51a デフギヤ
52 出力軸 52L,52R スプロケット
53L,53R 前輪駆動軸 54L,54R チェン
56 後輪駆動入力軸 61,62 ソレノイドバルブ
63 コントローラ 64L,63R ファイナルケース
65 PTOスイッチ 67 PTOモード切替スイッチ
66 コレクタ開閉センサ A ブロア・モーア駆動系
A1 ブロア駆動系 A2 モーア駆動系
B 走行駆動系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体(2)と、該機体(2)の前進方向である前方に配置した草を刈り取るためのモーア(6)と、前記モーア(6)で刈り取った後の草をコレクタ(16)に送風搬送するためのブロア(17)を設けた乗用芝刈機において、
ブロア(17)への動力伝動機構(A1)と、該動力伝動機構(A1)を経由してモーア(6)を駆動する動力伝動機構(A2)からなる動力伝動機構(A)を設け、該動力伝動機構(A)には前記ブロア(17)への伝動機構(A1)を入切するブロア駆動用クラッチ(27)と、その下流側にモーア(6)を駆動する伝動機構(A2)を入切するモーア駆動用クラッチ(36)を設けたことを特徴とする乗用芝刈機。
【請求項2】
ブロア駆動用クラッチ(27)とモーア駆動用クラッチ(36)を単一のスイッチ(65)の操作で入切できる構成とし、該スイッチ(65)のオン時にはブロア駆動用クラッチ(27)が先に入り、次いでモーア駆動用クラッチ(36)が入り、前記スイッチ(65)のオフ時にはモーア駆動用クラッチ(36)が先に切れ、次いでブロア駆動用クラッチ(27)が切りとなるようにタイムラグを設ける制御装置(63)を備えたことを特徴とする請求項1記載の乗用芝刈機。
【請求項3】
コレクタ(16)に、該コレクタ(16)に設けた扉(16a)の開閉検出センサ(66)を設け、コレクタ(16)の扉(16a)が開いた時には制御装置(63)はブロア駆動用クラッチ(27)とモーア駆動用クラッチ(36)をほぼ同時に切りとする構成を備えたことを特徴とする請求項2記載の乗用芝刈機。
【請求項4】
ブロア駆動用の回転軸(32)を汎用PTO軸と共用とし、かつ、PTOモード切替スイッチ(67)を設け、ブロア駆動用の回転軸(32)を汎用PTO軸として用いる時には制御装置(63)は、ブロア駆動用クラッチ(27)は入りとし、モーア駆動用クラッチ(36)は切りとする制御を行う構成を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の乗用芝刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−154547(P2008−154547A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349026(P2006−349026)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】