説明

乗用苗植機

【課題】従来、左右前輪と左右後輪を設けた機体上に座席を配置し、該座席に対向して苗供給装置を設け、該苗供給装置の下方に苗植付装置を設けた小型の乗用苗植機がある。この乗用苗植機によると、作業者は座席に着座して苗植付作業を行うことができ苗植付作業が容易に行え、作業効率も良いものであったが、機体進行方向に背を向けて作業者が座席に着座する構成である為に、多少の不安感と苗供給装置への苗供給作業時に機体進行方向が見えず畝終端が分からないという課題があった。
【解決手段】機体の後部側にエンジン3を配置し、機体の前部側に植付部Pを配置し、植付部Pの機体後方に作業者が機体前方を向いて着座する座席79を配置した乗用苗植機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業者が着座する座席を設けた乗用苗植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
左右前輪と左右後輪を設けた機体上に座席を配置し、該座席に対向して苗供給装置を設け、該苗供給装置の下方に苗植付装置を設けた小型の乗用苗植機がある。この乗用苗植機によると、作業者は座席に着座して苗植付作業を行うことができ苗植付作業が容易に行え、作業効率も良いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−237104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術のものは、作業者は座席に着座して苗植付作業を行うことができ苗植付作業が容易に行え、作業効率も良いものであったが、機体進行方向に背を向けて作業者が座席に着座する構成である為に、多少の不安感と苗供給装置への苗供給作業時に機体進行方向が見えず畝終端が分からないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、機体の後部側にエンジン3を配置し、機体の前部側に植付部Pを配置し、植付部Pの機体後方に作業者が機体前方を向いて着座する座席79を配置した乗用苗植機とした。
【0006】
従って、請求項1記載の乗用苗植機は、作業者が座席79に機体前方を向いて着座して苗植付作業を行うことができ、然も、機体前方を向いたままの姿勢で植付部Pに対して作業を行なうことができて苗植付作業が容易に行え、更に、畝Uの終端位置も認識できて安心して作業が行え、作業効率も良い。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、機体の後部側に設けたエンジン3の動力を変速するミッションケース8aと機体前部側に設けた植付部Pの植付伝動ケース22を連結するフレーム8bを平面視でコ字状にし、該フレーム8bの前部が機体側面視で機体前後中央部に位置する構成とし、該フレーム8bの前部に左右走行伝動ケース9の基部を回動自在に設け、該左右走行伝動ケース9を後方に向けて設けてその後端部に各々左右後輪7を設け、該左右後輪7を機体側面視で座席79の下方に配置した請求項1記載の乗用苗植機とした。
【0008】
従って、請求項2記載の乗用苗植機は、請求項1記載の乗用苗植機の作用に加えて、ミッションケース8aと植付伝動ケース22を連結するフレーム8bは平面視でコ字状に形成しているので、軽量コンパクトで簡潔な機体構成となり、機体の操作性及び走行性能が向上して、良好な苗植付作業が行える。また、機体側面視で機体の前後中央部に配置されたフレーム8bの前部に左右走行伝動ケース9の基部を回動自在に設け、該左右走行伝動ケース9を後方に向けて設けて、その後端部に各々左右後輪7を設けた構成とし、該左右後輪7は機体側面視で座席79の下方に位置する構成としたので、例えば、畝Uに対して適切な苗の植付け深さになるように、左右後輪7を上下動して機体高さを昇降制御する場合に、機体側面視で機体の前後中央部を回動中心として左右走行伝動ケース9は回動して左右後輪7が上下調節されるので、重心位置変更が少なく且つ安定して前記昇降制御が行えて、苗の植付け作業が良好に行える。また、左右後輪7は機体側面視で座席79の下方位置で上下動する構成であるから、座席79に着座した作業者は該左右後輪7の上下動による影響をあまり受けずに快適な苗植付作業及び機体操作が行えて、作業効率が良い。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、左右前輪6と左右後輪7で機体を支持して走行する構成とし、機体側面視で前輪6と後輪7の間で、且つ、苗植付け体5のすぐ後ろ側の植付伝動ケース22の下方空間部に鎮圧輪73を配置した請求項1記載の乗用苗植機とした。
【0010】
従って、請求項3記載の乗用苗植機は、請求項1記載の乗用苗植機の作用に加えて、鎮圧輪73は、機体側面視で前輪6と後輪7の間で、且つ、苗植付け体5のすぐ後ろ側の植付伝動ケース22の下方空間部に配置して設けているので、植付伝動ケース22の下方空間部を有効に利用して鎮圧輪73を配置することができ、機体前後長さを短く構成して軽量コンパクトで簡潔な機体構成となり、機体の操作性及び走行性能が向上して、良好な苗植付作業が行える。更に、鎮圧輪73は苗植付け体5のすぐ後ろ側に配置しているので、苗植付け体5が畝Uに植付けた苗に対して直ぐに覆土鎮圧することができ、苗の植付け姿勢が良好となり、植付け後の苗の活着及び成育が良好である。
【発明の効果】
【0011】
よって、この発明の乗用苗植機は、作業者が座席79に機体前方を向いて着座して苗植付作業を行うことができ、然も、機体前方を向いたままの姿勢で植付部Pに対して作業を行なうことができて苗植付作業が容易に行え、更に、畝Uの終端位置も認識できて安心して作業が行え、作業効率も良い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】苗植機の側面図である。
【図2】支持体の作用を説明する平面図である。
【図3】巻掛スプロケットとその周辺を示す図である(a:平面図、b:斜視図)。
【図4】苗植付装置を示す斜視図である。
【図5】要部作用説明用背面図である。
【図6】苗植付け体の他の例を示す作用説明用側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施の一形態の苗植機1を以下に説明する。尚、以下の説明では、操縦ハンドル2を配置した側を後とし、その反対側、即ち苗植付け体5を配置した側を前とする。そして、機体後部において機体前部側に向って立つ作業者の右手側を右とし、左手側を左とする。
【0014】
苗植機1は、走行装置と操縦ハンドル2を備えた機体に昇降駆動する上下動機構4と連結して昇降動作する開閉可能なくちばし状の苗植付け体5を備え、走行装置は、転動自在に支持した左右一対の前輪6とエンジン3の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪7とを備えている。この前輪6及び後輪7を畝溝に案内して、機体を畝U上方で走行することができる。
【0015】
エンジン3の前部にはミッションケース8aを配置し、そのミッションケース8a内にはエンジン3の出力軸が入り込んでおり、エンジン3の出力軸からミッションケース8a内の伝動機構にエンジン動力が伝達される構成となっている。
【0016】
8bは機体フレームを兼用した伝動ケースであり、平面視でその後部が開放したコ字状に形成されている。該開放した左右後部間にミッションケース8aを挟んで固定し、伝動ケース8bの左右一方側内に伝動軸を通して、伝動ケース8bの前部駆動軸8cにエンジン3の駆動力を伝動し、且つ、後記植付伝動ケース22に駆動力を伝動する構成となっている。
【0017】
上記伝動ケース8bの前部駆動軸8cの左右両側部に走行伝動ケース9を前部駆動軸8cを中心に回動自在に取り付け、この走行伝動ケース9の回動中心の前部駆動軸8cの先端が走行伝動ケース9内に入り込んでその伝動機構に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力は走行伝動ケース9内の伝動機構を介して機体後方側に伸びてその後端部側方に突出する車軸10に伝動し、後輪7が駆動回転するようになっている。
【0018】
従って、前部駆動軸8cは機体側面視で機体の前後中央部に配置され、該前部駆動軸8c部に左右走行伝動ケース9の基部を回動自在に設け、該左右走行伝動ケース9を後方に向けて設けて、その後端部に左右後輪7を設けた構成とし、該左右後輪7は機体側面視で座席79の下方に位置する構成となっている。よって、畝Uに対して適切な苗の植付け深さになるように、左右後輪7を上下動して機体高さを昇降制御したりローリング制御したりする場合に、機体側面視で機体の前後中央部を回動中心として左右走行伝動ケース9は回動して左右後輪7が上下調節されるので、重心位置変更が少なく且つ安定して前記昇降制御やローリング制御が行えて、苗の植付け作業が良好に行える。また、左右後輪7は機体側面視で座席79の下方位置で上下動する構成であるから、座席79に着座した作業者は該左右後輪7の上下動による影響をあまり受けずに快適な苗植付作業及び機体操作が行えて、作業効率が良い。
【0019】
左右水平用油圧式の伸縮作動可能なローリングシリンダ11が機体の左側に設けられ、該ローリングシリンダ11のピストンロッド後端に上下軸心周りに回動自在に天秤杆12が取り付けられている。また、天秤杆12の連結部の右側はロッドに連結している。
【0020】
機体中央部に設けられた昇降用油圧シリンダ14が後述する畝高さ検知センサ15の検出結果に基づいて、そのピストンロッド14aが機体前方に突出すると、ロッドや左右水平制御用ローリングシリンダ11も前方に移動し、前記ロッドとローリングシリンダ11にそれぞれ連結しているアーム16が機体側面視で前方に回動し、これに伴い左右の走行伝動ケース9が回動中心回りに下方に回動して左右の後輪7が下降し、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ14のピストンロッド14aが機体後方に引っ込むと、左右の前記アーム16は後方に回動し、これに伴い走行伝動ケース9が回動中心回りに上方に回動して左右の後輪7が上昇し、機体が下降する。
【0021】
また、前記左右水平制御用ローリングシリンダ11が伸縮作動すると、左側の走行伝動ケース9のみを上下動させて左側の後輪7のみを昇降し、機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用ローリングシリンダ11は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出するセンサ(図示せず)の検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動する構成にしている。
【0022】
ミッションケース8aと植付伝動ケース22を連結する伝動ケース8bは平面視でコ字状に形成した機体フレームを兼用した構成となっているので、別途特別な機体フレームを設ける必要がなく、軽量コンパクトで簡潔な機体構成となり、機体の操作性及び走行性能が向上して、良好な苗植付作業が行える。また、伝動ケース8bの平面視でコ字状に形成した空間部に昇降用油圧シリンダ14を配置した構成となっているので、機体の上下高さも低くでき、ひいては昇降用油圧シリンダ14の上方に配置されるステップ80の高さも低い位置に配置することができるので更に簡潔な機体構成となると共に、座席79に着座する作業者もステップ80の高さが低いので、作業性良く苗植付作業及び機体操作が行える。
【0023】
17は前輪支持フレームで、植付伝動ケース22下方の左右に基部を固定し、植付伝動ケース22から前方に向けて延設している。該前輪支持フレーム17に前輪支持体17aの左右中央部を固定し、該前輪支持体17aの左右両側部に上下方向に延びる左右操舵軸18を回動自在に枢支し、該左右操舵軸18の各々の下端部側方に固定した左右車軸18aに各々左右前輪6を回転自在に取り付けている。尚、前輪支持フレーム17の前部は、前部バンパー17bが一体に形成されている。
【0024】
19は畝Uの左右側面に接当して回転する左右回転ローラ19aを装備した機体進行方向修正用操舵機構であって、その左右上部アーム19bを各々前記左右操舵軸18上部に固定し、左右回転ローラ19aが畝Uの左右側面に常に接当するようにその左右上部アーム19bを介して左右操舵軸18を回動操作して左右前輪6を自動操舵し、機体が畝Uに沿って進行するように作用する。
【0025】
操縦ハンドル2は、その基部がミッションケース8aに前端部を固定したエンジンフレーム20に取り付けられている。操縦ハンドル2は、エンジンフレーム20の左右から上方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2の左右グリップ部2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2aは、作業者がその左右グリップ部2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、左右グリップ部2aの各々の下方には、左右の後輪7の駆動を各々断って機体を旋回操作する左右サイドクラッチレバー2bが設けられている。
【0026】
苗植付け体5作動用の上下動機構4は、前記伝動ケース8bの前部に固定した植付伝動ケース22に装着している。植付伝動ケース22内には、伝動ケース8bから伝動された苗植付け体5の上下動機構4を昇降駆動するための動力を伝達する伝動機構を内装している。
【0027】
尚、植付伝動ケース22内の伝動機構には、上下動機構4及び左右一対の苗植付け体5をその昇降動最上位の位置で、又はその近傍位置で設定時間停止させる間欠駆動機構と、上下動機構4及び苗植付け体5の昇降動を停止させるクラッチ機構とを備えている。間欠駆動機構によって停止する時間は、該間欠駆動機構が備える変速機構によって調節され、この調節によって苗植付け体5による苗植付株間が変更調節されるようになっている。
【0028】
また、苗植付け体5を備える苗植付装置23に苗を供給する苗供給装置24は、苗を上方から受け入れて内側に苗を収容する複数(計32個)の苗収容体となる苗供給カップ25と、該苗供給カップ25を苗植付け体5の上方を通過するように周回移動させる移動機構26と、苗植付け体5の上方位置で苗供給カップ25の底部を開放して内側に収容した苗を落下させて苗植付け体5に苗を供給する苗落下供給機構となる開放機構27とを備えている。前記苗供給カップ25は、上下に開口する筒状体と該筒状体の下側の開口部を開閉する底蓋25aとを有し、互いにループ状に連結されている。前記移動機構26は、機体平面視で左右に長い長円形状のループ状の軌跡で周回動させる構成となっている。前記開放機構27は、苗供給カップ25の底蓋25aを苗植付け体5の上方位置で開放する構成である。尚、この苗供給装置24は、二つの苗植付け体5に対して苗供給カップ25が一回りで周回移動して苗を供給する構成としている。
【0029】
前記苗供給カップ25の外周に円筒外周部を形成し、該円筒外周部に外側から回動自在に係合する係合部(丸孔)を有して二つの苗供給カップ25を連結する連結体28を複数設け、該連結体28の係合部を苗供給カップ25の円筒外周部に回動自在に係合し該円筒外周部を回動軸として隣の苗供給カップ25が回動自在に連結する状態として複数の苗供給カップ25を互いに連結した構成としている。即ち、苗供給カップ25と連結体28とで無端チェーンのように連結した構成である。これにより、苗供給カップ25は、直線的に移動する部分でも円弧状に移動する部分でも隣接する苗供給カップ25との間隔が変わらないので、苗供給カップ25から苗植付け体5に苗を供給する個所で苗供給カップ25が苗植付け体5に対して位置ズレが生じにくくなり苗供給が適正に行われて適確な苗の移植ができる。
【0030】
移動機構26は、無端チェーンのように互いに連結する苗供給カップ25を左右に設けた巻掛用のスプロケット29の外周の円弧状切欠部に係合させて巻き掛け、この左右の巻掛スプロケット29を植付伝動ケース22内から取り出した動力で駆動回転することにより、苗供給カップ25を機体平面視で右回りに周回動させる構成としている。巻掛スプロケット29を駆動回転可能に取付ける各々の回動軸30を植付伝動ケース22から左右に延びる支持フレームに回動可能に取付け、植付伝動ケース22上部から上方に突出させた出力軸から各々の駆動スプロケット33、チェン34及び従動スプロケット35を介して該従動スプロケット35と一体回転する前記回動軸30に伝動する構成としている。尚、従動スプロケット35と巻掛スプロケット29とは、ボルト36により結合され、両者が一体回転する構成となっている。従って、苗供給カップ25の周回移動経路には、左右各々の半円状の円弧状部分37と、該円弧状部分37につながる前後各々の直線状部分38とを備える。そして、苗供給カップ25が前側の直線状部分38において左方へ移動して左右の苗植付け体25の上方を通過するようにしており、該直線状部分38に苗を苗植付け体5へ落下供給する左右の落下供給位置39,40が設定されている。苗供給カップ25が周回する左右の回動軸30は、左右の後輪7より機体内側で、且つ、後輪7の車軸10位置より前側に配置している。また、苗植付け体5は、後輪7の車軸10位置より前側に配置している。
【0031】
前記ボルト36は、巻掛スプロケット29に設けたその回転方向に長い円弧状長孔29aを通って従動スプロケット35の螺子孔に下側から螺合している。従って、前記ボルト36を弛めることにより、従動スプロケット35と巻掛スプロケット29との回転位相を、前記円弧状長孔29aの範囲内で変更して調節できる構成となっている。尚、前記ボルト36は1本だけであるので、従動スプロケット35と巻掛スプロケット29との回転位相の変更を容易に行える。前記円弧状長孔29aによる調節範囲は、巻掛スプロケット29において苗供給カップ25の配列ピッチ分(後述する第一及び第二の苗供給カップ25b,25cの配列ピッチの2分の1分)に設定されている。この円弧状長孔29a及びボルト36等により、左右の落下供給位置39,40の変更に合わせて左右各々の苗植付け体5が上動したときに該苗植付け体5へ落下供給する苗を収容する苗供給カップ25が当該落下供給位置39,40に到達するように上下動機構4の作動に対する苗供給カップ25の周回位置を変更する周回タイミング変更機構となる。
【0032】
複数(計32個)の苗供給カップ25は、専ら一方(右側)の落下供給位置39で落下供給する苗を収容する第一の苗供給カップ25bと、専ら他方(左側)の落下供給位置40で落下供給する苗を収容する第二の苗供給カップ25cとを、各別に各々計16個備え、第一の苗供給カップ25bと第二の苗供給カップ25cとが交互に連結された構成となっている。そして、一方の落下供給位置39に第一の苗供給カップ25bが位置するとき、他方の落下供給位置40に第二の苗供給カップ25cが位置するように設定している。従って、前記第一及び第二の苗供給カップ25b,25cは、移動機構26によりループ状の一経路上で互いに同じ移動量で周回移動するから、移動機構26による周回移動により各々の落下供給位置39,40に同じタイミングで且つ同じ回数到達する構成となっている。そして、右側の苗植付け体5へ落下供給する苗を収容する第一の苗供給カップ25bの底蓋25aには、周回方向に対して左側端(周回の外側端)に突起41を設けている。一方、左側の苗植付け体5へ落下供給する苗を収容する第二の苗供給カップ25cの底蓋25aには、周回方向に対して右側端(周回の内側端)に突起41を設けている。
【0033】
開放機構27は、苗供給カップ25の周回軌跡下方で底蓋25aが下方に回動しないように底蓋25aに下方から当接して支持する支持体42を設け、この支持体42を苗植付け体5の上方位置には設けないようにすることで、苗植付け体5の上方位置(前記落下供給位置39,40)を苗供給カップ25が通過するとき、底蓋25aが支持体42による支持状態が解かれてその自重及び苗の重力により下方回動し、苗を下方に落下するべく苗供給カップ25の下部を開放する構成としている。尚、底蓋25aの回動支点は苗供給カップ25の周回下手側部分に設けられ、底蓋25aは、苗供給カップ25の周回上手側から開く構成となっている。
【0034】
前記支持体42は、機体に固定された固定支持体42a,42b,42c,42dと、機体に対して位置変更できる移動支持体42e,42fとからなる。前記固定支持体42a,42b,42c,42dは、苗供給カップ25の周回軌跡における左右の円弧状部分37並びに後側の直線状部分38の全域にわたる主固定支持体42aと、前側の直線状部分38の一部に設けた第一、第二並びに第三の副固定支持体42b,42c,42dとを備える。これらの主固定支持体42a及び第一、第二並びに第三の副固定支持体42b,42c,42dは、棒材で構成されている。前記主固定支持体42aは、底蓋25aの中央に当接するように苗供給カップ25の周回軌跡に沿って延設され、第一並びに第二の苗供給カップ25b,25cの底蓋25aを開かないように支持する。第一の副固定支持体42bは、第一の苗供給カップ25bの底蓋25aにおいて周回の外側端に設けた突起41に当接するように苗供給カップ25の周回軌跡に沿って直線状に設けられ、第一の苗供給カップ25bの底蓋25aを開かないように支持する。この第一の副固定支持体42bは、苗供給カップ25の周回において前側の直線状部分38の途中から第一の苗供給カップ25bの底蓋25aのみを閉じて支持してこの底蓋25aの支持を後続の主固定支持体42aに引き継ぐように、前側の直線状部分38の左寄りの位置で且つ主固定支持体42aの底蓋周回上手側に設けられている。第二の副固定支持体42cは、第二の苗供給カップ25cの底蓋25aの周回の内側端に設けた突起41に当接するように苗供給カップ25の周回軌跡に沿って直線状に設けられ、第二の苗供給カップ25cの底蓋25aを開かないように支持する。この第二の副固定支持体42cは、苗供給カップ25の周回において主固定支持体42aの底蓋25aの支持に引き継いで第二の苗供給カップ25cの底蓋25aのみを支持するように、前側の直線状部分38の右寄りの位置で且つ主固定支持体42aの底蓋周回下手側に設けられている。第三の副固定支持体42dは、底蓋25aの中央に当接する構成であり、苗供給カップ25の周回において前側の直線状部分38の途中から第一の苗供給カップ25bの底蓋25aを閉じるべく周回上手側ほど下位となる傾斜部分を備え、該傾斜部分で開いた第一の苗供給カップ25bの底蓋25aを上側へ案内しながら閉じる構成となっており、前側の直線状部分38の略中央の位置で且つ第一の副固定支持体42bの底蓋周回における始端部(右端部)と並行して設けられている。尚、第三の副固定支持体42dの底蓋周回における終端(左端)は、第二の副固定支持体42cの底蓋周回における終端(左端)より底蓋周回における上手側(右側)に位置している。尚、主固定支持体42aの底蓋周回における始端部は、第二の苗供給カップ25cの底蓋25aを閉じるべく周回上手側ほど下位となる傾斜部分を備え、該傾斜部分で開いた第二の苗供給カップ25cの底蓋25aを上側へ案内しながら閉じる構成となっている。
【0035】
尚、第一の副固定支持体42bは、左端を支持フレーム31から前側の直線状部分38の左端部に延びる第一支持部材43に固着して設けられている。また、第二の副固定支持体42cは、右端を支持フレーム31から前側の直線状部分38の右端部に延びる第二支持部材44に固着し、左端部を植付伝動ケース22から前方に延びる第三支持部材45に固着して設けられている。また、第三の副固定支持体42dは、前記第三支持部材45に固着して設けられている。尚、主固定支持体42aは、前記第一支持部材43及び第二支持部材44の上面に固着して設けられている。
【0036】
前記移動支持体42e,42fは、前側の直線状部分38の一部に設けた第一移動支持体42eと第二移動支持体42fとからなる。尚、これらの第一移動支持体42e及び第二移動支持体42fは、板材で構成される。前記第一移動支持体42eは、第一の苗供給カップ25bの底蓋25aにおいて周回の外側端に設けた突起41に当接するように苗供給カップ25の周回軌跡に沿って直線状に設けられ、第一の苗供給カップ25bの底蓋25aを開かないように支持する構成であり、苗供給カップ25の周回において主固定支持体42aの底蓋25aの支持に引き継いで第一の苗供給カップ25bの底蓋25aのみを支持するように、前側の直線状部分38の右寄りの位置で且つ主固定支持体42aの底蓋周回下手側に設けられている。この第一移動支持体42eは、第二支持部材44に設けた左右方向に長い長孔46を貫通して設けた取付ボルト47により前記第二支持部材44に皿バネ47’を介して左右方向に移動自在に装着され、前記長孔46により左右方向の位置を変更でき、また、その位置で皿バネ47’の弾性力にて固定される構成となっている。尚、前記取付ボルト47は、苗供給カップ25の周回域より外側(前側)に位置し、苗供給カップ25が邪魔にならない位置に設けている。
【0037】
前記第二移動支持体42fは、第二の苗供給カップ25cの底蓋25aの周回の内側端に設けた突起41に当接するように苗供給カップ25の周回軌跡に沿う直線状部分を備え、第二の苗供給カップ25cの底蓋25aを開かないように支持する構成であり、苗供給カップ25の周回において第二の副固定支持体42cの底蓋25aの支持に引き継いで第二の苗供給カップ25cの底蓋25aを支持するように、前側の直線状部分38の左寄りの位置で且つ主固定支持体42aの底蓋周回上手側の端部(周回軌跡における左側の円弧状部分37の始端部)との間隔を空けて設けられている。この第二移動支持体42fは、該第二移動支持体42fが備える左右方向に長い長孔48を貫通する取付ボルト49により前記第三支持部材42dに皿バネ49’を介して左右方向に移動自在に装着され、前記長孔48により左右方向の位置を変更でき、また、その位置で皿バネ49’の弾性力にて固定される構成となっている。尚、第二移動支持体42fは、長孔48を設けた位置調整用部分と底蓋25aを支持する底蓋支持部分とで2又に分かれた平面視U字型の形状になっており、この位置調整用部分と底蓋支持部分との間に第二の副固定支持体42cを配置して、該第二の副固定支持体42cに引き継いで確実に底蓋25aを支持できる構成としている。また、第二移動支持体42fの位置を長孔48により最も底蓋周回上手側の位置(右端位置)にしたとき、前記底蓋支持部分が第二の副固定支持体42cと第三の副固定支持体42dとの間に位置する構成となっており、これらの第二移動支持体42f及び第二並びに第三の副固定支持体42c,42dをコンパクトに配置している。尚、前記取付ボルト49は、苗供給カップ25の周回域の内側(後側)に位置し、苗供給カップ25が邪魔にならない位置に設けている。
【0038】
また、第一移動支持体42eと第二移動支持体42fの左端部(第一移動支持体42eまたは第二移動支持体42fにて底蓋25aの突起41を下方から支えることを解除して、苗供給カップ25bの底蓋25aが下方に開いて苗が苗植付け体5内に供給される部位)に、苗を苗植付け体5内に適切に供給する為の苗案内体を設けると、落下供給位置39,40で苗供給カップ25内の苗が苗植付け体5内に適切に供給されて、苗供給カップ25から苗植付け体5への苗供給ミスが防止されて欠株が防止されると共に、内苗植付け体5は苗を適正な姿勢で植付けることができ、苗の植付け姿勢が向上する。
【0039】
尚、第一移動支持体42e及び第二移動支持体42fの位置を変更するための長孔46,48及び取付ボルト47,49は、各々左右に2個づつ設けられ、第一移動支持体42e及び第二移動支持体42fを左右真直方向に移動できる構成としている。また、第一移動支持体42e及び第二移動支持体42fの位置変更量は、前記長孔46,48により苗供給カップ25における配列ピッチ分に規制されており、この規制手段により後述する植付位置の変更で落下供給位置39,40を誤った位置に調節しないように構成している。従って、第一の苗供給カップ25bが第一移動支持体42eの底蓋周回下手側の端部(左端部)で該第一の苗供給カップ25bの底蓋25aが支持されなくなる位置まで移動すると、第一の苗供給カップ25bの底蓋25aが開放される。すなわち、第一移動支持体42eの底蓋周回下手側の端部(左端部)が、第一(右側)の落下供給位置39となる。また、第二の苗供給カップ25cが第二移動支持体42fの底蓋周回下手側の端部(左端部)で該第二の苗供給カップ25cの底蓋25aが支持されなくなる位置まで移動すると、第二の苗供給カップ25cの底蓋25aが開放される。すなわち、第二移動支持体42fの底蓋周回下手側の端部(左端部)が、第二(左側)の落下供給位置40となる。尚、第二の副固定支持体42cにより、周回上手側の第一の落下供給位置39で第二の苗供給カップ25cの底蓋25aが開放しないようにする開放規制手段が構成されている。
【0040】
よって、第一移動支持体42eを長孔46により最も周回下手側(左側)に位置させ、第二移動支持体42fを長孔48により最も周回上手側(右側)に位置させると、第一の落下供給位置39と第二の落下供給位置40との互いの間隔が最も狭まり、植付条間が最も狭い状態となる。このとき、左右の落下供給位置39,40の間隔は、苗供給カップ25における配列ピッチの3倍すなわち第一及び第二の苗供給カップ25b,25cにおける配列ピッチの1.5倍となる。逆に、第一移動支持体42eを長孔46により最も周回上手側(右側)に位置させ、第二移動支持体42fを長孔48により最も周回下手側(左側)に位置させると、第一の落下供給位置39と第二の落下供給位置40との互いの間隔が最も広がり、植付条間が最も広い状態となる。このとき、左右の落下供給位置39,40の間隔は、苗供給カップ25における配列ピッチの5倍すなわち第一及び第二の苗供給カップ25b,25cにおける配列ピッチの2.5倍となる。従って、各々の落下供給位置39,40は苗供給カップ25における配列ピッチ分だけ位置変更できる構成となっており、左右の落下供給位置39,40の互いの間隔が、第一及び第二の苗供給カップ25b,25cにおける配列ピッチの整数倍(1倍)(苗供給カップ25における配列ピッチの偶数倍(2倍))の距離分変化するようになっている。
【0041】
苗植付装置23は、先端が下方に向かうくちばし状の苗植付け体5と、該苗植付け体5の下端部が圃場面より上方となる位置と圃場面より下方となる位置とに昇降するように苗植付け体5を上下動させる上下動機構4と、くちばし状の苗植付け体5の下端部が閉じて上方から苗を受け入れて内側に苗を収容可能する閉状態と苗植付け体5の下端部が左右に開いて内側に収容した苗を下方に放出可能する開状態とに苗植付け体5を開閉する開閉機構50を備えている。
【0042】
この苗植機1は、苗植付け体5を左右に設定間隔で複数体並べて配備した複数条植の構成としている。本例では、苗植付け体5を左右に設定間隔で二体並べて配備した二条植えの構成としている。
【0043】
二体の苗植付け体5は、植付伝動ケース22の左右両側部に設けた上下動機構4に一体づつ装着している。先端が下方に向いたくちばし状の苗植付け体5を右側苗植付け体5Lと右側苗植付け体5Rとで構成して左右に分割し、後述する開閉機構50により右側苗植付け体5Lと右側苗植付け体5Rとが左右方向に回動して下端部を開く構成となっている。尚、左右の苗植付け体5は、上下動機構4及び開閉機構50により、同期して上下動及び開閉し、圃場に並木状に苗を2条植えする構成となっている。
【0044】
苗ガイド51は、苗植付け体5の上方に設けられ、苗供給装置24から供給された苗を苗植付け体5内に案内する筒状体であり、苗供給装置24から落下供給される苗を適確に苗植付け体5内に供給することができる。
【0045】
苗植付け体5の上下動機構4は、植付伝動ケース22の左右両側部に設けている。具体的には、植付伝動ケース22の左右側方に突出させた軸に後部を上下回動自在に装着し前部を苗植付け体5に連結した上側と下側の昇降リンク52,53と、植付伝動ケース22の側部から突出させた駆動回転する駆動軸54と、該駆動軸54に一体回転するように取付けた駆動アーム55と、該駆動アーム55の回転外周側端部と前記上側の昇降リンク52とに回動自在に連結する連動アーム56とで構成している。そして、上側と下側の昇降リンク52,53の各前端部(回動先端部)を連結部材57に回動自在に取付けて連結している。苗植付け体5は、前記連結部材57に取り付けられている。
【0046】
従って、駆動軸54の回転により駆動アーム55が駆動回転すると、昇降リンク52,53が上下動して、左右の苗植付け体5が上下動する。この上下動の上昇位置では苗植付け体5の下端部が圃場面より上方に位置し、下降位置では苗植付け体5の下端部が圃場面より下方に位置する。
【0047】
また、上側の昇降リンク52の回動支点軸58は、植付伝動ケース22から突出して回転駆動する植付出力軸59の先端部に該出力軸59の中心軸心より偏心させた位置に設けられ、該植付出力軸59の回転によって植付出力軸59の軸芯を中心として偏心量(回動支点軸58と植付出力軸59の軸芯との間隔)を半径として回転しながら移動する構成とし、上側の昇降リンク52の上下動中に回動支点軸58が前後に移動することにより、苗植付け体5をその昇降動中に前後に傾け、苗植付け体5を側面視ループ状の作動軌跡で上下動させる構成となっている。
【0048】
次に、苗植付け体5の開閉機構50について説明する。右側苗植付け体5Lの上部に設けた右側開閉用アーム部60の先端部に開閉用ケーブル61のインナーワイヤ61aの端部を連結し、左側苗植付け体5Rの上部に設けた左側開閉用アーム部62の先端部に開閉用ケーブル61のアウターケーブル61bの端部を連結し、下側の昇降リンク53の基部を枢着している回動支点軸63に回動自在に取付けた作動アーム64を設け、この作動アーム64の先端部に前記開閉用ケーブル61のインナーワイヤ61aの他端を連結し、機体側に開閉用ケーブル61のアウターケーブル61bの他端を固定して取り付けている。尚、図4は右側の苗植付装置23を示すものであり、左側の苗植付装置23においては、右側の苗植付装置23と左右対称であるので、右側開閉用アーム部の先端部に開閉用ケーブルのアウターケーブルの端部を連結し、左側開閉用アーム部の先端部に開閉用ケーブルのインナーワイヤの端部を連結した構成となっている。そして、作動アーム64が、上側の昇降リンク52の基部を枢着している回動支点軸58を回転移動させる植付出力軸50と一体回転するよう取付けたカムの作用を受けて、設定したタイミングで後側に回動する構成としている。これにより、駆動軸54の駆動回転により苗植付け体5が上下動して下降下端位置に達すると、カムの作用位置の変化により作動アーム64が後側に回動し、開閉用ケーブル61のアウターケーブル61bに対してインナーワイヤ61aが左側に引かれて右側開閉用アーム部60と左側開閉用アーム部62とが互いに近づくように回動し、左側苗植付け体5Rが左方に回動し、これに連動して右側苗植付け体5Lが右方に回動して、苗植付け体5の下部側が左右に開いて下方に開放状態となる。そして、苗植付け体5が上昇してカムの作用位置の変化により作動アーム64が苗植付け体5に対して元の位置(前側)に回動して開閉用ケーブル61のインナーワイヤ61aが弛められ、左右に開いた苗植付け体5の下部が閉じる。これにより、苗植付け体5の開閉を開閉用ケーブル61で行う構成としたので、従来のロッドあるいはリンクによる開閉機構と比較して、開閉用ケーブル61の連結の自由度が高いため、前後に作動する作動アーム64により左側苗植付け体5L及び右側苗植付け体5Rを異なる方向(左右方向)に回動させることができると共に、作動アーム64の少量の作動量で苗植付け体5の所望の開閉量を得る構成とすることができる。尚、左側苗植付け体5Lと右側苗植付け体5Rとは、スプリング65により苗植付け体5の下部が閉じる側へ回動付勢されている。
【0049】
上下動機構4の上下の昇降リンク52,53における各々の回動先端部(前端部)は、上下各々の連結軸66,67を介して連結部材57に連結されている。前記連結部材57は、側面視三角形状のプレート68を左右に備え、この左右のプレート68で上下の昇降リンク52,53の先端部を挟んだ構成となっており、前部には左右のプレート68にまたがる左右方向のボス69を設けている。尚、側面視で前記プレート68の三角形状の各頂点付近に前記連結軸66,67及びボス69を配置しており、上下の連結軸66,67よりボス69を前側に配置しているので、ボス69に対して後述の位置調節軸70をスライドさせるときに上下の連結軸66,67や上下の昇降リンク52,53が邪魔にならないようにしている。尚、左右のプレート68は略正三角形状であり、上下の連結軸66,67部分を上下逆にして連結部材57を取り付けてもいいように構成している。前記ボス69のボス孔は、六角形状(多角形状)になっている。一方、苗植付け体5の基部には、左右方向に延びる六角形状(多角形状)の位置調節軸70を固着して設けている。従って、前記ボス69に位置調節軸70が挿入されて連結部材57に苗植付け体5が支持され、ボス69に対して位置調節軸70を摺動させて左右方向に移動させることにより、苗植付け体5の左右位置を変更できる構成となっている。
【0050】
この苗植付け体5の左右位置の変更は、落下供給位置39,40の変更に合わせて該落下供給位置39,40の下方に苗植付け体5が位置するよう苗供給カップ25における配列ピッチ分の距離を変更できるように、位置調節軸70の長さが設定されている。すなわち、左右の苗植付け体5の互いの間隔を第一及び第二の苗供給カップ25b,25cにおける配列ピッチの整数倍(1倍)分変化させることができ、ボス69及び位置調節軸70等により苗植付け体5を移動できる植付位置変更機構が構成されている。尚、位置調節軸70は、ボス69に設けたセットボルト71によりボス69に対して左右移動しないように固定でき、左右に移動させるときは前記セットボルト71を弛めて移動させる構成となっている。このセットボルト71は、ボス69及び位置調節軸70の前側に設けられ、前側から昇降リンク52,53が邪魔にならずに容易に締付又は弛緩できる。また、位置調節軸70の断面の六角形状(多角形状)の対向する頂点が上下に位置するようにしており、上下方向の曲げに対する断面係数が向上するので、この位置調節軸70で苗植付け体5を片持ち支持するのに必要な強度を得ることができる。また、位置調節軸70の適宜位置の外周には苗植付け体5の左右位置の目安となる溝72を3箇所設け、該溝72をボス69の端に揃えることにより通常条間(320mm)と狭い植付条間時(300mm)と広い植付条間時(350mm)との苗植付け体5の左右位置に調節できるようにしており、苗植付け体5の位置変更を容易に行える構成としている。
【0051】
そして、各苗植付け体5の苗ガイド51には左方向に向けて延びた連係ロッド90の基部が溶接固着されており、該連係ロッド90の先端部は上方に向けて延びた連係部90’が形成されている。
【0052】
一方、第一移動支持体42e及び第二移動支持体42fの下方には、上記連係ロッド90の連係部90’が係合する係合溝部91が一体に形成されており、各苗植付け体5が最上昇位置に来た時に、各苗植付け体5の連係ロッド90の連係部90’が各々第一移動支持体42e及び第二移動支持体42fの係合溝部91に係合する構成となっている。この植付け体5の苗ガイド51に設けた連係ロッド90の連係部90’と第一移動支持体42e及び第二移動支持体42fの係合溝部91とによって連係機構Aが構成されている。
【0053】
従って、各苗植付け体5が最上昇位置に来た時に、各苗植付け体5の連係ロッド90の連係部90’が各々第一移動支持体42e及び第二移動支持体42fの係合溝部91に係合するので、各苗植付け体5が最上昇位置にある時に、各苗植付け体5を位置調節軸70に沿って左右位置調節して条間調節すると、各苗植付け体5の左右位置調節と同時に、各苗植付け体5の連係ロッド90の連係部90’と第一移動支持体42e及び第二移動支持体42fの係合溝部91との係合により、自動的に第一移動支持体42e及び第二移動支持体42fが左右位置調節されて、各苗植付け体5の左右位置変更と落下供給位置39,40の変更を同時に行なうことができる。よって、条間調節する作業が簡略化されて、作業能率が良い。
【0054】
また、苗供給装置24のフレーム部を植付伝動ケース22にフレーム92で連結して、苗供給装置24の支持を適正にして、苗供給装置24の各苗植付け体5に対する苗供給を適確に行なえる構成としている。従って、苗供給装置24の各苗植付け体5に対する苗供給を適確に行なえて苗の植付け作業が適正に行なえる。
【0055】
そして、上下動機構4により苗植付け体5の上下動が一周期動作する間に、第一及び第二の苗供給カップ25b,25cは各々における配列ピッチ分(一列状の苗供給カップ25の2個分:隣接するカップ25の中心間の距離が80mmにしているので、160mm)周回移動する。そして、例えば、通常条間(320mm)では、落下供給位置39,40で苗供給カップ25の底蓋25aが開くタイミングを苗植付け体5が苗供給カップ25の直下まで最上昇したときとなるように設定している(条間が320mmの場合、左右苗植付け体5の上下動が一周期動作する間の各苗供給カップ25b,25cの移動ピッチ160mmの倍数であるから、常に、落下供給位置39,40で苗供給カップ25の底蓋25aが開くタイミングを苗植付け体5が苗供給カップ25の直下まで最上昇したときに設定できる。)。この時、右側の1条目の落下供給位置39を決定する第一移動支持体42eは,条間320mmと刻印した位置に第二支持部材44の左端部に合わせた位置に設定され、左側の2条目の落下供給位置40を決定する第二移動支持体42fは,条間320mmと刻印した位置に第三支持部材42dの左端部に合わせた位置に設定される。これにより、苗供給カップ25が二つの苗植付け体5の上方を直列的に通過しながら二つの苗植付け体5に対して苗供給漏れが生じることなく同時に苗を供給でき、且つ、二つの苗植付け体5の上方を通過した後に苗が供給されなかった苗供給カップ25が生じないよう余すことなく二つの苗植付け体5に対して苗を供給できるものとなり、苗供給作業が余裕をもって行え、且つ、二つの苗植付け体5に対して確実に苗を供給できる。
【0056】
植付条間を変更しても、苗植付け体5への苗の供給を適正に行え、苗の植付精度を維持できる。また、苗植付け体5の左右方向移動と落下供給位置39,40の変更とにより、簡単に植付条間を変更できる。特に、植付条間を変更しても、左右の落下供給位置39,40の変更を第一移動支持体42e及び第二移動支持体42fの位置変更という簡単な構成で行え、更に周回タイミング変更機構による苗収容体25の周回位置(位相)の変更を従動スプロケット35に対する巻掛スプロケット29の回転位相の変更という簡単な構成でチェン34及び苗供給カップ25の巻回を外さずに行え、植付条間の変更が容易になる。尚、苗植付け体5の位置変更は、位置調節軸70の可動部分をスライドさせるだけなので、容易に行える。
【0057】
また、図6で示すように、前記苗植付け体5の苗ガイド51の形状を苗植付け体5の前後方向の片方に大きく突出した形状にしても良い。即ち、苗植付け体5が最上昇位置に来た時に、苗供給カップ25の底蓋25aが開くタイミングを設定できない場合、例えば、苗植付け体5が軌跡Tの上昇過程イで苗供給カップ25の底蓋25aが開くタイミングになっている場合には、苗植付け体5の後方向に苗ガイド51が大きく突出した形状とすれば、苗供給カップ25から苗植付け体5内に適正に苗を供給することができ、適正な苗の移植作業が行なえる。逆に、苗植付け体5が軌跡Tの下降過程ロで苗供給カップ25の底蓋25aが開くタイミングになっている場合には、苗植付け体5の前方向に苗ガイド51が大きく突出した形状とすれば、苗供給カップ25から苗植付け体5内に適正に苗を供給することができ、適正な苗の移植作業が行なえる。
【0058】
上記の植付伝動ケース22及び苗植付装置23及び苗供給装置24等により植付部Pが構成されている。
また、植え付けた苗の周辺に覆土しながら苗の周辺の土壌を鎮圧する左右の鎮圧輪73は、図面に示すように、左右の苗植付け体5のすぐ後ろ側にそれぞれ配置して設け、畝の上に植終わった苗の根元を左右両側から鎮圧して根つきを促進する。そして、左右鎮圧輪73は、植付伝動ケース22に基部を固定した支持体22aの先端部に横向きに設けたロック軸74aに上下に挿し通したロット74bの下部に軸架した構成としている。そして、前記ロック軸74aは、下部に鎮圧輪73を有する2本のロット74bを上下に貫通させているが、上下に自由に移動(摺動)できる状態と鎮圧輪73を上動させて収納した位置に固定する状態とに切替できる構成にしている。
【0059】
即ち、図1の実線の状態で、左右ロット74bは自由にロック軸74aの貫通孔内を上下移動できるので、左右の鎮圧輪73は上下に自由に移動する。そして、左右ロット74bには、その中途部に切り溝(軸径を細くした部位)74cを設け、左右ロット74bの上端部に握り部74dを設けている。従って、作業者が握り部74dを握ってロット74bを上方に引き上げると、ロット74bはロック軸74aの貫通孔内を上方に移動して、鎮圧輪73は上方に移動し収納位置になる。その時、ロット74bの切り溝74cをロック軸74aの貫通孔の上端部に引っ掛けることによって、ロット74bは上方位置で係止されて下方に落下しないように固定された状態となり、鎮圧輪73を機体旋回時等に上方に収納することができる。尚、機体旋回時等には、作業者は左右ロット74bを両方共上方に引き上げて、左右の鎮圧輪73を上方に収納すると、機体後方を下げて左右前輪6を圃場面から浮かせて旋回することができ、旋回が容易に行なえる。また、左右ロット74bを共に上方に引き上げる操作部材を設けて、該操作部材にて左右の鎮圧輪73を一緒に上方に収納できる構成とすれば、更に、旋回時の作業性が良くなる。
【0060】
鎮圧輪73は、機体側面視で前輪6と後輪7の間で、且つ、苗植付け体5のすぐ後ろ側の植付伝動ケース22の下方空間部に配置して設けているので、植付伝動ケース22の下方空間部を有効に利用して鎮圧輪73を配置することができ、機体前後長さを短く構成して軽量コンパクトで簡潔な機体構成となり、機体の操作性及び走行性能が向上して、良好な苗植付作業が行える。更に、鎮圧輪73は苗植付け体5のすぐ後ろ側に配置しているので、苗植付け体5が畝Uに植付けた苗に対して直ぐに覆土鎮圧することができ、苗の植付け姿勢が良好となり、植付け後の苗の活着及び成育が良好である。
【0061】
また、ボンネット78の上方に苗供給装置24側に向く前向きの座席79を設け、苗供給装置24との間に足を乗せる平面状のステップ80を設けている。前記座席79は、基部が機体フレームを兼用した伝動ケース8bに固定された支持フレーム81を介して機体に支持されている。該支持フレーム81は、ボンネット78の左右一方側(左側)を通って上方に延びる構成となっている。
【0062】
ステップ80には、左右の後輪7と苗植付装置23並びに苗供給装置24の駆動を入り切り操作する乗車用主クラッチペダル84と、左右の後輪7の駆動を各々断つことができる左右サイドクラッチペダル85とを設けており、座席79にいる作業者が機体の停止や機体の進行方向の修正を行うことができる。
【0063】
前輪支持フレーム17の上部で機体の左右中央部には、ステレオカメラ86が電動モータ96の駆動にて機体左右方向に随時向き変更自在に設けられている。即ち、植付操作レバー88にて昇降用油圧シリンダ14を作動させて手動で機体を昇降操作し、且つ、機体を右旋回操作すべく右サイドクラッチレバー2bを操作した場合には、電動モータ96が作動してステレオカメラ86を機体右方向を向くようにし、機体を左旋回操作すべく左サイドクラッチレバー2bを操作した場合には、電動モータ96が作動してステレオカメラ86を機体左方向を向くようにする。
【0064】
具体的には、昇降用油圧シリンダ14を作動させて手動で機体を昇降させる位置に植付操作レバー88を操作したことを検出する上昇センサと左右サイドクラッチレバー2bを操作したことを検出する旋回センサを設けて、機体を昇降させる位置に植付操作レバー88を操作したことを上昇センサが検出し且つ右サイドクラッチレバー2bを操作したことを旋回センサが検出すると、制御機構にて電動モータ96を作動させてステレオカメラ86を機体右方向を向くようにする。すると、機体を右旋回する前に苗植付作業をして畝Uに植付けた苗(前工程の植付け苗)をステレオカメラ86は認識できるようになる。また、機体を昇降させる位置に植付操作レバー88を操作したことを上昇センサが検出し且つ左サイドクラッチレバー2bを操作したことを旋回センサが検出すると、制御機構にて電動モータ96を作動させてステレオカメラ86を機体左方向を向くようにする。すると、機体を左旋回する前に苗植付作業をして畝Uに植付けた苗(前工程の植付け苗)をステレオカメラ86は認識できるようになる。
【0065】
このようにしてステレオカメラ86が前工程で植付けた苗を認識し、その苗列に沿って機体が進行するように左右サイドクラッチを制御するか又は左右前輪6操舵を自動制御してやれば、機体は前行程で植付けた苗列に沿って進行し、綺麗に苗を植付けることができる。尚、左右サイドクラッチの制御と左右前輪6自動操舵を共に行って操舵自動制御を行なう場合には、先ず、左右前輪6の自動操舵を行い、機体の進行方向を修正し、その左右前輪6の自動操舵による機体の進行方向修正が適切に行えない場合に、左右サイドクラッチの制御をして機体の進行方向修正制御を行なうようにすると、急激な進行方向修正が最初に行われないので適切な進行方向修正制御ができる。
【0066】
また、ステレオカメラ86が畝Uの終端を認識すると、主クラッチを自動的に切って左右の後輪7の駆動と苗植付装置23並びに苗供給装置24の駆動を停止し、機体を停止させると共に、警報(例えばブザー等の警音)を出して作業者に告知する。これにより、座席79に座る作業者は、苗供給作業に集中しているため機体の前方を確認しにくく、機体が畝の終端に達したことに気づかず、周囲の構造物への衝突等の事故を発生させるおそれがあるが、畝の終端で機体を自動停止すると共に警報で畝の終端に達したことを告知するため、安全に作業が行え、また機体の前方の状況及び畝の終端の位置を気にせずに苗供給装置24への苗供給作業を集中して行え、植付作業能率が向上する。尚、上記の機体を停止する前にエンジンのアクセル自動操作をして機体の進行速度を遅くするようにすると、更に安全である。
【0067】
尚、ステレオカメラ86は前輪支持フレーム17の前部バンパー17bの後方に配置されており、該前部バンパー17bは機体の防護とステレオカメラ86の防護を兼用した働きがある。また、苗供給装置24の座席79側にモニターを設けて、座席79に着座して苗供給装置24に苗供給している作業者が該モニターでステレオカメラ86の映像を見えるようにすると、苗供給作業をしながら畦U終端を認識できて更に安全である。
【0068】
また、操縦ハンドル2の近くには、左右の後輪7と苗植付装置23並びに苗供給装置24の駆動を手動で入り切りする主クラッチレバー87と、苗植付装置28並びに苗供給装置32の駆動のみを手動で入り切りする植付操作レバー88とを備えている。また、前記植付操作レバー88により、昇降用油圧シリンダ14を作動させて手動で機体を昇降操作することもできる。
【0069】
座席79の左右側方には、苗収容体(苗箱、苗トレイ又は苗コンテナ等)を載置する苗載台89aを配置している。該苗載台89aは、機体フレームを兼用した伝動ケース8bに基部を固定した左右苗載台支持フレーム89bの上部に左右各々3段設けている。そして、左右苗載台支持フレーム89b及び苗載台89aは座席79の左右側方に配置されており、座席79に着座した作業者を機体転倒時に保護する安全フレームを兼用した構成となっている。尚、座席79に着座した作業者は、苗載台89aに載置されている苗トレイ等の苗収容体を取出して、苗供給装置24の上部に設けた前が高くて後が低くなるように傾斜した載置台93に載せ、該載置台93に載せた苗収容体から苗を一株ずつ取出して、苗供給装置24の苗収容体25に供給して苗植付作業をする。
【0070】
93は植え付けた苗の周辺に覆土しながら苗の周辺の土壌を鎮圧する左右の後部鎮圧輪であって、エンジンフレーム20に基部が固定されて機体後方に向けて延設した後部フレーム94に縦軸95を上下位置調節自在に設けて、該縦軸95の下部に回転自在に設けている。従って、後部鎮圧輪93の上下位置は、鎮圧輪73の上下位置調節に合わせて調節することができる。そして、この後部鎮圧輪93は、左右の苗植付け体5のすぐ後ろ側に設けた鎮圧輪73で覆土鎮圧した苗に対して、更にもう一度覆土鎮圧作用するものであり、畝Uに植付けた苗に対して2度覆土鎮圧作用をすることになり、苗の植付け姿勢が良好となり、植付け後の苗の活着及び成育が良好となる。更に、後部鎮圧輪93は機体後部に左右一対設けられているので、機体転倒防止輪としての機能があり、機体が左右傾斜した時に、機体の転倒を防止することができる。
【0071】
そして、特に、左右前輪6と左右後輪7を装備した機体の後部側にエンジン3及びミッションケース8aを配置し、機体の前部側に植付伝動ケース22及び苗植付装置23及び苗供給装置24により構成される植付部Pを配置し、苗供給装置24の機体後方に作業者が機体前方を向いて着座する座席79を配置した乗用苗植機であるから、作業者は座席79に機体前方を向いて着座して苗供給装置24に苗供給作業を行なうことができて苗植付作業が容易に行え、然も、機体前方を向いて着座しているので畝Uの終端位置も認識できて安心して作業が行え、作業効率も良い。
【0072】
尚、上述は2条植えの構成について説明したが、3条以上の構成に応用してもよい。このとき、周回タイミング変更機構による苗収容体の周回位置(位相)の変更量は、複数の落下供給位置のうちの苗収容体の周回経路における位置変更が最も小さい落下供給位置の位置変更量に合わせるとよい。
【0073】
また、上述は複数条に並木植えする構成について説明したが、例えば左右の苗植付け体の作動タイミングを異ならせた構成等の千鳥植えする構成に応用してもよい。尚、左右の苗植付け体の作動タイミングを異ならせた場合は、第一及び第二の苗収容体が移動機構による周回移動で各々の落下供給位置に異なるタイミングで同じ回数到達する構成となる。
【符号の説明】
【0074】
3 エンジン
5 苗植付け体
6 左右前輪
7 左右後輪
8a ミッションケース
8b フレーム
9 左右走行伝動ケース
22 植付伝動ケース
24 苗供給装置
73 鎮圧輪
79 座席
P 植付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の後部側にエンジン(3)を配置し、機体の前部側に植付部(P)を配置し、植付部(P)の機体後方に作業者が機体前方を向いて着座する座席(79)を配置したことを特徴とする乗用苗植機。
【請求項2】
機体の後部側に設けたエンジン(3)の動力を変速するミッションケース(8a)と機体前部側に設けた植付部(P)の植付伝動ケース(22)を連結するフレーム(8b)を平面視でコ字状にし、該フレーム(8b)の前部が機体側面視で機体前後中央部に位置する構成とし、該フレーム(8b)の前部に左右走行伝動ケース(9)の基部を回動自在に設け、該左右走行伝動ケース(9)を後方に向けて設けてその後端部に各々左右後輪(7)を設け、該左右後輪(7)を機体側面視で座席(79)の下方に配置したことを特徴とする請求項1記載の乗用苗植機。
【請求項3】
左右前輪(6)と左右後輪(7)で機体を支持して走行する構成とし、機体側面視で前輪(6)と後輪(7)の間で、且つ、苗植付け体(5)のすぐ後ろ側の植付伝動ケース(22)の下方空間部に鎮圧輪(73)を配置したことを特徴とする請求項1記載の乗用苗植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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