説明

二次電池の充放電装置

【課題】 二次電池の充放電工程において、いずれかの二次電池でガス噴出が生じた場合に、他の二次電池の汚染を最小限に抑える。
【解決手段】 二次電池の充放電装置100は、正極および負極外部端子12,13とガス排出弁22を同一面に設けた二次電池10を充放電するものである。そして、この充放電装置100は、正負極外部端子12,13に当接して端子から二次電池10を充放電するプローブ131と、ガス排出弁22に接続される接続ブロック152を有し、ガス排出弁22から排出されたガスを収集して排出するダクト装置150と、正負極外部端子12,13とプローブ131とを接触させるとともに、ガス排出弁22を接続ブロック152に接続するように、二次電池10とプローブ131および接続ブロック152とを相対移動するシリンダ113とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の充放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド自動車等の電源としての二次電池は、出荷前に初期充電工程と、充放電工程と、エージング工程が不可欠である。充放電工程では、充放電装置によって所定のシーケンスで充電と放電を実行する。
【0003】
たとえば特許文献1には、複数の二次電池を同時に充放電する二次電池の充放電装置が開示されている。この充放電装置では、制限治具の電池収容部に複数の二次電池を設置して充放電を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−252831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出荷前の充放電工程では、複数の二次電池に対して所定シーケンスで充放電を行う際、内部短絡が生じた二次電池からガスや電解液が噴出することがある。しかしながら、特許文献1の充放電装置では、二次電池の安全弁装置にガス収集ダクトが接続されていないので、ガス放出弁から噴出したガスや電解液が他の二次電池やその周辺に飛散して汚染する惧れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、正極および負極外部端子とガス排出弁を同一面に設けた二次電池の充放電装置において、前記正極および負極外部端子に接触して前記外部端子から前記二次電池を充放電するプローブと、前記ガス排出弁から排出されたガスを収集して排出する排気通路と、
前記二次電池の充放電時に前記ガス排出弁に接続される接続部と、前記正負極外部端子と前記プローブとを接触させるとともに、前記ガス排出弁を前記接続部に接続するように、前記二次電池とプローブおよび接続部を相対移動する相対移動手段とを有することを特徴とする。
複数の二次電池を保持する保持装置をさらに有する充放電装置では、前記プローブと前記接続部が前記複数の二次電池に対応して複数設けられ、前記排気通路は複数の接続部に共通に設けられる。接続部のそれぞれには、前記ガス排出弁から排出されて前記排気通路に流入したガスの逆流を阻止するガス逆流防止弁が設けられる。
前記ガス逆流防止弁は、前記ガス排出弁から排出されたガスの圧力で開弁してガスを前記排気通路に流入させる。
ガス排出弁を覆うガス捕集ダクトが前記二次電池に装着されているとき、前記接続部には前記ガス捕集ダクトが挿入される挿入部と、前記挿入部に設けられ、前記ガス捕集ダクトと前記接続部との間を封止する封止装置を有する。
封止装置は、前記ガス捕集ダクトの筒状体の先端が当接されるシール部材と、前記シール部材を前記ガス捕集ダクトの筒状体の先端に向けて付勢する付勢部材とを備える。
前記プローブは、前記正負極外部端子との接触圧を得るように弾性支持され、前記相対移動手段は、前記プローブと前記正負極外部端子との接触圧が設定値になるときに、前記ガス捕集ダクトの筒状体の先端が前記シール部材に接続されて前記封止装置で前記ガス捕集ダクトと前記接続部との間を封止するのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、二次電池の充放電工程において、いずれかの二次電池でガス噴出が生じた場合に、他の二次電池の汚染を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による充放電装置によって充電される二次電池の例を示す外観図。
【図2】図1の二次電池のガス排出弁を拡大して示す断面図。
【図3】本発明による充放電装置の一実施形態の構成を示す斜視図。
【図4】図3に示す充放電装置の正面図。
【図5】図4のV−V矢視線に沿う断面図。
【図6】図4の右側面図。
【図7】図4の二次電池セット状態に至る前の状態を示す部分拡大断面図。
【図8】図4の二次電池セット状態を示す部分拡大断面図。
【図9】図8の二次電池セット状態の充放電装置において、二次電池からガス噴出が生じた状態を示す部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による二次電池の充放電装置の一実施形態を、図面を参照して説明する。本発明による二次電池の充放電装置は、たとえば電気自動車、ハイブリッド自動車の電源としてのリチウムイオン二次電池の出荷前の充放電工程で使用されるものである。この種の二次電池は、出荷前に初期充電工程と、充放電工程と、エージング工程が不可欠であり、充放電工程では、本発明の充放電装置によって所定のシーケンスで充電と放電を実行する。
【0010】
[薄型二次電池]
本発明による充放電装置により充放電される二次電池について、図1および図2を参照して説明する。
【0011】
図1、図2に示すように、薄型二次電池10は、横断面形状が扁平な長方形、若しくは隅丸長方形ないし長円形である電池容器11と、電池容器内に収容した電極群(不図示)と、電池容器11の開口端(上端)を封止するとともに正負極外部端子12,13が突設された蓋21と、電極群(不図示)と正負極外部端子とを接続する正負極集電部材17,18とを有する。
【0012】
蓋21の中央部にはガス排出弁22が設けられている。電極群が短絡等により発熱し電池容器11内の圧力が所定値まで上昇するとガス排出弁22が開裂し、ガスが排出されて容器内圧が低減される。蓋21には、ガス排出弁22を覆うようにガス捕集ダクト14が装着されている。ガス捕集ダクト14は蓋21に形成された環状突起21Pによって位置決めされている。蓋21には、電解液を注入する注液口20Mが設けられ、注液口20Mは電解液注入後、注液栓20によって塞がれている。
【0013】
正負極外部端子12,13は、蓋21の上面に絶縁部材23を介在させて設けた正極端子15および負極端子16により正極集電部材17および負極集電部材18にそれぞれ接続されている。これによって正負極外部端子12,13は集電部材17,18をそれぞれ介して内部の電極群に接続されている。絶縁部材23によって正負極外部端子12,13は蓋21に対して電気的に絶縁されている。正極集電部材17および負極集電部材18は蓋21を貫通するが、絶縁性のガスケット19で密閉されている。
【0014】
[充放電装置]
図3〜図9を参照して、本発明による充放電装置の実施形態について説明する。
二次電池の充放電装置100は、充放電治具装置110と、制御装置120とを備える。
【0015】
−充放電装置−
充放電治具装置110は、複数の薄型二次電池10を厚さ方向に並列して収容、保持するトレイ111と、トレイ111が載置されたステージ112と、ステージ112を昇降させるシリンダ113と、複数の薄型二次電池10の充放電を行う充放電ユニット130と、ダクト装置150と、これらトレイ111、ステージ112、シリンダ113、充放電ユニット130およびダクト装置150を収容する筐体115とを備えている。
【0016】
充放電ユニット130は、筐体115内でステージ112と対峙して配置されている。充放電ユニット130は、二次電池側から見た平面図である図5に示すとおり、複数の二次電池の正負極外部端子12,13とそれぞれが接続される複数のプローブ131を備えている。複数のプローブ131はユニット筐体132の底面132Aから突設されている。
【0017】
プローブ131には、ユニット筐体132に収納された給電ケーブル(図示省略)を介して制御装置120内の電源装置121から直流電力が給電される。
【0018】
プローブ131の先端部には、弾性的に伸縮可能な接触部131Aが設けられている。すなわち、プローブ131の接触部131Aは弾性支持されている。シリンダ113が伸長してステージ112が上昇すると、トレイ111に保持されている薄型二次電池10の正負極外部端子12,13が対応するプローブ131にそれぞれ接触する。このとき、正負極外部端子12,13の上昇によりプローブ131の接触部131Aが弾性的に上方に押し込まれ、プローブ131は弾性付勢力をもって正負極外部端子12,13にそれぞれ接触する。
【0019】
複数の薄型二次電池10はトレイ111に収納されたときに位置決めされ、ステージ112上にトレイ111が載置されたとき、複数の薄型二次電池10の正負極外部端子12,13と一対のプローブ131とが対向配置される。
【0020】
−ダクト装置−
図3〜図6を参照してダクト装置150を詳細に説明する。
ダクト装置150は、充放電工程において薄型二次電池10から噴出したガスを捕集して筐体115の外部に排出するものであり、図6に示すように、ユニット筐体132に取り付けられている。ダクト装置150は、ダクト本体151と、ガス捕集ダクト14が接続される電池接続ブロック152と、ダクト本体151の他端に設けた排気ダクト153とを有する。ダクト本体151と排気ダクト153は排気通路として機能し、電池接続ブロッック152は接続部として機能するものである。
なお、排気ダクト153は、ガス流路が鉛直方向に延在し、排気開口が上方に向くようにダクト本体151に接続されている。これは、筐体115にガスや電解液が漏洩することを防止する目的である。
【0021】
図5に示すように、ダクト本体151は、ユニット筐体132の底面において一対のプローブ131の間に設けられ、二次電池10の並び方向に延在している。ダクト本体151の底面側には、電池接続ブロック152が二次電池10の並び方向にその並びピッチで並置されている。電池接続ブロック152は、電池蓋21に対応した細長い矩形形状の輪郭形状を呈し、横断面が矩形の筒状体である。電池接続ブロック152の底板152Aには、ガス捕集ダクト14、具体的にはダクト14の筒状体が挿入される開口152Bが設けられている。
【0022】
−ガス逆流防止弁−
図7〜図9に示すように、ダクト装置150の複数の電池接続ブロック152には、それぞれガス逆流防止弁50が設けられている。充放電工程中にいずれかの薄型二次電池10からガスが噴出したときに、他の薄型二次電池10にそれぞれ接続したダクト本体151のガス逆流防止弁50により、噴出したガスや電解液が他の薄型二次電池10に到達することが防止される。
【0023】
電池接続ブロック152の底板152Aの内側にはパッキン51が設けられ、パッキン51を介在させてタップワッシャ52が筒状体側面に固定保持されている。タップワッシャ52と所定距離離間させてワッシャ53が筒状体側面に固定保持され、ワッシャ53とタップワッシャ52との間の空間にはゴムワッシャ54が配設され、ワッシャ53の上面には弁体55が配設されている。
【0024】
タップワッシャ52には一対のタップねじ56が螺合されて立設され、このタップねじ56がゴムワッシャ54とワッシャ53と弁体55とを貫通している。ワッシャ53とゴムワッシャ54との間のタップねじ56にばね57が装着され、ゴムワッシャ54は所定のばね力で底板152A側に付勢されている。ワッシャ53と弁体55を貫通したタップねじ56の頭部にはナットが螺合され、ナットとワッシャ53との間にばね58が装着されている。弁体55は、このばね58のばね圧でワッシャ53に押圧されている。ワッシャ53の弁体55が接する面は平滑面とされ、弁体55がばね58のばね圧でワッシャ53に着座しているとき、ガス逆流防止弁50が閉弁し、ダクト本体151とガス捕集ダクト14内とを密閉する。
【0025】
パッキン51、タップワッシャ52、ゴムワッシャ54、ワッシャ53の中央にはそれぞれ開口があけられている。パッキン51の開口の大きさは、ガス捕集ダクト14の筒の直径よりも少し小さい直径の丸穴であり、ガス捕集ダクト14の筒が電池接続ブロック152に挿入されたとき、ダクト筒の外周面をシールする。タップワッシャ52の開口はガス捕集ダクト14の径よりも大きい。
【0026】
ゴムワッシャ54の開口は、下方に向かって大径となるテーパ孔54Hである。ガス捕集ダクト14を下方から電池接続ブロック152内に挿入したとき、ガス捕集ダクト14の先端がテーパ孔54Hに当接する。このときばね57は圧縮され、ガス捕集ダクト14の先端がテーパ孔54Hに密着する。
【0027】
このように実施形態の電池接続ブロック152には、ガス捕集ダクト14の筒状体が挿入される挿入部と、挿入部に設けられて、ガス捕集ダクト14と電池接続ブロック152との間を封止する封止装置とが設けられている。ここで、挿入部は上記パッキン51、タップワッシャ52、ゴムワッシャ54、ワッシャ53の中央にあけられた開口である。また、パッキン51やゴムワッシャ54はシール部材であり、これらがガス捕集ダクト14と密接に接触する構造が封止装置として機能する。
【0028】
一方、ガス捕集ダクト14から噴出したガスの圧力はワッシャ53の開口53Hを介して弁体55に作用する。ガス圧がばね58による押圧力を越えると弁体55はワッシャ53から離間して、ガスがダクト本体151に流出し、二次電池10の内圧を低減する。ガス圧で弁体55が作動するとダクト本体151内の圧力が上昇し、ダクト本体151に共通に接続されている他の二次電池10の弁体55の上面にガス圧が作用し、弁体55がワッシャ53に押圧される。これにより、ダクト本体151に流入したガスが他の二次電池10の電池接続ブロック152に流出することが防止される。すなわち、ばね58と弁体55とがガス逆流防止弁50として機能する。
【0029】
このように弁体55は、ダクト本体151から下方への流れを阻止する常閉型逆止弁として機能し、いずれかの薄型二次電池10がガスを噴出した際に、そのガスがダクト本体151を介して、他の薄型二次電池10のガス捕集ダクト14内、またはその周囲に達することを防止する。さらに、弁体55は、ダクト本体151内に滞留した塵埃等がガス捕集ダクト14内、またはその周囲に達することを防止する。
【0030】
なお、ダクト本体151、電池接続ブロック152,排気ダクト153、ワッシャ53、ゴムワッシャ54、タップワッシャ52、パッキン51、弁体55は、薄型二次電池10が異常発熱し、圧力が高まった際にも、ガスの熱、圧力によって変形することなく、かつ、引火しない材質である必要があり、たとえば、耐熱樹脂等によって形成される。
【0031】
−制御装置120−
制御装置120には電源装置121が設けられている。電源装置121は、商用交流電力を直流電力に変換して薄型二次電池10に直流電力を供給する電源である。電源装置121は、シリンダ113にも駆動電力を供給する。制御装置120には、二次電池の充放電装置の制御プログラムを格納、実行するコンピュータ200が接続されている。
【0032】
ステージ112の底面には制御部122が設けられ、制御部122は、シリンダ113の動作命令信号および充放電開始および終了信号を出力する。これら信号に基づいて、シリンダ113が上昇して、正負極外部端子12,13をプローブ131に当接させて薄型二次電池10に対する充放電工程を開始する。充放電工程の終了後、シリンダ113を下降して、正負極外部端子12,13をプローブ131から開放し、充放電工程を終了する。
【0033】
図3〜図6において充放電着工における薄型二次電池10の移動と、充放電ユニット130の動作の概要を説明する。
【0034】
薄型二次電池10をトレイ111の所定位置に配置した後、ステージ112へ装填する。 プローブ131と正負極外部端子12,13との接触圧が設定値になるように、シリンダ113で二次電池10を上昇させる。すなわち、正負極外部端子12,13をプローブ131に当接させ、充放電を着工する。
【0035】
この動作は、薄型二次電池10から排出されるガスの流路を形成する目的も兼ねており、プローブと端子12,13を接触させるとき、ガス捕集ダクト14の先端部はゴムワッシャ54のテーパ孔54Hに当接する。ステージ112の上昇移動量は、ガス捕集ダクト14の先端部がゴムワッシャ54のテーパ孔54Hに突き当たり、ばね付ビス56のばね57が所定量圧縮されるようにする。これにより、排出ガス流路接続の密着性を高めて流路接続部からのガス漏れを低減する。すなわち、ガス捕集ダクト14の筒状体の先端がゴムワッシャ54のテーパ孔54Hを押圧し、ガス捕集ダクト14と接続ブロック152との間が封止される。
【0036】
充放電の終了後には、シリンダ113を下降させてトレイ111ごと二次電池10を下降させる。これにより、正負極外部端子12,13がプローブ131から離間し、薄型二次電池10は電気的に開放される。
【0037】
薄型二次電池10のガス排出弁22からガスが排出され、ガス捕集ダクト14でダクト本体151内に誘導されたときのガス逆流防止弁50の動作を説明する。
【0038】
薄型二次電池10のガス排出弁22から排出されるガスは、ガス捕集ダクト14の開口部から電池接続ブロック152内に流入する。このガスによって、ばね58の弾性力に抗して弁体55が押し上げられ、ガスはダクト本体151内に流入する。このガス流入によってダクト本体151内の圧力が高まる。
【0039】
ガスが噴出した薄型二次電池10以外の薄型二次電池10に接続されたガス逆流防止弁50においては、ダクト本体151内の圧力上昇によって、弁体55はワッシャ53に押し付けられ、ガス逆流防止弁50の常閉型逆止弁機能により、ダクト本体151内のガスがガス捕集ダクト14の方向に漏れることはない。
従って、ダクト本体151内のガスは排気ダクト153方向に導かれ、図3に符号90で示すように排気ダクト153から排気される。排気ダクト153には不図示の排気管路が接続され、筐体115の外へガスが排出される。
【0040】
さらに、筐体115の外に排気されたガスを、充放電装置が設置される建屋の屋外につながるダクトに接続できる構造とすれば、ガスを直ちに屋外に排出でき、室内にガスが充満することを防止することができる。
【0041】
以上説明した実施形態の二次電池の充放電装置100は、正極および負極外部端子12,13とガス排出弁22を同一面に設けた二次電池10を充放電するものである。そして、この充放電装置100は、正負極外部端子12,13に当接して端子から二次電池10を充放電するプローブ131と、ガス排出弁22から排出されたガスを収集して排出するダクト本体151および排気ダクト153と、ガス排出弁22に接続される接続ブロック152と、正負極外部端子12,13とプローブ131とを接触させるとともに、ガス排出弁22を接続部152に接続するように、二次電池10とプローブ131および接続ブロック152とを相対移動するシリンダ113と、シリンダ113による相対移動制御、およびプローブ131での充放電制御を行なう制御部120とを有する。
【0042】
このような二次電池によれば次のような作用効果を奏することができる。
【0043】
(1)充放電装置で充電される二次電池10は、電池蓋21の上面に正負極外部端子12,13とガス捕集ダクト14とを備え、充放電ユニット130は、ユニット筐体132の底面132Aにプローブ131を、ダクト本体151の底面に電池接続ブロック152をそれぞれ備えている。複数の二次電池10と充放電ユニット130を対峙させ、複数の二次電池10を一括して上昇させることにより、外部端子12,13とプローブ131の接続と、ガス捕集ダクト14と電池接続ブロック152の接続とが同時に行われる。したがって、本発明による充放電装置は、二次電池の充放電工程において、いずれかの二次電池10からガスや電解液が排出されても他の二次電池を汚染されることがない。
また、電気的接触とダクトと二次電池との接続が一つの動作で行われるので、ガス排気通路の簡素化され、効率よく出荷前作業を行うことができる。
【0044】
(2)本実施形態では、ダクト本体151に流入したガスの電池側への逆流を阻止するガス逆流防止弁50を設けた。そのため、いずれかの薄型二次電池10がガスを噴出した際に、そのガスがダクト本体151を介して他の薄型二次電池10のガス捕集ダクト14内、またはその周囲に達することを防止することができる。
(3)ガス逆流防止弁50の弁体55は、ダクト本体151内に滞留した塵埃等がガス捕集ダクト14内、またはその周囲に達することを防止することができる。
【0045】
(4)本実施形態では、ゴムワッシャ54のテーパ孔54Hにガス捕集ダクト14を当接させることにより、ゴムワッシャ54の変形は容易となり、小さな接触面積で高いシール性能が得られる。そして、テーパ孔54Hを下方に向かって大径としたことにより、シリンダ113によって薄型二次電池10を上昇させたときに、ガス捕集ダクト14は自動的にテーパ孔54Hに密着して、シール状態が確保される。
【0046】
(5)ガス逆流防止弁50を内蔵する電池接続ブロック152には、タップワッシャ52下面にパッキン51も設けられ、ガス捕集ダクト14の外周がパッキン51によってシールされている。パッキン51とゴムワッシャ54の封止機能により、薄型二次電池10から噴出してガス逆流防止弁50を開弁したガスの一部が再び薄型二次電池10側に逆流して漏洩することを防止することができる。
【0047】
(6)本実施形態では、ガス逆流防止弁50を収容した電池接続ブロック152の筒状体を、薄型二次電池10の蓋21に略対応した形状とした。これにより、薄型二次電池10によって占有される平面スペースと同等のスペース内に電池接続ブロック152の筒状体が収まり、充放電装置のサイズは最小限に抑えられている。
【0048】
(7)本実施形態では、薄型二次電池10から噴出されたガスを捕集し、排出するダクト本体151の端部に略鉛直な排気ダクト153を連設した。したがって、筐体115の内部におけるガスや電解液の漏洩が防止されている。
【0049】
(8)本実施形態では、トレイ111をシリンダ113の駆動力によって昇降するので、充放電工程、その後のトレイ111の下降を自動化することができる。
【0050】
(9)本実施形態において、薄型二次電池10がセットされていないガス逆流防止弁50においては、ばね58によって弁体55をワッシャ53に密着させている。したがって、いずれかの薄型二次電池10から排出されてダクト本体151へ流入したガスが、薄型二次電池10がセットされていないガス逆流防止弁50から漏出することはない。その結果、トレイ111に収容し得る最大個数の薄型二次電池を同時に充放電し得るのみでなく、より少数、最小1個の薄型二次電池の充放電が可能である。
【0051】
[変形例]
以上説明した実施形態は一例であり、以下のように変形して実施することが可能である。
(1)以上の実施形態では、ガス捕集ダクト14を、下方からダクト本体151の電池接続ブロック152内に挿入したときに、ばね57を圧縮してテーパ孔54Hをガス捕集ダクト14の先端に密着させた。しかしながら、ワッシャ53とゴムワッシャ−54の間に配設したばね57を予め圧縮させておき、より高い弾発力を得ることもできる。
【0052】
(2)以上の実施形態では、複数の薄型二次電池10に共通のダクト本体151を使用して、ガスを排気することにした。しかしながら、薄型二次電池10ごとにダクト本体151を設けることも可能である。
【0053】
(3)以上の実施形態は薄型二次電池10に適用するものであったが、一面に正負極外部端子およびガス排出弁を備えた任意の二次電池に本発明を適用することができる。
【0054】
(4)ガス捕集ダクト14は本発明に必須ではない。以上の実施形態は、ガス排出弁22およびガス捕集ダクト14を有する薄型二次電池10に適用するものであった。しかしながら、ガス排出弁22にガス捕集ダクト14を設けない二次電池にも本発明を適用することができる。この場合、ガス排出弁22を囲繞して当接する筒状部材をダクト本体151の底面から突設させ、筒状部材の下端面を電池蓋表面においてガス排出弁22の外周部を囲むようにし、ガス排出弁22から排出されたガスが周囲に漏洩することなくダクト本体151に流入するようにすればよい。
【0055】
(5)電池接続ブロック152内にガス逆流防止弁50を設けない充放電装置も本発明の範囲内である。たとえば、複数の二次電池に一つのダクトを共用せず、二次電池に接続する電池接続ブロック152に個別にダクトを接続してガスを排気すれば、ガス逆流防止弁を設ける必要はない。
【0056】
(6)以上の実施形態では、ステージ112をシリンダ113で昇降させて、二次電池10の正負極外部端子12,13とプローブ131とを接触させるととともに、ガス捕集ダクト14の先端を電池接続ブロック152内に挿入して接続するようにした。しかしながら、充放電ユニット131を昇降させて端子の接続と排気ダクトの接続を実現してもよい。あるいは、両者を相対移動させてもよい。
【0057】
実施形態の充放電装置が対象とするリチウムイオン二次電池は、ハイブリッド自動車、電気自動車、鉄道車両、太陽光発電装置の蓄電装置など、高容量高出力が必要とされる分野への適応がもっとも効果的である。なお、本発明の充放電装置で出荷前に初期充電工程、充放電工程、エージング工程が必至な二次電池は、リチウムイオン二次電池に限定されない。ニッケル水素二次電池など、内部の電極短絡などでガスが発生する各種二次電池を対象とした充放電装置に本発明を適用することができる。
【0058】
上記の説明は本発明の一例であり、本発明が上記実施形態や変形例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
10 二次電池
12,13 正負極外部端子
14 ガス捕集ダクト
15、16 正負極接続端子
17、18 正負極集電部材
19 ガスケット
20 注液栓
20M 注液口
21 蓋
21P 環状突起
22 ガス排出弁
23 絶縁ブロック
50 ガス逆流防止弁
51 パッキン
52 タップワッシャ
53 ワッシャ
53H 貫通孔
54 ゴムワッシャ
54H テーパ孔
55 弁体
56 ばね付ビス
57、58 ばね
100 充放電装置
110 充放電治具装置
111 トレイ
112 ステージ
113 シリンダ
115 筐体
120 制御装置
121 電源装置
122 制御部
130 充放電ユニット
131 プローブ
131A 接触部
132 ユニット筐体
150 ダクト装置
151 ダクト本体
152 電池接続ブロック
153 排気ダクト
200 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極外部端子とガス排出弁を同一面に設けた二次電池の充放電装置において、
前記正極および負極外部端子に接触して前記外部端子から前記二次電池を充放電するプローブと、
前記ガス排出弁から排出されたガスを収集して排出する排気通路と、
前記二次電池の充放電時に前記ガス排出弁に接続される接続部と、
前記正負極外部端子と前記プローブとを接触させるとともに、前記ガス排出弁を前記接続部に接続するように、前記二次電池とプローブおよび接続部を相対移動する相対移動手段とを有することを特徴とする充放電装置。
【請求項2】
請求項1記載の充放電装置において、
複数の二次電池を保持する保持装置をさらに有し、
前記プローブと前記接続部は前記複数の二次電池に対応して複数設けられ、
前記排気通路は複数の接続部に共通に設けられ、
前記接続部のそれぞれには、前記ガス排出弁から排出されて前記排気通路に流入したガスの逆流を阻止するガス逆流防止弁が設けられていることを特徴とする充放電装置。
【請求項3】
請求項2記載の充放電装置において、
前記ガス逆流防止弁は、前記ガス排出弁から排出されたガスの圧力で開弁してガスを前記排気通路に流入させることを特徴とする充放電装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の充放電装置において、
前記ガス排出弁を覆うガス捕集ダクトが前記二次電池に装着されているとき、
前記接続部には前記ガス捕集ダクトが挿入される挿入部と、前記挿入部に設けられ、前記ガス捕集ダクトと前記接続部との間を封止する封止装置とを有することを特徴とする充放電装置。
【請求項5】
請求項4記載の充放電装置において、
前記封止装置は、前記ガス捕集ダクトの筒状体の先端が当接されるシール部材と、前記シール部材を前記ガス捕集ダクトの筒状体の先端に向けて付勢する付勢部材とを備えていることを特徴とする充放電装置。
【請求項6】
請求項5記載の充放電装置において、
前記プローブは、前記正負極外部端子との接触圧を得るように弾性支持され、
前記相対移動手段は、前記プローブと前記正負極外部端子との接触圧が設定値になるときに、前記ガス捕集ダクトの筒状体の先端が前記シール部材に接続されて前記封止装置で前記ガス捕集ダクトと前記接続部との間を封止するように、前記二次電池と、前記プローブおよび前記接続部との相対位置を制御することを特徴とする充放電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−221737(P2012−221737A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86277(P2011−86277)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】