説明

仮固定用組成物、仮固定材、基材の処理方法、および半導体素子

【課題】高温負荷がかかる工程でも基材を保持しうる保持力、および支持体から基材を剥離する工程での易剥離性を有する仮固定材を形成することが可能な仮固定用組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリエーテルスルホンと、(B)フェノキシ樹脂、フェノール性水酸基を有する重合体、ピロリドン基を有する重合体およびポリアルキレングリコールなどの粘性付与剤と、(C)溶剤とを含有する仮固定用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材を処理(例:加工、移動)する際に、基材を支持体上に仮固定するために好適に用いることができる仮固定用組成物、該組成物から形成された仮固定材、これらを用いた基材の処理方法、および半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基材を加工(例:ダイシング、裏面研削)や移動(例:ある装置から別の装置へ基材を移動)するに際して、支持体から基材がずれて動かないように、仮固定材などを用いて基材と支持体とを仮固定する必要がある。そして、加工および/または移動終了後は、基材を支持体から剥離する必要がある。従来、基材の仮固定に使用可能と考えられるホットメルト接着剤がいくつか提案されている(下記特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1には、結晶性化合物を主成分として含むホットメルト接着剤組成物が開示されている。特許文献2には、熱伝導付与剤を含有するホットメルト接着剤組成物が開示されている。特許文献3には、分子末端に反応性基を有する重合体を含むホットメルト接着剤が開示されている。
【0004】
ところで、複数のチップをパッケージ内で積層して実装する所謂三次元実装では、仮固定材に高温負荷がかかる工程(例:260℃程度のリフロー)がある。このような仮固定材には、(1)高温負荷がかかる工程でも基材を保持しうる保持力、および(2)支持体から基材を剥離する工程での易剥離性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−179654号公報
【特許文献2】特開2009−144144号公報
【特許文献3】特開2006−299233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高温負荷がかかる工程でも基材を保持しうる保持力、および支持体から基材を剥離する工程での易剥離性を有する仮固定材を形成しうる仮固定用組成物、該仮固定用組成物から形成された仮固定材、該仮固定用組成物または仮固定材を用いた基材の処理方法、ならびに該基材の処理方法によって得られる半導体素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、下記構成を有する仮固定用組成物を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち本発明およびその好適態様は、以下の[1]〜[8]に関する。
【0008】
[1](A)ポリエーテルスルホンと、(B)粘性付与剤と、(C)溶剤とを含有する仮固定用組成物。
[2]前記(B)粘性付与剤が、フェノキシ樹脂、フェノール性水酸基を有する重合体、ピロリドン基を有する重合体およびポリアルキレングリコールから選択される少なくとも1種の重合体である前記[1]に記載の仮固定用組成物。
[3]前記(C)溶剤が、水酸基を有さない極性溶剤から選択される少なくとも1種である前記[1]または[2]に記載の仮固定用組成物。
[4]前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の仮固定用組成物から形成された仮固定材。
[5](1)支持体上に、前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の仮固定用組成物または前記[4]に記載の仮固定材を用いて基材を仮固定する工程、(2)該基材を加工および/または移動する工程、ならびに(3)加熱処理および剪断処理により、支持体から該基材を剥離する工程を順次行う基材の処理方法。
[6]前記工程(2)において、基材の薄膜化、エッチング加工、スパッタ膜の形成、メッキ処理、メッキリフロー処理およびダイシングから選択される少なくとも1種の方法により基材を加工する前記[5]に記載の基材の処理方法。
[7]前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の仮固定用組成物または前記[4]に記載の仮固定材を用いて得られる半導体素子。
[8]前記[5]または[6]に記載の基材の処理方法によって得られる半導体素子。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温負荷がかかる工程でも基材を保持しうる保持力、および支持体から基材を剥離する工程での易剥離性を有する仮固定材を形成しうる仮固定用組成物、該仮固定用組成物から形成された仮固定材、該仮固定用組成物または仮固定材を用いた基材の処理方法、ならびに該基材の処理方法によって得られる半導体素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例および比較例の仮固定用組成物から形成された仮固定材の、各温度における剪断接着力(MPa)をプロットしたグラフである。
【図2】図2は、上記グラフの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の仮固定用組成物および仮固定材、該仮固定用組成物または仮固定材を用いた基材の処理方法、ならびに該基材の処理方法によって得られる半導体素子について、詳細に説明する。なお、本発明の仮固定用組成物から形成される層(仮固定材からなる層)を仮固定材層ともいう。
【0012】
〔仮固定用組成物および仮固定材〕
本発明の仮固定用組成物は、(A)ポリエーテルスルホンと、(B)粘性付与剤と、(C)溶剤とを含有する。また、本発明の仮固定用組成物は、必要に応じて他の成分を含有してもよい。
【0013】
本発明において仮固定用組成物とは、半導体ウエハなどの基材を加工(例:ダイシング、裏面研削)や移動(例:ある装置から別の装置へ基材を移動)するに際して、支持体から基材がずれて動かないように基材を仮固定するために用いられる仮固定材を形成する組成物のことである。基材の加工や移動終了後、支持体から基材を剥離するため、仮固定材には易剥離性も要求される。
【0014】
〈ポリエーテルスルホン(A)〉
ポリエーテルスルホン(A)は、金属やガラスなどの基材との密着性や金属同士の接着性に優れ、また、耐熱性、耐薬品性、化学的安定性、機械強度および難燃性に優れる。
【0015】
本発明者らの検討によれば、ポリエーテルスルホン(A)、粘性付与剤(B)および溶剤(C)を含有する仮固定用組成物から形成された仮固定材は、高温環境下(例:225〜300℃)でも、基材の処理時に付加される剪断力に対して基材を保持しうる保持力を維持できることが判明した。保持力は、例えば剪断接着力で評価される。さらに、前記仮固定材は、温度上昇とともにある温度範囲で剪断接着力が急速に低下する(ただし、前述のように基材の処理時に付加される程度の剪断力に対しては基材を保持しうる。)ので、相応の加熱処理および剪断処理を行うことにより、基材を容易に支持体から剥離することができる。
【0016】
ポリエーテルスルホン(A)としては、特開2006−89595号公報、特開2004−352920号公報、特開2002−338688号公報、特開平07−97447号公報および特開平04−20530号公報に記載のポリエーテルスルホンなどが挙げられる。
【0017】
ポリエーテルスルホン(A)の中でもポリマー中にアレーン構造を有するポリエーテルスルホンを用いることにより、仮固定材の結晶性が上がり、ある一定温度以上の高温環境下においても基材の処理時に付加される剪断力に対して基材を保持しうる剪断接着力を維持することが可能な仮固定材が得られやすい。アレーン構造を有するポリエーテルスルホンとしては、例えば、下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリエーテルスルホンが挙げられる。
【0018】
【化1】

【0019】
式(1)中、R1〜R3は、アレーン構造を有する2価の有機基であって、ただし式(1)中の結合手はR1〜R3中のアレーン構造に直結している(すなわち、式(1)中の−O−R1−O−、−O−R2−SO2−および−SO2−R3−O−における−O−および−SO2−はR1〜R3中のアレーン構造に直結している)。R1〜R3は、それぞれ同一であっても異なってもよい。
【0020】
前記2価の有機基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基およびピレンジイル基等のアリーレン基;−C64−C64−等の2つのアリーレン基が直接結合してなる基;下記式(1−1)〜(1−3)で示される2つのアリーレン基の間に2価の炭化水素基を有する基などが挙げられる。
【0021】
【化2】

【0022】
式中、*は結合手を示す。
【0023】
ポリエーテルスルホン(A)としては、市販品を用いることもできる。ポリエーテルスルホン(A)の市販品としては、BASF社製の「ウルトラゾーンEシリーズ」、ソルベイアドバンストポリマー社製の「レーデルAシリーズ」、住友化学社製の「スミカエクセルシリーズ」などが挙げられる。「スミカエクセルシリーズ」としては、スミカエクセル(登録商標)PES3600P、スミカエクセル(登録商標)PES4100P、スミカエクセル(登録商標)PES4100MP、スミカエクセル(登録商標)PES4800P、スミカエクセル(登録商標)PES5003P、スミカエクセル(登録商標)PES5200P、スミカエクセル(登録商標)PES5400Pなどが挙げられる。
【0024】
ポリエーテルスルホン(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、通常は1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000である。低温での剪断処理による剥離を目的とする場合は、Mwは低い方がよく、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは5,000〜50,000、更に好ましくは10,000〜30,000である。また、ポリエーテルスルホン(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される数平均分子量をMnとするとき、Mw/Mnで示される分子量分布は、通常は1〜5、好ましくは1〜3.5、さらに好ましくは1〜2.5である。
【0025】
本発明の仮固定用組成物において、ポリエーテルスルホン(A)の含有量は、該組成物総量に対して、通常は5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは15〜35重量%である。成分(A)の含有量が前記範囲を上回ると、組成物の粘度が高くなり取扱い性が低下することや、塗膜の膜面にボイドが発生することなどの問題が起こることがある。
【0026】
〈粘性付与剤(B)〉
粘性付与剤(B)は、本発明の仮固定用組成物に粘性を付与するために用いられるものであり、タッキファイヤーと呼ばれるものである。粘性付与剤(B)としては、ポリエーテルスルホン(A)と相溶し、且つ本発明の仮固定用組成物に粘性を付与するものであれば特に限定されないが、例えば、フェノキシ樹脂、フェノール性水酸基を有する重合体、ピロリドン基を有する重合体、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、(メタ)アクリル酸エステル重合体、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド、脂肪族アマイド、ロジン系樹脂、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロースアセテートブチレート、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロースなどが挙げられる。
【0027】
これらの中でも、ポリエーテルスルホン(A)との親和性の点で、フェノキシ樹脂、フェノール性水酸基を有する重合体、ピロリドン基を有する重合体、ポリアルキレングリコールが好ましく、フェノキシ樹脂、フェノール性水酸基を有する重合体、ピロリドン基を有する重合体が特に好ましい。
粘性付与剤(B)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
《フェノール性水酸基を有する重合体》
本発明において、フェノール性水酸基は、フェノールに由来する基に限定されるわけではなく、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノールなどのフェノール誘導体;ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールH、ビフェノール、およびこれらの誘導体などのポリフェノール化合物;ナフトール、ナフトジオールなどのナフトール化合物などに由来する基も含む。
【0029】
フェノール性水酸基を有する重合体としては、フェノールアラルキル樹脂、フェノールシクロアルキル樹脂、フェノールテルペン樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、アラルキル基置換フェノール樹脂、フェニル基置換フェノール樹脂、フェノキシ基置換フェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、シリコンウエハとの密着性や耐水性の観点から、フェノールアラルキル樹脂が好ましい。
【0030】
《ピロリドン基を有する重合体》
ピロリドン基を有する重合体としては、N−ビニル−2−ピロリドンの単独重合体(ポリビニルピロリドン)、N−ビニル−2−ピロリドンと他の単量体との共重合体、無水マレイン酸共重合体とヒドロキシ含有ピロリドンとを反応させて得られる重合体などが挙げられる。
【0031】
なお、ピロリドン基は下記式(2)で表される基である。
【0032】
【化3】

【0033】
N−ビニル−2−ピロリドンと他の単量体との共重合体における他の単量体としては、ラジカル重合性不飽和結合基を有する単量体(例:メタクリル酸エステル)などが挙げられる。
【0034】
無水マレイン酸共重合体とヒドロキシ含有ピロリドンとを反応させて得られる重合体は、例えば下記一般式(3)で表される構成単位を有する重合体である。無水マレイン酸共重合体は、例えば下記一般式(4)で表される構成単位を有する重合体である。ヒドロキシ含有ピロリドンは、例えば下記一般式(5)で表される化合物である。
【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

【0037】
【化6】

【0038】
式(3)および(4)中、R1およびR2の一方は水素原子を示し、他方は水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアシロキシ基、ハロゲン原子または炭素数6〜10の芳香族基を示す。
【0039】
式(3)および(5)中、R3は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、炭素数6〜10の二価の芳香族基、または−CH2CH2−(OCH2CH2n−で表される基(nは1〜20の整数)である。
【0040】
無水マレイン酸共重合体の具体例としては、スチレン/無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、エチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、n−ブチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、イソブチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル/無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0041】
ヒドロキシ含有ピロリドンの具体例としては、N−(ヒドロキシメチル)−2−ピロリドン、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、N−(4−ヒドロキシブチル)−2−ピロリドン、N−(p−ヒドロキシメチルフェニル)−2−ピロリドン、ポリエチレングリコールモノピロリドンエーテルなどが挙げられる。
【0042】
無水マレイン酸共重合体とヒドロキシ含有ピロリドンとを反応させて得られる重合体の製造方法の詳細は、特開2004−300372号公報に記載されている。
ピロリドン基を有する重合体の中でも、ポリビニルピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンと他の単量体との共重合体が好ましく、ポリビニルピロリドンが特に好ましい。
【0043】
本発明の仮固定用組成物において粘性付与剤(B)の含有量は、ポリエーテルスルホン(A)100重量部に対して、通常は5〜500重量部、好ましくは10〜300重量部、より好ましくは10〜200重量部である。通常、粘性付与剤(B)の含有量を増やすと仮固定材の剪断接着力が急速に低下する温度範囲が下がる。よって、粘性付与剤(B)の含有量が前記範囲にあると、高温を介するプロセスにおいて、基材を支持体上に良好に仮固定できる。
【0044】
〈溶剤(C)〉
本発明の仮固定用組成物は、溶剤(C)を含有する。
溶剤(C)の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノアセテートなどのアルコール類;
フェノールなどのフェノール類;
n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、シクロオクタン、n−デカン、シクロデカン、ジシクロペンタジエン水素化物、ベンゼン、トルエン、キシレン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、スクワラン、エチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、トリメチルベンゼンなどの炭化水素類;
水酸基を有さない極性溶剤;などが挙げられる。なお、本発明において水酸基を有さない極性溶剤とは、分子中に互いに結合している2原子の電気陰性度の差が大きい化合物であって、水酸基を有さない化合物のことをいう。
【0045】
上記水酸基を有さない極性溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。
【0046】
これらの中では、スピンコートによる塗布の際、均一な膜厚を得やすいという点から、水酸基を有さない極性溶剤がより好ましく、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、クロロホルム、塩化メチレンなどが特に好ましい。
【0047】
溶剤(C)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の仮固定用組成物において溶剤(C)の含有量は、ポリエーテルスルホン(A)100重量部に対して、通常は100〜1,000重量部、好ましくは200〜900重量部、より好ましくは300〜700重量部である。溶剤(C)の含有量が前記範囲にあると、塗布性に優れる。
【0048】
〈添加剤〉
本発明の仮固定用組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、添加剤をさらに含有してもよい。前記添加剤としては、密着助剤;酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素などの金属酸化物;ポリスチレン架橋粒子などが挙げられる。
【0049】
密着助剤は、仮固定材と、シリコンウエハなどの無機基板やポリイミドなどの密着性の低い膜との密着性を向上させる目的に用いることができる。密着助剤としては、官能性シランカップリング剤が好ましく、カルボキシル基、ビニル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシランカップリング剤などが挙げられる。前記シランカップリング剤としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、1,3,5−N−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0050】
密着助剤を用いる場合、本発明の仮固定用組成物において密着助剤の含有量は、ポリエーテルスルホン(A)100重量部に対して、通常は0.1〜50重量部、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部である。
本発明の仮固定用組成物は、従来公知の方法に従って調製することができる。
【0051】
〈仮固定用組成物および仮固定材の特性〉
仮固定用組成物を塗布乾燥後の仮固定材の200℃における粘度は、基材に対する処理(加工や移動)に応じて適宜設定されるが、仮固定性の観点から、100〜10,000mPa・sが好ましく、より好ましくは500〜10,000mPa・sであり、特に好ましくは1,000〜10,000mPa・sである。粘性付与剤(B)は仮固定材の粘度が前記範囲となるように含有されることが好ましい。
【0052】
本発明の仮固定用組成物から形成される仮固定材は、基材の処理(加工および/または移動等)時に付加される剪断力に対して充分な保持力(剪断接着力)を有する。具体的には、前記仮固定材の25℃における剪断接着力は、通常は0.5MPa以上、好ましくは1.0MPa以上であり、現実的には30MPa以下であることが好ましい。また、前記仮固定材は、高温環境下においても基材を保持しうる剪断接着力を維持しており、例えば225℃以上、好ましくは225〜300℃における剪断接着力は、通常は0.01MPa以上、好ましくは0.02MPa以上であり、且つ好ましくは0.5MPa以下である。したがって、前記仮固定材は、25℃近辺で用いられる基材の薄膜化、25℃〜300℃での温度範囲で用いられるエッチング加工やスパッタ膜の形成、225℃〜300℃での温度範囲で用いられるメッキ処理やメッキリフロー処理、25℃近辺で用いられるダイシングなどにおいても、基材を支持体上に保持することができる。
【0053】
また、前記仮固定材は、剪断接着力が急速に低下する温度範囲を通常は有する(例えば200〜225℃程度において剪断接着力が急速に低下する)ため、このような温度範囲またはそれ以上の温度範囲において適切な剪断処理を行うことにより、容易に支持体から基材を剥離できるようになる。
【0054】
なお、剪断接着力は後述する実施例に記載の条件のもと、測定される。
本発明の仮固定用組成物から形成される仮固定材は上記特性を有するとともに、基材の仮固定条件下における流動性、エッチング時のラジカル耐性、絶縁膜形成時やリフロー時における耐熱性、レジストの形成時や剥離時の使用溶剤に対する耐溶剤性、メッキ耐性、スパッタリング時における耐真空性、および優れた洗浄除去性を有する。また、本発明の仮固定用組成物から形成された仮固定材は、基材の裏面研削時の機械強度に優れる。
【0055】
本発明の仮固定用組成物から形成される仮固定材は、このような特性を有することから、現代の経済活動の場面で要求される様々な加工処理(例:半導体ウエハの極薄研削処理、各種材料表面の微細化加工処理、各種表面実装、半導体ウエハや半導体素子の運搬)などの際に、基材を仮止めする仮固定材として好適に用いられる。
【0056】
〔基材の処理方法〕
本発明の基材の処理方法は、(1)支持体上に、上述の仮固定用組成物または仮固定材を用いて基材を仮固定する工程、(2)該基材を加工および/または移動する工程、ならびに(3)加熱処理および剪断処理により、支持体から該基材を剥離する工程を順次行うことを特徴とする。以下、前記各工程をそれぞれ、工程(1)、工程(2)、工程(3)ともいう。
【0057】
《工程(1)》
工程(1)では、例えば、(1-1)支持体および/または必要に応じて表面処理した基材の表面に本発明の仮固定用組成物を塗布して仮固定材層を形成し、該仮固定材層を介して基材と支持体とを貼り合せることにより、あるいは(1-2)支持体の表面に本発明の仮固定用組成物を塗布して仮固定材層を形成し、該仮固定材層上に樹脂塗膜からなる基材を形成することにより、基材を支持体上に仮固定することができる。
【0058】
加工(移動)対象物である前記基材としては、半導体ウエハ、ガラス基板、樹脂基板、金属基板、金属箔、研磨パッド、樹脂塗膜などが挙げられる。半導体ウエハには、通常は配線や絶縁膜などが形成されている。樹脂塗膜としては、例えば、有機成分を主成分として含有する層が挙げられ;具体的には、感光性材料から形成される感光性樹脂層、絶縁性材料から形成される絶縁性樹脂層、感光性絶縁樹脂材料から形成される感光性絶縁樹脂層などが挙げられる。支持体としては、ガラスやシリコンなど取扱いが容易で且つ硬くて平坦な面を有するものが挙げられる。
【0059】
本発明の仮固定用組成物を基材に塗布するに際して、仮固定用組成物の面内への広がりを均一にするため、基材表面を予め疎水化処理しておくことが好ましい。
【0060】
疎水化処理の方法としては、基材表面に予め表面処理剤を塗布する方法などが挙げられる。前記表面処理剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのカップリング剤が挙げられる。
【0061】
上述の仮固定用組成物の塗布方法としては、(i)仮固定用組成物を支持体および/または基材へ直接塗布する方法、(ii)仮固定用組成物を、離型処理が施されたPET(Polyethylene Terephthalate)フィルム上に一定膜厚で塗布して成膜した後、支持体および/または基材へラミネート方式により転写する方法などが挙げられる。膜厚均一性の点から、上記(i)の方法が好ましい。塗布温度(仮固定用組成物の加熱温度)は、溶剤(C)の沸点および含有量等により選択され、通常100〜300℃、好ましくは180〜250℃である。
【0062】
上述の仮固定用組成物の塗布量は、基材の仮固定面のサイズ、加工処理などで要求される密着性の程度に応じて任意に選択することができるが、仮固定材層の厚みが通常は0.01μm〜2mm、好ましくは0.05μm〜1mm、より好ましくは0.1μm〜0.5mmとなる量で塗布すればよい。仮固定材層の厚みが前記範囲外にあると、保持力が充分ではないことがあり、仮固定面からの基材の剥がれが生じる場合がある。なお、仮固定材層の厚みは、仮固定用組成物の塗布量および張り合わせるときの圧力で調整することができる。
【0063】
基材と支持体とを貼り合せる方法としては、基材および支持体の何れか一方または双方に上述の仮固定用組成物を塗布して、両者を貼り合せる方法などが挙げられる。この際の温度は、仮固定用組成物の各温度に対する粘度や半導体ウエハ等の基材の種類などにより適宜選択されるが、通常は100〜400℃、好ましくは150〜350℃の温度をかけながら貼り合わせる。このようにして、基材が支持体上に強固に保持される。また、基材が樹脂塗膜である場合は、上述の材料等を仮固定材層上に塗布して適宜加熱することにより、仮固定材層上に樹脂塗膜を形成することができる。
【0064】
《工程(2)》
工程(2)は、上記のように支持体上に仮固定された基材を加工および/または移動する工程である。移動工程は、基材(例:半導体ウエハ)をある装置から別の装置へ支持体とともに移動する工程である。また、上記のようにして支持体上に仮固定された基材の加工処理としては、基材の薄膜化(例:裏面研削)、エッチング加工、スパッタ膜の形成、メッキ処理、メッキリフロー処理およびダイシングから選択される少なくとも1種の方法を用いることができる。基材が、感光性材料から形成される感光性樹脂層、絶縁性材料から形成される絶縁性樹脂層、感光性絶縁樹脂材料から形成される感光性絶縁樹脂層である場合、例えばフォトリソグラフィーなどにより、前記樹脂層に対してパターン形成、エッチング加工、配線形成、リストオフによるバンプ形成などを行うことができる。さらに、配線形成された前記樹脂層に対して半導体チップの搭載や半田リフロー、樹脂封止などを行うこともできる。
【0065】
基材の加工処理は、仮固定材の保持力が失われない温度で行えば特に限定されない。本発明では、上記仮固定材層が、高温環境下においても加工処理時に付加される剪断力に対して基材を保持しうる剪断接着力を有している。
【0066】
以下では、基材の加工処理として、半導体ウエハの三次元実装の際に行われる加工処理を一例として説明する。三次元実装では、半導体ウエハの表面に対して垂直方向に延びる貫通電極を形成し、その貫通電極の端部や配線上に、パッド電極やバンプなどの接続用電極を形成する。このようにして形成された接続用電極同士を接続することで、積層した半導体ウエハ相互間を接続する。
【0067】
(i)工程(1)で仮固定材を介して支持体上に仮固定された半導体ウエハからなる基材を研削する。この工程の温度環境下では、仮固定材は充分な剪断接着力を有する。
【0068】
(ii)基材上にレジストを塗布し、露光処理および現像処理を行い、所定の形状にパターニングされたレジスト層を形成する。例えば、円形状のレジストパターンを基材上に複数形成すればよい。
【0069】
(iii)レジスト層をマスクとして、基材の所定形状にパターニングされた部分をエッチングし、開口部(ホール)を形成する。その後、レジスト層を剥離液あるいはアッシング(例:O2アッシング)などにより剥離する。エッチングにはドライエッチングやウェットエッチングを使用することができるが、ドライエッチングを使用することが好ましい。ドライエッチングとしては反応性イオンエッチング(RIE)などが挙げられる。
【0070】
(iv)基材の開口部を形成した面上に、SiO2などからなる絶縁層を形成する。
(v)絶縁層への導体の拡散を防ぐ目的で、TiWおよびTiNなどからなるバリア層をスパッタにより形成する。次に、銅などからなるシード層をスパッタにより形成する。
【0071】
(vi)基材の開口部を形成した面上にレジストを塗布し、露光処理および現像処理を行い、基材の開口部に対応した形状にパターニングされたレジスト層を形成する。次に、メッキ処理(Sn/Cuメッキなど)を施して、基材の開口部に導体を充填し、貫通電極を形成する。その後、レジスト層を除去し、バリア層およびシード層をドライエッチングにより除去する。
【0072】
(vii)このようにして加工処理がなされた基材の貫通電極上に、リフローにより、パッド電極やバンプなどの接続用電極を形成する。次に、形成された接続用電極同士を接続することで、積層した半導体チップ相互間を接続することができる。
【0073】
《工程3》
基材の加工処理または移動後は、加熱処理および剪断処理により、支持体から基材を剥離する。このように、加熱処理により仮固定材の剪断接着力を低減させながら、支持体と基材とをその仮固定面に略水平にずらすなどの剪断処理(通常は10〜100N)により、支持体から基材を剥離すればよい。加熱処理は、通常は100〜400℃、好ましくは150〜350℃で行い、更に好ましくは仮固定材の剪断接着力が大きく低下する温度以上(一例を挙げれば、200〜225℃程度において剪断接着力が大きく低下する場合、200〜225℃またはそれ以上の温度範囲)で行う。なお、本発明において「剪断」とは、支持体と基材との仮固定面の略平行方向に力を作用させることをいう。
【0074】
なお、剥離後の基材に仮固定用組成物が残存している場合は、上述の仮固定用組成物を調製する際に使用される溶剤で洗浄して除去することができる。洗浄方法としては、基材を洗浄液に浸漬する方法、基材に洗浄液をスプレーする方法、基材を洗浄液に浸漬しながら超音波を加える方法などが挙げられる。洗浄液の温度は特に限定されないが、好ましくは20〜80℃、より好ましくは20〜50℃である。
【0075】
〔半導体素子〕
本発明の半導体素子は、上述の仮固定用組成物を用いて得られ、具体的には上述の基材の加工方法によって得られる。上述の仮固定用組成物は半導体素子の剥離時に容易に除去されるため、前記半導体素子は仮固定用組成物による汚染(例:シミ、焦げ)が極めて低減されたものとなっている。
【実施例】
【0076】
以下、実施例をもとに本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されない。なお、以下の実施例および比較例において、特に断らない限り、「部」および「%」はそれぞれ「重量部」および「重量%」の意味で用いる。
【0077】
[重量平均分子量(Mw)の測定方法]
下記条件下、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法にてMwを測定した。
カラム:東ソー社製カラムのTSK−MおよびTSK2500を直列に接続
溶媒:DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)
温度:40℃
検出方法:屈折率法
標準物質:ポリスチレン
【0078】
[合成例1]
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン23g、炭酸カリウム17g、N−メチル−2−ピロリドン150mlおよびトルエン75mlをあらかじめ攪拌子を入れた1Lのフラスコに投入し、その後、上部にジムロートを連結したディーンスターク管、温度計、窒素ラインおよび真空ポンプに連結したコックをフラスコに接続し、フラスコ下方にオイルバスマグネティックスターラーを設置し、オイルバスのオイルにフラスコがつかるようにした。
【0079】
その後、真空ポンプおよび窒素ラインを用い、系内を減圧にして窒素で置換する操作を10回行い、フラスコ内を窒素置換した。その後、窒素気流下、フラスコ内の混合物の攪拌を行いながら、オイルバスを用いてフラスコ内の液温が120℃になるように混合物の加熱を行った。
【0080】
トルエンおよび水を留出させながら混合物の加熱および還流を4時間行った後、ディーンスターク管に留出したトルエンおよび水の混合液を抜き取りながら、フラスコ内の混合物を液温160℃まで加熱し、トルエンを完全に留出させた。
【0081】
本反応混合物に4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを17g投入し、160℃で10時間加熱、反応を行った。反応後、本反応混合物を室温まで冷却し、セライト20gをろ紙上に敷き詰めたヌッチェおよび吸引瓶からなる吸引ろ過装置を用いて減圧濾過を行い、N−メチル−2−ピロリドンに不溶の無機塩を除去した。この後、ろ液に酢酸7.5gを加えて中和を行った後、水0.6Lおよびメタノール0.6Lの混合液に1時間かけて攪拌しながら投入した。析出した固体を回収して水110mlおよびメタノール110mlの混合液中に投入し、1時間攪拌した。攪拌後の混合物を1Lの水の入った、ジムロートおよび攪拌バネを備え付けたセパラブルフラスコ中に投入し、還流下で1時間攪拌させた。
【0082】
攪拌後、固形物を回収し、真空乾燥機を用いて前記固形物を100℃で12時間乾燥し、ポリエーテルスルホンA2(GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量=50900)を得た。
【0083】
[合成例2]
合成例1における2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン23gの代わりに下記式(6)に示す化合物35gを用いたこと以外は合成例1と同様の手法にて、ポリエーテルスルホンA3(GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量=61500)を得た。
【0084】
【化7】

【0085】
[合成例3]
合成例1における2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン23gの代わりに下記式(7)に示す化合物35gを用いたこと以外は合成例1と同様の手法にて、ポリエーテルスルホンA4(GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量=45000)を得た。
【0086】
【化8】

【0087】
[合成例4]
合成例1における2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン23gの代わりに4,4’−ビフェノール19gを用いたこと以外は合成例1と同様の手法にて、ポリエーテルスルホンA5(GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量=67500)を得た。
【0088】
(1)仮固定用組成物の調製
[実施例1]
(A)成分としてポリエーテルスルホン(商品名「スミカエクセルPES5003P」、住友化学社製)100重量部と、(B)成分としてフェノールアラルキル樹脂(商品名「ミレックスXLC−3L」、三井化学(株)製)25重量部と、(C)成分としてN−メチル−2−ピロリドン500重量部とを混合し、仮固定用組成物を調製した。
【0089】
[実施例2〜10、比較例1]
実施例1において、表1に示す成分を表1に示す重量で混合したこと以外は実施例1と同様にして、仮固定用組成物を調製した。
【0090】
なお、各成分の詳細は以下の通りである。
A1:商品名「スミカエクセルPES5003P」、住友化学社製、Mw=60,000
A2:合成例1のポリエーテルスルホン、Mw=50900
A3:合成例2のポリエーテルスルホン、Mw=61500
A4:合成例3のポリエーテルスルホン、Mw=45000
A5:合成例4のポリエーテルスルホン、Mw=67500
A6:商品名「スミカエクセルPES4100P」、住友化学社製、Mw=30,000
A7:商品名「スミカエクセルPES3600P」、住友化学社製、Mw=20,000
B1:ポリエチレングリコール
(GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量=1000)
B2:フェノールアラルキル樹脂
(商品名「ミレックスXLC−3L」、三井化学(株)製)
B3:ポリビニルピロリドン(商品名「K25」、和光純薬(株)製)
B4:フェノキシ樹脂(商品名「YX8100BH30」、三菱化学(株)製)
C1:N−メチル−2−ピロリドン
AR1:ポリビニルアセタール(商品名「エスレックKS−3」、積水化学(株)製)
D1:グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(密着助剤)
【0091】
【表1】

【0092】
(2)仮固定用組成物の評価
〔剪断接着力の評価〕
実施例1〜10および比較例1の仮固定用組成物を、スピンコート法でシリコンウエハ上に塗布し、ホットプレートで200℃10分加熱し、厚さ10μmの塗膜(仮固定材層)を有するシリコンウエハを得た。得られたシリコンウエハを縦1cm、横1cmの正方形状に切断してチップとした。得られたチップを縦2cm、横2cmの正方形状のガラス基板に、ガラス基板と塗膜とが接するように重ね合わせた。その後、ダイボンダー装置を用いて、250℃で50Nの力を90秒間加えてチップとガラス基板とを圧着し、ガラス基板、塗膜およびチップをこの順に備える、剪断接着力の評価用基板を準備した。
【0093】
万能ボンドテスター(商品名「デイジ4000」、デイジ社製)を用いて、剪断接着力の評価用基板の、各温度での仮固定材の剪断接着力を測定した。剪断力はガラス基板と平行方向に、500μm/秒の速度で加えた。結果を表2および図1、図2に示す。
【0094】
【表2】

【0095】
表2および図1、図2から明らかなように、実施例の仮固定材は、1cm×1cmの固定面積であっても、温度200〜225℃程度で剪断接着力が急速に低下したが、温度225℃以上においても0.01MPa以上の剪断接着力を維持していた。他方、比較例の仮固定材は、温度200℃を下回る温度で剪断接着力が急速に低下し、温度200℃以上では剪断接着力が0MPaとなってしまった。
【0096】
〔洗浄性の評価〕
実施例1〜10の仮固定用組成物を、スピンコート法でガラス基板上に塗布し、ホットプレートで200℃10分加熱し、厚さ10μmの塗膜(仮固定材層)を有するガラス基板を得た。ガラス基板上に形成された塗膜を別のガラス基板で挟み込み、260℃で基板と垂直方向の力(500gの加重)を90秒間加えてガラス基板同士を圧着し、ガラス基板、塗膜および別のガラス基板をこの順で備える、洗浄性の評価用基板を準備した。
【0097】
洗浄性の評価用基板をホットプレートで250℃に加熱しながら、片側のガラス基板を水平に1cm/分の速度でずらすことで、仮固定用組成物から形成された仮固定材に剪断力を加え、ガラス基板同士を剥離した。
【0098】
仮固定用組成物が付着している剥離後のガラス基板を、N−メチル−2−ピロリドンに23℃30分浸漬した。浸漬後のガラス基板に付着している仮固定用組成物の有無を目視にて観察し、下記基準にて仮固定用組成物の剥離性を評価した。評価結果を表3に示す。
・AA:ガラス基板上に仮固定用組成物が残っていない。
・BB:ガラス基板上に仮固定用組成物が残っている。
【0099】
〔耐薬品性の評価〕
実施例1〜10の仮固定用組成物を、スピンコート法でガラス基板上に塗布し、ホットプレートで200℃10分加熱し、厚さ10μmの塗膜(仮固定材層)を有するガラス基板を得た。ガラス基板上に形成された塗膜を別のガラス基板で挟み込み、260℃で基板と垂直方向の力(500gの加重)を2分間加えてガラス基板同士を圧着し、ガラス基板、塗膜および別のガラス基板をこの順に備える、耐薬品性の評価用基板を準備した。
【0100】
耐薬品性の評価用基板を下記条件で各薬品中に浸漬し、浸漬後のガラス基板同士の仮固定の有無を目視にて観察し、下記基準にて仮固定用組成物の耐薬品性を評価した。評価結果を表3に示す。
・条件1:10重量%の硫酸水溶液に50℃1時間浸漬。
・条件2:10重量%の水酸化ナトリウム水溶液に50℃10分浸漬。
・条件3:乳酸エチルに23℃10分浸漬。
評価基準
・AA:浸漬後、ガラス基板同士が離れずに固定されている。
・BB:浸漬後、ガラス基板同士が離れる。
【0101】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリエーテルスルホンと、
(B)粘性付与剤と、
(C)溶剤と
を含有する仮固定用組成物。
【請求項2】
前記(B)粘性付与剤が、フェノキシ樹脂、フェノール性水酸基を有する重合体、ピロリドン基を有する重合体およびポリアルキレングリコールから選択される少なくとも1種の重合体である請求項1に記載の仮固定用組成物。
【請求項3】
前記(C)溶剤が、水酸基を有さない極性溶剤から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の仮固定用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の仮固定用組成物から形成された仮固定材。
【請求項5】
(1)支持体上に、請求項1〜3の何れか一項に記載の仮固定用組成物または請求項4に記載の仮固定材を用いて基材を仮固定する工程、
(2)該基材を加工および/または移動する工程、ならびに
(3)加熱処理および剪断処理により、支持体から該基材を剥離する工程
を順次行う基材の処理方法。
【請求項6】
前記工程(2)において、基材の薄膜化、エッチング加工、スパッタ膜の形成、メッキ処理、メッキリフロー処理およびダイシングから選択される少なくとも1種の方法により基材を加工する請求項5に記載の基材の処理方法。
【請求項7】
請求項1〜3の何れか一項に記載の仮固定用組成物または請求項4に記載の仮固定材を用いて得られる半導体素子。
【請求項8】
請求項5または6に記載の基材の処理方法によって得られる半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−225814(P2011−225814A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6127(P2011−6127)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】