説明

住宅の玄関構造

【課題】車椅子使用者が心身共に快適に安心して居住できる環境を実現することができる住宅を提供する。
【構成】板状格子部材9によって玄関土間2−2と玄関ホール2−3との間の段差部が解消されており、玄関土間2−2の水平部2−2aと上框2−4上面との間に玄関土間2−2の水平部2−2aから上框2−4上面に向けて緩やかな昇り勾配を形成して板状格子部材9が差し渡されているので、例えば車椅子使用者は車椅子に乗車したまま玄関土間2−2から板状格子部材9上を通過して玄関ホール2−3を介して住宅内の各居室に入ることができ、逆に玄関ホール2−3から板状格子部材9上を通過して玄関土間2−2を介して住宅外に出ることができる。また、車椅子使用者のみならず足の弱くなった高齢者や身障者等も玄関土間2−2から板状格子部材9上を通過して玄関ホール2−3を介して安全に住宅内に入ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、居住空間内外において車椅子の使用が必要である車椅子使用者が居住するための住宅の玄関構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本格的長寿社会を迎え、高齢者に限らず、保護されるべき被介護者は歩行の困難を補うために車椅子の使用が不可避である場合がしばしばであり、したがって係る被介護者の暮らす住宅は、床の段差を可能な限り小さくすることによって、車椅子の使用を安全かつ容易にする必要がある。
【0003】
このような要請に向けて本出願人は特許文献1において玄関領域の高低差や段差を可能な限り小さくし、具体的には建物の一階に設けられる玄関の沓みずりと、玄関外側の段差及び沓みずりと玄関土間の段差が具体的に検討され、車椅子での通過も比較的容易にされた住宅を提案した。
【0004】
さらに特許文献2には土埃、水気等が玄関ホールを経て居室空間に侵入してくるのを回避しつつ、玄関土間と玄関ホールとの段差部を解消して、足の弱くなった高齢者や身障者等の出入りをスムーズに行わせることを可能にするために板状格子材を、玄関土間の床面との間に間隔をおいて玄関ポーチ及び玄関ホールの床面と同等の高さで設ける玄関構造が開示された。
【特許文献1】特開2002−309784号
【特許文献2】特開2003−343074号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で提案された住宅の玄関構造にあっては、玄関で靴を脱ぐために腰を下ろす上框と玄関土間との段差を車椅子で楽に登ることができる様にするためには勾配の緩いスロープを設置する必要があり、係るスロープを設置するための専用スペースを玄関領域に設けることは面積に制約のある一般住宅では容易ではないという問題があった。
【0006】
一方、特許文献2の玄関構造では、一般住宅には必ずしも相応であるとは言えない大がかりな設備となり、コスト高は免れず、しかも水気等が玄関ホールを経て居室空間に侵入してくるのを回避し、屋内外の仕切りとして上框を備える日本の住宅における一般的な玄関構造との乖離が大きく、その点での違和感が否定できないという問題があった。
【0007】
したがって本発明は以上の従来技術における問題点に鑑み、面積に制約のある一般住宅における空間の有効利用を図って、車椅子使用者が心身共に快適に安心して居住できる環境を簡易に実現することができる住宅の玄関構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明の住宅の玄関構造は、玄関の玄関ホールと玄関土間との境界部に上框を有し、前記玄関土間は前記上框よりも位置の低い水平部と、前記水平部に連なり前記上框下部に達する傾斜部とを有して成り、前記水平部と前記上框上部との間に板状格子部材を設け、前記板状格子部材と前記傾斜部と前記上框側面とによって空間部を形成してなることを特徴とする。
【0009】
前記板状格子部材は、前記上框と同一幅の枠材に前期玄関土間及び前期上框を経て前期玄関ホールに向かう導線に沿って配置された補強梁と、前記玄関土間及び前記上框を経て前記玄関ホールに向かう導線と直交する方向に間隔をおいて配置され、前記上框の幅に達する長さの複数の矩形帯状の主桁材とよりなり、前記各主桁材は、その先端を前記空間部内側に向けて突出する態様でその基端部が前記補強梁に取り付けられ、各主桁材がその先端を空間部内側に突出する突出角度は、前記水平部側から前記上框側に向かって水平に近い角度から垂直に近い角度となる様に徐々に変化する様に設定される様にすることができる。
【0010】
前記空間部内側の前記上框側面部には前記空間部に向けて開口する凹部が設けられ、前記凹部内側には照明灯が配置される様にしても良い。
【0011】
前記空間部内側は水抜き構造とすることができる。
【0012】
前期玄関土間及び前期上框を経て前期玄関ホールに向かう導線に沿って水平手すりを設けたも良い。
【0013】
前記板状格子部材の前記枠材及び前記補強梁及び前記主桁材のうち少なくとも主桁材が、セルロース系微粉粒と樹脂とを混合し、この混合材料を溶融させて押し出し成形してなる木質様部材である様にすることができる。
【0014】
前記板状格子部材の前記枠材及び前記補強梁及び前記主桁材のうち少なくとも主桁材の外周面が木粉入りの樹脂層で覆われてなる様にしても良い。
【0015】
前記板状格子部材の上面側の前記主桁材の側面に滑り止めが形成される様にしても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明の住宅の玄関構造によれば、玄関土間の水平部と上框上面との間に玄関土間の水平部から上框上面に向けて緩やかな昇り勾配を形成して板状格子部材が差し渡されているので、例えば車椅子使用者は車椅子に乗車したまま玄関土間から板状格子部材上を通過して玄関ホールを介して住宅内の各居室に入ることができ、逆に玄関ホールから板状格子部材上を通過して玄関土間を介して住宅外に出ることができる。また、車椅子使用者のみならず足の弱くなった高齢者や身障者等の出入りをスムーズに行わせることも可能になる。したがって一般住宅で簡易な構造により、空間を有効に活用して車椅子使用者が快適な生活を送ることができる居住環境を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第一の実施の形態]
以下に本発明の住宅を実施するための最良の形態につき図面を参照して説明する。
図1は本発明の住宅の玄関構造の第一の実施の形態に係る住宅1の平面図である。
本実施の形態の住宅1にあっては基本生活空間、すなわち車椅子使用者の日常生活を最低限確保するために必要な「就寝」「排泄」「洗面」「脱衣・入浴」「昼間の活動・食事」および住宅1からの出入りに供する空間を構成する要素としての玄関2、便所3、洗面脱衣室4、浴室5、居間・食事室6及び車椅子使用者の寝室7、廊下8が相互に近接して配置される。
【0018】
図2は図1に示す住宅1の部分拡大平面図である。図3は同じく部分拡大斜視図である。図4は図2A−A断面図である。
住宅1からの出入りに供する空間を構成する玄関2は、玄関ポーチ2−1と玄関土間2−2と玄関ホール2−3とを有して構成され、玄関土間2−2とホール2−3との境界領域に上框2−4を具える。また玄関ポーチ2−1と玄関土間2−2との間にはドア2−5が配置される。
【0019】
玄関2の玄関ポーチ2−1と玄関土間2−2とに生じる段差は、可能な限り平らにされ、くつずり、すなわちドア2−5の下枠と玄関ポーチ2−1との高低差は2cm以下、くつずりと玄関土間2−2の高低差は5mm以下とされている。この様に段差をくつずりのみにとどめても、玄関ポーチ2−1を設け、さらに深い庇(図示せず)を設置することによって、雨が直接ドア2−5や玄関ポーチ2−1に当たらないようにすることによって防水性能を確保することができる。
【0020】
図3及び図4に示される様に、玄関土間2−2は上框2−4よりも低い位置の水平部2−2aと、その水平部2−2aに連なり上框2−4下部に達する傾斜部2−2bとを有し、水平部2−2aと傾斜部2−2bとの境界部分の傾斜部2−2bには傾斜段差部2−2cが玄関土間2−2の横幅全域にわたり設けられる。
一方、上框2−4上面近傍の側壁面の最上部には上框段差部2−2dが上框2−4の横幅全域にわたり設けられる。
【0021】
傾斜部2−2bの傾斜段差部2−2cと上框2−4の上框段差部2−2d間には板状格子部材9が架設される。この板状格子部材9は、玄関ホール2−3及び玄関土間2−2と同一の横幅を有する枠材10に、相互に一定間隔に複数の補強梁11を取り付け、その複数の補強梁11に掛け渡して細長い板状部材、すなわち矩形帯状の複数の主桁材12を玄関ホール2−3及び玄関土間2−2と同一の横幅にわたり間隔をおいて配置してなる。各主桁材12の板状格子部材9の枠材10に対する取り付け位置は等間隔とされ、また各主桁材12の幅・厚みは同一とされる。
【0022】
以上の様に板状格子部材9を構成する各主桁材12は、玄関2の玄関ポーチ2−1と玄関土間2−2との間のドア2−5が配置される出入り口から玄関土間2−2及び上框2−4を経て玄関ホール2−3に向かう導線と直交する方向に延設して、平行に並べられる。
以上の補強梁11に掛け渡して複数の主桁材12を取り付けてなる板状格子部材9の枠材10は玄関ホール2−3及び玄関土間2−2間に固定的に配置されてはおらず、玄関ホール2−3側の横枠10aは上框段差部2−2dによって支持され、一方、玄関土間2−2側の横枠10bは水平部2−2aと傾斜部2−2bとの境界部分の傾斜段差部2−2cに載置されて支持される。
【0023】
図3及び図4に示される様に、玄関ホール2−3側の横枠10aが上框段差部2−2dによって支持され、一方、玄関土間2−2側の横枠10bが傾斜段差部2−2cに載置されて支持される様に、玄関土間2−2の水平部2−2aと上框2−4上面との間に板状格子部材9が配置される結果、玄関土間2−2の水平部2−2aと上框2−4上面との間に玄関土間2−2の水平部2−2aから上框2−4上面に向けて緩やかな昇り勾配を形成して板状格子部材9が差し渡される。また、玄関土間2−2の水平部2−2aと板状格子部材9との間及び板状格子部材9と上框2−4上面との間には特には段差は形成されない。
【0024】
また以上の様に、玄関土間2−2の水平部2−2aと上框2−4上面との間に板状格子部材9が配置される結果、配置後の板状格子部材9の下方には玄関土間2−2の傾斜部2−2bと上框2−4の側面とによって空間部13が形成される。この空間部13は、板状格子部材9が玄関ホール2−3及び玄関土間2−2の横幅と同一の幅を有する結果、玄関ホール2−3及び玄関土間2−2の横幅と同一の幅を有して形成される。
【0025】
図3及び図4に示される様に、各主桁材12はその基端部が板状格子部材9に取り付けられ、その先端を10〜15cm程度の高さで空間部13内側に向けて下方に突出する様に取り付けられる。また、各主桁材12がその先端を空間部13内側に突出する突出角度は、玄関土間2−2の水平部2−2aに最も近い主桁材12aが最も水平に近い角度を持ち、一方上框2−4上面に最も近い主桁材12nが最も垂直に近い角度を持つ様に主桁材12aから主桁材12nに向かって徐々に突出角度が変化する態様とされる。
【0026】
空間部13内側の上框2−4の側面部分には空間部13に向けて開口する凹部14が設けられる。この凹部14は玄関ホール2−3及び玄関土間2−2の横幅全長に渡る様に上框2−4の側面部に設けられ、その内側には照明灯である単数又は複数の蛍光灯15が配置される。この蛍光灯15は、玄関ホール2−3及び玄関土間2−2の横幅全長に渡る長さで凹部14に収納され、凹部14の開口部分及び空間部13を介して玄関土間2−2方向を照射する。また蛍光灯15はその発光面15aを凹部14の開口部分外側に突出する様に配置され、その結果、上框2−4上面方向も照射する。
【0027】
また、空間部13には傾斜部2−2bの最下方位置に水抜き16が設けられ、さらに傾斜部2−2bの最下方位置にはその一端から水抜き16に向けて緩やかに下降する勾配が形成され、これによって空間部13内側は水滴等が入っても水抜きが行われる水抜き構造とされる。
【0028】
以上の実施の形態の住宅によれば、板状格子部材9によって玄関土間2−2と玄関ホール2−3との間の段差部が解消されており、玄関土間2−2の水平部2−2aと上框2−4上面との間に玄関土間2−2の水平部2−2aから上框2−4上面に向けて緩やかな昇り勾配を形成して板状格子部材9が差し渡されているので、例えば車椅子使用者は車椅子に乗車したまま玄関土間2−2から板状格子部材9上を通過して玄関ホール2−3を介して住宅内の各居室に入ることができ、逆に玄関ホール2−3から板状格子部材9上を通過して玄関土間2−2を介して住宅外に出ることができる。また、車椅子使用者のみならず足の弱くなった高齢者や身障者等も玄関土間2−2から板状格子部材9上を通過して玄関ホール2−3を介して安全に住宅内に入ることができる。
【0029】
その場合に高齢者や身障者のみならず健常者も含め玄関の出入り口を介して出入りする住人は、玄関土間2−2と玄関ホール2−3との間の板状格子部材9の上面において履物の着脱を行うことができる。その際には、通常は玄関土間2−2と玄関ホール2−3との間の上框2−4によって形成される段差部が板状格子部材9によって解消されているので、高齢者や身障者は履物を脱着する動作のみに集中でき、躓いたり転んだりすることも大幅に減少する。また、その様に履き物の着脱を行う際に履物に付着したり、玄関戸の開閉の際などに玄関土間2−2に入ってくる土埃、水気等は、板状格子部材9の主桁材12n間の隙間を介して板状格子部材9下方の空間部13に落下し、玄関ホール2−3に侵入することなく空間部13に保持され、さらには水抜き16から洗い流されるので土埃、水気等の居室空間への侵入は防止することができる。
【0030】
また、空間部13内側の凹部14内側に配置された蛍光灯15によって板状格子部材9の主桁材12間の隙間を介して玄関土間2−2方向が照射され、玄関2の玄関ポーチ2−1と玄関土間2−2との間のドア2−5が配置される出入り口から住宅1内に入る住人若しくは来訪者は、玄関土間2−2と玄関ホール2−3との間の板状格子部材9の存在及びその位置を視覚によって容易に認識することができる。
【0031】
その場合に、玄関土間2−2の水平部2−2a近傍で水平に近い角度を持つ主桁材12aと傾斜部2−2bとの間隙から照射される蛍光灯15の光によって、外部から玄関2のドア2−5が配置される出入り口を介して玄関土間2−2に入った住人若しくは来訪者は、玄関土間2−2に入って直ぐに板状格子部材9の存在及びその位置を照明光によって視覚的に認識することができる。
【0032】
しかも、上框2−4上面に最も近い主桁材12nが最も垂直に近い角度を持つ様に主桁材12aから主桁材12nに向かって徐々に突出角度が変化する態様とされる結果、板状格子部材9を通過するまで蛍光灯15の光の照射を視認することができ、玄関土間2−2と玄関ホール2−3との区別の認識を常時視覚的に得ることができ、玄関土間2−2と玄関ホール2−3との区別をし難いという心理的な不安を可及的に少なくすることができる。
【0033】
一方、前述した様に蛍光灯15はその発光面15aの半ば以上を凹部14の開口部分外側に突出する様に配置され、その結果、上框2−4上面方向も蛍光灯15によって照射され、玄関ホール2−3を通って住宅1内から外に出る際には、上框2−4上面位置において板状格子部材9を通過して外に出る位置であることが蛍光灯15からの照射によって視覚的に認識でき、玄関土間2−2と玄関ホール2−3との心理的な区別が可能となる。
【0034】
なお、板状格子部材9の側部に水平手すり17a、17bを適切な高さに設けることによって高齢者や身障者の履物を脱着する動作の安全性を向上することができる。また、板状格子部材9を構成する各主桁材12は玄関ホール2−3に向かう導線と直交する方向に延設して設けらているので、板状格子部材9上に付着した土埃、水滴等が各主桁材12を伝って玄関ホール2−3へ到達することを効果的に防止することが可能になる。
【0035】
なお、以上の実施の形態で、住宅の居住者の使用態様によって、車椅子使用者や足の弱くなった高齢者及び身障者等の出入りの際に板状格子部材9を配置して使用し、図5に示す様に普段は板状格子部材9を取り外しておく様にすることもできる。その場合には、健常者等の住人は玄関土間2−2の傾斜部2−2bを利用して履き物の着脱等を行うことができ、むしろ上框2−4は通常の住宅における上框よりも楽な体勢で安全に履き物の着脱等を行うことができる位置となる。
【0036】
なお、板状格子部材9は、軽量で且つ耐久性を有するものである様にすることによって上框段差部2−2d及び傾斜段差部2−2cに配置する作業を容易にすることができ、また空間部13内側の清掃を行う際に容易に取り外すことができるようにすることができる。また、滑りにくい材質を用い、若しくは表面に滑り止め加工を施すことによって安全性を高め、さらに木質系等の自然素材の外観を呈する材質のものを用いることによって美感を向上することができる。
【0037】
この自然素材の外観を呈する材質のものを用いる場合には板状格子部材9の枠材10、補強梁11、各主桁材12のうち少なくとも各主桁材12にセルロース系微粉粒と樹脂とを混合し、この混合材料を溶融させて押し出し成形してなる木質様部材を適用することができる。
この木質様部材は例えば住宅廃材である木材を粉砕して得られた木粉及び食品包装等に用いられる樹脂包装部材を粉砕して得られた樹脂粉を押し出し成形して得られる。
【0038】
ここで、組成が等しいもの同士がまとめて回収される場合が多いものを選択的に採用することとして、再利用をより容易に行うという観点からすれば、このような樹脂包装部材としては、例えばポリプロプレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PV)等により形成された容器(コンテナを含む)、トレイ等(シート状のものも含まれる。)を用いることが好ましい。
【0039】
また、本物の木材により近い手触りや風合いを出すとともに廃材の再利用率を向上させるという観点からすれば、このような木質様部材としては、樹脂包装部材としてポリプロピレン包装部材を用い、木粉が30〜65wt%含まれているものを用いることが好ましい。
【0040】
さらに、180℃以下では軟化が不十分で、木粉と均等に混ざりあわず、押し出し成形も行いにくいというポリプロピレンの特質を相当に顧慮しようとする観点からすれば、このような木質様部材としては、木粉とポリプロピレン包装部材による樹脂粉とを混練したものを、180〜200℃で押し出し成形されていることが好ましい。
【0041】
すなわち、このような木質様部材である板状格子部材9によれば、原料として廃材を用いることが可能となっており、これにより、資源の有効利用が図られる。
【0042】
図6は、本発明の第二の実施の形態に係る住宅用玄関構造を示し、本第二実施形態の玄関構造によれば、上記第一実施形態の玄関構造の構成に加えて、玄関ホール2−3及び玄関土間2−2と同一の横幅に渡って、上框2−4上面の板状格子部材9近傍位置若しくは玄関土間2−2の水平部2−2aの板状格子部材9近傍位置又はその両者の中間位置の板状格子部材9上に弾性仕切り部材18a、18b、18cが設けられる。この第二の実施の形態に係る住宅用玄関構造では、この弾性仕切り部材18a、18b、18cの存在によって玄関ホール2−3と玄関土間2−2との仕切りのメリハリ感がより確実にされる。しかも弾性仕切り部材18a、18b、18c自体は車椅子による通過に特に支障のない高さとされているので、その点での問題もない。
【0043】
なお、実施の態様によっては空間部13を構成する傾斜部2−2bの表面に例えば押出法によるポリスチレンフォームや硬質ウレタンフォーム等からなる断熱材を敷設した後、仕上げ用のモルタルやタイルを施してその表面を形成することにより、傾斜部2−2bを断熱材を積層配置した断熱部として構成することによって熱的エネルギーのロスを効果的に防ぐことが可能になる。また傾斜部2−2b表面を覆うようにして、消臭、芳香、殺菌又は調湿機能を有する炭、活性炭、おがくず等からなる吸着・発散材を配置することによって消臭、調湿、殺菌、断熱、芳香などの効果を付与することが可能になる。
【0044】
図7(a)(b)は、本発明の第三の実施の形態に係る住宅用玄関構造を示し、本第三実施形態の玄関構造によれば、板状格子部材9の枠材10、補強梁11、各主桁材12のうち少なくとも各主桁材12が鉄等から成る芯材12aの外周面を木粉入りの樹脂層12bで覆って構成される。この様に鉄等から成る芯材12aを備えることによって板状格子部材9上を通過する人体の荷重を支えるに充分な強度を備えることができる。しかも、木粉入りの樹脂層12bを有することによって優れた耐候性および耐腐食性を備えるだけではなく、木材の雰囲気を得ることによって、優れた外観を呈する様にすることができる。
【0045】
さらに、この実施の形態では図7(b)に示す様に各主桁材12の樹脂層12bの一側面であって、板状格子部材9上を通過する人体の足裏や車椅子の車輪が直接接触する側面に波形若しくは突起状の凹凸若しくは粗い表面性状等からなる滑り止め12cを形成することができる。
【0046】
その様に各主桁材12の樹脂層12bが滑り止め12cを備える場合には、特に車椅子を使用して上框2−4上面から玄関土間2−2の水平部2−2aに向けて板状格子部材9上を通過する際の安全性を向上することができる。しかも、玄関土間2−2の水平部2−2aにおいて履き物を脱ぎ、板状格子部材9上を裸足で通過する車椅子を使用しない健常者等は滑り止め12cを構成する波形若しくは突起状の凹凸によって、足裏に健康上有益な心地よい刺激を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る住宅の玄関構造の平面図である。
【図2】図1に示す実施の形態に係る住宅の玄関構造の部分拡大平面図である。
【図3】図1に示す実施の形態に係る住宅の玄関構造の部分拡大斜視図である。
【図4】図1に示す実施の形態に係る住宅の玄関構造の部分断面模式図である。
【図5】図1に示す実施の形態に係る住宅の玄関構造の他の部分断面模式図である。
【図6】本発明の第二の実施の形態に係る住宅の玄関構造の部分断面模式図である。
【図7】本発明の第三の実施の形態に係る住宅の玄関構造の部分断面模式図である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・住宅、2・・・玄関、2−3・・・玄関ホール、2−2・・・玄関土間、2−4・・・上框、2−2a・・・水平部、2−2b・・・傾斜部、9・・・板状格子部材、13・・・空間部、10・・・枠材、11・・・補強梁、12・・・主桁材、14・・・凹部、15・・・蛍光灯、16・・・水抜き、17a,b・・・水平手すり、12a・・・樹脂層、12c・・・滑り止め、3・・・便所、4・・・洗面脱衣室、5・・・浴室、6・・・居間・食事室、7・・・車椅子使用者の寝室、8・・・廊下。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄関の玄関ホールと玄関土間との境界部に上框を有し、前記玄関土間は前記上框よりも位置の低い水平部と、前記水平部に連なり前記上框下部に達する傾斜部とを有して成り、前記水平部と前記上框上部との間に板状格子部材を設け、前記板状格子部材と前記傾斜部と前記上框側面とによって空間部を形成してなることを特徴とする住宅の玄関構造。
【請求項2】
前記板状格子部材は、前記上框と同一幅の枠材に前期玄関土間及び前期上框を経て前期玄関ホールに向かう導線に沿って配置された補強梁と、前記玄関土間及び前記上框を経て前記玄関ホールに向かう導線と直交する方向に間隔をおいて配置され、前記上框の幅に達する長さの複数の矩形帯状の主桁材とよりなり、前記各主桁材は、その先端を前記空間部内側に向けて突出する態様でその基端部が前記補強梁に取り付けられ、各主桁材がその先端を空間部内側に突出する突出角度は、前記水平部側から前記上框側に向かって水平に近い角度から垂直に近い角度となる様に徐々に変化する様に設定される請求項1記載の住宅の玄関構造。
【請求項3】
前記空間部内側の前記上框側面部には前記空間部に向けて開口する凹部が設けられ、前記凹部内側には照明灯が配置される請求項1記載の住宅の玄関構造。
【請求項4】
前記空間部内側は水抜き構造とされる請求項1記載の住宅の玄関構造。
【請求項5】
前期玄関土間及び前期上框を経て前期玄関ホールに向かう導線に沿って水平手すりが設けられる請求項1記載の住宅の玄関構造。
【請求項6】
前記板状格子部材の前記枠材及び前記補強梁及び前記主桁材のうち少なくとも主桁材が、セルロース系微粉粒と樹脂とを混合し、この混合材料を溶融させて押し出し成形してなる木質様部材であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の住宅の玄関構造。
【請求項7】
前記板状格子部材の前記枠材及び前記補強梁及び前記主桁材のうち少なくとも主桁材の外周面が木粉入りの樹脂層で覆われてなる請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の住宅の玄関構造。
【請求項8】
前記板状格子部材の上面側の前記主桁材の側面に滑り止めが形成される請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の住宅の玄関構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−88738(P2008−88738A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272021(P2006−272021)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】