説明

作業支援装置

【課題】 複数種類の部材を対象にそれぞれに対応する複数種類の締結工具を使用して作業する際に、作業者が間違った工具で締作業することを簡易かつ確実に防止することが可能な作業支援装置を提供する。
【解決手段】 作業支援装置を、複数種類の締結工具4a、4bのうち、選択された工具を検出する工具検出部6a、6bと、部材9を供給する部材供給装置5a、5bに設けられ、複数種類の部材9のうち選択された工具4a、4bに対応する部材以外のものの取得を禁止する部材取得禁止部7a、7bと、を備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の部材を対象にそれぞれに対応する複数種類の締結工具を使用して作業する際に、作業者が間違った工具で作業することを防止する作業支援装置に関し、特に、電動ドライバや電動レンチなどによりネジ又はボルトの締め付け作業を行う際に、ネジ等の適正締付トルクと異なった締付トルクに設定された電動ドライバ等により締め付け作業が行われることを防止する作業支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ネジ、ボルト類の締結部材(以下、本明細書において「ネジ等」と記す)によって部品を人手で組み付ける製品の組み立てラインでは、作業者は、各締結箇所に応じて指定されたネジ等を選択し、そのネジ等の種類に対応する締結工具(電動ドライバや電動レンチ、エアツールなど、以下、本明細書において「電動ドライバ等」と記す)を用いて、ネジ等の締め付け作業を行う。
このような組み立てラインにおいて1つの工程で複数種類のネジ等を締め付ける場合には、予めこれら複数種類のネジ等の各々にそれぞれ対応する電動ドライバ等が作業者に与えられ、作業者には、締め付けるネジ等の種類に応じて適正な電動ドライバ等を選択してネジ等を締結する。
【0003】
図1に、上述の締め付け作業に使用される各装置類の配置例を示す。作業台1には架台2が設けられ、この架台2にはツールバランサ3a、3bを介してそれぞれ電動ドライバ4a、4bが懸吊されている。また作業台1上には締め付け作業に使用されるネジを供給するためのネジ供給装置5a及び5bが配置される。なお、以下の説明において複数のツールバランサ3a及び3b、電動ドライバ4a及び4b、並びにネジ供給装置5a及び5bを総称して説明する場合には、その添え字(a、b)を省略して、単にツールバランサ3、電動ドライバ4及びネジ供給装置5とそれぞれ記載することがある。
【0004】
ここで、1つの工程で複数種類のネジ等を締め付ける際、例えば、適正締付トルクがそれぞれ異なるネジにて締め付ける場合には、図示するとおり複数のネジ供給装置(ここでは5a及び5b)が用意され、各ネジ供給装置毎に異なる種類のネジを供給するように配置する。そして架台2には、これらネジの種類に応じた種類の、例えば各ネジの適正締付トルクにそれぞれ対応する締付トルクに設定された、複数の電動ドライバ(ここでは4a及び4b)を懸吊する。
【0005】
締め付け作業時には、作業者は、懸吊された複数の電動ドライバ4a及び4bのうち、各締結箇所に応じて指定されたネジの適正締付トルクに対応する電動ドライバを選択して把持し、ネジ供給装置5a及び5bのうち当該ネジを供給するネジ供給装置のネジ供給箇所に呈された、ネジ頭部にドライバ先端(ビット)を係合させて当該ネジを取り出す。図2を参照してネジ供給装置5におけるネジ取り出し動作を説明する。
【0006】
図2の(A)はネジ供給装置5の全体斜視図である。ネジ供給装置5は、筐体51と、供給するネジを貯蔵するためのストック部52と、ストック部52に貯蔵されたネジを所定のネジ供給箇所まで滑り落とすためのシュータ54と、ストック部52に貯蔵されたネジをすくい上げてシュータ54のガイド用スリットにネジ軸部を挿入するためのディッパ53と、シュータ54を滑り落ちてネジ供給箇所55に至ったネジの頭部に対して、ドライバ先端(ビット)を容易に当接できるようにビットをガイドするビットガイド56と、を備える。
【0007】
図2の(B)はネジ供給装置5のネジ供給箇所の拡大図である。ストック部52に設けられたディッパ53と、図の矢印方向に往復動することによりそのスリット部分に貯蔵されたネジ9をすくい上げて、シュータ54のガイド用スリットにネジ軸部を挿入する。シュータ54の上面は傾斜が設けられており、挿入されたネジ9はガイド用スリットにネジ軸部を挿入した状態で自重でネジ供給箇所55まで滑り落ちる。
ネジ供給箇所55の上部空間にはビットガイド56が設けられており、作業者はこのガイド56に電動ドライバの回転軸41のビット先端42を沿わせることにより、磁石付ビット先端42をネジ頭部の係合溝に係合させて、ネジ9を取り出す。
【0008】
【特許文献1】特開2000−47705号公報
【特許文献2】特開平6−47634号公報
【特許文献3】特開2003−181728号公報
【特許文献4】特開平6−339825号公報
【特許文献5】特開2004−314213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように従来行われていた人手でのネジ等の締め付け作業では、異なる種類のネジ等を締結する際にどの電動ドライバ等を使用するかの判断を、作業者の注意力に委ねていた。このため締結するネジ等の種類に対応しない電動ドライバ等によって締結してしまうという人的ミスを防止することができなかった。
特に、ネジ等の種類の相違が締付トルクのみの相違の場合には、当該ネジ等の適正締付トルクに設定された電動ドライバ等でなくても締結することが可能であるため、作業者がミスに気づかず締め付け作業を継続してしまう問題があった。
【0010】
上記問題点に鑑み、本発明は、複数種類の部材を対象にそれぞれに対応する複数種類の締結工具を使用して作業するの際に、作業者が間違った工具で作業することを簡易かつ確実に防止することが可能な作業支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る作業支援装置は、複数種類の工具のうち、選択された締結工具を検出する工具検出手段と、前記部材を供給する部材供給手段に設けられ、前記複数種類の部材のうち、前記選択された工具に対応する部材以外のものの取得を禁止する部材取得禁止手段と、を備える。
【0012】
部材取得禁止手段は、複数の工具が同時に選択されたことを工具検出手段が検出したとき、これら選択された工具にそれぞれ対応する部材の取得をも禁止するように構成してよい。
また、部材取得禁止手段は、部材供給手段の部材の供給場所を覆うことにより部材の取得を禁止するカバー部を備えて構成してもよい。
さらに部材供給手段が、部材を工具に係合させて取り出しできる状態に呈して供給する場合には、部材取得禁止手段は、部材供給手段により供給される部材を、工具によって取り出すことを妨げる取り出し防止手段を備えて構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る作業支援装置を使用することにより、複数種類の部材を対象にそれぞれに対応する複数種類の締結工具を使用する作業において、作業者が間違った工具で作業することを、簡易な構成で確実に防止することが可能となる。
特に、適正締付トルクが異なる複数の締結部材を、これら適正締付トルクに応じて締付トルクが各々設定された複数の締結工具で締め付ける作業に使用することにより、作業者が間違った締付トルクで締結部材を締め付けること防止することが可能となる。
【0014】
また、複数の工具が同時に選択されたとき、これら選択された工具に対応する部材の取得をも禁止することによって、同時に選択された複数の工具を取り違えて使用してしまうことを防止することが可能となる。
さらに、部材供給手段の部材の供給場所を覆うカバー部を備えることにより、簡易な構成によって、作業者がいずれの部材供給手段から部材を取り出すべきかを目視することを容易にする。
【0015】
特に、部材供給手段が、部材を工具に係合させて取り出しできる状態に呈して供給する場合に、工具で部材を取り出すことを妨げる取り出し防止手段を備えることにより、常に部材と工具とが対応する態様で工具に係合して部材が供給されるため、間違った工具で部材を締め付けることをより確実に防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例を説明する。図3は、発明に係る作業支援装置の実施例の設置例の全体構成を示す図である。なお、以下本明細書では、部材として異なる複数の適正締付トルクを有するネジを、各適正締付トルクにトルク設定された電動ドライバを使用して締め付ける作業において、作業者が締付トルクの異なる電動ドライバでネジを締め付けることを防止する作業支援装置について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば複数の適正締付トルクを有するボルトを、各適正締付トルクにトルク設定された電動レンチを使用して締め付ける作業において、作業者が締付トルクの異なる電動レンチでボルトを締め付けることを防止するなど、様々な締結部材とこれを締め付ける締結工具に適用することが可能である。
【0017】
また、締結部材の種類の違いも適正締付トルクの相違のみに限定されるものではなく、例えばネジ頭部のドライバとの係合溝の相違やボルト頭部のサイズの相違など、その相違に応じて締結工具を使い分ける必要のある様々な締結部材の種類の相違に適用することが可能である。
さらに、部材および工具も締結部材および締結工具に限定されるものではなく、圧着端子と圧着ペンチなどの工具を使って作業する部材であれば、他の種類の部材および工具に本発明を適用可能であることは言うまでもない。
【0018】
図3を参照すると、図1と同様に作業台1には架台2が設けられ、この架台2にはツールバランサ3a、3bを介してそれぞれ電動ドライバ4a、4bが懸吊されている。また作業台1上には、図2を参照して上記したような、締め付け作業に使用されるネジを供給するためのネジ供給装置5a及び5bが配置される。
ここで、複数のネジ供給装置5a及び5bは、各々適正締付トルクがそれぞれ異なるネジを供給し、複数の電動ドライバ4a及び4bは、その締付トルクが、それぞれネジ供給装置5a及び5bが供給するネジの適正締付トルクに合わせて設定されている。
【0019】
本実施例に係る作業支援装置は、ツールバランサ3a、3bにそれぞれ設けられ、複数の電動ドライバ4a及び4bのうち、ネジ締め付けのために作業者に選択された電動ドライバを検出するツール検出センサ6a及び6bと、ネジ供給装置5a及び5bのそれぞれに設けられ、これらネジ供給装置5a及び5bからのネジの取得を禁止するネジ取得禁止部7a及び7bと、を備える。
【0020】
作業支援装置は、後述するネジ取得禁止部7a及び7bが有する各々エアシリンダを駆動するための圧縮空気を供給するためのエアコンプレッサ又はエアタンクなどのエア源81と、上記エアシリンダへの圧縮空気の供給を制御するための電磁バルブ部82とを備える。
さらに、作業支援装置は、ツール検出センサ6a及び6bの検出信号に基づいて電磁バルブ部82を制御して、ネジ供給装置5a及び5bのうち、作業者に選択された電動ドライバに対応するいずれかのネジ供給装置(すなわち選択された電動ドライバの締付トルクに対応するネジを供給するネジ供給装置)に設けられたネジ取得禁止部を取得許可状態に駆動し、他方のネジ供給装置に設けられたネジ取得禁止部を取得禁止状態に駆動する制御部83を備える。
【0021】
図4は、図3に示すツールバランサ3に設けられたツール検出センサ6の構成例を示す図である。ツール検出センサ6は、電動ドライバ4を懸吊するツールバランサ3のワイヤ31に取り付けられるワイヤカラー61と、ワイヤ31の引き出し状態によってアクチュエータ(レバー)がワイヤカラー61に当接して、内蔵する電気接点が開閉されるリミットスイッチ62と、リミットスイッチ62をツールバランサ3に取り付けるためのリミットスイッチ取り付け部材63とを備える。リミットスイッチ62の電気接点は制御部83に接続され、その開閉状態が制御部83に取得される。
【0022】
図5は、ツール検出センサ6の動作例を説明する図である。ここで図5の(A)は電動ドライバ4が作業者に選択されていない状態を示し、図5の(B)は電動ドライバ4が作業者に選択された状態を示す。
図5の(A)に示すとおり、ドライバ4が作業者に選択されていない状態では、ツールバランサ3のワイヤ31の引き出し量は少なく、ワイヤ31に固定されたワイヤカラー61は、リミットスイッチ62のアクチュエータ(レバー)に当接することによってこれを押し上げ、リミットスイッチ62のB接点が開放される(又はA接点が構成される)。
【0023】
一方、ドライバ4が作業者に選択されると、図5の(B)に示すとおり、ツールバランサ3のワイヤ31の引き出し量が多くなり、これに伴ってワイヤ31に固定されたワイヤカラー61が、リミットスイッチ62のアクチュエータ(レバー)に当接しなくなる。したがって、このときリミットスイッチ62のB接点が構成される(又はA接点が開放される)。
したがって、図3に示した制御部83は、リミットスイッチ62の電気接点の開閉状態を読み取ることにより、かかるリミットスイッチ62が取り付けられたツールバランサ3に懸吊された電動ドライバ4を、作業者が選択したか否かを検出することが可能である。
【0024】
なお、上記構成例では、ドライバ4の選択の有無を検出するセンサにリミットスイッチ62を使用したが本発明はこれに限定されるものではなく、その他にも光センサ、超音波センサ、静電容量センサ、渦電流センサなど種々のセンサを使用することが可能である。
また、上記構成例では、センサをツールバランサ3に設けることとしたが、本発明はこれに限定されるものではなくツールバランサ3を支持する架台2や、これをさらに支持する作業台1に設けてもよい。
さらに、締め付け作業に使用しない電動ドライバ4を備え付けておく場所やホルダを予め定めておき、これらの場所やホルダに電動ドライバ4が置かれているか否かを上記種々のセンサで検出し、ドライバ4の選択の有無を検出してもよい。
【0025】
図6は、図3に示すネジ供給装置5に設けられたネジ取得禁止部7の構成例を示す図である。ネジ供給装置5自体は、図2を参照して上記説明した構造と同一の構造を備えるため、同じ構成要素について同じ参照符号を用いて表し説明を省略する。
ネジ取得禁止部7は、ネジ供給箇所55の上部空間又はビットガイド56の上部空間を覆うことにより、ネジ供給装置5からのネジの取り出しを禁止するためのカバー部材(またはシャッター部材)71と、エア源81からの圧縮空気によって駆動されて、カバー部材71を開位置(ネジ9の取得許可状態)及び閉位置(ネジ9の取得禁止状態)に動かすエアシリンダ72と、ネジ供給装置5の背面、側面及び底面をカバーしつつネジ供給装置5本体を収容する構造を備え、その上にネジ供給装置5を載置することによりネジ供給装置5を保持するネジ供給装置カバー73と、エアシリンダ72をネジ供給装置カバー73に固定するためのエアシリンダ取り付け部材74と、を備える。
【0026】
図7は、ネジ取得禁止部7の動作例を説明する図である。
図3に示す複数の電動ドライバ4のうち、いずれかの電動ドライバ4が作業者に選択されたとき、制御部83は、ツール検出センサ6に各々設けられたリミットスイッチ62(図4参照)の電気接点を読み取って、電磁バルブ部82を制御し、複数のネジ供給装置5のうち、作業者に選択された電動ドライバ4に対応するネジ9を供給するネジ供給装置5に設けられたネジ取得禁止部7のカバー部材71を開位置に駆動する。この状態を図7の(A)に示す。そして、他方のネジ供給装置5に設けられたネジ取得禁止部7のカバー部材71を閉位置に駆動する。この状態を図7の(B)に示す。
【0027】
図7の(A)に示すとおり、ネジ取得禁止部7は、そのカバー部材71が開位置に駆動されてネジ9の取得許可状態にあるとき、カバー部材71がビットガイド56の上部空間を覆わない退避位置まで移動され、電動ドライバ4の回転軸41の先端に設けられたビット42とネジ9の上部に設けられた係合溝との係合を阻害しないことにより、電動ドライバ4によるネジ9の取り出しを許可する。
一方で、そのカバー部材71が閉位置に駆動され、ネジ9の取得禁止状態にあるとき、図7の(B)に示すとおり、ネジ取得禁止部7は、カバー部材71でビットガイド56の上部空間を覆って、電動ドライバ4の回転軸41の先端に設けられたビット42が、ネジ9の上部に設けられた係合溝と係合することを阻害して、電動ドライバ4によるネジ9の取り出しを禁止する。
【0028】
なお、上記実施例では、カバー部材71の駆動手段としてエアシリンダ72を使用することとしたが、本発明はこれに限定されることなく、他にも電気信号を機械的な運動に変換するデバイス(例えばソレノイドなど)であれば、なんであれカバー部材71の駆動手段として使用することが可能である。
例えば、ソレノイドのような駆動手段を使用する場合には、制御部83は、エア源81の圧縮空気を電磁バルブ部82で制御する必要がなくなる。このとき制御部83は、リミットスイッチ62(図4参照)の電気接点を読み取って選択されたドライバ4を検出し、これに対応するネジ供給装置5のネジ取得禁止部7のカバー部材71を駆動するソレノイドに、カバー部材71を開位置に駆動する電気信号を直接送信する。また他方のネジ供給装置5のネジ取得禁止部7のカバー部材71を駆動するソレノイドに、カバー部材71を閉位置に駆動する電気信号を直接送信する。
【0029】
図8は、ネジ取得禁止部7を制御する制御部83内の制御回路の構成例を示す図である。上述の通り制御部83は、図3に示す複数のツール検出センサ6に各々設けられたリミットスイッチ62(図4参照)の電気接点を読み取って、複数のネジ供給装置5のうち、作業者に選択された電動ドライバ4に対応するネジ9を供給するネジ供給装置5に設けられたネジ取得禁止部7のカバー部材71を開位置に駆動し、他方のネジ供給装置5に設けられたネジ取得禁止部7のカバー部材71を閉位置に駆動するように電磁バルブ部82を制御する。
【0030】
また、制御部83は、複数のツールバランサ3(図3の例では2個のツールバランサ3a、3bの両方)に設けられたツール検出センサ6が、これらツールバランサ3に懸吊された各々の電動ドライバ4が作業者に選択されたことを、同時に検出したとき、これらの電動ドライバ4に対応するネジ9を供給するネジ供給装置5に設けられたネジ取得禁止部7のカバー部材71を閉位置に駆動し、ネジ9の取得を禁止するように電磁バルブ部82を制御する。
【0031】
図8の(A)は、上記制御部83の制御をシーケンス回路で実現したものである。図8の(A)においてスイッチSWaは、電動ドライバ4aに取り付けられたツール検出センサ6aのリミットスイッチの接点を示し、スイッチSWbは、電動ドライバ4bに取り付けられたツール検出センサ6bのリミットスイッチ62の接点を示すものとし、おのおの、図5(A)に示すような電動ドライバ4が作業者に選択されていない状態でA接点が構成され、図5(B)に示すような電動ドライバ4が作業者に選択された状態でB接点が構成されるものとする。
【0032】
また、電磁バルブVao及びVacは、電動ドライバ4aに対応するネジ供給装置5aに設けられたネジ取得禁止部7aのカバー部材71を開閉するための電磁バルブで、電磁バルブVaoに通電したときカバー部材71が開き、電磁バルブVacに通電したときカバー部材71が閉じるものとする。同じく電磁バルブVbo及びVbcは、電動ドライバ4bに対応するネジ供給装置5bに設けられたネジ取得禁止部7bのカバー部材71を開閉するための電磁バルブで、電磁バルブVboに通電したときカバー部材71が開き、電磁バルブVbcに通電したときカバー部材71が閉じるものとする。
【0033】
リレーBRは、電動ドライバ4a及び電動ドライバ4bの両方が選択された場合のみ励磁するリレーである。リレーBRが励磁すると電磁バルブVao及びVboへの通電を遮断するとともに、電磁バルブVac及びVbcへの通電回路を構成してネジ取得禁止部7a及び7bの両方のカバー部材71を閉じる。
【0034】
電動ドライバ4aのみが選択されると、スイッチSWaのb接点とスイッチSWbのa接点が構成される。またリレーBRは無励磁状態となる。これにより、電磁バルブVaoはスイッチSWa及びリレーBRのb接点を介して通電され、ネジ取得禁止部7aのカバー部材71を開状態に駆動する。一方、電磁バルブVbcはスイッチSWb又はリレーBRのa接点を介して通電され、ネジ取得禁止部7bのカバー部材71を閉状態に駆動する。
【0035】
また、電動ドライバ4bのみが選択されると、スイッチSWbのb接点とスイッチSWaのa接点が構成される。またリレーBRは無励磁状態となる。これにより、電磁バルブVboはスイッチSWb及びリレーBRのb接点を介して通電され、ネジ取得禁止部7bのカバー部材71を開状態に駆動する。一方、電磁バルブVacはスイッチSWb又はリレーBRのa接点を介して通電され、ネジ取得禁止部7aのカバー部材71を閉状態に駆動する。
【0036】
電動ドライバ4a及び電動ドライバ4bの両方が選択されるとリレーBRが励磁され、電磁バルブVao及びVboへの通電を遮断するとともに、電磁バルブVac及びVbcへの通電回路を構成してネジ取得禁止部7a及び7bの両方のカバー部材71を閉じる。
【0037】
図8の(B)は、制御部83の制御をディジタル論理回路を用いて実現したものである。図8の(B)において入力信号SWa及びSWbは、それぞれツール検出センサ6a及び6bのリミットスイッチ62により生成される「H」及び「L」の2値信号を示し、各々図5(A)に示すような電動ドライバ4が作業者に選択されていない状態で「L」の値をとり、図5(B)に示すような電動ドライバ4が作業者に選択された状態で「H」の値をとるものとする。
また出力信号Va及びVbは、それぞれネジ供給装置5a及び5bに設けられたネジ取得禁止部7a及び7bのカバー部材71を開閉するための電磁バルブを制御する「H」及び「L」の2値信号を示し、「H」の値が出力されたときカバー部材71を開き、「L」の値が出力されたときカバー部材71を閉じる。
図示するとおり、出力信号Va及びVbは下記論理式、
【0038】
Va=SWa AND (SWa NAND SWb)
Vb=SWb AND (SWa NAND SWb)
【0039】
で示され、ネジ取得禁止部7a及び7bのカバー部材71は、それぞれ電動ドライバ4a及び電動ドライバ4bのみが選択された場合のみ開状態に駆動され、電動ドライバ4a及び電動ドライバ4bの両方が同時に選択され又は選択されない場合、ネジ取得禁止部7a及び7bのカバー部材71は閉状態に駆動される。
【0040】
図8を参照して行った上記の例では、制御部83は、ネジ取得禁止部7のエアシリンダ72を駆動する電磁バルブの制御を行うものとして説明したが、ネジ取得禁止部7のカバー部材71の開閉にはソレノイドなど電気信号を機械的な運動に変換するデバイスを使用してよく、制御部83を、このようなデバイスを制御するために図8と同様に構成してもよい。
【0041】
また上記の実施例では、複数のツールバランサ3に設けられたツール検出センサ6が、これらツールバランサ3に懸吊された各々の電動ドライバ4が作業者に選択されたことを同時に検出したとき、これらの電動ドライバ4に対応するネジ供給装置5に設けられたネジ取得禁止部7のカバー部材71を閉位置に駆動するように構成したが、これに代えて、複数の電動ドライバ4が作業者に選択されたとき、全てのカバー部材71が閉じられるように構成してもよい。
【0042】
さらに上記の実施例では、簡単のため電動ドライバ4及びネジ供給装置5がおのおの2台の構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに多くの台数の電動ドライバ4及びネジ供給装置5を接続して構成してもよい。
また、上記の実施例では、簡単のために1台の電動ドライバ4には1台のネジ供給装置5が対応するように構成したが、1台の電動ドライバ4に複数台のネジ供給装置5が対応するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、複数種類の部材を対象にそれぞれに対応する複数種類の締結工具を使用して作業する際に、作業者が間違った工具で作業することを防止する作業支援装置に利用可能である。
好適には、電動ドライバや電動レンチなどによりネジ又はボルトの締め付け作業を行う際に、ネジ等の適正締付トルクと異なった締付トルクに設定された電動ドライバ等により締め付け作業が行われることを防止する作業支援装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】ネジの締め付け作業に使用される各装置類の配置例を示す図である。
【図2】(A)はネジ供給装置の全体斜視図であり、(B)はそのネジ供給箇所の拡大図である。
【図3】本発明に係る作業支援装置の実施例の設置例の全体構成を示す図である。
【図4】図3に示すツール検出センサの構成例を示す図である。
【図5】(A)は電動ドライバが選択されていない状態を示す図であり、(B)は電動ドライバが選択された状態を示す図である。
【図6】図3に示すネジ取得禁止部の構成例を示す図である。
【図7】(A)はネジの取得が禁止されていない状態を示す図であり、(B)はネジの取得が禁止された状態を示す図である。
【図8】図3に示すネジ取得禁止部を制御する制御回路の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 作業台
2 架台
3a、3b ツールバランサ
4a、4b 電動ドライバ
5a、5b ネジ供給装置
6a、6b ツール検出センサ
7a、7b ネジ取得禁止部
81 エア源
82 電磁バルブ部
83 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の部材を対象にそれぞれに対応する複数種類の工具を使用して作業する際の作業支援装置であって、
前記複数種類の工具のうち、選択された締結工具を検出する工具検出手段と、
前記部材を供給する部材供給手段に設けられ、前記複数種類の部材のうち、前記選択された工具に対応する部材以外のものの取得を禁止する部材取得禁止手段と、
を備えることを特徴とする作業支援装置。
【請求項2】
前記部材取得禁止手段は、複数の工具が同時に選択されたことを前記工具検出手段が検出したとき、これら選択された工具にそれぞれ対応する部材の取得をも禁止することを特徴とする請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項3】
前記部材取得禁止手段は、前記部材供給手段の部材の供給場所を覆うことにより前記部材の取得を禁止するカバー部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業支援装置。
【請求項4】
前記部材供給手段は、前記部材を、前記工具に係合させて取り出しできる状態に呈して供給し、
前記部材取得禁止手段は、前記部材供給手段が供給する前記部材を、前記工具により取り出すことを妨げる取り出し防止手段を備えること、
を特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の作業支援装置。
【請求項5】
前記複数種類の部材は適正締付トルクが異なる複数の締結部材であり、
前記複数種類の締結工具は、対応する前記締結部材の適正締付トルクに応じてその締付トルクが設定されている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の作業支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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