説明

作業車両のヨーク部支持構造

【課題】作業車両のヨーク部と作業機の入力軸との連結をスムーズに行うことができる作業車両のヨーク部支持構造を提供することを課題とする。
【解決手段】作業車両1の昇降リンク18,19に装着されたオートヒッチ2と、基端部が作業車両1のPTO軸26に連結されたジョイント軸24と、ジョイント軸24の先端部に回転及び揺動自在に連結されたヨーク部28と、ヨーク部28を回転自在に支持しオートヒッチ2側に設けられたヨークホルダ29と、ヨークホルダ29の昇降を案内するガイド部材とにより構成される作業車両のヨーク部支持構造であって、案内部材を、作業機3のオートヒッチ2への連結動作時において作業機3の入力軸27とヨーク部28とが略一直線状になるように、ヨークホルダ29の昇降及び揺動を案内するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業車両のヨーク部支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両の動力が伝動されるヨーク部に、軸芯方向や高さが一定しない作業機の入力軸をスムーズに連結するため、ヨーク部を回動自在に支持するヨークホルダの昇降を案内するガイド部材を設けた作業車両のヨーク部支持構造が公知となっている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−8014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記文献の作業車両のヨーク部支持構造によれば、ヨークホルダのオートヒッチに対する上下位置はガイド部材によって案内されるが、ヨークホルダのオートヒッチ内での揺動は一定範囲で規定させるがそれ以外の範囲ではフリーである。このため、ヨーク部と入力軸の連結時、ヨークホルダの揺動によってヨーク部の軸芯が入力軸の軸芯に対してずれる場合があり、このような場合にはヨーク部と入力軸との連結をスムーズに行うことができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本発明のヨーク部支持構造によれば、第1に作業車両1の昇降リンク18,19に装着されたオートヒッチ2と、基端部が作業車両1のPTO軸26に連結されたジョイント軸24と、ジョイント軸24の先端部に回転及び揺動自在に連結されたヨーク部28と、ヨーク部28を回転自在に支持しオートヒッチ2側に設けられたヨークホルダ29と、ヨークホルダ29の昇降を案内するガイド部材とにより構成される作業車両のヨーク部支持構造であって、ガイド部材が、作業機3のオートヒッチ2への連結動作時において作業機3の入力軸27とヨーク部28とが略一直線状になるように、ヨークホルダ29の昇降及び揺動を案内するように構成されたことを特徴としている。
【0005】
第2に、ガイド部材が側面視で作業車両側に向かって山形の円弧状をなすガイド溝33aと、該ガイド溝内33aに収容されヨーク部28を該ガイド溝33aに沿って昇降スライドさせるガイド突起32とよりなることを特徴としている。
【0006】
第3に、ガイド突起32が弾性体で構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明のトラクタのヨーク部支持構造によれば、作業機の連結動作時、ガイド部材によってヨークホルダが昇降及び揺動案内されて作業機の入力軸とヨーク部とが一直線状になるため、入力軸とヨーク部との連結をスムーズに行うことができるという効果がある。
【0008】
また、ガイド部材が、側面視でトラクタ側に向かって山形の円弧状をなすガイド溝と、該ガイド溝内に収容されヨーク部を該ガイド溝に沿って昇降スライドさせるガイド突起とからなることにより、ヨークホルダの昇降及び揺動案内が確実且つスムーズに行われる。
【0009】
さらに、ガイド溝内に収容されるガイド突起を弾性体で構成することにより、ヨークホルダの振動が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の作業車両のヨーク部支持構造を適用したトラクタ及び作業機の側面図である。作業車両であるトラクタ1にはオートヒッチ2を介してロータリ耕耘装置である作業機3が昇降自在に連結されている。
【0011】
作業機3は、ギアケース4(図5参照)と、ギアケース4の左右両側面からそれぞれ左右方向に突設された円筒部6によりフレーム部を構成していおり、各円筒部6の中途部にはフランジ7が形成され、ギアケース4の上面にはトップマスト8が上方に向かって突設されている。上記2つのフランジ7にはそれぞれロアピン9、上記トップマスト8にはトップピン11が取り付けられており、このトップピン11及び左右一対のロアピン9により、作業機3がトラクタ1のオートヒッチ2に連結される。
【0012】
図2及び3はオートヒッチの斜視図、背面図である。オートヒッチ2は、背面視逆U字状の主フレーム12と、主フレーム12の上部中央に固設されトップフック13と、主フレーム12の左右下部にそれぞれ固定的に取り付けられたロアプレート14と、左右のロアプレート14,14を連結する左右方向の下部フレーム16とによりフレーム部を構成している。
【0013】
トップフック13には、上方が開口した係合溝13aが形成され、各ロアプレート14には後方が開口した係合溝14aが形成されており、トップフック13の係合溝13aに作業機3のトップピン11、ロアプレート14の各係止溝14aに対応する作業機3のロアピン9を係合することにより、作業機3がオートヒッチ2に連結される。なお、各ロアプレート14に回動自在に支持されたロアフック17により、ロアプレート14とロアピン9の係合を解除又はロックして作業機3のオートヒッチ2への連結の解除又はロックを行う。
【0014】
上記構成のオートヒッチ2は、トップリンク18及び左右一対のロアリンク19により、トラクタ1側に昇降自在に連結されている。トップリンク18は、基端側がトラクタ1後端の中央に固設されたトップリンクサポート21に上下回動自在に支持され、先端側がオートヒッチ2のフレーム部を構成するトップフック13に上下回動自在に連結されている。一方、各ロアリンク19は、基端側がトラクタ1後端の下部に上下回動自在に支持され、先端側がオートヒッチ2の対応するロアプレート14に上下回動自在に連結されている。
【0015】
トラクタ1後端には上下揺動自在に左右一対のリフトアーム22が軸支され、各リフトアーム22先端にはリフトロッド23を介して対応するロアリンク19の中途部が連結されており、このリフトアーム22の油圧動作により、オートヒッチ2及び作業機3が昇降駆動される。
【0016】
トラクタ1とオートヒッチ2の間にはトップリンク19及びロアリンク21とともに、図1に示すようにトラクタ1側からの動力を作業機3に伝動する前後方向のジョイント軸24が設けられており、ジョイント軸24の前端はトラクタ1後端の下部から後方に突出したPTO軸26に連結され、後端は作業機3の入力軸27(図5参照)と接続されるヨーク部28に連結されている。
【0017】
PTO軸26とジョイント軸24及びジョイント軸24とヨーク部28の連結部はユニバーサルジョイントを形成しており、PTO軸26の動力がヨーク部28に伝動される構造になっている。ヨーク部28の後端にはスプライン軸である上記入力軸27が挿入される挿入穴28aが形成されている。上記機構により、ヨーク部28の動力が作業機3の入力軸27に伝動される。
【0018】
ヨーク部28は、ユニット化された軸受部であるヨークホルダ29によって回動自在に支持されている。図2、3に示すように、ヨークホルダ29は、背面視略円形で筒状の軸受部31と、軸受部31の左右両側面からそれぞれ左右方向に突設されたガイド突起32とにより構成されている。なお、ガイド突起32はゴム等の弾性部材により構成されている。
【0019】
一方、下部フレーム16中央には左右一対のサポート33が上方に向かって突設されている。上下方向に延びた左右のサポート33、33は、相互に対向した平面視略コの字形(又は逆コの字形)の形状に形成されており、このサポート33の形状により、各サポート33には上方及び左右方向内側が開口したガイド溝33aが形成される。
【0020】
ヨークホルダ29の各ガイド突起32を左右両サポート33のガイド溝33aの上方開口部から挿入し、ガイド溝33a(又はガイド部材33)とガイド突起32を係合することにより、ヨークホルダ29をオートヒッチ2側に支持する。
【0021】
図4(A)は、ジョイント軸、ヨーク部及びヨークホルダの斜視図であり、(B)はガイド突起とガイド溝の係合状態を示す側断面図である。ガイド溝33aは、作業車両側に向かって山形に湾曲した側面視円弧形の形状に成形されており、ガイド突起32の前後面も上記ガイド溝33aの形状及び前後幅に対応した側面視円弧状の形状に成形されている。
【0022】
上記構成のヨーク部の支持構造によれば、ガイド溝33aに、ガイド溝33aの形状に対応したガイド突起32が係合しているため、ヨークホルダ29に支持されたヨーク部28は、ガイド溝33aに沿ってスムーズに昇降案内されるとともに、各昇降位置に対応してオートヒッチ2内でのヨーク部28(ヨークホルダ29)の揺動角も定まる。すなわち、ガイド突起32とガイド溝33aの係合により、ヨーク部28の昇降及び揺動が案内される。
【0023】
図5(A)〜(D)は、オートヒッチに作業機を連結する際のヨーク部と入力軸との連結過程を示す側面図である。作業機3をオートヒッチ2に連結する際、トップピン11をトップフック13に係合すると、トップピン11を回動支点として作業機3全体が回動し、作業機3の入力軸27がヨーク部28に近づいていく(同図(A)参照)。
【0024】
次に、ヨーク部28の挿入穴28aに形成されたテーパ面に案内されて入力軸27先端が挿入穴28aに挿入されると、ガイド溝33aに沿ってヨーク部28が昇降案内され、この昇降案内に伴いジョイント軸24、ヨーク部28及び入力軸27が略一直線状になるようにヨーク部28の揺動角が案内される(同図(B)参照)。
【0025】
そして、入力軸27のヨーク部28への連結動作開始時から入力軸27全体がヨーク部28の挿入穴28aに完全に挿入され且つ作業機3のロアピン9がオートヒッチ2のロアプレート14の係合溝14aに係合される連結動作終了時までの間、ジョイント軸24、ヨーク部28及び入力軸27が略一直線状になるように、ガイド突起32とガイド溝33aとからなるガイド部材によって、ヨーク部28の昇降及び揺動が案内される(同図(C)〜(D)参照)。
【0026】
以上のように構成される作業車両におけるヨーク部支持構造によれば、ヨーク部28への入力軸27への連結動作の間、ヨーク部と入力軸が一直線状になるため、動力軸の連結がスムーズに行われる。また、ガイド突起32が弾性部材で構成されることにより、動力伝達時の回転反力によってヨーク部が振動するトラブル等が防止される。さらに、ガイド突起32とガイド溝33aとの係合により、ヨークホルダの意図しない挙動が抑制されるため、それに伴うトラブルも防止される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】トラクタ及び作業機の側面図である。
【図2】オートヒッチの斜視図である。
【図3】オートヒッチの背面図である。
【図4】(A)は、ジョイント軸、ヨーク部及びヨークホルダの斜視図であり、(B)はガイド突起とガイド溝の係合状態を示す側断面図である。
【図5】(A)〜(D)は、オートヒッチに作業機を連結する際のヨーク部と入力軸との連結過程を示す側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 トラクタ(作業車両)
2 オートヒッチ
3 作業機
18 トップリンク(昇降リンク)
19 ロアリンク(昇降リンク)
24 ジョイント軸
27 入力軸
28 ヨーク部
29 ヨークホルダ
32 ガイド突起(ガイド部材)
33a ガイド溝(ガイド部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両(1)の昇降リンク(18),(19)に装着されたオートヒッチ(2)と、基端部が作業車両(1)のPTO軸(26)に連結されたジョイント軸(24)と、ジョイント軸(24)の先端部に回転及び揺動自在に連結されたヨーク部(28)と、ヨーク部(28)を回転自在に支持しオートヒッチ(2)側に設けられたヨークホルダ(29)と、ヨークホルダ(29)の昇降を案内するガイド部材とにより構成される作業車両のヨーク部支持構造であって、ガイド部材が、作業機(3)のオートヒッチ(2)への連結動作時において作業機(3)の入力軸(27)とヨーク部(28)とが略一直線状になるように、ヨークホルダ(29)の昇降及び揺動を案内するように構成された作業車両のヨーク部支持構造。
【請求項2】
ガイド部材が側面視で作業車両側に向かって山形の円弧状をなすガイド溝(33a)と、該ガイド溝内(33a)に収容されヨーク部(28)を該ガイド溝(33a)に沿って昇降スライドさせるガイド突起(32)とよりなる請求項1の作業車両のヨーク部支持構造。
【請求項3】
ガイド突起(32)が弾性体で構成された請求項2の作業車両のヨーク部支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−136409(P2008−136409A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325060(P2006−325060)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】