説明

作業車

【課題】車体フレームに弾性体を介して支持されたエンジンと、前記エンジンの出力軸に伝動ベルトを介して入力軸が連動された動力取り出し機構とを備えた作業車において、伝動不良やベルト破損が発生しにくい状態で動力取出しを行えるようにする。
【解決手段】動力取り出し機構40を、エンジン5に連設された取り付け部材71に支持させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレームに弾性体を介して支持されたエンジンと、前記エンジンの出力軸に伝動ベルトを介して入力軸が連動された動力取り出し機構とを備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した作業車として、従来、たとえば特許文献1に記載された乗用型芝刈機があった。
特許文献1に記載された乗用型芝刈機は、機体フレーム3の前部に搭載されたエンジン4と、このエンジン4から前方に突出した作業用動力取出し軸4a(出力軸に相当)に伝動ベルト13を介して連動された伝動軸11(動力取り出し機構に相当)とを備えている。エンジン4は、機体フレーム3に防振ゴム9を介して載置支持されている。(各符号は、公報に記載された符号である。)
【0003】
【特許文献1】特開平11−257088号公報(段落〔0012〕、図2,3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した作業車において、動力取り出し機構を車体フレームに支持させるよう構成されると、伝動や寿命面で不利になりがちである。
すなわち、上記した作業車では、エンジンと車体フレームとの間に介在する弾性体に起因してエンジンと車体フレームとの相対移動が発生する。すると、動力取り出し機構が車体フレームに支持されていると、エンジンの出力軸と動力取り出し機構の入力軸との距離が変化し、エンジンの出力軸と動力取り出し機構の入力軸とを連動させている伝動ベルトに、緩みによるスリップや緊張による破損が発生しやすくなる。
【0005】
本発明の目的は、伝動不良やベルト破損が発生しにくい状態で動力取出しを行うことができる作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、車体フレームに弾性体を介して支持されたエンジンと、前記エンジンの出力軸に伝動ベルトを介して入力軸が連動された動力取り出し機構とを備えた作業車において、
前記動力取り出し機構を、前記エンジンに連設された取り付け部材に支持させてある。
【0007】
本第1発明の構成によると、弾性体に起因したエンジンと車体フレームとの相対移動が発生しても、エンジンの出力軸と動力取り出し機構の入力軸との距離が変化せず、エンジンの出力軸と動力取り出し機構の入力軸とを連動させている伝動ベルトに緩みや無理な張力が発生しない。
【0008】
したがって、エンジンを弾性体によって防振支持させるものでありながら、伝動ベルトの張力変化が発生しにくくて円滑な動力取り出しを行うことができるとともに伝動ベルトの破損が発生しにくいよう優れた耐久性を得ることができる。
【0009】
本第2発明では、前記動力取り出し機構に、前記入力軸とは別軸の動力取り出し軸と、前記入力軸と前記動力取り出し軸とを連動させる摩擦クラッチとを備えてある。
【0010】
本第2発明の構成によると、摩擦クラッチを入り状態と切り状態とに切り換えることにより、動力取り出し軸への伝動が入りと切りとに切り換わり、動力取り出し軸への伝動が入りと切りとに切り換わっても、エンジンの出力軸と動力取り出し機構の入力軸とを連動させる伝動ベルトに張力変化が発生しにくい。
【0011】
したがって、エンジンを弾性体によって防振支持させるものでありながら、かつ動力取り出し軸の駆動と停止との切り換えによって動力取出しの入り切りを行なうものでありながら、伝動ベルトの張力変化が発生しにくくて円滑な動力取り出しを行なえるとともに伝動ベルトの破損が発生しにくいよう優れた耐久性を得ることができる。
【0012】
本第3発明では、前記伝動ベルトを張り操作するテンション輪体と、前記入力軸とが、前記出力軸の下方に前記出力軸よりも車体両横外側に分かれてかつ車体横方向に並んで位置している。
【0013】
本第3発明の構成によると、エンジンの配置高さを低くしても、テンション輪体と動力取り出し機構とをエンジンに極力近づけてテンション輪体と動力取り出し機構との地上高さを極力高くすることができる。
【0014】
したがって、エンジンを弾性体によって防振支持させながら伝動ベルトの張力変化が発生しにくくて円滑に動力取り出しを行なうことができる作業車を、自走車の重心高さがエンジン重量のために高くなることを抑制するとともにテンション輪体と動力取り出し機構の地上高さを高くして不整地でも安定的にかつ接地トラブルを回避しながら走行できる状態に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る作業車の全体側面図である。この図に示すように、本発明の実施例に係る作業車は、左右一対の操向操作自在な前車輪1,1と左右一対の駆動自在な後車輪2,2とによって自走するよう構成され、かつ車体後部に設けた運転座席3が装備された運転部を有した乗用型の自走車を備え、この自走車の車体フレーム4の前後輪間にリンク機構10を介して連結された草刈装置20を備え、前記自走車の車体フレーム4の後部に支持フレーム31を介して支持される集草容器32が装備された刈草回収装置30を備えている。
【0016】
この作業車は、芝や草を刈り込む草刈り作業を行う。
すなわち、前記自走車は、車体フレーム4の前部に設けたエンジン5と、このエンジン5の下方に設けた動力取り出し機構40が装備された伝動装置Aとを備え、前記エンジン5の出力を前記伝動装置Aによって前記草刈装置20の刈り刃ハウジング21の上面側に位置する刈り刃駆動機構22に伝達する。
【0017】
前記リンク機構10は、車体フレーム4に上下揺動自在に支持された左右一対の前揺動リンク11,11と、車体フレーム4に上下揺動自在に支持された左右一対の後揺動リンク12,12と、左右一対の連動リンク13,13とを備えている。
【0018】
前記左右一対の前揺動リンク11,11の先端部は、草刈装置20の前記刈り刃ハウジング21の前部に位置する前連結部材23に連結されている。前記左右一対の後揺動リンク12,12の先端部は、前記刈り刃ハウジング21の後部に位置する後連結部材24に連結されている。前記左側の連動リンク13は、前記左側の前揺動リンク11と後揺動リンク12とを連動させ、前記右側の連動リンク13は、前記右側の前揺動リンク11と後揺動リンク13とを連動させている。前記左右一対の前揺動リンク11,11の一方にリフトシリンダ15が連動されている。
【0019】
つまり、前記リンク機構10は、前記リフトシリンダ15によって一方の前揺動リンク11が揺動操作されると、左右一対の前揺動リンク11,11が回転支軸14による連動のために一体に揺動することによって車体フレーム4に対して上下に揺動操作され、草刈装置20を刈り刃ハウジング21の前後側に支持された接地ゲージ輪25が地面に接地した下降作業状態と、前記各接地ゲージ輪25が地面から上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。
【0020】
前記草刈装置20を下降作業状態にして自走車を走行させると、草刈装置20は、前記刈り刃ハウジング21の内部に刈り刃ハウジング横方向に並んで位置する二枚の刈り刃26を前記刈り刃駆動機構22によって刈り刃ハウジング上下向きの軸芯まわりに回転駆動して前記各刈り刃26によって草刈りを行い、刈り草を前記刈り刃26の回転によって発生した風によって刈り刃ハウジング21の上部に位置する刈り草排出ダクト27から排出する。
【0021】
前記刈り草排出ダクト27から排出された刈り草は、前記刈り刃26からの風による搬送作用と、自走車に前記左右一対の後車輪2,2の間を車体前後方向に通して設けてある搬送ダクト6による案内作用とによって前記集草容器32に送り込まれ、この集草容器32によって回収されて貯留される。
【0022】
図1に示すように、前記刈草回収装置30は、前記支持フレーム31の左右側から車体後方向きに上下揺動自在に延出した上下一対の昇降リンク33a,33bと、各昇降リンク33a,33bの遊端側に連結された容器支持体33cとを有したリンク機構33によって支持フレーム31の上端部と集草容器32の後端部とを連結している。この刈草回収装置30は、前記集草容器32の両横側に設けた昇降シリンダ34と、前記集草容器32の後部の下方に設けた一つのダンプシリンダ35とを備えている。
【0023】
つまり、前記刈草回収装置30は、前記左右一対の昇降シリンダ34,34によって前記リンク機構33を昇降操作して集草容器32を支持フレーム31に対して昇降操作し、前記ダンプシリンダ35によって集草容器32を回転支軸37の軸芯まわりに前記容器支持体33cに対して上下に揺動操作する。これにより、集草容器32は、車体の後方箇所に車体前後向き姿勢で位置するとともに前記搬送ダクト6に連通して搬送ダクト6からの刈り草を回収する下降回収状態と、車体の後方上方箇所に車体上下向き姿勢で位置するとともに排出口蓋32aが開閉リンク36の作用によって開き操作されて貯留していた刈り草を落下排出する上昇排出状態とに切り換え操作される。
【0024】
図2,3,4に示すように、自走車の前記車体フレーム4は、車体フレーム4の左側のメインフレーム4aの前端側の前後二箇所と、車体フレーム4の右側のメインフレーム4bの前端側の前後二箇所とにブラケットを付設して設けた支持部50を備え、前記四箇所の支持部50において、クッションゴムで成る弾性体51を介して前記エンジン5を支持している。前記各弾性体51は、前記支持部50の上面側に載置して連結され、エンジン5の下部に連結された連結部材52を介してエンジン5に連結されている。
【0025】
図2は、前記伝動装置Aの側面図である。図3は、前記伝動装置Aの正面図である。これらの図に示すように、前記伝動装置Aは、前記動力取り出し機構40を備える他、前記エンジン5の下方に設けたテンション輪体60を備え、前記動力取り出し機構40の前端部に位置する車体前後向きの筒軸形の入力軸41(図5参照)に一体回転自在に設けた入力プーリ42と前記エンジン5の前端部から車体前方向きに突出している出力軸5aに一体回転自在に設けた出力プーリ5bと前記テンション輪体60とにわたって巻回された伝動ベルト61を備え、前記動力取り出し機構40の車体前後向きの動力取り出し軸43と前記刈り刃駆動機構22の入力軸22aとに連結された回転軸62を備えている。
【0026】
図3に示すように、前記テンション輪体60は、このテンション輪体60を遊転自在に支持している揺動自在なテンションアーム63と、このテンションアーム63の回転支軸64に一体揺動自在に連結しているバネ掛けアーム65とを介してテンションばね66によって揺動付勢されて、伝動ベルト61に当て付け付勢されている。
【0027】
図5は、前記動力取り出し機構40の断面図である。この図に示すように、前記動力取り出し機構40は、前記入力軸41と前記動力取り出し軸43とを備える他、前記動力取り出し軸43に一体回転自在に設けたクラッチボディ44を有した摩擦クラッチ45を備えている。
【0028】
前記摩擦クラッチ45は、前記クラッチボディ44を備える他、このクラッチボディ44と前記入力軸41の端部とにわたって設けた多板式の摩擦クラッチ本体46と、前記クラッチボディ44に内装された油圧ピストン47とを備えて構成してあり、前記クラッチボディ44とケーシング48とにわたって穿設された操作油路49によって油圧ピストン47に対する油圧の供給と排出とが行なわれることにより、入り状態に切り換わって動力取り出し軸43を駆動し、あるいは切り状態に切り換わって動力取り出し軸43を停止させる。
【0029】
すなわち、摩擦クラッチ45は、油圧を供給されると、油圧ピストン47によって摩擦クラッチ本体46を入り状態に切り換え操作して入力軸41と動力取り出し軸43とを一体回転自在に連動させ、油圧を排出されると、油圧ピストン47をリターンばね47aによって戻し操作して摩擦クラッチ本体46を切り状態に切り換え操作して入力軸41と動力取り出し軸43との連動を絶つ。
【0030】
すなわち、前記伝動装置Aは、テンション輪体60によって伝動ベルト61を伝動用の緊張状態に張り操作して動力取り出し機構40の入力軸41とエンジン5の出力軸5aとを前記伝動ベルト61を介して連動させ、摩擦クラッチ45が入り状態に切り換え操作されることにより、動力取り出し機構40の入力軸41と動力取り出し軸43とを摩擦クラッチ45によって連動させて動力取り出し軸43を駆動するよう動力取り出しのオン状態に切り換わり、動力取り出し軸43の駆動力を回転軸62を介して前記刈り刃駆動機構22に伝達する。
【0031】
また、この伝動装置Aは、摩擦クラッチ45が切り状態に切り換え操作されることにより、動力取り出し機構40の入力軸41と動力取り出し軸43との連動を絶って動力取り出し軸43を停止させるよう動力取り出しのオフ状態に切り換わり、前記刈り刃駆動機構22への伝動を絶つ。
【0032】
図3に示すように、前記テンション輪体60は、前記エンジン5の下部に連設されたテンション用の取り付け部材70に前記テンションアーム63を介して支持されている。図2,3に示すように、前記動力取り出し機構40は、前記エンジン5の下部に連設された動力取り出し用の取り付け部材71に支持されている。これにより、伝動ベルト61は、エンジン5の弾性体51による防振支持に起因したエンジン5と車体フレーム4との相対移動にかかわらず、張力変化を発生させないでエンジン5の出力軸5aと動力取り出し機構40の入力軸41とを連動させる。
【0033】
図2,3に示すように、前記動力取り出し用の取り付け部材71は、エンジン5の下部に連結ボルトによって連設されたエンジン取り付け体71aと、このエンジン側取り付け体71aに上端側が溶接され、下端側が前記動力取り出し機構40の前記ケーシング48に連結ボルトを介して連結された動力取り出し側取り付け体71bとを備えて構成してある。
【0034】
前記テンション輪体60と前記動力取り出し機構40とは、図3に示す如き配置になっている。
すなわち、テンション輪体60と、動力取り出し機構40の入力軸41とがエンジン5の出力軸5aの下方に車体横方向に並んで位置し、かつ動力取り出し機構40の入力軸41がエンジン5の出力軸5aよりも一方の車体横外側に位置し、テンション輪体60がエンジン5の出力軸5aよりも他方の車体横外側に位置した配置になっている。
【0035】
図1,2,3に示すように、前記車体フレーム4は、前記右側のメインフレーム4aの前端部に設けた切り欠き7を備え、この切り欠き7により、メインフレーム4aと伝動ベルト61との干渉を回避している。
【0036】
図6は、前記刈り刃駆動機構22の平面図である。図7は、前記刈り刃駆動機構22の線図である。これらの図に示すように、前記刈り刃駆動機構22は、前記入力軸22aを備える他、この入力軸22aに一体回転自在に設けた入力軸ベベルギヤ80と、この入力軸ベベルギヤ80に噛み合った状態で一方の刈り刃支軸81に一体回転自在に設けたベベルギヤで成る刈り刃駆動ギヤ82と、前記刈り刃駆動ギヤ82にベベルギヤ84を介して一端側が連動した車体横向きの回転伝動軸85と、この回転伝動軸85の他端側に一体回転自在に設けた伝動ベベルギヤ86と、この伝動べベルギヤ86に噛み合った状態で他方の刈り刃支軸87に一体回転自在に設けたベベルギヤで成る刈り刃駆動ギヤ88とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】作業車の側面図
【図2】伝動装置の側面図
【図3】伝動装置の正面図
【図4】エンジン支持構造の正面図
【図5】動力取り出し機構の断面図
【図6】刈り刃駆動機構の平面図
【図7】刈り刃駆動機構の線図
【符号の説明】
【0038】
4 車体フレーム
5 エンジン
5a エンジンの出力軸
40 動力取り出し機構
41 動力取り出し機構の入力軸
43 動力取り出し軸
45 摩擦クラッチ
51 弾性体
60 テンション輪体
61 伝動ベルト
71 取り付け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに弾性体を介して支持されたエンジンと、前記エンジンの出力軸に伝動ベルトを介して入力軸が連動された動力取り出し機構とを備えた作業車であって、
前記動力取り出し機構を、前記エンジンに連設された取り付け部材に支持させてある作業車。
【請求項2】
前記動力取り出し機構に、前記入力軸とは別軸の動力取り出し軸と、前記入力軸と前記動力取り出し軸とを連動させる摩擦クラッチとを備えてある請求項1記載の作業車。
【請求項3】
前記伝動ベルトを張り操作するテンション輪体と、前記入力軸とが、前記出力軸の下方に前記出力軸よりも車体両横外側に分かれてかつ車体横方向に並んで位置している請求項1又は2記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−1791(P2010−1791A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160753(P2008−160753)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】