説明

作物収穫装置

【課題】
作物の像を撮影する第1撮影手段と、作物を摘み取って保持するところの収穫手段が保持している作物の像を第1撮影手段とは異なる方向から撮影する第2撮影手段とを設け、これらの各撮影手段の撮影結果に基づいて作物を選別することにより、作物の収穫時に該作物を選別するに際して、その選別、判定の精度向上を図ることができる作物収穫装置の提供を目的とする。
【解決手段】
作物の像を撮影する第1撮影手段50と、作物を摘み取り、かつ保持して移送する収穫手段Aと、上記収穫手段Aが保持している作物の像を上記第1撮影手段50とは異なる方向から撮影する第2撮影手段53とを備え、上記第1および第2の各撮影手段50,53の撮影結果に基づいて作物を選別することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、イチゴ、トマト、ナス、キュウリなどの果菜類のような作物を自動的に収穫する作物収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、上述のような作物を自動的に収穫するには収穫適期の作物を選択して、作物を傷付けないように収穫する必要があった。
このような要請に対応して従来、次の如き作物収穫装置が既に発明されている。
すなわち、作物の収容ボックスを備えた走行車にマニピュレータを取付け、このマニピュレータのハンド部には作物それ自体を左右から挟持する一対の挟持杆を取付けると共に、これら一対の挟持杆の基部には作物の像を撮影する撮影手段を設けたものである(特許文献1参照)。
【0003】
この従来装置によれば、作物の像を撮影手段にて撮影し、マニピュレータを介してハンド部の位置を調整した後に、作物を左右一対の挟持杆で挟持し、次に、ハンド部に設けられたカッタにて作物の柄部を切断し、予め撮影手段で撮影した画像データに基づいて収穫後の作物を収容ボックスに選別して収容するものである。
【0004】
上述の従来装置においては、作物を収穫すると同時に、選別することができる利点がある反面、撮影手段による作物の撮影はマニピュレータのハンド部側からの一方向のみの撮影(例えば正面画像のみの撮影)に制限されるので、充分な選別精度の向上を図ることができない問題点があった。
【特許文献1】特開平4−365176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、作物の像を撮影する第1撮影手段と、作物を摘み取って保持するところの収穫手段が保持している作物の像を第1撮影手段とは異なる方向から撮影する第2撮影手段とを設け、これらの各撮影手段の撮影結果に基づいて作物を選別することにより、作物の収穫時に該作物を選別するに際して、その選別、判定の精度向上を図ることができる作物収穫装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の作物収穫装置は、作物の像を撮影する第1撮影手段と、作物を摘み取り、かつ保持して移送する収穫手段と、上記収穫手段が保持している作物の像を上記第1撮影手段とは異なる方向から撮影する第2撮影手段とを備え、上記第1および第2の各撮影手段の撮影結果に基づいて作物を選別するものである。
【0007】
上述の作物は、イチゴ、トマト、ナス、キュウリその他の果菜類のような農作物に設定してもよく、また上述の第1および第2の撮影手段はCCDカメラなどの撮影手段で構成してもよい。
【0008】
上記構成によれば、第1撮影手段は作物の像を撮影し、収穫手段は作物を摘み取り、かつ保持して移送し、第2撮影手段は収穫手段が保持している作物の像を第1撮影手段とは異なる方向から撮影し、これら第1および第2の各撮影手段の撮影結果に基づいて作物が選別される。
この結果、作物の収穫時に該作物を選別するに際して、その選別、判定の精度向上を図ることができる効果がある。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記第1撮影手段は収穫手段が作物を保持する保持部近傍に設けられ、上記収穫手段は摘み取って保持した作物を第2撮影手段側に向けて移送するものである。
上記構成によれば、保持部近傍に設けられた第1撮影手段で作物を一方向から撮影し、この作物が収穫手段を介して第2撮影手段側に移送された時、第2撮影手段により作物を他方向から撮影することができるので、作物を収穫と同時に選別する場合の選別、判定の精度向上を図ることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記収穫手段は第1撮影手段の撮影結果に基づいて摘み取るべき作物の位置を認識するものである。
上記構成によれば、第1撮影手段の撮影結果(画像)を、作物の選別判定と、作物の位置検出とに兼用することができるので、選別用撮影手段と位置検出用撮影手段とのそれぞれを設ける必要がなく、装置の簡略化を図ることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、収穫手段が作物を保持する保持部は、吸引口と、該吸引口を覆う柔軟部材とを備えているものである。
上述の柔軟部材は、ガーゼなどの柔らかい布、クッション部材、ネット部材、スポンジ部材を単独または組合わせて構成してもよく、この柔軟部材としては通気性を有するものが望ましい。
【0012】
上記構成によれば、作物を保持部の吸引口に吸引保持する時、柔軟部材の緩衝作用により作物に傷が付くのを防止することができ、また作物を挟持する構造とは異なり、作物を吸引保持する構成であるから、第2撮影手段による撮影時に作物を適正に撮影することができるうえ、作物の背景を柔軟部材に特定することができるので、像の輪郭を正確に捉えることができる。
【0013】
この発明の作物収穫装置はまた、作物を摘み取り、かつ保持して移送する収穫手段と、作物を選別する選別手段とを備え、これらを併設させ一体的に移動可能に構成し、上記収穫手段には、作物の像を撮影する第1撮影手段を設け、上記選別手段には収穫手段が保持している作物の像を上記第1撮影手段とは異なる方向から撮影する第2撮影手段と、撮影結果に基づいて選別された作物を、選別収納する収納手段とを設けたものである。
【0014】
上記構成によれば、収穫手段側において上述の第1撮影手段は作物の像を撮影し、収穫手段は作物を摘み取り、かつ保持して選別手段側へ移送し、選別手段側において第2撮影手段は収穫手段が保持している作物の像を第1撮影手段とは異なる方向から撮影し、これら第1および第2の各撮影手段の撮影結果に基づいて収納手段が作物を選別収納する。
この結果、作物の収穫時に該作物を選別する場合、その選別、判定の精度向上を図ることができる効果がある。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、作物の像を撮影する第1撮影手段と、作物を摘み取って保持するところの収穫手段が保持している作物の像を第1撮影手段とは異なる方向から撮影する第2撮影手段とを設け、これらの各撮影手段の撮影結果に基づいて作物を選別するので、作物の収穫時に該作物を選別するに際して、その選別、判定の精度向上を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
作物の収穫時に該作物を選別するに際して、その選別、判定の精度向上を図るという目的を、作物の像を撮影する第1撮影手段と、作物を摘み取り、かつ保持して移送する収穫手段と、収穫手段が保持している作物の像を上記第1撮影手段とは異なる方向から撮影する第2撮影手段とを備え、第1および第2の各撮影手段の撮影結果に基づいて作物を選別すべく構成する構造にて実現した。
【実施例1】
【0017】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面はこの発明の作物収穫装置をイチゴ収穫装置に適用した実施例を示し、図1はイチゴ収穫装置の平面図、図2は図1のD−D線矢視図、図3はターンテーブル旋回時の平面図、図4は図3の側面図である。
【0018】
このイチゴ収穫装置は高設架台1を用いて高設栽培されるイチゴaを収穫するものであって、このイチゴ収穫装置は作物としてのイチゴaを収穫する収穫手段としての収穫ロボットAと、作物としてのイチゴaを選別(選果)する選別手段としての選果ロボットBとを備えている。
【0019】
図1〜図4に示すように収穫ロボットAおよび選果ロボットBはそれぞれ走行台車2,3を備えていて、各走行台車2,3は連結部材4により互にヒンジ連結されていて、収穫ロボットAおよび選果ロボットBを併設させて一体的に移動可能に構成している。
上述の各走行台車2,3は、床面に敷設固定された一対のレール5,5上を走行する複数の車輪6を有し、各走行台車2,3にそれぞれ搭載されたバッテリ7,8(図4参照)により少なくとも走行台車2側の車輪6を駆動すべく構成している。上述のバッテリ7,8は走行台車2の駆動源のみならず、後述する各装置の駆動電源として用いられる。
【0020】
ここで、上述の一対のレール5,5は複数の高設架台1,1間に平行に配設されており、収穫ロボットAおよび選果ロボットBは高設架台1に沿って走行、停止可能に構成されている。
【0021】
次に、収穫ロボットA側の構成について説明する。
図2に示すように走行台車2の上部には駆動部9にて駆動させるターンテーブル10を設け、このターンテーブル10上にはイチゴaを摘み取り、かつ保持して移送する収穫部11を設けている。
【0022】
この収穫部11は、前後移動機構12と、上下移動機構13と、イチゴaを吸引保持する保持部としての吸引チューブ14と、イチゴaの柄部b(いわゆる果柄)を挟持および切断する切断部15とを備えている。
【0023】
上述のターンテーブル10にスペーサ16,16を介してベース部材17を取付け、このベース部材17上部の両端部にブラケット18,19を固定すると共に、図5、図6に示すように、これらのブラケット18,19間にはスクリュ20とガイドロッド21,21とを平行に張架し、上述のスクリュ20をサーボモータM1で正逆駆動するように構成して、上述の前後移動機構12を構成している。
そして、上述のスクリュ20およびガイドロッド21,21には前後スライダ22の基部を取付けている。
【0024】
この前後スライダ22の立上り部には断面コの字状の昇降ガイド23を固定し、この昇降ガイド23の上下両部に固定したブラケット24,25間には、サーボモータM2で正逆駆動されるスクリュ26を張架することで上述の上下移動機構13を構成している。
【0025】
そして、上述のスクリュ26には上下スライダ27を取付けている。
この上下スライダ27にはブラケット28,29を介してロボットハンド部30(以下単にハンド部と略記する)を取付けている。
【0026】
ハンド部30は図7に断面図で、また図8に平面図で示すように構成されている。すなわち、略水平方向に指向するブラケット29の下部にはアクチュエータ取付け部材31を介してエアシリンダ等のアクチュエータ32を固定し、このアクチュエータ32のロッド33先端部には断面L字状の可動部材34および保持板35を介して前述の吸引チューブ14を取付けている。
【0027】
また上述のアクチュエータ32の下面には凹状のガイド部材36を設け、可動部材34の対応部には、この凹状のガイド部材36の摺動案内される凸状のガイド部材37を設けている。
【0028】
さらに上述の略水平方向に指向するブラケット29の上部にはアクチュエータ取付け部材38を介してエアシリンダ等のアクチュエータ39を固定し、このアクチュエータ39のロッド40先端部には断面L字状の可動部材41および駆動ボックス42を介して前述の切断部15を取付けている。
【0029】
この切断部15は図8、図9に示すように、接離動作可能な左右一対の保持片43,43と、一方の保持片43上面に固定されたカッタ44とを有し、図7、図8に示す実線位置から同図の仮想線位置に前進した後に、駆動ボックス42内の駆動機構により左右一対の保持片43,43が図9に示すように接近動作され、イチゴaの柄部bをこれら一対の保持片43,43で挟持すると共に、挟持部の直上部の柄部bをカッタ44にて切断すべく構成している。挟持部の上部にカッタ44を配置することで、切断後もイチゴaにつながる柄部bを挟持して、保持片43,43でイチゴaを保持した状態とすることができる。
【0030】
また上述のアクチュエータ39の上面には凹状のガイド部材45を設け、下動部材41の対応部には、この凹状のガイド部材45に摺動案内される凸状のガイド部材46を設けている。
なお、上述の各アクチュエータ32,39としてはエアシリンダに代えて電磁ソレノイドを用いてもよい。
【0031】
ところで、上述の吸引チューブ14は図7に示すようにホルダ47を用いて保持板35に保持されている。この吸引チューブ14にはブロア87(図20参照)等の吸引手段の吸引力が作用するもので、この吸引チューブ14の吸引口14aには該吸引口14aを覆う柔軟部材48が取付けられている。
【0032】
この柔軟部材48としては、通気性を有するガーゼなどの柔らかい布、クッション部材、ネット部材、スポンジ部材を単独または組合せて用いることができ、このように吸引口14aを通気性を有する柔軟部材48で覆ったので、イチゴaを吸引チューブ14の吸引口14aにて吸着保持(負圧吸引)する時、イチゴaを傷付けることがない。なお、上述のブロア87による吸引構造に代えて、エアコンプレッサとアスピレータとの組合せで、吸引チューブ14内に負圧を作用させるように構成してもよい。
【0033】
しかも、図1、図3、図5に示すように収穫部11を隔てた左右両部には第1撮影手段としてのカメラ50,50を設けている。このカメラ50は作物としてのイチゴaの像を正面側から撮影するもので、この実施例では上述のターンテーブル10にカメラ保持部材(図示せず)を介して、その高さが、図5に示すようにイチゴaを収穫する時の吸引チューブ14の高さ位置とほぼ同等となる所定の高さ位置にカメラ50,50を固定している。そして、これらのカメラ50,50で高設架台1の側壁面1a(図5参照)を背景として収穫すべきイチゴaを撮影可能に構成している。
また、上述のカメラ50,50はハンド部30の上下動、前後動と干渉しないように、カメラ保持部材を介してターンテーブル10に支持されたものである。
【0034】
図1に示す図面上左側のカメラ50で撮影した画像は図10のようになり、図1の図面上右側のカメラ50で撮影した画像は図11のようになり、摘み取るべき収穫適期のイチゴa1の位置つまり、左右位置および上下位置を認識することができると共に、2台のカメラ50,50を用いることにより、摘み取るべき収穫適期のイチゴa1までの距離(前後方向の位置)をも認識することができる。
しかも、カメラ50による撮影の背景は側壁面1a(図5参照)に特定されるのでイチゴaの像の輪郭を正確に捉えることができる。
【0035】
この摘み取るべき収穫適期のイチゴa1の左右位置、上下位置、距離に対応して、まず、図5の状態からサーボモータM1を駆動し、前後移動機構12を介して収穫部11の全体を矢印Cで示すようにイチゴa側に移動し、上下位置の調整が必要な場合にはサーボモータM2を駆動して、上下移動機構13を介してハンド部30の全体を上下動させ、また左右位置の調整が必要な場合には走行台車2を前後進させて、吸引チューブ14の先端をイチゴaと対向させる。
【0036】
次に図12に示すように、上側のアクチュエータ39のロッド40を矢印dで示すように一旦後退させると共に、下側のアクチュエータ32のロッド33を矢印eで示すように突出させ、吸引力が作用している吸引チューブ14にてイチゴaを吸着保持する。
【0037】
この図12に示す状態から図13に示すように上側のアクチュエータ39のロッド40を矢印fで示すように前進させ、次に図9で示した駆動ボックス42の内部機構により左右一対の保持片43,43でイチゴaの柄部bを挟持すると共に、その直上部をカッタ44で切断する。
【0038】
この図13に示す状態から図14に示すように各アクチュエータ32,39のロッド33,40を矢印g,hで示すように後退させながら、サーボモータM1を駆動し、前後移動機構12を介して収穫部11の全体を矢印iで示すようにノーマル位置側へ後退させる。
【0039】
この図14に示す状態から図15に示すように、ターンテーブル10を駆動して収穫部11の全体を矢印jで示すように約90度旋回させ、次に各サーボモータM1,M2を駆動して、前後移動機構12および上下移動機構13を介して収穫部11およびハンド部30を矢印k,lで示すように選果ロボットB側に移動して、収穫ロボットA側の吸引チューブ14先端を、選果ロボットB側の吸引部51に対向させる。
【0040】
次にブロア87(図20参照)による吸引チューブ14への吸引力を解除した後に、アクチュエータ39のロッド40を矢印mで示すように突出させ、左右一対の保持片43,43でその柄部bを挟持したイチゴaを選果ロボットB側の吸引部51に受け渡し、この吸引部51でイチゴaが吸引されると、左右一対の保持片43,43は図8で示したように、これら保持片43,43が互に離間する元位置に駆動させると共に、ハンド部30を含む収穫部11は図5で示したノーマル位置に復帰する。
【0041】
ここで、選果ロボットB側の吸引部51は収穫ロボットA側の吸引チューブ14と同様に構成され、ブロア88(図20参照)等の吸引手段の吸引力が作用されるように構成されると共に、吸引部51の吸引口は柔軟部材52で覆われている。また図14に実線で示すハンド部30が図15の実線位置に移動する途中において、このハンド部30は図15に仮想線で示す撮影ポジションβを経由し、このハンド部30が撮影ポジションβに位置した時、選果ロボットB側の第2撮影手段としてのカメラ53で、イチゴaの像を背面側から撮影して、図16に示す撮影画像を得る。つまり、このカメラ53は収穫部11の吸引チューブ14が保持しているイチゴaの像を収穫ロボットA側のカメラ50,50とは異なる方向から撮影する手段である。また、このカメラ53は吸引部51上方において走行台車3の上部フレームの所定位置に取付けられている。ここで、上述の各カメラ50,53としてはCCDカメラを用いることができる。
【0042】
次に、図1、図3、図4を参照して、選果ロボットB側の構成について説明する。
この選果ロボットB側の走行台車3の上部には空のトレイ54を上下方向に積み重ねた複数列のストック部55を設け、このストック部55の最下段から空のトレイ54を1つずつ取出して待機位置p1に保持した後に、待機位置p1のトレイ54を中間位置p2を介して、イチゴ収納位置p3(イチゴ受け取り位置)に上昇させ、イチゴaが収納されたトレイ54(図19参照)は収納位置p3から一旦下降位置p4に下降された後に、ローラ搬送手段56などの搬送手段にて後位位置p5に搬送され、図示しないリフトアップ構造の積み重ね手段により下側から順次積み重ねられる。
【0043】
イチゴaが収納されたトレイ54が下側から順次積み重ねられて、複数列の後位ストック部57がフルストック状態になると、ローラ搬送手段56などの搬送手段はイチゴaが収納されたトレイ54を上述の下降位置p4から前位位置p6まで搬送し、この前位p6のトレイ54は図示しないリフトアップ構造の積み重ね手段により、前位ストック部58に下側から順次積み重ねられる。
【0044】
この実施例では上述のイチゴ収納位置p3に合計3個のトレイ54が保持され、吸引部51を含む撰別装置60(図17,図18参照)は、第1及び第2の撮影手段としてのカメラ50,50およびカメラ53の撮影結果に基づいてイチゴaを大、中、小の等級別(または優、良、可の等級別)に振り分けてトレイ54に選別収納する。
【0045】
上述の選別装置60は図17、図18に示すように構成している。図17は選別装置60の平面図、図18は図17のF−F線矢視断面図であって、走行台車3上部のフレーム一側には軸受61,61を介してスクリュ62を横架し、このスクリュ62をサーボモータM3で正逆駆動すべく構成する一方、走行台車3上部のフレーム他側には軸受63,63(またはブラケット)を介してガイド棒64を横架し、スクリュ62およびガイド棒64にはそれぞれスライダ65,66を取付けいる。
【0046】
また上述の各スライダ65,66の上面には断面L字状のブラケット67,68を固定すると共に、一方のブラケット67に回動可能に軸支された支軸69には回動板70を取付け、他方のブラケット68に回動可能に軸支された支軸71には回動板72を取付けいる。上述の各支軸69,71はその軸芯線が一直線上に並ぶように配置されている。
【0047】
上述の一対の回動板70,72間にはガイド棒73とスクリュ74とを平行に横架する一方、L字状に形成されたブラケット70にはサーボモータM4を取付け、このサーボモータM4の回転軸に嵌合した原動ギヤ75を、スクリュ74に嵌合した従動ギヤ76に噛合させて、サーボモータM4でスクリュ74を正逆駆動すべく構成している。
【0048】
またブラケット67にはサーボモータM5を取付け、このサーボモータM5の回転軸に嵌合した原動ギヤ77を、支軸69に嵌合した従動ギヤ78に噛合させて、サーボモータM5で各要素69,70,71,72,73,74を一体的に正逆回動(つまり旋回)すべく構成している。
【0049】
ここで、上述の吸引部51の基部51aはガイド棒73とスクリュ74とに誇って配設され、各要素M3,62,64,65,66,67,68から成るX軸駆動手段79により吸引部51が前後方向へ移動制御され、各要素M4,73,74,75,76から成るY軸駆動手段80により吸引部51が左右方向へ移動制御され、各要素M5,69,70,71,72,73,74,77,78から成る旋回駆動手段81により吸引部51が旋回方向へ移動制御される。
【0050】
したがって、吸引部51で受取ったイチゴaを各駆動手段79,80,81の駆動によりイチゴ収納位置P3の各トレイ54に大、中、小の等級別(または優、良、可の等級別)に振り分けて選別収納することができる。
【0051】
なお、図17、図18に示す構成に代えて、吸引部51旋回動のみに設定する一方、各トレイ54をX軸、Y軸方向に移動させて、吸引部51のイチゴaを等級別に選別収納するように構成してもよく、あるいは、吸引部51をX軸方向とY軸方向の何れか一方の方向への駆動と旋回動とに設定し、トレイ54をX軸方向とY軸方向の何れか他方の方向への駆動に設定して、吸引部51のイチゴaを等級別に選別収納すべく構成してもよい。
【0052】
図20はイチゴ収穫装置の制御回路ブロック図を示し、制御手段としてのCPU85はカメラ50,50,53からの必要な入力に基づいて、ROM86に記憶されたプログラムに従って、サーボモータM1,M2,M3,M4,M5、駆動部9、アクチュエータ32,39、駆動ボックス42(詳しくは、その内部機構)、収穫ロボットA側のブロア87、選果ロボットB側のブロア88を駆動制御し、またRAM89は収穫敵期の基準データや等級別の収穫個数などの必要なデータを記憶する。
【0053】
CPU85の内部には画像処理部90と等級判別部91とが形成され、画像処理部90はカメラ50,50からの入力に基づいてイチゴaの摘み取るべき上下位置、左右位置、前後位置を割出し、等級判別部91はカメラ50,50,53からの入力に基づいてイチゴaの大、中、小の等級(または優、良、可の等級別)を判別すると共に、各サーボモータM3,M4,M5の駆動量を割出す。なお、画像処理部90、等級判別部91はCPU85に対して、外付けタイプの回路で構成してもよい。
【0054】
このように構成したイチゴ収穫装置の作用を以下に説明する。
吸引チューブ14を高設架台1のイチゴaと対向させた図1、図5の状態下において、第1撮影手段としての2台のカメラ50,50でイチゴaを撮影して図10、図11に示す画像を得ると共に、CPU85内の画像処理部90により摘み取るべき収穫適期のイチゴa1の上下位置、左右位置、前後位置を割出し、図12、図13、図14で既述したようにイチゴaを摘み取って、吸引チューブ14先端に吸着保持する。
【0055】
次に、摘み取ったイチゴaを収穫ロボットA側から選果ロボットB側へ受け渡すべく、ターンテーブル10の旋回により吸引チューブ14先端が選果ロボットB側の吸引部51と対向するように該吸引チューブ14を図15の実線位置に移動制御するが、その途中において、吸引チューブ14を含む収穫部11は図15に仮想線で示す撮影ポジションβに位置する。
【0056】
つまり、吸引チューブ14で保持されたイチゴaは第2撮影手段としてのカメラ53に向けて移送され、吸引チューブ14が図15に仮想線で示す撮影ポジションβに至った時、選果ロボットB側のカメラ53で、第1撮影手段としてのカメラ50,50による撮影方向とは異なる方向からイチゴaを撮影して、図16に示す画像を得ると共に、CPU85内の等級判別部91は各カメラ50,50,53からの画像データに基づいて大、中、小の等級(または優、良、可の等級)を判別する。
【0057】
次に、図15に実線で示すように収穫ロボットA側の吸引チューブ14から保持片43,43の操作により選果ロボットB側の吸引部51にイチゴaが受け渡されると、図17、図18で示した選別装置60はCPU85からの指令信号に対応して駆動され、イチゴaをトレイ54に大、中、小の等級別(または優、良、可の等級別)に振り分けて選別収納する。
【0058】
なお、上記実施例においては収穫時のイチゴaに対してハンド部30の位置を前後移動機構12により前後方向に調整し、また上下移動機構13により上下方向に調整すると共に、走行台車2の前後進により左右方向に調整すべく構成したが、図21に示すようにターンテーブル10を駆動する駆動部9と走行台車2の上部との間に、収穫時のイチゴaに対してハンド部30の位置を左右方向に調整する左右移動機構92を設けてもよい。
【0059】
この左右移動機構92は、スクリュ93およびガイド棒94,94に沿って移動可能なスライダ95・・・と、各スライダ95の上部に固定されたベースフレーム96と、上述のスクリュ93を駆動するサーボモータ(図示せず)とを備え、ベースフレーム96上に上述の駆動部9およびそれよりも上部の各機構を搭載したものである。
【0060】
このように構成すると、ハンド部30の左右方向への移動位置精度の向上を図ることができる。なお、図21において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0061】
上記実施例のイチゴ収穫装置は、イチゴaの像を撮影する第1撮影手段(カメラ50参照)と、イチゴaを摘み取り、かつ保持して移送する収穫手段(収穫部11参照)と、上記収穫手段(収穫ロボットA参照)が保持しているイチゴaの像を上記第1撮影手段(カメラ50参照)とは異なる方向から撮影する第2撮影手段(カメラ53参照)とを備え、上記第1および第2の各撮影手段(カメラ50,53参照)の撮影結果に基づいてイチゴaを選別するものである。
【0062】
この構成によれば、第1撮影手段(カメラ50参照)はイチゴaの像を撮影し、収穫手段(収穫ロボットA参照)はイチゴaを摘み取り、かつ保持して移送し、第2撮影手段(カメラ53参照)は収穫手段(収穫ロボットA参照)が保持しているイチゴaの像を第1撮影手段(カメラ50参照)とは異なる方向から撮影し、これら第1および第2の各撮影手段(カメラ50,53参照)の撮影結果(この実施例では表裏両面からの撮影結果)に基づいてイチゴaが選別される。
この結果、イチゴaの収穫時に該イチゴaを選別するに際して、その選別、判定の精度向上を図ることができる効果がある。
【0063】
また、上記第1撮影手段(カメラ50参照)は収穫手段(収穫ロボットA参照)がイチゴaを保持する保持部(吸引チューブ14参照)近傍に設けられ、上記収穫手段(収穫ロボットA参照)は摘み取って保持したイチゴaを第2撮影手段(カメラ53参照)側に向けて移送するものである。
【0064】
この構成によれば、保持部(吸引チューブ14参照)近傍に設けられた第1撮影手段(カメラ50参照)でイチゴaを一方向から撮影し、このイチゴaが収穫手段(収穫ロボットA参照)を介して第2撮影手段(カメラ53参照)側に移送された時、第2撮影手段(カメラ53参照)によりイチゴaを他方向から撮影することができるので、イチゴaを収穫と同時に選別する場合の選別、判定の精度向上を図ることができる。
【0065】
さらに上記収穫手段(収穫ロボットA参照)は第1撮影手段(カメラ50参照)の撮影結果に基づいて摘み取るべきイチゴaの位置を認識するものである。
【0066】
この構成によれば、第1撮影手段(カメラ50参照)の撮影結果(画像)を、イチゴaの選別判定と、イチゴaの位置検出とに兼用することができるので、選別用撮影手段と位置検出用撮影手段とのそれぞれを設ける必要がなく、装置の簡略化を図ることができる。
加えて、収穫手段としての収穫ロボットAがイチゴaを保持する保持部(吸引チューブ14参照)は、図7で示したように吸引口14aと、該吸引口14aを覆う柔軟部材48とを備えたものである。
【0067】
この構成によれば、イチゴaを保持部(吸引チューブ14参照)の吸引口14aに吸引保持する時、柔軟部材48の緩衝作用によりイチゴaに傷がつくのを防止することができ、またイチゴaを挟持する構造とは異なり、イチゴaを吸引保持する構成であるから、第2撮影手段(カメラ53参照)による撮影時にイチゴaを適正に撮影することができるうえ、イチゴaの背景を柔軟部材48に特定することができるので、像の輪郭を正確に捉えることができる。
【0068】
さらに、上記実施例のイチゴ収穫装置は、イチゴaを摘み取り、かつ保持して移送する収穫手段(収穫ロボットA参照)と、イチゴaを選別する選別手段(選果ロボットB参照)とを備え、これらを併設させ一体的に移動可能に構成し、上記収穫手段には、作物の像を撮影する第1撮影手段(カメラ50参照)を設け、上記選別手段には収穫手段が保持している作物の像を上記第1撮影手段とは異なる方向から撮影する第2撮影手段(カメラ53参照)と、撮影結果に基づいて選別された作物を、選別収納する収納手段(選別装置60参照)とを設けたものである。
【0069】
この構成によれば、収穫手段としての収穫ロボットA側において上述の第1撮影手段(カメラ50参照)はイチゴaの像を撮影し、収穫手段(収穫ロボットA参照)はイチゴaを摘み取り、かつ保持して選別手段としての選果ロボットB側へ移送し、選果ロボットB側において第2撮影手段(カメラ53参照)は収穫手段(収穫ロボットA参照)が保持しているイチゴaの像を第1撮影手段(カメラ50参照)とは異なる方向から撮影し、これら第1および第2の各撮影手段(カメラ50,53参照)の撮影結果に基づいて収納手段(選別装置60参照)がイチゴaをトレイに選別収納する。
この結果、作物の収穫時に該イチゴaを選別する場合、その選別、判定の精度向上を図ることができる効果がある。
【0070】
また、上記実施例で示したように第1撮影手段としてのカメラ50を2台設けると、イチゴaの上下位置および左右位置に加えて前後方向の位置を正確に認識することができる。
【0071】
さらに、上述のハンド部30をサーボモータM1,M2で駆動すると、その移動位置精度の向上を図ることができる。
【0072】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、この発明の作物収穫装置は、実施例のイチゴ収穫装置に対応し、以下同様に、
作物は、イチゴaに対応し、
第1撮影手段は、カメラ50に対応し、
第2撮影手段は、カメラ53に対応し、
収穫手段は、収穫ロボットAに対応し、
保持部は、吸引チューブ14に対応し、
選別手段は、選果ロボットBに対応し、
収納手段は、選別装置60に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0073】
例えば、収穫ロボットA側のカメラ50は1台であってもよく、また選果ロボットB側のカメラ53は2台設けてもよい。さらに、収穫ロボットA側に2台のカメラ50,50を設けると共に、選果ロボットB側にも2台のカメラ53,53を設けてもよく、カメラ50,53の台数および撮影アングルは上記実施例の構成に限定されるものではない。また左右一対の保持片43,43でイチゴaの柄部bを挟持する構成に代えて、吸引チューブ14に作用する吸引力のみで、イチゴaを保持し、かつ受け渡すように構成してもよい。さらに、上記実施例の作物収穫装置はイチゴaの収穫のみに限定されるものではなく、トマト、ナス、キュウリ等の他の農作物、果菜類の収穫に適用してもよいことは勿論であり、形状が比較的長いキュウリ等に適用する場合には、ツイン構造またはそれ以上の吸引口で果菜類を吸引保持するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】この発明の作物収穫装置を示す平面図。
【図2】図1のD−D線矢視図。
【図3】作物受渡し時の平面図。
【図4】図3の側面図。
【図5】図2の要部拡大図。
【図6】図5のE−E線に沿う部分矢視図。
【図7】ハンド部の構成を示す断面図。
【図8】図7の平面図。
【図9】一対の保持片の近接状態を示す平面図。
【図10】一方の第1撮影手段による画像の一例を示す説明図。
【図11】他方の第1撮影手段による画像の一例を示す説明図。
【図12】ハンド部による作物吸引状態を示す正面図。
【図13】ハンド部による柄部の挟持状態を示す正面図。
【図14】ハンド部の元位置復帰状態を示す正面図。
【図15】ハンド部の旋回状態を示す側面図。
【図16】第2撮影手段による画像の一例を示す説明図。
【図17】選別装置の構成を示す平面図。
【図18】図17のF−F線矢視断面図。
【図19】作物が収納されたトレイの断面図。
【図20】制御回路ブロック図。
【図21】収穫ロボットの他の実施例を示す正面図。
【符号の説明】
【0075】
a…イチゴ(作物)
A…収穫ロボット(収穫手段)
B…選果ロボット(選別手段)
14…吸引チューブ(保持部)
14a…吸引口
48…柔軟部材
50…カメラ(第1撮影手段)
53…カメラ(第2撮影手段)
60…選別装置(収納手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物の像を撮影する第1撮影手段と、
作物を摘み取り、かつ保持して移送する収穫手段と、
上記収穫手段が保持している作物の像を上記第1撮影手段とは異なる方向から撮影する第2撮影手段とを備え、
上記第1および第2の各撮影手段の撮影結果に基づいて作物を選別することを特徴とする
作物収穫装置。
【請求項2】
上記第1撮影手段は収穫手段が作物を保持する保持部近傍に設けられ、
上記収穫手段は摘み取って保持した作物を第2撮影手段側に向けて移送する
請求項1記載の作物収穫装置。
【請求項3】
上記収穫手段は第1撮影手段の撮影結果に基づいて摘み取るべき作物の位置を認識する
請求項1または2記載の作物収穫装置。
【請求項4】
収穫手段が作物を保持する保持部は、吸引口と、該吸引口を覆う柔軟部材とを備えている
請求項1〜3の何れか1に記載の作物収穫装置。
【請求項5】
作物を摘み取り、かつ保持して移送する収穫手段と、作物を選別する選別手段とを備え、これらを併設させ一体的に移動可能に構成し、
上記収穫手段には、作物の像を撮影する第1撮影手段を設け、
上記選別手段には収穫手段が保持している作物の像を上記第1撮影手段とは異なる方向から撮影する第2撮影手段と、撮影結果に基づいて選別された作物を、選別収納する収納手段とを設けたことを特徴とする
作物収穫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−34257(P2006−34257A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222864(P2004−222864)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(390008305)エスアイ精工株式会社 (39)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 (827)
【Fターム(参考)】