信号伝送基板
【課題】位相を調整するための回路を追加することなく信号配線間のクロストークに起因するジッタを低減した信号伝送基板を提供する。
【解決手段】第1の信号配線1は、第1の層に配された部分と第2の層に配された部分とを含んでいる。第1の層に配された部分1A,1Cと第2の層に配された部分1Bとが所定位置1a,1bで接続されている。第2の信号配線2は、第1の信号配線1の第1の層に配された部分1A,1Cと合計の長さが等しい第1の層に配された部分2A,2Cと、第1の信号配線1の第2の層に配された部分1Bと合計の長さが等しい第2の層に配された部分2Bとを含んでいる。第1の層に配された部分2A,2Cと第2の層に配された部分2Bとの接続位置2a,2bが第1の信号配線1と異なる。
【解決手段】第1の信号配線1は、第1の層に配された部分と第2の層に配された部分とを含んでいる。第1の層に配された部分1A,1Cと第2の層に配された部分1Bとが所定位置1a,1bで接続されている。第2の信号配線2は、第1の信号配線1の第1の層に配された部分1A,1Cと合計の長さが等しい第1の層に配された部分2A,2Cと、第1の信号配線1の第2の層に配された部分1Bと合計の長さが等しい第2の層に配された部分2Bとを含んでいる。第1の層に配された部分2A,2Cと第2の層に配された部分2Bとの接続位置2a,2bが第1の信号配線1と異なる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号配線を備えた信号伝送基板に関する。
【背景技術】
【0002】
信号伝送基板上で隣接する信号配線同士の間のクロストークに起因して信号にはジッタが生じる。特に、互いに隣接する信号配線同士の立上りまたは立下りが一致する場合にジッタ量が大きくなる。回路の高速化および高密度化に伴ってクロストークに起因するジッタの影響は大きくなる。
【0003】
これに対して遅延回路、遅延素子、あるいは移相器を用いて互いに隣接する信号配線同士の立上りおよび立下りのタイミングをずらすことによりクロストークに起因するジッタを低減する手法が採られていた(例えば特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1では、互いに隣接する2つの信号配線の信号同士の位相を、遅延回路を用いてずらすことによりクロストークに起因するジッタを低減している。
また、特許文献2では、互いに隣接する3つの信号配線の信号同士の位相を、遅延素子を用いてずらすことによりクロストークに起因するジッタを低減している。
【特許文献1】特開平7−271928号公報
【特許文献2】特開2004−362391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2に開示されたような方法では、信号伝送基板上の回路に遅延回路、遅延素子、あるいは移相器を付加する必要があった。
【0006】
本発明の目的は、位相を調整するための回路を追加することなく信号配線間のクロストークに起因するジッタを低減した信号伝送基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の信号伝送基板は、
信号配線上の信号の伝播速度が異なる第1の層と第2の層を有する多層構造の信号伝送基板であって、
前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とを含み、前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とが接続された第1の信号配線と、
全体の合成の長さが前記第1の信号配線と等しく、前記第1の信号配線と近接して平行に配置され、前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とを含み、該第1の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第1の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第2の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第2の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第1の層に配された部分と該第2の層に配された部分とが、前記第1の信号配線における接続位置と異なる位置で接続された第2の信号配線と、を有している。
【0008】
本発明によれば、第1の層と第2の層の信号の伝播速度の違いを利用して、互いに隣接する2つの信号配線の信号同士の位相をずらすので、位相を調整するための回路を追加することなくクロストークに起因するジッタを低減することができる。
【0009】
また、前記第1の信号配線および前記第2の信号配線において、前記第1の層または前記第2の層のいずれか一方の層に配される部分が入力側と出力側に分けて配置され、前記第1の配線信号の入力側に配置された部分よりも前記第2の配線信号の入力側に配置された部分の方が特定長だけ長く、前記第1の配線信号の出力側に配置された部分よりも前記第2の配線信号の出力側に配置された部分の方が前記特定長だけ短いとしてもよい。
【0010】
また、前記第1の層が表層で、前記第2の層が内層であり、
前記第1の信号配線は、入力端と出力端の間に、前記第1の層に配された第1の部分配線と前記第2の層に配された第2の部分配線と前記第1の層に配された第3の部分配線とが直列に接続されており、
前記第2の信号配線は、入力端と出力端の間に、前記第1の層に配され、前記第1の部分配線より前記特定長だけ長い第4の部分配線と、前記第2の層に配され、前記第2の部分配線と同じ長さの第5の部分配線と、前記第1の層に配され、前記第3の部分配線より前記特定長だけ短い第6の部分配線とが直列に接続されているとしてもよい。
【0011】
また、前記第2の部分配線および前記第5の部分配線が前記第1の部分配線、第3の部分配線、第4の部分配線、および第6の部分配線よりも長いとしてもよい。
【0012】
これによれば、第1の信号配線および第2の信号配線の中央部分で信号に遅延差が生じる部分が長くなるので、クロストークによるジッタの影響が低減される部分が長くなる。
【0013】
また、前記第1の層が表層で、前記第2の層が内層であり、前記第1の信号配線および前記第2の信号配線において、前記第2の層の部分が入力側と出力側に分けて配置され、
前記第1の信号配線の入力側には前記第2の層の部分が配置されておらず、前記第2の信号配線の入力側に配置された前記第2の層の部分が前記特定長であり、
前記第1の信号配線の出力側に配置された前記第2の層の部分が、前記第2の信号配線の出力側に配置された前記第2の層の部分よりも前記特定長だけ長いとしてもよい。
【0014】
また、 前記第1の信号配線および前記第2の信号配線において、入力側および出力側に配置された前記第2の層の部分よりも、入力側と出力側の間に配置された前記第1の層に配置された部分の方が長いとしてもよい。
【0015】
これによれば、第1の信号配線および第2の信号配線の中央部分で信号に遅延差が生じる部分が長くなるので、クロストークによるジッタの影響が低減される部分が長くなる。
【0016】
また、前記特定長は、前記第1の層の信号配線での遅延時間と前記第2の層の信号配線での遅延時間の差が、前記第1の信号配線および前記第2の信号配線で伝送する信号の変化時間の1/2以上となる長さであるとしてもよい。
【0017】
これによれば、互いに隣接する2つの信号配線の信号同士の位相を変化時間の1/2以上ずらすことができるので、クロストークに起因するジッタをより低減できる。
【0018】
また、前記第1の信号配線と長さが等しく、前記第2の信号配線と近接して平行に前記第1の信号配線の逆側に配置され、前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とを含み、該第1の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第1の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第2の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第2の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第1の層に配された部分と該第2の層に配された部分とが、前記第1の信号配線における接続位置と前記第2の信号配線における接続位置のいずれとも異なる位置で接続された第3の信号配線を更に有するとしてもよい。
【0019】
本発明の他の信号伝送基板は、信号配線を配した信号伝送基板であって、
第1の信号配線と、
前記第1の信号配線を挟むように前記第1の信号配線の両側に配置され互いに同じ信号を伝送する2つの第2の信号配線と、を有している。
【0020】
本発明によれば、第1の信号配線に対して、その両側の第2の信号配線によるクロストークが打ち消し合うので、第1の信号配線のジッタを低減することができる。
【0021】
また、前記第2の信号配線の各々は、極性の異なる2つの信号をそれぞれ伝送する信号配線の対からなる差動配線であり、前記第1の信号配線の側に同じ極性の信号配線がくるように前記第1の信号配線を挟んで配置されているとしてもよい。
【0022】
また、前記第1の信号配線は、極性の異なる2つの信号をそれぞれ伝送する信号配線の対からなる差動配線であるとしてもよい。
【0023】
これによれば、第1の信号配線に対して、その両側の第2の信号配線によるクロストークが打ち消し合うとともに、クロストークがコモンモードノイズになるので、第1の信号配線のジッタを低減することができる。
【0024】
また、前記第2の信号配線は、1つの信号を分岐して前記第1の信号配線を挟むように前記第1の信号配線の両側に配置されることにしてもよい。
【0025】
これによれば、信号伝送基板に実装する半導体集積回路のピン数を低減することができる。
【0026】
また、信号配線によって伝送する信号が同一のクロックに同期した信号であるとしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、位相を調整するための回路を追加することなくクロストークに起因するジッタを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
<第1の実施形態>
信号配線を備える信号伝送基板は多層化が進んでおり、通常、表層と内層の両方に信号配線が配されている。表層の配線はマイクロストリップ線路(MSL)となり、内層の配線はストリップ線路(SL)となる。MSLとSLとでは信号の伝播速度が異なる。そこで本実施形態ではMSLとSLの信号の伝播速度の違いを利用して、互いに隣接する2つの信号配線の信号同士の位相をずらすことによりクロストークに起因するジッタを低減する。
【0030】
図1は、互いに隣接する2本の差動MSLに10Gbpsのランダムパルス列を入力した場合のアイパターンを示すグラフである。図1のグラフにおいて、立上りおよび立下りのクロス部分はジッタによって、左、中央、右の3つの波形に分かれている。
【0031】
2本の差動MSLの信号が同相の変化となったときに左の波形となる。2本の差動MSLの信号が逆相の変化となったときに右の波形となる。そして、クロストークを引き起こす原因となるアグレッサがオフであれば中央の波形となる。
【0032】
このことから、隣接する信号配線の信号の立上りまたは立下りを互いにずらすことでクロストークに起因するジッタを低減できることが分かる。
【0033】
図2は、互いに隣接する2本のMSLに入力する10Gbpsのランダムパルス列に位相差をつけたときのアイパターンを示すグラフである。図2Aには位相差が0の場合のアイパターンが示されている。図2Bには位相差がT/10=10psec(周期T=100psec)の場合のアイパターンが示されている。図2Cには位相差がT/5=20psec(周期T=100psec)の場合のアイパターンが示されている。図2Dには位相差がT/2=50psec(周期T=100psec)の場合のアイパターンが示されている。
【0034】
図2A〜Dを見ると、2本の信号配線の信号の位相をT/5以上ずらせばジッタがほぼゼロとなることが分かる。T/5は変化時間(立上り時間または立下り時間)の約1/2に相当している。
【0035】
本実施形態によれば、MSLとSLの信号の伝播速度の違いを利用して、互いに隣接する2つの信号配線の信号同士の位相をずらすことにより、位相を調整するための回路を追加することなくクロストークに起因するジッタを低減することができる。なお、これは信号配線がシングルエンド配線の場合、差動配線の場合、シングルエンド配線と差動配線の組合せの場合に広く適用できる。
【0036】
また、本実施形態によれば、互いに隣接する2つの信号配線の信号同士の位相を変化時間(立上り時間あるいは立下り時間)の1/2(T/5)以上ずらすことにより、クロストークに起因するジッタをほぼゼロに低減することができる。
【0037】
以下、第1の実施形態の信号伝送基板の具体例について説明する。
【0038】
(第1の実施例)
図3Aは第1の実施例の信号伝送基板の平面図である。図3Bは第1の実施例の信号伝送基板のA−B断面図である。
【0039】
図3Aを参照すると、信号配線1〜6が並行に配されている。例えば各信号配線の左端が入力側であり、右端が出力側であるとする。本実施例では各信号配線1〜6で伝送する信号の周波数が10Gbpsであるとする。
【0040】
図3Aでは、表層のMSLが実線で示され、内層のSLが点線で示されている。ビアは丸印で示されている。図3Bの断面図を参照すると、MSLが表層にあり、SLが内層にあることが分かる。本実施例では基板の比誘電率が3.7であり、MSLとSLの伝播速度の違いにより40mm当たり80psecの遅延差が生じる。
【0041】
各信号配線1〜6は表層のMSLからビアで内層のSLに接続し、SLからビアで再び表層のMSLに戻る構造となっている。例えば信号配線1は直列に接続されたMSL1A、SL1B、およびMSL1Cで構成されている。MSL1AとSL1Bがビア1aで接続され、SL1BとMSL1Cがビア1bで接続されている。
【0042】
同様に、信号配線2はMSL2A、SL2B、およびMSL2Cで構成されている。MSL2AとSL2Bがビア2aで接続され、SL2BとMSL2Cがビア2bで接続されている。信号配線3はMSL3A、SL3B、およびMSL3Cで構成されている。MSL3AとSL3Bがビア3aで接続され、SL3BとMSL3Cがビア3bで接続されている。
【0043】
再び図3Aを見ると、信号配線1、2、3は全長が互いに等しい。また、信号配線1、2、3は左側のMSLの長さが互いに異なり、中央のSLの長さが互いに等しく、右側のMSLの長さが互いに異なっている。したがって、信号1、2、3は左側のMSLと右側のMSLの長さの和が互いに等しい。
【0044】
信号配線1、2、3はMSLのトータルの長さとSLのトータルの長さがいずれも互いに等しいので全体としては出力される波形に遅延差は生じない。しかし、途中の段階では、信号を伝播する速度の異なるMSLとSLの長さの違いによって遅延差が生じる。
【0045】
ここでは信号の変化時間(立上り時間または立下り時間)は16psecであるとする。ジッタを低減するには変化時間の1/2である8psecの遅延差をつければよい。上述したようにMSLとSLとでは伝播速度の違いにより40mm当たり80psecの遅延差が生じる。8psecの遅延差を生じさせるには、信号配線1のMSL1Aの長さと信号配線2のMSL2Aの長さとに4mm以上の差をつけ、信号配線2のMSL2Aの長さと信号配線3のMSL3Aの長さとに4mm以上の差をつければよい。
【0046】
本実施例では、MSL2AがMSL1Aよりも4mm長く、MSL3AがMSL2Aよりも4mm長い。一例として、MSL1Aが1mmであり、MSL2Aが5mmであり、MSL3Aが9mmである。また、MSL2CがMSL1Cよりも4mm短く、MSL3CがMSL2Cよりも4mm短い。一例として、MSL1Cが9mmであり、MSL2Cが5mmであり、MSL3Cが1mmである。更に、信号配線4のMSLとSLの長さの配分は信号配線1と同じであり、信号配線5のMSLとSLの長さの配分は信号配線2と同じであり、信号配線6のMSLとSLの長さの配分は信号配線3と同じである。また、ここでは一例としてSL1B、2B、3Bは40mmである。
【0047】
以上説明したように、本実施例によれば、全長が同じ隣接する信号配線を第1のMSL、SL、第2のMSLをその順で直列に接続し、SLの長さを互いに等しくし、第1のMSLと第2のMSLの長さの配分を異ならせている。これにより、途中では信号同士の位相をずらしてクロストークに起因するジッタを低減するとともに、終端では位相を一致させることができる。
【0048】
なお、本実施例では、各信号配線1〜6においてSLの部分の長さがMSLの部分の長さに比べて長い程、クロストークによるジッタの影響が低減される部分が長くなる。
【0049】
(第2の実施例)
図4Aは、第2の実施例の信号伝送基板の平面図である。図4Bは第2の実施例の信号伝送基板のC−D断面図である。
【0050】
図4Aを参照すると、信号配線11〜16が並行に配されている。例えば各信号配線の左端が入力側であり、右端が出力側であるとする。本実施例では各信号配線11〜16で伝送する信号の周波数が第1の実施例と同様に10Gbpsであるとする。
【0051】
図4Aでは、表層のMSLが実線で示され、内層のSLが点線で示されている。ビアは丸印で示されている。図4Bの断面図を参照すると、MSLが表層にあり、SLが内層にあることが分かる。本実施例でも第1の実施例と同様に基板の比誘電率が3.7であり、MSLとSLの伝播速度の違いにより40mm当たり80psecの遅延差が生じる。
【0052】
信号配線11は表層のMSL11Aからビア11aで内層のSL11Bに接続し、SL11Bからビア11bで再び表層のMSL11Cに戻る構造となっている。
【0053】
これに対して、信号配線12、13は、表層のMSLからビアで内層のSLに接続し、そのSLからビアで再び表層のMSLに戻り、さらにそのMSLからビアで内層のSLに接続し、そのSLからビアで再び表層のMSLに戻る構造となっている。
【0054】
例えば信号配線12は直列に接続されたMSL12A、SL12B、MSL12C、SL12D、およびMSL12Eで構成されている。MSL12AとSL12Bがビア12aで接続され、SL12BとMSL12Cがビア12bで接続され、MSL12CとSL12Dがビア12cで接続され、SL12DとMSL12Eがビア12dで接続されている。
【0055】
この構成は、信号配線12のSL12Bおよび信号配線13のSL13Bに対応する、信号配線11のSLが長さゼロであると考えることができる。同様に、信号配線11のSL11Bおよび信号配線12のSL12Dに対応する、信号配線13のSLが長さゼロであると考えることができる。
【0056】
再び図4Aを見ると、信号配線11、12、13は全長が互いに等しい。また、信号配線11、12、13は左端近傍のSLの長さが互いに異なり、右端近傍のSLの長さが互いに異なっている。そして、信号11、12、13はMSLの長さの和が互いに等しく、またSLの長さの和が互いに等しい。
【0057】
信号配線11、12、13はMSLのトータルの長さとSLのトータルの長さがいずれも互いに等しいので全体としては出力される波形に遅延差は生じない。しかし、途中の段階では、信号を伝播する速度の異なるMSLとSLの長さの違いによって遅延差が生じる。
【0058】
本実施例でも、第1の実施例と同様に、信号の変化時間(立上り時間または立下り時間)は16psecであるとする。ジッタを低減するには変化時間の1/2である8psecの遅延差をつければよい。上述したようにMSLとSLとでは伝播速度の違いにより40mm当たり80psecの遅延差が生じる。
【0059】
本実施例では、信号配線11は右端近傍のSL11Bが長さ8mmである。信号配線12は左端近傍のSL12Bが長さ4mmであり、右端近傍のSL12Dが長さ4mmである。信号配線13は左端近傍のSL13Bが長さ8mmである。また、信号配線14のMSLとSLの長さの配分は信号配線11と同じであり、信号配線15のMSLとSLの長さの配分は信号配線12と同じであり、信号配線16のMSLとSLの長さの配分は信号配線13と同じである。
【0060】
以上説明したように、本実施例によれば、全長が同じ隣接する信号配線において左端近傍のSLの長さの差を4mmとし、また右端近傍のSLの長さの差を4mmとすることでSLの長さの配分を異ならせている。これにより、途中では信号同士の位相をずらしてクロストークに起因するジッタを低減するとともに、終端では位相を一致させることができる。
【0061】
なお、本実施例では、各信号配線11〜16において中央に配されるMSLの部分の長さが、両端のMSLおよびSLの部分の長さに比べて長い程、クロストークによるジッタの影響が低減される部分が長くなる。
【0062】
また、図2A〜Dを参照すると、図2Aから2B、2C、2Dと遅延差が大きくなるにつれてアイパターンのクロス部分の上部にあった目玉状の波形のひずみがアイパターンの中央に寄ってくる。アイパターンの中央付近に波形のひずみがあると伝送品質が低下するので、第1の実施例および第2の実施例では8psecずつ位相の異なる3段階だけを用いることで最大の遅延差を16psecとし、それより大きな遅延差を生じさせないようにしている。しかし、信号を受信する素子で波形を整形する回路構成とし、より大きな遅延差を生じさせる構成を採用してもよい。
【0063】
また、第1の実施例および第2の実施例ではシングルエンドの配線について例示したが、本発明はこれに限られるものではない。本発明は、差動配線やシングルエンド配線と差動配線の組み合わせにも適用することができる。
【0064】
<第2の実施形態>
ある信号配線の両側に互いに同じ信号の信号配線を挟むように配すると、両側の2つの信号配線による中央の信号配線へのクロストークは打ち消し合う。また、差動配線の両側に互いに同じ信号の信号配線を挟むように配すると、両側の2つの信号配線による信号配線へのクロストークが打ち消し合うとともに、差動配線へのクロストークがコモンモードノイズになる。本実施形態では、これを利用してクロストークに起因するジッタを低減する。両側に挟むように配する信号配線が差動配線の場合には、互いに逆相の信号の差動配線を用いたり、同相の信号の差動配線の配置を逆にしたりすればよい。
【0065】
図5は、ある信号配線を2本の信号配線で挟むように隣接して配置された3本の差動MSLによって10Gbpsの信号を伝送したときの中央の差動MSLのアイパターンを示すグラフである。図5Aには、両側の2本の差動MSLに互いに独立したランダムパルス列を入力したときの中央の差動MSLのアイパターンが示されている。図5Bには、両側の2本の差動MSLに逆相のパルス列を入力したときのアイパターンが示されている。
【0066】
図5Aを見ると、両側の2本の差動MSLからのクロストークによって中央の差動MSLにジッタが生じることが分かる。それに対して図5Bを見ると、両側の2本の差動MSLから中央の差動MSLへのクロストークが打ち消し合いまたコモンモードノイズになってジッタが低減されているのが分かる。
【0067】
(第3の実施例)
図6は、第3の実施例の信号伝送基板の構成を説明するための図である。図7は、図6に示した信号伝送基板によって信号を伝送したときのアイパターンを示すグラフである。
【0068】
図6Aは、2つの差動信号SA、SBを伝送する差動信号配線が隣接して配された一般的な配線構成を示している。図6Aの配線構成で生じるジッタは図7Aに示されている。図7Aを参照すると、クロス部分にジッタが生じているのが分かる。
【0069】
図6Bは、差動信号SBを伝送する差動信号配線を、互いに逆相の差動信号SA、SA#の差動信号配線で挟むようにした配線構成を示している。これにより、差動信号SBの両側に互いに同じ信号の信号配線を挟むように配していることになる。図6Bの配線構成で生じるジッタは図7Bに示されている。図7Bを参照すると、クロス部分のジッタが低減されている。
【0070】
図6Cは、差動信号SBを伝送する差動信号配線を、1つの差動信号SAを分岐した2つの差動信号配線で挟むようにした配線構成を示している。図6Cの配線構成で生じるジッタは図6Bと同様になる。この構成では信号伝送基板に実装する半導体集積回路のピン数が図6Bの構成よりも低減される。
【0071】
以上説明したように、本実施例によれば、差動信号SBに対して、差動信号SAによるクロストークと差動信号SA#によるクロストークとが打ち消し合い、またクロストークがコモンモードノイズになるので、差動信号SBのジッタを低減し、シグナルインテグリティを向上することができる。
【0072】
(第4の実施例)
図8は、第4の実施例の信号伝送基板の構成を説明するための図である。図8Aは、シングルエンド信号SAと差動信号SBを伝送する信号配線が隣接して配された一般的な配線構成を示している。図8Aの配線構成では、シングルエンド信号SAからのクロストークに起因して差動信号SBにジッタが生じる。
【0073】
図8Bは、差動信号SBを伝送する差動信号配線を、2つのシングルエンド信号SAの信号配線で挟むようにした配線構成を示している。これにより、差動信号SBの両側に互いに同じ信号の信号配線を挟むように配していることになる。図8Bの配線構成では、両側のシングルエンド信号SAからのクロストークが打消し合い、差動信号SBのジッタが低減される。
【0074】
図8Cは、差動信号SBを伝送する差動信号配線を、シングルエンド信号SAを分岐した信号配線で挟むようにした配線構成を示している。図8Cの配線構成で生じるジッタは図8Bと同様になる。この構成では信号伝送基板に実装する半導体集積回路のピン数が図8Bの構成よりも低減される。
【0075】
なお、上述した実施形態および実施例は、各信号配線の信号が同一クロックに同期していることを想定しており、同一クロックに同期した信号同士のクロストークに起因する立上り、立下りでのジッタを低減するものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】互いに隣接する2本の差動MSLに10Gbpsのランダムパルス列を入力した場合のアイパターンを示すグラフである。
【図2A】互いに隣接する2本のMSLに入力する10Gbpsのランダムパルス列の位相差がゼロのときのアイパターンを示すグラフである。
【図2B】互いに隣接する2本のMSLに入力する10Gbpsのランダムパルス列の位相差がT/10のときのアイパターンを示すグラフである。
【図2C】互いに隣接する2本のMSLに入力する10Gbpsのランダムパルス列の位相差がT/5のときのアイパターンを示すグラフである。
【図2D】互いに隣接する2本のMSLに入力する10Gbpsのランダムパルス列の位相差がT/2のときのアイパターンを示すグラフである。
【図3A】第1の実施例の信号伝送基板の平面図である。
【図3B】第1の実施例の信号伝送基板のA−B断面図である。
【図4A】第2の実施例の信号伝送基板の平面図である。
【図4B】第2の実施例の信号伝送基板のC−D断面図である。
【図5A】3本の差動MSLによって10Gbpsのランダムパルス列の信号を伝送したときの中央の差動MSLのアイパターンを示すグラフである。
【図5B】3本の差動MSLによって10Gbpsの逆相のパルス列の信号を伝送したときの中央の差動MSLのアイパターンを示すグラフである。
【図6A】2つの差動信号SA、SBを伝送する差動信号配線が隣接して配された一般的な配線構成を示す図である。
【図6B】差動信号SBを伝送する差動信号配線を、互いに逆相の差動信号SA、SA#の差動信号配線で挟むようにした配線構成を示す図である。
【図6C】差動信号SBを伝送する差動信号配線を、1つの差動信号SAを分岐した2つの差動信号配線で挟むようにした配線構成を示す図である。
【図7A】図6Aに示した信号伝送基板によって信号を伝送したときのアイパターンを示すグラフである。
【図7B】図6Bに示した信号伝送基板によって信号を伝送したときのアイパターンを示すグラフである。
【図8A】シングルエンド信号SAと差動信号SBを伝送する信号配線が隣接して配された一般的な配線構成を示す図である。
【図8B】差動信号SBを伝送する差動信号配線を2つのシングルエンド信号SAの信号配線で挟むようにした配線構成を示す図である。
【図8C】差動信号SBを伝送する差動信号配線を、シングルエンド信号SAを分岐した信号配線で挟むようにした配線構成を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1〜6、11〜16 信号配線
1A〜3A、1C〜3C、11A〜13A、11C〜13C、12E MSL
1B〜3B、11B〜13B、12D SL
1a、1b、2a、2b、3a、3b、11a、11b、12a、12b、12c、12d、13a、13b ビア
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号配線を備えた信号伝送基板に関する。
【背景技術】
【0002】
信号伝送基板上で隣接する信号配線同士の間のクロストークに起因して信号にはジッタが生じる。特に、互いに隣接する信号配線同士の立上りまたは立下りが一致する場合にジッタ量が大きくなる。回路の高速化および高密度化に伴ってクロストークに起因するジッタの影響は大きくなる。
【0003】
これに対して遅延回路、遅延素子、あるいは移相器を用いて互いに隣接する信号配線同士の立上りおよび立下りのタイミングをずらすことによりクロストークに起因するジッタを低減する手法が採られていた(例えば特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1では、互いに隣接する2つの信号配線の信号同士の位相を、遅延回路を用いてずらすことによりクロストークに起因するジッタを低減している。
また、特許文献2では、互いに隣接する3つの信号配線の信号同士の位相を、遅延素子を用いてずらすことによりクロストークに起因するジッタを低減している。
【特許文献1】特開平7−271928号公報
【特許文献2】特開2004−362391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2に開示されたような方法では、信号伝送基板上の回路に遅延回路、遅延素子、あるいは移相器を付加する必要があった。
【0006】
本発明の目的は、位相を調整するための回路を追加することなく信号配線間のクロストークに起因するジッタを低減した信号伝送基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の信号伝送基板は、
信号配線上の信号の伝播速度が異なる第1の層と第2の層を有する多層構造の信号伝送基板であって、
前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とを含み、前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とが接続された第1の信号配線と、
全体の合成の長さが前記第1の信号配線と等しく、前記第1の信号配線と近接して平行に配置され、前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とを含み、該第1の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第1の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第2の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第2の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第1の層に配された部分と該第2の層に配された部分とが、前記第1の信号配線における接続位置と異なる位置で接続された第2の信号配線と、を有している。
【0008】
本発明によれば、第1の層と第2の層の信号の伝播速度の違いを利用して、互いに隣接する2つの信号配線の信号同士の位相をずらすので、位相を調整するための回路を追加することなくクロストークに起因するジッタを低減することができる。
【0009】
また、前記第1の信号配線および前記第2の信号配線において、前記第1の層または前記第2の層のいずれか一方の層に配される部分が入力側と出力側に分けて配置され、前記第1の配線信号の入力側に配置された部分よりも前記第2の配線信号の入力側に配置された部分の方が特定長だけ長く、前記第1の配線信号の出力側に配置された部分よりも前記第2の配線信号の出力側に配置された部分の方が前記特定長だけ短いとしてもよい。
【0010】
また、前記第1の層が表層で、前記第2の層が内層であり、
前記第1の信号配線は、入力端と出力端の間に、前記第1の層に配された第1の部分配線と前記第2の層に配された第2の部分配線と前記第1の層に配された第3の部分配線とが直列に接続されており、
前記第2の信号配線は、入力端と出力端の間に、前記第1の層に配され、前記第1の部分配線より前記特定長だけ長い第4の部分配線と、前記第2の層に配され、前記第2の部分配線と同じ長さの第5の部分配線と、前記第1の層に配され、前記第3の部分配線より前記特定長だけ短い第6の部分配線とが直列に接続されているとしてもよい。
【0011】
また、前記第2の部分配線および前記第5の部分配線が前記第1の部分配線、第3の部分配線、第4の部分配線、および第6の部分配線よりも長いとしてもよい。
【0012】
これによれば、第1の信号配線および第2の信号配線の中央部分で信号に遅延差が生じる部分が長くなるので、クロストークによるジッタの影響が低減される部分が長くなる。
【0013】
また、前記第1の層が表層で、前記第2の層が内層であり、前記第1の信号配線および前記第2の信号配線において、前記第2の層の部分が入力側と出力側に分けて配置され、
前記第1の信号配線の入力側には前記第2の層の部分が配置されておらず、前記第2の信号配線の入力側に配置された前記第2の層の部分が前記特定長であり、
前記第1の信号配線の出力側に配置された前記第2の層の部分が、前記第2の信号配線の出力側に配置された前記第2の層の部分よりも前記特定長だけ長いとしてもよい。
【0014】
また、 前記第1の信号配線および前記第2の信号配線において、入力側および出力側に配置された前記第2の層の部分よりも、入力側と出力側の間に配置された前記第1の層に配置された部分の方が長いとしてもよい。
【0015】
これによれば、第1の信号配線および第2の信号配線の中央部分で信号に遅延差が生じる部分が長くなるので、クロストークによるジッタの影響が低減される部分が長くなる。
【0016】
また、前記特定長は、前記第1の層の信号配線での遅延時間と前記第2の層の信号配線での遅延時間の差が、前記第1の信号配線および前記第2の信号配線で伝送する信号の変化時間の1/2以上となる長さであるとしてもよい。
【0017】
これによれば、互いに隣接する2つの信号配線の信号同士の位相を変化時間の1/2以上ずらすことができるので、クロストークに起因するジッタをより低減できる。
【0018】
また、前記第1の信号配線と長さが等しく、前記第2の信号配線と近接して平行に前記第1の信号配線の逆側に配置され、前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とを含み、該第1の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第1の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第2の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第2の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第1の層に配された部分と該第2の層に配された部分とが、前記第1の信号配線における接続位置と前記第2の信号配線における接続位置のいずれとも異なる位置で接続された第3の信号配線を更に有するとしてもよい。
【0019】
本発明の他の信号伝送基板は、信号配線を配した信号伝送基板であって、
第1の信号配線と、
前記第1の信号配線を挟むように前記第1の信号配線の両側に配置され互いに同じ信号を伝送する2つの第2の信号配線と、を有している。
【0020】
本発明によれば、第1の信号配線に対して、その両側の第2の信号配線によるクロストークが打ち消し合うので、第1の信号配線のジッタを低減することができる。
【0021】
また、前記第2の信号配線の各々は、極性の異なる2つの信号をそれぞれ伝送する信号配線の対からなる差動配線であり、前記第1の信号配線の側に同じ極性の信号配線がくるように前記第1の信号配線を挟んで配置されているとしてもよい。
【0022】
また、前記第1の信号配線は、極性の異なる2つの信号をそれぞれ伝送する信号配線の対からなる差動配線であるとしてもよい。
【0023】
これによれば、第1の信号配線に対して、その両側の第2の信号配線によるクロストークが打ち消し合うとともに、クロストークがコモンモードノイズになるので、第1の信号配線のジッタを低減することができる。
【0024】
また、前記第2の信号配線は、1つの信号を分岐して前記第1の信号配線を挟むように前記第1の信号配線の両側に配置されることにしてもよい。
【0025】
これによれば、信号伝送基板に実装する半導体集積回路のピン数を低減することができる。
【0026】
また、信号配線によって伝送する信号が同一のクロックに同期した信号であるとしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、位相を調整するための回路を追加することなくクロストークに起因するジッタを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
<第1の実施形態>
信号配線を備える信号伝送基板は多層化が進んでおり、通常、表層と内層の両方に信号配線が配されている。表層の配線はマイクロストリップ線路(MSL)となり、内層の配線はストリップ線路(SL)となる。MSLとSLとでは信号の伝播速度が異なる。そこで本実施形態ではMSLとSLの信号の伝播速度の違いを利用して、互いに隣接する2つの信号配線の信号同士の位相をずらすことによりクロストークに起因するジッタを低減する。
【0030】
図1は、互いに隣接する2本の差動MSLに10Gbpsのランダムパルス列を入力した場合のアイパターンを示すグラフである。図1のグラフにおいて、立上りおよび立下りのクロス部分はジッタによって、左、中央、右の3つの波形に分かれている。
【0031】
2本の差動MSLの信号が同相の変化となったときに左の波形となる。2本の差動MSLの信号が逆相の変化となったときに右の波形となる。そして、クロストークを引き起こす原因となるアグレッサがオフであれば中央の波形となる。
【0032】
このことから、隣接する信号配線の信号の立上りまたは立下りを互いにずらすことでクロストークに起因するジッタを低減できることが分かる。
【0033】
図2は、互いに隣接する2本のMSLに入力する10Gbpsのランダムパルス列に位相差をつけたときのアイパターンを示すグラフである。図2Aには位相差が0の場合のアイパターンが示されている。図2Bには位相差がT/10=10psec(周期T=100psec)の場合のアイパターンが示されている。図2Cには位相差がT/5=20psec(周期T=100psec)の場合のアイパターンが示されている。図2Dには位相差がT/2=50psec(周期T=100psec)の場合のアイパターンが示されている。
【0034】
図2A〜Dを見ると、2本の信号配線の信号の位相をT/5以上ずらせばジッタがほぼゼロとなることが分かる。T/5は変化時間(立上り時間または立下り時間)の約1/2に相当している。
【0035】
本実施形態によれば、MSLとSLの信号の伝播速度の違いを利用して、互いに隣接する2つの信号配線の信号同士の位相をずらすことにより、位相を調整するための回路を追加することなくクロストークに起因するジッタを低減することができる。なお、これは信号配線がシングルエンド配線の場合、差動配線の場合、シングルエンド配線と差動配線の組合せの場合に広く適用できる。
【0036】
また、本実施形態によれば、互いに隣接する2つの信号配線の信号同士の位相を変化時間(立上り時間あるいは立下り時間)の1/2(T/5)以上ずらすことにより、クロストークに起因するジッタをほぼゼロに低減することができる。
【0037】
以下、第1の実施形態の信号伝送基板の具体例について説明する。
【0038】
(第1の実施例)
図3Aは第1の実施例の信号伝送基板の平面図である。図3Bは第1の実施例の信号伝送基板のA−B断面図である。
【0039】
図3Aを参照すると、信号配線1〜6が並行に配されている。例えば各信号配線の左端が入力側であり、右端が出力側であるとする。本実施例では各信号配線1〜6で伝送する信号の周波数が10Gbpsであるとする。
【0040】
図3Aでは、表層のMSLが実線で示され、内層のSLが点線で示されている。ビアは丸印で示されている。図3Bの断面図を参照すると、MSLが表層にあり、SLが内層にあることが分かる。本実施例では基板の比誘電率が3.7であり、MSLとSLの伝播速度の違いにより40mm当たり80psecの遅延差が生じる。
【0041】
各信号配線1〜6は表層のMSLからビアで内層のSLに接続し、SLからビアで再び表層のMSLに戻る構造となっている。例えば信号配線1は直列に接続されたMSL1A、SL1B、およびMSL1Cで構成されている。MSL1AとSL1Bがビア1aで接続され、SL1BとMSL1Cがビア1bで接続されている。
【0042】
同様に、信号配線2はMSL2A、SL2B、およびMSL2Cで構成されている。MSL2AとSL2Bがビア2aで接続され、SL2BとMSL2Cがビア2bで接続されている。信号配線3はMSL3A、SL3B、およびMSL3Cで構成されている。MSL3AとSL3Bがビア3aで接続され、SL3BとMSL3Cがビア3bで接続されている。
【0043】
再び図3Aを見ると、信号配線1、2、3は全長が互いに等しい。また、信号配線1、2、3は左側のMSLの長さが互いに異なり、中央のSLの長さが互いに等しく、右側のMSLの長さが互いに異なっている。したがって、信号1、2、3は左側のMSLと右側のMSLの長さの和が互いに等しい。
【0044】
信号配線1、2、3はMSLのトータルの長さとSLのトータルの長さがいずれも互いに等しいので全体としては出力される波形に遅延差は生じない。しかし、途中の段階では、信号を伝播する速度の異なるMSLとSLの長さの違いによって遅延差が生じる。
【0045】
ここでは信号の変化時間(立上り時間または立下り時間)は16psecであるとする。ジッタを低減するには変化時間の1/2である8psecの遅延差をつければよい。上述したようにMSLとSLとでは伝播速度の違いにより40mm当たり80psecの遅延差が生じる。8psecの遅延差を生じさせるには、信号配線1のMSL1Aの長さと信号配線2のMSL2Aの長さとに4mm以上の差をつけ、信号配線2のMSL2Aの長さと信号配線3のMSL3Aの長さとに4mm以上の差をつければよい。
【0046】
本実施例では、MSL2AがMSL1Aよりも4mm長く、MSL3AがMSL2Aよりも4mm長い。一例として、MSL1Aが1mmであり、MSL2Aが5mmであり、MSL3Aが9mmである。また、MSL2CがMSL1Cよりも4mm短く、MSL3CがMSL2Cよりも4mm短い。一例として、MSL1Cが9mmであり、MSL2Cが5mmであり、MSL3Cが1mmである。更に、信号配線4のMSLとSLの長さの配分は信号配線1と同じであり、信号配線5のMSLとSLの長さの配分は信号配線2と同じであり、信号配線6のMSLとSLの長さの配分は信号配線3と同じである。また、ここでは一例としてSL1B、2B、3Bは40mmである。
【0047】
以上説明したように、本実施例によれば、全長が同じ隣接する信号配線を第1のMSL、SL、第2のMSLをその順で直列に接続し、SLの長さを互いに等しくし、第1のMSLと第2のMSLの長さの配分を異ならせている。これにより、途中では信号同士の位相をずらしてクロストークに起因するジッタを低減するとともに、終端では位相を一致させることができる。
【0048】
なお、本実施例では、各信号配線1〜6においてSLの部分の長さがMSLの部分の長さに比べて長い程、クロストークによるジッタの影響が低減される部分が長くなる。
【0049】
(第2の実施例)
図4Aは、第2の実施例の信号伝送基板の平面図である。図4Bは第2の実施例の信号伝送基板のC−D断面図である。
【0050】
図4Aを参照すると、信号配線11〜16が並行に配されている。例えば各信号配線の左端が入力側であり、右端が出力側であるとする。本実施例では各信号配線11〜16で伝送する信号の周波数が第1の実施例と同様に10Gbpsであるとする。
【0051】
図4Aでは、表層のMSLが実線で示され、内層のSLが点線で示されている。ビアは丸印で示されている。図4Bの断面図を参照すると、MSLが表層にあり、SLが内層にあることが分かる。本実施例でも第1の実施例と同様に基板の比誘電率が3.7であり、MSLとSLの伝播速度の違いにより40mm当たり80psecの遅延差が生じる。
【0052】
信号配線11は表層のMSL11Aからビア11aで内層のSL11Bに接続し、SL11Bからビア11bで再び表層のMSL11Cに戻る構造となっている。
【0053】
これに対して、信号配線12、13は、表層のMSLからビアで内層のSLに接続し、そのSLからビアで再び表層のMSLに戻り、さらにそのMSLからビアで内層のSLに接続し、そのSLからビアで再び表層のMSLに戻る構造となっている。
【0054】
例えば信号配線12は直列に接続されたMSL12A、SL12B、MSL12C、SL12D、およびMSL12Eで構成されている。MSL12AとSL12Bがビア12aで接続され、SL12BとMSL12Cがビア12bで接続され、MSL12CとSL12Dがビア12cで接続され、SL12DとMSL12Eがビア12dで接続されている。
【0055】
この構成は、信号配線12のSL12Bおよび信号配線13のSL13Bに対応する、信号配線11のSLが長さゼロであると考えることができる。同様に、信号配線11のSL11Bおよび信号配線12のSL12Dに対応する、信号配線13のSLが長さゼロであると考えることができる。
【0056】
再び図4Aを見ると、信号配線11、12、13は全長が互いに等しい。また、信号配線11、12、13は左端近傍のSLの長さが互いに異なり、右端近傍のSLの長さが互いに異なっている。そして、信号11、12、13はMSLの長さの和が互いに等しく、またSLの長さの和が互いに等しい。
【0057】
信号配線11、12、13はMSLのトータルの長さとSLのトータルの長さがいずれも互いに等しいので全体としては出力される波形に遅延差は生じない。しかし、途中の段階では、信号を伝播する速度の異なるMSLとSLの長さの違いによって遅延差が生じる。
【0058】
本実施例でも、第1の実施例と同様に、信号の変化時間(立上り時間または立下り時間)は16psecであるとする。ジッタを低減するには変化時間の1/2である8psecの遅延差をつければよい。上述したようにMSLとSLとでは伝播速度の違いにより40mm当たり80psecの遅延差が生じる。
【0059】
本実施例では、信号配線11は右端近傍のSL11Bが長さ8mmである。信号配線12は左端近傍のSL12Bが長さ4mmであり、右端近傍のSL12Dが長さ4mmである。信号配線13は左端近傍のSL13Bが長さ8mmである。また、信号配線14のMSLとSLの長さの配分は信号配線11と同じであり、信号配線15のMSLとSLの長さの配分は信号配線12と同じであり、信号配線16のMSLとSLの長さの配分は信号配線13と同じである。
【0060】
以上説明したように、本実施例によれば、全長が同じ隣接する信号配線において左端近傍のSLの長さの差を4mmとし、また右端近傍のSLの長さの差を4mmとすることでSLの長さの配分を異ならせている。これにより、途中では信号同士の位相をずらしてクロストークに起因するジッタを低減するとともに、終端では位相を一致させることができる。
【0061】
なお、本実施例では、各信号配線11〜16において中央に配されるMSLの部分の長さが、両端のMSLおよびSLの部分の長さに比べて長い程、クロストークによるジッタの影響が低減される部分が長くなる。
【0062】
また、図2A〜Dを参照すると、図2Aから2B、2C、2Dと遅延差が大きくなるにつれてアイパターンのクロス部分の上部にあった目玉状の波形のひずみがアイパターンの中央に寄ってくる。アイパターンの中央付近に波形のひずみがあると伝送品質が低下するので、第1の実施例および第2の実施例では8psecずつ位相の異なる3段階だけを用いることで最大の遅延差を16psecとし、それより大きな遅延差を生じさせないようにしている。しかし、信号を受信する素子で波形を整形する回路構成とし、より大きな遅延差を生じさせる構成を採用してもよい。
【0063】
また、第1の実施例および第2の実施例ではシングルエンドの配線について例示したが、本発明はこれに限られるものではない。本発明は、差動配線やシングルエンド配線と差動配線の組み合わせにも適用することができる。
【0064】
<第2の実施形態>
ある信号配線の両側に互いに同じ信号の信号配線を挟むように配すると、両側の2つの信号配線による中央の信号配線へのクロストークは打ち消し合う。また、差動配線の両側に互いに同じ信号の信号配線を挟むように配すると、両側の2つの信号配線による信号配線へのクロストークが打ち消し合うとともに、差動配線へのクロストークがコモンモードノイズになる。本実施形態では、これを利用してクロストークに起因するジッタを低減する。両側に挟むように配する信号配線が差動配線の場合には、互いに逆相の信号の差動配線を用いたり、同相の信号の差動配線の配置を逆にしたりすればよい。
【0065】
図5は、ある信号配線を2本の信号配線で挟むように隣接して配置された3本の差動MSLによって10Gbpsの信号を伝送したときの中央の差動MSLのアイパターンを示すグラフである。図5Aには、両側の2本の差動MSLに互いに独立したランダムパルス列を入力したときの中央の差動MSLのアイパターンが示されている。図5Bには、両側の2本の差動MSLに逆相のパルス列を入力したときのアイパターンが示されている。
【0066】
図5Aを見ると、両側の2本の差動MSLからのクロストークによって中央の差動MSLにジッタが生じることが分かる。それに対して図5Bを見ると、両側の2本の差動MSLから中央の差動MSLへのクロストークが打ち消し合いまたコモンモードノイズになってジッタが低減されているのが分かる。
【0067】
(第3の実施例)
図6は、第3の実施例の信号伝送基板の構成を説明するための図である。図7は、図6に示した信号伝送基板によって信号を伝送したときのアイパターンを示すグラフである。
【0068】
図6Aは、2つの差動信号SA、SBを伝送する差動信号配線が隣接して配された一般的な配線構成を示している。図6Aの配線構成で生じるジッタは図7Aに示されている。図7Aを参照すると、クロス部分にジッタが生じているのが分かる。
【0069】
図6Bは、差動信号SBを伝送する差動信号配線を、互いに逆相の差動信号SA、SA#の差動信号配線で挟むようにした配線構成を示している。これにより、差動信号SBの両側に互いに同じ信号の信号配線を挟むように配していることになる。図6Bの配線構成で生じるジッタは図7Bに示されている。図7Bを参照すると、クロス部分のジッタが低減されている。
【0070】
図6Cは、差動信号SBを伝送する差動信号配線を、1つの差動信号SAを分岐した2つの差動信号配線で挟むようにした配線構成を示している。図6Cの配線構成で生じるジッタは図6Bと同様になる。この構成では信号伝送基板に実装する半導体集積回路のピン数が図6Bの構成よりも低減される。
【0071】
以上説明したように、本実施例によれば、差動信号SBに対して、差動信号SAによるクロストークと差動信号SA#によるクロストークとが打ち消し合い、またクロストークがコモンモードノイズになるので、差動信号SBのジッタを低減し、シグナルインテグリティを向上することができる。
【0072】
(第4の実施例)
図8は、第4の実施例の信号伝送基板の構成を説明するための図である。図8Aは、シングルエンド信号SAと差動信号SBを伝送する信号配線が隣接して配された一般的な配線構成を示している。図8Aの配線構成では、シングルエンド信号SAからのクロストークに起因して差動信号SBにジッタが生じる。
【0073】
図8Bは、差動信号SBを伝送する差動信号配線を、2つのシングルエンド信号SAの信号配線で挟むようにした配線構成を示している。これにより、差動信号SBの両側に互いに同じ信号の信号配線を挟むように配していることになる。図8Bの配線構成では、両側のシングルエンド信号SAからのクロストークが打消し合い、差動信号SBのジッタが低減される。
【0074】
図8Cは、差動信号SBを伝送する差動信号配線を、シングルエンド信号SAを分岐した信号配線で挟むようにした配線構成を示している。図8Cの配線構成で生じるジッタは図8Bと同様になる。この構成では信号伝送基板に実装する半導体集積回路のピン数が図8Bの構成よりも低減される。
【0075】
なお、上述した実施形態および実施例は、各信号配線の信号が同一クロックに同期していることを想定しており、同一クロックに同期した信号同士のクロストークに起因する立上り、立下りでのジッタを低減するものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】互いに隣接する2本の差動MSLに10Gbpsのランダムパルス列を入力した場合のアイパターンを示すグラフである。
【図2A】互いに隣接する2本のMSLに入力する10Gbpsのランダムパルス列の位相差がゼロのときのアイパターンを示すグラフである。
【図2B】互いに隣接する2本のMSLに入力する10Gbpsのランダムパルス列の位相差がT/10のときのアイパターンを示すグラフである。
【図2C】互いに隣接する2本のMSLに入力する10Gbpsのランダムパルス列の位相差がT/5のときのアイパターンを示すグラフである。
【図2D】互いに隣接する2本のMSLに入力する10Gbpsのランダムパルス列の位相差がT/2のときのアイパターンを示すグラフである。
【図3A】第1の実施例の信号伝送基板の平面図である。
【図3B】第1の実施例の信号伝送基板のA−B断面図である。
【図4A】第2の実施例の信号伝送基板の平面図である。
【図4B】第2の実施例の信号伝送基板のC−D断面図である。
【図5A】3本の差動MSLによって10Gbpsのランダムパルス列の信号を伝送したときの中央の差動MSLのアイパターンを示すグラフである。
【図5B】3本の差動MSLによって10Gbpsの逆相のパルス列の信号を伝送したときの中央の差動MSLのアイパターンを示すグラフである。
【図6A】2つの差動信号SA、SBを伝送する差動信号配線が隣接して配された一般的な配線構成を示す図である。
【図6B】差動信号SBを伝送する差動信号配線を、互いに逆相の差動信号SA、SA#の差動信号配線で挟むようにした配線構成を示す図である。
【図6C】差動信号SBを伝送する差動信号配線を、1つの差動信号SAを分岐した2つの差動信号配線で挟むようにした配線構成を示す図である。
【図7A】図6Aに示した信号伝送基板によって信号を伝送したときのアイパターンを示すグラフである。
【図7B】図6Bに示した信号伝送基板によって信号を伝送したときのアイパターンを示すグラフである。
【図8A】シングルエンド信号SAと差動信号SBを伝送する信号配線が隣接して配された一般的な配線構成を示す図である。
【図8B】差動信号SBを伝送する差動信号配線を2つのシングルエンド信号SAの信号配線で挟むようにした配線構成を示す図である。
【図8C】差動信号SBを伝送する差動信号配線を、シングルエンド信号SAを分岐した信号配線で挟むようにした配線構成を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1〜6、11〜16 信号配線
1A〜3A、1C〜3C、11A〜13A、11C〜13C、12E MSL
1B〜3B、11B〜13B、12D SL
1a、1b、2a、2b、3a、3b、11a、11b、12a、12b、12c、12d、13a、13b ビア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号配線上の信号の伝播速度が異なる第1の層と第2の層を有する多層構造の信号伝送基板であって、
前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とを含み、前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とが接続された第1の信号配線と、
全体の合成の長さが前記第1の信号配線と等しく、前記第1の信号配線と近接して平行に配置され、前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とを含み、該第1の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第1の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第2の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第2の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第1の層に配された部分と該第2の層に配された部分とが、前記第1の信号配線における接続位置と異なる位置で接続された第2の信号配線と、を有する信号伝送基板。
【請求項2】
前記第1の信号配線および前記第2の信号配線において、前記第1の層または前記第2の層のいずれか一方の層に配される部分が入力側と出力側に分けて配置され、前記第1の配線信号の入力側に配置された部分よりも前記第2の配線信号の入力側に配置された部分の方が特定長だけ長く、前記第1の配線信号の出力側に配置された部分よりも前記第2の配線信号の出力側に配置された部分の方が前記特定長だけ短い、請求項1に記載の信号伝送基板。
【請求項3】
前記第1の層が表層で、前記第2の層が内層であり、
前記第1の信号配線は、入力端と出力端の間に、前記第1の層に配された第1の部分配線と前記第2の層に配された第2の部分配線と前記第1の層に配された第3の部分配線とが直列に接続されており、
前記第2の信号配線は、入力端と出力端の間に、前記第1の層に配され、前記第1の部分配線より前記特定長だけ長い第4の部分配線と、前記第2の層に配され、前記第2の部分配線と同じ長さの第5の部分配線と、前記第1の層に配され、前記第3の部分配線より前記特定長だけ短い第6の部分配線とが直列に接続されている、請求項2に記載の信号伝送基板。
【請求項4】
前記第2の部分配線および前記第5の部分配線が前記第1の部分配線、第3の部分配線、第4の部分配線、および第6の部分配線よりも長い、請求項3に記載の信号伝送基板。
【請求項5】
前記第1の層が表層で、前記第2の層が内層であり、前記第1の信号配線および前記第2の信号配線において、前記第2の層の部分が入力側と出力側に分けて配置され、
前記第1の信号配線の入力側には前記第2の層の部分が配置されておらず、前記第2の信号配線の入力側に配置された前記第2の層の部分が前記特定長であり、
前記第1の信号配線の出力側に配置された前記第2の層の部分が、前記第2の信号配線の出力側に配置された前記第2の層の部分よりも前記特定長だけ長い、請求項2に記載の信号伝送基板。
【請求項6】
前記第1の信号配線および前記第2の信号配線において、入力側および出力側に配置された前記第2の層の部分よりも、入力側と出力側の間に配置された前記第1の層に配置された部分の方が長い、請求項5に記載の信号伝送基板。
【請求項7】
前記特定長は、前記第1の層の信号配線での遅延時間と前記第2の層の信号配線での遅延時間の差が、前記第1の信号配線および前記第2の信号配線で伝送する信号の変化時間の1/2以上となる長さである、請求項2から6のいずれか1項に記載の信号伝送基板。
【請求項8】
前記第1の信号配線と長さが等しく、前記第2の信号配線と近接して平行に前記第1の信号配線の逆側に配置され、前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とを含み、該第1の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第1の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第2の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第2の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第1の層に配された部分と該第2の層に配された部分とが、前記第1の信号配線における接続位置と前記第2の信号配線における接続位置のいずれとも異なる位置で接続された第3の信号配線を更に有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の信号伝送基板。
【請求項9】
信号配線を配した信号伝送基板であって、
第1の信号配線と、
前記第1の信号配線を挟むように前記第1の信号配線の両側に配置され互いに同じ信号を伝送する2つの第2の信号配線と、を有する信号伝送基板。
【請求項10】
前記第2の信号配線の各々は、極性の異なる2つの信号をそれぞれ伝送する信号配線の対からなる差動配線であり、前記第1の信号配線の側に同じ極性の信号配線がくるように前記第1の信号配線を挟んで配置されている、請求項9に記載の信号伝送基板。
【請求項11】
前記第1の信号配線は、極性の異なる2つの信号をそれぞれ伝送する信号配線の対からなる差動配線である、請求項10に記載の信号伝送基板。
【請求項12】
前記第2の信号配線は、1つの信号を分岐して前記第1の信号配線を挟むように前記第1の信号配線の両側に配置される、請求項9から11のいずれか1項に記載の信号伝送基板。
【請求項13】
信号配線によって伝送する信号が同一のクロックに同期した信号である、請求項1から12のいずれか1項に記載の信号伝送基板。
【請求項1】
信号配線上の信号の伝播速度が異なる第1の層と第2の層を有する多層構造の信号伝送基板であって、
前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とを含み、前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とが接続された第1の信号配線と、
全体の合成の長さが前記第1の信号配線と等しく、前記第1の信号配線と近接して平行に配置され、前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とを含み、該第1の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第1の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第2の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第2の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第1の層に配された部分と該第2の層に配された部分とが、前記第1の信号配線における接続位置と異なる位置で接続された第2の信号配線と、を有する信号伝送基板。
【請求項2】
前記第1の信号配線および前記第2の信号配線において、前記第1の層または前記第2の層のいずれか一方の層に配される部分が入力側と出力側に分けて配置され、前記第1の配線信号の入力側に配置された部分よりも前記第2の配線信号の入力側に配置された部分の方が特定長だけ長く、前記第1の配線信号の出力側に配置された部分よりも前記第2の配線信号の出力側に配置された部分の方が前記特定長だけ短い、請求項1に記載の信号伝送基板。
【請求項3】
前記第1の層が表層で、前記第2の層が内層であり、
前記第1の信号配線は、入力端と出力端の間に、前記第1の層に配された第1の部分配線と前記第2の層に配された第2の部分配線と前記第1の層に配された第3の部分配線とが直列に接続されており、
前記第2の信号配線は、入力端と出力端の間に、前記第1の層に配され、前記第1の部分配線より前記特定長だけ長い第4の部分配線と、前記第2の層に配され、前記第2の部分配線と同じ長さの第5の部分配線と、前記第1の層に配され、前記第3の部分配線より前記特定長だけ短い第6の部分配線とが直列に接続されている、請求項2に記載の信号伝送基板。
【請求項4】
前記第2の部分配線および前記第5の部分配線が前記第1の部分配線、第3の部分配線、第4の部分配線、および第6の部分配線よりも長い、請求項3に記載の信号伝送基板。
【請求項5】
前記第1の層が表層で、前記第2の層が内層であり、前記第1の信号配線および前記第2の信号配線において、前記第2の層の部分が入力側と出力側に分けて配置され、
前記第1の信号配線の入力側には前記第2の層の部分が配置されておらず、前記第2の信号配線の入力側に配置された前記第2の層の部分が前記特定長であり、
前記第1の信号配線の出力側に配置された前記第2の層の部分が、前記第2の信号配線の出力側に配置された前記第2の層の部分よりも前記特定長だけ長い、請求項2に記載の信号伝送基板。
【請求項6】
前記第1の信号配線および前記第2の信号配線において、入力側および出力側に配置された前記第2の層の部分よりも、入力側と出力側の間に配置された前記第1の層に配置された部分の方が長い、請求項5に記載の信号伝送基板。
【請求項7】
前記特定長は、前記第1の層の信号配線での遅延時間と前記第2の層の信号配線での遅延時間の差が、前記第1の信号配線および前記第2の信号配線で伝送する信号の変化時間の1/2以上となる長さである、請求項2から6のいずれか1項に記載の信号伝送基板。
【請求項8】
前記第1の信号配線と長さが等しく、前記第2の信号配線と近接して平行に前記第1の信号配線の逆側に配置され、前記第1の層に配された部分と前記第2の層に配された部分とを含み、該第1の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第1の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第2の層に配された部分の合計の長さが前記第1の信号配線の前記第2の層に配された部分の合計の長さと等しく、該第1の層に配された部分と該第2の層に配された部分とが、前記第1の信号配線における接続位置と前記第2の信号配線における接続位置のいずれとも異なる位置で接続された第3の信号配線を更に有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の信号伝送基板。
【請求項9】
信号配線を配した信号伝送基板であって、
第1の信号配線と、
前記第1の信号配線を挟むように前記第1の信号配線の両側に配置され互いに同じ信号を伝送する2つの第2の信号配線と、を有する信号伝送基板。
【請求項10】
前記第2の信号配線の各々は、極性の異なる2つの信号をそれぞれ伝送する信号配線の対からなる差動配線であり、前記第1の信号配線の側に同じ極性の信号配線がくるように前記第1の信号配線を挟んで配置されている、請求項9に記載の信号伝送基板。
【請求項11】
前記第1の信号配線は、極性の異なる2つの信号をそれぞれ伝送する信号配線の対からなる差動配線である、請求項10に記載の信号伝送基板。
【請求項12】
前記第2の信号配線は、1つの信号を分岐して前記第1の信号配線を挟むように前記第1の信号配線の両側に配置される、請求項9から11のいずれか1項に記載の信号伝送基板。
【請求項13】
信号配線によって伝送する信号が同一のクロックに同期した信号である、請求項1から12のいずれか1項に記載の信号伝送基板。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【公開番号】特開2009−81378(P2009−81378A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251156(P2007−251156)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【出願人】(000233169)株式会社日立超エル・エス・アイ・システムズ (327)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【出願人】(000233169)株式会社日立超エル・エス・アイ・システムズ (327)
【Fターム(参考)】
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