説明

信号処理装置

【課題】この発明は、複数の回路基板のグランド端間を結ぶループの大きさを小さく抑え、EMIに対する性能の安定化を図ることができるようにした信号処理装置を提供することを目的としている。
【解決手段】第1の回路26gで生成された第1の電源電圧により信号処理を行なう第2の回路27と、第3の回路26jで生成された第2の電源電圧により信号処理を行なう第4の回路28と、第2及び第4の回路27,28の各グランド端が接続される基準グランド端22と、第1及び第3の回路26g,26jで生成された第1及び第2の電源電圧を第2及び第4の回路27,28にそれぞれ導くもので、第1乃至第4の回路26g,26j,27,28の各グランド端が接続されるプレーン状のグランドパターン26bが形成された回路基板26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特にスクリーンの背面側から映像光を投射する背面投射型テレビジョン受信装置等に使用して好適する信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、首記の如き背面投射型のテレビジョン受信装置は、主として、テレビジョン放送信号からの映像信号の復元処理、受信装置全体の動作制御、各部への電源供給等を行なう信号処理制御部(シャーシともいう)と、この信号処理制御部で復元された映像信号を光学像に変換してスクリーンの背面側に投射する光学エンジンとを備えている。
【0003】
ところで、上記信号処理制御部は、受信装置全体の動作制御、放送信号の受信等を行なう回路基板、映像信号に対するスケーリング処理やI/P(interlace/progressive)変換等の信号処理を行なう回路基板、アナログチューナ等のアナログ信号処理を行なう回路基板、光学エンジン用の電源を生成する回路基板、各回路基板への電源を生成する回路基板等、複数種類の回路基板を筐体内に収納する構成となっている。
【0004】
この場合、電源生成用の回路基板から電源被供給用の回路基板への電源の供給は、電線の接続によって行なわれている。このため、特に各回路基板の基準電位点となるグランド(GND)端が電線によって接続されることにより、各回路基板に跨った大きなGNDループが形成されることになり、EMI(electromagnetic interference)に対する性能が変動し易くなって、安定した映像表示性能が得られなくなるという問題が生じている。
【0005】
特許文献1には、半導体ICと端子順序が一致するように対応付けされたデジタル信号端子列と、これに対向して設けられたグランド端子列とから構成された基板間接続部を、半導体IC毎にそのデジタル信号端子列が半導体ICの信号端子に向かい合うように配置することにより、各半導体ICと無交差配線で接続するようにして、低EMI化を図るようにした構成が開示されている。
【特許文献1】特開2002−289991公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1には、各回路基板のGND端が電線によって接続され、各回路基板に跨った大きなGNDループが形成されることにより、EMIに対する性能が変動することについては何ら着目されておらず、またその対処についても何ら記載されていないものである。
【0007】
そこで、この発明は上記事情を考慮してなされたもので、複数の回路基板のグランド端間を結ぶループの大きさを小さくに抑え、EMIに対する性能の安定化を図ることができるようにした信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の実施の形態に係る信号処理装置は、第1の電源電圧を生成する第1の回路と、第1の回路で生成された第1の電源電圧により信号処理を行なう第2の回路と、第2の電源電圧を生成する第3の回路と、第3の回路で生成された第2の電源電圧により信号処理を行なう第4の回路と、第2及び第4の回路の各グランド端が接続される基準グランド端と、第1及び第3の回路で生成された第1及び第2の電源電圧を第2及び第4の回路にそれぞれ導くもので、第1乃至第4の回路の各グランド端が接続されるプレーン状のグランドパターンが形成された回路基板とを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
上記した構成によれば、第1乃至第4の回路の各グランド端が回路基板にプレーン状に形成されたグランドパターンに接続されることにより、等価的に、第1及び第2の回路を接続するグランド線と第3及び第4の回路を接続するグランド線とが、第2及び第4の回路に近い位置で接続される構成となる。このため、第2及び第4の回路相互間に形成されるGNDループの大きさを小さく抑えることができ、EMIに対する性能の安定化を図ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。すなわち、図1(a),(b)は、この実施の形態で説明する映像表示装置として背面投射型テレビジョン受信装置11を示している。
【0011】
この背面投射型テレビジョン受信装置11は、映像を表示する表示部12と、この表示部12の一方の面を覆う背面部13と、上記表示部12及び背面部13を支持する支持部14とから構成されている。
【0012】
そして、上記表示部12には、その表示面12aを覆うようにプロテクタ15がねじ16によって取り付けられている。このプロテクタ15は、例えば透明または半透明のプラスチック板で構成され、表示部12内のスクリーン17を保護したり、光学的なフィルタ作用によって、コントラストの向上や視聴者の目の保護を行なったりするために設けられるものである。
【0013】
また、上記支持部14内には、テレビジョン放送信号からの映像信号の復元処理、受信装置全体の動作制御、各部への電源供給等を行なう信号処理制御部18と、この信号処理制御部17で復元された映像信号を光学像に変換して出射する光学エンジン19とが備えられている。この光学エンジン19から出射された映像光は、上記背面部13内に設置されたミラー20で反射され、スクリーン17の背面に投射される。
【0014】
図2は、上記信号処理制御部18の構造を示している。この信号処理制御部18は、1枚の底面鉄板21と、この底面鉄板21の背面画の端部から垂直に起立された背面鉄板22とを備えている。
【0015】
そして、この底面鉄板21上には、その一方側に主電源基板23、他方側に副電源基板24、背面側にチューナ基板25が、それぞれ、底面鉄板21に面対向して設置されている。また、主電源基板23と副電源基板24との対向端部近傍からは、マザー基板26が垂直に起立されて支持されている。
【0016】
さらに、主電源基板23の上には、所定間隔離間して面対向するようにデジタル処理基板27が設置され、このデジタル処理基板27の上には、所定間隔離間して面対向するように信号処理基板28が設置されている。また、上記チューナ基板28の上には、所定間隔離間して面対向するようにアナログ処理基板29が設置されている。
【0017】
ここで、上記デジタル処理基板27は、背面投射型テレビジョン受信装置11全体の制御を行なうCPU(central processing unit)、デジタル放送信号の受信回路、外部機器とi.Link接続を行なうためのインターフェース回路等を備えている。
【0018】
また、上記信号処理基板28は、サブCPU、映像スケーリング処理やI/P変換等、光学エンジン19に供給する映像信号を生成する映像処理回路、ビデオカラーデコーダとを備えている。
【0019】
さらに、上記アナログ処理基板29は、入力される複数系統のアナログ信号を選択するアナログ入力信号のセレクト回路を備えている。上記チューナ基板25は、アナログ放送信号に対するチューナ回路を備えている。
【0020】
また、上記主電源基板23は、光学エンジン19用の電源や、アナログ回路に対する電源を生成する電源回路を備えている。上記副電源基板24は、デジタル処理基板27や信号処理基板28に供給する電源を生成する、常時オン状態となる電源回路を備えている。
【0021】
さらに、上記マザー基板26は、主電源基板23及び副電源基板24の2次側出力から各回路で必要とする電圧を生成するレギュレータを備えるとともに、デジタル処理基板27と信号処理基板28との間でデジタル映像信号を伝送する機能を有する。
【0022】
ここで、上記主電源基板23の2次側グランド(GND)と、副電源基板24の2次側グランドとは、マザー基板26の近傍で接続され、その接続点が底面鉄板21に接続されている。
【0023】
また、主電源基板23の2次側グランド(GND)と、副電源基板24の2次側グランドとは、マザー基板26にもコネクタを介して接続され、マザー基板26上に形成されたレギュレータの基準GNDとなっている。
【0024】
そして、この底面鉄板21が信号処理制御部18全体の基準グランド(強固なGND)になる。
【0025】
また、上記デジタル処理基板27のグランドと信号処理基板28のグランドとは、背面鉄板22に接続されている。この背面鉄板22は、底面鉄板21と接続されていることにより、底面鉄板21と同様に強固な基準グランドになっている。
【0026】
図3は、上記副電源基板24、マザー基板26、デジタル処理基板27及び信号処理基板28の構造及び接続状態を示している。すなわち、副電源基板24は、その一端に設置されたコネクタ24aが、マザー基板26の一端に設置されたコネクタ26aに接続されることにより、マザー基板26と電気的に接続される。
【0027】
また、この副電源基板24の2次側グランドとなるグランド端子24bは、上記底面鉄板21に接続されるとともに、コネクタ24a,26aを介してマザー基板26のグランドパターン26bに接続されている。
【0028】
一方、上記デジタル処理基板27は、その一端に設置されたコネクタ27aが、マザー基板26の他端に設置されたコネクタ26cに接続されることにより、マザー基板26と電気的に接続される。また、このデジタル処理基板27のグランド端子27bは、上記背面鉄板22に接続されるとともに、コネクタ27a,26cを介してマザー基板26のグランドパターン26bに接続されている。
【0029】
さらに、上記信号処理基板28は、その一端に設置されたコネクタ28aが、マザー基板26の他端に設置されたコネクタ26dに接続されることにより、マザー基板26と電気的に接続される。また、この信号処理基板28のグランド端子28bは、背面鉄板22に接続されるとともに、コネクタ28a,26dを介してマザー基板26のグランドパターン26bに接続されている。
【0030】
なお、上記デジタル処理基板27は、コネクタ27a,26c、マザー基板26の接続パターン26e、コネクタ26d,28aを介して、信号処理基板28と電気的に接続されている。これにより、デジタル処理基板27と信号処理基板28との間でデジタル映像信号を伝送可能となっている。
【0031】
ここで、上記マザー基板26には、副電源基板24で生成されたデジタル処理基板27用の電力が、コネクタ24a,26aを介して供給されるパターン26fと、このパターン26fを介して供給された電力から必要な電圧を生成するレギュレータ26gと、このレギュレータ26gで生成された電圧をコネクタ26c,27aを介してデジタル処理基板27に供給するためのパターン26hとが形成されている。そして、このレギュレータ26gのグランド端Gは、マザー基板26のグランドパターン26bに接続されている。
【0032】
また、上記マザー基板26には、副電源基板24で生成された信号処理基板28用の電力が、コネクタ24a,26aを介して供給されるパターン26iと、このパターン26iを介して供給された電力から必要な電圧を生成するレギュレータ26jと、このレギュレータ26jで生成された電圧をコネクタ26d,28aを介して信号処理基板28に供給するためのパターン26kとが形成されている。そして、このレギュレータ26jのグランド端Gは、マザー基板26のグランドパターン26bに接続されている。
【0033】
ここで、上記マザー基板26には、その表裏面の大部分に渡るプレーン状のグランドパターン26bが形成されている。このグランドパターン26bは、信号処理制御部18に組み込まれた状態で、底面鉄板21に図示しないコネクタを介して接続されており、底面鉄板21と同様に強固な基準グランドになっている。
【0034】
図4は、図3に示した構成における、レギュレータ26j,26g、デジタル処理基板27及び信号処理基板28相互間の接続関係を等価回路で示したものである。すなわち、上記レギュレータ26gで生成された電圧は、上記パターン26hに対応する接続線30を介してデジタル処理基板27に供給される。また、上記レギュレータ26jで生成された電圧は、上記パターン26kに対応する接続線31を介して信号処理基板28に供給される。
【0035】
そして、レギュレータ26j,26gの各グランド端Gと、デジタル処理基板27及び信号処理基板28の各グランド端子27b,28bとが、それぞれ、マザー基板26上にプレーン状に形成されたグランドパターン26bに接続されることにより、デジタル処理基板27とレギュレータ26gとを接続するグランド線32と、信号処理基板28とレギュレータ26jとを接続するグランド線33とが、デジタル処理基板27及び信号処理基板28に近い位置で接続線34により接続される構成となる。
【0036】
これにより、デジタル処理基板27及び信号処理基板28相互間に形成されるGNDループを小さく抑えることができ、デジタル処理基板27及び信号処理基板28から漏れる不要輻射を抑制することができるため、EMIに対する性能の安定化を図ることができるようになる。
【0037】
すなわち、デジタル処理基板27及び信号処理基板28は、それぞれがデジタルデバイスを搭載しているため、その動作電流から漏れる輻射成分は大きい。このため、デジタル処理基板27及び信号処理基板28相互間のGNDインピーダンスを下げ、また、GNDループを小さくすることにより、輻射成分を大幅に抑制することができる。
【0038】
なお、この発明は上記した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を種々変形して具体化することができる。また、上記した実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良いものである。さらに、異なる実施の形態に係る構成要素を適宜組み合わせても良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施の形態を示すもので、背面投射型テレビジョン受信装置を説明するために示す図。
【図2】同実施の形態における背面投射型テレビジョン受信装置の信号処理制御部の構造を説明するために示す斜視図。
【図3】同実施の形態における信号処理制御部を構成する各回路基板の構造及び接続状態を説明するために示す図。
【図4】同実施の形態における各回路基板の電気的な接続関係を説明するために示す等価回路図。
【符号の説明】
【0040】
11…背面投射型テレビジョン受信装置、12…表示部、13…背面部、14…支持部、15…プロテクタ、16…ねじ、17…スクリーン、18…信号処理制御部、19…光学エンジン、20…ミラー、21…底面鉄板、22…背面鉄板、23…主電源基板、24…副電源基板、25…チューナ基板、26…マザー基板、27…デジタル処理基板、28…信号処理基板、29…アナログ処理基板、30,31…接続線、32,33…グランド線、34…接続線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源電圧を生成する第1の回路と、
前記第1の回路で生成された第1の電源電圧により信号処理を行なう第2の回路と、
第2の電源電圧を生成する第3の回路と、
前記第3の回路で生成された第2の電源電圧により信号処理を行なう第4の回路と、
前記第2及び第4の回路の各グランド端が接続される基準グランド端と、
前記第1及び第3の回路で生成された第1及び第2の電源電圧を前記第2及び第4の回路にそれぞれ導くもので、前記第1乃至第4の回路の各グランド端が接続されるプレーン状のグランドパターンが形成された回路基板とを具備することを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記回路基板は、その両面に前記グランドパターンが形成されることを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。
【請求項3】
基準グランド端は、前記回路基板を支持する鉄板であり、この鉄板に前記回路基板のグランドパターンが接続されていることを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記第1及び第3の回路は、前記回路基板上に形成されることを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記第2及び第4の回路は、デジタルデータの信号処理を行なうことを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記第2及び第4の回路のいずれか一方は、投射型映像表示装置の光学エンジンに供給する映像信号処理を行なうことを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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