説明

光コンバイナの製造方法

【課題】光コンバイナを、歩留まりよく、容易に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】光コンバイナの製造方法は、パイプ材11にキャピラリ20を挿入すると共に、キャピラリ20にその一端側から信号用光ファイバ16を挿入する第1ステップと、信号用光ファイバ16を、パイプ材11の一端側から挿入されて延び且つパイプ材11に挿入されたキャピラリ20に挿入されて保持された状態とし、パイプ材11にその一端側から複数本の励起用光ファイバ17を挿入する第2ステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1本の信号用光ファイバ及び複数本の励起用光ファイバで構成され、これらの先端部分において、信号用光ファイバを中心としてその周りを囲うように複数本の励起用光ファイバが配されて一体化した光コンバイナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザや光増幅器等の光学装置において、光増幅素子としてダブルクラッドファイバが広く利用されている。
【0003】
ダブルクラッドファイバは、ファイバ中心に設けられた光増幅成分として希土類元素等がドープされたコアと、そのコアの周囲に設けられたより低屈折率の第1クラッドと、その第1クラッドの周囲に設けられたより低屈折率の第2クラッドと、で構成されている。そして、かかるダブルクラッドファイバでは、第1クラッドに入射された励起光が、第1クラッドと第2クラッドとの界面で反射を繰り返しながら、第2クラッドに囲まれた領域を伝搬し、その励起光がコアを通過する際にコアにドープされた希土類元素を最外殻電子が励起した反転分布状態にさせ、その誘導放出によってコアを伝搬する信号光を増幅する。
【0004】
このようなダブルクラッドファイバにおいて、コアに信号光を、また、第1クラッドに励起光をそれぞれ入射させる方法として、光コンバイナを用いる方法が知られている。
【0005】
光コンバイナは、例えば、中心の1本のシングルモード光ファイバとそれを囲む6本のマルチモード光ファイバとの最密構造を有し、先端部分においてそれらが溶融一体化した構造を有する(特許文献1参照)。そして、ダブルクラッドファイバに接続されたときには、シングルモード光ファイバのコアだった部分がダブルクラッドファイバのコアに対応して接続され、マルチモード光ファイバのコアだった部分がダブルクラッドファイバの第1クラッドに対応して接続される。
【特許文献1】特開2007−163650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光コンバイナを、歩留まりよく、容易に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1本の信号用光ファイバ及び複数本の励起用光ファイバで構成され、これらの先端部分において、該信号用光ファイバを中心としてその周りを囲うように該複数本の励起用光ファイバが配されて一体化した光コンバイナの製造方法であって、
パイプ材にキャピラリを挿入すると共に、該キャピラリにその一端側から信号用光ファイバを挿入する第1ステップと、
上記信号用光ファイバを、上記パイプ材の一端側から挿入されて延び且つ該パイプ材に挿入された上記キャピラリに挿入されて保持された状態とし、該パイプ材にその一端側から複数本の励起用光ファイバを挿入する第2ステップと、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パイプ材に挿入したキャピラリに信号用光ファイバを挿入することにより、信号用光ファイバが確実に中心に位置付けられるので、パイプ材に信号用光ファイバ及び励起用光ファイバを挿入したときに、信号用光ファイバが中心から外れて位置付けられることがなく、従って、歩留まりよく、容易に光コンバイナを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る光コンバイナ10を示す。この光コンバイナ10は、例えば、レーザマーカーの光増幅器や溶接用ファイバレーザのダブルクラッドファイバに接続されて用いられるものである。
【0011】
この光コンバイナ10は、パイプ材11と1本の信号用光ファイバ心線12及び複数本の励起用光ファイバ心線13とで構成されている。1本の信号用光ファイバ心線12及び複数本の励起用光ファイバ心線13のそれぞれは、心線先端から被覆層14,15が所定長だけ剥がされて信号用光ファイバ16又は励起用光ファイバ17が露出しており、光コンバイナ10は、図2に示すように、これらの1本の信号用光ファイバ16及び複数本の励起用光ファイバ17が、信号用光ファイバ16が中心に位置付けられるように束ねられてパイプ材11に挿入され、その先端部分において、それらが溶融一体化して縮径した溶融部18に形成されている。なお、図2では、各々、同一ファイバ径を有する1本の信号用光ファイバ16及び6本の励起用光ファイバ17が六方最密充填状に設けられた形態を示す。
【0012】
パイプ材11は、例えば石英ガラス等で形成されている。パイプ材11は、例えば、全長が3〜10mm(溶融部18を除く)、及び内径が380〜400μmにそれぞれ形成されている。
【0013】
1本の信号用光ファイバ心線12は、信号用光ファイバ16が被覆層14で被覆された構成を有する。信号用光ファイバ心線12は、例えば、心線全長が1〜10m(溶融部18を含む)、及び心線径が240〜260μmにそれぞれ形成されている。
【0014】
信号用光ファイバ16は、例えば石英ガラスで形成されており、ファイバ中心の高屈折率のコア16aとその周りを被覆する低屈折率のクラッド16bとを有する。信号用光ファイバ16は、ゲルマニウム等をドープして高屈折率化した石英でコア16aを形成し且つ純粋石英でクラッド16bを形成したものであってもよく、また、純粋石英でコア16aを形成し且つフッ素等をドープして低屈折率化した石英でクラッド16bを形成したものであってもよい。信号用光ファイバ16は、一般的には、シングルモードファイバで構成される。信号用光ファイバ16は、例えば、被覆層14が剥がされて露出した部分のファイバ長が0.5〜5mm、ファイバ径が123〜127μm、及びコア径が10〜60μmにそれぞれ形成されている。
【0015】
被覆層14は、例えば、紫外線硬化型樹脂、シリコン樹脂、ナイロン樹脂等で形成されており、単一層で構成されていてもよく、また、複数層で構成されていてもよい。被覆層14は、層厚さが例えば55〜65μmに形成されている。
【0016】
複数本の励起用光ファイバ心線13のそれぞれは、励起用光ファイバ17は被覆層15で被覆された構成を有する。励起用光ファイバ心線13は、例えば、心線全長が1〜10m(溶融部18を含む)、及び心線径が240〜260μmにそれぞれ形成されている。複数本の励起用光ファイバ心線13は、例えば本数が3〜10本である(なお、図1〜4では6本)。
【0017】
各励起用光ファイバ17は、例えば石英ガラスで形成されており、ファイバ中心の高屈折率のコア17aとその周りを被覆する低屈折率のクラッド17bとを有する。各励起用光ファイバ17は、ゲルマニウム等をドープして高屈折率化した石英でコア17aを形成し且つ純粋石英でクラッド17bを形成したものであってもよく、また、純粋石英でコア17aを形成し且つフッ素等をドープして低屈折率化した石英でクラッド17bを形成したものであってもよい。各励起用光ファイバ17は、一般的には、マルチモードファイバで構成される。各励起用光ファイバ17は、例えば、被覆層15が剥がされて露出した部分のファイバ長が0.5〜5mm、ファイバ径が123〜127μm、及びコア径が80〜115μmにそれぞれ形成されている。
【0018】
複数本の励起用光ファイバ17は、ファイバ径が均一に構成されていてもよく、また、相互に異なって構成されていてもよい。複数本の励起用光ファイバ17は、コア径が均一に構成されていてもよく、また、相互に異なって構成されていてもよい。
【0019】
複数本の励起用光ファイバ17のファイバ径が均一に構成されている場合、そのファイバ径は、信号用光ファイバ16のファイバ径と同一であってもよく、また、異なっていてもよい。但し、パイプ材11への充填性の観点からは、前者であることが好ましい。
【0020】
被覆層15は、例えば、紫外線硬化型樹脂、シリコン樹脂、ナイロン樹脂等で形成されており、単一層で構成されていてもよく、また、複数層で構成されていてもよい。被覆層15は、層厚さが例えば55〜65μmに形成されている。
【0021】
溶融部18は、パイプ材11、1本の信号用光ファイバ16,及び複数本の励起用光ファイバ17が一体化しており、その中を1本の信号用光ファイバ16及び複数本の励起用光ファイバ17のそれぞれのコア16a,17aが長さ方向に延び、端面には、図3に示すように、信号用光ファイバ16のコア16aが中心に位置付けられ且つそれを励起用光ファイバ17のコア17aが囲むように位置付けられたコア配置が露出している。
【0022】
この光コンバイナ10は、信号用光ファイバ16が信号光源に接続され、また、複数本の励起用光ファイバ17のそれぞれが励起光源に接続されると共に、溶融部18の端面が、コアと第1及び第2クラッドとを備えたダブルクラッドファイバにアーク放電等により融着接続されて使用される。このとき、溶融部18の端面における信号用光ファイバ16のコア16aがダブルクラッドファイバのコアに、また、複数本の励起用光ファイバ17のそれぞれのコア17aがダブルクラッドファイバの第1クラッドにそれぞれ接続される。
【0023】
そして、信号光源からの信号光が信号用光ファイバ16を介してダブルクラッドファイバのコアに入射され、励起光源からの励起光が励起用光ファイバ17を介してダブルクラッドファイバの第1クラッドに入射されると、第1クラッドに入射された励起光は、第1クラッドと第2クラッドとの界面で反射を繰り返しながら、第2クラッドに囲まれた領域を伝搬し、コアを通過する際にコアにドープされた希土類元素を最外殻電子が励起した反転分布状態にさせ、その誘導放出によってコアを伝搬する信号光を増幅する。
【0024】
次に、この光コンバイナ10の製造方法について、図4(a)〜(d)に基づいて説明する。
【0025】
<準備ステップ>
パイプ材11と、1本の信号用光ファイバ心線12及び複数本の励起用光ファイバ心線13と、それらに加えてキャピラリ20とを準備する。パイプ材11は、長さが例えば30〜80mmのものである。1本の信号用光ファイバ心線12及び複数本の励起用光ファイバ心線13のそれぞれは、心線長が例えば1〜10mのものである。
【0026】
キャピラリ20は、例えば石英ガラス等で形成されている。キャピラリ20は、例えば、全長が40〜90mm、外径が350〜390μm、及び内径が130〜170μmにそれぞれ形成されている。
【0027】
1本の信号用光ファイバ心線12及び複数本の励起用光ファイバ心線13のそれぞれについては、一方の心線先端から被覆層14,15を所定長だけ剥がして信号用光ファイバ16又は励起用光ファイバ17を露出させる。このとき、被覆層14,15の剥離長さを例えば20〜40mmとする。
【0028】
<信号用光ファイバ挿入ステップ(第1ステップ)>
図4(a)及び(b)に示すように、パイプ材11にキャピラリ20を挿入すると共に、キャピラリ20にその一端側から信号用光ファイバ16を挿入する。
【0029】
このとき、パイプ材11にキャピラリ20を挿入した後に、そのパイプ材11に挿入されたキャピラリ20に信号用光ファイバ16を挿入してもよく、また、予めキャピラリ20にその一端側から信号用光ファイバ16を挿入した後、その信号用光ファイバ16が挿入されたキャピラリ20をパイプ材11の一端側から挿入してもよい。信号用光ファイバ16のキャピラリ20への挿入長さを例えば10〜20mmとする。
【0030】
パイプ材11に挿入されたキャピラリ20に信号用光ファイバ16を挿入する場合、キャピラリ20への信号用光ファイバ16の挿入作業を容易にする観点から、図4(a)に示すように、パイプ材11にキャピラリ20を貫通状態に挿入することが好ましい。なお、図4(b)に示すように、パイプ材11の内部に端部が位置付けられるようにキャピラリ20を挿入し、そして、信号用光ファイバ16をパイプ材11の一端側から挿入すると共に、さらにキャピラリ20に挿入してもよい。
【0031】
<励起用光ファイバ挿入ステップ(第2ステップ)>
信号用光ファイバ16を、パイプ材11の一端側から挿入されて延び且つパイプ材11に挿入されたキャピラリ20に挿入されて保持された状態とし、図4(c)に示すように
、パイプ材11にその一端側から複数本の励起用光ファイバ17を挿入する。
【0032】
このとき、信号用光ファイバ16が挿入されたキャピラリ20をパイプ材11の他端側に移動させることにより信号用光ファイバ16を上記状態としてもよい。この際、信号用光ファイバ16をキャピラリ20と共に移動させて、信号用光ファイバ16をパイプ材11に案内して導入してもよく、また、信号用光ファイバ16を固定してキャピラリ20のみを移動させて、信号用光ファイバ16をキャピラリ20の鞘から抜き出すようにしてもよい。
【0033】
パイプ材11への励起用光ファイバ17の挿入は、キャピラリ20を固定した状態で行ってもよく、また、上記のキャピラリ20の移動と共に行ってもよい。また、パイプ材11への挿入長さを均一にできるという観点からは、複数本の励起用光ファイバ17の端面をキャピラリ20の端面に当接させることが好ましい。なお、パイプ材11への励起用光ファイバ17の挿入は、1本ずつ行ってもよく、また、複数本まとめて行ってもよい。
【0034】
パイプ材11への信号用光ファイバ16及び励起用光ファイバ17の挿入作業を容易にするという観点から、これらを最密状に束ねたときの外径がパイプ材11の内径よりも若干小さい寸法を有することが好ましい。
【0035】
キャピラリ20に励起用光ファイバ17が挿入されるのを防止する観点からは、キャピラリ20の内径とキャピラリ20への挿通体の外径との差が、複数本の励起用光ファイバ17のうち最小径の励起用光ファイバ17の外径よりも小さいことが好ましい。ここでは、キャピラリ20への挿通体の外径とは信号用光ファイバ16の外径である。その一方、キャピラリ20への信号用光ファイバ16の挿入作業を容易にする観点から、キャピラリ20の内径は、信号用光ファイバ16の外径の1.03〜1.3倍であることが好ましい。
【0036】
また、パイプ材11とキャピラリ20との隙間に励起用光ファイバ17が嵌るのを防止する観点からは、パイプ材11の内径とキャピラリ20の外径との差が、複数本の励起用光ファイバ17のうち最小径の励起用光ファイバ17の外径よりも小さいことが好ましい。その一方、パイプ材11へのキャピラリ20の挿入作業を容易にする観点から、パイプ材11の内径は、キャピラリ20の外径の1.03〜1.3倍であることが好ましい。
【0037】
<溶融切断ステップ>
図4(d)に示すように、パイプ材11からキャピラリ20を抜き、パイプ材11に1本の信号用光ファイバ16及び複数本の励起用光ファイバ17を挿入した状態とし、続いて、パイプ材11の中央部分を側面からアーク放電、火炎等を用いて加熱して溶融させ、それらの間隙をコラプスしつつ一体化させる。このとき、加熱温度を例えば1500〜2000℃とする。また、溶融一体化させる部分の長さを例えば1〜3mmとする。
【0038】
そして、冷却後、溶融一体化した部分の側面にノッチを入れ、その部分で切断することにより光コンバイナ10が製造される。
【0039】
パイプ材11に信号用光ファイバ16及び励起用光ファイバ17を挿入する際、それらをそのまま束ねてパイプ材11に挿入したのでは、信号用光ファイバ16を中心に位置付けることは非常に困難である。特に、信号用光ファイバ16及び励起用光ファイバ17が非常に細く、また、同一ファイバ径を有するような場合には、その困難性は著しいものとなる。しかしながら、以上のような光コンバイナ10の製造方法によれば、パイプ材11に挿入したキャピラリ20に信号用光ファイバ16を挿入することにより、信号用光ファイバ16が確実にパイプ材11の中心に位置付けられるので、パイプ材11に信号用光ファイバ16及び励起用光ファイバ17を挿入したときに、信号用光ファイバ16が中心から外れて位置付けられることがなく、従って、歩留まりよく、容易に光コンバイナ10を製造することができる。
【0040】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る光コンバイナ10について説明する。
【0041】
この光コンバイナ10は、パイプ材11と、1本の信号用光ファイバ心線12及び複数本の励起用光ファイバ線13と、スペーサパイプ19と、で構成されている。1本の信号用光ファイバ心線12及び複数本の励起用光ファイバ心線13のそれぞれは、心線先端から被覆層14,15が所定長だけ剥がされて信号用光ファイバ16又は励起用光ファイバ17が露出しており、光コンバイナ10は、実施形態1の場合と同様にこれらの1本の信号用光ファイバ16及び複数本の励起用光ファイバ17が、信号用光ファイバ16が中心に位置付けられるように束ねられてパイプ材11に挿入されるが、信号用光ファイバ16と励起用光ファイバ17との間に隙間が生じる場合、その信号用光ファイバ16と励起用光ファイバ17との隙間にスペーサパイプ19を配することにより、信号用光ファイバ16、励起用光ファイバ17及びスペーサパイプ19の3者で最密充填状態となるように構成される。そして、その先端部分においてそれらが溶融一体化して縮径した溶融部18に形成されている。
【0042】
パイプ材11は、例えば、全長が3〜10mm(溶融部18を除く)、及び内径が520〜540μmにそれぞれ形成されている。
【0043】
スペーサパイプ19は、例えば石英ガラス等で形成されている。スペーサパイプ19は、例えば、全長が3〜10mm、外径が230〜270μm、及び内径が130〜170μmにそれぞれ形成されている。
【0044】
なお、その他の信号用光ファイバ心線12、励起用光ファイバ心線13、溶融部18等は、実施形態1と同一の構成である。
【0045】
この光コンバイナ10は、信号用光ファイバ16が信号光源に接続され、また、複数本の励起用光ファイバ17のそれぞれが励起光源に接続されると共に、溶融部18の端面が、コアと第1及び第2クラッドとを備えたダブルクラッドファイバにアーク放電等により融着接続されて使用される。このとき、溶融部18の端面における信号用光ファイバ16のコア16aがダブルクラッドファイバのコアに、また、複数本の励起用光ファイバ17のそれぞれのコア17aがダブルクラッドファイバの第1クラッドにそれぞれ接続される。
【0046】
そして、信号光源からの信号光が信号用光ファイバ16を介してダブルクラッドファイバのコアに入射され、励起光源からの励起光が励起用光ファイバ17を介してダブルクラッドファイバの第1クラッドに入射されると、第1クラッドに入射された励起光は、第1クラッドと第2クラッドとの界面で反射を繰り返しながら、第2クラッドに囲まれた領域を伝搬し、コアを通過する際にコアにドープされた希土類元素を最外殻電子が励起した反転分布状態にさせ、その誘導放出によってコアを伝搬する信号光を増幅する。
【0047】
図5は、実施形態2に係る光コンバイナ10の製造方法を示す説明図である。
【0048】
<準備ステップ>
パイプ材11と、1本の信号用光ファイバ心線12及び複数本の励起用光ファイバ心線13と、スペーサパイプ19と、それらに加えてキャピラリ20とを準備する。パイプ材11は、長さが例えば30〜80mmのものである。スペーサパイプ19は、長さが例えば40〜90mmのものである。1本の信号用光ファイバ心線12及び複数本の励起用光ファイバ心線13のそれぞれは、心線長が例えば1〜10mのものである。
【0049】
キャピラリ20は、例えば石英ガラス等で形成されている。キャピラリ20は、例えば、全長が40〜90mm、外径が450〜490μm、及び内径が330〜370μmにそれぞれ形成されている。
【0050】
1本の信号用光ファイバ心線12及び複数本の励起用光ファイバ心線13のそれぞれについては、一方の心線先端から被覆層14,15を所定長だけ剥がして信号用光ファイバ16又は励起用光ファイバ17を露出させる。このとき、被覆層14,15の剥離長さを例えば20〜40mmとする。
【0051】
<信号用光ファイバ挿入ステップ(第1ステップ)>
図5に示すように、パイプ材11にキャピラリ20を挿入すると共に、キャピラリ20にその一端側から信号用光ファイバ16をスペーサパイプ19に挿通したものを挿入する。
【0052】
このとき、パイプ材11にキャピラリ20を挿入した後に、そのパイプ材11に挿入されたキャピラリ20にスペーサパイプ19を挿入し、さらにそのキャピラリ20に挿入されたスペーサパイプ19に信号用光ファイバ16を挿入してもよい。また、パイプ材11にキャピラリ20を挿入し、別途、スペーサパイプ19に信号用光ファイバ16を挿入しておいたものをパイプ材11に挿入されたキャピラリ20に挿入してもよい。或いは、キャピラリ20に信号用光ファイバ16をスペーサパイプ19に挿通したものを挿入し、その信号用光ファイバ16をスペーサパイプ19に挿通したものが挿入されたキャピラリ20をパイプ材11に挿入してもよい。
【0053】
<励起用光ファイバ挿入ステップ(第2ステップ)>
実施形態1における第2ステップと同一の方法により、パイプ材11に励起用光ファイバを挿入する。
【0054】
なお、実施形態1の場合と同様に、キャピラリ20に励起用光ファイバが挿入されるのを防止する観点からは、キャピラリ20の内径とキャピラリ20への挿通体の外径との差が複数本の励起用光ファイバ17のうち最小径の励起用光ファイバ17の外径よりも小さいことが好ましいが、ここでは、キャピラリ20への挿通体の外径とは、スペーサパイプ19の外径である。
【0055】
<溶融切断ステップ>
実施形態1における溶融切断ステップと同一の方法により、キャピラリ20を抜いたパイプ材11を加熱して溶融一体化させて、その溶融した部分を切断する。
【0056】
以上の製造方法により得られた光コンバイナ10は、例えば励起用光ファイバ心線13が7本以上であるために信号用光ファイバ16と励起用光ファイバ17との間に隙間が生じるが、その隙間にスペーサパイプ19を配しているので、加熱して溶融一体化することが可能となる。そして、以上のような光コンバイナ10の製造方法によれば、パイプ材11にキャピラリ20を挿入すると共に、キャピラリ20にその一端側から信号用光ファイバ16をスペーサパイプ19に挿通したものを挿入することにより、信号用光ファイバ16が確実にパイプ材11の中心に位置付けられるので、パイプ材11に信号用光ファイバ16及び励起用光ファイバ17を挿入したときに、信号用光ファイバ16が中心から外れて位置付けられることがなく、従って、歩留まりよく、容易に光コンバイナ10を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明は、1本の信号用光ファイバ及び複数本の励起用光ファイバで構成され、これらの先端部分において、信号用光ファイバを中心としてその周りを囲うように複数本の励起用光ファイバが配されて一体化した光コンバイナの製造方法について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態1の光コンバイナの斜視図である。
【図2】図1におけるA−A’の断面図である。
【図3】図1における矢視Bの正面図である。
【図4】実施形態1の光コンバイナの製造方法を示す説明図である。
【図5】実施形態2の光コンバイナの製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
10 光コンバイナ
11 パイプ材
16 信号用光ファイバ
17 励起用光ファイバ
20 キャピラリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の信号用光ファイバ及び複数本の励起用光ファイバで構成され、これらの先端部分において、該信号用光ファイバを中心としてその周りを囲うように該複数本の励起用光ファイバが配されて一体化した光コンバイナの製造方法であって、
パイプ材にキャピラリを挿入すると共に、該キャピラリにその一端側から信号用光ファイバを挿入する第1ステップと、
上記信号用光ファイバを、上記パイプ材の一端側から挿入されて延び且つ該パイプ材に挿入された上記キャピラリに挿入されて保持された状態とし、該パイプ材にその一端側から複数本の励起用光ファイバを挿入する第2ステップと、
を備えたことを特徴とする光コンバイナの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された光コンバイナの製造方法において、
上記第1ステップにおいて、上記パイプ材に上記キャピラリを挿入した後に、該パイプ材に挿入された該キャピラリに上記信号用光ファイバを挿入することを特徴とする光コンバイナの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載された光コンバイナの製造方法において、
上記第1ステップにおいて、上記パイプ材に上記キャピラリを貫通状態に挿入することを特徴とする光コンバイナの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された光コンバイナの製造方法において、
上記第2ステップにおいて、上記信号用光ファイバが挿入された上記キャピラリを上記パイプ材の他端側に移動させることを特徴とする光コンバイナの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載された光コンバイナの製造方法において、
上記第2ステップにおいて、上記キャピラリを上記パイプ材の他端側に移動させることにより上記信号用光ファイバを上記パイプ材に案内して導入することを特徴とする光コンバイナの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された光コンバイナの製造方法において、
上記第2ステップにおいて、上記複数本の励起用光ファイバの端面を上記キャピラリの端面に当接させることを特徴とする光コンバイナの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された光コンバイナの製造方法において、
上記キャピラリに、上記信号用光ファイバをスペーサパイプに挿通したものが挿入された状態にすることを特徴とする光コンバイナの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された光コンバイナの製造方法において、
上記キャピラリの内径と該キャピラリの挿通体の外径との差が、上記複数本の励起用光ファイバのうち最小径の励起用光ファイバの外径よりも小さいことを特徴とする光コンバイナの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載された光コンバイナの製造方法において、
上記パイプ材の内径と上記キャピラリの外径との差が、上記複数本の励起用光ファイバのうち最小径の励起用光ファイバの外径よりも小さいことを特徴とする光コンバイナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−124014(P2009−124014A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297892(P2007−297892)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】