説明

光センサ及びこれを用いた計測システム

【課題】計測対象が発光部による発熱の影響を受けにくい光センサを提供する。
【解決手段】本体13は、少なくとも一部が反射面とされた凹状の内面を備えている。発光部11は、本体13の内面上に配置されている。光通路14は、発光部11から発せられた光を外部に送り出すものである。受光部12は、発光部11から発せられ、かつ、外部を通過した光を受光するものである。発光部11を、本体13の内面側に計測対象から離して配設することにより、計測対象への熱の影響を低く抑えることができる。また、発光部11に対向する位置に反射部17を設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センサ及びこれを用いた計測システムに関するものである。特に、本発明は、反射式の光センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の反射式光センサとして、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この光センサは、人体表面に照射され、人体内部で散乱した後、照射された表面に戻ってきた光(反射光)を検出するものである。この反射光を検出することにより、血液の酸素飽和度を測定することができる。血中の酸素飽和度を測定する装置は、パルスオキシメータと呼ばれている。
【0003】
こうした反射式の光センサは、人体(例えば指)の表面に貼り付けるだけで使用することができる。一方、透過式の光センサは、発光体と受光体とで対象者の身体の一部を挟み込むため、痛みや圧迫感などの不快感を生じることがある。したがって、反射式光センサは、透過式のものに較べて、対象者における負担が少ないという利点がある。
【0004】
ところで、反射式の光センサを、従来のものよりも小型化することができれば、使用部位の制約が減少する。十分に小さいものであれば、例えば、小指の爪や小児の爪にも使用できるようになる。
【0005】
また、特許文献1記載の光センサは、発光用のLEDを爪の表面に接着しているので、対象者が発熱の影響を受けやすいという問題もある。したがって、従来のものでは、発光時間や消費電力(つまり発光量)を制限して発熱量を抑制する等の対策が必要になる。
【0006】
そこで、本発明者らにより、下記特許文献2に記載の光センサ(光プローブ)が提案されている。これによれば、発光部(例えばLED)からの発熱の影響を抑えつつ、光センサを小型化することが可能になる。
【特許文献1】特表2001−501847号公報
【特許文献2】特開2004−337605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の光センサにおいて、発光部からの発熱の影響をさらに低減することができれば、さらなる小型化や発光量の増大が可能になると期待される。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、発光部からの発熱の影響を低減できる光センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光センサは、本体と発光部と光通路と受光部とを備えている。前記本体は、少なくとも一部が反射面とされた凹状の内面を備えている。前記発光部は、前記本体の内面上に配置されている。かつ、前記発光部は、計測対象の表面から離間することとなる位置に配設されている。前記光通路は、前記発光部から発せられた光を前記外部に送り出すものである。前記受光部は、前記発光部から発せられ、かつ、前記外部を通過した光を受光するものである。
【0010】
本発明の光センサは、さらに反射部を備えていてもよい。前記反射部の表面は、前記発光部と対向する位置に配置される。さらに、前記反射部の表面は、前記発光部で発光された光を反射して前記光通路に戻す反射面とされる。
【0011】
前記発光部は、少なくとも二種類の波長の光を発するものであってもよい。
【0012】
前記発光部を複数とすることができる。さらに、これらの発光部を、前記本体の内面における複数箇所に配置することができる。
【0013】
前記複数の発光部を、互いに、光センサの中心線に対して対称となる位置に配置することができる。
【0014】
前記本体の内面における前記反射面を拡散反射面とすることができる。
【0015】
前記反射部の表面を拡散反射面とすることができる。
【0016】
本発明に係る計測システムは、本発明に係る光センサと、この光センサで受光された光の特性を解析する解析部とを有する構成となっている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発光部からの発熱の影響を低減できる光センサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態の構成)
本発明の第1実施形態に係る計測システムを、図1〜図9に基づいて以下に説明する。この実施形態の計測システムは、パルスオキシメータとして用いられるものである。この計測システムは、光センサ1と、解析部2と、配線3と、固定具4とを主体として構成されている(図1参照)。また、この計測システムは、この実施形態では、計測対象者の手5に取り付けられている。
【0019】
光センサ1は、発光部11と、受光部12と、本体13と、光通路14と、基板15と、保護部16と、反射部17を主要な構成として備えている(図2〜図7参照)。
【0020】
発光部11は、第1発光部111と第2発光部112とを備えている(図3および図7参照)。第1発光部111は、具体的には、第1の波長の光を発する発光体としてのLEDである。第1の波長の光とは、例えば、波長が660[nm]付近の赤色光である。第2発光部112は、具体的には、第2の波長の光を発する発光体としてのLEDである。第2の波長の光とは、例えば、波長が880[nm]付近の近赤外光である。さらに、発光体としては、LEDに限らず、レーザダイオードやランプなどの他の発光体を用いても良い。また、LED等の発光体の数は、単数でも複数でもよい。第1および第2発光部111および112は、本体13の内面(対象者の皮膚又は爪を向く面)上に取り付けられている(後述)。これにより、発光部11は、光通路14に向けて光を発するものとなっている。
【0021】
受光部12は、この実施形態では、受光体としてのフォトダイオードが用いられている。受光部12は、基板15の一面(外部を向く面)に取り付けられている(図2および図3参照)。これにより、受光部12は、発光部11から発せられ、かつ、光通路14と外部(例えば対象物の内部)とを通過した光を受光するようになっている。
【0022】
本体13は、本実施形態では、内カバー131と、外カバー132と、発光部用の基板133とを備えている。
【0023】
内カバー131は、全体としてほぼ半球状とされている。これにより、本体13に凹状内面が備えられたものとなっている。内カバー131の内面は、ほぼ全面にわたって、拡散反射面とされている。これにより、この実施形態では、本体13の内面の少なくとも一部が反射面とされている。拡散反射面の形成方法としては、従来から知られているものを用いることができるので、それについての詳細な説明は省略する。なお、内カバー131の内面の一部又は全部を、拡散反射面でなく、通常の反射面とすることも原理的には可能である。また、ここで反射とは、使用される波長の光に対して反射する性質であればよく、他の波長の光を吸収するものであっても良い。
【0024】
内カバー131の上端近傍の位置(図2において右端)には、内カバー131を内外方向に貫通する開口部1311が形成されている。この開口部1311は、発光部用の基板133を取り付けるために用いられるものである。
【0025】
内カバー131の材質としては、熱伝導性の悪いものが好ましく、例えば樹脂などが好適である。
【0026】
外カバー132は、内カバー131の外側を覆う形状となっている(図2および図3参照)。すなわち、内カバー131は、外カバー132の内側にはめ込まれた構成となっている。
【0027】
外カバー132の側部には、基板15や基板133に配線を行うための開口部1321が形成されている。外カバー132の材質としては、内カバー131と同様に、熱伝導性の悪いものが好ましく、例えば樹脂などが好適である。ただし、外カバー132の材質の熱伝導性があまりに悪いと、内部に熱がこもる等の問題を生じることも考え得る。一般には、外カバー132からは、周囲に放熱すると考えられるので、その材質として熱伝導性の良いものを用いることも、その用途や設計に応じて十分可能である。また、外カバー132と内カバー131とが異なる材質であっても同じ材質であってもよい。
【0028】
発光部用の基板133は、内カバー131の開口部1311の上端において、その内側にはめ込まれて取り付けられている(図2及び図3参照)。ここで、基板133の一面1331は内カバー131の内部方向を向くように配置されている。
【0029】
基板133の一面1331には、発光部11が取り付けられている(図2,図3及び図7参照)。発光部11には、基板133を介して、発光に必要な給電が行われるようになっている。本実施形態では、この構成により、本体13の内面上に発光部11が取り付けられたものとなっている。また、本実施形態では、基板133に発光部11を取り付けたことにより、光センサ1の計測対象(例えば生体)の表面から、発光部11を十分に離間させた構成となっている。ただし、発光部11を内カバー131の内面に取り付けることは可能である。この場合においても、発光部11を計測対象の表面から離間した位置に配設することが好ましい。
【0030】
基板133の一面1331は、拡散反射面であることが、光を拡散して強度を均一にする観点からは好ましいが、単なる反射面とすることも可能である。
【0031】
また、基板133としては、熱伝導性の高い材質であることが好ましい。これにより、基板133を介して、発光部11からの放熱を図ることができる。また、基板133は、生体表面に直接触れないので、生体への熱的影響を低く抑えることができる。
【0032】
光通路14は、本体13の内面側に形成された空間である(図2及び図3参照)。光通路14は、基板15の周囲に配置された端部(すなわち光が出入りする部分)141を備えている。
【0033】
光通路14の内部には、透明材料142が充填されている。透明材料142は、発光体の発熱を伝達や放散しにくいものであること,つまり熱伝導性の悪いものが好ましく、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などが良い。ただし、透明材料142としては、他の材料を用いることもできる。また、例えば、人体に接触する部分のみを柔軟なシリコーン樹脂とし、その他の部分をエポキシ樹脂とすることもできる。
【0034】
光通路14は、発光部11から発せられた光を、内カバー131の内面における反射によって外部へ送り、さらに、外部(例えば対象物の内部)での反射又は屈折を経て(つまり経由して)受光部12に送るようになっている。もちろん、発光部11から発せられた光の一部は、内カバー131の内面で反射することなく、直接外部に送られることがある。
【0035】
光通路14の端部141は、受光部12の周囲に形成されたものとなっている。なお、ここで、周囲とは、全周を必ずしも意味するものではなく、全周の一部である場合を含む。光通路14の端部141は、基板15に対応する部分を除いて、受光部12の周囲において、外部に面している(図4参照)。
【0036】
受光部12を取り付けるための基板15は、本体13の一面側(開口部側)に取り付けられている。基板15の一端は、本体13におけるほぼ中央位置まで延長されている(図2参照)。基板15の他端は、本体13の外部近傍まで延長されている。受光部12は、基板15の一端近傍において、基板15の一面側(対象物に面する側)に取り付けられている。すなわち、受光部12は、基板15に取り付けられた状態において、本体13の外部方向に向けられている。
【0037】
基板15としては、例えばガラスエポキシ基板のように、硬質のものが用いられる。ただし、基板15としては、フレキシブル基板を用いることにより柔軟性を付与してもよい。また、基板15のうち、光通路14に面している面は、反射面、特に拡散反射面であることが望ましい。
【0038】
保護部16は、図2及び図3に示されているように、基板15の一面側(対象物に面する側)に取り付けられている。保護部16には、その厚さ方向に貫通した穴161が形成されている(図2,図3及び図4参照)。穴161に対応する位置には、受光部12が配置されている。つまり、受光部12には、穴161を介して、外部からの光が到達するように構成されている。穴161と受光部12との間における空間には、光通路14に充填された透明材料142と同様な透明材料を充填することができる。
【0039】
反射部17は、基板15の他面側(本体側)に配置されている。この例では、反射部17は、受光部12と反対側となる位置に配置されている。また、反射部17は、本体13の内カバー131とほぼ同心となるように配置されている。これによって、光通路14の幅(すなわち、図2及び図3に示される、内カバー131と反射部17との間隙)は、基板15の部分を除いて、ほぼ均一とされている。
【0040】
反射部17の表面は、ほぼ球面上に盛り上がっている。また、反射面17の表面は、好ましくは反射面、より好ましくは拡散反射面とされている。
【0041】
解析部2は、信号増幅器21と、A/D変換器22と、制御部23と、インタフェース部24と、メモリ部25と、表示部26と、操作部27と、電源部28とを備えている(図8参照)。
【0042】
信号増幅器21は、光センサ1の受光部12からの信号を増幅する部分である。A/D変換器22は、光センサ1からのアナログ信号をディジタル信号に変換して制御部23に送る部分である。制御部23は、A/D変換器22から送られた信号を、メモリ部25に格納されたプログラムに従って処理する部分である。
【0043】
インタフェース部24は、制御部23とメモリ部25〜電源部28との間における信号や電力の受け渡しを行う部分である。
【0044】
メモリ部25には、信号処理のために必要なプログラムやデータが格納されている。メモリ部25は、測定処理に必要なデータだけでなく、測定結果としてのデータを格納することもできる。
【0045】
表示部26は、制御部23における処理結果を表示するものであり、例えば液晶ディスプレイである。表示部26は、外部から見える位置に配置されている(図1参照)。
【0046】
操作部27は、外部からの指示(例えば動作開始)を解析部2に入力するための部分である。
【0047】
電源28は、例えば電池である。電源28は、解析部2の動作に必要な電力を供給する。さらに、電源28は、インタフェース部24および配線3を介して、発光部11に電力を供給する。電源28から発光部11への電力の供給量(つまり発光量)または供給時期(つまり発光時期)は、制御部23により制御されている。このような解析部2は、マイコンチップなどの適宜な部品を用いることにより容易に構成することができる。
【0048】
配線3は、光センサ1の基板15及び基板133と解析部2の信号増幅器21とを接続しており、両者間での信号伝送や電力供給を行っているものである。配線3と基板15及び基板133とは、着脱可能となっている。配線3については、図8においては、信号取得用の配線と電力供給用の配線とを1本として記載することで記載を簡略化しているが、実際は別々の配線とすることが通常である。
【0049】
固定具4は、ベルト状に形成されており、その両端が解析部2に取り付けられている。固定具4は、例えば伸縮可能なベルトである。固定具4としては、要するに、解析部2を身体に固定できるものであればよい。
【0050】
(第1実施形態の動作)
つぎに、前記のように構成された本実施形態の装置を用いた反射光検出方法の一例について説明する。測定の前に、対象者の手5における親指51の爪511(図1参照)の表面に透明な接着剤(図示せず)を塗布する。ついで、爪511に、光センサ1を取り付ける。このとき、光センサ1の受光部12の側を爪511の表面に向ける。もちろん、光センサ1の接着方法としては、例えば、本体13の底面(爪511と接触する面)に接着剤層を設けておく方法でも良い。さらに、固定具4を用いて、手首52に解析部2を取り付ける。
【0051】
なお、光センサ1を指の腹部分(爪の反対側の部分)に取り付けることも可能である。さらに、光センサ1を、両面テープによって対象者に取り付けることも可能である。
【0052】
ついで、解析部2の電源部28から制御部23を介して発光部11の第1発光部111に電力を供給する。これにより、第1発光部111を発光させる。第1発光部111から発せられた赤色光は、光通路14を通り、内カバー131の内面によって拡散反射する(図9参照)。内カバー131の内面は、拡散反射面となっているので、光通路14の内部は、実質的にほぼ積分球となる。したがって、この実施形態では、発光部11から発せられた光は、光通路14の端部141(つまり光通路14の出口)から、場所によらずほぼ均一な強度で外部へ放出される。しかも、この実施形態では、内カバー131の内面を拡散反射面としているので、端部141から放出された光の指向性を低下させることができる。
【0053】
この実施形態では、光通路14の端部141を、受光部12の周囲に配置しているので、光は、受光部12の周囲から外部に放出する。ただし、基板15に相当する部分では、基板15で遮られるため、光は放出しない。このように、この明細書において「周囲」とは、必ずしも全周を意味するものではない。
【0054】
光通路14の端部141から外部に放出された光は、外部に位置する対象物としての爪511に照射される。照射された光は、人体組織、すなわち、爪511や爪の下の組織等を通過した後に反射される。また、光の一部は、爪511の表面で反射され、光通路14に戻る。
【0055】
人体組織を通過した光の一部は、保護部16の穴161を通過し、受光部12により受光される。受光された光は、受光部12により光電変換されて、光の強度信号が電気信号として解析部2へ送られる。
【0056】
ついで、電源部28から発光部11の第2発光部112に電力を供給する。これにより、第2発光部112を発光させる。第2発光部112から発せられた赤外光は、第1発光部111の場合と同様にして、受光部12により受光され、光の強度信号が解析部2へ送られる。
【0057】
このような第1発光部111の発光と第2発光部112の発光とを、短い周期で繰り返す。発光周期は、脈波の周期よりも十分に短いことが好ましい。例えば、発光周期は、予想される脈波周期の1/10以下の値に設定される。このようにすれば、一つの受光部12を用いた場合であっても、脈波の強度信号を二つの波長において取得することができる。
【0058】
解析部2の制御部23は、それぞれの波長の強度信号における変動幅(直流成分を除いた変動量の幅)を求める。ついで、赤色光における変動幅をRとし、近赤外光における変動幅をIRとすると、変動幅の比R/IRを求める。この比が高ければ血中酸素飽和度が低く、この比が低ければ酸素飽和度が高いことになる。このようなデータ処理方法は良く知られているので、これ以上の説明は省略する。さらに、制御部23は、変動幅の比に対応する酸素飽和度の数値をメモリ部25から検索し、表示部26に出力して表示する。
【0059】
この実施形態では、発光部11からの光を、受光部12の周囲から外部に放出しているので、広い領域を通過した光を受光部12により受光することができる。したがって、広い範囲における対象物の情報を取得することができる。例えば、生体組織では、血管が局在しているため、狭い範囲の情報では、必ずしも脈波の変動を捉えることができない。これに対して、この実施形態では、脈波の変動を捉えやすいという利点がある。
【0060】
また、この実施形態では、光通路14における端部(外部に面している部分)141の面積を調節することにより、対象物への光の照射量を容易に調節することができる。面積の調節は、例えば遮蔽物を取り付けることにより行うことができる。
【0061】
さらに、この実施形態では、発光部11が本体13の側(対象物から離間した側)に配置されているので、対象物(例えば人体)が発熱の影響を受けにくいという利点がある。このため、例えば、発光量や発光時間を増加させることが容易となり、検出信号のSN比を向上させることが可能となる。さらには、対象者が発熱による傷害を受けにくく、不快感を感じにくいという利点もある。また、光センサ1を小型化し、それによって光通路14の端部141の面積が小さくなった場合でも、発光部11からの光量を増加させることによって、十分な受光量を得ることが容易となる。
【0062】
また、この実施形態の光センサでは、発光部11からの光を、光通路14を介して外部に放出しているので、発光部11と受光部12とを、対象物から離間する方向に沿って配列することができる。特許文献1に記載された従来の光センサでは、発光部と受光部とを体表面に沿う方向において並べている。しかも、この従来の光センサでは、発光部と受光部がある程度離間していないと、十分な情報を得られない。したがって、従来の光センサでは、さらなる小型化は難しい。これに対して、本実施形態の光センサは、発光部11と受光部12とを、対象物から離間する方向に沿って配列することができるので、光センサの設置に要する面積を小さくする(つまり小型化する)ことが容易となるという利点がある。しかも、本実施形態では、小型化した場合であっても、前記したように、受光部12の周囲という広い範囲から光を対象物に照射することができるので、十分な受光量を確保しやすいという利点がある。
【0063】
さらに、本実施形態の光センサでは、爪511の表面で反射された光の一部は、端部141を通って光通路14に再び入る。光通路14に入った光は、光通路14の内部が積分球となっているために(つまり反射部131が拡散反射面となっているために)、再び端部141から外部に放射される。このように、この実施形態では、放射された光の一部を再利用することができる。したがって、この実施形態では、発光された光の利用効率を向上させることができ、このために、光センサのさらなる小型化が可能になるという利点がある。
【0064】
また、本実施形態の光センサによれば、前記したとおりに小型化が可能になるので、生体や青果物の表面のような曲面への取り付けが容易となる。
【0065】
さらに、この実施形態の光センサにおいて、本体13を変形可能な材料とすれば、曲面への取り付けがさらに容易となる。また、この光センサにおいて、透明材料142や基板15を変形可能なものとすれば、同様の利点を得ることができる。さらに、透明材料142のうち、特に、人体に接触する部分を柔軟な材料とすることによって、密着性の向上や使用感の向上という利点を得ることもできる。
【0066】
また、この実施形態では、基板15に保護部16を取り付けているので、受光部12や基板15を保護することができるという利点もある。
【0067】
さらに、この実施形態の光センサでは、光通路14の内部に透明材料142を封入しているので、本体13の強度を向上させることができる。したがって、この光センサは、例えば発光部11や受光部12のための基板のような内部構造を保護することができるという利点も有する。また、透明材料142として熱伝導性の悪い材質を用いれば、計測対象である生体への熱的傷害の防止をより確実にすることもできる。
【0068】
本実施形態では、本体13の内面上に発光部11を取り付けたため、発光部11と生体表面とを十分に大きく離間させることが可能となった。これにより、生体への熱的影響を低減させることが可能になる。また、本実施形態において、発光部用の内カバー131や外カバー132や透明材料142(特に生体表面に触れる部分)を熱伝導性の悪いものとすることにより、生体への発熱の影響をさらに低減しうる。ただし、発光部11と生体表面との距離を十分大きく取ることにより、発光部11と生体表面との間の部材を熱伝導性の良い材質とすることは可能になると考えられる。なお、基板133については、その熱伝導性が悪いと発光部11からの熱が逃げなくなる恐れがあるので、基板133の熱伝導性をあえて低下させることは一般に好ましくないと考えられる。
【0069】
また、本実施形態の光センサでは、本体13の基板133に発光部11を設けたので、本体13を介した放熱が容易となる。例えば、本実施形態においては、発光部用の基板133を介して、外部への放熱が可能となる。これにより、発光部11からの発光量を増大させ、受光した光におけるS/N比を改善することが可能となる。あるいは、光センサ1のさらなる小型化が可能となる。
【0070】
(第2実施形態)
つぎに、本発明の第2実施形態に係る光センサ1を図10に基づいて説明する。前記した第1実施形態では、受光部用の基板15の他面側に反射部17を備えていた。本実施形態の光センサ1では、反射部17が省略されている。
【0071】
このような構成であっても、発光部11からの光の一部は、基板15や内カバー131等で反射され、光通路14を通って外部に放出される。
【0072】
本実施形態では、基板15の他面(発光部11に対向する面)が拡散反射面となっている事が好ましい。この場合には、発光部11からの光を拡散することができるので、光通路14からの光の強度がより均一になるという利点がある。
【0073】
第2実施形態における他の構成および利点は、第1実施形態と同様なので、これ以上の説明を省略する。
【0074】
(第3〜第7実施形態)
つぎに、本発明の第3〜第7実施形態に係る光センサ1を図11〜図15に基づいて説明する。これらの実施形態では、反射部17の上面形状が、前記第1実施形態とは異なっている。ただし、第3〜第7実施形態における反射部17の表面は、いずれも拡散反射面とされている。
【0075】
また、第3〜第7実施形態においては、本体13の外カバー132と基板133とが省略されている。また、内カバー131の開口部1311も省略されている。
【0076】
さらに、第3〜第7実施形態においては、内カバー131の内面でかつ上側の位置に、発光部11が配置されている。
【0077】
第3〜第7実施形態においても、前記第1実施形態と同様の利点を発揮することができる。すなわち、原理的には、反射部17の形状は、どのようなものであってもよい。
【0078】
ただし、光通路14の幅は、本体13の中心線P(図12参照)に対して回転対称であるほうが、光を均一に放射するためには好ましい。反射部17の形状は、光通路14の幅を規定することになるため、反射部17の形状も、光通路14と同様に、中心線Pに対して回転対称であることが好ましい。
【0079】
(第8実施形態)
つぎに、本発明の第8実施形態に係る光センサ1を図16に基づいて説明する。この実施形態では、第3〜第7実施形態と異なり、本体13の内面に基板133を取り付け、この基板133の一面(外部に向く面)に、発光部11を取り付けている。
【0080】
第8実施形態における他の構成および利点は、前記第3〜第7実施形態と実質的に同様なので、詳細な説明は省略する。
【0081】
(第9実施形態)
つぎに、本発明の第9実施形態に係る光センサを図17に基づいて説明する。この実施形態では、二つの発光部11A及び11Bが用いられている。各発光部は、前記した発光部11と同様に、第1発光部11A1,11B1と、第2発光部11A2,11B2とを備えている。
【0082】
発光部11Aと発光部11Bとは、中心線Pに対して対称となる位置に配置されている。これにより、各発光部からの光量を同一とすれば、光通路14から外部への光の光量を均一化することが容易になると考えられる。
【0083】
さらに、四つの発光部11A〜11Dを用いる構成とし(図18参照)、それらを中心線Pに対して対称となる位置に配置すれば、外部への光の光量をさらに均一化できると考えられる。また、発光部の数を増加させることにより、光量を増大させ、得られる信号のS/N比を改善することができる。さらに、発光部の数を増加させると、用いる光の波長を三つ以上とすることもでき、それぞれの波長の光に対応する検出結果を得ることもできる。
【0084】
第9実施形態における他の構成および利点は、前記第1実施形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0085】
なお、前記各実施形態の記載は単なる一例に過ぎず、本発明に必須の構成を示したものではない。各部の構成は、本発明の趣旨を達成できるものであれば、上記に限らない。
さらに、前記した機能ブロックどうしは、複合して一つの機能ブロックに集約されても良い。また、一つの機能ブロックの機能が複数の機能ブロックの協働により実現されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施形態に係る計測システムを対象者の手に取り付けた状態を示す説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る光センサの断面図である。
【図3】図2の光センサにおけるA−A方向に沿う断面図である。
【図4】図2の光センサにおけるB方向の矢視図である。
【図5】図4の光センサにおけるC方向の矢視図である。
【図6】図4の光センサにおけるD方向の矢視図である。
【図7】光センサにおける本体部分のうち、外カバーを除外した状態における底面図である。
【図8】図1の計測システムに用いられる解析部の概略的な構成を示すブロック図である。
【図9】図2の光センサの動作を説明するための説明図であって、図3に対応する図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る光センサの断面図であって、図2に対応する図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る光センサの要部を示す概略的な断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る光センサの要部を示す概略的な断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係る光センサの要部を示す概略的な断面図である。
【図14】本発明の第6実施形態に係る光センサの要部を示す概略的な断面図である。
【図15】本発明の第7実施形態に係る光センサの要部を示す概略的な断面図である。
【図16】本発明の第8実施形態に係る光センサの要部を示す概略的な断面図である。
【図17】本発明の第9実施形態に係る光センサの要部を示す概略的な断面図である。
【図18】本発明の第9実施形態に係る光センサの変形例を説明するための説明図であって、本体を上面側から見た状態の図である。
【符号の説明】
【0087】
P 本体の中心線(光センサの中心線)
1 光センサ
11・11A〜11D 発光部
111・11A1〜11D1 第1発光部
112・11A2〜11D2 第2発光部
12 受光部
13 本体
131 内カバー
1311 基板取り付け用の開口部
132 外カバー
1321 配線用の開口部
133 発光部用の基板
1331 基板の一面
14 光通路
141 光通路の端部
142 光通路に充填された透明材料
15 受光部用の基板
16 保護部
161 穴
17 反射部
2 解析部
21 信号増幅器
22 A/D変換器
23 制御部
24 インタフェース部
25 メモリ部
26 表示部
27 操作部
28 電源部
3 配線
4 固定具
5 手
51 指
511 爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と発光部と光通路と受光部とを備えており、
前記本体は、少なくとも一部が反射面とされた凹状の内面を備えており、
前記発光部は、前記本体の内面上に配置されており、
かつ、前記発光部は、計測対象の表面から離間することとなる位置に配設されており、
前記光通路は、前記発光部から発せられた光を前記外部に送り出すものであり、
前記受光部は、前記発光部から発せられ、かつ、前記外部を通過した光を受光するものであることを特徴とする光センサ。
【請求項2】
さらに反射部を備え、
前記反射部の表面は、前記発光部と対向する位置に配置されており、
さらに、前記反射部の表面は、前記発光部で発光された光を反射して前記光通路に戻す反射面とされていることを特徴とする請求項1記載の光センサ。
【請求項3】
前記発光部は、少なくとも二種類の波長の光を発するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光センサ。
【請求項4】
前記発光部は、複数となっており、さらに、前記本体の内面における複数箇所に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の光センサ。
【請求項5】
前記複数の発光部は、互いに、光センサの中心線に対して対称となる位置に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の光センサ。
【請求項6】
前記本体の内面における前記反射面は拡散反射面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項7】
前記反射部の表面は拡散反射面であることを特徴とする請求項2に記載の光センサ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の光センサと、この光センサで受光された光の特性を解析する解析部とを有する計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−126017(P2008−126017A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318011(P2006−318011)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000103493)オータックス株式会社 (14)
【出願人】(504133110)国立大学法人 電気通信大学 (383)
【出願人】(803000045)株式会社キャンパスクリエイト (41)
【Fターム(参考)】