説明

光反射物の製造方法

【課題】高い拡散反射率を有するポリマ−光反射物を提供する。
【解決手段】ポリマーと、高圧気体または超臨界流体と、を押出機の中で混合して均一単相の混合物とし、前記均一単相の混合物を、ダイを通して、平均空孔径が200ミクロン以下である微細空孔を備えたポリマー発泡材を包含する押出物を押出成形する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は光反射物(light-reflecting article)の製造方法に関し、とりわけ高い拡散反射率を有する光反射物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明裝置(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)に使用される背面光モジュール)は、一般に、点光源または線光源を対象物(例えば、液晶ディスプレイパネル)に反射させるための光反射物が設けられてある。光反射物は高い反射率を備える必要があるので、従来の光反射物では、一般に基材の表面に金属鏡面を形成して製造される。また、この金属鏡面は、一般に金属フィルムを基材表面に堆積させることによって形成される。しかしながら、拡散反射は、一般に金属鏡面を有する反射物には起り得ないので、一般に言えば、満足できる反射率を得ることが困難である。
【0003】
鏡面反射では、光は入射光と同一の角度でしか反射しないのに対して、拡散反射の場合では、さまざまな角度の反射光が得られる。拡散反射物は、反射面を粗くすることによって製造される。その方法の一つに粉末を平坦な表面に散布して付着させる方法がある。もう一つの方法は、粉碎またはサンドブラスト法で金属またはガラス表面を処理することで製造される。さらに、アルミニウムの表面をマイクロディンプル化して製作する方法がある。しかしながら、これらの反射面を粗くする方法の主な欠点は、良好な光拡散反射を得るのに充分とされる程度の表面粗さを得ることができず、また均一な表面粗さを得られないことである。
【0004】
上記に加えて、微細空孔(micro void)を含むポリエステルフィルムを利用して製造される拡散反射物が提案されている。これは、一般に非相溶性のポリマー、または無機微粒子をポリエステルの中に分散させ、さらに、空孔を前記非相溶性微粒子の周囲に形成させることによって製造される。しかしながら、非相溶性のポリマーまたは無機微粒子を均一にポリエステルの中に分散させることは非常に困難であり、形成された空孔の分布も不均一となるため、良好な光拡散反射が得られない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、高い拡散反射率を有する光反射物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した本発明の態様によれば、以下の工程を含む光反射物の製造方法が提供される。すなわち、ポリマーと、高圧気体または超臨界流体とを押出機の中で混合して均一単相の混合物とし、さらに、前記均一単相の混合物をダイを通して押出成形して押出物(extrudate)とすることを包含する。この押出物は、微細空孔を備えたポリマー発泡材を含む。前記微細空孔の平均空孔径は200ミクロン以下である。好適なポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、環状オレフィン、環状オレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、アクリル樹脂、ポリカーボネートまたはその混合物が挙げられる。
【0007】
平板状ダイを使用した場合、得られる押出物は板材である。この板材は、直接本発明の光反射物を満足するものである。管状または円環状ダイを使用した場合では、得られる押出物は棒材となる。この態様においては、前記棒材を編んで網状材とした後、本発明の光反射物とすることができる。前記押出物は、さらに、微細パターンを備えた型で押印処理することにより、表面にプリズムまたはレンチキュラーの微細構造を設けることができる。
【0008】
本発明においては、さらなる光反射物の製造方法を提供する。この方法では、平均空孔径が200ミクロン以下であるポリマー発泡粒子に、ホットプレス工程を適用して実施することで本発明の光反射物が製造される。
【0009】
前記ポリマー発泡粒子は、下記の工程により製造することができる。すなわち、前記ポリマーを押出造粒して粒子とし、続けて前記ポリマー粒子と、高圧気体または超臨界流体を容器の中に投入し、次に前記容器の中の圧力を下げることで前記微細空孔を備えたポリマー発泡粒子が得られる。また、前記ポリマー発泡粒子は、下記の工程によっても製造することができる。すなわち、前記ポリマーと、高圧気体または超臨界流体を押出機の中で混合して均一単相の混合物とし、前記均一単相の混合物をダイを通して押出して、前記微細空孔を備えたポリマー発泡粒子に造粒成形する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明においては光反射物を提供する。それは主として微細空孔を備えたポリマー発泡材である。ここで、前記微細空孔の平均空孔径は、200ミクロン以下である。本発明に好適に使用されるポリマーは、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、環状オレフィン、環状オレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、アクリル樹脂、ポリカーボネートまたはその混合物である。
【0011】
微細空孔の平均空孔径が200ミクロンを超えた場合、空孔の界面における不規則な反射の回数が低減する。その結果、大部分の入射光を拡散反射させるのに必要な光反射物の厚みが厚くなる。特に、シート状光反射物を液晶ディスプレイの背面光モジュールとして使用した場合では、シー卜状の光反射物の周縁から光が容易に失われるため、液晶パネルの表面に戻ってくる光は低減する。また、微細空孔の平均空孔径が入射光の波長より小さいと、入射光がポリマー発泡材料を通過してしまう。このため、平均空孔径は、少なくとも入射光の波長よりも大きくするか、または等しくしなければならない。本発明の光反射物では、反射率は好ましくは70%以下である。
【0012】
本発明の一実施態様における光反射物の製造方法によれば、主として、平均空孔径が200ミクロン以下であるポリマー発泡粒子に、ホットプレス工程を適用して実施することにより本発明の光反射物を製造することを含む。前記ポリマー発泡粒子は下記の工程によって製造することができる。すなわち、前記ポリマーを押出造粒して粒子とし、次に前ポリマー粒子と、高圧気体または超臨界流体を容器の中に投入し、続けて前記容器の中の圧力を下げて前記微細空孔を備えたポリマー発泡粒子を製造する。前記ポリマー発泡粒子製造方法の詳細については、2005年8月12日出願の中華民国第94127598号特許出願(この全文は引用することにより本願明細書の開示の一部とされる)に開示されている。さらに、前記ポリマー発泡粒子は下記の工程によっても製造することができる。すなわち、前記ポリマーと、高圧気体または超臨界流体を押出機の中で混合して均一単相の混合物とし、さらに、均一単相の混合物をダイを通して押出し造粒成形して微細空孔を備えたポリマー発泡粒子とすることができる。
【0013】
本発明の他の態様による光反射物の製造方法は以下の工程を含む。すなわち、上記のポリマーと、高圧気体または超臨界流体とを押出機の中で混合して均一単相の混合物とし、さらに、前記均一単相の混合物をダイを通して押出成形して押出物とすることを含む。平板状ダイを使用した場合、得られる押出物は板材である。これは直接本発明の光反射物とすることができる。管状または円環状ダイを使用した場合では、得られる押出物は棒材となる。この態様においては、棒材を編んで網状材とした後、本発明の光反射物とすることができる。前記押出物は、さらに、微細パターンを備えた型で押印処理することにより、押出物の表面にプリズムまたはレンチキュラーの微細構造を形成することができる。
【実施例】
【0014】
標準グレードで、メルトフローインデックスが0.5g/10分間、密度が約0.91g/cmであるコポリマー樹脂(Pro−Fax EP3C37F)のポリプロピレン粒子を、供給ホッパーから二軸スクリュー押出機の中に供給する。実質的に溶融体の5.0%を占める量の二酸化炭素の超臨界流体を押出機スクリューの側面から注入し、直ちにポリプロピレン流体と混合させて均一単相の混合物にする。続けて前記均一単相の混合物を、平板状ダイを通して押出造粒成形して、微細空孔を備えたポリプロピレン発泡板材を得る。
【0015】
テスト結果
実施例の製造物を、分光光度計(DATACOLORD社製、型番SF−600)を用いて反射率R(波長550nmにおける)を測定した結果、数値は94.7%であった。
【0016】
当業者が理解できるように、本発明の好ましい実施態様を説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。本発明の精神と範囲内を逸脱せずに各種の変更と修飾を加えることが意図されている。従って、本発明の保護範囲は、全ての変更や類似の構造を包含するように最も広く与えられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、環状オレフィン、環状オレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、アクリル樹脂、ポリカーボネート及びその混合物よりなる群から選ばれるポリマーと、高圧気体または超臨界流体と、を押出機の中で混合して均一単相の混合物とし、
前記均一単相の混合物を、ダイを通して、平均空孔径が200ミクロン以下である微細空孔を備えたポリマー発泡材を包含する押出物を押出成形すること、
を含む、光反射物の製造方法。
【請求項2】
前記高圧気体が、二酸化炭素、窒素ガス、炭化水素、クロロフルオロカーボン及びその混合物からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記超臨界流体が、二酸化炭素、窒素ガス及びその混合物からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
微細パターンを備えた型で前記押出物を押印して、前記押出物の表面に微細構造を設けることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ダイが、前記押出物を板材として押出すための平板状ダイである、請求項1に記載の光反射物の製造方法。
【請求項6】
前記ダイが、前記押出物を棒材として押出すための管状または円環状ダイであり、かつ前記方法が、前記棒材を網状材に編む工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
微細パターンを備えた型で前記網状材を押印して、前記網状材の表面に微細構造を設けることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
微細空孔を備えたポリマー発砲粒子をホットプレスして、光反射物を製造することを含み、前記微細空孔が、200ミクロン以下の平均空孔径を有し、かつ前記ポリマーが、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、環状オレフィン、環状オレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、アクリル樹脂、ポリカーボネート及びその混合物からなる群から選択されるものである、方法。
【請求項9】
前記微細空孔を備えたポリマー発泡粒子が、
前記ポリマーと高圧気体または超臨界流体とを押出機の中で混合して均一単相の混合物にし、
前記均一単相の混合物を、ダイを通して押出して、前記微細空孔を備えたポリマー発泡粒子を造粒成形することにより製造される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記高圧気体が、二酸化炭素、窒素ガス、炭化水素、クロロフルオロカーボン及びその混合物からなる群から選択されるものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記超臨界流体が、二酸化炭素、窒素ガス及びその混合物からなる超臨界流体からなる群から選択されるものである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記微細空孔を備えたポリマー発泡粒子が、
前記ポリマーを押出造粒して粒子にし、
前記ポリマー粒子と、高圧気体または超臨界流体とを容器の中に投入し、
前記容器中の圧力を低下させてポリマー粒子を膨張させ、微細空孔を備えたポリマー発泡粒子を形成することにより製造される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
微細パターンを備えた型で前記光反射物を押印して、前記光反射物の表面に微細構造を設けることをさらに含む、請求項8に記載の方法。

【公開番号】特開2007−114747(P2007−114747A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−235674(P2006−235674)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(504269431)奇菱科技股▲分▼有限公司 (6)
【Fターム(参考)】