光波長選択型可変ADM装置を用いた波長多重光通信システム
【課題】光リング型ネットワークにおけるトラフィック量の変動に対して波長割当を適切に行い、ノードの増設・再配置等に対して柔軟に対応可能な波長多重光通信システムを提供することである。
【解決手段】光スイッチのオン・オフにより波長分割多重光信号から任意の波長の光信号を分岐・挿入させることのできる光波長選択型可変ADM装置を備えた複数のノードにより構成される光リング型ネットワークであって、光信号のトラフィック量を監視するトラフィック監視手段と、光スイッチを制御する制御手段とを備える。制御手段は、リング内の通信用として共通波長を割り当てる機能と、リング外との通信用として固定波長を割り当てる機能と、トラフィック監視手段により監視されている各波長のトラフィックの偏在に応じて光スイッチを制御する機能と、光スイッチの制御に伴って光信号の波長とアドレスとの対応付けを変更する機能とを備える。
【解決手段】光スイッチのオン・オフにより波長分割多重光信号から任意の波長の光信号を分岐・挿入させることのできる光波長選択型可変ADM装置を備えた複数のノードにより構成される光リング型ネットワークであって、光信号のトラフィック量を監視するトラフィック監視手段と、光スイッチを制御する制御手段とを備える。制御手段は、リング内の通信用として共通波長を割り当てる機能と、リング外との通信用として固定波長を割り当てる機能と、トラフィック監視手段により監視されている各波長のトラフィックの偏在に応じて光スイッチを制御する機能と、光スイッチの制御に伴って光信号の波長とアドレスとの対応付けを変更する機能とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光波長選択型可変ADM(Add/Drop Multiplexer)装置を用いた光リング型ネットワークによる波長多重光通信システムに関し、特に、光リング型ネットワーク内におけるWDM(Wavelength Division Multiplexing)光信号のトラフィック制御を行う波長多重光通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、家庭やオフィスなどにおいて、光ファイバーネットワークが広く導入されはじめている。このような光ファイバーネットワークに対しては、FTTH(Fiber To The Home)やFTTB(Fiber To The Building)などのブロードバンド回線サービスが提供されており、たとえば、100メガFTTHやギガFTTHと呼ばれるものが存在している。
これらのサービスでは、光スプリッタなどの光デバイスを使用していることから、一般的にEPON(Ethernet(登録商標)、Passive Optical Network)と呼ばれている。EPON方式では、通常、光ファイバーを最大32戸で共用するシステムとなっている。そうすると、たとえば、100メガFTTHが32戸で固定的に共用された場合、1戸あたりの転送速度は、3.1Mbpsとなる。これが、GE−PON(ギガビットイーサネット(登録商標)−PON)方式のギガFTTHの場合、1戸あたりの転送速度は31Mbpsとなる。一般的な、FTTHサービスでは、最大32戸で光ファイバーを共用するスター型結線により構成されている。しかしながら、スター型結線ではシステムの拡張性や柔軟性に欠けるという問題があることから、特許文献1において、システムの拡張に対して柔軟に対応できるリング型の光ネットワークが提案されている。このリング型光ファイバーネットワークでは、大容量の情報を扱うために種々の多重技術が検討されており、たとえば、CWDM(Coarse WDM)方式などの波長分割多重方式が有望な方式と考えられている。
【0003】
光ファイバーネットワークが広く導入されることにより利用者が増加し、これに伴うトラフィック量の増加が予想される。このため、波長分割多重方式を用いた時、多重されている波長によるトラフィックの偏りが生じることがある。このようなトラフィックの偏りを解消するために、光装置に対するコネクタ配置変更などの手動のつなぎ換えや光スイッチによる配線状態の変更や光クロスコネクト装置の使用により対処される。
このような方法は、現在の家庭やオフィスなどのアクセスネットワークと比較して大量、かつ変動の少ないトラフィックを扱うため切り替え回数の頻度が少ない条件で使用される日本中を結ぶバックボーンネットワークのDWDM(Dense WDM)方式を採用しているネットワークにおいて用いられる。
【0004】
しかしながら、トラフィック量に変動をともなうアクセスネットワークでは上記のような手動によるつなぎ換えや光スイッチによる波長の切り替えでは、ある程度のトラフィック量の制御を行うことは可能であるが、それには限界があり、加えて、切り替え時間や切り替えの手間がかかるなどの問題点がある。
また、光クロスコネクト装置を用いた場合、メインルータ、もしくはレイヤ3スイッチに対応した光クロスコネクト装置に使用するすべての波長フィルタに対応するために、すべてのノードですべての波長合波器、波長分波器、光スイッチおよび光メディアコンバータなどが必要となるため、システムとして大きく、かつ、高価になるなどの問題点が生じる。
【0005】
上記問題に対応するため、波長多重の効率的な利用形態として特にリング構成の光IP(Internet Protocol)ネットワークが特許文献2において提案されており、この構成の中で光波長選択型可変ADM装置が提案されている。
【0006】
図21は、特許文献2において提案されている機械式の光波長選択型可変ADM装置1(以下、単に「可変ADM装置」とする)の例を示す。この装置は、3つのブロックにより構成されている。右ブロック2は下位リングからのインターフェース部であり、左ブロック3は、レイヤ3スイッチ側のインターフェース部である。波長の切り替えは、中央ブロック4を上下方向に移動させることで行う。下位リングからの光入力信号は、右ブロック2を通過し、中央ブロック4に至る。中央ブロック4に全反射フィルタ5があった場合は、全反射されるため、その後段にある左ブロック3の波長選択フィルタ6を介することなく下位リングに戻される。また、中央ブロック4に全反射フィルタ5がない場合は、中央ブロック4を通過し、左ブロック3に至る。そして、特定の波長の信号だけが左ブロック3を通過し、レイヤ3スイッチに至る。逆に、レイヤ3スイッチからの信号は、左ブロック3、中央ブロック4、右ブロック2を順に通過して下位リングに至る。このように構成することにより、メインルータに接続される可変ADM装置1には、一般ルータに接続される可変ADM装置1に常時割当てられる波長のほかに使用される可能性のある波長に対する装置を設ければよいので、コスト低減を図ることができる。
【0007】
また、図22は、特許文献3において提案されている光学式の可変ADM装置10の例を示す。上位の通信システムから入力された波長分割多重光信号(以下、単に「光信号」とする)に含まれる複数の波長の光信号を分波する波長分波器16と、分波された複数の波長の光信号を合成して上位の通信システムに出力する波長合波器14と、下位の通信システムに分岐・挿入させるかを切り替える光スイッチ12とを備え、上位の通信システムの光信号に含まれる複数の波長の光信号から任意の波長の光信号を組合せて下位の通信システムに分岐・挿入させている。
【0008】
よって、特許文献2に記載されている機械式の可変ADM装置1と比較したとき、特許文献3に記載されている光学式の可変ADM装置10を用いることで、光信号を下位の通信システムに分岐・挿入させる光スイッチのオン・オフの切り替えを迅速に行うことができる。また、下位の通信システムに光信号を分岐・挿入させる波長の数が多くなっても、そのことが原因で、光スイッチの切り替え時間が増加することもなく、さらに、可変ADM装置の筐体が大きくなることもない。
【0009】
また、特許文献2の機械式の可変ADM装置1では、トラフィック制御については、波長分割多重方式やリング型のネットワーク網に特有のものは存在せず、通常のネットワーク網で使用されているトラフィック制御方式を採用している。このようなトラフィック制御では、パケットの発信元IPアドレス/ポート、パケット種別などを基準に単位時間当たりの送出バイト数の調整が行われている。たとえば、この制御での具体的な方法として、パケットの種類により帯域制限を設けたり、パケットの種類により優先制御を行ったり、パケットシェーピングといわれるパケットの種類により最大の送出速度を設けるなどの方法が採られる。
【0010】
現状のトラフィック制御には、Qos(Quality of Service)、輻輳制御、帯域制御、フロー制御と呼ばれるものがある。基本的にIPネットワークでは、ベストエフォート型の処理を行うので、何も制御を行わない場合には、ルータに先に到着したパケットの順番で処理がなされる。しかし、このような方法ではネットワークの輻輳を招くために何らかの制御が必要であることから、パケットの遅延を避け一定以上の転送速度を維持することが行われる。このような技術全般をQosという。このQosの1つが帯域制御と呼ばれるものであり、パケットの種類により帯域制限が設けられる。Qosの他の1つに優先制御と呼ばれるものがあり、優先度の高いパケットをルータが識別し、他のパケットよりも先に処理をする。パケットのヘッダには、優先度を表す送信元やあて先のIPアドレスやポート番号が書き込まれていて、これらの情報に基づきルータはパケットの優先度を判別する。パケットシェーピングといわれるパケットの種類により最大の送出速度を設けるなどの方法も取られる。また、ネットワークが混雑することにより通信性能が落ちることがあり(これを、輻輳という)、輻輳制御では、送信側の単位時間当たりの送出パケット送出数の調整が行われる。
【0011】
例えば、特許文献4では輻輳状態を判定して、パケットの送信、停止を判断するフロー制御が示されており、特許文献5では、輻輳状態を判定して送信データレートを動的に変更する方法が示されている。また、特許文献6では、パケットサイズ、及び、パケット数を考慮して通信機器の処理負荷を一定にする方法が、特許文献7では、映像信号の伝送のための帯域とデータ信号転送のための帯域とを制御して映像品質を確保する方法が示されている。また、特許文献8では、パケットの種類に応じての優先制御を曜日、月間、年間の日別や時間帯の特異性を考慮してルータの経路毎にパケット伝送時間をテーブル化して参照し伝送制御を行う方法が示されている。
【0012】
しかしながら、これらの例では、いずれも限られて変化しない帯域をいかにして利用するかが示されているにすぎず、伝送される複数の波長、つまり、複数のチャンネルを制御する帯域制御を行うことによりトラフィック量を制御する機能を有するものではない。
【0013】
【特許文献1】特開2001−230794号公報
【特許文献2】特開2005−323185号公報
【特許文献3】特願2006−048557号
【特許文献4】特開2003−143163号公報
【特許文献5】特開2006−033713号公報
【特許文献6】特開2005−136785号公報
【特許文献7】特開2005−348284号公報
【特許文献8】特開2001−308917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のように、特許文献2の機械式の可変ADM装置を用いて光リング型ネットワークを構成したとしても、各下位通信用ノードの可変ADM装置に対して適切な光スイッチの切り替えがなければ、トラフィック量の偏在は解消されない。さらに、通信されるパケット数は、時々刻々と変化するものであるから、各下位通信用ノードの波長の割当てを固定して使用すると効率が悪くなる。そのため、時々刻々と変化するトラフィック量に対応したトラフィック制御を行うことで、各下位通信用ノードの波長の割り当ての変化がなされないと、結局、効率的に通信帯域を有効利用しているとはいえない。
【0015】
また、現状のトラフィック制御では、パケットの送出量の制御が行われているが、スター型の場合、必ず、上位システムを経由することになり、この端末と上位ルータの専用線によって情報量が制限されるという問題もある。
【0016】
さらに、従来のトラフィック制御では、ノードの増設、ノードの再配置、ノード故障時の対応が容易でない。すなわち、新しいノードを増設する場合や移動や会社等の組織変更でノードの再配置を行う場合、IPアドレスの再配布やネットワークの工事などの多くの手間がかかることになる。また、このような、ノードの増設やノードの再配置に対応するトラフィック制御が必要となり、通信量の多いノード間通信については、物理的なノード間の通信量により、通信速度が左右されるなどの問題が生じる。
【0017】
そこで、本発明は、上述した種々の問題に鑑みてなされたもので、その目的は、光リング型ネットワークにおけるトラフィック量の変動に対して波長割り当てを適切に行い、ノードの増設、再配置に対して柔軟に対応可能な波長多重光通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、上位の通信システムに接続する上位通信用ノードと、下位の通信システムに接続する複数の下位通信用ノードとを含み、波長分割多重伝送を行う光リング型ネットワークであって、上位通信用ノードおよび下位通信用ノードに備えられ、光スイッチを用いて、波長分割多重光信号に含まれる複数の光信号から任意の波長の光信号を組み合わせて上位または下位の通信システムに分岐・挿入させることができる光波長選択型可変ADM装置と、光波長選択型可変ADM装置に分岐・挿入される波長ごとのトラフィック量を監視するトラフィック監視手段と、光波長選択型可変ADM装置の光スイッチを制御する制御手段とを有し、制御手段は、波長分割多重光信号に含まれる複数の波長の少なくとも一つを主として下位通信用ノード間の光通信のために利用する共通波長として割り当てる機能と、共通波長を除く波長を主として上位通信用ノードと少なくとも一つの下位通信用ノードとの間の光通信のために利用する固定波長として割り当てる機能とを有し、トラフィック監視手段により監視されている各波長の光信号のトラフィックの偏在に応じて光スイッチを制御する機能を有することを特徴とする波長多重光通信システムである。
【0019】
請求項2に記載の発明は、制御手段は、光波長選択型可変ADM装置の光スイッチの設定に基づいて、波長分割多重光信号の波長と宛先アドレスとを対応付ける設定を変更する機能を有することを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0020】
請求項3に記載の発明は、制御手段は、光リング型ネットワーク内の波長分割多重光信号に含まれる各波長のパケットの宛先アドレスを抽出する機能と、抽出された宛先アドレスが下位の通信システムのいずれかに存在するか否かを判定する機能とを含み、宛先アドレスが下位の通信システムに存在する場合は、光信号を共通波長に割り当て、宛先アドレスが下位の通信システムに存在しない場合は、光信号を固定波長に割り当てることを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0021】
請求項4に記載の発明は、制御手段は、下位通信用ノードにおける光スイッチの状態を導出する学習モデルを有し、複数の下位通信用ノードの各固定波長におけるトラフィック量が所定量を超えているか否かを判定する機能と、学習モデル内の光スイッチの状態と各波長のトラフィック量から算出された光スイッチの状態とを比較し、光スイッチの状態が一致している数を算出することで評価する機能と、学習モデル内での各波長の光スイッチの状態を逐一逆にした遷移状態を生成する機能と、各遷移状態において、各波長のトラフィック量を推定する機能と、推定されたトラフィック量に基づいて各遷移状態を評価する機能と、遷移状態のうち、最も高い評価を得た遷移状態を選択する機能と、遷移状態前の評価と遷移状態後の評価との差を報酬として算出する機能と、算出された報酬を累積することで価値として算出する機能とを有し、算出された価値が収束したときの遷移状態における光スイッチの設定情報を光波長選択型可変ADM装置に出力するようにしたことを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0022】
請求項5に記載の発明は、制御手段は、下位通信用ノードの各固定波長におけるトラフィック量を入力する機能と、入力されたトラフィック量の総量を算出する機能と、算出されたトラフィック量の総量と所定値とを比較した結果を出力する機能と、各固定波長における算出されたトラフィック量の総量が最大の下位通信用ノードを選択する機能と、現状のトラフィック量から算定した光スイッチ状態を教師信号として与えることにより重み付け係数を算出する機能と、出力された比較した結果と選択された下位通信用ノードとにそれぞれ算出された重み付け係数を乗算して累積する機能と、累積された結果と所定値とを比較することにより切り替える光スイッチを出力する機能とを有し、現状のトラフィック量から算定した光スイッチの状態を教師信号として学習させることにより得られた光スイッチの設定情報を光波長選択型可変ADM装置に出力するようにしたことを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0023】
請求項6に記載の発明は、制御手段は、下位通信用ノードの各固定波長における光スイッチの状態を表現した染色体を含む遺伝子モデルを有し、染色体を備える個体をランダムに複数生成することで初期集団を生成する機能と、遺伝子モデルにおける各個体の光スイッチの状態に対応するトラフィック量を推定する機能と、推定された結果に基づいて各波長のトラフィック量の占有率を演算する機能と、演算された占有率に基づいて染色体を評価する機能と、染色体の評価に基づいて適応度を算出する機能と、算出された適応度に基づいて親個体を選び交叉させることで子個体を生成する機能と、交叉された個体の染色体の一部を書き換える機能と、交叉された個体または染色体の一部を書き換えられた個体の適応度を算出する機能と、算出された適応度を定められた所定値と比較し、2つの親個体と2つの子個体のうち適応度が高い2個体を親個体として置換する機能とを有し、算出された適応度が一定の条件を満たしたときの個体における光スイッチの設定情報を光波長選択型可変ADM装置に出力するようにしたことを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0024】
請求項7に記載の発明は、制御手段は、光リング型ネットワークにおけるトラフィック量の増減に応じて、光リング型ネットワークに接続されるノードが追加または削除された場合に、波長選択情報を再設定する機能を有し、システム構成の変更に迅速に対応できるようにしたことを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0025】
請求項8に記載の発明は、制御手段は、光リング型ネットワークにおけるトラフィック量の増減に応じて、光リング型ネットワークに接続されている上位通信用ノードを、上位通信用ノードよりも多い波長数が割り当てられた光波長選択型可変ADM装置を含む上位通信用ノードに置換された場合に、固定波長の選択肢を増加させる機能を有し、トラフィックの輻輳を迅速に解消できることを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0026】
請求項9に記載の発明は、制御手段は、複数のノードまたは下位の複数の通信システムから障害が発生した場合に、複数のノードまたは下位の複数の通信システムが接続されるノードに対して光信号の分岐・挿入を停止させる機能を有することを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0027】
請求項10に記載の発明は、制御手段は、光リング型ネットワークに接続されている複数のノードのうち特定のノード間において、共通波長とは異なる共通の波長を共通波長として通信できるように波長選択型可変ADM装置の光スイッチを制御する機能を有することを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0028】
請求項11に記載の発明は、制御手段は、光リング型ネットワークに接続される複数のノードのうち、少なくとも1つのノードの光リング型ネットワークにおける接続場所が変更された場合に、波長選択情報を再設定する機能を有し、システム構成の変更に迅速に対応できるようにしたことを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【発明の効果】
【0029】
本発明にかかる波長多重光通信システムによれば、光リング型ネットワークにおける各波長のトラフィック量の変動に応じて各ノードの光スイッチを制御することで、効率的な波長利用を可能とし、トラフィックの時間変化やシステム構成の変更等に対して柔軟な対応ができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施形態について図1ないし図20を参照して、説明する。
図1に、本発明の一実施形態にかかる可変ADM装置を用いた波長多重光通信システムのシステム構成図を示す。波長多重光通信システム20は、光リング型ネットワーク22と上位の通信システムと接続するための上位通信用ノード24と、下位の通信システムと接続するための下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fと、トラフィック監視・制御装置30とにより構成される。
【0031】
ここで、図2に上位通信用ノード24の概略構成を示す。上位通信用ノード24は、可変ADM装置10Mおよびレイヤ3スイッチ28Mを備えている。なお、光電交換装置42Mは、レイヤ3スイッチ28Mの入出力が電気信号で、可変ADM装置10Mの入出力が光信号の場合に設けられるものであり、可変ADM装置10Mに内蔵されてもよい。また、レイヤ3スイッチ28Mの入出力インターフェースが光化されれば、省略することができる。
【0032】
可変ADM装置10Mは、光リング型ネットワーク22で使用される波長が割り当てられており、当該波長ごとに光スイッチを備え、レイヤ3スイッチ28Mから入力される光信号のうち光スイッチがオンに設定された波長の光信号が光リング型ネットワーク22に対して分岐・挿入される。レイヤ3スイッチ28Mには、可変ADM装置10Mに割り当てられている波長に対応する出力ポートを備える。
【0033】
レイヤ3スイッチ28Mは、出力ポート−アドレステーブル38MおよびWDMテーブル40を備える。
出力ポート−アドレステーブル38Mは、主にレイヤ3スイッチ28Mにおける出力ポートと下位通信システム等におけるアドレスとの対応関係を示したものである。ここで、アドレスは、通信をするための必要なIPアドレス等の各情報を含んでいる。出力ポート−アドレステーブル38Mにおける情報は、たとえば、ネットワーク管理者等により明示的に設定される。
WDMテーブル40は、光リング型ネットワーク22を伝搬する光の波長とレイヤ3スイッチ28Mの出力ポートとの対応を示したものである。図2に示すWDMテーブル40の設定例を図3に示す。ここで、図3に記載の各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fの各波長付された番号は、各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fのレイヤ3スイッチ28Sにおける各波長に対応する出力ポートに対して順に番号を付したものである。
【0034】
一方、トラフィック監視・制御装置30は、各出力ポートにおけるトラフィック量を監視・計測するためのトラフィック監視部32、および各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fにおける可変ADM装置10Sの光スイッチを制御することによって使用可能な帯域を調整してトラフィック制御を行う制御部34を備えている。トラフィック監視・制御装置30は、上位通信用ノード24に接続されている。
【0035】
トラフィック監視部32を備えることで、監視・計測された波長ごとのトラフィック量の状況が、たとえば、表示モニタに表示されることで、波長ごとのトラフィック量の状況が視覚的に把握できる。なお、ここで示しているトラフィック監視部32は、上位通信用ノード24に直接接続されている必要はなく、ネットワーク経由で遠隔場所から使用することも可能である。加えて、1つのトラフィック監視部32で光リング型ネットワーク22に接続されているすべての下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fにおける各波長のトラフィック量を監視することが可能である。
【0036】
また、上述したトラフィック監視部32で監視・計測されるトラフィック量の情報は、たとえば、ネットワーク管理ステーション(NMS)からSNMP(Simple Network Management Protocol)を利用して情報を取得することができる。また、SNMPの拡張機能であるRMON(Remote Monitoring)ではLANの通信状況の蓄積情報が得られる。RMONを用いることにより、その時点のトラフィック量のデータを得るばかりでなく、トラフィック量の蓄積情報、および、解析結果を利用することもできる。そして、この蓄積情報を解析することによって、可変ADM装置10Sの光スイッチの切り替えの予測制御にも役に立てられる。
【0037】
制御部34は、後述の各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fにおける可変ADM装置10Sの光スイッチのオン・オフ情報を示す光スイッチ設定テーブル36を備えている。
【0038】
また、図4に、下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fの概略図を示す。下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fは、可変ADM装置10Sおよびレイヤ3スイッチ28Sを備えている。なお、光電交換装置42Sは、レイヤ3スイッチ28Sの入出力が電気信号で、可変ADM装置10Sの入出力が光信号の場合に設けられるものであり、可変ADM装置10Sに内蔵されてもよい。また、レイヤ3スイッチ28Sの入出力インターフェースが光化されれば、省略することができる。
【0039】
可変ADM装置10Sは、各下位の通信システムで使用される波長が割り当てられており、当該波長ごとに光スイッチを備え、光リング型ネットワーク22から入力される光信号のうち光スイッチがオンに設定された波長の光信号が光リング型ネットワーク22に対して分岐・挿入される。
【0040】
レイヤ3スイッチ28Sは、その可変ADM装置10Sに割り当てられている波長に対応する出力ポートを備えている。
また、レイヤ3スイッチ28Sは、出力ポート−アドレステーブル38Sを備える。
出力ポート−アドレステーブル38Sは、主にレイヤ3スイッチ28Sにおける出力ポートと下位通信システムにおけるアドレス等との対応関係を示したものである。ここで、アドレスは、通信をするための必要なIPアドレス等の各情報を含んでいる。
出力ポート−アドレステーブル38Sにおける情報は、たとえば、ネットワーク管理者等により明示的に設定される。
可変ADM装置10Sにおける光スイッチのオン・オフは、前述の制御部34に備えられた光スイッチ設定テーブル36の設定に基づいて制御される。
【0041】
本発明にかかる波長多重光通信システム20では、光リング型ネットワーク22の内側に対して通信する波長と光リング型ネットワーク22の外側に対して通信する波長とを使い分け、情報量に応じて、割り当てる波長数を変えることによって、帯域の調整を行う。光リング型ネットワーク22内で用いられる波長領域として、主として下位通信用ノード26a,26b,・・・,26f間における通信を可能とするための共通波長が設けられる。共通波長は、すべての下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fに接続された可変ADM装置10Sa,10Sb,・・・,10Sfに共通して設定されている波長である。
他方、下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fには、主として上位通信用ノード24に接続された可変ADM装置10Mとの光通信のために利用される固定波長が設けられている。共通波長に割り当てられるか、固定波長に割り当てられるかは、たとえば、WDMテーブル40において、設定される。図3に示すWDMテーブル40では、λ11が共通波長、それ以外の波長が固定波長を示している。
なお、光リング型ネットワーク22内のトラフィックに偏りが生じている場合には、上述の各波長における使用目的をこえて柔軟に対応するようにしてもよい。
【0042】
図5は、本発明の一実施形態にかかる可変ADM装置を用いた波長多重光通信システムにおいて、光リング型ネットワーク22内のトラフィック量の変動に対応して下位通信用ノード26a,26b,26c,26dにおける固定波長の光スイッチを制御した例を示している。図5(a)は、下位通信用ノード26aにトラフィック量が集中している状態を示しており、図5(b)は、その他の下位通信用ノード26b,26c,26dのトラフィック量が増加した状態を示している。
【0043】
この波長多重光通信システム20は、光リング型ネットワーク22と、該光リング型ネットワーク22に接続されている上位通信用ノード24、および4台の下位通信用ノード26a,26b,26c,26dで構成されている。上位通信用ノード24は6波長に対応しており、下位通信用ノード26aは、λ11、λ12、λ13、λ14に、下位通信用ノード26bは、λ11、λ12、λ15に、下位通信用ノード26cは、λ11、λ12、λ15、λ16に、下位通信用ノード26dは、λ11、λ12、λ13、λ14、λ15にそれぞれ対応している。なお、図中の下位通信用ノード26a,26b,26c,26dに添えて書かれている波長名の横に記載の○と×は、その波長に対する分岐・挿入が行われているか否かを示している。たとえば、λ11「○」という状態では、波長λ11の光信号が分岐・挿入が行われている状態を示している。
【0044】
図5(a)では、下位通信用ノード26aのすべての波長がオン状態(分岐・挿入されている状態)となっていることから、多くのトラフィック量に対応可能な状態を示しており、下位通信用ノード26b、下位通信用ノード26c、下位通信用ノード26dではλ11だけがオン状態となっていることから、トラフィック量が少ない状態といえる。
図5(b)では、下位通信用ノード26aの波長λ11のみがオン状態であり、下位通信用ノード26b、下位通信用ノード26c、下位通信用ノード26dの分岐・挿入可能な波長が、それぞれ2、1、3と増加していることが分かる。
すなわち、図5(a)から図5(b)における時間変化に伴って、下位通信用ノード26aのλ12,λ13,λ14が、オン状態からオフ状態に変化し、下位通信用ノード26bのλ12,λ15、下位通信用ノード26cのλ16、下位通信用ノード26dのλ12,λ13,λ14が、オフ状態からオン状態に変化している。
【0045】
図6において、図5における波長多重光通信システム20におけるWDMテーブル40を示す。ここで、図6に記載の各下位通信用ノード26a,26b,26c,26dの各波長に付された番号は、各下位通信用ノード26a,26b,26c,26dのレイヤ3スイッチ28Sにおける各波長に対応する出力ポートに対して順に番号を付したものである。また、図7(a)に、図5(a)に対応する光スイッチ設定テーブル36を、図7(b)に、図5(b)に対応する光スイッチ設定テーブル36を示す。図7(a)(b)に示すように、制御部34によって割り出された切り替えるべき光スイッチに基づいて、光スイッチ設定テーブル36の情報が書き換えられ、その情報が、対応する下位通信用ノード26a,26b,26c,26dに送信されることで、可変ADM装置10Mの光スイッチのオン・オフ制御が行われる。なお、図7において、「1」は光スイッチがオンの状態、「0」はオフの状態を示す。
【0046】
次に、トラフィック量の状況に応じてオン・オフすべき光スイッチを割り出すための方法について説明する。本発明にかかる波長多重光通信システムでは、光リング型ネットワーク形態を採用していることから、スター型ネットワーク形態を採用している従来のPONやGE−PONシステムとは異なった制御となる。つまり、光リング型は情報が循環するような形態であるため、光リング内の通信では上位通信用ノード24を経由することなく信号の送受信ができる。
【0047】
本発明にかかる可変ADM装置を用いた波長多重光通信システムのトラフィック制御は、各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fの可変ADM装置10Sにおいて使用する波長の光スイッチをオン・オフすることで、通信に使用する帯域を変化させることにより行う。
【0048】
本発明にかかる波長多重光通信システム20に使用されるトラフィック制御には、2つの基本的な制御方法がある。第1の制御方法は、トラフィック量を計測し、その計測値に応じて可変ADM装置10Sの光スイッチをオン・オフ、すなわち、波長の使用不使用を切り替えることにより帯域制御を行う方法である。第2の制御方法は、光リング内にパケットが入った時点で、パケットのあて先IPアドレスを調べ、そのあて先アドレスを持つ装置が光リング内にあるか光リング外にあるかを判断し、条件別のアルゴリズムにより光スイッチの切り替えを行うことにより帯域制御を行う方法である。
【0049】
まず、第1の制御方法の実施例を、図8を用いて説明する。
図8において、図1のすべての下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fにおけるトラフィック量を計測し、波長毎にトラフィック量の総量を求めて、それが所定量を超えているかどうかを調べる(S102)。すべての波長で所定量を超えていない場合は、波長の使用不使用を決定する光スイッチの切り替えを行わず、S114に進む。
【0050】
トラフィック量の総量が所定量を超えている波長が存在する場合は、その波長において最もトラフィック量の多い下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fを抽出する(S104)。抽出された下位通信用ノードにおいて当該波長を別の波長に切り替えるための準備として、抽出された下位通信用ノード以外の固定波長のトラフィック量が所定量を超えているか否かを調べ、所定量を超えていない固定波長が存在する場合は、切り替えるトラフィックをそれまでのトラフィック量に加算して所定量を超えるか否かを調べる(S106)。そして、加算したトラフィック量が所定量を超えていない場合は、新たな固定波長を割り当てられることなく、現在設定されている固定波長の範囲内でトラフィックが調整される(S108)。すべての固定波長で加算したトラフィック量が所定量を超えている場合は、新しい波長を割当てる(S110)。
波長毎のトラフィック量の総量が所定量を超える波長が存在する場合は、トラフィック量が所定量を超える波長がなくなるまで、S104から繰り返す(S112)。
【0051】
ここで、新しい波長を割り当てる処理(S110)を実行する際には、当該波長に対応する光スイッチをオンとする情報に基づいて、制御部34の光スイッチ設定テーブル36が書き換えられる。次に、書き換えられた光スイッチ設定テーブル36の情報に基づいて、書き換えられた光スイッチの下位通信用ノードに対して光スイッチ設定テーブル36の情報が送信される。そして、光スイッチ設定テーブル36の情報を受信した下位通信用ノードは、受信した情報に基づいて、可変ADM装置10Sの光スイッチの切り替えを行うと共に、対応する下位通信用の出力ポート−アドレステーブル38Sが書き換えられる。
各下位通信用ノードに対して、光スイッチ設定テーブル36の情報を送信する際には、光信号に専用の波長を割り当てることで、既存の光リング型ネットワーク22を利用することができる。そうすることで、別途、専用の回線を設けることなく光スイッチ設定テー
ブル36を送信することができる。なお、別途、専用回線を設けてもかまわない。
【0052】
また、ここで2つのトラフィック量について所定量という記述があるが、共通波長と固定波長とでは使用目的が異なっていることから、これらの所定量は必ずしも一致するものではない。
【0053】
固定波長は、下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fと上位通信用ノード24との通信を主としており、その波長を利用している下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fは限定される。
他方、共通波長は、光リング型ネットワーク22内での通信を主な役割とすることから、基本的にはすべての下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fが利用する。よって、共通波長の使用頻度が高く、共通波長でしか通信できない下位通信用ノード26a,26b,・・・,26f間の通信も存在することから、共通波長に対する所定量は、固定波長に対する所定量より低く設定される。また、共通波長の所定量の設定値は、その波長を利用している下位通信用ノードの数や共通波長数にも影響される。
【0054】
上記手順により固定波長の光スイッチの切り替えを行うが、S100からS112までの処理は、トラフィック量の増大に対応するための使用波長数を増やす手順であり、トラフィック量が減少した時に波長数を減じるための機能は有していない。よって、トラフィック量が減少した場合などに生じる光スイッチの冗長状態に対応する必要がある。すなわち、使用波長数を減少させる処理が必要となる。
【0055】
この冗長を改善するための処理を次に適用する。まず、波長毎のトラフィック量が所定量以下か否かを調べる(S114)。これは、S102と同じ処理である。波長毎のトラフィック量が所定量を超えている場合は、トラフィック量増大に対応する処理として光スイッチの切り替えを行うため、S102の処理に戻る。これは、使用波長を減少させる処理を行っている最中にトラフィック量が増大した場合に対応するためのものである。
次に、波長毎のトラフィック量が所定量を超えていない場合は、光スイッチの冗長状態を解消するために、トラフィック量が所定量より少ないかどうかを判断する(S116)。この所定量は、前述の所定量とは異なり、光スイッチをオフにするかどうかを判断するためのものであって、トラフィック量が0に近い状態で設定される。トラフィック量が所定量より少ない波長があれば、その波長の光スイッチをオフにしてS114に戻る(S118)。トラフィック量が所定量より少ない波長がなくなれば、処理を終了する(S120)。
【0056】
ここで、所定量よりも少ない波長がある場合の処理(S116)を実行する場合においては、当該波長に対応する光スイッチをオフにする情報に基づいて、制御部34の光スイッチ設定テーブル36が書き換えられる。次に、書き換えられた光スイッチ設定テーブル36の情報に基づいて、書き換えられた光スイッチの下位通信用ノードに対して光スイッチ設定テーブル36の情報が送信される。そして、光スイッチ設定テーブル36の情報を受信した下位通信用ノードは、受信した情報に基づいて、可変ADM装置10Sの光スイッチの切り替えを行うと共に、対応する下位通信用の出力ポート−アドレステーブル38Sが書き換えられる。
各下位通信用ノードに対して、光スイッチ設定テーブル36の情報を送信する際には、光信号に専用の波長を割り当てることで、既存の光リング型ネットワーク22を利用することができる。
【0057】
次に、可変ADM装置を利用した波長多重光通信システム20におけるトラフィック制御の第2の制御方法の実施例について図9を用いて説明する。この場合においても光スイッチの切り替えは、主として固定波長の光スイッチに対して行われ、補助的に共通波長の光スイッチに対して行われる。
この制御方法は、図1に示している上位通信用ノード24および下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fを通過するパケットのあて先IPアドレスとその時点のトラフィック量に着目し、各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fに入ってきたパケットのあて先IPアドレスに基づいて光リング型ネットワーク22の内外いずれに対して送信されるものかを判別し、固定波長と共通波長とを使い分けることによりトラフィック制御を行うものである。
【0058】
まず、各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fにおいてパケットを受信し(S200)、あて先IPアドレスが光リング型ネットワーク22内に接続された下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fのいずれかの下に存在するか否かを判定する(S202)。あて先IPアドレスが光リング型ネットワーク22の内側に存在しない場合、すなわち、パケットが上位通信用ノード56を経由して光リング型ネットワーク22の外側に送出される場合は、当該通信に固定波長を割当て、あて先IPアドレスが光リング型ネットワーク22に接続された下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fの下に存在する場合は、当該通信に共通波長を割当てることを原則とする。
あて先IPアドレスがリングの外側に存在する場合には、使用されている固定波長のトラフィック量が所定量を超えているか否かを調べる(S204)。いずれかの固定波長のトラフィック量が所定量を超えていない場合は、当該通信にそのいずれかの固定波長を割り当てる(S206)。
【0059】
いずれの固定波長のトラフィック量も所定量を超えている場合は、共通波長のトラフィック量を所定量と比較する(S208)。いずれかの共通波長のトラフィック量が所定量より小さい場合は、当該通信にそのいずれかの共通波長を割り当てる(S210)。一方、いずれの共通波長のトラフィック量も所定量よりも大きい場合は、使用されていない波長(すなわち、トラフィック量が0の波長)の有無を判断する(S212)。使用されていない波長がある場合は、当該通信にその使用されていない新しい波長を割り当て(S214)、さらに、新しく割り当てられた波長に当該アドレスを割り当てるため、出力ポート−アドレステーブル38Sの書き換えを行う。また、使用されていない波長がない場合には、当該通信に共通波長を割り当てる(S216)。
【0060】
あて先IPアドレスが光リング型ネットワーク22の内側に存在する場合は、パケットが経由する下位通信用ノードに接続されている可変ADM装置10Sと共通の固定波長を持っているか否かを調べる(S218)。共通の固定波長がない場合は、当該通信に共通波長を割り当てる(S220)。
共通の固定波長がある場合は、使用されている固定波長のトラフィック量が所定量を超えているか否かを調べる(S222)。いずれかの固定波長のトラフィック量が所定量を超えていない場合は、当該通信にそのいずれかの固定波長を割り当てる(S224)。
いずれの固定波長のトラフィック量も所定量を超えている場合は、共通波長のトラフィック量を所定量と比較する(S226)。いずれかの共通波長のトラフィック量が所定量より小さい場合は、当該通信にそのいずれかの共通波長を割り当てる(S228)。一方、いずれの共通波長のトラフィック量も所定量よりも大きい場合は、使用されていない波長(すなわち、トラフィック量が0の波長)の有無の判断がなされる(S230)。使用されていない波長がある場合は、当該通信およびその使用されていない新しい波長を割り当て(S232)、さらに、新しく割り当てられた波長に当該アドレスを割り当てるため、出力ポート−アドレステーブル38Sの書き換えを行う。また、使用されていない波長がない場合には、当該通信に共通波長を割り当てる(S234)。
【0061】
これらは、トラフィック量に対して自動的に光スイッチの切り替えを行うものであるが、光スイッチを人為的に切り替えて制御したい時には、自動モードから手動モードに切り替え、手動で光スイッチを切り替えるようにしてもよい。
【0062】
トラフィック量は時々刻々変動しているものであるが、時間、日や週など周期的なパターンを持った変動をすることが多い。よって、ある周期的なパターンを持ったトラフィック量の変動が存在する場合には、そのようなトラフィック量の変動を予測した帯域制御が有効になる。つまり、トラフィック量の周期性を持った変動に対応する可変ADM装置10Sの波長選択の切り替えを過去の履歴から学習し、その学習結果に基づいて帯域制御を行うようにしてもよい。
【0063】
たとえば、オフィスビルでは、始業前までのトラフィック量が少なく、始業後にトラフィック量が増加し、終業後にトラフィック量が減少する、というような周期的な変動を持つと考えられる。また、大学などでは、授業の行われている時間帯は、講義棟でのトラフィック量が増加し、研究室などのある研究棟でのトラフィック量は少ないのに対し、授業が終了した後は、講義棟でのトラフィック量が減少し、研究棟でのトラフィック量が増加する。このようなトラフィック量の変動パターンが存在する場合には、トラフィック量の変動を予測した帯域制御が有効になる。
【0064】
具体的には、たとえば1日の変化を見る場合、データ取得時間、光スイッチの状態、トラフィック量をパラメータとし、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズム、強化学習などのアルゴリズムを利用することにより、切り替え発生時間と各可変ADM装置10Sの光スイッチの状態を学習させ、切り替える単位時間ごとに学習結果を基にトラフィック制御を行うようにしてもよい。
【0065】
次に、本発明にかかる可変ADM装置を用いた波長多重光通信システムのトラフィック制御における上述の制御方法に学習アルゴリズムを取り入れた第3の制御方法の説明をする。なお、以下に述べる制御は、固定波長に対応する光スイッチに対してのみ行われ、共通波長に使用される光スイッチに対しては行われない場合について述べるが、本発明は、これに限定されるものではない。
図1に示すような光リング型ネットワーク22に接続された各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fの各々の固定波長におけるトラフィック量の状態としては、(1)ほとんどトラフィックが流れていない状態、(2)多少のトラフィックが流れている状態、(3)各ノードの各々の固定波長におけるトラフィック量の許容範囲の限界値に近いトラフィックが流れている状態、の3つの状態が考えられる。ここで、トラフィック量の制御を行う必要がある状態とは、(3)の状態である。この状態では、トラフィック量が帯域の許容範囲において100%に近い状態であり、よって、輻輳が発生している可能性があるため、他の波長に割り振るための光スイッチの切り替えを行う必要がある。
【0066】
図10に、本発明にかかる可変ADM装置を用いた波長多重光通信システムのトラフィック制御における第3の制御方法の基本処理フローを示す。
本制御方法では、環境に応じて切り替えるべき光スイッチの割り出し処理(S302)を行った上で、実際の光スイッチの切り替え処理(S304)を行う。そして、リアルタイム処理の場合は、光スイッチの割り出し処理(S302)に戻り、リアルタイム処理でない場合は、ここで終了(S306)する。なお、所定の時間間隔をおいて光スイッチの割り出し処理(S302)を行う場合には、前回の光スイッチの状態を初期値として用いると収束までの時間を短縮することができる。なお、光スイッチの切り替えを行う前の初期状態は、たとえば、すべてオン状態とし、輻輳が起こらないように設定される。
環境に応じた光スイッチの割り出し処理(S302)には、たとえば、強化学習、ニューラルネットワーク等のようなAI技術を用いることができる。
【0067】
続いて、環境に応じた光スイッチの割り出し処理(S302)として、強化学習アルゴリズムを用いた第3の制御方法の実施例について説明する。
ここでは、強化学習により、光スイッチが決定された後、光スイッチの切り替え処理(S304)を行う。なお、光スイッチの切り替え処理(S304)の詳細については、後述する。
【0068】
本制御において使用する強化学習アルゴリズムは、学習モデルを用いて反復方策評価を行うアルゴリズムである。すなわち、学習モデル内での光スイッチの状態から、ある一定の方策に基づいて遷移可能な状態を抽出し、それぞれの状態について評価を行う。
評価は、各固定波長のトラフィック量から算出された光スイッチの状態と学習モデルの光スイッチ状態との比較により行う。各固定波長のトラフィック量から算出された光スイッチの状態とは、各下位通信用ノードの各固定波長のトラフィック量を計測し、計測値が所定値を超えている場合を「1」とし、超えていない場合を「0」として算定される。そして、学習モデル内の光スイッチの状態と各固定波長のトラフィック量から算出された光スイッチの状態とを比較し、たとえば、各光スイッチの状態が一致している数を算出する。この一致数が、すなわち、評価である。なお、この評価は、一致しない数によって行うようにしてもよい。
【0069】
遷移可能な状態は、現在の学習モデル内での各固定波長の光スイッチ状態を逐一逆にすることにより行われる(これを、行動という)。すなわち、オンの場合はオフに、オフの場合はオンすることにより行われ、下位通信用ノードの固定波長の配列順に入れ替えを行う。
そして、各遷移状態においての各波長のトラフィック量の推定を行う。続いて、推定されたトラフィック量に基づいて、上述の評価方法により各遷移状態における評価を算出する。算出された評価値のうち、最も高い評価値を得た遷移状態における個体を選択する。
【0070】
次に、上述の方法で算出された評価を用いて、報酬を算出する。
報酬は、現在の光スイッチの状態の評価と次の状態に遷移したときの評価との差により算出する。すなわち、トラフィック量から求めた光スイッチ状態と学習モデル内での光スイッチ状態との差を求める。差とは、固定波長の光スイッチの状態(オン・オフの状態)が一致しているか否かを数量的に表現したものであり、一致している個数もしくは異なっている個数を算出する。その個数が評価であって、現在の光スイッチ状態の評価と次の状態に遷移したときの評価との差が報酬として与えられる。
続いて、価値が算出されるが、価値は報酬の累積により求められる。
【0071】
また、このとき、上述した行動に対する価値関数による評価もあわせて行う。
ここで初期状態の価値関数Vk=0とする。
価値関数が高い状態を選択するものとする。ただし、入れ替えは1回だけと限定しており、価値が上がる場合はVk+1とし、価値が上がらない場合はVk−1とする。価値関数が高い状態が複数ある場合は、その中の1つを選択する。
この評価と行動を繰り返し、価値関数の値がある一定の値に収束したときに終了する。
このとき、割り出された光スイッチの状況とトラフィック量との計測結果とに基づいて、各波長のトラフィック量の占有率を推定し、評価を算出する。
【0072】
また、このような強化学習アルゴリズムによるリアルタイム処理と同時に予測システムとして定刻における光スイッチのオン・オフパターンを用い予測切り替えを行い、かつ、その時間における実際のトラフィック量の情報を得ることにより、トラフィック量の変動と予測切り替え時間、もしくは、予測切り替えの波長における光スイッチに相違が生じた場合には、これらの情報をフィードバックし、予測システムにおける光スイッチ状態を修正する。加えて、予測状態からある一定範囲以上の変化を検知した時点でフィードフォーワード制御を行い、光スイッチの切り替えを行うようにしてもよい。また、このような状況が生じた時、ネットワーク管理者に通報した上で設定してもよい。なお、トラフィック量のデータ計測間隔は、任意に設定することができる。
【0073】
次に、環境に応じた光スイッチの割り出し処理(S302)として、ニューラルネットワークを用いた第3の制御方法の実施例について説明する。
図11に、前述の図1のシステム構成におけるニューラルネットワークモデルの構成例を示す。ネットワークモデルは、入力層50、第1中間層52、第2中間層54、出力層56の4層で構成される。入力層50では、各下位通信用ノードの各波長のトラフィック量を取り込む。ただし、ここでは入力の対象となる各下位通信用の各波長は、固定波長に限定している。
【0074】
第1中間層52のA部では、入力された波長ごとに[数1]に基づいて、トラフィック量の総和を求める。
【0075】
【数1】
【0076】
ここで、TRAFF(λi,j)は、下位通信用ノードjにおけるλiの波長のトラフィック量を示す。これにより得られた各波長におけるトラフィック量の総和に対して、所定量を超えているかどうかの閾値処理が行われる。たとえば、越えている場合は「1」が、超えていない場合は「0」が、出力される。
第1中間層52のB部では、各波長におけるトラフィック量が最大のノードを抽出するための処理が行われる。すなわち、[数2]に基づいて、すべての下位通信用ノードにおけるトラフィック量を比較し、最大トラフィック量のノードを選択する。
【0077】
【数2】
【0078】
そして、トラフィック量が最大のノードは「1」、その他のノードは「0」が出力される。
【0079】
第2中間層54には、第1中間層52のA部とB部の出力が入力される。そこで、トラフィック量の最も多い下位通信用ノードの波長の割り出しとその波長のトラフィック量が所定量を超えているか否かとから、たとえば、[数3]に基づいて、変更する必要のある固定波長の光スイッチの割り出しを行う。
【0080】
【数3】
【0081】
ここで、Wkは重み付けであり、Xkは、第1中間層52におけるA部およびB部の出力値を示している。たとえば、Wkの初期値としては0.5が選択される。
出力層56では、第2中間層54より出力されてきた値に対して、所定量の閾値を設定することで、所定量より値が高い場合は、「1」を、低い場合は、「0」を出力する。これにより、切り替えるべき光スイッチの状態が出力される。
【0082】
そして、この出力層56に対して現状のトラフィック量から算定した光スイッチ状態を教師信号として与えることにより、たとえばバックプロパゲーションによる重み付け値の学習を行う。
ここで行っている教師信号を与える処理において、たとえば、光スイッチを切り替える必要があるほどトラフィックが流れている状態では、トラフィック量が帯域の100%となっている可能性があり、輻輳が生じている可能性がある。そのため、他の波長に割り振るための光スイッチの切り替えを行う必要があり、出力層56からの出力結果に基づき、切り替えるべき光スイッチの割り出しを行う。
【0083】
このように、各ノードの各波長のトラフィック量が入力されることにより、各ノードの光スイッチのパターンが決まることになる。
これにより、ある時間間隔、例えば、1時間間隔で学習させることにより、光スイッチ状態を求め、それを用いて、1日、1週間などの周期に応じた予測切り替えを行うことが可能となる。
【0084】
次に、遺伝的アルゴリズムを用いた制御方法の実施例について説明する。
図12(a)に、前述の図1のシステム構成における染色体の構成例を示す。この染色体は、各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fの固定波長により構成される。図12(a)では、各ノードに割り当てられている固定波長を順に列挙している。
【0085】
図12(b)に遺伝的アルゴリズムによる波長切り替え処理の処理フローを示す。
最初に、初期集団を生成する(S400)。この初期集団を構成する染色体の数量は、ネットワークシステムの規模に依存している。すなわち、各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fにおける各固定波長の数量に対応しており、たとえば、ここではN個とする。各染色体は、各々遺伝子を保持している。各遺伝子は、「1」もしくは「0」の数値を持ち、各ノードの各光スイッチのオン・オフの状態に対応している。初期集団の個体数はM個とし、各個体における各染色体の遺伝子の初期値はランダムに与えられている。まず、この初期状態における個体の各染色体の評価を行う。なお、評価の値は、後に述べる適応度の算出に利用される。
【0086】
評価は、固定波長のトラフィック量の計測結果を基に行う。
まず、M個の各個体における光スイッチの状況とトラフィック量の計測結果とに基づいて、各波長のトラフィック量の占有率を推定し、推定された占有率に基づいて各染色体を評価する。評価は、占有率が80%以上または10%以下の場合、染色体毎に評価として「1」が加算される。このように、各個体におけるすべての染色体について評価を行った結果、得られた値を染色体数Nで除算し、「1」から差し引くことにより、適応度が算出される。
【0087】
次に、選択処理を行う(S402)。選択処理は、M個の集団の中から2つの親個体を選ぶ。そして、選択された親個体を交叉させ、2つの子個体を生成する交叉処理を行う(S404)。この交叉を生じさせる確率はPcとする。
また、交叉した後には突然変異処理を行う(S406)。突然変異処理は、交叉後の各染色体について染色体の一部を書き換える。ここでは、染色体内のi番目の遺伝子を書き換える。iは染色体の長さNより小さい値をとる。書き換えは、ランダムに「0」または「1」に書き換える。この突然変異を発生させる確率はPmとする。
【0088】
次に、以上のような遺伝子操作を行った個体についてトラフィック量の推定を行って適応度を算出することで評価を行う(S408)。評価は、上述したように、M個の初期集団を評価した方法と同一とする。適応度が所定値より大きい値である場合は、光スイッチの切り替え処理(S412)に移行し、所定値より小さい場合は置換処理(S410)に移行する。光スイッチの切り替え処理(S412)への移行を行うか否かについては、適応度が所定値以下か否かにより判断する。つまり、適応度が小さい状態で光スイッチの切り替えを行った場合、トラフィック量に対応していないため輻輳状態を招くおそれがある。そのため適応度が所定値より小さい状態では、その世代での個体の遺伝子状態に基づく光スイッチの切り替えを行わない。光スイッチの変更は所定値以上の適応度になった世代からの適応度の最も高い個体を採用する。これにより、トラフィック量に対応していない世代でのトラフィック量に対応していない光スイッチ状態を回避することができる。
【0089】
置換処理(S410)は、たとえば、2つの親個体と2つの子個体のうち適応度が高い2個体を親個体として置換処理する。置換処理後は選択処理に戻り上記の処理を繰り返す。光スイッチ切り替え処理(S412)は、同一の下位通信用ノードの中の光スイッチがオフになっている波長を固定波長に割当てる処理を行う。光スイッチがオフになっている波長がない場合には、他のトラフィック量の少ない固定波長に割当てる。光スイッチ切り替え処理(S412)の詳細については、後述する。
この光スイッチ切り替え処理(S412)を行った後に、再び上述した方法と同様の方法で評価を行い、適応度が閾値以下の場合は、S410に戻って置換処理を行い、選択処理から処理を繰り返す。適応度が閾値以上の場合は、処理を終了する。
【0090】
この構成により、リアルタイムの光スイッチの切り替えに対応することも可能であるが、切り替える時間間隔ごとの学習パターンを生成し、予測切り替えを行うようにしてもよい。
たとえば、一週間のデータを集め、その集めたデータに基づいて学習パターンを作成し、予測切り替えに利用することができる。
【0091】
次に、図10における光スイッチの切り替え処理(S304)および図12における光スイッチの切り替え処理(S412)について図13により説明する。
まず、制御部34において光スイッチ割り出し処理(S302)または評価処理(S408)により割り出された光スイッチのオン・オフ情報が出力されると(S500)、該オン・オフ情報に基づいて制御部34の光スイッチ設定テーブル36が書き換えられる(S502)。続いて、書き換えられた光スイッチ設定テーブル36の情報に基づいて、書き換えられた光スイッチに対する下位通信用ノードに対して光スイッチ設定テーブル36の情報が送信される(S504)。そして、光スイッチ設定テーブル36の情報を受信した下位通信用ノードは、受信した情報に基づいて、可変ADM装置10Sの光スイッチの切り替えを行う(S506)。また、光スイッチ設定テーブル36の書き換えに伴って、対応する下位通信用ノードの出力ポート−アドレステーブル38Sが書き換えられ(S508)、終了(S510)する。
【0092】
上記、各制御方法において、光スイッチをオンにする処理と光スイッチをオフにする処理とを分割して行うようにしてもよい。すなわち、図14に示すように、トラフィック量の増大に対応するブロック1(S602)と光スイッチ状態の冗長に対応するブロック2(S604)の2つのブロックを設け、これらをトラフィック量に応じて交互に実行されるようにすることで、固定波長の割り当てを最適化させることができる。
ブロック1(S602)は、トラフィック量に対して割り当てられている波長数が、少ない状態に対応して光スイッチをオンする機能を持っている。
対して、ブロック2(S604)は、固定波長のトラフィック量が所定量より少なくなった場合、その固定波長の光スイッチ状態をオフにする機能を持っており、ブロック1(S602)における固定波長の冗長性を改善する役割を持っている。
【0093】
たとえば、遺伝的アルゴリズムを利用した光スイッチの切り替えは、評価が、トラフィック量の占有率が80%以上という基準のみで行うと、必要である光スイッチがオフになっていることはないが、不必要な光スイッチがオンになっている可能性がある。そのため、図14に示すような処理フローを利用する場合は、まず、遺伝的アルゴリズムによる処理1を行う(S602)。この遺伝的アルゴリズムによる処理1は、上記の図12(b)において、評価基準をトラフィック量が帯域のたとえば80%以上という基準としたものである。次の処理として、遺伝的アルゴリズムによる処理2を行う(S604)。この遺伝的アルゴリズムによる処理2では、図12(b)において、評価基準を変える。つまり、トラフィック量が帯域のたとえば10%以下という基準とすることにより、不必要な光スイッチをオフにすることが可能である。
【0094】
なお、また、上記2つの基本の制御方法、および、学習アルゴリズムによる制御方法は目的によって使い分けて使用することができ、さらに、条件によりこれらを組合せて用いることにより、より適応性に優れた光リング型ネットワークによる波長多重光通信システムを構成することができる。
【0095】
以上のようなトラフィック制御を行うことにより、ネットワーク構成の環境変化に対して柔軟に対応することが可能な波長多重光通信システムを構成することができる。
続いて、以下、本発明にかかる可変ADM装置を用いた波長多重光通信システムによる環境変化への対応機能の例について述べる。
【0096】
まず、図15に、小規模なトラフィック量の増加に対する小規模な光リング型ネットワーク22による波長多重光通信システム20の構成の例を示す。小規模な拡張を行う際には、ノードを追加することで対処が可能である。ここでは、上位通信用ノード24の入れ換えは行わず、下位通信用ノード26c,26d,26eの3台のノードを追加することで拡張している。上位通信用ノード24の持つ波長帯域の範囲内、ここでは4波長の範囲内でのノードの拡張が可能となる。
【0097】
図15(a)が増設前、図15(b)が増設後を示している。増設前では、上位通信用ノード24と2台の下位通信用ノード26aおよび下位通信用ノード26bとで構成される。これに対し、増設後では、上位通信用ノード24と5台の下位通信用ノード26a,26b,・・・,26eとで構成される。各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26eに対応する波長数が、2波長、3波長で構成されるような小規模でも光リング型ネットワーク22システムは成立する。
【0098】
また、下位通信用ノード26c,26d,26eが増設されるに伴って、制御されるべき固定波長の光スイッチも増加する。そのため、上述の制御方法を用いて本発明にかかる波長多重光通信システム20において増設された下位通信用ノード26c,26d,26eを含めて制御するために、レイヤ3スイッチ28Mにおける出力ポート−アドレステーブル38M、WDMテーブル40および制御部34における光スイッチ設定テーブル36に対して、追加の再設定が行われる。
【0099】
図16は、本発明にかかる可変ADM装置を用いた波長多重光通信システム20におけるトラフィック量の増大に対する図15とは異なる構築例を示している。図16(a)は、構築前の光リング型ネットワーク22を示しており、上位通信用ノード24と3台の下位通信用ノード26a,26b,26cとによって構成されている。上位通信用ノード24は、λ11、λ12、λ13、λ14の波長に対応しており、下位通信用ノード26aは、波長λ11、λ12、下位通信用ノード26bは、λ11、λ13、下位通信用ノード26cは、λ11、λ14に対応している。図16(b)は、構築後、すなわち、トラフィック増に対応した光リング型ネットワーク22を示しており、上位通信用ノード24と5台の下位通信用ノード26a,26b,26c,26d,26eとによって構成されている。
【0100】
図15(a)と異なる点は、上位通信用ノード24が4波長対応からλ11、λ12、λ13、λ14、λ15、λ16、λ17、λ18の8波長対応に変更した点、および、λ11に対応した下位通信用ノード26dとλ11、λ12、λ17、λ18に対応した下位通信用ノード26eとλ11、λ12、λ13、λ14に対応した下位通信用ノード26fを増設したことである。つまり、4波長分の帯域を新しく拡張する下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fに割り当てることができる。ここでは下位通信用ノード26d,26e,26fの3台が拡張されている。波長の使用状態から、更なる拡張も可能である。このように大規模な拡張が可能なシステムを持ち合わせている。
【0101】
また、上位通信用ノード24の入れ換えおよび下位通信用ノード26d,26e,26fが増設されるに伴って制御されるべき固定波長の光スイッチも増加する。そのため、上述の制御方法を用いて本発明にかかる波長多重光通信システム20において増設されたノードを含めて制御するために、レイヤ3スイッチ28Mにおける出力ポート−アドレステーブル38M、WDMテーブル40および制御部34における光スイッチ設定テーブル36に対して、追加の再設定が行われる。
【0102】
このように、本発明にかかる波長多重光通信システム20は、上位通信用ノード24を変更して帯域増を図る大規模な拡張にも、上位通信用ノード24の帯域内での下位通信用ノードを追加する比較的小規模な拡張にも、レイヤ3スイッチ28Mにおける出力ポート−アドレステーブル38M、WDMテーブル40および制御部34における光スイッチ設定テーブル36を再設定するだけで対応することができるとした、柔軟な拡張性を持ったシステムである。また、固定波長の選択肢を増加させることで、トラフィックの輻輳状態を迅速に解消できるとした、波長多重光通信システムである。
【0103】
なお、光スイッチの切り替えの制御方法に関しては、上述した2つの基本の制御方法が適用可能である。また、2つの基本の制御方法を併用しながら学習を行うことにより、さらに予測切り替えシステムの構築が可能となる。システム構成が変更しても本発明にかかる波長多重光通信システム20は、そのシステム構成の変更に対して迅速に対応することが可能である。
【0104】
図17は、可変ADM装置を用いた波長多重光通信システム20において、下位通信用ノード26a,26b,26c,26d、もしくは、下位通信用ノード26a,26b,26c,26dより下位の通信システムにおけるネットワークに障害が生じた場合のトラフィック量の制御に対する説明図である。図17(a)は、下位通信用ノード26aにおける障害発生前を示しており、図17(b)は、下位通信用ノード26cにおける障害発生後を示している。これらのシステムは、たとえば、上位通信用ノード24と4台の下位通信用ノード26a,26b,26c,26dとで構成される。
【0105】
ここでは、下位通信用ノード26aに障害が生じた条件で示す。図17(a)では、波長λ11、λ12、λ13の3つがオン状態となっているが、図17(b)では、すべてオフ状態である。つまり、下位通信用ノード26aからは分岐・挿入されていない。この状態では、下位通信用ノード26aや下位通信用ノード26aより下位の通信システムに情報が流れることがない。
【0106】
図17を用いて、下位通信用ノード26aより下位の通信システムにおけるシステム障害により、情報を流さないような設定をする場合について説明する。基本的に、レイヤ3スイッチ、もしくは、それより下位の通信システムにおけるユーザ側で障害が生じ下位通信用ノード26a以下の通信を止める必要性が生じた場合、可変ADM装置10Saの光スイッチをオフにすることにより対処することができる。この可変ADM装置10Saを利用した波長多重光通信システムでは、通過させたくない場所にパケットを通過させないだけでリング内の他の下位通信用ノード26b,26c,26dで必要なパケットには影響を与えないように構成できる。なお、情報を遮断された下位通信用ノード26a以下へのパケットについては、行き先が遮断されているためパケットの有効期間を示すTTL(TIME TO LIVE)がカウントされているためそのパケットは廃棄される。
【0107】
また、故障が生じた場合のトラフィック量の制御については、故障したことにより使用している下位通信用ノード数が減少することになる。そのため、そのままの光スイッチの予測切り替えシステムを用いることができるが、暫定的に2つの基本の制御方法によるシステムを利用し、復旧後元の予測切り替えシステムに戻す処理を採用することもできる。このように本発明にかかる波長多重光通信システム20は、適応性に優れている。
【0108】
図18は、可変ADM装置を用いた波長多重光通信システム20の光リング型ネットワーク22において、データの通信量が増加している下位通信用ノード間に対して同じ波長を割当てている状態の例を示している。この光リング型ネットワーク22は、上位通信用ノード24と4つの下位通信用ノード26a,26b,26c,26dとで構成されている。たとえば、図18に示すように、下位通信用ノード26aと下位通信用ノード26cとの間、および下位通信用ノード26bと下位通信用ノード26dとの間で、データ量が増加していると仮定する。このとき、制御部34は、各下位通信用ノードにおける固有波長を利用して、データの通信量が増加しているノード間に対しては、それぞれの下位通信用ノード間に共通して使用されている固有波長を共通波長に割り当てることによって、光リング型ネットワーク22全体のトラフィック量の制御を行うことができる。たとえば、下位通信用ノード26aと下位通信用ノード26cとの間において、データの通信量が増加しているので、λ11、λ12、λ14を共通波長として設定することができる。また、下位通信用ノード26bと下位通信用ノード26dとの間において、データの通信量が増加しているので、λ11、λ13を共通波長として設定することができる。
なお、共通波長として設定する際には、増加しているデータの通信量に応じて、共通波長に切り替える光スイッチの数を調整することができる。このようにデータの通信量の増加している下位通信用ノード間に共通の波長を割り当てることによりトラフィック量の制御を行うことができる。
【0109】
たとえば、送信量が多い、ビデオオンデマンドなどの映像情報のデータストリーミング、インターネット会議などの双方向での固定した相手とのデータの通信量が多い場合、別に固定波長を割当てる方法がある。つまり、固定波長は上位通信用ノード24との通信を前提としているが、通信量の多いノード間については、上位通信用ノード24との通信と同様に扱い特定の固定波長を割当てる。これにより、ネットワークシステムとしてバランスの取れた状態を得ることができる。
【0110】
このような特定の下位通信用ノード間で通信量が多いシステムについての光スイッチ切り替え方法について説明する。2つの基本の制御方法を採用することも1つの方法であるが、ニューラルネットワークや遺伝的アルゴリズムなどの学習アルゴリズムを適用することも1つの方法である。
たとえば、ニューラルネットワークのモデルは、下位通信用ノード間の相互通信量が多いという特徴に対応したものではない。相互通信量が多いことにより共通の固定波長を多く設定することがシステム設計としてなされる。つまり、これにより、相互通信量が多い下位通信用ノードに対処したシステムの構築が可能となる。それは、相互通信量の多い下位通信用ノード間に与えた共通の固定波長を共通波長として扱い常にオン状態とすることにより対処するという方法である。共通の固定波長が多く存在している場合は、状況にもよるが1つを共通波長として扱い、他の波長を固定波長として扱い、学習アルゴリズムにより光スイッチを制御する方法がある。
また、遺伝的アルゴリズムによっても同様で、相互通信量の多い下位通信用ノード間で共通している固定波長を共通波長として扱い、染色体に含まないような処理をすることが可能となる。これにより、上述したニューラルネットワークのモデルと同様に相互通信量を考慮システム構成とすることができる。
【0111】
図19に、相互通信量を考慮した光スイッチの切り替え制御に関する処理フローを示す。まず、各下位通信用ノードを通過するパケットのあて先を調べ、リング内の通信状態を抽出し相互通信量を調べる(S702)。次に、この相互通信量の計測結果より、トラフィック量が所定量を超えるか否かの判定をする(S704)。これにより、下位通信用ノード間の相互通信量が多いかどうかの判断基準とする。相互通信量が多いと判断された場合は、該当する光スイッチを共通波長として取り扱い、当該光スイッチをオンに切り替える処理を行う(S706)。また、光スイッチを切り替えると共に、レイヤ3スイッチ28Mにおける出力ポート−アドレステーブル38Mおよび制御部34における光スイッチ設定テーブル36に対して書き換えが行われる。なお、ここで、共通波長として扱った波長は、学習アルゴリズムによる制御の対象には入らない。
これまでの処理は、学習アルゴリズムの前処理として行われる。また、この前処理を2つの基本の制御方法に適用しても一定の効果が得られる。この処理の後、強化学習やニューラルネットワーク等の学習アルゴリズムを実施する(S708)。
【0112】
以上のような相互通信量を考慮した前処理を行うことにより、光リング型ネットワーク22内の通信状況に応じて対応することが可能であると考えられる。また、2つの基本の制御方法、および、上述した学習によるアルゴリズムを使い分けて、また、条件によりこれらを組合せて用いることで、より適応性に優れた光リング型ネットワーク22における波長多重光通信システム20を構成することができる。
【0113】
図20は、可変ADM装置を用いた波長多重光通信システム20の光リング型ネットワーク22において、下位通信用ノードの入れ替えの容易性を示した図である。図20(a)と図20(b)の相違点は、下位通信用ノード26aと下位通信用ノード26fとの光リング型ネットワーク22に接続されている場所が入れ替わった点にある。図20(a)および図20(b)は、ともに上位通信用ノード24と6台の下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fとで構成されている。
【0114】
下位通信用ノードを移動しても、割当て波長が変わることはなく、下位通信用ノードが接続している光リング型ネットワーク22内でのIPアドレスの変更等は必要でなく、容易に移動ができることを示している。
【0115】
たとえば、会社の中で部署間の配置変換でビルの階の変更や建物の変更が生じた場合、当該下位通信用ノードを一緒に移動することにより、ネットワークの再構築などをする必要がなく、移動した時の設定を容易にしている。これに加え、新たな部署に新しい下位通信用ノードを割り当てるといった拡張性を組み合わせることも可能である。このような移動の容易性はネットワークの柔軟性を増すことにつながり、拡張性があり、より扱いやすいネットワークシステムである。
波長スイッチの切り替えについては、何の変更なしに使用することができる。以前に学習アルゴリズムを使用していた場合も2つの基本の制御方法を使用していたとしても、それらのシステムをそのまま使用することが可能な適応性に優れた光リング型ネットワーク22における波長多重光通信システム20を構成することができる。
【0116】
上述した実施形態は、それぞれを組合せて適用することが可能であり、それによって、さらに柔軟性の高い光リング型ネットワーク22を用いた波長多重光通信システム20を構築することが可能である。
【0117】
なお、本願発明にかかる波長多重光通信システムにおいて、上位通信用ノードもしくは下位通信用ノードにおける可変ADM装置とレイヤ3スイッチとの通信は、電気信号により通信が行われているが、それに限られるものではなく、光信号のみで通信が行われてもよい。その場合は、上位通信用ノードおよび下位通信用ノードには、図2および図4に示すような光電変換装置42は、備えなくてもよい。
【0118】
また、本願発明にかかる波長多重光通信システムの実施形態では、下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fのレイヤ3スイッチ28Sの各出力ポートにおけるトラフィック量を監視・計測するためのトラフィック監視部32が接続されていてもよい。これにより、下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fにおけるトラフィック監視部32において監視・計測された波長ごとのトラフィック量の状況が、たとえば、表示モニタに表示されることで、波長ごとのトラフィック量の状況が視覚的に把握できる。また、トラフィック監視部32により計測された情報は、制御部34に送信されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明係る波長多重光通信システムのシステム構成図である。
【図2】本発明に係る波長多重光通信システムに使用される上位通信用ノードの概念図である。
【図3】図1に示す波長多重光通信システムにおけるWDMテーブルの一例である。
【図4】本発明に係る波長多重光通信システムに使用される下位通信用ノードの概念図である。
【図5】本発明係る波長多重光通信システムを利用した各ノードにおける固定波長の光スイッチの時間変化の例を示す。
【図6】図5に示す波長多重光通信システムにおけるWDMテーブルの一例である。
【図7】図5に示す波長多重光通信システムにおける光スイッチ設定テーブルの時間変化を示す。
【図8】本発明に係る波長多重光通信システムの第1の制御方法の処理手順を示すフロー図である。
【図9】本発明に係る波長多重光通信システムの第2の制御方法の処理手順を示すフロー図である。
【図10】本発明に係る波長多重光通信システムの第3の制御方法の基本の処理手順を示すフロー図である。
【図11】ニューラルネットワークモデルの構成例を示す図である。
【図12】(a)は遺伝的アルゴリズムに用いる染色体の構成例を示し、(b)は遺伝的アルゴリズムによる波長切り替え処理の処理手順を示すフロー図である。
【図13】図10および図12における光スイッチ切り替え処理の処理手順を示す図である。
【図14】本発明に係る波長多重光通信システムの制御方法において光スイッチをオンにする処理とオフにする処理を分離した場合の処理手順を示すフロー図である。
【図15】本発明に係る波長多重光通信システムによる環境変化への対応機能の例を示す図である。
【図16】本発明に係る波長多重光通信システムによる環境変化への他の対応機能の例を示す図である。
【図17】本発明に係る波長多重光通信システムによる環境変化へのさらに他の対応機能の例を示す図である。
【図18】本発明に係る波長多重光通信システムによる環境変化へのさらに他の対応機能の例を示す図である。
【図19】本発明に係る波長多重光通信システムの制御方法において、相互通信量を考慮した光スイッチの切り替え制御を行った場合の処理手順を示すフロー図である。
【図20】本発明に係る波長多重光通信システムによる環境変化へのさらに他の対応機能の例を示す図である。
【図21】従来のスライディングフェルールによる光波長選択型可変ADM装置の概略図である。
【図22】本発明に係る波長多重光通信システムに使用される光波長選択型可変ADMである。
【符号の説明】
【0120】
10 光波長選択型可変ADM装置
12 光スイッチ
14 波長合波器
16 波長分波器
18 スイッチ信号
20 波長多重光通信システム
22 光リング型ネットワーク
24 上位通信用ノード
26 下位通信用ノード
28 レイヤ3スイッチ
30 トラフィック監視・制御装置
32 トラフィック監視部
34 制御部
36 光スイッチ設定テーブル
38 出力ポート−アドレステーブル
40 WDMテーブル
42 光電変換装置
50 入力層
52 第1中間層
54 第2中間層
56 出力層
【技術分野】
【0001】
本発明は、光波長選択型可変ADM(Add/Drop Multiplexer)装置を用いた光リング型ネットワークによる波長多重光通信システムに関し、特に、光リング型ネットワーク内におけるWDM(Wavelength Division Multiplexing)光信号のトラフィック制御を行う波長多重光通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、家庭やオフィスなどにおいて、光ファイバーネットワークが広く導入されはじめている。このような光ファイバーネットワークに対しては、FTTH(Fiber To The Home)やFTTB(Fiber To The Building)などのブロードバンド回線サービスが提供されており、たとえば、100メガFTTHやギガFTTHと呼ばれるものが存在している。
これらのサービスでは、光スプリッタなどの光デバイスを使用していることから、一般的にEPON(Ethernet(登録商標)、Passive Optical Network)と呼ばれている。EPON方式では、通常、光ファイバーを最大32戸で共用するシステムとなっている。そうすると、たとえば、100メガFTTHが32戸で固定的に共用された場合、1戸あたりの転送速度は、3.1Mbpsとなる。これが、GE−PON(ギガビットイーサネット(登録商標)−PON)方式のギガFTTHの場合、1戸あたりの転送速度は31Mbpsとなる。一般的な、FTTHサービスでは、最大32戸で光ファイバーを共用するスター型結線により構成されている。しかしながら、スター型結線ではシステムの拡張性や柔軟性に欠けるという問題があることから、特許文献1において、システムの拡張に対して柔軟に対応できるリング型の光ネットワークが提案されている。このリング型光ファイバーネットワークでは、大容量の情報を扱うために種々の多重技術が検討されており、たとえば、CWDM(Coarse WDM)方式などの波長分割多重方式が有望な方式と考えられている。
【0003】
光ファイバーネットワークが広く導入されることにより利用者が増加し、これに伴うトラフィック量の増加が予想される。このため、波長分割多重方式を用いた時、多重されている波長によるトラフィックの偏りが生じることがある。このようなトラフィックの偏りを解消するために、光装置に対するコネクタ配置変更などの手動のつなぎ換えや光スイッチによる配線状態の変更や光クロスコネクト装置の使用により対処される。
このような方法は、現在の家庭やオフィスなどのアクセスネットワークと比較して大量、かつ変動の少ないトラフィックを扱うため切り替え回数の頻度が少ない条件で使用される日本中を結ぶバックボーンネットワークのDWDM(Dense WDM)方式を採用しているネットワークにおいて用いられる。
【0004】
しかしながら、トラフィック量に変動をともなうアクセスネットワークでは上記のような手動によるつなぎ換えや光スイッチによる波長の切り替えでは、ある程度のトラフィック量の制御を行うことは可能であるが、それには限界があり、加えて、切り替え時間や切り替えの手間がかかるなどの問題点がある。
また、光クロスコネクト装置を用いた場合、メインルータ、もしくはレイヤ3スイッチに対応した光クロスコネクト装置に使用するすべての波長フィルタに対応するために、すべてのノードですべての波長合波器、波長分波器、光スイッチおよび光メディアコンバータなどが必要となるため、システムとして大きく、かつ、高価になるなどの問題点が生じる。
【0005】
上記問題に対応するため、波長多重の効率的な利用形態として特にリング構成の光IP(Internet Protocol)ネットワークが特許文献2において提案されており、この構成の中で光波長選択型可変ADM装置が提案されている。
【0006】
図21は、特許文献2において提案されている機械式の光波長選択型可変ADM装置1(以下、単に「可変ADM装置」とする)の例を示す。この装置は、3つのブロックにより構成されている。右ブロック2は下位リングからのインターフェース部であり、左ブロック3は、レイヤ3スイッチ側のインターフェース部である。波長の切り替えは、中央ブロック4を上下方向に移動させることで行う。下位リングからの光入力信号は、右ブロック2を通過し、中央ブロック4に至る。中央ブロック4に全反射フィルタ5があった場合は、全反射されるため、その後段にある左ブロック3の波長選択フィルタ6を介することなく下位リングに戻される。また、中央ブロック4に全反射フィルタ5がない場合は、中央ブロック4を通過し、左ブロック3に至る。そして、特定の波長の信号だけが左ブロック3を通過し、レイヤ3スイッチに至る。逆に、レイヤ3スイッチからの信号は、左ブロック3、中央ブロック4、右ブロック2を順に通過して下位リングに至る。このように構成することにより、メインルータに接続される可変ADM装置1には、一般ルータに接続される可変ADM装置1に常時割当てられる波長のほかに使用される可能性のある波長に対する装置を設ければよいので、コスト低減を図ることができる。
【0007】
また、図22は、特許文献3において提案されている光学式の可変ADM装置10の例を示す。上位の通信システムから入力された波長分割多重光信号(以下、単に「光信号」とする)に含まれる複数の波長の光信号を分波する波長分波器16と、分波された複数の波長の光信号を合成して上位の通信システムに出力する波長合波器14と、下位の通信システムに分岐・挿入させるかを切り替える光スイッチ12とを備え、上位の通信システムの光信号に含まれる複数の波長の光信号から任意の波長の光信号を組合せて下位の通信システムに分岐・挿入させている。
【0008】
よって、特許文献2に記載されている機械式の可変ADM装置1と比較したとき、特許文献3に記載されている光学式の可変ADM装置10を用いることで、光信号を下位の通信システムに分岐・挿入させる光スイッチのオン・オフの切り替えを迅速に行うことができる。また、下位の通信システムに光信号を分岐・挿入させる波長の数が多くなっても、そのことが原因で、光スイッチの切り替え時間が増加することもなく、さらに、可変ADM装置の筐体が大きくなることもない。
【0009】
また、特許文献2の機械式の可変ADM装置1では、トラフィック制御については、波長分割多重方式やリング型のネットワーク網に特有のものは存在せず、通常のネットワーク網で使用されているトラフィック制御方式を採用している。このようなトラフィック制御では、パケットの発信元IPアドレス/ポート、パケット種別などを基準に単位時間当たりの送出バイト数の調整が行われている。たとえば、この制御での具体的な方法として、パケットの種類により帯域制限を設けたり、パケットの種類により優先制御を行ったり、パケットシェーピングといわれるパケットの種類により最大の送出速度を設けるなどの方法が採られる。
【0010】
現状のトラフィック制御には、Qos(Quality of Service)、輻輳制御、帯域制御、フロー制御と呼ばれるものがある。基本的にIPネットワークでは、ベストエフォート型の処理を行うので、何も制御を行わない場合には、ルータに先に到着したパケットの順番で処理がなされる。しかし、このような方法ではネットワークの輻輳を招くために何らかの制御が必要であることから、パケットの遅延を避け一定以上の転送速度を維持することが行われる。このような技術全般をQosという。このQosの1つが帯域制御と呼ばれるものであり、パケットの種類により帯域制限が設けられる。Qosの他の1つに優先制御と呼ばれるものがあり、優先度の高いパケットをルータが識別し、他のパケットよりも先に処理をする。パケットのヘッダには、優先度を表す送信元やあて先のIPアドレスやポート番号が書き込まれていて、これらの情報に基づきルータはパケットの優先度を判別する。パケットシェーピングといわれるパケットの種類により最大の送出速度を設けるなどの方法も取られる。また、ネットワークが混雑することにより通信性能が落ちることがあり(これを、輻輳という)、輻輳制御では、送信側の単位時間当たりの送出パケット送出数の調整が行われる。
【0011】
例えば、特許文献4では輻輳状態を判定して、パケットの送信、停止を判断するフロー制御が示されており、特許文献5では、輻輳状態を判定して送信データレートを動的に変更する方法が示されている。また、特許文献6では、パケットサイズ、及び、パケット数を考慮して通信機器の処理負荷を一定にする方法が、特許文献7では、映像信号の伝送のための帯域とデータ信号転送のための帯域とを制御して映像品質を確保する方法が示されている。また、特許文献8では、パケットの種類に応じての優先制御を曜日、月間、年間の日別や時間帯の特異性を考慮してルータの経路毎にパケット伝送時間をテーブル化して参照し伝送制御を行う方法が示されている。
【0012】
しかしながら、これらの例では、いずれも限られて変化しない帯域をいかにして利用するかが示されているにすぎず、伝送される複数の波長、つまり、複数のチャンネルを制御する帯域制御を行うことによりトラフィック量を制御する機能を有するものではない。
【0013】
【特許文献1】特開2001−230794号公報
【特許文献2】特開2005−323185号公報
【特許文献3】特願2006−048557号
【特許文献4】特開2003−143163号公報
【特許文献5】特開2006−033713号公報
【特許文献6】特開2005−136785号公報
【特許文献7】特開2005−348284号公報
【特許文献8】特開2001−308917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のように、特許文献2の機械式の可変ADM装置を用いて光リング型ネットワークを構成したとしても、各下位通信用ノードの可変ADM装置に対して適切な光スイッチの切り替えがなければ、トラフィック量の偏在は解消されない。さらに、通信されるパケット数は、時々刻々と変化するものであるから、各下位通信用ノードの波長の割当てを固定して使用すると効率が悪くなる。そのため、時々刻々と変化するトラフィック量に対応したトラフィック制御を行うことで、各下位通信用ノードの波長の割り当ての変化がなされないと、結局、効率的に通信帯域を有効利用しているとはいえない。
【0015】
また、現状のトラフィック制御では、パケットの送出量の制御が行われているが、スター型の場合、必ず、上位システムを経由することになり、この端末と上位ルータの専用線によって情報量が制限されるという問題もある。
【0016】
さらに、従来のトラフィック制御では、ノードの増設、ノードの再配置、ノード故障時の対応が容易でない。すなわち、新しいノードを増設する場合や移動や会社等の組織変更でノードの再配置を行う場合、IPアドレスの再配布やネットワークの工事などの多くの手間がかかることになる。また、このような、ノードの増設やノードの再配置に対応するトラフィック制御が必要となり、通信量の多いノード間通信については、物理的なノード間の通信量により、通信速度が左右されるなどの問題が生じる。
【0017】
そこで、本発明は、上述した種々の問題に鑑みてなされたもので、その目的は、光リング型ネットワークにおけるトラフィック量の変動に対して波長割り当てを適切に行い、ノードの増設、再配置に対して柔軟に対応可能な波長多重光通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、上位の通信システムに接続する上位通信用ノードと、下位の通信システムに接続する複数の下位通信用ノードとを含み、波長分割多重伝送を行う光リング型ネットワークであって、上位通信用ノードおよび下位通信用ノードに備えられ、光スイッチを用いて、波長分割多重光信号に含まれる複数の光信号から任意の波長の光信号を組み合わせて上位または下位の通信システムに分岐・挿入させることができる光波長選択型可変ADM装置と、光波長選択型可変ADM装置に分岐・挿入される波長ごとのトラフィック量を監視するトラフィック監視手段と、光波長選択型可変ADM装置の光スイッチを制御する制御手段とを有し、制御手段は、波長分割多重光信号に含まれる複数の波長の少なくとも一つを主として下位通信用ノード間の光通信のために利用する共通波長として割り当てる機能と、共通波長を除く波長を主として上位通信用ノードと少なくとも一つの下位通信用ノードとの間の光通信のために利用する固定波長として割り当てる機能とを有し、トラフィック監視手段により監視されている各波長の光信号のトラフィックの偏在に応じて光スイッチを制御する機能を有することを特徴とする波長多重光通信システムである。
【0019】
請求項2に記載の発明は、制御手段は、光波長選択型可変ADM装置の光スイッチの設定に基づいて、波長分割多重光信号の波長と宛先アドレスとを対応付ける設定を変更する機能を有することを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0020】
請求項3に記載の発明は、制御手段は、光リング型ネットワーク内の波長分割多重光信号に含まれる各波長のパケットの宛先アドレスを抽出する機能と、抽出された宛先アドレスが下位の通信システムのいずれかに存在するか否かを判定する機能とを含み、宛先アドレスが下位の通信システムに存在する場合は、光信号を共通波長に割り当て、宛先アドレスが下位の通信システムに存在しない場合は、光信号を固定波長に割り当てることを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0021】
請求項4に記載の発明は、制御手段は、下位通信用ノードにおける光スイッチの状態を導出する学習モデルを有し、複数の下位通信用ノードの各固定波長におけるトラフィック量が所定量を超えているか否かを判定する機能と、学習モデル内の光スイッチの状態と各波長のトラフィック量から算出された光スイッチの状態とを比較し、光スイッチの状態が一致している数を算出することで評価する機能と、学習モデル内での各波長の光スイッチの状態を逐一逆にした遷移状態を生成する機能と、各遷移状態において、各波長のトラフィック量を推定する機能と、推定されたトラフィック量に基づいて各遷移状態を評価する機能と、遷移状態のうち、最も高い評価を得た遷移状態を選択する機能と、遷移状態前の評価と遷移状態後の評価との差を報酬として算出する機能と、算出された報酬を累積することで価値として算出する機能とを有し、算出された価値が収束したときの遷移状態における光スイッチの設定情報を光波長選択型可変ADM装置に出力するようにしたことを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0022】
請求項5に記載の発明は、制御手段は、下位通信用ノードの各固定波長におけるトラフィック量を入力する機能と、入力されたトラフィック量の総量を算出する機能と、算出されたトラフィック量の総量と所定値とを比較した結果を出力する機能と、各固定波長における算出されたトラフィック量の総量が最大の下位通信用ノードを選択する機能と、現状のトラフィック量から算定した光スイッチ状態を教師信号として与えることにより重み付け係数を算出する機能と、出力された比較した結果と選択された下位通信用ノードとにそれぞれ算出された重み付け係数を乗算して累積する機能と、累積された結果と所定値とを比較することにより切り替える光スイッチを出力する機能とを有し、現状のトラフィック量から算定した光スイッチの状態を教師信号として学習させることにより得られた光スイッチの設定情報を光波長選択型可変ADM装置に出力するようにしたことを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0023】
請求項6に記載の発明は、制御手段は、下位通信用ノードの各固定波長における光スイッチの状態を表現した染色体を含む遺伝子モデルを有し、染色体を備える個体をランダムに複数生成することで初期集団を生成する機能と、遺伝子モデルにおける各個体の光スイッチの状態に対応するトラフィック量を推定する機能と、推定された結果に基づいて各波長のトラフィック量の占有率を演算する機能と、演算された占有率に基づいて染色体を評価する機能と、染色体の評価に基づいて適応度を算出する機能と、算出された適応度に基づいて親個体を選び交叉させることで子個体を生成する機能と、交叉された個体の染色体の一部を書き換える機能と、交叉された個体または染色体の一部を書き換えられた個体の適応度を算出する機能と、算出された適応度を定められた所定値と比較し、2つの親個体と2つの子個体のうち適応度が高い2個体を親個体として置換する機能とを有し、算出された適応度が一定の条件を満たしたときの個体における光スイッチの設定情報を光波長選択型可変ADM装置に出力するようにしたことを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0024】
請求項7に記載の発明は、制御手段は、光リング型ネットワークにおけるトラフィック量の増減に応じて、光リング型ネットワークに接続されるノードが追加または削除された場合に、波長選択情報を再設定する機能を有し、システム構成の変更に迅速に対応できるようにしたことを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0025】
請求項8に記載の発明は、制御手段は、光リング型ネットワークにおけるトラフィック量の増減に応じて、光リング型ネットワークに接続されている上位通信用ノードを、上位通信用ノードよりも多い波長数が割り当てられた光波長選択型可変ADM装置を含む上位通信用ノードに置換された場合に、固定波長の選択肢を増加させる機能を有し、トラフィックの輻輳を迅速に解消できることを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0026】
請求項9に記載の発明は、制御手段は、複数のノードまたは下位の複数の通信システムから障害が発生した場合に、複数のノードまたは下位の複数の通信システムが接続されるノードに対して光信号の分岐・挿入を停止させる機能を有することを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0027】
請求項10に記載の発明は、制御手段は、光リング型ネットワークに接続されている複数のノードのうち特定のノード間において、共通波長とは異なる共通の波長を共通波長として通信できるように波長選択型可変ADM装置の光スイッチを制御する機能を有することを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【0028】
請求項11に記載の発明は、制御手段は、光リング型ネットワークに接続される複数のノードのうち、少なくとも1つのノードの光リング型ネットワークにおける接続場所が変更された場合に、波長選択情報を再設定する機能を有し、システム構成の変更に迅速に対応できるようにしたことを特徴とする、波長多重光通信システムである。
【発明の効果】
【0029】
本発明にかかる波長多重光通信システムによれば、光リング型ネットワークにおける各波長のトラフィック量の変動に応じて各ノードの光スイッチを制御することで、効率的な波長利用を可能とし、トラフィックの時間変化やシステム構成の変更等に対して柔軟な対応ができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施形態について図1ないし図20を参照して、説明する。
図1に、本発明の一実施形態にかかる可変ADM装置を用いた波長多重光通信システムのシステム構成図を示す。波長多重光通信システム20は、光リング型ネットワーク22と上位の通信システムと接続するための上位通信用ノード24と、下位の通信システムと接続するための下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fと、トラフィック監視・制御装置30とにより構成される。
【0031】
ここで、図2に上位通信用ノード24の概略構成を示す。上位通信用ノード24は、可変ADM装置10Mおよびレイヤ3スイッチ28Mを備えている。なお、光電交換装置42Mは、レイヤ3スイッチ28Mの入出力が電気信号で、可変ADM装置10Mの入出力が光信号の場合に設けられるものであり、可変ADM装置10Mに内蔵されてもよい。また、レイヤ3スイッチ28Mの入出力インターフェースが光化されれば、省略することができる。
【0032】
可変ADM装置10Mは、光リング型ネットワーク22で使用される波長が割り当てられており、当該波長ごとに光スイッチを備え、レイヤ3スイッチ28Mから入力される光信号のうち光スイッチがオンに設定された波長の光信号が光リング型ネットワーク22に対して分岐・挿入される。レイヤ3スイッチ28Mには、可変ADM装置10Mに割り当てられている波長に対応する出力ポートを備える。
【0033】
レイヤ3スイッチ28Mは、出力ポート−アドレステーブル38MおよびWDMテーブル40を備える。
出力ポート−アドレステーブル38Mは、主にレイヤ3スイッチ28Mにおける出力ポートと下位通信システム等におけるアドレスとの対応関係を示したものである。ここで、アドレスは、通信をするための必要なIPアドレス等の各情報を含んでいる。出力ポート−アドレステーブル38Mにおける情報は、たとえば、ネットワーク管理者等により明示的に設定される。
WDMテーブル40は、光リング型ネットワーク22を伝搬する光の波長とレイヤ3スイッチ28Mの出力ポートとの対応を示したものである。図2に示すWDMテーブル40の設定例を図3に示す。ここで、図3に記載の各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fの各波長付された番号は、各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fのレイヤ3スイッチ28Sにおける各波長に対応する出力ポートに対して順に番号を付したものである。
【0034】
一方、トラフィック監視・制御装置30は、各出力ポートにおけるトラフィック量を監視・計測するためのトラフィック監視部32、および各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fにおける可変ADM装置10Sの光スイッチを制御することによって使用可能な帯域を調整してトラフィック制御を行う制御部34を備えている。トラフィック監視・制御装置30は、上位通信用ノード24に接続されている。
【0035】
トラフィック監視部32を備えることで、監視・計測された波長ごとのトラフィック量の状況が、たとえば、表示モニタに表示されることで、波長ごとのトラフィック量の状況が視覚的に把握できる。なお、ここで示しているトラフィック監視部32は、上位通信用ノード24に直接接続されている必要はなく、ネットワーク経由で遠隔場所から使用することも可能である。加えて、1つのトラフィック監視部32で光リング型ネットワーク22に接続されているすべての下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fにおける各波長のトラフィック量を監視することが可能である。
【0036】
また、上述したトラフィック監視部32で監視・計測されるトラフィック量の情報は、たとえば、ネットワーク管理ステーション(NMS)からSNMP(Simple Network Management Protocol)を利用して情報を取得することができる。また、SNMPの拡張機能であるRMON(Remote Monitoring)ではLANの通信状況の蓄積情報が得られる。RMONを用いることにより、その時点のトラフィック量のデータを得るばかりでなく、トラフィック量の蓄積情報、および、解析結果を利用することもできる。そして、この蓄積情報を解析することによって、可変ADM装置10Sの光スイッチの切り替えの予測制御にも役に立てられる。
【0037】
制御部34は、後述の各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fにおける可変ADM装置10Sの光スイッチのオン・オフ情報を示す光スイッチ設定テーブル36を備えている。
【0038】
また、図4に、下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fの概略図を示す。下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fは、可変ADM装置10Sおよびレイヤ3スイッチ28Sを備えている。なお、光電交換装置42Sは、レイヤ3スイッチ28Sの入出力が電気信号で、可変ADM装置10Sの入出力が光信号の場合に設けられるものであり、可変ADM装置10Sに内蔵されてもよい。また、レイヤ3スイッチ28Sの入出力インターフェースが光化されれば、省略することができる。
【0039】
可変ADM装置10Sは、各下位の通信システムで使用される波長が割り当てられており、当該波長ごとに光スイッチを備え、光リング型ネットワーク22から入力される光信号のうち光スイッチがオンに設定された波長の光信号が光リング型ネットワーク22に対して分岐・挿入される。
【0040】
レイヤ3スイッチ28Sは、その可変ADM装置10Sに割り当てられている波長に対応する出力ポートを備えている。
また、レイヤ3スイッチ28Sは、出力ポート−アドレステーブル38Sを備える。
出力ポート−アドレステーブル38Sは、主にレイヤ3スイッチ28Sにおける出力ポートと下位通信システムにおけるアドレス等との対応関係を示したものである。ここで、アドレスは、通信をするための必要なIPアドレス等の各情報を含んでいる。
出力ポート−アドレステーブル38Sにおける情報は、たとえば、ネットワーク管理者等により明示的に設定される。
可変ADM装置10Sにおける光スイッチのオン・オフは、前述の制御部34に備えられた光スイッチ設定テーブル36の設定に基づいて制御される。
【0041】
本発明にかかる波長多重光通信システム20では、光リング型ネットワーク22の内側に対して通信する波長と光リング型ネットワーク22の外側に対して通信する波長とを使い分け、情報量に応じて、割り当てる波長数を変えることによって、帯域の調整を行う。光リング型ネットワーク22内で用いられる波長領域として、主として下位通信用ノード26a,26b,・・・,26f間における通信を可能とするための共通波長が設けられる。共通波長は、すべての下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fに接続された可変ADM装置10Sa,10Sb,・・・,10Sfに共通して設定されている波長である。
他方、下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fには、主として上位通信用ノード24に接続された可変ADM装置10Mとの光通信のために利用される固定波長が設けられている。共通波長に割り当てられるか、固定波長に割り当てられるかは、たとえば、WDMテーブル40において、設定される。図3に示すWDMテーブル40では、λ11が共通波長、それ以外の波長が固定波長を示している。
なお、光リング型ネットワーク22内のトラフィックに偏りが生じている場合には、上述の各波長における使用目的をこえて柔軟に対応するようにしてもよい。
【0042】
図5は、本発明の一実施形態にかかる可変ADM装置を用いた波長多重光通信システムにおいて、光リング型ネットワーク22内のトラフィック量の変動に対応して下位通信用ノード26a,26b,26c,26dにおける固定波長の光スイッチを制御した例を示している。図5(a)は、下位通信用ノード26aにトラフィック量が集中している状態を示しており、図5(b)は、その他の下位通信用ノード26b,26c,26dのトラフィック量が増加した状態を示している。
【0043】
この波長多重光通信システム20は、光リング型ネットワーク22と、該光リング型ネットワーク22に接続されている上位通信用ノード24、および4台の下位通信用ノード26a,26b,26c,26dで構成されている。上位通信用ノード24は6波長に対応しており、下位通信用ノード26aは、λ11、λ12、λ13、λ14に、下位通信用ノード26bは、λ11、λ12、λ15に、下位通信用ノード26cは、λ11、λ12、λ15、λ16に、下位通信用ノード26dは、λ11、λ12、λ13、λ14、λ15にそれぞれ対応している。なお、図中の下位通信用ノード26a,26b,26c,26dに添えて書かれている波長名の横に記載の○と×は、その波長に対する分岐・挿入が行われているか否かを示している。たとえば、λ11「○」という状態では、波長λ11の光信号が分岐・挿入が行われている状態を示している。
【0044】
図5(a)では、下位通信用ノード26aのすべての波長がオン状態(分岐・挿入されている状態)となっていることから、多くのトラフィック量に対応可能な状態を示しており、下位通信用ノード26b、下位通信用ノード26c、下位通信用ノード26dではλ11だけがオン状態となっていることから、トラフィック量が少ない状態といえる。
図5(b)では、下位通信用ノード26aの波長λ11のみがオン状態であり、下位通信用ノード26b、下位通信用ノード26c、下位通信用ノード26dの分岐・挿入可能な波長が、それぞれ2、1、3と増加していることが分かる。
すなわち、図5(a)から図5(b)における時間変化に伴って、下位通信用ノード26aのλ12,λ13,λ14が、オン状態からオフ状態に変化し、下位通信用ノード26bのλ12,λ15、下位通信用ノード26cのλ16、下位通信用ノード26dのλ12,λ13,λ14が、オフ状態からオン状態に変化している。
【0045】
図6において、図5における波長多重光通信システム20におけるWDMテーブル40を示す。ここで、図6に記載の各下位通信用ノード26a,26b,26c,26dの各波長に付された番号は、各下位通信用ノード26a,26b,26c,26dのレイヤ3スイッチ28Sにおける各波長に対応する出力ポートに対して順に番号を付したものである。また、図7(a)に、図5(a)に対応する光スイッチ設定テーブル36を、図7(b)に、図5(b)に対応する光スイッチ設定テーブル36を示す。図7(a)(b)に示すように、制御部34によって割り出された切り替えるべき光スイッチに基づいて、光スイッチ設定テーブル36の情報が書き換えられ、その情報が、対応する下位通信用ノード26a,26b,26c,26dに送信されることで、可変ADM装置10Mの光スイッチのオン・オフ制御が行われる。なお、図7において、「1」は光スイッチがオンの状態、「0」はオフの状態を示す。
【0046】
次に、トラフィック量の状況に応じてオン・オフすべき光スイッチを割り出すための方法について説明する。本発明にかかる波長多重光通信システムでは、光リング型ネットワーク形態を採用していることから、スター型ネットワーク形態を採用している従来のPONやGE−PONシステムとは異なった制御となる。つまり、光リング型は情報が循環するような形態であるため、光リング内の通信では上位通信用ノード24を経由することなく信号の送受信ができる。
【0047】
本発明にかかる可変ADM装置を用いた波長多重光通信システムのトラフィック制御は、各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fの可変ADM装置10Sにおいて使用する波長の光スイッチをオン・オフすることで、通信に使用する帯域を変化させることにより行う。
【0048】
本発明にかかる波長多重光通信システム20に使用されるトラフィック制御には、2つの基本的な制御方法がある。第1の制御方法は、トラフィック量を計測し、その計測値に応じて可変ADM装置10Sの光スイッチをオン・オフ、すなわち、波長の使用不使用を切り替えることにより帯域制御を行う方法である。第2の制御方法は、光リング内にパケットが入った時点で、パケットのあて先IPアドレスを調べ、そのあて先アドレスを持つ装置が光リング内にあるか光リング外にあるかを判断し、条件別のアルゴリズムにより光スイッチの切り替えを行うことにより帯域制御を行う方法である。
【0049】
まず、第1の制御方法の実施例を、図8を用いて説明する。
図8において、図1のすべての下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fにおけるトラフィック量を計測し、波長毎にトラフィック量の総量を求めて、それが所定量を超えているかどうかを調べる(S102)。すべての波長で所定量を超えていない場合は、波長の使用不使用を決定する光スイッチの切り替えを行わず、S114に進む。
【0050】
トラフィック量の総量が所定量を超えている波長が存在する場合は、その波長において最もトラフィック量の多い下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fを抽出する(S104)。抽出された下位通信用ノードにおいて当該波長を別の波長に切り替えるための準備として、抽出された下位通信用ノード以外の固定波長のトラフィック量が所定量を超えているか否かを調べ、所定量を超えていない固定波長が存在する場合は、切り替えるトラフィックをそれまでのトラフィック量に加算して所定量を超えるか否かを調べる(S106)。そして、加算したトラフィック量が所定量を超えていない場合は、新たな固定波長を割り当てられることなく、現在設定されている固定波長の範囲内でトラフィックが調整される(S108)。すべての固定波長で加算したトラフィック量が所定量を超えている場合は、新しい波長を割当てる(S110)。
波長毎のトラフィック量の総量が所定量を超える波長が存在する場合は、トラフィック量が所定量を超える波長がなくなるまで、S104から繰り返す(S112)。
【0051】
ここで、新しい波長を割り当てる処理(S110)を実行する際には、当該波長に対応する光スイッチをオンとする情報に基づいて、制御部34の光スイッチ設定テーブル36が書き換えられる。次に、書き換えられた光スイッチ設定テーブル36の情報に基づいて、書き換えられた光スイッチの下位通信用ノードに対して光スイッチ設定テーブル36の情報が送信される。そして、光スイッチ設定テーブル36の情報を受信した下位通信用ノードは、受信した情報に基づいて、可変ADM装置10Sの光スイッチの切り替えを行うと共に、対応する下位通信用の出力ポート−アドレステーブル38Sが書き換えられる。
各下位通信用ノードに対して、光スイッチ設定テーブル36の情報を送信する際には、光信号に専用の波長を割り当てることで、既存の光リング型ネットワーク22を利用することができる。そうすることで、別途、専用の回線を設けることなく光スイッチ設定テー
ブル36を送信することができる。なお、別途、専用回線を設けてもかまわない。
【0052】
また、ここで2つのトラフィック量について所定量という記述があるが、共通波長と固定波長とでは使用目的が異なっていることから、これらの所定量は必ずしも一致するものではない。
【0053】
固定波長は、下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fと上位通信用ノード24との通信を主としており、その波長を利用している下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fは限定される。
他方、共通波長は、光リング型ネットワーク22内での通信を主な役割とすることから、基本的にはすべての下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fが利用する。よって、共通波長の使用頻度が高く、共通波長でしか通信できない下位通信用ノード26a,26b,・・・,26f間の通信も存在することから、共通波長に対する所定量は、固定波長に対する所定量より低く設定される。また、共通波長の所定量の設定値は、その波長を利用している下位通信用ノードの数や共通波長数にも影響される。
【0054】
上記手順により固定波長の光スイッチの切り替えを行うが、S100からS112までの処理は、トラフィック量の増大に対応するための使用波長数を増やす手順であり、トラフィック量が減少した時に波長数を減じるための機能は有していない。よって、トラフィック量が減少した場合などに生じる光スイッチの冗長状態に対応する必要がある。すなわち、使用波長数を減少させる処理が必要となる。
【0055】
この冗長を改善するための処理を次に適用する。まず、波長毎のトラフィック量が所定量以下か否かを調べる(S114)。これは、S102と同じ処理である。波長毎のトラフィック量が所定量を超えている場合は、トラフィック量増大に対応する処理として光スイッチの切り替えを行うため、S102の処理に戻る。これは、使用波長を減少させる処理を行っている最中にトラフィック量が増大した場合に対応するためのものである。
次に、波長毎のトラフィック量が所定量を超えていない場合は、光スイッチの冗長状態を解消するために、トラフィック量が所定量より少ないかどうかを判断する(S116)。この所定量は、前述の所定量とは異なり、光スイッチをオフにするかどうかを判断するためのものであって、トラフィック量が0に近い状態で設定される。トラフィック量が所定量より少ない波長があれば、その波長の光スイッチをオフにしてS114に戻る(S118)。トラフィック量が所定量より少ない波長がなくなれば、処理を終了する(S120)。
【0056】
ここで、所定量よりも少ない波長がある場合の処理(S116)を実行する場合においては、当該波長に対応する光スイッチをオフにする情報に基づいて、制御部34の光スイッチ設定テーブル36が書き換えられる。次に、書き換えられた光スイッチ設定テーブル36の情報に基づいて、書き換えられた光スイッチの下位通信用ノードに対して光スイッチ設定テーブル36の情報が送信される。そして、光スイッチ設定テーブル36の情報を受信した下位通信用ノードは、受信した情報に基づいて、可変ADM装置10Sの光スイッチの切り替えを行うと共に、対応する下位通信用の出力ポート−アドレステーブル38Sが書き換えられる。
各下位通信用ノードに対して、光スイッチ設定テーブル36の情報を送信する際には、光信号に専用の波長を割り当てることで、既存の光リング型ネットワーク22を利用することができる。
【0057】
次に、可変ADM装置を利用した波長多重光通信システム20におけるトラフィック制御の第2の制御方法の実施例について図9を用いて説明する。この場合においても光スイッチの切り替えは、主として固定波長の光スイッチに対して行われ、補助的に共通波長の光スイッチに対して行われる。
この制御方法は、図1に示している上位通信用ノード24および下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fを通過するパケットのあて先IPアドレスとその時点のトラフィック量に着目し、各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fに入ってきたパケットのあて先IPアドレスに基づいて光リング型ネットワーク22の内外いずれに対して送信されるものかを判別し、固定波長と共通波長とを使い分けることによりトラフィック制御を行うものである。
【0058】
まず、各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fにおいてパケットを受信し(S200)、あて先IPアドレスが光リング型ネットワーク22内に接続された下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fのいずれかの下に存在するか否かを判定する(S202)。あて先IPアドレスが光リング型ネットワーク22の内側に存在しない場合、すなわち、パケットが上位通信用ノード56を経由して光リング型ネットワーク22の外側に送出される場合は、当該通信に固定波長を割当て、あて先IPアドレスが光リング型ネットワーク22に接続された下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fの下に存在する場合は、当該通信に共通波長を割当てることを原則とする。
あて先IPアドレスがリングの外側に存在する場合には、使用されている固定波長のトラフィック量が所定量を超えているか否かを調べる(S204)。いずれかの固定波長のトラフィック量が所定量を超えていない場合は、当該通信にそのいずれかの固定波長を割り当てる(S206)。
【0059】
いずれの固定波長のトラフィック量も所定量を超えている場合は、共通波長のトラフィック量を所定量と比較する(S208)。いずれかの共通波長のトラフィック量が所定量より小さい場合は、当該通信にそのいずれかの共通波長を割り当てる(S210)。一方、いずれの共通波長のトラフィック量も所定量よりも大きい場合は、使用されていない波長(すなわち、トラフィック量が0の波長)の有無を判断する(S212)。使用されていない波長がある場合は、当該通信にその使用されていない新しい波長を割り当て(S214)、さらに、新しく割り当てられた波長に当該アドレスを割り当てるため、出力ポート−アドレステーブル38Sの書き換えを行う。また、使用されていない波長がない場合には、当該通信に共通波長を割り当てる(S216)。
【0060】
あて先IPアドレスが光リング型ネットワーク22の内側に存在する場合は、パケットが経由する下位通信用ノードに接続されている可変ADM装置10Sと共通の固定波長を持っているか否かを調べる(S218)。共通の固定波長がない場合は、当該通信に共通波長を割り当てる(S220)。
共通の固定波長がある場合は、使用されている固定波長のトラフィック量が所定量を超えているか否かを調べる(S222)。いずれかの固定波長のトラフィック量が所定量を超えていない場合は、当該通信にそのいずれかの固定波長を割り当てる(S224)。
いずれの固定波長のトラフィック量も所定量を超えている場合は、共通波長のトラフィック量を所定量と比較する(S226)。いずれかの共通波長のトラフィック量が所定量より小さい場合は、当該通信にそのいずれかの共通波長を割り当てる(S228)。一方、いずれの共通波長のトラフィック量も所定量よりも大きい場合は、使用されていない波長(すなわち、トラフィック量が0の波長)の有無の判断がなされる(S230)。使用されていない波長がある場合は、当該通信およびその使用されていない新しい波長を割り当て(S232)、さらに、新しく割り当てられた波長に当該アドレスを割り当てるため、出力ポート−アドレステーブル38Sの書き換えを行う。また、使用されていない波長がない場合には、当該通信に共通波長を割り当てる(S234)。
【0061】
これらは、トラフィック量に対して自動的に光スイッチの切り替えを行うものであるが、光スイッチを人為的に切り替えて制御したい時には、自動モードから手動モードに切り替え、手動で光スイッチを切り替えるようにしてもよい。
【0062】
トラフィック量は時々刻々変動しているものであるが、時間、日や週など周期的なパターンを持った変動をすることが多い。よって、ある周期的なパターンを持ったトラフィック量の変動が存在する場合には、そのようなトラフィック量の変動を予測した帯域制御が有効になる。つまり、トラフィック量の周期性を持った変動に対応する可変ADM装置10Sの波長選択の切り替えを過去の履歴から学習し、その学習結果に基づいて帯域制御を行うようにしてもよい。
【0063】
たとえば、オフィスビルでは、始業前までのトラフィック量が少なく、始業後にトラフィック量が増加し、終業後にトラフィック量が減少する、というような周期的な変動を持つと考えられる。また、大学などでは、授業の行われている時間帯は、講義棟でのトラフィック量が増加し、研究室などのある研究棟でのトラフィック量は少ないのに対し、授業が終了した後は、講義棟でのトラフィック量が減少し、研究棟でのトラフィック量が増加する。このようなトラフィック量の変動パターンが存在する場合には、トラフィック量の変動を予測した帯域制御が有効になる。
【0064】
具体的には、たとえば1日の変化を見る場合、データ取得時間、光スイッチの状態、トラフィック量をパラメータとし、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズム、強化学習などのアルゴリズムを利用することにより、切り替え発生時間と各可変ADM装置10Sの光スイッチの状態を学習させ、切り替える単位時間ごとに学習結果を基にトラフィック制御を行うようにしてもよい。
【0065】
次に、本発明にかかる可変ADM装置を用いた波長多重光通信システムのトラフィック制御における上述の制御方法に学習アルゴリズムを取り入れた第3の制御方法の説明をする。なお、以下に述べる制御は、固定波長に対応する光スイッチに対してのみ行われ、共通波長に使用される光スイッチに対しては行われない場合について述べるが、本発明は、これに限定されるものではない。
図1に示すような光リング型ネットワーク22に接続された各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fの各々の固定波長におけるトラフィック量の状態としては、(1)ほとんどトラフィックが流れていない状態、(2)多少のトラフィックが流れている状態、(3)各ノードの各々の固定波長におけるトラフィック量の許容範囲の限界値に近いトラフィックが流れている状態、の3つの状態が考えられる。ここで、トラフィック量の制御を行う必要がある状態とは、(3)の状態である。この状態では、トラフィック量が帯域の許容範囲において100%に近い状態であり、よって、輻輳が発生している可能性があるため、他の波長に割り振るための光スイッチの切り替えを行う必要がある。
【0066】
図10に、本発明にかかる可変ADM装置を用いた波長多重光通信システムのトラフィック制御における第3の制御方法の基本処理フローを示す。
本制御方法では、環境に応じて切り替えるべき光スイッチの割り出し処理(S302)を行った上で、実際の光スイッチの切り替え処理(S304)を行う。そして、リアルタイム処理の場合は、光スイッチの割り出し処理(S302)に戻り、リアルタイム処理でない場合は、ここで終了(S306)する。なお、所定の時間間隔をおいて光スイッチの割り出し処理(S302)を行う場合には、前回の光スイッチの状態を初期値として用いると収束までの時間を短縮することができる。なお、光スイッチの切り替えを行う前の初期状態は、たとえば、すべてオン状態とし、輻輳が起こらないように設定される。
環境に応じた光スイッチの割り出し処理(S302)には、たとえば、強化学習、ニューラルネットワーク等のようなAI技術を用いることができる。
【0067】
続いて、環境に応じた光スイッチの割り出し処理(S302)として、強化学習アルゴリズムを用いた第3の制御方法の実施例について説明する。
ここでは、強化学習により、光スイッチが決定された後、光スイッチの切り替え処理(S304)を行う。なお、光スイッチの切り替え処理(S304)の詳細については、後述する。
【0068】
本制御において使用する強化学習アルゴリズムは、学習モデルを用いて反復方策評価を行うアルゴリズムである。すなわち、学習モデル内での光スイッチの状態から、ある一定の方策に基づいて遷移可能な状態を抽出し、それぞれの状態について評価を行う。
評価は、各固定波長のトラフィック量から算出された光スイッチの状態と学習モデルの光スイッチ状態との比較により行う。各固定波長のトラフィック量から算出された光スイッチの状態とは、各下位通信用ノードの各固定波長のトラフィック量を計測し、計測値が所定値を超えている場合を「1」とし、超えていない場合を「0」として算定される。そして、学習モデル内の光スイッチの状態と各固定波長のトラフィック量から算出された光スイッチの状態とを比較し、たとえば、各光スイッチの状態が一致している数を算出する。この一致数が、すなわち、評価である。なお、この評価は、一致しない数によって行うようにしてもよい。
【0069】
遷移可能な状態は、現在の学習モデル内での各固定波長の光スイッチ状態を逐一逆にすることにより行われる(これを、行動という)。すなわち、オンの場合はオフに、オフの場合はオンすることにより行われ、下位通信用ノードの固定波長の配列順に入れ替えを行う。
そして、各遷移状態においての各波長のトラフィック量の推定を行う。続いて、推定されたトラフィック量に基づいて、上述の評価方法により各遷移状態における評価を算出する。算出された評価値のうち、最も高い評価値を得た遷移状態における個体を選択する。
【0070】
次に、上述の方法で算出された評価を用いて、報酬を算出する。
報酬は、現在の光スイッチの状態の評価と次の状態に遷移したときの評価との差により算出する。すなわち、トラフィック量から求めた光スイッチ状態と学習モデル内での光スイッチ状態との差を求める。差とは、固定波長の光スイッチの状態(オン・オフの状態)が一致しているか否かを数量的に表現したものであり、一致している個数もしくは異なっている個数を算出する。その個数が評価であって、現在の光スイッチ状態の評価と次の状態に遷移したときの評価との差が報酬として与えられる。
続いて、価値が算出されるが、価値は報酬の累積により求められる。
【0071】
また、このとき、上述した行動に対する価値関数による評価もあわせて行う。
ここで初期状態の価値関数Vk=0とする。
価値関数が高い状態を選択するものとする。ただし、入れ替えは1回だけと限定しており、価値が上がる場合はVk+1とし、価値が上がらない場合はVk−1とする。価値関数が高い状態が複数ある場合は、その中の1つを選択する。
この評価と行動を繰り返し、価値関数の値がある一定の値に収束したときに終了する。
このとき、割り出された光スイッチの状況とトラフィック量との計測結果とに基づいて、各波長のトラフィック量の占有率を推定し、評価を算出する。
【0072】
また、このような強化学習アルゴリズムによるリアルタイム処理と同時に予測システムとして定刻における光スイッチのオン・オフパターンを用い予測切り替えを行い、かつ、その時間における実際のトラフィック量の情報を得ることにより、トラフィック量の変動と予測切り替え時間、もしくは、予測切り替えの波長における光スイッチに相違が生じた場合には、これらの情報をフィードバックし、予測システムにおける光スイッチ状態を修正する。加えて、予測状態からある一定範囲以上の変化を検知した時点でフィードフォーワード制御を行い、光スイッチの切り替えを行うようにしてもよい。また、このような状況が生じた時、ネットワーク管理者に通報した上で設定してもよい。なお、トラフィック量のデータ計測間隔は、任意に設定することができる。
【0073】
次に、環境に応じた光スイッチの割り出し処理(S302)として、ニューラルネットワークを用いた第3の制御方法の実施例について説明する。
図11に、前述の図1のシステム構成におけるニューラルネットワークモデルの構成例を示す。ネットワークモデルは、入力層50、第1中間層52、第2中間層54、出力層56の4層で構成される。入力層50では、各下位通信用ノードの各波長のトラフィック量を取り込む。ただし、ここでは入力の対象となる各下位通信用の各波長は、固定波長に限定している。
【0074】
第1中間層52のA部では、入力された波長ごとに[数1]に基づいて、トラフィック量の総和を求める。
【0075】
【数1】
【0076】
ここで、TRAFF(λi,j)は、下位通信用ノードjにおけるλiの波長のトラフィック量を示す。これにより得られた各波長におけるトラフィック量の総和に対して、所定量を超えているかどうかの閾値処理が行われる。たとえば、越えている場合は「1」が、超えていない場合は「0」が、出力される。
第1中間層52のB部では、各波長におけるトラフィック量が最大のノードを抽出するための処理が行われる。すなわち、[数2]に基づいて、すべての下位通信用ノードにおけるトラフィック量を比較し、最大トラフィック量のノードを選択する。
【0077】
【数2】
【0078】
そして、トラフィック量が最大のノードは「1」、その他のノードは「0」が出力される。
【0079】
第2中間層54には、第1中間層52のA部とB部の出力が入力される。そこで、トラフィック量の最も多い下位通信用ノードの波長の割り出しとその波長のトラフィック量が所定量を超えているか否かとから、たとえば、[数3]に基づいて、変更する必要のある固定波長の光スイッチの割り出しを行う。
【0080】
【数3】
【0081】
ここで、Wkは重み付けであり、Xkは、第1中間層52におけるA部およびB部の出力値を示している。たとえば、Wkの初期値としては0.5が選択される。
出力層56では、第2中間層54より出力されてきた値に対して、所定量の閾値を設定することで、所定量より値が高い場合は、「1」を、低い場合は、「0」を出力する。これにより、切り替えるべき光スイッチの状態が出力される。
【0082】
そして、この出力層56に対して現状のトラフィック量から算定した光スイッチ状態を教師信号として与えることにより、たとえばバックプロパゲーションによる重み付け値の学習を行う。
ここで行っている教師信号を与える処理において、たとえば、光スイッチを切り替える必要があるほどトラフィックが流れている状態では、トラフィック量が帯域の100%となっている可能性があり、輻輳が生じている可能性がある。そのため、他の波長に割り振るための光スイッチの切り替えを行う必要があり、出力層56からの出力結果に基づき、切り替えるべき光スイッチの割り出しを行う。
【0083】
このように、各ノードの各波長のトラフィック量が入力されることにより、各ノードの光スイッチのパターンが決まることになる。
これにより、ある時間間隔、例えば、1時間間隔で学習させることにより、光スイッチ状態を求め、それを用いて、1日、1週間などの周期に応じた予測切り替えを行うことが可能となる。
【0084】
次に、遺伝的アルゴリズムを用いた制御方法の実施例について説明する。
図12(a)に、前述の図1のシステム構成における染色体の構成例を示す。この染色体は、各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fの固定波長により構成される。図12(a)では、各ノードに割り当てられている固定波長を順に列挙している。
【0085】
図12(b)に遺伝的アルゴリズムによる波長切り替え処理の処理フローを示す。
最初に、初期集団を生成する(S400)。この初期集団を構成する染色体の数量は、ネットワークシステムの規模に依存している。すなわち、各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fにおける各固定波長の数量に対応しており、たとえば、ここではN個とする。各染色体は、各々遺伝子を保持している。各遺伝子は、「1」もしくは「0」の数値を持ち、各ノードの各光スイッチのオン・オフの状態に対応している。初期集団の個体数はM個とし、各個体における各染色体の遺伝子の初期値はランダムに与えられている。まず、この初期状態における個体の各染色体の評価を行う。なお、評価の値は、後に述べる適応度の算出に利用される。
【0086】
評価は、固定波長のトラフィック量の計測結果を基に行う。
まず、M個の各個体における光スイッチの状況とトラフィック量の計測結果とに基づいて、各波長のトラフィック量の占有率を推定し、推定された占有率に基づいて各染色体を評価する。評価は、占有率が80%以上または10%以下の場合、染色体毎に評価として「1」が加算される。このように、各個体におけるすべての染色体について評価を行った結果、得られた値を染色体数Nで除算し、「1」から差し引くことにより、適応度が算出される。
【0087】
次に、選択処理を行う(S402)。選択処理は、M個の集団の中から2つの親個体を選ぶ。そして、選択された親個体を交叉させ、2つの子個体を生成する交叉処理を行う(S404)。この交叉を生じさせる確率はPcとする。
また、交叉した後には突然変異処理を行う(S406)。突然変異処理は、交叉後の各染色体について染色体の一部を書き換える。ここでは、染色体内のi番目の遺伝子を書き換える。iは染色体の長さNより小さい値をとる。書き換えは、ランダムに「0」または「1」に書き換える。この突然変異を発生させる確率はPmとする。
【0088】
次に、以上のような遺伝子操作を行った個体についてトラフィック量の推定を行って適応度を算出することで評価を行う(S408)。評価は、上述したように、M個の初期集団を評価した方法と同一とする。適応度が所定値より大きい値である場合は、光スイッチの切り替え処理(S412)に移行し、所定値より小さい場合は置換処理(S410)に移行する。光スイッチの切り替え処理(S412)への移行を行うか否かについては、適応度が所定値以下か否かにより判断する。つまり、適応度が小さい状態で光スイッチの切り替えを行った場合、トラフィック量に対応していないため輻輳状態を招くおそれがある。そのため適応度が所定値より小さい状態では、その世代での個体の遺伝子状態に基づく光スイッチの切り替えを行わない。光スイッチの変更は所定値以上の適応度になった世代からの適応度の最も高い個体を採用する。これにより、トラフィック量に対応していない世代でのトラフィック量に対応していない光スイッチ状態を回避することができる。
【0089】
置換処理(S410)は、たとえば、2つの親個体と2つの子個体のうち適応度が高い2個体を親個体として置換処理する。置換処理後は選択処理に戻り上記の処理を繰り返す。光スイッチ切り替え処理(S412)は、同一の下位通信用ノードの中の光スイッチがオフになっている波長を固定波長に割当てる処理を行う。光スイッチがオフになっている波長がない場合には、他のトラフィック量の少ない固定波長に割当てる。光スイッチ切り替え処理(S412)の詳細については、後述する。
この光スイッチ切り替え処理(S412)を行った後に、再び上述した方法と同様の方法で評価を行い、適応度が閾値以下の場合は、S410に戻って置換処理を行い、選択処理から処理を繰り返す。適応度が閾値以上の場合は、処理を終了する。
【0090】
この構成により、リアルタイムの光スイッチの切り替えに対応することも可能であるが、切り替える時間間隔ごとの学習パターンを生成し、予測切り替えを行うようにしてもよい。
たとえば、一週間のデータを集め、その集めたデータに基づいて学習パターンを作成し、予測切り替えに利用することができる。
【0091】
次に、図10における光スイッチの切り替え処理(S304)および図12における光スイッチの切り替え処理(S412)について図13により説明する。
まず、制御部34において光スイッチ割り出し処理(S302)または評価処理(S408)により割り出された光スイッチのオン・オフ情報が出力されると(S500)、該オン・オフ情報に基づいて制御部34の光スイッチ設定テーブル36が書き換えられる(S502)。続いて、書き換えられた光スイッチ設定テーブル36の情報に基づいて、書き換えられた光スイッチに対する下位通信用ノードに対して光スイッチ設定テーブル36の情報が送信される(S504)。そして、光スイッチ設定テーブル36の情報を受信した下位通信用ノードは、受信した情報に基づいて、可変ADM装置10Sの光スイッチの切り替えを行う(S506)。また、光スイッチ設定テーブル36の書き換えに伴って、対応する下位通信用ノードの出力ポート−アドレステーブル38Sが書き換えられ(S508)、終了(S510)する。
【0092】
上記、各制御方法において、光スイッチをオンにする処理と光スイッチをオフにする処理とを分割して行うようにしてもよい。すなわち、図14に示すように、トラフィック量の増大に対応するブロック1(S602)と光スイッチ状態の冗長に対応するブロック2(S604)の2つのブロックを設け、これらをトラフィック量に応じて交互に実行されるようにすることで、固定波長の割り当てを最適化させることができる。
ブロック1(S602)は、トラフィック量に対して割り当てられている波長数が、少ない状態に対応して光スイッチをオンする機能を持っている。
対して、ブロック2(S604)は、固定波長のトラフィック量が所定量より少なくなった場合、その固定波長の光スイッチ状態をオフにする機能を持っており、ブロック1(S602)における固定波長の冗長性を改善する役割を持っている。
【0093】
たとえば、遺伝的アルゴリズムを利用した光スイッチの切り替えは、評価が、トラフィック量の占有率が80%以上という基準のみで行うと、必要である光スイッチがオフになっていることはないが、不必要な光スイッチがオンになっている可能性がある。そのため、図14に示すような処理フローを利用する場合は、まず、遺伝的アルゴリズムによる処理1を行う(S602)。この遺伝的アルゴリズムによる処理1は、上記の図12(b)において、評価基準をトラフィック量が帯域のたとえば80%以上という基準としたものである。次の処理として、遺伝的アルゴリズムによる処理2を行う(S604)。この遺伝的アルゴリズムによる処理2では、図12(b)において、評価基準を変える。つまり、トラフィック量が帯域のたとえば10%以下という基準とすることにより、不必要な光スイッチをオフにすることが可能である。
【0094】
なお、また、上記2つの基本の制御方法、および、学習アルゴリズムによる制御方法は目的によって使い分けて使用することができ、さらに、条件によりこれらを組合せて用いることにより、より適応性に優れた光リング型ネットワークによる波長多重光通信システムを構成することができる。
【0095】
以上のようなトラフィック制御を行うことにより、ネットワーク構成の環境変化に対して柔軟に対応することが可能な波長多重光通信システムを構成することができる。
続いて、以下、本発明にかかる可変ADM装置を用いた波長多重光通信システムによる環境変化への対応機能の例について述べる。
【0096】
まず、図15に、小規模なトラフィック量の増加に対する小規模な光リング型ネットワーク22による波長多重光通信システム20の構成の例を示す。小規模な拡張を行う際には、ノードを追加することで対処が可能である。ここでは、上位通信用ノード24の入れ換えは行わず、下位通信用ノード26c,26d,26eの3台のノードを追加することで拡張している。上位通信用ノード24の持つ波長帯域の範囲内、ここでは4波長の範囲内でのノードの拡張が可能となる。
【0097】
図15(a)が増設前、図15(b)が増設後を示している。増設前では、上位通信用ノード24と2台の下位通信用ノード26aおよび下位通信用ノード26bとで構成される。これに対し、増設後では、上位通信用ノード24と5台の下位通信用ノード26a,26b,・・・,26eとで構成される。各下位通信用ノード26a,26b,・・・,26eに対応する波長数が、2波長、3波長で構成されるような小規模でも光リング型ネットワーク22システムは成立する。
【0098】
また、下位通信用ノード26c,26d,26eが増設されるに伴って、制御されるべき固定波長の光スイッチも増加する。そのため、上述の制御方法を用いて本発明にかかる波長多重光通信システム20において増設された下位通信用ノード26c,26d,26eを含めて制御するために、レイヤ3スイッチ28Mにおける出力ポート−アドレステーブル38M、WDMテーブル40および制御部34における光スイッチ設定テーブル36に対して、追加の再設定が行われる。
【0099】
図16は、本発明にかかる可変ADM装置を用いた波長多重光通信システム20におけるトラフィック量の増大に対する図15とは異なる構築例を示している。図16(a)は、構築前の光リング型ネットワーク22を示しており、上位通信用ノード24と3台の下位通信用ノード26a,26b,26cとによって構成されている。上位通信用ノード24は、λ11、λ12、λ13、λ14の波長に対応しており、下位通信用ノード26aは、波長λ11、λ12、下位通信用ノード26bは、λ11、λ13、下位通信用ノード26cは、λ11、λ14に対応している。図16(b)は、構築後、すなわち、トラフィック増に対応した光リング型ネットワーク22を示しており、上位通信用ノード24と5台の下位通信用ノード26a,26b,26c,26d,26eとによって構成されている。
【0100】
図15(a)と異なる点は、上位通信用ノード24が4波長対応からλ11、λ12、λ13、λ14、λ15、λ16、λ17、λ18の8波長対応に変更した点、および、λ11に対応した下位通信用ノード26dとλ11、λ12、λ17、λ18に対応した下位通信用ノード26eとλ11、λ12、λ13、λ14に対応した下位通信用ノード26fを増設したことである。つまり、4波長分の帯域を新しく拡張する下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fに割り当てることができる。ここでは下位通信用ノード26d,26e,26fの3台が拡張されている。波長の使用状態から、更なる拡張も可能である。このように大規模な拡張が可能なシステムを持ち合わせている。
【0101】
また、上位通信用ノード24の入れ換えおよび下位通信用ノード26d,26e,26fが増設されるに伴って制御されるべき固定波長の光スイッチも増加する。そのため、上述の制御方法を用いて本発明にかかる波長多重光通信システム20において増設されたノードを含めて制御するために、レイヤ3スイッチ28Mにおける出力ポート−アドレステーブル38M、WDMテーブル40および制御部34における光スイッチ設定テーブル36に対して、追加の再設定が行われる。
【0102】
このように、本発明にかかる波長多重光通信システム20は、上位通信用ノード24を変更して帯域増を図る大規模な拡張にも、上位通信用ノード24の帯域内での下位通信用ノードを追加する比較的小規模な拡張にも、レイヤ3スイッチ28Mにおける出力ポート−アドレステーブル38M、WDMテーブル40および制御部34における光スイッチ設定テーブル36を再設定するだけで対応することができるとした、柔軟な拡張性を持ったシステムである。また、固定波長の選択肢を増加させることで、トラフィックの輻輳状態を迅速に解消できるとした、波長多重光通信システムである。
【0103】
なお、光スイッチの切り替えの制御方法に関しては、上述した2つの基本の制御方法が適用可能である。また、2つの基本の制御方法を併用しながら学習を行うことにより、さらに予測切り替えシステムの構築が可能となる。システム構成が変更しても本発明にかかる波長多重光通信システム20は、そのシステム構成の変更に対して迅速に対応することが可能である。
【0104】
図17は、可変ADM装置を用いた波長多重光通信システム20において、下位通信用ノード26a,26b,26c,26d、もしくは、下位通信用ノード26a,26b,26c,26dより下位の通信システムにおけるネットワークに障害が生じた場合のトラフィック量の制御に対する説明図である。図17(a)は、下位通信用ノード26aにおける障害発生前を示しており、図17(b)は、下位通信用ノード26cにおける障害発生後を示している。これらのシステムは、たとえば、上位通信用ノード24と4台の下位通信用ノード26a,26b,26c,26dとで構成される。
【0105】
ここでは、下位通信用ノード26aに障害が生じた条件で示す。図17(a)では、波長λ11、λ12、λ13の3つがオン状態となっているが、図17(b)では、すべてオフ状態である。つまり、下位通信用ノード26aからは分岐・挿入されていない。この状態では、下位通信用ノード26aや下位通信用ノード26aより下位の通信システムに情報が流れることがない。
【0106】
図17を用いて、下位通信用ノード26aより下位の通信システムにおけるシステム障害により、情報を流さないような設定をする場合について説明する。基本的に、レイヤ3スイッチ、もしくは、それより下位の通信システムにおけるユーザ側で障害が生じ下位通信用ノード26a以下の通信を止める必要性が生じた場合、可変ADM装置10Saの光スイッチをオフにすることにより対処することができる。この可変ADM装置10Saを利用した波長多重光通信システムでは、通過させたくない場所にパケットを通過させないだけでリング内の他の下位通信用ノード26b,26c,26dで必要なパケットには影響を与えないように構成できる。なお、情報を遮断された下位通信用ノード26a以下へのパケットについては、行き先が遮断されているためパケットの有効期間を示すTTL(TIME TO LIVE)がカウントされているためそのパケットは廃棄される。
【0107】
また、故障が生じた場合のトラフィック量の制御については、故障したことにより使用している下位通信用ノード数が減少することになる。そのため、そのままの光スイッチの予測切り替えシステムを用いることができるが、暫定的に2つの基本の制御方法によるシステムを利用し、復旧後元の予測切り替えシステムに戻す処理を採用することもできる。このように本発明にかかる波長多重光通信システム20は、適応性に優れている。
【0108】
図18は、可変ADM装置を用いた波長多重光通信システム20の光リング型ネットワーク22において、データの通信量が増加している下位通信用ノード間に対して同じ波長を割当てている状態の例を示している。この光リング型ネットワーク22は、上位通信用ノード24と4つの下位通信用ノード26a,26b,26c,26dとで構成されている。たとえば、図18に示すように、下位通信用ノード26aと下位通信用ノード26cとの間、および下位通信用ノード26bと下位通信用ノード26dとの間で、データ量が増加していると仮定する。このとき、制御部34は、各下位通信用ノードにおける固有波長を利用して、データの通信量が増加しているノード間に対しては、それぞれの下位通信用ノード間に共通して使用されている固有波長を共通波長に割り当てることによって、光リング型ネットワーク22全体のトラフィック量の制御を行うことができる。たとえば、下位通信用ノード26aと下位通信用ノード26cとの間において、データの通信量が増加しているので、λ11、λ12、λ14を共通波長として設定することができる。また、下位通信用ノード26bと下位通信用ノード26dとの間において、データの通信量が増加しているので、λ11、λ13を共通波長として設定することができる。
なお、共通波長として設定する際には、増加しているデータの通信量に応じて、共通波長に切り替える光スイッチの数を調整することができる。このようにデータの通信量の増加している下位通信用ノード間に共通の波長を割り当てることによりトラフィック量の制御を行うことができる。
【0109】
たとえば、送信量が多い、ビデオオンデマンドなどの映像情報のデータストリーミング、インターネット会議などの双方向での固定した相手とのデータの通信量が多い場合、別に固定波長を割当てる方法がある。つまり、固定波長は上位通信用ノード24との通信を前提としているが、通信量の多いノード間については、上位通信用ノード24との通信と同様に扱い特定の固定波長を割当てる。これにより、ネットワークシステムとしてバランスの取れた状態を得ることができる。
【0110】
このような特定の下位通信用ノード間で通信量が多いシステムについての光スイッチ切り替え方法について説明する。2つの基本の制御方法を採用することも1つの方法であるが、ニューラルネットワークや遺伝的アルゴリズムなどの学習アルゴリズムを適用することも1つの方法である。
たとえば、ニューラルネットワークのモデルは、下位通信用ノード間の相互通信量が多いという特徴に対応したものではない。相互通信量が多いことにより共通の固定波長を多く設定することがシステム設計としてなされる。つまり、これにより、相互通信量が多い下位通信用ノードに対処したシステムの構築が可能となる。それは、相互通信量の多い下位通信用ノード間に与えた共通の固定波長を共通波長として扱い常にオン状態とすることにより対処するという方法である。共通の固定波長が多く存在している場合は、状況にもよるが1つを共通波長として扱い、他の波長を固定波長として扱い、学習アルゴリズムにより光スイッチを制御する方法がある。
また、遺伝的アルゴリズムによっても同様で、相互通信量の多い下位通信用ノード間で共通している固定波長を共通波長として扱い、染色体に含まないような処理をすることが可能となる。これにより、上述したニューラルネットワークのモデルと同様に相互通信量を考慮システム構成とすることができる。
【0111】
図19に、相互通信量を考慮した光スイッチの切り替え制御に関する処理フローを示す。まず、各下位通信用ノードを通過するパケットのあて先を調べ、リング内の通信状態を抽出し相互通信量を調べる(S702)。次に、この相互通信量の計測結果より、トラフィック量が所定量を超えるか否かの判定をする(S704)。これにより、下位通信用ノード間の相互通信量が多いかどうかの判断基準とする。相互通信量が多いと判断された場合は、該当する光スイッチを共通波長として取り扱い、当該光スイッチをオンに切り替える処理を行う(S706)。また、光スイッチを切り替えると共に、レイヤ3スイッチ28Mにおける出力ポート−アドレステーブル38Mおよび制御部34における光スイッチ設定テーブル36に対して書き換えが行われる。なお、ここで、共通波長として扱った波長は、学習アルゴリズムによる制御の対象には入らない。
これまでの処理は、学習アルゴリズムの前処理として行われる。また、この前処理を2つの基本の制御方法に適用しても一定の効果が得られる。この処理の後、強化学習やニューラルネットワーク等の学習アルゴリズムを実施する(S708)。
【0112】
以上のような相互通信量を考慮した前処理を行うことにより、光リング型ネットワーク22内の通信状況に応じて対応することが可能であると考えられる。また、2つの基本の制御方法、および、上述した学習によるアルゴリズムを使い分けて、また、条件によりこれらを組合せて用いることで、より適応性に優れた光リング型ネットワーク22における波長多重光通信システム20を構成することができる。
【0113】
図20は、可変ADM装置を用いた波長多重光通信システム20の光リング型ネットワーク22において、下位通信用ノードの入れ替えの容易性を示した図である。図20(a)と図20(b)の相違点は、下位通信用ノード26aと下位通信用ノード26fとの光リング型ネットワーク22に接続されている場所が入れ替わった点にある。図20(a)および図20(b)は、ともに上位通信用ノード24と6台の下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fとで構成されている。
【0114】
下位通信用ノードを移動しても、割当て波長が変わることはなく、下位通信用ノードが接続している光リング型ネットワーク22内でのIPアドレスの変更等は必要でなく、容易に移動ができることを示している。
【0115】
たとえば、会社の中で部署間の配置変換でビルの階の変更や建物の変更が生じた場合、当該下位通信用ノードを一緒に移動することにより、ネットワークの再構築などをする必要がなく、移動した時の設定を容易にしている。これに加え、新たな部署に新しい下位通信用ノードを割り当てるといった拡張性を組み合わせることも可能である。このような移動の容易性はネットワークの柔軟性を増すことにつながり、拡張性があり、より扱いやすいネットワークシステムである。
波長スイッチの切り替えについては、何の変更なしに使用することができる。以前に学習アルゴリズムを使用していた場合も2つの基本の制御方法を使用していたとしても、それらのシステムをそのまま使用することが可能な適応性に優れた光リング型ネットワーク22における波長多重光通信システム20を構成することができる。
【0116】
上述した実施形態は、それぞれを組合せて適用することが可能であり、それによって、さらに柔軟性の高い光リング型ネットワーク22を用いた波長多重光通信システム20を構築することが可能である。
【0117】
なお、本願発明にかかる波長多重光通信システムにおいて、上位通信用ノードもしくは下位通信用ノードにおける可変ADM装置とレイヤ3スイッチとの通信は、電気信号により通信が行われているが、それに限られるものではなく、光信号のみで通信が行われてもよい。その場合は、上位通信用ノードおよび下位通信用ノードには、図2および図4に示すような光電変換装置42は、備えなくてもよい。
【0118】
また、本願発明にかかる波長多重光通信システムの実施形態では、下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fのレイヤ3スイッチ28Sの各出力ポートにおけるトラフィック量を監視・計測するためのトラフィック監視部32が接続されていてもよい。これにより、下位通信用ノード26a,26b,・・・,26fにおけるトラフィック監視部32において監視・計測された波長ごとのトラフィック量の状況が、たとえば、表示モニタに表示されることで、波長ごとのトラフィック量の状況が視覚的に把握できる。また、トラフィック監視部32により計測された情報は、制御部34に送信されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明係る波長多重光通信システムのシステム構成図である。
【図2】本発明に係る波長多重光通信システムに使用される上位通信用ノードの概念図である。
【図3】図1に示す波長多重光通信システムにおけるWDMテーブルの一例である。
【図4】本発明に係る波長多重光通信システムに使用される下位通信用ノードの概念図である。
【図5】本発明係る波長多重光通信システムを利用した各ノードにおける固定波長の光スイッチの時間変化の例を示す。
【図6】図5に示す波長多重光通信システムにおけるWDMテーブルの一例である。
【図7】図5に示す波長多重光通信システムにおける光スイッチ設定テーブルの時間変化を示す。
【図8】本発明に係る波長多重光通信システムの第1の制御方法の処理手順を示すフロー図である。
【図9】本発明に係る波長多重光通信システムの第2の制御方法の処理手順を示すフロー図である。
【図10】本発明に係る波長多重光通信システムの第3の制御方法の基本の処理手順を示すフロー図である。
【図11】ニューラルネットワークモデルの構成例を示す図である。
【図12】(a)は遺伝的アルゴリズムに用いる染色体の構成例を示し、(b)は遺伝的アルゴリズムによる波長切り替え処理の処理手順を示すフロー図である。
【図13】図10および図12における光スイッチ切り替え処理の処理手順を示す図である。
【図14】本発明に係る波長多重光通信システムの制御方法において光スイッチをオンにする処理とオフにする処理を分離した場合の処理手順を示すフロー図である。
【図15】本発明に係る波長多重光通信システムによる環境変化への対応機能の例を示す図である。
【図16】本発明に係る波長多重光通信システムによる環境変化への他の対応機能の例を示す図である。
【図17】本発明に係る波長多重光通信システムによる環境変化へのさらに他の対応機能の例を示す図である。
【図18】本発明に係る波長多重光通信システムによる環境変化へのさらに他の対応機能の例を示す図である。
【図19】本発明に係る波長多重光通信システムの制御方法において、相互通信量を考慮した光スイッチの切り替え制御を行った場合の処理手順を示すフロー図である。
【図20】本発明に係る波長多重光通信システムによる環境変化へのさらに他の対応機能の例を示す図である。
【図21】従来のスライディングフェルールによる光波長選択型可変ADM装置の概略図である。
【図22】本発明に係る波長多重光通信システムに使用される光波長選択型可変ADMである。
【符号の説明】
【0120】
10 光波長選択型可変ADM装置
12 光スイッチ
14 波長合波器
16 波長分波器
18 スイッチ信号
20 波長多重光通信システム
22 光リング型ネットワーク
24 上位通信用ノード
26 下位通信用ノード
28 レイヤ3スイッチ
30 トラフィック監視・制御装置
32 トラフィック監視部
34 制御部
36 光スイッチ設定テーブル
38 出力ポート−アドレステーブル
40 WDMテーブル
42 光電変換装置
50 入力層
52 第1中間層
54 第2中間層
56 出力層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位の通信システムに接続する上位通信用ノードと、下位の通信システムに接続する複数の下位通信用ノードとを含み、波長分割多重伝送を行う光リング型ネットワークであって、
前記上位通信用ノードおよび前記下位通信用ノードに備えられ、光スイッチを用いて、波長分割多重光信号に含まれる複数の光信号から任意の波長の光信号を組み合わせて上位または下位の通信システムに分岐・挿入させることができる光波長選択型可変ADM装置と、
前記光波長選択型可変ADM装置に分岐・挿入される波長ごとのトラフィック量を監視するトラフィック監視手段と、
前記光波長選択型可変ADM装置の前記光スイッチを制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記波長分割多重光信号に含まれる複数の波長の少なくとも一つを主として下位通信用ノード間の光通信のために利用する共通波長として割り当てる機能と、
前記共通波長を除く波長を主として上位通信用ノードと少なくとも一つの下位通信用ノードとの間の光通信のために利用する固定波長として割り当てる機能とを有し、
前記トラフィック監視手段により監視されている各波長の光信号のトラフィックの偏在に応じて前記光スイッチを制御する機能を有することを特徴とする波長多重光通信システム。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記光波長選択型可変ADM装置の前記光スイッチの設定に基づいて、前記波長分割多重光信号の波長と宛先アドレスとを対応付ける設定を変更する機能を有することを特徴とする、請求項1に記載の波長多重光通信システム。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記光リング型ネットワーク内の波長分割多重光信号に含まれる各波長のパケットの宛先アドレスを抽出する機能と、
前記抽出された宛先アドレスが前記下位の通信システムのいずれかに存在するか否かを判定する機能とを含み、
前記宛先アドレスが前記下位の通信システムに存在する場合は、前記光信号を前記共通波長に割り当て、
前記宛先アドレスが前記下位の通信システムに存在しない場合は、前記光信号を前記固定波長に割り当てることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の波長多重光通信システム。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記下位通信用ノードにおける光スイッチの状態を導出する学習モデルを有し、
前記複数の下位通信用ノードの各固定波長におけるトラフィック量が所定量を超えているか否かを判定する機能と、
前記学習モデル内の光スイッチの状態と各波長のトラフィック量から算出された光スイッチの状態とを比較し、光スイッチの状態が一致している数を算出することで評価する機能と、
前記学習モデル内での各波長の光スイッチの状態を逐一逆にした遷移状態を生成する機能と、
前記各遷移状態において、各波長のトラフィック量を推定する機能と、
前記推定されたトラフィック量に基づいて前記各遷移状態を評価する機能と、
前記遷移状態のうち、最も高い評価を得た遷移状態を選択する機能と、
遷移状態前の評価と遷移状態後の評価との差を報酬として算出する機能と、
前記算出された報酬を累積することで価値として算出する機能とを有し、
前記算出された価値が収束したときの遷移状態における光スイッチの設定情報を前記光波長選択型可変ADM装置に出力するようにしたことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記下位通信用ノードの各固定波長におけるトラフィック量を入力する機能と、
前記入力されたトラフィック量の総量を算出する機能と、
前記算出されたトラフィック量の総量と所定値とを比較した結果を出力する機能と、
前記各固定波長における前記算出されたトラフィック量の総量が最大の前記下位通信用ノードを選択する機能と、
現状のトラフィック量から算定した光スイッチ状態を教師信号として与えることにより重み付け係数を算出する機能と、
前記出力された比較した結果と前記選択された前記下位通信用ノードとにそれぞれ前記算出された重み付け係数を乗算して累積する機能と、
前記累積された結果と所定値とを比較することにより切り替える光スイッチを出力する機能とを有し、
現状のトラフィック量から算定した光スイッチの状態を教師信号として学習させることにより得られた光スイッチの設定情報を前記光波長選択型可変ADM装置に出力するようにしたことを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記下位通信用ノードの各固定波長における前記光スイッチの状態を表現した染色体を含む遺伝子モデルを有し、
前記染色体を備える個体をランダムに複数生成することで初期集団を生成する機能と、
前記遺伝子モデルにおける各個体の光スイッチの状態に対応するトラフィック量を推定する機能と、
前記推定された結果に基づいて各波長のトラフィック量の占有率を演算する機能と、
前記演算された占有率に基づいて前記染色体を評価する機能と、
前記染色体の評価に基づいて適応度を算出する機能と、
前記算出された適応度に基づいて親個体を選び交叉させることで子個体を生成する機能と、
前記交叉された個体の染色体の一部を書き換える機能と、
前記交叉された個体または前記染色体の一部を書き換えられた個体の適応度を算出する機能と、
前記算出された適応度を定められた所定値と比較し、2つの前記親個体と2つの前記子個体のうち適応度が高い2個体を親個体として置換する機能とを有し、
前記算出された適応度が一定の条件を満たしたときの個体における光スイッチの設定情報を前記光波長選択型可変ADM装置に出力するようにしたことを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記光リング型ネットワークにおけるトラフィック量の増減に応じて、前記光リング型ネットワークに接続されるノードが追加または削除された場合に、波長選択情報を再設定する機能を有し、システム構成の変更に迅速に対応できるようにしたことを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記光リング型ネットワークにおけるトラフィック量の増減に応じて、前記光リング型ネットワークに接続されている前記上位通信用ノードを、前記上位通信用ノードよりも多い波長数が割り当てられた光波長選択型可変ADM装置を含む上位通信用ノードに置換された場合に、前記固定波長の選択肢を増加させる機能を有し、トラフィックの輻輳を迅速に解消できることを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記複数のノードまたは前記下位の複数の通信システムから障害が発生した場合に、前記複数のノードまたは前記下位の複数の通信システムが接続されるノードに対して光信号の分岐・挿入を停止させる機能を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項10】
前記制御手段は、
前記光リング型ネットワークに接続されている前記複数のノードのうち特定のノード間において、前記共通波長とは異なる共通の波長を共通波長として通信できるように前記波長選択型可変ADM装置の光スイッチを制御する機能を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項11】
前記制御手段は、
前記光リング型ネットワークに接続される前記複数のノードのうち、少なくとも1つのノードの前記光リング型ネットワークにおける接続場所が変更された場合に、波長選択情報を再設定する機能を有し、システム構成の変更に迅速に対応できるようにしたことを特徴とする、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項1】
上位の通信システムに接続する上位通信用ノードと、下位の通信システムに接続する複数の下位通信用ノードとを含み、波長分割多重伝送を行う光リング型ネットワークであって、
前記上位通信用ノードおよび前記下位通信用ノードに備えられ、光スイッチを用いて、波長分割多重光信号に含まれる複数の光信号から任意の波長の光信号を組み合わせて上位または下位の通信システムに分岐・挿入させることができる光波長選択型可変ADM装置と、
前記光波長選択型可変ADM装置に分岐・挿入される波長ごとのトラフィック量を監視するトラフィック監視手段と、
前記光波長選択型可変ADM装置の前記光スイッチを制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記波長分割多重光信号に含まれる複数の波長の少なくとも一つを主として下位通信用ノード間の光通信のために利用する共通波長として割り当てる機能と、
前記共通波長を除く波長を主として上位通信用ノードと少なくとも一つの下位通信用ノードとの間の光通信のために利用する固定波長として割り当てる機能とを有し、
前記トラフィック監視手段により監視されている各波長の光信号のトラフィックの偏在に応じて前記光スイッチを制御する機能を有することを特徴とする波長多重光通信システム。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記光波長選択型可変ADM装置の前記光スイッチの設定に基づいて、前記波長分割多重光信号の波長と宛先アドレスとを対応付ける設定を変更する機能を有することを特徴とする、請求項1に記載の波長多重光通信システム。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記光リング型ネットワーク内の波長分割多重光信号に含まれる各波長のパケットの宛先アドレスを抽出する機能と、
前記抽出された宛先アドレスが前記下位の通信システムのいずれかに存在するか否かを判定する機能とを含み、
前記宛先アドレスが前記下位の通信システムに存在する場合は、前記光信号を前記共通波長に割り当て、
前記宛先アドレスが前記下位の通信システムに存在しない場合は、前記光信号を前記固定波長に割り当てることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の波長多重光通信システム。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記下位通信用ノードにおける光スイッチの状態を導出する学習モデルを有し、
前記複数の下位通信用ノードの各固定波長におけるトラフィック量が所定量を超えているか否かを判定する機能と、
前記学習モデル内の光スイッチの状態と各波長のトラフィック量から算出された光スイッチの状態とを比較し、光スイッチの状態が一致している数を算出することで評価する機能と、
前記学習モデル内での各波長の光スイッチの状態を逐一逆にした遷移状態を生成する機能と、
前記各遷移状態において、各波長のトラフィック量を推定する機能と、
前記推定されたトラフィック量に基づいて前記各遷移状態を評価する機能と、
前記遷移状態のうち、最も高い評価を得た遷移状態を選択する機能と、
遷移状態前の評価と遷移状態後の評価との差を報酬として算出する機能と、
前記算出された報酬を累積することで価値として算出する機能とを有し、
前記算出された価値が収束したときの遷移状態における光スイッチの設定情報を前記光波長選択型可変ADM装置に出力するようにしたことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記下位通信用ノードの各固定波長におけるトラフィック量を入力する機能と、
前記入力されたトラフィック量の総量を算出する機能と、
前記算出されたトラフィック量の総量と所定値とを比較した結果を出力する機能と、
前記各固定波長における前記算出されたトラフィック量の総量が最大の前記下位通信用ノードを選択する機能と、
現状のトラフィック量から算定した光スイッチ状態を教師信号として与えることにより重み付け係数を算出する機能と、
前記出力された比較した結果と前記選択された前記下位通信用ノードとにそれぞれ前記算出された重み付け係数を乗算して累積する機能と、
前記累積された結果と所定値とを比較することにより切り替える光スイッチを出力する機能とを有し、
現状のトラフィック量から算定した光スイッチの状態を教師信号として学習させることにより得られた光スイッチの設定情報を前記光波長選択型可変ADM装置に出力するようにしたことを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記下位通信用ノードの各固定波長における前記光スイッチの状態を表現した染色体を含む遺伝子モデルを有し、
前記染色体を備える個体をランダムに複数生成することで初期集団を生成する機能と、
前記遺伝子モデルにおける各個体の光スイッチの状態に対応するトラフィック量を推定する機能と、
前記推定された結果に基づいて各波長のトラフィック量の占有率を演算する機能と、
前記演算された占有率に基づいて前記染色体を評価する機能と、
前記染色体の評価に基づいて適応度を算出する機能と、
前記算出された適応度に基づいて親個体を選び交叉させることで子個体を生成する機能と、
前記交叉された個体の染色体の一部を書き換える機能と、
前記交叉された個体または前記染色体の一部を書き換えられた個体の適応度を算出する機能と、
前記算出された適応度を定められた所定値と比較し、2つの前記親個体と2つの前記子個体のうち適応度が高い2個体を親個体として置換する機能とを有し、
前記算出された適応度が一定の条件を満たしたときの個体における光スイッチの設定情報を前記光波長選択型可変ADM装置に出力するようにしたことを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記光リング型ネットワークにおけるトラフィック量の増減に応じて、前記光リング型ネットワークに接続されるノードが追加または削除された場合に、波長選択情報を再設定する機能を有し、システム構成の変更に迅速に対応できるようにしたことを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記光リング型ネットワークにおけるトラフィック量の増減に応じて、前記光リング型ネットワークに接続されている前記上位通信用ノードを、前記上位通信用ノードよりも多い波長数が割り当てられた光波長選択型可変ADM装置を含む上位通信用ノードに置換された場合に、前記固定波長の選択肢を増加させる機能を有し、トラフィックの輻輳を迅速に解消できることを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記複数のノードまたは前記下位の複数の通信システムから障害が発生した場合に、前記複数のノードまたは前記下位の複数の通信システムが接続されるノードに対して光信号の分岐・挿入を停止させる機能を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項10】
前記制御手段は、
前記光リング型ネットワークに接続されている前記複数のノードのうち特定のノード間において、前記共通波長とは異なる共通の波長を共通波長として通信できるように前記波長選択型可変ADM装置の光スイッチを制御する機能を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【請求項11】
前記制御手段は、
前記光リング型ネットワークに接続される前記複数のノードのうち、少なくとも1つのノードの前記光リング型ネットワークにおける接続場所が変更された場合に、波長選択情報を再設定する機能を有し、システム構成の変更に迅速に対応できるようにしたことを特徴とする、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の波長多重光通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2008−28526(P2008−28526A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196711(P2006−196711)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(300054239)株式会社ハネロン (3)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(300054239)株式会社ハネロン (3)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】
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