説明

光源ユニット及びこの光源ユニットを具備した製版露光装置

【課題】
本発明の目的は、感光膜の硬化を十分に得られる光源ユニット及びこの光源ユニットを具備した製版露光装置を提供することにある。
【解決手段】
第1の発明に係る製版露光装置は、複数の固体発光素子を備える光源ユニットと、該光源ユニットからの紫外線を照射される被照射物が載置される載置台と、を有する製版用露光装置において、該光源ユニット又は該載置台には、該光源ユニットと該載置台とを相対的に移動させる駆動手段が設けられ、該複数の固体発光素子は、紫外線を出射する第1の固体発光素子と、該第1の固体発光素子が出射する紫外線より短い波長の紫外線を出射する第2の固体発光素子との少なくとも2つの紫外線を出射する固体発光素子からなり、該光源ユニットが該載置台に対して相対的に移動される方向のならびで、第1の固体発光素子の後に第2の固体発光素子が配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製版露光に用いられる光源ユニット及びこの光源ユニットを具備した製版露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板の回路パターンを露光する用途においては、光源として固体発光素子を用いるものが、特許文献1に記載されている。
【0003】
図12は、従来に係る光源ユニット104を具備した露光装置100の説明図である。
露光装置100は、固体発光素子101を具備する光源ユニット104と、該固体発光素子101からの紫外線が照射されるマスクMと、を備える。
被照射物Wは、固体発光素子101からの紫外線がマスクMを介して照射される位置に配置される。
【0004】
この光源ユニット104は、同一平面上に配置された複数の固体発光素子101と、該複数の固体発光素子101が取付けられた基板102と、該複数の固体発光素子101に対向配置された拡散板103と、により構成される。
固体発光素子101としては、例えば紫外線を出射する発光ダイオード(LED)が挙げられる。
【0005】
複数の固体発光素子101から照射された各紫外線は、拡散板103に向かって照射され、この拡散板103で拡散される。拡散板103を通った各紫外線は、拡散板103に対向配置されたマスクMに照射される。マスクMを通った各紫外線は、マスクMに対向配置された被照射物Wに照射される。
被照射物Wは、感光剤(いわゆるレジスト)が塗布されているので、マスクMに描かれた回路パターンなどが感光剤に照射され、露光される。
【0006】
一方、製版露光においては、紫外線を利用して被照射物(スクリーンマスク)を製造することが、特許文献2に記載されている。
製版露光では、スクリーンメッシュ上に感光乳剤が塗布され、その感光乳剤を乾燥させて感光膜が形成される。その後、この感光膜にマスクを密着させて紫外線による露光を行い、その露光部分が硬化される。そして、このスクリーンメッシュを水槽に浸して感光膜の未硬化部分を水に溶かし、更にこのスクリーンメッシュにスプレー等で水を吹付けて感光膜の未硬化部分を完全に取り除く。これによりスクリーンメッシュにレジストパターンが現像される(特許文献2の段落番号0013を参照)。
【0007】
この製版露光で用いられる感光乳剤について、非特許文献1に述べられている。非特許文献1によれば、製版露光用の感光乳剤は、大別してバインダーポリマーと感光剤からなる。バインダーポリマーと感光剤は共に水溶性であるが、紫外線照射により、感光剤からラジカルが生じ、このラジカルによってバインダーポリマーが硬化されることで不溶となり、画像を形成する。ここで、バインダーポリマーには一般的にポリビニルアルコール(PVA)が使用される。感光剤には、ジアゾ樹脂、もしくはスチリルピリジニウム塩(SBQ)が用いられている。ジアゾ樹脂は紫外線照射によりフェニルラジカルを発生し、PVAの水酸基と結合し架橋する。
基本的に、バインダーポリマーのPVAと感光剤のジアゾ樹脂を混ぜれば、紫外線照射により画像形成は可能である。しかしながら、これだけでは十分な解像性や強度は得られないため、製版露光用の感光乳剤には様々な充填剤が使用される。充填剤を添加することで、耐水膨潤を抑えることや耐溶剤性をアップすることが出来るため、現在では、ほとんどの精密部品用の版には充填剤が使用されている。充填剤も紫外線照射によるラジカル重合を利用した反応形態なので前述した感光剤ともいえるが、本文では区別のため充填剤と呼ぶ。充填剤にはアクリルモノマーやポリ酢酸ビニル(PVAc)が用いられる。
【0008】
このような感光乳剤を硬化させる紫外線の光源としては、放電ランプが使用されている(特許文献3の段落番号0014参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−156852公報
【特許文献2】特開平09−216330号公報
【特許文献3】特開平11−129434号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】染谷隆夫、佐野康著、「エレクトロニクス高品質スクリーン技術」、シーエムシー出版、2005年、p.57−59
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
製版露光の光源である放電ランプは、紫外線以外にも赤外線が含まれており、これらも被照射物に照射される。また、放電ランプは放電により紫外線を発生させているので、放電による熱が生じており、被照射物にはこの放電熱が輻射される。これらにより、スクリーンメッシュは加熱されることがあり、加熱されたスクリーンメッシュは撓んでしまって、レジストパターンが崩れるといった問題があった。
【0012】
そこで、製版露光の光源として、図12で説明した光源ユニット104を用いることが考えられる。図12の光源ユニット104は、紫外線が固体発光素子101から放射されることになり、この固体発光素子101からは、単一波長の光が放射されるので、赤外線を放射することが無い。また、固体発光素子101による発光原理は、放電ランプとは異なり、放電熱を生じない。これらの理由から、被照射物Wの加熱という問題は解決される。
【0013】
ところが、本発明者らは、製版露光の用途に図12で説明した光源ユニット104を用いると、感光膜の硬化が十分に得られないことに気が付いた。本発明者らの鋭意検討により、その原因が、感光乳剤に含まれる成分にあることを見出した。
【0014】
前述の非特許文献1にあるように、感光乳剤には、感光剤と充填剤とが含まれている。ところが、この両者の効率よく感光する波長領域(高感光領域)が異なっている。これに対し、素子からの紫外線は単一波長の光であるため、感光剤及び充填剤のどちらか一方しか感光させることができず、感光膜の硬化が不十分になったものと考えられる。
【0015】
しかしながら、感光剤を感光させる波長と、充填剤を感光させる波長とを組み合せて、感光膜を硬化させてみると、照射する波長の順番によってはレジストパターンが崩れてしまうことがあった。
【0016】
そこで、本発明の目的は、感光膜の硬化を十分に得ると共に、レジストパターンの崩れを抑制した光源ユニット及びこの光源ユニットを具備した製版露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の発明に係る製版露光装置は、複数の固体発光素子を備える光源ユニットと、該光源ユニットからの紫外線を照射される被照射物が載置される載置台と、を有する製版用露光装置において、該光源ユニット又は該載置台には、該光源ユニットと該載置台とを相対的に移動させる駆動手段が設けられ、該複数の固体発光素子は、紫外線を出射する第1の固体発光素子と、該第1の固体発光素子が出射する紫外線より短い波長の紫外線を出射する第2の固体発光素子との少なくとも2つの紫外線を出射する固体発光素子からなり、該光源ユニットが該載置台に対して相対的に移動する方向のならびで、第1の固体発光素子の後に第2の固体発光素子が配置されることを特徴とする。
第2の発明に係る製版露光装置は、第1の発明において、前記被照射物は感光剤と充填剤とを含むものであるとき、該第1の固体発光素子が出射する紫外線のピーク波長が、該感光剤の感光波長領域に入り、該第2の固体発光素子が出射する紫外線のピーク波長が、該充填剤の感光波長領域に入ることを特徴とする。
第3の発明に係る光源ユニットは、第1又は2の発明に係る製版露光装置に具備される光源ユニットであって、該複数の固体発光素子は、第1の固体発光素子と第2の固体発光素子とが同一基板上に設けられたことを特徴とする。
第4の発明に係る光源ユニットは、第1の発明に係る製版露光装置に具備される光源ユニットであって、該複数の固体発光素子は、第1又は2の固体発光素子と第2の固体素子の各々が別々の基板上に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明に係る製版露光装置及びこれに具備される第2及び第3の発明に係る光源ユニットは、上記特徴により、被照射物を照射することで、被照射物の感光膜を構成する感光剤と充填剤を感光させることができ、感光剤と充填剤とからなる感光膜を硬化させることができる。
紫外線は、相対的に短波長のものと長波長のものとでは、感光膜への吸収率が異なり、相対的に長波長ほど吸収率が低く、相対的に短波長ほど吸収率が高い。一方、感光膜は、紫外線を吸収すると硬化されると物性を変化させ、紫外線透過率を低下させる。これらのため、感光膜に対して先に相対的に短波長の紫外線を照射し、その後に相対的に長波長の紫外線を照射すると、感光膜は、相対的に短波長の紫外線の吸収率が高いため、浅い部分が相対的に短波長の紫外線のエネルギーの殆んどを吸収し硬化されるが、深い部分への相対的に短波長の紫外線のエネルギーは殆んど届かない。そうすると、後から照射される相対的に長波長の紫外線は、感光膜の浅い部分を通って深い部分に照射されるが、浅い部分が既に硬化しており、その紫外線透過率を低下させていることから、感光膜の深い部分へ殆んど届かない。このため、感光膜の深い部分の硬化は不十分になり、そのレジストパターンは崩れてしまう。
第2の発明に係る製版露光装置は、上記特徴により、第1の固体発光素子からの紫外線によって感光剤を感光させることができ、第2の固体発光素子からの紫外線によって充填剤を感光させることができる。さらに、感光剤の感光波長領域における効果的に硬化する高感光領域は、充填剤の感光波長領域における効果的に硬化する高感光領域に対して相対的に長波長側に位置するので、第1の固体発光素子からの紫外線が感光剤の高感光領域に近接し又は入り、感光剤を効果的に硬化でき、第2の固体発光素子からの紫外線が充填剤の高感光領域に近接し又は入り、感光剤を効果的に硬化できる。
このため、第1及び第2の発明に係る製版露光装置並びにこれに具備される第3及び第4の発明に係る光源ユニットは、上記特徴により、被照射物の感光膜に対して、相対的に長波長の紫外線を出射する第1の固体発光素子を先に照射させることで、感光膜の深い部分の硬化を行うことができ、後から相対的に短波長の紫外線を出射する第2の固体発光素子を照射することで、感光膜表面の浅い部分の硬化を行なうことができ、感光膜のレジストパターンが崩れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施例に係る製版露光装置の説明図である。
【図2】第1の実施例に係る製版露光装置及び被照射物の説明図である。
【図3】第1の実施例に係る光源ユニットの説明図である。
【図4】第1の実施例に係る光源ユニットからの感光波長領域と、感光剤の感光波長領域と、充填剤の感光波長領域と、を示した説明図である。
【図5】第1の実施例に係る光源ユニットの別の例の説明図である。
【図6】第1の実施例に係る光源ユニットの別の例の説明図である。
【図7】第2の実施例に係る光源ユニットの説明図である。
【図8】第3の実施例に係る光源ユニットの説明図である。
【図9】実験1の結果の説明図である。
【図10】実験2の結果の説明図である。
【図11】実験3の結果の説明図である。
【図12】プリント基板の用途において、従来に係る露光装置の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1〜図3は、本発明に係る第1の実施例の説明図である。
図1は、第1の実施例に係る製版露光装置1の斜視図である。
図2(a)は、図1の製版露光装置1の上面図であり、図2(b)は、図1の製版露光装置1の断面図(A−A断面図)であり、図2(c)は、図1で破線で示した被照射物Wの斜視図である。
図3(a)は、図1の製版露光装置1に具備される光源ユニット21,22の説明図であり、図1のZ軸方向から見た光源ユニット21,22の正面図である。図3(b)は、図3(a)の光源ユニット21,22の長手方向に沿った一部断面図である。
なお、図2(a)では、駆動手段3,レール4及び固定手段5を図示しているが、図1,図2(b)及び図2(c)では、これらを省略している。
【0021】
第1の実施例に係る製版露光装置1は、光源ユニット21,22と、該光源ユニット21,22に設けられた駆動手段と、破線で示した該被照射物Wを載置する載置台WSと、を備える。
該光源ユニット21,22からの紫外線は、被照射物Wに載置されるマスクMに照射され、該マスクMを通った紫外線が被照射物Wに照射される。
【0022】
図2(a)に示すように、載置台WS上には、被照射物WとマスクMとを挟んで一対のレール4が配置され、このレール4がその長手方向の両端に設けた固定手段5によって固定される。一対のレール4には、光源ユニット21,22の長手方向における両端に設けた駆動手段3が配置される。駆動手段3は、モーターが具備されており、レールに沿って移動(X方向に移動)される。このため、光源ユニット21,22は、駆動手段3によってレール4に沿って移動され、図2(b)に示すように、被照射物Wを載置する載置台WSに対して相対的に移動される。
【0023】
光源ユニット21,22の出射光UV21,UV22を出射する側には、平板状のマスクMが対向配置される。平板状のマスクMは、マスクMと同形状の被照射物Wに載置される(図1参照)。被照射物Wは、図2(c)に示すように、スクリーンメッシュW3が設けられており、そこに感光膜W2が塗布されている。
感光膜W2は、感光乳剤を乾燥させたものであり、この感光乳剤を構成する部材として感光剤や充填剤が含まれる。感光剤としては、例えばジアゾ樹脂やスチリルピリジニウム塩(SBQ)が挙げられ、充填剤としては、アクリルモノマーやポリ酢酸ビニル(PVAc)が挙げられる。
被照射物Wは、図2(b)に示すように、載置台WSに載置され、マスクMを介して被照射物Wに対向配置される。
【0024】
光源ユニット21,22は、図3(a)に示すように、基板211,221上に設けられた複数の光出射体231,232により構成される。
この光出射体231,232は、第1の光出射体231と第2の光出射体232とに分けられる。第1の光出射体231は、図3(b)に示すように、固体発光素子2311と、該固体発光素子2311を封止する封止剤24と、該封止剤24を介して該固体発光素子2311,2321に対向配置された透光性レンズ25と、により構成される。第2の光出射体232の場合は、図3(b)に示す第1の固体発光素子2311に換えて、第2の固体発光素子2321が設けられる。
【0025】
第1の実施例に係る光源ユニット21,22は、同一基板上211,221に、異なる波長を出射する光出射体231,232が設けられる。第1の光出射体231には、図3(b)に示すように、第1の固体発光素子2311が設けられ、該第1の固体発光素子2311は例えば405nmの紫外線を出射する。第2の光出射体232には、第1の光出射体のように、不図示の第2の固体発光素子2321が設けられ、該第2の固体発光素子2321は、第1の固体発光素子2311より短い波長である例えば365nmの紫外線を出射する。
また、第1の実施例に係る光源ユニット21,22は、光出射体231,232が基板の長手方向に沿って3列のアレイ状に設けられる。このため、各光出射体に具備される第1の固体発光素子2311及び第2の固体発光素子2321も基板211,221の長手方向に沿って3列のアレイ状に設けられる。この3列のうち、被照射物Wに向かって移動される方向S(X軸方向)側の1列目には、長波長の紫外線を出射する第1の固体発光素子2311が配列され、次の2列目には、長波長の紫外線を出射する第1の固体発光素子2311と、短波長の紫外線を出射する第2の固体発光素子2321とが交互に配列され、最後の3列目には、短波長の紫外線を出射する第2の固体発光素子2321が配列される。
【0026】
固体発光素子2311としては、例えば発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)を用いることができる。
また、透光性レンズ25を構成する部材としては、用途によって種々な部材を用いることができる。比較的可視域に近い400nm付近の紫外線領域を使用する用途において、透光性レンズ25を構成する部材は、例えばアクリル樹脂のような紫外線透過性を有する光学樹脂が用いられる。一方で365nm付近の紫外線領域や、高出力の光源を使用する用途において、透光性レンズ25を構成する部材は、耐光性、耐熱性の高いBK7や石英ガラスのような紫外線透過ガラス部材が用いられる。
【0027】
第1の実施例に係る製版露光装置1は、基板211,221上の図示しない配線によって第1の固体発光素子2311及び第2の固体発光素子2321に給電されると、各固体発光素子2311,2321から紫外線が放射される。この各固体発光素子2311,2321からの紫外線が、被照射物Wに照射される過程と、その作用・効果について、図2〜図4を用いて説明する。
【0028】
第1の光源ユニット21及び第2の光源ユニット22には、同一基板211,221上に例えば405nmの長波長を出射される第1の固体発光素子2311と例えば365nmの短波長を出射される第2の固体発光素子2321とが具備されていることから、各光源ユニット21,22からは例えば405nmの長波長の紫外線と365nmの短波長の紫外線とが同時に出射される。
光源ユニット21,22からの出射光は、マスクMを介して被照射物Wに照射される。
被照射物Wには、図2(c)に示すスクリーンメッシュW3上に、感光乳剤を塗布・乾燥させた感光膜W2が例えば15μmの厚み設けられている。
【0029】
紫外線は、相対的に短波長(例えば365nm)のものと長波長(例えば405nm)のものとでは、感光膜への吸収率が異なり、相対的に長波長ほど吸収率が低く、相対的に短波長ほど吸収率が高い。一方、感光膜W2は、紫外線を吸収し硬化すると物性を変化させ、紫外線透過率を低下させる。
これらのため、感光膜W2に対して先に相対的に短波長の紫外線を照射し、その後に相対的に長波長の紫外線を照射すると、感光膜W2は、相対的に短波長の紫外線の吸収率が高いため、浅い部分が相対的に短波長の紫外線のエネルギーの殆んどを吸収し硬化されるが、深い部分への相対的に短波長の紫外線のエネルギーは殆んど届かない。そうすると、後から照射される相対的に長波長の紫外線は、感光膜W2の浅い部分を通って深い部分に照射されるが、浅い部分が既に硬化しており、その紫外線透過率を低下させていることから、感光膜W2の深い部分へ殆んど届かない。このため、感光膜W2の深い部分の硬化は不十分になり、そのレジストパターンは崩れてしまう。
第1の実施例に係る光源ユニット21,22は、図3に示すように、紫外線を出射する第1の固体発光素子2311と、該第1の固体発光素子2311が出射する紫外線より短い波長の紫外線を出射する第2の固体発光素子2321との少なくとも2つの紫外線を出射する固体発光素子2311,2321を具備し、該光源ユニット231,232が該載置台WSに対して相対的に移動される方向のならびで、第1の固体発光素子2311の後に第2の固体発光素子2321が配置される。これにより、感光膜W2は、先に相対的に長波長の紫外線が照射されることで、感光膜W2の深い部分の硬化を行なうことができ、後から相対的に短波長の紫外線が照射されることで、感光膜の浅い部分の硬化を行なうことができる。このため、第1の実施例に係る光源ユニット21,22及びこれを具備する製版露光装置1は、感光膜W2の全体を良好に硬化でき、感光膜W2のレジストパターンが崩れることを抑制できる。
【0030】
この感光膜W2は、例えばジアゾ系の感光剤と、例えばアクリルモノマーからなる充填剤とにより構成される。図4はこれら充填剤と感光剤とが感光する感光波長領域を示した図であり、図4に示すように、充填剤と感光剤とが感光する感光波長領域は異なっている。具体的には、アクリルモノマーからなる充填剤の場合、波長200nm〜400nmに感光波長領域があり、ジアゾ系の感光剤の場合、波長300nm〜500nmに感光波長領域がある。
両者は、感光波長領域は広域に亘っているものの、照射される波長によっては感光効率が異なっている。例えば、アクリルモノマーの場合、波長200nm〜400nmに感光波長領域があるものの、400nmの紫外線を照射された場合と、300nmの紫外線を照射された場合とでは、その感光効率が異なっており、300nmの紫外線を照射された方が効率よく感光される。この効率よく感光される領域を本願では、吸収特性が最大値を示す波長を100%としたときの80%以上の吸収特性を示す領域のことをいい、「高感光領域」と呼ぶ。充填剤の高感光領域は、波長250nm〜350nmの範囲にあり、感光剤の高感光領域は、充填剤の高感光領域よりも相対的に短い波長にあり、波長350nm〜450nmの範囲にある。
【0031】
第1の実施例に係る光源ユニット21,22からの出射光には、紫外線を出射する第1の固体発光素子2311と、該第1の固体発光素子2311が出射する紫外線より短い波長の紫外線を出射する第2の固体発光素子2321とを具備している。第1の固体発光素子2311からの紫外線は、感光剤の感光波長領域に入っているので、感光剤の感光を良好に行なうことができ、また、第2の固体発光素子2321からの紫外線は、充填剤の感光波長領域に入っているので、充填剤の感光を良好に行なうことができる。
【0032】
さらに、光源ユニット21,22からの紫外線を、相対的に長波長の紫外線と相対的に短波長の紫外線との2つにされており、この相対的に長波長の紫外線を充填剤の感光波長領域に入ると共に、相対的に短波長の紫外線を感光剤の感光波長領域に入るように構成されていることで、相対的に長波長の紫外線(第1の固体発光素子2311からの405nmの紫外線)が充填剤高感光領域に近接し又は入り、相対的に短波長の紫外線(第2の固体発光素素子からの365nmの紫外線)が感光剤の高感光領域に近接又は入ることになる。これにより、第1の実施例に係る光源ユニット21,22及びこれを具備する製版露光装置1は、感光膜W2を構成する充填剤及び感光剤を効果的に硬化でき、その硬化を短時間で行なうことができる。
【0033】
なお、第1の実施例においては、光源ユニット21,22を2つ具備した図を示したが、図3(a)のように、第1の光源ユニット21に、紫外線を出射する第1の固体発光素子2311と、該第1の固体発光素子2311が出射する紫外線より短い波長の紫外線を出射する第2の固体発光素子2321とが具備されていれば、第2の光源ユニット22を設けなくてもかまわない。
【0034】
図3(b)に示す透光性レンズ25は、その出射光側からみると、図3(a)に示すように円状であり、基板211,221上で互いに隣接する円状の透光性レンズの中心が四角形を形成するように配置される。
製版露光の用途においては、光源ユニット21,22からの出射光を平行光にしたいという要望があり、透光性レンズに固体発光素子からの光を平行光に形成する機能を具備させることがある。そうすると、同一基板211,221上に配置された透光性レンズ間の隙間は固体発光素子からの出射光が弱く陰になってしまうことがある。
そこで、図5に示すように、基板211,221上で互いに隣接する隣接する円状の透光性レンズの中心が正三角形を形成するように配置される。すなわち、図5における基板211,221上の透光性レンズの配置は、六方充填配置である。図5のように配置すると、透光性レンズを密集させて配置することができ、透光性レンズ間の陰の領域を小さくすることができる。
【0035】
前述のように、透光性レンズ25には、固体発光素子からの光を平行光に形成する機能を具備されることがある。このときの透光性レンズ25は、図3に示す半球状のものであってもかまわないが、図6のように断面台形のような形状のものであってもかまわない。
【0036】
上述の第1の実施例においては、同一基板211上に長波長側の紫外線を出射する第1の固体発光素子2311と、短波長側の紫外線を出射する第2の固体発光素子2321とを配置したが、必ずしも同一基板211上に配置しなくてもかまなわない。その例を示したのが図7である。
【0037】
図7は、本発明に係る第2の実施例の説明図である。
図7は、第2の実施例の製版露光装置1に具備される光源ユニット21,22の説明図であり、光源ユニット21,22の正面図である。
なお、図7には、図1〜3に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
また、第2の実施例においても、製版露光装置1の斜視図やその断面図は、第1の実施例と相違しないことから、図1及び図2を参照図として用いる。
【0038】
図7の第2の実施例は、長波長側の紫外線を出射する固体発光素子(図7における第1の光出射体231の内部に設けた不図示の第1の固体発光素子)を同一基板211,221上に配置し、短波長側の紫外線を出射する固体発光素子(図7における第2の光出射体232の内部に設けた不図示の第2の固体発光素子)を同一基板211,221上に配置した点で、図3の第1の実施例と相違する。
図7の第2の実施例の説明として、図1〜3と共通する部分は省略し、相違する部分について述べる。
【0039】
第2の実施例では、光源ユニット21,22が被照射物Wに対して相対的に移動する方向S(X軸方向)において、前方側(第1の光源ユニット21側)に、同一基板211上に長波長側の紫外線を出射する第1の固体発光素子を具備する第1の光出射体231だけが設けられる。一方、光源ユニット21,22が被照射物Wに対して相対的に移動する方向S(X軸方向)において、後方側(第2の光源ユニット22側)に、同一基板221上に短波長側の波長を出射する第2の固体発光素子を具備する第2の光出射体232だけが設けられる。
【0040】
第2の実施例においても、第1の実施例と同様の作用・効果を得ることができる。
さらに、第2の実施例においては、例えば405nmの紫外線を出射する第1の固体発光素子(図7における第1の光出射体231の内部に設けた不図示の第1の固体発光素子)と、該第1の固体発光素子が出射する紫外線より短い例えば365nmの波長の紫外線を出射する第2の固体発光素子(図7における第2の光出射体232の内部に設けた不図示の第2の固体発光素子)と、を別基板211,221に設けることにより、長波長側の紫外線の光強度と短波長側の紫外線の光強度とが異なるように制御できる。
【0041】
なお、第2の実施例においても、図5に示すように、透光性レンズ25の配置が六方充填配置にすれば、透光性レンズ25間の陰の領域を小さくすることができる。
また、固体発光素子からの光を平行光に形成するために、第3の実施例における透光性レンズ25の形状は、図6に示すような形状であってもかまわない。
【0042】
上述の第1及び第2の実施例においては、光源ユニット21,22から放射される紫外線の波長が例えば365nmの短波長側と例えば405nmの長波長側との2つのものを示した。
製版露光の用途においては、被照射物Wの感光膜の膜厚を50μmのような厚膜のものを形成したいという要望があり、第1及び第2の実施例のような光源ユニット21,22を用いた場合、その感光膜の形状が崩れてしまうことがあった。これは、波長が短いと感光膜への吸収率が高いために、感光膜の深い部分にまで光が届かない場合があるためと考えられる。具体的には、405nmの紫外線の場合、感光膜の15μm辺りの深さ領域まで光が浸入することができ、15μm辺りの深さ領域まで感光膜を感光させ、十分に硬化させることができるが、感光膜の50μm辺りの深さ領域まで浸入する光は少なく、十分な硬化ができなかったものと考えられる。
そこで、感光膜が50μm以上のような厚膜のものでも、充分に硬化できる例として第3の実施例を説明する。
【0043】
図8は、本発明に係る第3の実施例の説明図である。
図8は、第3の実施例の製版露光装置1に具備される光源ユニット21,22の説明図であり、光源ユニット21,22の正面図である。
なお、図8には、図1〜3に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
また、第3の実施例においても、製版露光装置1の斜視図やその断面図は、第1の実施例と相違しないことから、図1及び図2を参照図として用いる。
【0044】
図8の第3の実施例は、長波長側の紫外線を出射する固体発光素子が、例えば405nmの紫外線を出射する第1の固体発光素子と、例えば436nmの紫外線を出射する第3の固体発光素子とからなる点で、図7の第2の実施例と相違する。
図8の第3の実施例の説明として、図7と共通する部分は省略し、相違する部分について述べる。
【0045】
第1の光源ユニット21には、第2の固体発光素子(図8における第2の光出射体232の内部に設けた不図示の第2の固体発光素子)が出射する紫外線の波長に対して、長波長の紫外線を出射する第1の光出射体231と第3の光出射体233とが設けられる。第2の光源ユニット22には、第1及び第3の光出射体からの紫外線よりも、波長の短い紫外線を出射する短波長側の第2の光出射体232が設けられる。
第1の光源ユニット21において、同一基板211上に、第1の光出射体231に具備された長波長側の固体発光素子として、例えば405nmの紫外線を出射する第1の固体発光素子(図8における第1の光出射体231の内部に設けた不図示の第1の固体発光素子)と、第3の光出射体に具備された例えば436nmの紫外線を出射する第3の固体発光素子(図8における第3の光出射体233の内部に設けた不図示の第3の固体発光素子)とが設けられる。
また、第3の実施例に係る第1の光源ユニット21は、光出射体231,233が基板の長手方向に沿って3列のアレイ状に設けられることで、光出射体231,233に具備される第1及び第3の固体発光素子も基板211の長手方向に沿って3列のアレイ状に設けられる。この3列のうち、被照射物Wに向かって移動される方向S(X軸方向)側の1列目には、例えば436nmの紫外線を出射する第3の固体発光素子が配列され、次の2列目には、例えば436nmの紫外線を出射する第3の固体発光素子と、例えば405nmの紫外線を出射する第1の固体発光素子とが交互に配列され、最後の3列目には、例えば405nmの紫外線を出射する第1の固体発光素子が配列される。
【0046】
前述のように、紫外線は、相対的に短波長のものと長波長のものとでは、感光膜へ吸収率が異なり、相対的に長波長ほど吸収率が低く、相対的に短波長ほど吸収率が高い。一方、感光膜W2は、紫外線を吸収すると硬化されると物性を変化させ、紫外線透過率を低下させる。
このため、第3の実施例では、長波長側の固体発光素子に、例えば436nmの紫外線を出射する第3の固体発光素子が具備され、且つ、光源ユニット21,22が載置台に対して相対的に移動される方向のならびで、第1の固体発光素子よりも先に第3の固体発光素子が配置されることにより、例えば50μmのような厚膜の感光膜の深い部分まで長波長側の紫外線を浸入させることができ、感光膜の深い部分でも硬化することができる。さらに、436nm,405nm及び365nmの3つの波長を感光膜に対して順次照射させることより、感光膜の各深さで紫外線が吸収され、各深さにおける硬化を良好に行なうことができる。具体的には、実験3の結果で述べるが、波長436nmの紫外線は感光膜の深い部分を硬化させ、波長405nmの紫外線は感光膜の中央近傍を硬化させ、波長365nmの紫外線は感光膜の表面近傍を硬化させる。このように、第3の実施例においては、感光膜が厚膜のものであっても充分に硬化することができ、その形状が崩れることを抑制できる。
【0047】
また、第3の実施例においても、第3の固体発光素子からの紫外線(波長436nm)が、感光剤の感光波長領域(波長300nm〜500nm)に入っていることから、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0048】
なお、第2の実施例のように、同一基板上には同一の固体発光素子で構成するため、第3の光源ユニットを準備し、その第3の光源ユニットの基板上に第3の固体発光素子だけで構成してもかまわない。この場合、第1〜3の光源ユニットが載置台に対して相対的に移動される方向のならびで、第3の固体発光素子(波長436nm)だけを具備する第3の光源ユニットが配置され、第3の固体発光素子からの紫外線よりも短い波長を出射する第1の固体発光素子(波長405nm)だけを具備する第1の光源ユニットが配置され、第1の固体発光素子からの紫外線よりも短い波長を出射する第2の固体発光素子(波長365nm)だけを具備する第2の光源ユニットが配置される。これにより、第2の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0049】
また、第3の実施例においても、図5に示すように、透光性レンズ25の配置が六方充填配置にすれば、透光性レンズ25間の陰の領域を小さくすることができる。
さらにまた、固体発光素子からの光を平行光に形成するために、第3の実施例における透光性レンズ25の形状は、図6に示すように、断面台形であってもかまわない。
【0050】
上述した第1〜3の実施例では、光源ユニット21,22と被照射物Wを載置する載置台WSとの相対的移動を、光源ユニット21,22に設けた駆動手段によって、光源ユニット21,22を移動させることで実現していたが、光源ユニット21,22を載置台WS以外の部材に固定し、被照射物Wを載置する載置台WSに駆動手段を設け、載置台WS側を移動させてもかまわない。
【0051】
上述した第1〜3の実施例に効果を説明するための実験を行なった。
長波長側の紫外線を出射する固体発光素子と、短波長側の紫外線を出射する固体発光素子とを少なくとも具備することで、感光膜の十分な硬化を行なえることを示す実験1を示す。
【0052】
<実験1>
実験1では、図1に示す構成の製版露光装置1を用いた。
本発明の構成は、長波長側の第1の光出射体231に具備される第1の固体発光素子として、405nmの紫外線を出射する発光ダイオードと、短波長側の第2の光出射体232に具備される第2の固体発光素子として、365nmの紫外線を出射する発光ダイオードとを設けた製版露光装置1を準備した。
また、本発明の効果を示すため、比較例は、第2の実施例で設けた短波長側の第2の固体発光素子(図7における第2の光出射体232の内部に設けた不図示の第2の固体発光素子)を具備せず、405nmの紫外線を出射する発光ダイオードだけで構成した製版露光装置1を準備した。
【0053】
実験1に供する感光膜W2には、200nm〜400nmの感光波長領域を有するアクリルモノマーの充填剤と、300nm〜500nmの感光波長領域を有するジアゾ系の感光剤とからなるものを乾燥させて準備した。
【0054】
実験1においては、本発明の製版露光装置1で処理した感光膜W2と、比較例の製版露光装置1で処理した感光膜W2とを準備し、各感光膜W2の硬化が充分であるか試すため、スクリーン印刷に用いる溶剤(インクに含まれる成分)をA〜Cまで準備した。各感光膜W2は、例えば30μmの厚みで形成される。
各感光膜W2は、各溶剤に24時間浸漬された後、溶剤が乾燥される。この浸漬前後での各感光膜W2の重量変化を測定し、重量変化率として定義した。
なお、溶剤Aにはメタノールを、溶剤Bにはエタノールを、溶剤Cにはアセトンを用いた。
【0055】
実験1の結果を示したのが図9である。図9では、各溶剤A〜Cに対して本発明と比較例における溶出率(塗布した重量に対して溶出した重量の比率)を比較して示してある。水への溶出量は、本発明及び比較例で違いが無かった。ところが、溶剤への溶出量は、いずれの溶剤においても比較例の方が多かった。
これは、比較例は、波長405nmの紫外線を出射する発光ダイオードだけで構成されており、感光膜の深い部分を硬化できるものの、浅い部分での硬化が不十分となり、この浅い部分が溶剤A〜Cに溶出してしまったものと考えられる。
また、前述のように、波長405nmの紫外線は、感光剤の感光波長領域に入っており、感光剤を感光させて硬化できるが、充填剤の感光波長領域には入っていないので、充填剤の硬化が不十分になったと推測される。充填剤は、本願の段落番号0007に記載されるように、耐溶剤性を向上させる機能を有する。このため、比較例では、充填剤の硬化が不十分になったために耐溶剤性が低下したものと考えられる。
【0056】
一方、本発明に係る製版露光装置1では、波長405nmの紫外線を出射させた後、波長405nmの紫外線より波長の短い365nmの紫外線を出射されることにより、感光膜の深い部分を硬化できると共に、浅い部分での硬化を良好に行なうことができる。
さらに、波長365nmの紫外線は、充填剤の感光領域に入っているので、充填剤の硬化を十分に行なうことができ、充填剤が有する耐溶剤性の機能が発揮させることができたものと考えられる。
その上、製版露光によって形成された版は、繰り返し溶剤(インクに含まれる成分)が塗布されて印刷対象に溶剤と塗布するのに用いられる。このため、溶剤が塗布される度に、硬化した感光膜W2が溶出したのでは、耐久性に問題がある。このため、本発明に係る製版露光装置1では、比較例に比して溶出量が少ないことから、耐久性に優れた版を製版できることが分かった。
【0057】
<実験2>
次に、実験2では、製版された感光膜W2の形状から本発明の効果を示す。
実験2では、図1に示す構成の製版露光装置1を用いた。
本発明の構成は、長波長側の第1の光出射体231に具備される第1の固体発光素子として、405nmの紫外線を出射する発光ダイオードと、短波長側の第2の光出射体232に具備される第2の固体発光素子として、365nmの紫外線を出射する発光ダイオードとを設けた製版露光装置1を準備した。
また、本発明の効果を示すため、比較例1は、第2の実施例で設けた長波長側の第1の固体発光素子(図7における第1の光出射体231の内部に設けた不図示の第1の固体発光素子)を具備せず、365nmの紫外線を出射する発光ダイオードだけで構成した製版露光装置1を準備した。
さらに、比較例2は、第2の実施例で設けた短波長側の第2の固体発光素子(図7における第2の光出射体232の内部に設けた不図示の第2の固体発光素子)を具備せず、405nmの紫外線を出射する発光ダイオードだけで構成した製版露光装置1を準備した。
【0058】
実験2に供する感光膜W2には、200nm〜400nmの感光波長領域を有するアクリルモノマーの充填剤と、300nm〜500nmの感光波長領域を有するジアゾ系の感光剤とからなる感光乳剤を乾燥させて準備した。なお、この感光乳剤の必要露光量は、1200mJ/cmである。
【0059】
実験2においては、各製版露光装置1で露光した後、水で未硬化部分を洗い流し、厚みL1が15μmのレジストパターンを形成した版を得た。各製版露光装置1で処理したレジストパターンの形状を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope(SEM))で観察して比較した。
その結果を模式的に示したのが、図10である。
図10(a)は比較例1(365nmのみ)で処理したレジストパターンの形状で、図10(b)は比較例2(405nmのみ)で処理したレジストパターンの形状で、図10(c)は本発明(365nm+405nm)で処理したレジストパターンの形状である。本発明における処理では、感光膜に対して、波長405nmの紫外線を先に照射した後に、波長365nmの紫外線を照射してレジストパターンの形状を得た。
なお、版への紫外線照射時間は、約1分間である。
【0060】
比較例1(365nmのみ)で処理した場合、図10(a)に示すように、紙面上方側(光源ユニット21,22からの紫外線が照射される側)の硬化は十分であるが、紙面下方側(支持体W1側)の硬化が不十分であったためにレジストパターンが細くなっていた。これにより、レジストパターンは、断面が紙面上方から下方に向かって幅が順次小さくなる台形状に形成された。
これは、波長の長短の違いによる感光膜W2への吸収率の違いに起因するものと、硬化された感光膜W2の物性に起因するものとが、考えられる。具体的には、以下に述べる。
波長365nmの紫外線は、感光剤の感光波長領域及び充填剤の感光領域に入っていることから、感光剤及び充填剤を硬化することができる。ところが、365nmのような波長の短い紫外線は、感光膜W2への吸収率が高いので、感光膜W2の浅い部分(紙面上方側)は十分な硬化が得られたが、感光膜W2の深い部分(紙面下方側)に至る光の照度が十分になく、十分な硬化が得られなかったものと考えられる。さらに、感光膜W2は、硬化されると紫外線の透過率が低下するので、感光膜W2の浅い部分が硬化したのちは、硬化した感光膜W2に遮光されることで、感光膜W2の深い部分に至る光の照度を低下させたものと考えられる。これらの理由から、感光膜W2の深い部分への紫外線照度が不十分となり、レジストパターンは、その断面が紙面上方から下方に向かって幅が順次小さくなる台形状に形成されたものと考えられる。
【0061】
比較例2(405nmのみ)で処理した場合、図10(b)に示すように、紙面下方側(支持体W1側)の硬化は充分であるが、紙面上方側(光源ユニット21,22からの紫外線が照射される側)の硬化が不十分であったためにレジストパターンが細くなっている。これにより、レジストパターンは、断面が紙面上方から下方に向かって幅が順次大きくなる台形状に形成される。
これは、波長の長短の違いによる感光膜W2への吸収率の違いに起因するものと考えられる。具体的には、波長が長い方が感光膜W2への吸収率が低いため、感光膜W2の深い部分(紙面下方側)に至る光の照度が十分になる。また、波長405nmの光は、厚みが15μm辺りへの吸収率が良好であったために、感光膜W2の深い部分(紙面下方側)で十分な硬化が得られたものと考えられる。ところが、波長が長い方が感光膜W2への吸収率が低いため、感光膜W2の浅い部分(紙面上方側)は十分な硬化が得られなかったものと考えられる。これにより、レジストパターンは、その断面が紙面上方から下方に向かって幅が順次大きくなる台形状に形成されたものと考えられる。
【0062】
本発明(365nm+405nm)で処理した場合、図10(c)に示すように、上方側(光源ユニット21,22からの紫外線が照射される側)の硬化は十分であり、紙面下方側(支持体W1側)の硬化も十分であった。これにより、レジストパターンは、断面が紙面上方から下方に向かって幅が変化することなく、長方形状に形成された。
これは、波長が長い方が感光膜W2への吸収率が低く、厚みが15μm辺りへの吸収率が良好であるため、先に照射された405nmの紫外線によって、感光膜W2の深い部分(紙面下方側)の硬化が十分に得られたものと考えられる。また波長が短い方が感光膜W2への吸収率が高いので、後から照射された365nmの紫外線によって、感光膜W2の浅い部分(紙面上方側)の硬化も十分に得られたものと考えられる。またさらに、感光膜に対して、先に、相対的に波長の長い405nmを照射することで、感光膜の表面は硬化されていないので、感光膜の表面は良好な紫外線透過率を有し、これにより、405nmの紫外線が感光膜の深い部分に良好に照射され、十分な硬化が得られる。これにより、レジストパターンは、その断面が紙面上方から下方に向かって幅が変化することなく、長方形状に形成されたものと考えられる。
【0063】
実験2の結果から、本発明の係る光源ユニット21,22及びこれを具備した製版露光置は、相対的に波長の長い紫外線(405nm)と、相対的に波長の短い紫外線(365nm)を出射すると共に、先に相対的に波長の長い紫外線を出射することにより、感光膜の深い部分と浅い部分、すなわち感光膜の全体を良好に硬化することができ、そのレジストパターンの形状が良好のものが得られることが分かった。
さらに、本発明の光源ユニット21,22及びこれを具備した製版露光装置1は、相対的に波長の長い紫外線(405nm)が感光膜W2に含まれる感光剤の感光波長領域に入っており、さらに相対的に短い紫外線(365nm)が感光膜W2に含まれる充填剤の感光波長領域に入っていることから、感光膜を良好に硬化できたものと考えられる。
【0064】
<実験3>
最後に、実験3では、製版された感光膜W2の形状から、感光膜W2の厚みが30μmの厚膜である場合の本発明の効果を示す。
実験3では、図1に示す構成の製版露光装置1を用いた。
本発明の構成は、長波長側の第1の光出射体231に具備される第1の固体発光素子として、436nmの紫外線を出射する発光ダイオードと、短波長側の第2の光出射体232に具備される第2の固体発光素子として、365nmの紫外線を出射する発光ダイオードとを設けた製版露光装置1を準備した。
また、本発明の効果を示すため、比較例1は、短波長側の第2の固体発光素子を具備せず、405nmの紫外線を出射する発光ダイオードだけで構成した製版露光装置1を準備した。
比較例2は、短波長側の第2の固体発光素子を具備せず、436nmの紫外線を出射する発光ダイオードだけで構成した製版露光装置1を準備した。
比較例3は、長波長側の第1の固体発光素子として、405nmの紫外線を出射する発光ダイオードと、短波長側の第2の固体発光素子として、365nmの紫外線を出射する発光ダイオードとを具備した製版露光装置1を準備した。
【0065】
実験3に供する感光膜W2には、200nm〜400nmの感光波長領域を有するアクリルモノマーの充填剤と、300nm〜500nmの感光波長領域を有するジアゾ系の感光剤とからなる感光乳剤を乾燥させて準備した。なお、この感光乳剤の必要露光量は、1200mJ/cmである。
【0066】
実験3においては、各製版露光装置1で露光した後、水で未硬化部分を洗い流し、レジストパターンを形成した版を得た。このとき、レジストパターンは、その厚みL2が実験2のときの2倍に厚みになるように、30μmにした。
各製版露光装置1で処理したレジストパターンの形状は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope(SEM))で観察して比較した。
その結果を示したのが、図11である。
図11(a)は比較例1(405nmのみ)で処理したレジストパターンの形状で、図11(b)は比較例2(436nmのみ)で処理したレジストパターンの形状で、図11(c)は比較例3(365nm+405nm)で処理したレジストパターンの形状で、図11(d)は本発明(365nm+436nm)で処理したレジストパターンの形状である。比較例3における処理では、感光膜に対して、波長405nmの紫外線を先に照射した後に、波長365nmの紫外線を照射してレジストパターンの形状を得た。また、本発明における処理では、感光膜に対して、波長436nmの紫外線を先に照射した後に、波長365nmの紫外線を照射してレジストパターンの形状を得た。
なお、版への紫外線照射時間は、約1分間である。
【0067】
比較例1(405nmのみ)で処理した場合、図11(a)に示すように、紙面上方側(光源ユニット21,22から紫外線が照射される側)と紙面下方側(支持体W1側)の硬化が不十分であり、紙面上方側と紙面下方側に挟まれた紙面中央側の硬化は十分であった。これにより、レジストパターンは、断面が紙面上方から中央に向かって幅が順次大きくなり、続いて紙面中央から下方に向かって幅が順次小さくなるように、六角形状に形成された。
これは、実験2で説明したように、波長の長短の違いによる感光膜W2への吸収率の違いに起因するものが、考えられる。実験2で説明した部分は省略するが、波長405nmの紫外線は、厚みが15μm辺りへの吸収率が良好であったために、厚みが30μmの感光膜W2の場合、図11(a)に示すように、感光膜W2の中央部分の十分な硬化が得られたものと考えられる。ところが、波長405nmの紫外線は、感光膜W2の中央部分に吸収されてしまうことで、それより深い(感光膜W2の15μmより深い部分)への照度が不十分となり、十分な硬化が得られなかったものと考えられる。これにより、レジストパターンは、その断面が紙面上方から中央に向かって幅が順次大きくなり、続いて紙面中央から下方に向かって順次小さくなる六角形状に形成されたものと考えられる。
さらに、実験3においては、硬化された感光膜W2の物性に起因して、レジストパターンの形状が六角形状になったことも考えられる。具体的には、感光膜W2は、硬化されると紫外線の透過率が低下するので、感光膜W2の15μm辺りが硬化したのちは、硬化した感光膜W2に遮光されることで、感光膜W2の深い部分(30μm辺りの部分)に至る光の照度を低下させたものと考えられる。
【0068】
比較例2(436nmのみ)で処理した場合、図11(b)に示すように、紙面上方側(光源ユニット21,22から紫外線が照射される側)の硬化が不十分であり、紙面下方側の硬化は十分であった。これにより、レジストパターンは、断面が紙面上方から下方に向かって幅が順次大きくなる台形状に形成された。
これは、波長が長い方が感光膜W2への吸収率が低いため、感光膜W2の深い部分(紙面下方側)に至る光の照度が十分になる。また、波長436nmの紫外線は、厚みが30μm辺りへの吸収率が良好であったために、感光膜W2の深い部分(紙面下方側)で十分な硬化が得られたものと考えられる。ところが、波長が長い方が感光膜W2への吸収率が低いため、感光膜W2の浅い部分(紙面上方側)は十分な硬化が得られなかったものと考えられる。これにより、レジストパターンは、その断面が紙面上方から下方に向かって幅が順次大きくなる台形状に形成されたものと考えられる。
【0069】
比較例3(365nm+405nm)で処理した場合、図11(c)に示すように、紙面上方側(光源ユニット21,22から紫外線が照射される側)及び紙面中央の硬化が十分であり、紙面下方側の硬化が不十分であった。これにより、レジストパターンは、断面が紙面上方から中央に向かって幅が変化せず、続いて紙面中央から下方に向かって幅が順次小さくなるように、六角形状に形成された。
これは、波長365nmの紫外線は感光膜W2の深い部分に吸収され、波長405nmの紫外線は感光膜W2の15μm辺りまでに吸収されてしまい、感光膜W2の深い部分(紙面下方側)の硬化が得られなかったものと考えられる。これにより、レジストパターンは、感光膜W2の厚み15μm辺りまでは良好なレジスト形状を形成されるが、15μmより深くなるとその幅が順次小さくなる六角形状に形成されたものと考えられる。
【0070】
本発明(365nm+436nm)で処理した場合、図11(d)に示すように、上方側(光源ユニット21,22から紫外線が照射される側)から紙面下方側(支持体W1側)に至るまでその硬化が十分であった。これにより、レジストパターンは、断面が紙面上方から下方に向かって幅が変化することなく、長方形状に形成された。
これは、波長が長い方が感光膜W2への吸収率が低く、特に波長436nmの紫外線は、厚みが15μmより深い部分への吸収率が良好であるため、感光膜W2の深い部分(紙面下方側)の硬化が十分に得られたものと考えられる。また波長が短い方が感光膜W2への吸収率が高いので、感光膜W2の浅い部分(紙面上方側)の効果も十分に得られるものと考えられる。これにより、レジストパターンは、その断面が紙面上方から下方に向かって幅が変化することなく。長方形状に形成されたものと考えられる。
さらに、本発明の光源ユニット21,22及びこれを具備した製版露光装置1は、相対的に波長の長い紫外線(436nm)が感光膜W2に含まれる感光剤の感光波長領域に入っており、さらに相対的に短い紫外線(365nm)が感光膜W2に含まれる充填剤の感光波長領域に入っていることから、感光膜を良好に硬化できたものと考えられる。
【0071】
実験3の結果から、本発明の係る光源ユニット21,22は、充填剤の感光波長領域に入る波長の紫外線(436nm)と、感光剤の感光波長領域に入る波長の紫外線(365nm)とを具備することにより、充填剤と感光剤とを良好に硬化することができることが分かった。さらに、感光膜W2の厚みが30μmのような厚膜の場合、波長436nmの紫外線を長波長側の紫外線として用いることにより、感光膜W2の深い部分まで良好に硬化することができ、そのレジストパターンの形状を良好のものにすることができた。
【0072】
さらに、実験3の結果から、波長436nmの紫外線は、深さ30μm辺りへの吸収率が良好であることが分かる。このため、感光膜W2が30μmより厚膜のもの例えば50μmのような厚膜のものの場合、波長365の紫外線と波長436の紫外線だけでは、感光膜W2の中央部分の硬化が不十分になってしまって細くなってしまうことが予測される。
そこで、本発明に係る第3の実施例のように、長波長側の固体発光素子として、436nmの紫外線を出射する発光ダイオードと405nmの紫外線を出射する発光ダイオードとを組み合せることにより、感光膜W2が50μmより厚膜であっても、良好なレジストパターンの形状を得ることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 製版露光装置
21 第1の光源ユニット
211 基板
22 第2の光源ユニット
221 基板
231 第1の光出射体(長波長)
2311 第1の固体発光素子(長波長)
232 第2の光出射体(短波長)
2321 第2の固体発光素子(短波長)
233 第3の光出射体(長波長)
24 封止剤
25 透光性レンズ
3 駆動手段
4 レール
5 固定手段
M マスク
S 光源ユニットと被照射物とを相対的に移動させる方向
W 被照射物
W1 支持体
W2 感光膜
W3 スクリーンメッシュ
WS 載置台
L1 感光膜の厚み
L2 感光膜の厚み
UV1 第1の光源ユニットからの紫外線
UV2 第2の光源ユニットからの紫外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固体発光素子を備える光源ユニットと、
該光源ユニットからの紫外線を照射される被照射物が載置される載置台と、
を有する製版用露光装置において、
該光源ユニット又は該載置台には、該光源ユニットと該載置台とを相対的に移動させる駆動手段が設けられ、
該複数の固体発光素子は、紫外線を出射する第1の固体発光素子と、該第1の固体発光素子が出射する紫外線より短い波長の紫外線を出射する第2の固体発光素子との少なくとも2つの紫外線を出射する固体発光素子からなり、
該光源ユニットが該載置台に対して相対的に移動する方向のならびで、第1の固体発光素子の後に第2の固体発光素子が配置される
ことを特徴とする製版露光装置。
【請求項2】
前記被照射物は感光剤と充填剤とを含むものであるとき、
該第1の固体発光素子が出射する紫外線のピーク波長が、該感光剤の感光波長領域に入り、
該第2の固体発光素子が出射する紫外線のピーク波長が、該充填剤の感光波長領域に入る
ことを特徴とする請求項1に記載の製版露光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製版露光装置に具備される光源ユニットであって、
該複数の固体発光素子は、第1の固体発光素子と第2の固体発光素子とが同一基板上に設けられた
ことを特徴とする光源ユニット。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の製版露光装置に具備される光源ユニットであって、
該複数の固体発光素子は、第1の固体発光素子と第2の固体素子の各々が別々の基板上に設けられている
ことを特徴とする光源ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−197540(P2010−197540A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40309(P2009−40309)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】