説明

光源装置及びプロジェクター

【課題】反射ミラーを高精度で保持することで光利用効率及び信頼性の高い光源装置及びプロジェクターを提供する。
【解決手段】光源部1と、光源部1から射出された光を反射する複数の反射ミラー6を有するミラーユニット3と、を備えた光源装置10である。反射ミラー6の各々は、互いが平行に配置され且つ少なくとも一方が光を反射する反射面をなす第1の面6a及び第2の面6bを有するとともに接着剤7を介して接着保持部に保持され、複数の反射ミラー6は、互いの第1の面6a及び第2の面6bが当接した状態で配置されており、接着剤7は接着保持部と反射ミラー6との接触界面6cを跨ぐように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置及びプロジェクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばプロジェクターのような、光源系と表示系よりなる光学系統では、光源からの射出光が表示系で有効に利用されることが求められる。
このような光学系統において、光源光の表示系での利用効率を示す指標としてエテンデュ(Etendue)が知られている。エテンデュは、光源の発光面積と、光源から射出される光の放射立体角との積であり、光源から射出された光の空間的な広がりを表す。したがって、このエテンデュが小さい程、光源からの射出光が狭い放射立体角の中に収束し、表示系で有効利用される角度範囲の中に収まる率(光利用効率)が高くなることを意味する。
【0003】
一方、プロジェクター等に用いられる光源装置として、発光量を増やすために複数の発光ダイオードを平面アレイ状に配置したものが知られている。しかし、このような光源装置は、発光面積が広いため、エテンデュが大きく、光利用効率が低いという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、複数の発光素子を、その励起光が一点に集光するように配設するとともに、その励起光の集光位置に蛍光体を配設することで、光利用効率を高めた光源装置が提案されている。この光源装置は、各発光素子に対応する複数の反射ミラーを保持するミラー保持部材を用いて発光素子から出射された励起光が上記反射ミラーで反射されることで蛍光体に導かれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−76781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、反射ミラーがミラー保持部材に対して接着剤を介して裏面が接着された構造となっているため、反射ミラーとミラー保持部材との間に塗布された接着剤の厚みにバラつきが生じているおそれがある。このような厚みのバラつきが生じていると、接着剤の硬化収縮、或いは熱膨張によって反射ミラーの位置が変化するため、ミラーの位置姿勢精度が低下し、信頼性及び光利用効率が得られないおそれがあった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、反射ミラーを高精度で保持することで光利用効率及び信頼性の高い光源装置及びプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の光源装置は、光源部と、前記光源部から射出された光を反射する複数の反射ミラーを有するミラーユニットと、を備えた光源装置であって、前記複数の反射ミラーは、互いが対向し且つ少なくとも一方が前記光を反射する反射面をなす第1の面及び第2の面が当接した状態で接着剤を介して保持されており、前記接着剤は、前記保持部と前記反射ミラーとの接触界面を跨ぐように設けられることを特徴とする。
【0009】
本発明の光源装置によれば、接着剤が接着界面を跨ぐように設けられるので、接着剤が接着界面に介在することがない。よって、例えば接着剤に熱膨張が生じた場合であっても、反射ミラーの取り付け位置に及ぼされる影響を抑えることができる。したがって、反射ミラーを高精度で保持することで光利用効率及び信頼性の高い光源装置を提供できる。また、反射ミラーの取付位置精度は、反射ミラーの接着保持部に当接する端面及び接着保持部の加工精度に依存したものとなるので、反射ミラー及び接着保持部として加工精度の高いものを用いることで高精度な治具を用いることなく、正確にミラー角度を設定することができ、光源装置の組み立てコストが抑えられる。
【0010】
また、上記光源装置においては、前記複数の反射ミラーは、該反射ミラーが配列される方向と交差する方向において各々の位置を違えることで階段状に配置されるのが好ましい。
この構成によれば、複数の反射ミラーが階段状に配置されるので、複数の発光素子から射出された光の間隔を狭めた状態に反射するミラーユニット構成を実現できる。
【0011】
また、上記光源装置においては、前記複数の反射ミラーの各々は略同一形状からなるのが好ましい。
この構成によれば、反射ミラーとして同一形状のものを用いることができるので、ミラーユニットの製造コストを低減できる。
【0012】
また、上記光源装置においては、前記複数の反射ミラーの各々は略同じ長さを有する短冊状からなるのが好ましい。
この構成によれば、反射ミラーとして同じ長さの短冊状のものを用いることができるので、反射ミラーの加工性が容易となり、ミラーユニットの製造コストを低減できる。
【0013】
また、上記光源装置においては、前記複数の反射ミラーは、該反射ミラーが配列される方向と交差する方向において一端部の位置を揃えることで階段状に配置されるのが好ましい。
この構成によれば、一端部の位置を揃えた状態で複数の反射ミラーが配置されるので、各反射ミラーを取り付ける際の位置決めを容易に行うことができる。
【0014】
また、上記光源装置においては、前記複数の反射ミラーの前記一端側は、前記反射ミラーの前記配列方向に対して前記光の入射側に近づけるように傾斜するのが好ましい。
この構成によれば、ミラーの配列方向に対して一端部が光の入射側に傾斜するので、反射ミラーを小型化できる。
【0015】
また、上記光源装置においては、前記保持部の少なくとも一部は、隣接して配置される一対の前記反射ミラーの一方であるのが好ましい。
この構成によれば、反射ミラー同士を接着することでミラーユニットが構成できるので、ミラーユニットの部品点数を少なくできる。
【0016】
また、上記光源装置においては、前記接着保持部の少なくとも一部は、前記複数の反射ミラーを保持する保持部材であるのが好ましい。
この構成によれば、複数の反射ミラーを保持部材に接着することで保持できるので、ミラーユニットの組み立て性を向上させることができる。
【0017】
また、上記光源装置においては、前記反射ミラーの前記第1の面及び前記第2の面のいずれもが前記反射面を構成するのが好ましい。
この構成によれば、反射ミラーの第1の面及び第2の面の両方が反射面を構成するので、二方向から入射する光を一個のミラーユニットで反射できる構成を提供できる。
【0018】
本発明のプロジェクターは、上記光源装置と、前記光源装置から射出された前記蛍光を画像信号で変調する光変調素子と、前記光変調素子により変調された前記蛍光を投射する投射光学系と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明のプロジェクターによれば、光利用効率及び信頼性の高い光源装置を備えるので、良好な画像を表示する信頼性の高いプロジェクターを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクターの光学系を示す模式図。
【図2】反射ミラーユニットの概略構成を示す図。
【図3】回転蛍光板の構成を示す斜視図。
【図4】第2実施形態に係る光源装置の構成を示す断面図。
【図5】変形例に係る光源装置の構成を示す断面図。
【図6】反射ミラーユニットの応用例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造における縮尺や数等が異なっている。
【0022】
図1は、本発明の光源装置が適用された照明装置を含むプロジェクターの光学系を示す模式図である。図1に示すように、プロジェクター100は、照明装置10Aと、色分離導光光学系20と、光変調装置としての液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bと、クロスダイクロイックプリズム55及び投写光学系60と、を備えている。
【0023】
照明装置10Aは、光源装置10、第1集光レンズ19、回転蛍光板30、コリメート光学系85、第2集光レンズ90、ロッドインテグレーター80、及び平行化レンズ70を備えている。すなわち、光源装置10から射出される励起光ELの光路上には、第1集光レンズ19、回転蛍光板30、コリメート光学系85、第2集光レンズ90、ロッドインテグレーター80、平行化レンズ70がこの順に配置されている。
【0024】
図2は光源装置10の構成を示す断面図である。図2に示されるように、光源装置10は、励起光源ユニット(光源部)1と、コリメートレンズユニット2と、反射ミラーユニット3とを含んでいる。励起光源ユニット1は、基台11上に複数のレーザー光源(発光素子)12が行方向及び列方向に沿って2次元配列されたレーザー光源アレイである。ここで、列方向とは図2の正面視上下方向を指し、行方向とはレーザー光源12が配列された平面における列方向と直交する方向(紙面貫通方向)を指す。
【0025】
レーザー光源12は、後述する回転蛍光板30が備える蛍光物質を励起させる励起光ELとして、青色(発光強度のピーク:450nm付近)のレーザー光を射出する。なお、レーザー光源12は、後述する蛍光物質を励起させることができる波長の光であれば、450nm以外のピーク波長を有する色光を射出する励起光源であっても構わない。
【0026】
コリメートレンズユニット2は、励起光源ユニット1のレーザー光源12の各々に対応するように設けられた複数のコリメートレンズ2aを備えている。コリメートレンズ2aは各レーザー光源12から射出された励起光ELを指向性の高い平行光に変換するためのものである。
【0027】
反射ミラーユニット3は、コリメートレンズユニット2で平行化された励起光の光軸上に励起光源ユニット1の列数と同数の反射ミラー6と、これら複数の反射ミラー6が取り付けられる本体部(不図示)とを備えている。すなわち、励起光源ユニット1における同列のレーザー光源12から射出された励起光ELは、同一の反射ミラー6によって反射されるようになっている。
【0028】
反射ミラーユニット3の各反射ミラー6は、短冊状のミラーから構成されており、それぞれ同じ長さを有した同一形状のものとなっている。このように反射ミラー6として同一形状のものを用いることで反射ミラーユニット3の製造コストを低減できる。また、反射ミラー6としては、励起光ELを反射する反射面をなす表面(第1の面)6a及び裏面(第2の面)6bにおける表裏面間における平行精度が高く、ポリゴンミラー用として好適なミラーを採用している。
【0029】
反射ミラーユニット3の各反射ミラー6は、不図示の本体部に階段状に取り付けられている。具体的に、各反射ミラー6は、励起光源ユニット1から射出される励起光ELの光軸に対して45度の角度をなして階段状に積層して配置されており、隣接する反射ミラー6同士の表面6a及び裏面6bが当接した状態となっている。
【0030】
各反射ミラー6は接着剤7を介して保持されている。具体的に本実施形態では、各反射ミラー6は、隣接する反射ミラー6同士が接着剤7によって接着されている。すなわち、本実施形態では、隣接する一対の反射ミラー6の一方が他方の反射ミラー6を接着保持する本発明の接着保持部を構成している。
【0031】
接着剤7は反射ミラー6同士の接触界面、すなわち当接面6cを跨ぐように反射ミラー6の側面に設けられている。すなわち、接着剤7は反射ミラー6同士における当接面6cに介在しない状態で反射ミラー6同士を接着保持している。以上のように、本実施形態に係る反射ミラーユニット3は、接着剤7を介して一体に保持された複数の反射ミラー6から構成されている。
【0032】
反射ミラー6は、配列方向(積層方向)に直交する方向において各々の位置を違えることで上述のような階段状に配置されたものとなっている。反射ミラーユニット3は、このように反射ミラー6を階段状に配列することで、励起光源ユニット1から射出される励起光ELの光軸方向に各反射ミラー6の相互間隔を詰めて配置している。
【0033】
このような構成に基づき、反射ミラーユニット3は、励起光源ユニット1の各レーザー光源12から射出された励起光ELの列方向における励起光EL間のピッチを狭めることで光線束の断面積を縮小するようになっている。また、光源装置10は、励起光ELの光線束の断面積を縮小することができるため、大きなレンズを配置することなく高密度な光線束を射出可能となっている。したがって、励起光ELを高出力で照射することができ、蛍光の発光効率の向上、或いは蛍光の高出力化を実現することができる。
【0034】
このような反射ミラーユニット3を組み立てる場合、まず反射ミラー6を組み立て治具に仮組みする。この治具は複数の反射ミラー6が夫々同一の傾きを有し、階段状となるように保持するものである。
【0035】
ここで、各反射ミラー6は隣接するミラー同士の表面6a及び裏面6bが互いに当接した状態とされる。よって、各反射ミラー6間における取り付け位置精度は表面6a及び裏面6bの加工精度に依存することとなる。本実施形態に係る反射ミラー6は、ポリゴンミラー用途のミラーと同様、表裏面間における平行精度が高いため、各反射ミラー6の表面6aが高い精度で平行に配置されたものとなる。
【0036】
したがって、本実施形態に係る構成によれば、高い平行精度を有する各反射ミラー6の表面6a及び裏面6bを当接させることで各ミラー同士を高精度に位置決めできるので、上記組み立て治具として高精度なものを用いる必要がない。また、反射ミラー6の表面6a及び裏面6bを当接させることで組み立てを行うことができるので、組み立て作業やリワーク作業を容易に行うことができる。よって、反射ミラーユニット3を組み立てる際のコストを削減することができる。
【0037】
このように組み立て治具に仮組みした複数の反射ミラー6に対して接着剤7を塗布する。接着剤7としては例えば紫外線硬化型のものを用いる。接着剤7は反射ミラー6同士の接触界面(当接面6c)を跨ぐように反射ミラー6の側面に塗布される。そして、紫外線を照射することで接着剤7を硬化させ、複数の反射ミラー6が接着保持されてなる反射ミラーユニット3を組み立てることができる。本実施形態では、接着剤7が反射ミラー6の側面に露出した状態で設けられているため、接着剤7に対して紫外線を良好に照射することができる。
【0038】
第1集光レンズ19は、例えば凸レンズからなる。第1集光レンズ19は、光源装置10から射出されるレーザー光の光線軸上に配置され、光源装置10から射出された励起光EL(複数のレーザー光)を、集光スポット径が1mm以下となるように集光する。
【0039】
回転蛍光板30はいわゆる透過型の回転蛍光板である。回転蛍光板30は、図3に示すように、モーター33により回転駆動される円板状の基板31の回転方向に沿って、蛍光体32が形成されてなる。基板31の回転軸はZ軸と平行な方向である。蛍光体32が形成されている領域は、励起光ELが入射する領域S(以下、励起光入射領域Sと称す場合もある)を含む。基板31を回転駆動することにより、蛍光体32の励起光入射領域Sが時間的に変動される。
【0040】
基板31は、励起光ELを透過する材料よりなる。基板31の材料としては、例えば、石英ガラス、水晶、サファイア、光学ガラス、透明樹脂等を用いることができる。図示していないが、基板31の蛍光体32が設けられている面とは反対側の面には、誘電体多層膜が設けられている。誘電体多層膜はダイクロイックミラーとして機能するものであり、励起光ELである450nm付近の光は透過し、蛍光体32から射出される蛍光の波長範囲(490nm〜750nm)を含む490nm以上の光は反射するようになっている。なお、基板31の形状は、円板状に限るものではない。
【0041】
回転蛍光板30は、使用時において7500rpmで回転する。詳しい説明は省略するが、回転蛍光板30の直径は50mmであり、回転蛍光板30に入射する励起光ELの光軸が回転蛍光板30の回転中心から約22.5mm離れた場所に位置するように構成されている。つまり、回転蛍光板30は、励起光ELの集光スポットが約18m/秒で蛍光体32上を移動するような回転速度で回転する。
【0042】
このような回転蛍光板30では、蛍光体32に励起光ELが入射されると、蛍光体32の励起光入射領域Sに対応する部分が発熱する。そして、この発熱した部分(発熱部分)は、基板31が回転することにより、円周を描いて移動し、再び、励起光入射領域に戻るというサイクルを繰り返す。これにより、発熱部分が移動の過程で冷却されるようにしている。
【0043】
光源装置10から射出されたレーザー光(青色光)は、励起光ELとして前記誘電体多層膜を介して蛍光体32に入射し、蛍光体32は励起光ELが入射する側とは反対側に向けて蛍光(赤色光及び緑色光)を射出する。
【0044】
蛍光体32は、蛍光を発する蛍光体粒子を有しており、励起光EL(青色光)を吸収し、概ね490〜750nmの蛍光に変換する機能を有する。この蛍光には、緑色光(波長530nm付近)及び赤色光(波長630nm付近)が含まれる。
【0045】
蛍光体粒子は、光源装置10から射出される励起光ELを吸収し、蛍光を発する粒子状の蛍光物質である。例えば、蛍光体粒子には、波長が約450nmの青色光によって励起されて蛍光を発する物質が含まれており、励起光ELの一部を、赤色の波長帯域から緑色の波長帯域まで含む光(黄色光)に変換して射出する。なお、励起光ELの一部は、上記黄色光に変換されないこともある。すなわち、光源装置10からは赤色、緑色、青色を含む白色光が射出されるようになっている。
【0046】
蛍光体粒子としては、通常知られたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体を用いることができる。例えば、平均粒径が10μmの(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ceで示される組成のYAG系蛍光体を用いることができる。なお、蛍光体粒子の形成材料は、1種であっても良く、2種以上の形成材料を用いて形成されている粒子を混合したものを蛍光体粒子として用いることとしても良い。
【0047】
コリメート光学系85は、回転蛍光板30と第2集光レンズ90との間の光(励起光EL及び蛍光)の光路上に配置されている。コリメート光学系85は、回転蛍光板30からの光の広がり抑える第1レンズ81と、第1レンズ81から入射される光を平行化する第2レンズ82と、各レンズ同士を固定するベース部83を含んで構成されている。第1レンズ81は、例えば凸のメニスカスレンズからなり、第2レンズ82は、例えば凸レンズからなる。コリメート光学系85は、回転蛍光板30からの光を略平行化した状態で第2集光レンズ90に入射させる。
【0048】
第2集光レンズ90は、例えば凸レンズからなる。第2集光レンズ90は、コリメート光学系85(第2レンズ82)を透過する光の光線軸上(Z軸上)に配置され、コリメート光学系85を透過した光を集光する。
【0049】
第2集光レンズ90を透過した光は、ロッドインテグレーター80の一端側に入射する。ロッドインテグレーター80は、光路方向に延在する角柱状の光学部材であり、内部を透過する光に多重反射を生じさせることにより、第2集光レンズ90を透過した光を混合し、輝度分布を均一化するものである。ロッドインテグレーター80の光路方向に直交する断面形状は、液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bの画像形成領域の外形形状と略相似形となっている。ロッドインテグレーター80の他端側から射出された光は、平行化レンズ70により平行化され、照明装置10Aから射出される。
【0050】
色分離導光光学系20は、ダイクロイックミラー21、ダイクロイックミラー22、反射ミラー23、反射ミラー24、反射ミラー25及びリレーレンズ26を備えている。色分離導光光学系20は、光源装置10からの光を赤色光、緑色光及び青色光に分離し、赤色光、緑色光及び青色光のそれぞれの色光を照明対象となる液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bに導光する機能を有する。
【0051】
ダイクロイックミラー21、ダイクロイックミラー22は、基板上に、所定の波長領域の光を反射して、他の波長領域の光を透過させる波長選択透過膜が形成されたミラーである。具体的には、ダイクロイックミラー21は、青色光成分を透過させ、赤色光成分及び緑色光成分を反射する。ダイクロイックミラー22は、緑色光成分を反射して、赤色光成分を透過させる。
【0052】
反射ミラー23、反射ミラー24、反射ミラー25は、入射した光を反射するミラーである。具体的には、反射ミラー23は、ダイクロイックミラー21を透過した青色光成分を反射する。反射ミラー24、反射ミラー25は、ダイクロイックミラー22を透過した赤色光成分を反射する。
【0053】
ダイクロイックミラー21を透過した青色光は、反射ミラー23で反射され、青色光用の液晶光変調装置40Bの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー21で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー22でさらに反射され、緑色光用の液晶光変調装置40Gの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー22を透過した赤色光は、入射側の反射ミラー24、リレーレンズ26、射出側の反射ミラー25を経て赤色光用の液晶光変調装置40Rの画像形成領域に入射する。
【0054】
液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bは、通常知られたものを用いることができ、例えば、液晶素子81と液晶素子81を挟持する偏光素子42、偏光素子43とを有した、透過型の液晶ライトバルブ等の光変調装置により構成される。偏光素子42、偏光素子43は、例えば透過軸が互いに直交する構成(クロスニコル配置)となっている。
【0055】
液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bは、入射された色光を画像情報に応じて変調してカラー画像を形成するものであり、照明装置10Aの照明対象となる。これら液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G及び液晶光変調装置40Bによって、入射された各色光の光変調が行われる。
【0056】
例えば、液晶光変調装置40R、液晶光変調装置40G、液晶光変調装置40Bは、一対の透明基板に液晶を密閉封入した透過型の液晶光変調装置であり、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像情報に応じて、入射側偏光板82から射出された1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。
【0057】
クロスダイクロイックプリズム55は、偏光素子43から射出された色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム55は、4つの直角プリズムを貼り合せた平面視略正方形状をなしている。直角プリズムを貼り合せた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向が揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0058】
クロスダイクロイックプリズム55から射出されたカラー画像は、投写光学系60によって拡大投写され、スクリーンSCR上で画像を形成する。
【0059】
本実施形態に係る光源装置10によれば、接着剤7が接着界面(ミラー同士の当接面6c)を跨ぐように反射ミラー6の側面に設けられるので、接着剤7が接着界面に介在することがない。よって、例えばプロジェクター100の駆動時の熱によって接着剤7が熱膨張した場合であっても、反射ミラー6同士の接着界面の動きが抑制されるので、反射ミラー6の取り付け位置の変化を抑えることができる。
また、反射ミラー6の取付精度は、反射ミラー6の表面6a及び裏面6bの加工精度に依存するので、高精度な治具を用いることなく、光源装置10の組み立てができるため、組み立て時のコストを抑えることができる。
【0060】
以上のように本実施形態に係る光源装置10によれば、反射ミラー6を高精度に保持できるので、第1集光レンズ19に対して励起光ELを高出力で射出することができるので、本光源装置10を含んだ照明装置10Aは蛍光体32を効率よく且つ明るく発光させて蛍光光を射出できる光利用効率の高い装置となる。したがって、プロジェクター100における照明装置として好適に利用することができる。
また、本実施形態に係るプロジェクター100によれば、上記光源装置10を含む照明装置10Aを備えるので、輝度及び照度の高い画像の投影を行うことができる。
【0061】
(第2実施形態)
続いて、本発明のプロジェクターの第2実施形態に係る構成について説明する。本実施形態と第1実施形態との違いは、光源装置の構成、具体的には反射ミラーユニットの構成であり、それ以外の構成については同一である。そのため、以下の説明では、第1実施形態と同一の部材及び構成については同じ符号を付し、その詳細な説明については省略若しくは簡略化するものとする。
【0062】
図4は本実施形態に係る光源装置110の構成を示す断面図である。図4に示されるように、光源装置110は、励起光源ユニット1と、コリメートレンズユニット2と、反射ミラーユニット3とを含んでいる。
【0063】
本実施形態では、反射ミラーユニット3が有する各反射ミラー16が短冊状のミラーから構成されており、それぞれ異なる長さとなっている。各反射ミラー16は、第1実施形態と同様、励起光源ユニット1から射出される励起光ELの光軸に対して45度の角度をなして階段状に積層して配置されており、隣接する反射ミラー16同士の表面16a及び裏面16bが当接した状態となっている。
【0064】
各反射ミラー16は、配列方向(積層方向)に直交する方向において各々の一端部16cの位置を揃えるとともに、配列方向上方に向かって各ミラー16の長さが短くなるように配置されることで上述のような階段状に配置されたものとなっている。反射ミラーユニット3は、このように反射ミラー16を階段状に配列することで、励起光源ユニット1から射出される励起光ELの光軸方向に各反射ミラー16の相互間隔を詰めて配置している。
【0065】
各反射ミラー16は接着剤7を介して保持されている。具体的に本実施形態では、各反射ミラー16は、一端部16cが当接する保持部材(接着保持部)50に対して接着剤7により接着されている。
【0066】
接着剤7は反射ミラー16と保持部材50との接触界面、すなわち当接面50aを跨ぐように反射ミラー16及び保持部材50の側面に設けられている。すなわち、接着剤7は反射ミラー16及び保持部材50間における当接面50aに介在しない状態で反射ミラー16を接着保持している。以上のように、本実施形態に係る反射ミラーユニット3は、接着剤7によって保持部材50に一体に保持された複数の反射ミラー16から構成されている。なお、保持部材50は不図示の本体部に固定されることで反射ミラーユニット3が励起光源ユニット1及びコリメートレンズユニット2に位置決めされたものとなっている。
【0067】
なお、接着剤7は、各反射ミラー16と保持部材50との間のみならず、第1実施形態と同様、隣接する反射ミラー16間を跨ぐように配置しても構わない。すなわち、隣接する一対の反射ミラー16の一方が他方の反射ミラー6を接着保持する接着保持部の一部として用いる構成であっても構わない。
【0068】
このような構成に基づき、反射ミラーユニット3は、第1実施形態と同様、励起光源ユニット1の各レーザー光源12から射出された励起光ELの列方向における励起光EL間のピッチを狭めることで光線束の断面積を縮小することで、大きなレンズを配置することなく高密度な光線束を射出可能となっている。したがって、励起光ELを高出力で照射することができる。
【0069】
このような反射ミラーユニット3を組み立てる場合、まず反射ミラー16を組み立て治具に仮組みする。この治具は複数の反射ミラー16が夫々同一の傾きを有し、階段状となるように保持するものである。
【0070】
ここで、各反射ミラー16は隣接するミラー同士の表面16a及び裏面16bが互いに当接した状態(度当たり状態)とされる。続いて、各反射ミラー16の一端部16cと保持部材50とを当接させ、反射ミラー16と保持部材50との接触界面(当接面50a)を跨ぐように反射ミラー16の側面に接着剤7を塗布する。このようにすれば、保持部材50に対して各反射ミラー16の一端部16cを度当たり(当接)状態とするとともに各ミラー16同士も表面16a及び裏面16bを当接させることで反射ミラーユニット3が組み立てられることができるので、組み立て工程を簡略化することができる。
【0071】
そして、紫外線を照射することで接着剤7を硬化させ、複数の反射ミラー16が保持部材50に接着保持されてなる反射ミラーユニット3を組み立てることができる。本実施形態では、接着剤7が反射ミラー16及び保持部材50の側面に露出した状態で設けられているため、接着剤7に対して紫外線を良好に照射できる。
【0072】
なお、図5に示すように各反射ミラー16の一端部16cを斜めに切断することで反射ミラーユニット3を小型化するようにしても構わない。この場合、反射ミラー16の一端部16cは励起光ELが入射する表面16a側に近づくように傾斜した状態となる。
【0073】
反射ミラー16を切断する場合、各反射ミラー16が分離しないように隣接する反射ミラー16間(ミラー16同士の当接面16d)を跨ぐように接着剤7を塗布し、接着固定した後に上述の切断を行う必要がある。このようにすれば、上述のように保持部材50を用いることで反射ミラーユニット3の組み立て性を維持しつつ、必要に応じて反射ミラー16の一端部16c側を切断することで反射ミラーユニット3を小型化することができる。
【0074】
以上述べたように、本実施形態によれば、接着剤7が接着界面(反射ミラー16及び保持部材50の当接面50a或いはミラー16同士の当接面16d)を跨ぐように反射ミラー16の側面に設けられることで接着剤7が接着界面に介在しないので、接着剤7が熱膨張した場合であっても、反射ミラー16の取り付け位置の変化を防止できる。このように反射ミラー16が高精度に保持されるので、第1集光レンズ19に対して励起光ELを高出力で射出することができ、本光源装置10を含む照明装置10Aは蛍光体32を効率よく且つ明るく発光させて蛍光光を射出できる光利用効率の高い装置となる。したがって、プロジェクター100における照明装置として好適である。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。例えば、上記第1実施形態では、反射ミラーユニット3を構成する各反射ミラー6の表面6a側のみを励起光ELを反射する反射面として利用する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されることはない。すなわち、各反射ミラー6の裏面6b側についても所定の光を反射させる反射面として利用する構成を採用しても構わない。
【0076】
上記反射ミラーユニット3を適用する用途としては、例えば黄色光(蛍光)と青色光とを合成することで白色光を生成する照明装置を備えたプロジェクターに適用するのが望ましい。このような照明装置は、回転蛍光板30を介した黄色光(蛍光)を得るための励起光源ユニットと、青色光を射出する青色光用の光源ユニットが別途必要となるため、光源ユニットが2系統必要となるからである。
【0077】
図6(a)は上記反射ミラーユニット3を応用した照明装置300を含むプロジェクター500の概略構成を示す図であり、図6(b)は反射ミラーユニット3の構成を示す図である。図6(a)に示されるように、照明装置300は、青色光用の第1光源ユニット300aと、黄色光用の第2光源ユニット300bを有している。なお、第2光源ユニット300bは回転蛍光板30を含み、青色光を変換することで黄色光(蛍光)を生じさせるようになっている。
【0078】
図6(b)に示すように、各ユニット300a、300bの光源アレイ301a,301bから出射したレーザー光は反射ミラーユニット3の各反射ミラー6の表面6a及び裏面6bでそれぞれ反射されるとともにユニット内の不図示のレンズでさらに反射されることで光学エンジン400へと導かれる。光学エンジン400は、色分離導光光学系20、液晶光変調装置40R、40G、40B、クロスダイクロイックプリズム55及び投写光学系60を含むものである。
【0079】
すなわち、照明装置300は、第1光源ユニット300a及び第2光源ユニット300b間において反射ミラーユニット3を共通化している。このように2系統の光源ユニット300a,300bにおいて反射ミラーユニット3を共通化することで照明装置300の小型化及び部品費用の削減に伴ったコスト低減を図ることができる。
【0080】
また、上記反射ミラーユニット3を適用する他の用途としては、3次元映像或いはデジタルシネマ対応の4K2K(4096×2160、24Hz)の映像を疑似的に表示可能なプロジェクターシステムについて適用可能である。
このようなプロジェクターシステムは、2系統で画像を表示することから、光源からの光を2系統に分離する用途として上記反射ミラーユニット3を応用することもできる。
【符号の説明】
【0081】
1…励起光源ユニット(光源部)、6、16…反射ミラー(接着保持部)、6a,16a…表面(第1の面)、6b,16b…裏面(第2の面)、6c…当接面(接触界面)、7…接着剤、10…光源装置、12…レーザー光源(発光素子)、16c…一端部、16d…当接面(接触界面)、50…保持部材(接着保持部)、50a…当接面(接触界面)、100,500…プロジェクター、110…光源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、
前記光源部から射出された光を反射する複数の反射ミラーを有するミラーユニットと、を備えた光源装置であって、
前記反射ミラーの各々は、対向して配置され且つ少なくとも一方が前記光を反射する反射面をなす第1の面及び第2の面を有するとともに接着剤を介して接着保持部に保持され、
前記複数の反射ミラーは、互いの前記第1の面及び前記第2の面が当接した状態で配置されており、
前記接着剤は、前記接着保持部と前記反射ミラーとの接触界面を跨ぐように設けられることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記複数の反射ミラーは、該反射ミラーが配列される方向と交差する方向において各々の位置を違えることで階段状に配置されることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記複数の反射ミラーの各々は略同一形状からなることを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記複数の反射ミラーの各々は略同じ長さを有する短冊状からなることを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記複数の反射ミラーは、該反射ミラーが配列される方向と交差する方向において一端側の位置を揃えることで階段状に配置されることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項6】
前記複数の反射ミラーの前記一端側は、前記反射ミラーの前記配列方向に対して前記光の入射側に近づけるように傾斜することを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記接着保持部の少なくとも一部は、隣接して配置される一対の前記反射ミラーの一方であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記接着保持部の少なくとも一部は、前記複数の反射ミラーを保持する保持部材であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項9】
前記反射ミラーの前記第1の面及び前記第2の面のいずれもが前記反射面を構成することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出された前記蛍光を画像信号で変調する光変調素子と、
前記光変調素子により変調された前記蛍光を投射する投射光学系と、を備えることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−80578(P2013−80578A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218988(P2011−218988)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】