説明

光源装置

【課題】光照射面において、その中心部に位置する光照射対象領域に高い照度を得ることができると共に、照射ムラの発生を抑制することのできる光源装置を提供する。
【解決手段】光源装置は、前方に開口を有する反射鏡と、当該反射鏡の光軸上にフィラメントコイルが位置するよう配置されてなるハロゲン電球とを備え、前記反射鏡は、前記ハロゲン電球から放射された光を反射する複数の凸状のファセットが連続して配設されてなる構成の反射面を有してなるものであり、前記凸状のファセットが、凸曲面上に投影された反射鏡の光軸の伸びる方向の曲率半径R1と、当該凸面上に投影された光軸に直交する方向の曲率半径R2との比(R1/R2)が1.2以上であって10以下である形状を有するものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン電球と反射鏡とを備えてなる光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源ランプとしてハロゲン電球を有する光源装置の或る種のものとしては、図15に示すように、ハロゲン電球11が前方(図15における右方)に光投射口42を有する凹面反射鏡41内に配置され、この凹面反射鏡41の光投射口42を塞ぐようにレンズ(以下、「前方レンズ」ともいう。)44が設けられており、当該凹面反射鏡41の反射面43が、基材の内表面に複数設けられた、平面鏡よりなるファセットによって形成されてなる構成のものが用いられている。
ここに、前方レンズ44としては、例えば表面に微小な凹凸を設けることによって光の拡散を制御する構成のもの、平滑な表面を有し、その材質によって光の拡散を防止する構成のものなどが用いられている。
【0003】
このような構成の光源装置40は、主として、凹面反射鏡41の基材の内表面の凹状形状、前方レンズ44の形状や材質、および凹面反射鏡41の反射面43を構成するファセットの形状などを調整することによって光投射口42からの投射光の制御をすることができるものである。
この光源装置40に係る投射光の制御は、その用途に応じてなされるものであり、特に照明用途に用いる場合には、投射光の広がり、すなわち「1/2照射角」と称される、投射光の開き角度を調整することによって光照射面1の中心部に位置することとなる光照射対象領域の照度(以下、「中心照度」ともいう。)を高くすると共に、この光照射対象領域以外、すなわち光照射対象領域の外側の領域に対して照射されることとなる周辺光の照度が、光照射対象領域から遠ざかるに従って徐々に低下するよう、図15における曲線(a)によって示されるような照度分布を得ることが重要とされている。
ここに、「1/2照射角」とは、図15に示すように、凹面反射鏡41の光軸(光源装置40の光軸)Cに垂直な光照射面1上における、その照度が、光軸Cが交差する点Aにおける照度の1/2倍となる点(図15における点B)と光源装置40の光源とを結ぶ直線Lが光軸Cとなす角αである。また、「光照射対象領域」とは、光源装置40から投射される光のうちの1/2照射角以下の角度で光照射面1に向かって投射される光が照射される領域である。
【0004】
光源装置40において、投射光の広がりの調整は、通常、凹面反射鏡41の基材の内表面の凹状形状を、例えば放物面状あるいは楕円面状とすることによってなされている。
ここに、投射光の広がりを前方レンズ44によって調整しようとする場合には、表面に微小な凹凸を設けることによって光の拡散を制御する構成のものを用い、この凹凸を調整することが必要となるが、凹凸が微小なものであることなどから、十分な制御を行なうことが困難であり、しかも光束の大きな減衰を招いてしまうという問題もある。
【0005】
また、光源装置40においては、光源ランプとしてハロゲン電球11が用いられており、その光源が理想とされるごく小さな点光源ではなく、直線状のフィラメントコイル14よりなるものであることから、この光源からの光が凹面反射鏡41によって収束しにくいものとなっており、その上、このフィラメントコイル14が螺旋形状を有するものであることから、凹面反射鏡41によって反射された光が、フィラメントコイル14の回旋パターンに応じたパターンを有した状態で反射されることに起因して光照射面1においてフィラメントコイル14の回旋パターンに基づく明暗、すなわち照射ムラが生じるおそれがある。
【0006】
而して、凹面反射鏡の反射面を構成するファセットとして、凸曲面を鏡面とする凸曲面鏡であって球形状のもの(図9参照)を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
このような球形状のファセットを用いることによっては、後述の実験例によって明らかなように、照度ムラの発生を抑制することはできるものの、当該ファセットによる光の反射拡散作用が大きいために、凹面反射鏡の集光効率が小さくなり、その結果、中心照度がより小さくなってしまう、という問題がある。
【0007】
【特許文献1】特公平2−19561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は光照射面において、その中心部に位置する光照射対象領域に高い照度を得ることができると共に、照射ムラの発生を抑制することのできる光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光源装置は、前方に開口を有する反射鏡と、当該反射鏡の光軸上にフィラメントコイルが位置するよう配置されてなるハロゲン電球とを備えた光源装置において、
前記反射鏡は、前記ハロゲン電球から放射された光を反射する複数の凸状のファセットが連続して配設されてなる構成の反射面を有してなるものであり、
前記凸状のファセットが、凸曲面上に投影された反射鏡の光軸の伸びる方向の曲率半径R1と、当該凸面上に投影された光軸に直交する方向の曲率半径R2との比(R1/R2)が1.2以上であって10以下である形状を有するものであることを特徴とする。
【0010】
本発明の光源装置においては、ハロゲン電球を構成するフィラメントは、反射鏡の光軸方向の寸法Lが、当該光軸に直交する方向の寸法Dよりも大きい形状を有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光源装置においては、反射鏡の反射面が連続して配設された複数の凸状のファセットよりなるものであり、当該凸状のファセットが、その凸曲面上に投影された反射鏡の光軸の伸びる方向と、当該光軸の伸びる方向に直交する方向とに異なる曲率半径を有する特定の形状を有し、それぞれの方向における光反射拡散能が個別に制御され、投影された光軸の伸びる方向の光反射拡散能が小さく、当該光軸の伸びる方向に直交する方向の光反射拡散能が大きいことに基づく光の反射拡散作用を有するものであるため、光源ランプとしてハロゲン電球を備え、その光源が、反射鏡の光軸方向に伸びる、当該ハロゲン電球の直線状のフィラメントコイルよりなるものであっても、反射鏡には、高い集光効率が得られると共に、ハロゲン電球から放射された光のうちの反射鏡によって反射された光が、フィラメントコイルの回旋パターンに応じたパターンを有した状態で反射されることに起因して生じる照射ムラを抑制することのできる反射特性が得られる。
従って、本発明の光源装置によれば、反射鏡が優れた投射光制御性能を有するものであることから、光照射面において、その中心部に位置する光照射対象領域に高い照度を得ることができると共に、照射ムラの発生を抑制することができる。
【0012】
本発明の光源装置においては、ハロゲン電球として、特定の形状を有するフィラメントコイルを有するものを用いることにより、ハロゲン電球からの放射光を反射鏡によって確実に制御し、これにより、当該光源装置に係る発光領域のすべてを制御することができるため、より一層確実に、光照射領域における光照射対象領域に高い照度を得ることができ、かつ照射ムラの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の光源装置の一例における構成の概略を示す説明用断面図であり、図2は、図1の光源装置を構成する凹面反射鏡の構成を示す説明用斜視図であり、図3は、図2の凹面反射鏡の説明用部分拡大斜視図である。
この光源装置10は、前方(図1における左方)に形成された開口よりなる光投射口21を有する凹面反射鏡20と、フィラメントコイル14を光源として有するハロゲン電球11からなる光源ランプとを備えており、ハロゲン電球11が、凹面反射鏡20の光軸上にフィラメントコイル14が位置するように配置されてなるものである。
図1において、18は、凹面反射鏡20に装着された口金であり、19は、ハロゲン電球11を保持するための保持部材である。
【0015】
ハロゲン電球11は、一端にピンチシールによって気密封止部が形成された封止部12Aを有し、他端に排気管残部12Bを有する、例えばガラス製のバルブ12を具え、このバルブ12内に、フィラメントコイル14が当該バルブ12の管軸に沿って伸びるように配置されてなる構成を有しており、バルブ12内には、不活性ガスおよびハロゲン化合物が封入されているものである。また、フィラメントコイル14には、その一端部に一方の内部リード棒15Aが接続されると共に他端部には他方の内部リード棒15Bが接続されており、これら一方の内部リード棒15Aおよび他方の内部リード棒15Bの先端は、それぞれ封止部12Aに伸びて、当該封止部12A内において互いに離間して埋設された一対の金属箔16A、16Bに接続されている。また、金属箔16A、16Bの各々には、封止部12Aから外方に伸びる一方の外部リード棒17Aおよび他方の外部リード棒17Bがそれぞれ接続されており、この外部リード棒17A、17Bは、各々、口金18に電気的に接続されている。
【0016】
凹面反射鏡20は、ハロゲン電球11から放射された光を反射するための反射空間を形成し、その前端(図1における左端)によって光投射口21が形成されている、凹面状(具体的には、例えば放物面状あるいは楕円面状)の凹面形成部分22Aと、この凹面形成部分22Aの後端(図1における右端)における中央位置に後方に伸びるよう形成された、ハロゲン電球11の封止部12Aが挿通される筒状頸部22Bとにより構成されている。
この図の例においては、凹面反射鏡20は、凹面形成部分22Aが、楕円面状の形状を有するものである。また、この凹面反射鏡20の寸法の一例としては、例えば光投射口21が外径50mmの円形状であって、反射空間の深さが20mmである。
【0017】
この凹面反射鏡20は、例えば棚珪酸ガラスなどのガラスよりなる基材23の凹面形成部分22Aに係る内表面に反射面25が形成されてなるものである。
そして、この反射面25は、基材23の凹面状の内表面に沿って隙間なく連続して設けられた、複数の凸状のファセット(以下、「凸状ファセット」ともいう。)30により構成されており、これらの複数の凸状ファセット30の凸曲面31に基づく凹凸を有するものである。
【0018】
この凹面反射鏡20の反射面25を構成する複数の凸状ファセット30は、各々、図4〜図7に示すように、凸曲面31を鏡面とする凸曲面鏡であり、鏡面である凸曲面31上に投影された凹面反射鏡20の光軸の伸びる方向(以下、「投影光軸伸長方向」ともいう。)の曲率半径R1が、当該凸曲面31上に投影された凹面反射鏡20の光軸に直交する方向(以下、「投影光軸直交方向」ともいう。)の曲率半径R2よりも大きく、曲率半径R1と曲率半径R2との比(R1/R2)が、下記数式(1)で示される関係を有するものであることが必要とされる。
なお、曲率半径R1は、図4に示すように、凹面反射鏡20の光軸を含む断面29A上において確認することができ、また曲率半径R2は、図5に示すように、凹面反射鏡20の光軸に垂直な方向の断面29B上において確認することができる。
【0019】
【数1】

【0020】
この図の例において、複数の凸状ファセット30は、各々、樽状の形状を有する、すなわち凸曲面31が樽状のものであり、各々、一の凸状ファセット30が他の6個の凸状ファセット30と互いに隣接するよう、六角形状の輪郭を有するものである。具体的には、円形の底面の半径がR2であって高さ方向に垂直な方向に膨らむように湾曲する側面の当該膨らみに係る半径がR1である樽状体が、その高さ方向においては、凹面形成部分22Aの内表面に沿うよう、すなわち当該内表面との接続面を形成するようにカットされると共に、互いに隣接する他の凸状ファセット30との接続面を形成するよう、高さ方向に垂直な方向にもカットされた、当該樽状体の側面の一部を凸曲面31とするものである。
また、これらの複数の凸状ファセット30は、凹面反射鏡20の周方向(凹面反射鏡20の光投射口21に係る円周に沿う方向)において同一個数の凸状ファセット30が配設されるよう、当該周方向に配列されてなるものは同一形状を有しているが、凹面反射鏡20の光軸方向(図1における左右方向)に配列されてなるものは当該凹面反射鏡20の凹面形成部分22Aの前端から後端に向かうに従ってその大きさが小さくなって相似関係を有する形状となっている。
【0021】
この曲率半径R1と曲率半径R2との比(R1/R2)は、数式(1)で示されるように1.2以上であって10以下であることが必要とされるが、1.5〜6.0であることが好ましい。
【0022】
凸状ファセット30における比(R1/R2)が過小である場合には、凸状ファセットの反射拡散作用により、光源装置の投射光が1/2照射角が大きく、大きな広がりを有するものとなり、その結果、凹面反射鏡に実用上必要とされる集光効率が得られず、光照射面、特にその中心部に位置する光照射対象領域において十分な照度(中央照度)が得られなくなる。
一方、凸状ファセット30における比(R1/R2)が過大である場合には、照度ムラの発生を十分に抑制することができなくなる。
なお、「1/2照射角」とは、前述のように、凹面反射鏡20の光軸(光源装置10の光軸)に垂直な光照射面上における、その照度が、光軸が交差する点における照度の1/2倍となる点と光源装置10の光源とを結ぶ直線が当該光軸となす角であり、また「光照射対象領域」とは、光源装置10から投射される光のうちの1/2照射角以下の角度で光照射面に向かって投射される光が照射される領域である(図15参照)。
【0023】
この凸状ファセット30において、曲率半径R1の値は、光照射面における中心照度を高くする観点からは、無限大(直線状)、すなわち凸状ファセットが円柱状である(図10参照)ことが好ましいが、無限大である場合には、後述の実験例からも明らかなように、光照射面において照射ムラが生じることとなるため、特定の範囲において大きな値であることが必要とされる。
ここに、曲率半径R1が無限大である場合に照射ムラが生じる理由は、円柱状の凸状ファセットが、投影光軸直交方向(凸曲面上に投影された凹面反射鏡の光軸の伸びる方向に直交する方向)のみに光反射拡散能を有し、投影光軸伸長方向には光反射拡散能を有さないものであることから、ハロゲン電球11から放射されて凹面反射鏡によって反射された光が、フィラメントコイル14の回旋パターンに対応したパターンを有した状態で反射され、光照射面に照射されることとなるためである。
また、曲率半径R2の値は、光照射面における照度ムラの発生を抑制すると共に、投射光の1/2照射角を十分な大きさとする、すなわち投射光に実用上十分な広がりを得るために、曲率半径R1よりも小さいことが必要とされる。
【0024】
凸状ファセット30の曲率半径R1および曲率半径R2の具体例としては、例えば光源装置10において投射光の1/2照射角を20度とする場合には、曲率半径R1と曲率半径R2とが数式(1)で示される関係を満たす範囲内において、曲率半径R1は10〜40mmであることが好ましく、一方、曲率半径R2は、3〜15mmであることが好ましい。
【0025】
また、凸状ファセット30は、投影光軸伸長方向(凹面反射鏡20の凹面形成部分22Aの内表面に沿う深さ方向)の寸法と、投影光軸直交方向(凹面反射鏡20の周方向であって凹面反射鏡20の光投射口21に係る円周に沿う方向)の寸法(最大値)とがほぼ同等、具体的には、これらの寸法の比(投影光軸伸長方向の寸法:投影光軸直交方向の寸法)が、1:2〜2:1の範囲内となる形状を有するものであることが好ましい。
この図の例においては、複数の凸状ファセット30が、凹面反射鏡20の凹面形成部分22Aの内表面に沿う深さ方向のピッチが1〜3mmとされ、当該凹面反射鏡20の周方向のピッチが4〜8度となるよう配置される形状を有するものとされている。
【0026】
この凸状ファセット30は、例えばその本体が例えば棚珪酸ガラスなどのガラスよりなるものであり、凹面反射鏡20の基材23と一体化して形成されてなるものである。
また、凸状ファセット30の凸曲面31よりなる鏡面は、金属膜、または例えば硫化亜鉛(ZnS)、フッ化マグネシウム(MgF2 )、二酸化チタン(TiO2 )および二酸化珪素(SiO2 )などの誘電体の2種類以上よりなる多層膜によって形成されてなるものである。
【0027】
このような凸状ファセット30の複数によって反射面25が形成されている構成の凹面反射鏡20は、凸状ファセット30を基材23と一体化して形成すること、具体的には、例えば基材形成用金型内に基材形成材料(ガラス)を流し込むことにより、凹面状の内表面に複数の凸状ファセット30に対応した凹凸が形成されてなる構成の成型体を得、この成型体の凹凸を有する内表面に、金属膜または誘電体よりなる多層膜を形成することによって作製することができる。
【0028】
このような構成の光源装置10においては、ハロゲン電球11を構成するフィラメントコイル14が、凹面反射鏡20によるハロゲン電球11の放射光の制御の観点から、図8に示すように、凹面反射鏡20の光軸方向(図1および図8における左右方向)の寸法Lと、当該光軸に直交する方向(図1および図8における上下方向)の寸法Dとが下記数式(2)で示される関係を有するものであることが好ましい。
ここに、寸法Lは、フィラメントコイル14の全長の大きさを示し、寸法Dは、フィラメントコイル14のコイル径の大きさを示す。
【0029】
【数2】

【0030】
フィラメントコイル14の寸法の具体例としては、例えば光源装置10の投射光の1/2照射角を20度とする場合には、寸法Lは5〜10mmであることが好ましく、更に好ましくは2.0〜10.0mmであり、一方、寸法Dは0.5〜3.0mmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜3.0mmである。
【0031】
フィラメントコイル14としては、例えばタングステン線を一重螺旋状または二重螺旋状に回旋してなるものを用いることができる。
ここに、フィラメントコイル14として、タングステン線よりなる一重螺旋状のものを用いる場合には、光源装置10の点灯電圧は概ね12Vとされ、またタングステン線よりなる二重螺旋状のものを用いる場合には、光源装置10の点灯電圧は概ね100〜120Vとされることとなる。
【0032】
このような構成の光源装置10は、ハロゲン電球11が点灯されると、このハロゲン電球11から放射された光は、そのうちの光照射面に向かう方向、すなわち光投射方向に放射された光が凹面反射鏡20の光投射口21から投射されると共に、光投射方向以外の方向に放射された光のうちの凹面反射鏡20によって反射された光が光投射口21から投射されることにより、光照射面に対して照射される。
【0033】
而して、この光源装置10においては、凹面反射鏡20の反射面25が連続して配設された複数の凸状ファセット30よりなるものであり、当該凸状ファセット30が、投影光軸伸長方向と、当該投影光軸伸長方向に直交する投影光軸直交方向とに異なる曲率半径を有する特定の樽状形状を有し、投影光軸伸長方向における光反射拡散能と、投影光軸直交方向における光反射拡散能とが個別に制御され、投影光軸伸長方向の光反射拡散能が小さく、投影光軸直交方向の光反射拡散能が大きいことに基づく光の反射拡散作用を有するものであるため、光源ランプとしてハロゲン電球11を備え、その光源が、点光源でなく、凹面反射鏡20の光軸方向に伸びる、当該ハロゲン電球11の直線状のフィラメントコイル14よりなるものであっても、凹面反射鏡20には、高い集光効率が得られると共に、ハロゲン電球11から放射された光のうちの凹面反射鏡20によって反射された光が、フィラメントコイル14の回旋パターンに応じたパターンを有した状態で反射されることに起因して光照射面においてフィラメントコイル14の回旋パターンに基づく明暗、すなわち照射ムラが発生することを抑制することのできる反射特性が得られる。
従って、光源装置10によれば、凹面反射鏡20が優れた投射光制御性能を有するものであることから、光照射面において、その中心部に位置する光照射対象領域に高い照度を得ることができると共に、照射ムラの発生を抑制することができる。
【0034】
ここに、光源装置10に係る凸状ファセット30の形状は、発明者らが、従来公知の球形状の凸状ファセット(図9参照)を用いた光源装置において、光照射面の光照射対象領域に十分な照度が得られない、という問題を解決するために検討を重ね、凸状ファセットの凸曲面の形状を円柱状とすることを試みたのだが、この円柱状の凸状ファセット(図10参照)を用いた光源装置には、後述の実験例からも明らかなように、光照射対象領域に十分な照度を得ることはできるものの、照射ムラの発生を十分に抑制することができない、という問題があることが明らかとなり、更に検討を重ねた結果、見出されたものである。
【0035】
また、光源装置10においては、ハロゲン電球11として、特定の形状を有するフィラメントコイル14を有するものを用いることにより、ハロゲン電球11からの放射光を凹面反射鏡20によって確実に制御し、これにより、当該光源装置10に係る発光領域のすべてを制御することができるため、より一層確実に、光照射領域における光照射対象領域に高い照度を得ることができ、かつ照射ムラの発生を抑制することができる。
【0036】
この光源装置10は、光照射面において、その中心部に位置する光照射対象領域に高い照度を得ることができると共に、照射ムラの発生を抑制することができるものであり、また投射光の1/2照度角を8〜40度の範囲において調整することができることから、照明用として好適に用いることができる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の光源装置は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【0038】
以下、本発明に係る実験例を説明する。
【0039】
〔実験例1〕 先ず、図1の構成を有し、凹面反射鏡の反射面を構成する凸状ファセットとして、投影光軸伸長方向の曲率半径R1と投影光軸直交方向の曲率半径R2との比(R1/R2)が6である樽状の凸状ファセット(以下、「樽状ファセット」ともいう。)を備えた光源装置(以下、「光源装置(11)」ともいう。)を作製した。
この光源装置(11)は、ハロゲン電球として、タングステン線が二重螺旋状に回旋されてなり、全長(寸法L)が6.0mm、コイル径(寸法D)が0.4mmのフィラメントコイルを有する、点灯電圧110Vおよび消費電力30Wの条件で点灯される構成のものを備えたものである。
【0040】
次いで、光源装置(11)において、樽状ファセットに代えて、各々、図9に示す球状の形状を有するもの、図10に示す円柱状の形状を有するものを用いたこと以外は、当該光源装置(11)と同様の構成を有する光源装置(以下、各々、「光源装置(12)」および「光源装置(13)」ともいう。)を作製した。
【0041】
作製した光源装置(12)に係る球状の形状を有する凸状ファセット(以下、「球状ファセット」ともいう。)35は、図9に示すように、一の球状ファセット35が他の6個の球状ファセット35と互いに隣接するよう、正六角形状の輪郭を有し、半径がR2である球状体が、凹面反射鏡の凹面形成部分22Aの内表面との接続面と共に、互いに隣接する他の球状ファセット35との接続面を形成するようカットされた、当該球状体の側面の一部を凸曲面36とするものである。
また、作製した光源装置(13)に係る円柱の形状を有する凸状ファセット(以下、「円柱状ファセット」ともいう。)37は、図10に示すように、一の円柱状ファセット37が他の6個の円柱状ファセット37と互いに隣接するよう、六角形状の輪郭を有し、円形の底面の半径がR2である円柱状体が、その高さ方向においては、凹面形成部分22Aの内表面に沿うよう、すなわち当該内表面との接続面を形成するようにカットされると共に、互いに隣接する他の円柱状ファセット37との接続面を形成するよう、高さ方向に垂直な方向にもカットされた、当該円柱状体の側面の一部を凸曲面38とするものである。
【0042】
作製した光源装置(11)〜光源装置(13)の各々について、光照射面との離間距離が1mとなる位置に光源装置を配置し、投射光の1/2照射角を測定すると共に、光照射面における照度分布を確認した。結果を表1および図11〜図13に示す。
また、図11〜図13においては、各々、曲線(イ)は、光源装置(11)に係る照度分布を示し、曲線(ロ)は、光源装置(12)に係る照度分布を示し、曲線(ハ)は、光源装置(13)に係る照度分布を示す。
【0043】
【表1】

【0044】
図11〜図13の結果から、以下のことが確認された。
(1)球状ファセットを用いた場合には、光照射対象領域の外側の領域に対して照射されることとなる周辺光の照度が、当該光照射対象領域から遠ざかるに従って徐々に低下する照度分布が得られており、光照射面における照度ムラの発生が抑制されているものの、当該光照射面の中央部に位置する光照射対象領域の照度(中央照度)が小さくなる。
(2)円柱状ファセットを用いた場合には、光照射面の光照射対象領域に高い照度が得られるが、その照度分布が、当該光照射面における光照射対象領域の外側の領域に照射される周辺光の照度が、当該光照射対象領域から遠ざかるに従って徐々に低下することなく、波うつように変動するものとなり、照度ムラが発生する。
(3)本発明に係る樽状ファセットを用いた場合には、光照射面の光照射対象領域に、円柱状ファセットを用いた場合と同程度の高い照度を得ることができると共に、光照射対象領域の外側の領域に対して照射されることとなる周辺光の照度が、当該光照射対象領域から遠ざかるに従って徐々に低下する照度分布が得られており、光照射面における照度ムラの発生が抑制されている。
【0045】
以上の実験例1の結果から、凹面反射鏡の反射面を構成する凸状ファセットとして、樽状ファセットを用いることにより、光照射面において、光照射対象領域に高い照度を得ることができると共に、照射ムラの発生を抑制することができる、ということが確認された。
また、光源装置(11)〜光源装置(13)に係る投射光の1/2照射角の値が揃っていることから、1/2照射角は、凸状ファセットによって微調整することが可能ではあるものの、主として、凹面反射鏡の基本形状、すなわち基材における凹面形成部分の内表面の形状によって調整することができるものであることが確認された。
【0046】
〔実験例2〕
図1の構成を有し、各々、凹面反射鏡の反射面を構成する凸状ファセットが、投影光軸伸長方向の曲率半径R1と投影光軸直交方向の曲率半径R2との比(R1/R2)が表2に示す値の樽状の凸状ファセット(樽状ファセット)である光源装置(以下、各々、「光源装置(21)」〜「光源装置(25)」とする。)を作製した。
これらの光源装置(21)〜光源装置(25)は、各々、ハロゲン電球として、タングステン線が二重螺旋状に回旋されてなり、全長(寸法L)が6.0mm、コイル径(寸法D)が0.4mmのフィラメントコイルを有する、点灯電圧110Vおよび消費電力30Wの条件で点灯される構成のものを備えたものである。
なお、光源装置(24)は、実験例1において作製した光源装置(11)と同様の構成を有するものである。
【0047】
作製した光源装置(21)〜光源装置(25)の各々について、光照射面との離間距離が1mとなる位置に光源装置を配置し、投射光の1/2照射角および光照射面の中心部に位置する光照射対象領域における照度(光照射面上における最大照度)を測定すると共に、光照射面における照射ムラの発生状態を評価した。結果を表2および図14に示す。
ここに、照射ムラの発生状態の評価は、3人の評価者が光照射面における照射ムラの有無を目視にて確認することによって行い、3人の評価者全員が照射ムラの発生がないと判定した場合を「○」、3人の評価者のうちのいずれか一人でも照射ムラの発生があると判定した場合を「△」、3人の評価者全員が照射ムラの発生があると判定した場合を「×」と評価した。
また、図14においては、比(R1/R2)と最大照度との関係を曲線(A)によって示し、比(R1/R2)と1/2照射角との関係を曲線(B)によって示した。
【0048】
【表2】

【0049】
以上の実験例2の結果から、凹面反射鏡の反射面を構成する樽状ファセットを、投影光軸伸長方向の曲率半径R1と投影光軸直交方向の曲率半径R2との比(R1/R2)が1.2以上であって10以下である特定の形状とすることにより、光照射面において、光照射対象領域に高い照度を得ることができると共に、照射ムラの発生を実用上問題のないレベルに抑制することができる、ということが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の光源装置の一例における構成の概略を示す説明用断面図である。
【図2】図1の光源装置を構成する凹面反射鏡の構成を示す説明用斜視図である。
【図3】図2の凹面反射鏡の説明用部分拡大斜視図である。
【図4】図2の凹面反射鏡の光軸を含む断面を示す説明用部分断面斜視図である。
【図5】図2の凹面反射鏡の光軸に垂直な方向の断面を示す説明用部分断面斜視図である。
【図6】図2の凹面反射鏡の反射面を構成する凸状のファセットの構成を示す説明図である。
【図7】図6の凸状のファセットの輪郭を示す説明用斜視図である。
【図8】図1の光源装置を構成するハロゲン電球におけるフィラメントコイルの構成を示す説明図である。
【図9】実験例1において作製した光源装置の凹面反射鏡の反射面を構成する凸状のファセット(球形状ファセット)の構成を示す説明図である。
【図10】実験例1において作製した実験用の光源装置の凹面反射鏡の反射面を構成する凸状のファセット(円柱状ファセット)の構成を示す説明図である。
【図11】実験例1に係る実験用の光源装置に係る光照射面全体における照度分布を示す照度分布図である。
【図12】図11の照度分布図における光照射対象領域に係る照度分布を拡大して示す部分拡大図である。
【図13】図11の照度分布図における光照射対象領域以外の領域に係る照度分布を拡大して示す部分拡大図である。
【図14】実験例2において作製した光源装置における、凹面反射鏡の反射面を構成する凸状のファセット(樽状ファセット)の曲率半径R1と曲率半径R2との比(R1/R2)と最大照度との関係と共に、比(R1/R2)と投射光の1/2照射角との関係を示すグラフである。
【図15】従来の光源装置の構成を、光照射面および当該光源装置の照度分布と共に示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 光照射面
10 光源装置
11 ハロゲン電球
12 バルブ
12A 封止部
12B 排気管残部
14 フィラメントコイル
15A、15B 内部リード棒
16A、16B 金属箔
17A、17B 外部リード棒
18 口金
19 保持部材
20 凹面反射鏡
21 光投射口
22A 凹面形成部分
22B 筒状頸部
23 基材
29A、29B 断面
25 反射面
30 凸状ファセット(樽状ファセット)
31 凸曲面
35 凸状ファセット(球状ファセット)
36 凸曲面
37 凸状ファセット(円柱状ファセット)
38 凸曲面
40 光源装置
41 凹面反射鏡
42 光投射口
43 反射面
44 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口を有する反射鏡と、当該反射鏡の光軸上にフィラメントコイルが位置するよう配置されてなるハロゲン電球とを備えた光源装置において、
前記反射鏡は、前記ハロゲン電球から放射された光を反射する複数の凸状のファセットが連続して配設されてなる構成の反射面を有してなるものであり、
前記凸状のファセットが、凸曲面上に投影された反射鏡の光軸の伸びる方向の曲率半径R1と、当該凸面上に投影された光軸に直交する方向の曲率半径R2との比(R1/R2)が1.2以上であって10以下である形状を有するものであることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
ハロゲン電球を構成するフィラメントは、反射鏡の光軸方向の寸法Lが、当該光軸に直交する方向の寸法Dよりも大きい形状を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−80070(P2010−80070A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243575(P2008−243575)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】