光走査装置、および画像形成装置
【課題】画像形成装置の潜像書込手段等に用いられる光走査装置において、光偏向器として共振構造の正弦波振動を行うマイクロミラーを用いる場合、従来のポリゴンミラーに対するfθレンズの代わりに、f・arcsinレンズを用いるが、被走査面上での主走査光束のスポット径の像高間偏差が大きくなり、この問題を抑えようとすると走査等速性に問題が生ずる。
【解決手段】像高に対応する走査速度の変化分を補正するように、像高に対応させて静止ビームスポット径を設定する。偏向器を駆動して、走査用ビームが被走査面を走査するとき、1ドットの描画中に静止ビームスポット径が移動することにより長円形の走査ビームスポット径ができる。像高によって走査速度が小さくなる場合、静止ビームスポット径を大きめに設定しておくと、結果的に像高によらず走査ビームスポット径が略一定となる。
【解決手段】像高に対応する走査速度の変化分を補正するように、像高に対応させて静止ビームスポット径を設定する。偏向器を駆動して、走査用ビームが被走査面を走査するとき、1ドットの描画中に静止ビームスポット径が移動することにより長円形の走査ビームスポット径ができる。像高によって走査速度が小さくなる場合、静止ビームスポット径を大きめに設定しておくと、結果的に像高によらず走査ビームスポット径が略一定となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置や、光走査型の表示装置、車載用のレーザレーダ装置等への応用が可能な偏向ミラー(振動ミラー)と、その偏向ミラーを用いた光走査装置、およびその光走査装置を用いたデジタル複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリ、デジタル複写機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光束を光偏向器などの偏向手段で偏向させ、その偏向された光束を被走査面に微小なスポット光として結像させ、被走査面上を主走査方向に等速走査させる光走査装置が従来から知られており、レーザビームプリンタ、レーザビームプロッタ、ファクシミリ、デジタル複写機等の画像形成装置の潜像書込手段等に応用されている。この光走査装置は、例えばレーザ光源から射出されたレーザ光を光偏向器で偏向反射することによって像担持体等の被走査面上を走査させ、これと同時に、上記レーザ光を画像信号に応じて強度変調(例えばオン、オフ)させることにより、被走査面に画像を書き込むようになっている。
上記光偏向器としては、等速回転する回転多面鏡(ポリゴンミラー)が広く用いられている。また、その偏向された光束を被走査面に結像させる走査レンズとして、fθレンズを用いることが一般的である。fθレンズにより、偏向光束を被走査面における各走査位置の走査速度を略等速にし、かつビームスポット径を略均一にしている。
【0003】
一方、マイクロマシン技術を用いた、共振構造の正弦波振動を行うマイクロミラーが、光偏向器として提案されている。回転多面鏡は装置が大掛かりとなり、また、機械的な高速回転を伴うため、振動によるバンディング、温度上昇、騒音、消費電力アップ等の問題がある点に対し、マイクロミラーを光走査装置の偏向手段として用いれば、装置が小型化され、上記のような振動によるバンディング、温度上昇、騒音、消費電力等を大幅に低減することができる。
正弦波振動を行うマイクロミラーをポリゴンミラーの代わりとして用いることで、低騒音化や低消費電力化が可能となり、オフィス環境に適合した画像形成装置が提供できる。
正弦波振動を行うマイクロミラーをポリゴンミラーの代わりとして用いることによる低消費電力化で、地球環境にも適合した画像形成装置が提供できる。
【0004】
従来技術は以下に示すような課題がある。
ポリゴンミラーとfθレンズを用いた光走査装置において、被走査面上での各走査位置での走査速度を、有効書込領域全域にわたって等速走査させるまで補正しきれない場合がある。この補正不足は、低コスト化を目的として走査レンズの薄肉化をはかる際などに発生しうる。また、一般的にポリゴンミラーとfθレンズを用いる光走査装置においては各走査位置における静止ビームスポット径(被走査面上の任意の像高における光束径)は略一定であり、その場合、各走査位置で同じ発光パルス幅で光源を変調すると、それぞれの走査速度が異なるのに伴い走査距離が異なり、結果として走査ビームスポット径が異なることとなる。各走査位置で感光体表面を露光する走査ビームスポット径が異なることは、画像の各領域におけるドット径や濃度差などを発生させ、画像の劣化につながる。
【0005】
一方、正弦波振動を行うマイクロミラーを偏向手段に用いると、偏向角度が正弦波的に変化するので、走査結像光学系に現状の書込光学系に用いられているfθレンズを用いた場合、周辺像高において走査速度が遅くなり、被走査面上での走査速度が等速ではなくなる。この場合も上記したような、画像の劣化が発生する。
【0006】
この問題に対して、特許文献1において、次式、
H=K×sin−1(φ/2φ0) ・・・(1)
但し、H:像高、K:比例定数、φ:振れ角、φ0:振幅
で示されるような結像特性(f・arcsin特性)を有する走査結像光学系(f・arcsinレンズ)を用いることにより、主走査光束のウェスト位置を光学的に補正し、広い有効書込幅と、良好な走査等速性を有する光走査装置を得ることが記載されており、公知であるが、上記光学的補正を行うと、それに伴って被走査面上において主走査光束のスポット径の像高間偏差が大きくなり、結局画像品質の劣化を招くという問題点があった。
正弦波振動を行うマイクロミラーを偏向手段に用いた光走査装置では、走査等速性と被走査面上主走査光束のスポット径像高間偏差の間にトレードオフの関係があり、この双方が良好で、良質な画像を形成する光走査装置は提供できていなかった。
【0007】
また、特許文献2、3では、正弦波振動を行うマイクロミラーを偏向手段に用いた光走査装置において、(1)式のような結像特性を有する走査結像光学系を用いて、主走査光束のウェスト位置の光学的補正を行うのではなく、マイクロミラーの振れ角を最大振幅に対して小さくしている。前述のように、この場合の偏向速度は正弦波的な変化よりも直線的な変化が支配的になり、良好な走査等速性と良好な主走査光束スポット径の像高間偏差が得られているが、マイクロミラーの振れ角を小さくするので、画像を形成する際に必要な有効書込幅を得るために光走査装置が大型化し、装置サイズを制約するという問題点がある。
【0008】
【特許文献1】特開2005−215571号公報
【特許文献2】特開2002−258204号公報
【特許文献3】特開2002−82303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、被走査面上における各走査位置での走査速度まで考慮した主走査方向の走査ビームスポット径を均一に保ち、かつ、所定の有効書込幅のための大きな偏向器振れ角を有する良好な画像を形成する光走査装置、およびそれを用いた画像形成装置を提供することを第一の目的とする。
また、マイクロミラーをポリゴンミラーの代わりとして用い、かつ、主走査方向の走査ビームスポット径を均一に保つことで、高品位な画像形成を行え、かつ、低騒音化や低消費電力化が可能な、オフィス環境に適合した画像形成装置の提供を目的とする。
また、マイクロミラーを用いることによる低消費電力化で、地球環境にも適合した画像形成装置の提供を目的とする。
また、低振動化に伴うハウジング薄肉化による、軽量化や低コスト化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明では、光源と、前記光源を1ドット単位に変調駆動する光源駆動手段と、前記光源からの光束を偏向走査する偏向手段と、該偏向手段からの光束を、画像形成に寄与する有効書込領域を有する被走査面上に導く走査結像光学系と、を有し、
前記光束が所定の像高を通過するときの被走査面上における光束径(以下静止ビームスポット径と呼ぶ)が、前記光束が1ドット分露光する間に移動することによって被走査面が受ける光束の径(以下走査ビームスポット径と呼ぶ)をほぼ一定に保つように設定されることを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の光走査装置において、前記静止ビームスポット径は、前記有効書込領域内の走査速度の変化分を補正するように設定されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の光走査装置において、前記光源駆動手段は、1ライン内の各画素毎に点灯開始タイミングを個別に設定する機能を有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記偏向手段の前記有効書込領域における各走査位置のリニアリティが変化するように設定したことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記有効書込領域内の前記走査ビームスポット径の偏差が±10%以内となるよう設定したことを特徴とする。
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における走査速度の補正残差を12.5%以下としたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における略中央部の走査速度を最大とすることを特徴とする。
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の走査速度を略同等とすることを特徴とする。
請求項9に記載の発明では、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の走査速度を、最大走査速度の−12.5%以上とすることを特徴とする。
【0014】
請求項10に記載の発明では、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の走査速度を、最大走査速度の−10%以上とすることを特徴とする。
請求項11に記載の発明では、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記偏向手段は、最大振幅を調整する調整手段を有することを特徴とする。
請求項12に記載の発明では、請求項4ないし11のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における略中央部の静止ビームスポット径を最小とするを特徴とする。
【0015】
請求項13に記載の発明では、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系前記有効書込領域における両端部の静止ビームスポット径を略同等とするを特徴とする。
請求項14に記載の発明では、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の静止ビームスポット径を、最小静止ビームスポット径の+21μm以下とするを特徴とする。
請求項15に記載の発明では像担持体と、帯電手段と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段と有する画像形成装置において、前記静電潜像形成手段は請求項1ないし14のいずれか1つに記載の光走査装置である画像形成装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、走査結像光学系を、等速性と主走査方向の静止ビームスポット径の偏差を相殺するように設定することにより、走査速度を考慮した際の走査ビームスポット径を有効書込領域全域にわたり均一に保ち、良好な画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は4ステーションを単一のポリゴンミラーにより走査する方式を示す図である。
同図において符号101〜104は感光体ドラム、105は転写体の移動方向、107、108は光源ユニット、160はポリゴンミラーをそれぞれ示す。その他の符号は必要に応じて随時参照する。
各感光体ドラムを走査する光走査装置は一体的に構成され、転写体の移動方向105に沿って等間隔で配列された4つの感光体ドラム101、102、103、104に対し、各々に対応した光源からのビームを、ポリゴンミラー160での主走査方向に偏向後に再度分離して導き、4つの感光体ドラムがそれぞれ副走査方向に回転することにより2次元画像を形成する。
ポリゴンミラー160は2段構成になっており、その上下段に対して各光源からのビームを入射させることで、各光源ユニットからのビームを一括して偏向、走査するようにしている。1枚のポリゴンミラーにより複数の走査領域を走査することにより、低コスト化がはかれる。
【0018】
光源ユニット107、108はそれぞれ2ステーション分の光源が副走査方向に配列されている。これは、光源ユニットの構成としなくても、それぞれの光源部をハウジングに直付けすることにより構成してもよい。さらに、高速化のために、それぞれの光源は、2つ以上の発光点を有する半導体レーザアレイとしてもよい。その場合、図1では代表する1つの発光点からのビームに関する光路のみを記載している。
【0019】
図2は光源ユニットの斜視図である。同図(a)は全面側斜視図、同図(b)は背面側斜視図である。
同図において符号201、202は半導体レーザ、203、204はかん合穴、205は突起部、206はホルダ部材、207は円筒状の突起部、208は支軸、209は取付座面をそれぞれ示す。
光源である半導体レーザ201、202は、ホルダ部材206に形成されたかん合穴203、204に裏側からステム外周を基準に、ステム外周に沿った回転方向を位置決めして、圧入固定される。
また、上下にU字状凹部を有する突起部205には、カップリングレンズ210、211の光軸が各々半導体レーザ201、202の射出軸と一致するように、また、射出光束が発散光束となるように発光点との光軸方向の位置決めを行い、突起部とカップリングレンズとの隙間にUV接着剤を充填して、これを硬化させ固定する。光源ユニットは、図示しない射出軸Cと直交するハウジング取付面に対し、ホルダ部材206に形成された円筒状の突起部207を位置決め基準とし、上下に支軸208を介して連結された取付座面209が、ホルダ部材と一体成形されており、ハウジング取付面に座面を当接してネジ固定する。
【0020】
光源ユニット107、108から出射された各ビームはシリンダレンズ113によってポリゴンミラーの反射面近傍で副走査方向に収束され、偏向後は発散しながらfθレンズ120に入射される。
fθレンズ120は上下段に構成され、ポリゴンミラー160の上下段にて偏向されたそれぞれのビームを、感光体ドラム101、102、103、104の表面に所定のビームスポット径にて結像させる。
【0021】
fθレンズ120を通った各光源ユニットからのビームのうち、光源ユニット107からの上段の光源201から出射されたビーム201(光源と同じ符号を付す)は、折返しミラー126で反射され、感光体ドラム101上にスポット状に結像し、第1の画像形成ステーションとしてイエロー色の画像情報に基いた潜像を形成する。
光源ユニット107からの下段のビーム202は、折返しミラー127、128で反射され、感光体ドラム102上にスポット状に結像し、第2の画像形成ステーションとしてマゼンタ色の画像情報に基いた潜像を形成する。
光源ユニット108からの下段のビーム204は、折返しミラー130、131で反射され、感光体ドラム103上にスポット状に結像し、第3の画像形成ステーションとしてシアン色の画像情報に基いた潜像を形成する。
光源ユニット108からの上段のビーム203は、折返しミラー132で反射され、感光体ドラム104上にスポット状に結像し、第4の画像形成ステーションとしてブラック色の画像情報に基いた潜像を形成する。
【0022】
同期検知センサ138へはポリゴンミラー160で偏向された光ビームが走査レンズ120の脇をすり抜け、結像レンズ139により集束され、入射されるようにしており、その検出信号をもとにステーション毎の同期検知信号を生成している。
転写ベルト105の出口ローラー部には、各ステーションで形成され重ね合わされた各色画像の重ね合わせ精度を検出するための検出手段が配備される。検出手段は転写ベルト105上に形成したトナー像の検出パターンを読み取ることで、主走査レジスト、副走査レジストを基準となるステーションからのずれとして検出し、定期的に補正制御が行なわれる。
実施例では、照明用のLED素子154と反射光を受光するフォトセンサ155および一対の集光レンズ156とからなり、画像の左右両端と中央の3ヵ所に配備され、転写ベルトの移動に応じて基準色であるブラックとの検出時間差を読み取っていく。
【0023】
fθレンズ120のポリゴンミラー160に近いレンズ面を120a、遠いレンズ面を120bとする。ポリゴンミラー160からfθレンズ120入射面120aまでの距離は31.52mm、fθレンズ120出射面120bから各感光体ドラム101、102、103、104表面までの距離は176mmである。
また、Rmを、fθレンズ120の主走査方向の近軸曲率半径、Rsをfθレンズ120の副走査方向の近軸曲率半径、Dをfθレンズ120の肉厚、Nを使用波長780nmでの屈折率とすると、各面の設計データは以下の表1の通りである。
【0024】
【表1】
【0025】
上記120a、120bの面形状は、以下の式(1)で表せる。
X(Y,Z)=(1/Rm)・Y2/{1+√(1−(1+a0)・(1/Rm)2・Y2)}+a4・Y4+a6・Y6+・・・
+Cs(Y)・Z2/{1+√(1−Cs(Y)2・Z2)}
+(f0+f1・Y+f2・Y2+・・・)・Z
ここで、Cs(Y)=1/Rs+b2・Y2+b4・Y4+・・・
【0026】
また、各面における上記(1)式中の各係数は以下の通りである。
(120a面)
a0=−5.36E+01
a4=−1.38E−06
a6=−1.58E−09
a8=3.66E−12
a10=−8.31E−15
a12=1.13E−17
a14=−5.98E−21
但し、E+01=×1001、E−07=×10−07
であり、以下においても同様の意味である。
【0027】
(120b面)
a0=1.95E+00
a4=−9.04E−07
a6=−1.04E−09
a8=1.33E−12
a10=−3.01E−15
a12=3.40E−18
a14=−1.39E−21
b1=−2.08E−05
b2=1.68E−05
b3=−1.08E−08
b4=−1.02E−08
b5=4.96E−12
b6=9.77E−14
【0028】
ここで、被走査面上の中央像高(像高0mm)における走査速度を基準とした周辺像高(±108mm)の走査速度の比(以降、リニアリティと呼ぶ)は以下の表2のようになる。
【0029】
【表2】
【0030】
図3は静的スポット径と動的スポット径の関係を求めるフローチャートである。
光源からのビームはfθレンズ120を通ることによって、被走査面上の任意の像高における光束径(ビームスポット径)が所定の大きさになるようにfθレンズ120の各像高に対するパワーが定められている。このビームスポット径は、ビームが所定の像高になるようにポリゴンミラーを静止状態で角度設定したときのビームスポット径として確認できる。そこで、この意味でのビームスポット径のことを静止ビームスポット径と呼ぶことにする。
これに対し、ポリゴンミラー160を駆動している状態における各像高での被走査面が、1ドット分の発光によって受けるビームスポット径を走査ビームスポット径と呼ぶ。
走査ビームスポット径は、静止ビームスポット径が走査速度のリニアリティによって変化したものであるが、これらの関係は数式化されていないので、同図に示すような手順の繰り返しによって、所望の走査ビームスポット径を得るための静止ビームスポット径を割り出している。計算量が多いので、所定の誤差範囲に収まったら数値を確定する。
本発明では、最終的に画素毎の露光量を均一にするために、各像高の静止ビームスポット径を以下の表3のように設定している。
【0031】
【表3】
【0032】
光源が駆動制御装置から1パルスの駆動指令を受けて1ドット分の描画を行うのに、微少ではあるが時間を要するので、ポリゴンミラー160を回転させている場合は、その時間内にビームスポットは主走査方向に移動する。したがって、被走査面が1ドット分として受ける光束は、前記静止ビームスポット径が主走査方向に若干移動した長円形的なスポットになる。ビームの移動速度が異なれば、長円形の主走査方向に関する長さが異なることになる。それ故、移動によって生ずるスポット径の大きさの変化分を含めて、像高によらず被走査面が受けるスポット径を一定にさせる必要がある。
【0033】
表3に示した静止ビームスポット径は、走査ビームスポット径が、均一になるような値としている。600dpiの1ドット(42.3μm)を走査したときの各像高の走査ビームスポット径は以下の表4のようになり、表3の静止ビームスポット径の像高間比偏差2.4%を0.8%に低減しており、ほぼ一定になったといえる。ここで、像高間比偏差は、像高によるビームスポット径の最大値と最小値の差を中央像高におけるスポット径の値で除したものであり、有効書込領域におけるビームスポット径の均一性を示す指標である。各像高における走査速度まで考慮した走査ビームスポット径を均一化することにより、画像を形成する有効書込領域の各ドット位置の露光の安定性を高めることができ、安定した画像を形成することが可能となる。
【0034】
【表4】
【0035】
本実施例において、走査ビームスポット径は上記のように有効書込領域全域で均一化をはかることができるが、各像高で走査速度が異なるので、主走査方向のドット位置を調整することが必須となる。そのため、以下のような主走査方向ドット位置補正を同時に行っている。
【0036】
図4は発光源である半導体レーザを変調する駆動回路のブロック図である。
同図において符号401はクロックの生成部、402は高周波クロック生成回路、403はカウンタ、404は比較回路、405は光源駆動部、407はラインバッファ、408はフレームメモリをそれぞれ示す。
各色毎にラスター展開された画像データはフレームメモリ408に各々一時保存され、画像処理部に順に読み出されて、前後の関係を参照しながら中間調に対応したマトリクスパターンに応じて各ラインの画素データが形成され、各発光源に対応したラインバッファ407に転送される。書込制御回路は、ラインバッファ407から、同期検知信号をトリガとして各々読み出されて独立に変調する。
【0037】
次に、各発光点を変調するクロックの生成部401について説明する。カウンタ403では、高周波クロック生成回路402で生成された高周波クロックVCLKをカウントし、比較回路404ではこのカウント値と、デューティ比に基いてあらかじめ設定される設定値L、および、画素クロックの遷移タイミングとして外部から与えられ、位相シフト量を指示する位相データHとを比較し、カウント値が上記設定値Lと一致した際に画素クロックPCLKの立下りを指示する制御信号lを出力し、位相データHと一致した際に画素クロックPCLKの立上がりを指示する制御信号hを出力する。この際、カウンタ403は制御信号hと同時にリセットされ再び0からカウントを行うことで、連続的なパルス列が形成できる。
こうして、1クロック毎に位相データHを与え、順次パルス周期が可変された画素クロックPCLKを生成する。実施例では、画素クロックPCLKは、高周波クロックVCLKの8分周とし、1/8クロックの分解能で位相が可変できるようにしている。
【0038】
図5は任意の画素の位相をシフトした説明図である。
同図は、1/8クロックだけ位相を遅らせた例である。
デューティ50%とすると設定値L=3が与えられ、カウンタ403で4カウントされ画素クロックPCLKを立ち下げる。1/8クロック位相を遅らせるとすると位相データH=6が与えられ、7カウントで立上げる。同時にカウンタがリセットされるので、4カウントで再び立ち下げる。つまり、隣接するパルス周期が1/8クロック分縮められたことになる。
こうして生成された画素クロックPCLKは、光源駆動部405に与えられ、この画素クロックPCLKに対してラインバッファ407から読み出された画素データを重畳させた変調データにより、半導体レーザを駆動する。
【0039】
図6は補正の原理を説明するための模式図である。
同図は、単一の周波数で変調した際の主走査方向に応じた各画素におけるビーム到達位置の補正量を示す。主走査領域を複数、実施例では主走査領域をa〜hの8つの領域に分割し、折れ線で近似することで各領域の境界で主走査位置ずれが0となるように、領域毎に位相シフト回数を設定し、階段状に補正する。
例えば、i領域の画素数をNi、各画素でのシフト量を画素ピッチpの1/16単位とし、各領域の両端における主走査到達位置のずれがΔLiであったとすると、
ni=Ni・p/16ΔLi
となり、ni画素毎に位相をシフトしてやればよい。
画素クロックfcとすると、トータルでの位相差Δtは、位相シフト回数Ni/niを用い
Δt=1/16fc×∫(Ni/ni)di
となり、Nドット目の画素における位相差Δtについても同様に、それまでの位相シフトの累積回数により設定できる。
【0040】
図7は点灯開始タイミングを個別に設定する例を示す模式図である。同図(a)は点灯開始タイミング変えない場合、同図(b)は変える場合をそれぞれ示す図である。
上記のように、各領域で求められたni画素毎に点灯開始タイミングを画素ピッチpの1/16単位で変更するように設定すると、各領域の境界で主走査位置ずれが0となる。
本実施例では周辺像高に行くに従い、リニアリティが減少する。したがって、1ライン内において画像信号の周波数や各画素の点灯開始タイミングが一定である場合、同図(a)に示すように、周辺に行くほどドット間隔が狭くなり、画像上で倍率誤差が発生するが、この画素毎の点灯開始タイミングの位相シフトによる設定により、同図(b)に示すように、周辺に行くほど露光分布の主走査方向の幅が小さくなるが、露光分布の主走査方向の各画素毎の間隔を均一にすることができる。また、上記により、各画素の積分光量が異なるが、光源駆動手段に1ライン内の各画素毎の点灯時間を個別に設定する手段を配備すれば、露光分布の積分光量を各画素毎に均一にすることができる。もしくは、1ライン内の各画素毎に光源の発光強度を個別に設定し、露光分布の積分光量を各画素毎に均一にすることができる。
露光分布の主走査方向の各画素毎の間隔と積分光量を各画素毎に均一にすることにより、被走査面上の主走査光束のスポット位置が均一に走査されることになる。つまり、光学的な性能により発生していた画像上の倍率誤差を電気的補正で相殺し、より良好な走査等速性を得ることができる。
【0041】
なお、分割された領域幅は均等であっても不均等であってもよく、分割数もいくつであっても構わないが、各画素でのシフト量が大きくなると、その段差が画像上目立ちやすくなるため、画素ピッチpの1/4単位以下とするのが望ましく、逆に位相シフト量が小さくなると位相シフト回数が増えメモリ容量が増えてしまう。また、分割数が少ないほどメモリ容量が少なくてすむため、主走査到達位置ずれが大きい領域の領域幅を小さく、小さい領域の領域幅を大きく設定することが効率的である。
半導体レーザの出力は、一般に、背面光を同一パッケージ内に装着される光量モニタ用のセンサによって一走査毎に画像領域にかかる前に検出され、1ライン記録中は一定値を保持するように発光源に印加する電流量を制御する。
【0042】
図8は4ステーションを単一の振動ミラーにより走査する方式を示す図である。
同図において符号441は振動ミラーを示す。
図1と同様な部分については同じ符号を付してあらわしている。
本実施例では、振動ミラー441に対して各光源ユニットからのビームは副走査方向に異なる入射角で斜入射させることで、各光源ユニットからのビームを一括して偏向、走査するようにしている。1枚の振動ミラーにより複数の走査領域を走査することにより、低コスト化をはかれる上に、複数の振動ミラーを用いる際に必要不可欠となる、共振振動数や駆動周波数、振幅や振れ角の合わせこみが不要となり、製造工程の短縮化、光学性能の向上がはかれる。
光源ユニット107、108は2ステーション分の光源が副走査方向に配列され、各光源からの光線のなす角度が2.4°となるように調整がなされ、振動ミラー面106で副走査方向に交差するように、一体的に支持されている。また、それぞれの光源は2つの発光点を有しているが、図6では代表する1つの発光点からのビームに関する光路のみを記載している。
【0043】
図9は光源ユニットの他の実施例の斜視図である。
本実施例では、光源ユニット107は、同図に示すように光源ユニットの射出軸Cに対し、下側の光源からの光線を上向きに1.5°、上側の光源からの光線を下向きに3.3°傾くようにし、射出軸Cが主走査平面に対して下向きに0.9°傾くように配置される。一方、光源ユニット108は、射出軸Cに対し、上側の光源からの光線を下向きに1.5°に、下側の光源からの光線を3.3°傾くようにし、射出軸Cが主走査平面に対して上向きに0.9°傾くように配置され、各光源ユニットの射出軸Cが振動ミラー面106で副走査方向に交差するように、各光源ユニットは副走査方向に設置高さを変えて配置される。
【0044】
光源ユニット108は、副走査方向に光源ユニット107より低い配置となるように配備され、入射ミラー111によって、各光源からのビーム201、202、203、204は上下一列に揃うように、副走査方向に高さを異ならせてシリンダレンズ113に入射され、振動ミラー106の法線に対し主走査方向での入射角が各々22.5°(=α/2+θd)となるように、また、振動ミラー106上で、副走査方向に交差するように入射される。
各ビームはシリンダレンズ113によって振動ミラー面の近傍で副走査方向に収束され、偏向後はビーム同士が分離するように間隔を拡げつつ第1走査レンズ120に入射される。
【0045】
第1走査レンズ120は全てのステーションで共用され、副走査方向には収束力を持たない。
第1走査レンズ120を通った各光源ユニットからのビームのうち、光源ユニット108からの下段のビーム204は、折返しミラー126で反射され、第2走査レンズ122を介して感光体ドラム101上にスポット状に結像し、第1の画像形成ステーションとしてイエロー色の画像情報に基いた潜像を形成する。
光源ユニット108からの上段のビーム203は、折返しミラー127で反射され、第2走査レンズ123、折返しミラー128を介して感光体ドラム102上にスポット状に結像し、第2の画像形成ステーションとしてマゼンタ色の画像情報に基いた潜像を形成する。
【0046】
光源ユニット107からの上段のビーム201は、折返しミラー129で反射され、第2走査レンズ124、折返しミラー130を介して感光体ドラム103上にスポット状に結像し、第3の画像形成ステーションとしてシアン色の画像情報に基いた潜像を形成する。
光源ユニット107からの下段のビーム202は、折返しミラー131で反射され、第2走査レンズ125、折返しミラー132を介して感光体ドラム104上にスポット状に結像し、第4の画像形成ステーションとしてブラック色の画像情報に基いた潜像を形成する。
振動ミラー441に対し、副走査方向に関し斜入射する角度が大きいほど、走査線曲がりなどの光学性能が劣化しやすい。また、ブラック色の走査位置の劣化は、画像の劣化として最も目立ちやすいので、実施例では斜入射角の小さいビーム202でブラック色の画像形成を行っている。
【0047】
同期検知センサについてはポリゴンミラーの実施例と同様に、振動ミラー106で偏向された光ビームが第1走査レンズ120の脇をすり抜け、結像レンズ139により集束され、同期検知センサ138へ入射されるようにしており、その検出信号をもとにステーション毎の同期検知信号を生成している。
【0048】
図10は光束の角度配置を説明するための図である。
実施例では、有効走査率(θd/θ0)を所定値以下、0.6以下に抑えるため、同図に示すように、
θ0≧α/2>θd
θ0≧θs>θd
ここで、θdは感光体上を走査する有効振れ角、θsは同期検知時の振れ角
なる関係となるよう、光源からの光ビームの平均入射角αを設定している。有効走査率を0.6以下にしているのは、より等速に近い走査特性となる振れ角の範囲で用いるためである。
具体的には、θ0=25°、θd=15°、α=45°、θs=18°である。
なお、同期検知センサを、θs>α/2なるように配置してもよい。
【0049】
同図では振幅中心が走査レンズの光軸と一致しない例、つまり、振幅中心を光源側にずらして振動させる例を示しているが、実施例では振幅中心を走査レンズの光軸と一致する配置としており、走査レンズ乃至は第2走査レンズの面形状が主走査方向に沿って対称な曲面形状となるようにしている。
【0050】
第1走査レンズ120の振動ミラー106に近いレンズ面を120a、遠いレンズ面を120bとする。振動ミラー106から第1走査レンズ120入射面120aまでの距離は28mm、第1走査レンズ120出射面120bからそれぞれの第2走査レンズ122、123、124、125の入射面122a、123a、124a、125aまでの距離は128mm、それぞれの第2走査レンズ122、123、124、125の出射面122b、123b、124b、125bからそれぞれの感光体ドラム101、102、103、104表面までの距離は79.5mmである。
【0051】
また、Rmを主走査方向の近軸曲率半径、Rsを副走査方向の近軸曲率半径、Dを走査結像レンズの肉厚、Nを使用波長780nmでの屈折率とすると、各面の設計データは以下の表5の通りである。第2走査レンズはそれぞれのステーションで共通化し、同じレンズを用いているので、代表的に第2走査レンズ122についてのデータを示す。
【0052】
【表5】
【0053】
また、各面における上記(1)式中の各係数は以下の通りである。
【0054】
(120a面)
a4=−3.22E−06
a6=1.63E−09
a8=1.13E−11
a10=−2.44E−14
a12=1.12E−17
(120b面)
a4=−2.37E−06
a6=1.59E−09
a8=−2.55E−12
a10=1.39E−14
a12=−2.05E−17
b2=2.27E−05
b4=−1.28E−09
【0055】
(122a面)
a4=−7.76E−07
a6=2.70E−10
a8=−3.80E−14
a10=1.66E−18
a12=2.74E−23
b2=−1.06E−06
b4=4.34E−10
b6=−2.58E−13
b8=6.15E−17
b10=−6.12E−21
b12=2.16E−25
【0056】
(122b面)
a4=−7.18E−07
a6=2.15E−10
a8=−2.41E−14
a10=9.75E−20
a12=9.23E−23
f2=−2.60E−08
f4=−1.35E−11
【0057】
図11は各像高におけるリニアリティを示す図である。
ここで、本実施例におけるリニアリティは以下の表6のようになる。また、同時に各像高のリニアリティをプロットしたグラフを図9に示す。表6、図9からわかるように、リニアリティは有効書込領域の中央像高(0mm像高)で最大値をとり、それを中心に両端像高のリニアリティが略同等となる、対称形となるように発生させている。このように設定することにより、振動ミラーの振幅中心と有効書込領域の中心を略一致させ、必然的に発生するリニアリティと、ビームスポット径ばらつきを最低限に抑制することができる。
【0058】
【表6】
【0059】
図12は各像高の静止ビームスポット径を示す図である。
このとき、走査レンズ120、122、123、124、125は、各像高の主走査方向の静止ビームスポット径を以下の表7のように設定している。また、同時に各像高の静止ビームスポット径をプロットしたグラフを図12に示す。表7、図12からわかるように、静止ビームスポット径は有効書込領域の中央像高(0mm像高)で最小値をとり、それを中心に両端像高の静止ビームスポット径が略同等となる、対称形となるように発生させている。このように設定することにより、振動ミラーの振幅中心と有効書込領域の中心を略一致させ、必然的に発生するリニアリティと、ビームスポット径ばらつきを最低限に抑制することができる。
【0060】
【表7】
【0061】
表7、図12に示す静止ビームスポット径は、走査ビームスポット径が、均一になるような値としている。600dpiの1ドット(42.3um)を走査したときの各像高の走査ビームスポット径は以下の表8のようになり、表7の静止ビームスポット径の像高間比偏差11.0%を2.3%に低減している。各像高における走査速度まで考慮した走査ビームスポット径を均一化することにより、画像を形成する有効書込領域の各ドット位置の露光の安定性を高めることができ、安定した画像を形成することが可能となる。
【0062】
【表8】
【0063】
図13はフルカラー画像の濃度むらに関する官能評価の結果を示す図である。
ここで、被走査面上にて完全な等速走査であると仮定した場合、表7に記載されている静止ビームスポット径の像高間比偏差11.0%がそのまま走査ビームスポット径の像高間比偏差となる。
走査ビームスポット径の像高間比偏差は、モノクロ機の場合は濃度ムラとなって、フルカラー機の場合は濃度ムラと色味の劣化となって画像に影響を及ぼす。同図にフルカラー機における画像出し実験にて得られた官能評価による濃度ムラ・色味の識別度を示す。走査ビームスポット径の像高間比偏差が13%を超えたところで、画像への影響が少ない領域である50%のラインを下回るレベルとなっている。よって、走査ビームスポット径の像高間比偏差を13%以下に抑制することにより画像への影響が少ない光走査装置とすることができる。
【0064】
より好ましくは、走査ビームスポット径の像高間比偏差を10%以下に抑制すると良い。同図では走査ビームスポット径の像高間比偏差が10%を超えたところから急峻に濃度ムラ・色味の劣化の識別割合が増えており、公差変動や経時的なばらつきを考慮すると、走査ビームスポット径の像高間比偏差を10%以下と設定した場合に、より画像の安定性が高い光走査装置を提供することができる。
本実施例では、走査速度を考慮したビームスポット径設計を行うことにより、画像の劣化が著しい10%以上の走査ビームスポット径像高間比偏差を、2.3%に低減することを達成しており、高品質な画像形成を可能としている。
【0065】
また、ここでは周辺像高の静止ビームスポット径を、中央像高の静止ビームスポット径の+21μm以下に抑制している。中央像高と周辺像高の静止ビームスポット径の差が大きいとき、中央像高の走査速度を速めて、少なくとも周辺像高の静止ビームスポット径以上の値にする必要がある。このため、周辺像高の静止ビームスポット径が、中央像高の静止ビームスポット径の21μm以上大きい場合、有効書込領域全体の走査ビームスポット径が、中央像高の静止ビームスポット径の21μmより大きい値でしか均一化することができない。
【0066】
本実施例においても、走査ビームスポット径は上記のように有効書込領域全域で均一化をはかることができるが、各像高で走査速度が異なるので、主走査方向のドット位置を調整することが必須となる。そのため、前述したような主走査方向ドット位置補正を同時に行っている。
振動ミラーを光偏向器に用いる場合、偏向器の走査特性上リニアリティ誤差が大きく発生するが、その限界値を−12.5%以上としている。これは以下の理由による。
【0067】
図14は官能評価による段差濃度差の識別度を示す図である。
同図において、横軸は各画素での位相シフト量であり、この値は、例えば1/16ドットという値は各画素でのシフト量が画素ピッチの1/16単位であることを示している。縦軸は濃度差を識別できなかった評価者の割合であり、この値が大きければ大きいほど電気的補正を加えたときの画像劣化が抑えられていることを示している。同図によると、各画素のシフト量が画素ピッチの1/16単位以下のときに50%以上の評価者が濃度差を識別できておらず、画像の劣化が抑えられている。このことより、限界補正量を、画素ピッチの1/16単位(±12.5%)と設定している。
【0068】
この限界補正量を超越して光源クロックの制御を行おうとすると、リニアリティを補正するために、画像品質に濃度差等の別の悪影響が出てしまい画像品質の劣化を招いてしまう。
以上の理由により、本実施例では、両端部で発生する最小のリニアリティを−11.4.%とし、劣化がなく、安定した画像を提供することを可能としている。
【0069】
より好ましくは、両端部で発生する最小のリニアリティを−10%以上とすると良い。これは、実際に走査光学系を組付ける際や経時的な変動がある際に、例えば振動ミラーの振幅中心と有効書込領域の中心との間にずれが生じることが起こりうる。この場合、設計中央値では−12.5%に設定していても、このずれにより両端部のリニアリティが−12.5%を下回ることとなる。このため、上記したように、限界補正量を超越して光源クロックの制御を行わざるを得なくなり、画像品質の劣化を招いてしまう結果となる。
【0070】
以上の理由により、両端部で発生する最小のリニアリティを−10%以上とすると、上記したような走査光学系の組付けや経時的な変動などに対して画像のロバスト性が高い光走査装置を提供することが可能となる。
本実施例では、両端部で発生する最小のリニアリティを−11.4.%としていたが、振動ミラーの駆動電圧などを調整し、その振幅をθ0=26°と設定することにより、両端部のリニアリティを−9.6%とすることができ、ロバスト性の高い画像を提供できるより良い光走査装置を提供することが可能となる。
【0071】
図15は光走査装置を搭載した画像形成装置の例を示す図である。
同図において符号900は光走査装置、901は感光体ドラム、902は帯電チャージャ、903は現像ローラ、904はトナーカートリッジ、905はクリーニングケース、906は転写ベルト、
をそれぞれ示す。
感光体ドラム901の周囲には感光体を高圧に帯電する帯電チャージャ902、光走査装置900により記録された静電潜像に帯電したトナーを付着して顕像化する現像ローラ903、現像ローラにトナーを補給するトナーカートリッジ904、ドラムに残ったトナーを掻き取って備蓄するクリーニングケース905が配置される。感光体ドラムへは振動ミラーの往復走査により1周期で2ライン毎の画像記録が行われる。
【0072】
上記した画像形成ステーションは転写ベルト906の移動方向に並列され、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー画像が転写ベルト上にタイミングを合わせて順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。各画像形成ステーションはトナー色が異なるだけで、基本的には同一構成である。
【0073】
同図はフルカラータンデム方式の画像形成装置の例を示す図である。
モノクロ機においても、本発明の光走査装置を光書込手段に適用することができる。
上述の光走査装置を画像形成装置に用いることにより、走査ビームスポット径を有効書込領域全域にわたり一定にでき、良好な画像を形成できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】4ステーションを単一のポリゴンミラーにより走査する方式を示す図である。
【図2】光源ユニットの斜視図である。
【図3】静的スポット径と動的スポット径の関係を求めるフローチャートである。
【図4】発光源である半導体レーザを変調する駆動回路のブロック図である。
【図5】任意の画素の位相をシフトした説明図である。
【図6】補正の原理を説明するための模式図である。
【図7】点灯開始タイミングを個別に設定する例を示す模式図である。
【図8】4ステーションを単一の振動ミラーにより走査する方式を示す図である。
【図9】光源ユニットの他の実施例の斜視図である。
【図10】光束の角度配置を説明するための図である。
【図11】各像高におけるリニアリティを示す図である。
【図12】各像高の静止ビームスポット径を示す図である。
【図13】フルカラー画像の濃度むらに関する官能評価の結果を示す図である。
【図14】官能評価による段差濃度差の識別度を示す図である。
【図15】光走査装置を搭載した画像形成装置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
101〜104 感光体ドラム
107、108 光源ユニット
120 fθレンズ
160 ポリゴンミラー
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置や、光走査型の表示装置、車載用のレーザレーダ装置等への応用が可能な偏向ミラー(振動ミラー)と、その偏向ミラーを用いた光走査装置、およびその光走査装置を用いたデジタル複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリ、デジタル複写機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光束を光偏向器などの偏向手段で偏向させ、その偏向された光束を被走査面に微小なスポット光として結像させ、被走査面上を主走査方向に等速走査させる光走査装置が従来から知られており、レーザビームプリンタ、レーザビームプロッタ、ファクシミリ、デジタル複写機等の画像形成装置の潜像書込手段等に応用されている。この光走査装置は、例えばレーザ光源から射出されたレーザ光を光偏向器で偏向反射することによって像担持体等の被走査面上を走査させ、これと同時に、上記レーザ光を画像信号に応じて強度変調(例えばオン、オフ)させることにより、被走査面に画像を書き込むようになっている。
上記光偏向器としては、等速回転する回転多面鏡(ポリゴンミラー)が広く用いられている。また、その偏向された光束を被走査面に結像させる走査レンズとして、fθレンズを用いることが一般的である。fθレンズにより、偏向光束を被走査面における各走査位置の走査速度を略等速にし、かつビームスポット径を略均一にしている。
【0003】
一方、マイクロマシン技術を用いた、共振構造の正弦波振動を行うマイクロミラーが、光偏向器として提案されている。回転多面鏡は装置が大掛かりとなり、また、機械的な高速回転を伴うため、振動によるバンディング、温度上昇、騒音、消費電力アップ等の問題がある点に対し、マイクロミラーを光走査装置の偏向手段として用いれば、装置が小型化され、上記のような振動によるバンディング、温度上昇、騒音、消費電力等を大幅に低減することができる。
正弦波振動を行うマイクロミラーをポリゴンミラーの代わりとして用いることで、低騒音化や低消費電力化が可能となり、オフィス環境に適合した画像形成装置が提供できる。
正弦波振動を行うマイクロミラーをポリゴンミラーの代わりとして用いることによる低消費電力化で、地球環境にも適合した画像形成装置が提供できる。
【0004】
従来技術は以下に示すような課題がある。
ポリゴンミラーとfθレンズを用いた光走査装置において、被走査面上での各走査位置での走査速度を、有効書込領域全域にわたって等速走査させるまで補正しきれない場合がある。この補正不足は、低コスト化を目的として走査レンズの薄肉化をはかる際などに発生しうる。また、一般的にポリゴンミラーとfθレンズを用いる光走査装置においては各走査位置における静止ビームスポット径(被走査面上の任意の像高における光束径)は略一定であり、その場合、各走査位置で同じ発光パルス幅で光源を変調すると、それぞれの走査速度が異なるのに伴い走査距離が異なり、結果として走査ビームスポット径が異なることとなる。各走査位置で感光体表面を露光する走査ビームスポット径が異なることは、画像の各領域におけるドット径や濃度差などを発生させ、画像の劣化につながる。
【0005】
一方、正弦波振動を行うマイクロミラーを偏向手段に用いると、偏向角度が正弦波的に変化するので、走査結像光学系に現状の書込光学系に用いられているfθレンズを用いた場合、周辺像高において走査速度が遅くなり、被走査面上での走査速度が等速ではなくなる。この場合も上記したような、画像の劣化が発生する。
【0006】
この問題に対して、特許文献1において、次式、
H=K×sin−1(φ/2φ0) ・・・(1)
但し、H:像高、K:比例定数、φ:振れ角、φ0:振幅
で示されるような結像特性(f・arcsin特性)を有する走査結像光学系(f・arcsinレンズ)を用いることにより、主走査光束のウェスト位置を光学的に補正し、広い有効書込幅と、良好な走査等速性を有する光走査装置を得ることが記載されており、公知であるが、上記光学的補正を行うと、それに伴って被走査面上において主走査光束のスポット径の像高間偏差が大きくなり、結局画像品質の劣化を招くという問題点があった。
正弦波振動を行うマイクロミラーを偏向手段に用いた光走査装置では、走査等速性と被走査面上主走査光束のスポット径像高間偏差の間にトレードオフの関係があり、この双方が良好で、良質な画像を形成する光走査装置は提供できていなかった。
【0007】
また、特許文献2、3では、正弦波振動を行うマイクロミラーを偏向手段に用いた光走査装置において、(1)式のような結像特性を有する走査結像光学系を用いて、主走査光束のウェスト位置の光学的補正を行うのではなく、マイクロミラーの振れ角を最大振幅に対して小さくしている。前述のように、この場合の偏向速度は正弦波的な変化よりも直線的な変化が支配的になり、良好な走査等速性と良好な主走査光束スポット径の像高間偏差が得られているが、マイクロミラーの振れ角を小さくするので、画像を形成する際に必要な有効書込幅を得るために光走査装置が大型化し、装置サイズを制約するという問題点がある。
【0008】
【特許文献1】特開2005−215571号公報
【特許文献2】特開2002−258204号公報
【特許文献3】特開2002−82303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、被走査面上における各走査位置での走査速度まで考慮した主走査方向の走査ビームスポット径を均一に保ち、かつ、所定の有効書込幅のための大きな偏向器振れ角を有する良好な画像を形成する光走査装置、およびそれを用いた画像形成装置を提供することを第一の目的とする。
また、マイクロミラーをポリゴンミラーの代わりとして用い、かつ、主走査方向の走査ビームスポット径を均一に保つことで、高品位な画像形成を行え、かつ、低騒音化や低消費電力化が可能な、オフィス環境に適合した画像形成装置の提供を目的とする。
また、マイクロミラーを用いることによる低消費電力化で、地球環境にも適合した画像形成装置の提供を目的とする。
また、低振動化に伴うハウジング薄肉化による、軽量化や低コスト化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明では、光源と、前記光源を1ドット単位に変調駆動する光源駆動手段と、前記光源からの光束を偏向走査する偏向手段と、該偏向手段からの光束を、画像形成に寄与する有効書込領域を有する被走査面上に導く走査結像光学系と、を有し、
前記光束が所定の像高を通過するときの被走査面上における光束径(以下静止ビームスポット径と呼ぶ)が、前記光束が1ドット分露光する間に移動することによって被走査面が受ける光束の径(以下走査ビームスポット径と呼ぶ)をほぼ一定に保つように設定されることを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の光走査装置において、前記静止ビームスポット径は、前記有効書込領域内の走査速度の変化分を補正するように設定されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の光走査装置において、前記光源駆動手段は、1ライン内の各画素毎に点灯開始タイミングを個別に設定する機能を有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記偏向手段の前記有効書込領域における各走査位置のリニアリティが変化するように設定したことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記有効書込領域内の前記走査ビームスポット径の偏差が±10%以内となるよう設定したことを特徴とする。
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における走査速度の補正残差を12.5%以下としたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における略中央部の走査速度を最大とすることを特徴とする。
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の走査速度を略同等とすることを特徴とする。
請求項9に記載の発明では、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の走査速度を、最大走査速度の−12.5%以上とすることを特徴とする。
【0014】
請求項10に記載の発明では、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の走査速度を、最大走査速度の−10%以上とすることを特徴とする。
請求項11に記載の発明では、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記偏向手段は、最大振幅を調整する調整手段を有することを特徴とする。
請求項12に記載の発明では、請求項4ないし11のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における略中央部の静止ビームスポット径を最小とするを特徴とする。
【0015】
請求項13に記載の発明では、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系前記有効書込領域における両端部の静止ビームスポット径を略同等とするを特徴とする。
請求項14に記載の発明では、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の静止ビームスポット径を、最小静止ビームスポット径の+21μm以下とするを特徴とする。
請求項15に記載の発明では像担持体と、帯電手段と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段と有する画像形成装置において、前記静電潜像形成手段は請求項1ないし14のいずれか1つに記載の光走査装置である画像形成装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、走査結像光学系を、等速性と主走査方向の静止ビームスポット径の偏差を相殺するように設定することにより、走査速度を考慮した際の走査ビームスポット径を有効書込領域全域にわたり均一に保ち、良好な画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は4ステーションを単一のポリゴンミラーにより走査する方式を示す図である。
同図において符号101〜104は感光体ドラム、105は転写体の移動方向、107、108は光源ユニット、160はポリゴンミラーをそれぞれ示す。その他の符号は必要に応じて随時参照する。
各感光体ドラムを走査する光走査装置は一体的に構成され、転写体の移動方向105に沿って等間隔で配列された4つの感光体ドラム101、102、103、104に対し、各々に対応した光源からのビームを、ポリゴンミラー160での主走査方向に偏向後に再度分離して導き、4つの感光体ドラムがそれぞれ副走査方向に回転することにより2次元画像を形成する。
ポリゴンミラー160は2段構成になっており、その上下段に対して各光源からのビームを入射させることで、各光源ユニットからのビームを一括して偏向、走査するようにしている。1枚のポリゴンミラーにより複数の走査領域を走査することにより、低コスト化がはかれる。
【0018】
光源ユニット107、108はそれぞれ2ステーション分の光源が副走査方向に配列されている。これは、光源ユニットの構成としなくても、それぞれの光源部をハウジングに直付けすることにより構成してもよい。さらに、高速化のために、それぞれの光源は、2つ以上の発光点を有する半導体レーザアレイとしてもよい。その場合、図1では代表する1つの発光点からのビームに関する光路のみを記載している。
【0019】
図2は光源ユニットの斜視図である。同図(a)は全面側斜視図、同図(b)は背面側斜視図である。
同図において符号201、202は半導体レーザ、203、204はかん合穴、205は突起部、206はホルダ部材、207は円筒状の突起部、208は支軸、209は取付座面をそれぞれ示す。
光源である半導体レーザ201、202は、ホルダ部材206に形成されたかん合穴203、204に裏側からステム外周を基準に、ステム外周に沿った回転方向を位置決めして、圧入固定される。
また、上下にU字状凹部を有する突起部205には、カップリングレンズ210、211の光軸が各々半導体レーザ201、202の射出軸と一致するように、また、射出光束が発散光束となるように発光点との光軸方向の位置決めを行い、突起部とカップリングレンズとの隙間にUV接着剤を充填して、これを硬化させ固定する。光源ユニットは、図示しない射出軸Cと直交するハウジング取付面に対し、ホルダ部材206に形成された円筒状の突起部207を位置決め基準とし、上下に支軸208を介して連結された取付座面209が、ホルダ部材と一体成形されており、ハウジング取付面に座面を当接してネジ固定する。
【0020】
光源ユニット107、108から出射された各ビームはシリンダレンズ113によってポリゴンミラーの反射面近傍で副走査方向に収束され、偏向後は発散しながらfθレンズ120に入射される。
fθレンズ120は上下段に構成され、ポリゴンミラー160の上下段にて偏向されたそれぞれのビームを、感光体ドラム101、102、103、104の表面に所定のビームスポット径にて結像させる。
【0021】
fθレンズ120を通った各光源ユニットからのビームのうち、光源ユニット107からの上段の光源201から出射されたビーム201(光源と同じ符号を付す)は、折返しミラー126で反射され、感光体ドラム101上にスポット状に結像し、第1の画像形成ステーションとしてイエロー色の画像情報に基いた潜像を形成する。
光源ユニット107からの下段のビーム202は、折返しミラー127、128で反射され、感光体ドラム102上にスポット状に結像し、第2の画像形成ステーションとしてマゼンタ色の画像情報に基いた潜像を形成する。
光源ユニット108からの下段のビーム204は、折返しミラー130、131で反射され、感光体ドラム103上にスポット状に結像し、第3の画像形成ステーションとしてシアン色の画像情報に基いた潜像を形成する。
光源ユニット108からの上段のビーム203は、折返しミラー132で反射され、感光体ドラム104上にスポット状に結像し、第4の画像形成ステーションとしてブラック色の画像情報に基いた潜像を形成する。
【0022】
同期検知センサ138へはポリゴンミラー160で偏向された光ビームが走査レンズ120の脇をすり抜け、結像レンズ139により集束され、入射されるようにしており、その検出信号をもとにステーション毎の同期検知信号を生成している。
転写ベルト105の出口ローラー部には、各ステーションで形成され重ね合わされた各色画像の重ね合わせ精度を検出するための検出手段が配備される。検出手段は転写ベルト105上に形成したトナー像の検出パターンを読み取ることで、主走査レジスト、副走査レジストを基準となるステーションからのずれとして検出し、定期的に補正制御が行なわれる。
実施例では、照明用のLED素子154と反射光を受光するフォトセンサ155および一対の集光レンズ156とからなり、画像の左右両端と中央の3ヵ所に配備され、転写ベルトの移動に応じて基準色であるブラックとの検出時間差を読み取っていく。
【0023】
fθレンズ120のポリゴンミラー160に近いレンズ面を120a、遠いレンズ面を120bとする。ポリゴンミラー160からfθレンズ120入射面120aまでの距離は31.52mm、fθレンズ120出射面120bから各感光体ドラム101、102、103、104表面までの距離は176mmである。
また、Rmを、fθレンズ120の主走査方向の近軸曲率半径、Rsをfθレンズ120の副走査方向の近軸曲率半径、Dをfθレンズ120の肉厚、Nを使用波長780nmでの屈折率とすると、各面の設計データは以下の表1の通りである。
【0024】
【表1】
【0025】
上記120a、120bの面形状は、以下の式(1)で表せる。
X(Y,Z)=(1/Rm)・Y2/{1+√(1−(1+a0)・(1/Rm)2・Y2)}+a4・Y4+a6・Y6+・・・
+Cs(Y)・Z2/{1+√(1−Cs(Y)2・Z2)}
+(f0+f1・Y+f2・Y2+・・・)・Z
ここで、Cs(Y)=1/Rs+b2・Y2+b4・Y4+・・・
【0026】
また、各面における上記(1)式中の各係数は以下の通りである。
(120a面)
a0=−5.36E+01
a4=−1.38E−06
a6=−1.58E−09
a8=3.66E−12
a10=−8.31E−15
a12=1.13E−17
a14=−5.98E−21
但し、E+01=×1001、E−07=×10−07
であり、以下においても同様の意味である。
【0027】
(120b面)
a0=1.95E+00
a4=−9.04E−07
a6=−1.04E−09
a8=1.33E−12
a10=−3.01E−15
a12=3.40E−18
a14=−1.39E−21
b1=−2.08E−05
b2=1.68E−05
b3=−1.08E−08
b4=−1.02E−08
b5=4.96E−12
b6=9.77E−14
【0028】
ここで、被走査面上の中央像高(像高0mm)における走査速度を基準とした周辺像高(±108mm)の走査速度の比(以降、リニアリティと呼ぶ)は以下の表2のようになる。
【0029】
【表2】
【0030】
図3は静的スポット径と動的スポット径の関係を求めるフローチャートである。
光源からのビームはfθレンズ120を通ることによって、被走査面上の任意の像高における光束径(ビームスポット径)が所定の大きさになるようにfθレンズ120の各像高に対するパワーが定められている。このビームスポット径は、ビームが所定の像高になるようにポリゴンミラーを静止状態で角度設定したときのビームスポット径として確認できる。そこで、この意味でのビームスポット径のことを静止ビームスポット径と呼ぶことにする。
これに対し、ポリゴンミラー160を駆動している状態における各像高での被走査面が、1ドット分の発光によって受けるビームスポット径を走査ビームスポット径と呼ぶ。
走査ビームスポット径は、静止ビームスポット径が走査速度のリニアリティによって変化したものであるが、これらの関係は数式化されていないので、同図に示すような手順の繰り返しによって、所望の走査ビームスポット径を得るための静止ビームスポット径を割り出している。計算量が多いので、所定の誤差範囲に収まったら数値を確定する。
本発明では、最終的に画素毎の露光量を均一にするために、各像高の静止ビームスポット径を以下の表3のように設定している。
【0031】
【表3】
【0032】
光源が駆動制御装置から1パルスの駆動指令を受けて1ドット分の描画を行うのに、微少ではあるが時間を要するので、ポリゴンミラー160を回転させている場合は、その時間内にビームスポットは主走査方向に移動する。したがって、被走査面が1ドット分として受ける光束は、前記静止ビームスポット径が主走査方向に若干移動した長円形的なスポットになる。ビームの移動速度が異なれば、長円形の主走査方向に関する長さが異なることになる。それ故、移動によって生ずるスポット径の大きさの変化分を含めて、像高によらず被走査面が受けるスポット径を一定にさせる必要がある。
【0033】
表3に示した静止ビームスポット径は、走査ビームスポット径が、均一になるような値としている。600dpiの1ドット(42.3μm)を走査したときの各像高の走査ビームスポット径は以下の表4のようになり、表3の静止ビームスポット径の像高間比偏差2.4%を0.8%に低減しており、ほぼ一定になったといえる。ここで、像高間比偏差は、像高によるビームスポット径の最大値と最小値の差を中央像高におけるスポット径の値で除したものであり、有効書込領域におけるビームスポット径の均一性を示す指標である。各像高における走査速度まで考慮した走査ビームスポット径を均一化することにより、画像を形成する有効書込領域の各ドット位置の露光の安定性を高めることができ、安定した画像を形成することが可能となる。
【0034】
【表4】
【0035】
本実施例において、走査ビームスポット径は上記のように有効書込領域全域で均一化をはかることができるが、各像高で走査速度が異なるので、主走査方向のドット位置を調整することが必須となる。そのため、以下のような主走査方向ドット位置補正を同時に行っている。
【0036】
図4は発光源である半導体レーザを変調する駆動回路のブロック図である。
同図において符号401はクロックの生成部、402は高周波クロック生成回路、403はカウンタ、404は比較回路、405は光源駆動部、407はラインバッファ、408はフレームメモリをそれぞれ示す。
各色毎にラスター展開された画像データはフレームメモリ408に各々一時保存され、画像処理部に順に読み出されて、前後の関係を参照しながら中間調に対応したマトリクスパターンに応じて各ラインの画素データが形成され、各発光源に対応したラインバッファ407に転送される。書込制御回路は、ラインバッファ407から、同期検知信号をトリガとして各々読み出されて独立に変調する。
【0037】
次に、各発光点を変調するクロックの生成部401について説明する。カウンタ403では、高周波クロック生成回路402で生成された高周波クロックVCLKをカウントし、比較回路404ではこのカウント値と、デューティ比に基いてあらかじめ設定される設定値L、および、画素クロックの遷移タイミングとして外部から与えられ、位相シフト量を指示する位相データHとを比較し、カウント値が上記設定値Lと一致した際に画素クロックPCLKの立下りを指示する制御信号lを出力し、位相データHと一致した際に画素クロックPCLKの立上がりを指示する制御信号hを出力する。この際、カウンタ403は制御信号hと同時にリセットされ再び0からカウントを行うことで、連続的なパルス列が形成できる。
こうして、1クロック毎に位相データHを与え、順次パルス周期が可変された画素クロックPCLKを生成する。実施例では、画素クロックPCLKは、高周波クロックVCLKの8分周とし、1/8クロックの分解能で位相が可変できるようにしている。
【0038】
図5は任意の画素の位相をシフトした説明図である。
同図は、1/8クロックだけ位相を遅らせた例である。
デューティ50%とすると設定値L=3が与えられ、カウンタ403で4カウントされ画素クロックPCLKを立ち下げる。1/8クロック位相を遅らせるとすると位相データH=6が与えられ、7カウントで立上げる。同時にカウンタがリセットされるので、4カウントで再び立ち下げる。つまり、隣接するパルス周期が1/8クロック分縮められたことになる。
こうして生成された画素クロックPCLKは、光源駆動部405に与えられ、この画素クロックPCLKに対してラインバッファ407から読み出された画素データを重畳させた変調データにより、半導体レーザを駆動する。
【0039】
図6は補正の原理を説明するための模式図である。
同図は、単一の周波数で変調した際の主走査方向に応じた各画素におけるビーム到達位置の補正量を示す。主走査領域を複数、実施例では主走査領域をa〜hの8つの領域に分割し、折れ線で近似することで各領域の境界で主走査位置ずれが0となるように、領域毎に位相シフト回数を設定し、階段状に補正する。
例えば、i領域の画素数をNi、各画素でのシフト量を画素ピッチpの1/16単位とし、各領域の両端における主走査到達位置のずれがΔLiであったとすると、
ni=Ni・p/16ΔLi
となり、ni画素毎に位相をシフトしてやればよい。
画素クロックfcとすると、トータルでの位相差Δtは、位相シフト回数Ni/niを用い
Δt=1/16fc×∫(Ni/ni)di
となり、Nドット目の画素における位相差Δtについても同様に、それまでの位相シフトの累積回数により設定できる。
【0040】
図7は点灯開始タイミングを個別に設定する例を示す模式図である。同図(a)は点灯開始タイミング変えない場合、同図(b)は変える場合をそれぞれ示す図である。
上記のように、各領域で求められたni画素毎に点灯開始タイミングを画素ピッチpの1/16単位で変更するように設定すると、各領域の境界で主走査位置ずれが0となる。
本実施例では周辺像高に行くに従い、リニアリティが減少する。したがって、1ライン内において画像信号の周波数や各画素の点灯開始タイミングが一定である場合、同図(a)に示すように、周辺に行くほどドット間隔が狭くなり、画像上で倍率誤差が発生するが、この画素毎の点灯開始タイミングの位相シフトによる設定により、同図(b)に示すように、周辺に行くほど露光分布の主走査方向の幅が小さくなるが、露光分布の主走査方向の各画素毎の間隔を均一にすることができる。また、上記により、各画素の積分光量が異なるが、光源駆動手段に1ライン内の各画素毎の点灯時間を個別に設定する手段を配備すれば、露光分布の積分光量を各画素毎に均一にすることができる。もしくは、1ライン内の各画素毎に光源の発光強度を個別に設定し、露光分布の積分光量を各画素毎に均一にすることができる。
露光分布の主走査方向の各画素毎の間隔と積分光量を各画素毎に均一にすることにより、被走査面上の主走査光束のスポット位置が均一に走査されることになる。つまり、光学的な性能により発生していた画像上の倍率誤差を電気的補正で相殺し、より良好な走査等速性を得ることができる。
【0041】
なお、分割された領域幅は均等であっても不均等であってもよく、分割数もいくつであっても構わないが、各画素でのシフト量が大きくなると、その段差が画像上目立ちやすくなるため、画素ピッチpの1/4単位以下とするのが望ましく、逆に位相シフト量が小さくなると位相シフト回数が増えメモリ容量が増えてしまう。また、分割数が少ないほどメモリ容量が少なくてすむため、主走査到達位置ずれが大きい領域の領域幅を小さく、小さい領域の領域幅を大きく設定することが効率的である。
半導体レーザの出力は、一般に、背面光を同一パッケージ内に装着される光量モニタ用のセンサによって一走査毎に画像領域にかかる前に検出され、1ライン記録中は一定値を保持するように発光源に印加する電流量を制御する。
【0042】
図8は4ステーションを単一の振動ミラーにより走査する方式を示す図である。
同図において符号441は振動ミラーを示す。
図1と同様な部分については同じ符号を付してあらわしている。
本実施例では、振動ミラー441に対して各光源ユニットからのビームは副走査方向に異なる入射角で斜入射させることで、各光源ユニットからのビームを一括して偏向、走査するようにしている。1枚の振動ミラーにより複数の走査領域を走査することにより、低コスト化をはかれる上に、複数の振動ミラーを用いる際に必要不可欠となる、共振振動数や駆動周波数、振幅や振れ角の合わせこみが不要となり、製造工程の短縮化、光学性能の向上がはかれる。
光源ユニット107、108は2ステーション分の光源が副走査方向に配列され、各光源からの光線のなす角度が2.4°となるように調整がなされ、振動ミラー面106で副走査方向に交差するように、一体的に支持されている。また、それぞれの光源は2つの発光点を有しているが、図6では代表する1つの発光点からのビームに関する光路のみを記載している。
【0043】
図9は光源ユニットの他の実施例の斜視図である。
本実施例では、光源ユニット107は、同図に示すように光源ユニットの射出軸Cに対し、下側の光源からの光線を上向きに1.5°、上側の光源からの光線を下向きに3.3°傾くようにし、射出軸Cが主走査平面に対して下向きに0.9°傾くように配置される。一方、光源ユニット108は、射出軸Cに対し、上側の光源からの光線を下向きに1.5°に、下側の光源からの光線を3.3°傾くようにし、射出軸Cが主走査平面に対して上向きに0.9°傾くように配置され、各光源ユニットの射出軸Cが振動ミラー面106で副走査方向に交差するように、各光源ユニットは副走査方向に設置高さを変えて配置される。
【0044】
光源ユニット108は、副走査方向に光源ユニット107より低い配置となるように配備され、入射ミラー111によって、各光源からのビーム201、202、203、204は上下一列に揃うように、副走査方向に高さを異ならせてシリンダレンズ113に入射され、振動ミラー106の法線に対し主走査方向での入射角が各々22.5°(=α/2+θd)となるように、また、振動ミラー106上で、副走査方向に交差するように入射される。
各ビームはシリンダレンズ113によって振動ミラー面の近傍で副走査方向に収束され、偏向後はビーム同士が分離するように間隔を拡げつつ第1走査レンズ120に入射される。
【0045】
第1走査レンズ120は全てのステーションで共用され、副走査方向には収束力を持たない。
第1走査レンズ120を通った各光源ユニットからのビームのうち、光源ユニット108からの下段のビーム204は、折返しミラー126で反射され、第2走査レンズ122を介して感光体ドラム101上にスポット状に結像し、第1の画像形成ステーションとしてイエロー色の画像情報に基いた潜像を形成する。
光源ユニット108からの上段のビーム203は、折返しミラー127で反射され、第2走査レンズ123、折返しミラー128を介して感光体ドラム102上にスポット状に結像し、第2の画像形成ステーションとしてマゼンタ色の画像情報に基いた潜像を形成する。
【0046】
光源ユニット107からの上段のビーム201は、折返しミラー129で反射され、第2走査レンズ124、折返しミラー130を介して感光体ドラム103上にスポット状に結像し、第3の画像形成ステーションとしてシアン色の画像情報に基いた潜像を形成する。
光源ユニット107からの下段のビーム202は、折返しミラー131で反射され、第2走査レンズ125、折返しミラー132を介して感光体ドラム104上にスポット状に結像し、第4の画像形成ステーションとしてブラック色の画像情報に基いた潜像を形成する。
振動ミラー441に対し、副走査方向に関し斜入射する角度が大きいほど、走査線曲がりなどの光学性能が劣化しやすい。また、ブラック色の走査位置の劣化は、画像の劣化として最も目立ちやすいので、実施例では斜入射角の小さいビーム202でブラック色の画像形成を行っている。
【0047】
同期検知センサについてはポリゴンミラーの実施例と同様に、振動ミラー106で偏向された光ビームが第1走査レンズ120の脇をすり抜け、結像レンズ139により集束され、同期検知センサ138へ入射されるようにしており、その検出信号をもとにステーション毎の同期検知信号を生成している。
【0048】
図10は光束の角度配置を説明するための図である。
実施例では、有効走査率(θd/θ0)を所定値以下、0.6以下に抑えるため、同図に示すように、
θ0≧α/2>θd
θ0≧θs>θd
ここで、θdは感光体上を走査する有効振れ角、θsは同期検知時の振れ角
なる関係となるよう、光源からの光ビームの平均入射角αを設定している。有効走査率を0.6以下にしているのは、より等速に近い走査特性となる振れ角の範囲で用いるためである。
具体的には、θ0=25°、θd=15°、α=45°、θs=18°である。
なお、同期検知センサを、θs>α/2なるように配置してもよい。
【0049】
同図では振幅中心が走査レンズの光軸と一致しない例、つまり、振幅中心を光源側にずらして振動させる例を示しているが、実施例では振幅中心を走査レンズの光軸と一致する配置としており、走査レンズ乃至は第2走査レンズの面形状が主走査方向に沿って対称な曲面形状となるようにしている。
【0050】
第1走査レンズ120の振動ミラー106に近いレンズ面を120a、遠いレンズ面を120bとする。振動ミラー106から第1走査レンズ120入射面120aまでの距離は28mm、第1走査レンズ120出射面120bからそれぞれの第2走査レンズ122、123、124、125の入射面122a、123a、124a、125aまでの距離は128mm、それぞれの第2走査レンズ122、123、124、125の出射面122b、123b、124b、125bからそれぞれの感光体ドラム101、102、103、104表面までの距離は79.5mmである。
【0051】
また、Rmを主走査方向の近軸曲率半径、Rsを副走査方向の近軸曲率半径、Dを走査結像レンズの肉厚、Nを使用波長780nmでの屈折率とすると、各面の設計データは以下の表5の通りである。第2走査レンズはそれぞれのステーションで共通化し、同じレンズを用いているので、代表的に第2走査レンズ122についてのデータを示す。
【0052】
【表5】
【0053】
また、各面における上記(1)式中の各係数は以下の通りである。
【0054】
(120a面)
a4=−3.22E−06
a6=1.63E−09
a8=1.13E−11
a10=−2.44E−14
a12=1.12E−17
(120b面)
a4=−2.37E−06
a6=1.59E−09
a8=−2.55E−12
a10=1.39E−14
a12=−2.05E−17
b2=2.27E−05
b4=−1.28E−09
【0055】
(122a面)
a4=−7.76E−07
a6=2.70E−10
a8=−3.80E−14
a10=1.66E−18
a12=2.74E−23
b2=−1.06E−06
b4=4.34E−10
b6=−2.58E−13
b8=6.15E−17
b10=−6.12E−21
b12=2.16E−25
【0056】
(122b面)
a4=−7.18E−07
a6=2.15E−10
a8=−2.41E−14
a10=9.75E−20
a12=9.23E−23
f2=−2.60E−08
f4=−1.35E−11
【0057】
図11は各像高におけるリニアリティを示す図である。
ここで、本実施例におけるリニアリティは以下の表6のようになる。また、同時に各像高のリニアリティをプロットしたグラフを図9に示す。表6、図9からわかるように、リニアリティは有効書込領域の中央像高(0mm像高)で最大値をとり、それを中心に両端像高のリニアリティが略同等となる、対称形となるように発生させている。このように設定することにより、振動ミラーの振幅中心と有効書込領域の中心を略一致させ、必然的に発生するリニアリティと、ビームスポット径ばらつきを最低限に抑制することができる。
【0058】
【表6】
【0059】
図12は各像高の静止ビームスポット径を示す図である。
このとき、走査レンズ120、122、123、124、125は、各像高の主走査方向の静止ビームスポット径を以下の表7のように設定している。また、同時に各像高の静止ビームスポット径をプロットしたグラフを図12に示す。表7、図12からわかるように、静止ビームスポット径は有効書込領域の中央像高(0mm像高)で最小値をとり、それを中心に両端像高の静止ビームスポット径が略同等となる、対称形となるように発生させている。このように設定することにより、振動ミラーの振幅中心と有効書込領域の中心を略一致させ、必然的に発生するリニアリティと、ビームスポット径ばらつきを最低限に抑制することができる。
【0060】
【表7】
【0061】
表7、図12に示す静止ビームスポット径は、走査ビームスポット径が、均一になるような値としている。600dpiの1ドット(42.3um)を走査したときの各像高の走査ビームスポット径は以下の表8のようになり、表7の静止ビームスポット径の像高間比偏差11.0%を2.3%に低減している。各像高における走査速度まで考慮した走査ビームスポット径を均一化することにより、画像を形成する有効書込領域の各ドット位置の露光の安定性を高めることができ、安定した画像を形成することが可能となる。
【0062】
【表8】
【0063】
図13はフルカラー画像の濃度むらに関する官能評価の結果を示す図である。
ここで、被走査面上にて完全な等速走査であると仮定した場合、表7に記載されている静止ビームスポット径の像高間比偏差11.0%がそのまま走査ビームスポット径の像高間比偏差となる。
走査ビームスポット径の像高間比偏差は、モノクロ機の場合は濃度ムラとなって、フルカラー機の場合は濃度ムラと色味の劣化となって画像に影響を及ぼす。同図にフルカラー機における画像出し実験にて得られた官能評価による濃度ムラ・色味の識別度を示す。走査ビームスポット径の像高間比偏差が13%を超えたところで、画像への影響が少ない領域である50%のラインを下回るレベルとなっている。よって、走査ビームスポット径の像高間比偏差を13%以下に抑制することにより画像への影響が少ない光走査装置とすることができる。
【0064】
より好ましくは、走査ビームスポット径の像高間比偏差を10%以下に抑制すると良い。同図では走査ビームスポット径の像高間比偏差が10%を超えたところから急峻に濃度ムラ・色味の劣化の識別割合が増えており、公差変動や経時的なばらつきを考慮すると、走査ビームスポット径の像高間比偏差を10%以下と設定した場合に、より画像の安定性が高い光走査装置を提供することができる。
本実施例では、走査速度を考慮したビームスポット径設計を行うことにより、画像の劣化が著しい10%以上の走査ビームスポット径像高間比偏差を、2.3%に低減することを達成しており、高品質な画像形成を可能としている。
【0065】
また、ここでは周辺像高の静止ビームスポット径を、中央像高の静止ビームスポット径の+21μm以下に抑制している。中央像高と周辺像高の静止ビームスポット径の差が大きいとき、中央像高の走査速度を速めて、少なくとも周辺像高の静止ビームスポット径以上の値にする必要がある。このため、周辺像高の静止ビームスポット径が、中央像高の静止ビームスポット径の21μm以上大きい場合、有効書込領域全体の走査ビームスポット径が、中央像高の静止ビームスポット径の21μmより大きい値でしか均一化することができない。
【0066】
本実施例においても、走査ビームスポット径は上記のように有効書込領域全域で均一化をはかることができるが、各像高で走査速度が異なるので、主走査方向のドット位置を調整することが必須となる。そのため、前述したような主走査方向ドット位置補正を同時に行っている。
振動ミラーを光偏向器に用いる場合、偏向器の走査特性上リニアリティ誤差が大きく発生するが、その限界値を−12.5%以上としている。これは以下の理由による。
【0067】
図14は官能評価による段差濃度差の識別度を示す図である。
同図において、横軸は各画素での位相シフト量であり、この値は、例えば1/16ドットという値は各画素でのシフト量が画素ピッチの1/16単位であることを示している。縦軸は濃度差を識別できなかった評価者の割合であり、この値が大きければ大きいほど電気的補正を加えたときの画像劣化が抑えられていることを示している。同図によると、各画素のシフト量が画素ピッチの1/16単位以下のときに50%以上の評価者が濃度差を識別できておらず、画像の劣化が抑えられている。このことより、限界補正量を、画素ピッチの1/16単位(±12.5%)と設定している。
【0068】
この限界補正量を超越して光源クロックの制御を行おうとすると、リニアリティを補正するために、画像品質に濃度差等の別の悪影響が出てしまい画像品質の劣化を招いてしまう。
以上の理由により、本実施例では、両端部で発生する最小のリニアリティを−11.4.%とし、劣化がなく、安定した画像を提供することを可能としている。
【0069】
より好ましくは、両端部で発生する最小のリニアリティを−10%以上とすると良い。これは、実際に走査光学系を組付ける際や経時的な変動がある際に、例えば振動ミラーの振幅中心と有効書込領域の中心との間にずれが生じることが起こりうる。この場合、設計中央値では−12.5%に設定していても、このずれにより両端部のリニアリティが−12.5%を下回ることとなる。このため、上記したように、限界補正量を超越して光源クロックの制御を行わざるを得なくなり、画像品質の劣化を招いてしまう結果となる。
【0070】
以上の理由により、両端部で発生する最小のリニアリティを−10%以上とすると、上記したような走査光学系の組付けや経時的な変動などに対して画像のロバスト性が高い光走査装置を提供することが可能となる。
本実施例では、両端部で発生する最小のリニアリティを−11.4.%としていたが、振動ミラーの駆動電圧などを調整し、その振幅をθ0=26°と設定することにより、両端部のリニアリティを−9.6%とすることができ、ロバスト性の高い画像を提供できるより良い光走査装置を提供することが可能となる。
【0071】
図15は光走査装置を搭載した画像形成装置の例を示す図である。
同図において符号900は光走査装置、901は感光体ドラム、902は帯電チャージャ、903は現像ローラ、904はトナーカートリッジ、905はクリーニングケース、906は転写ベルト、
をそれぞれ示す。
感光体ドラム901の周囲には感光体を高圧に帯電する帯電チャージャ902、光走査装置900により記録された静電潜像に帯電したトナーを付着して顕像化する現像ローラ903、現像ローラにトナーを補給するトナーカートリッジ904、ドラムに残ったトナーを掻き取って備蓄するクリーニングケース905が配置される。感光体ドラムへは振動ミラーの往復走査により1周期で2ライン毎の画像記録が行われる。
【0072】
上記した画像形成ステーションは転写ベルト906の移動方向に並列され、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー画像が転写ベルト上にタイミングを合わせて順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。各画像形成ステーションはトナー色が異なるだけで、基本的には同一構成である。
【0073】
同図はフルカラータンデム方式の画像形成装置の例を示す図である。
モノクロ機においても、本発明の光走査装置を光書込手段に適用することができる。
上述の光走査装置を画像形成装置に用いることにより、走査ビームスポット径を有効書込領域全域にわたり一定にでき、良好な画像を形成できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】4ステーションを単一のポリゴンミラーにより走査する方式を示す図である。
【図2】光源ユニットの斜視図である。
【図3】静的スポット径と動的スポット径の関係を求めるフローチャートである。
【図4】発光源である半導体レーザを変調する駆動回路のブロック図である。
【図5】任意の画素の位相をシフトした説明図である。
【図6】補正の原理を説明するための模式図である。
【図7】点灯開始タイミングを個別に設定する例を示す模式図である。
【図8】4ステーションを単一の振動ミラーにより走査する方式を示す図である。
【図9】光源ユニットの他の実施例の斜視図である。
【図10】光束の角度配置を説明するための図である。
【図11】各像高におけるリニアリティを示す図である。
【図12】各像高の静止ビームスポット径を示す図である。
【図13】フルカラー画像の濃度むらに関する官能評価の結果を示す図である。
【図14】官能評価による段差濃度差の識別度を示す図である。
【図15】光走査装置を搭載した画像形成装置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
101〜104 感光体ドラム
107、108 光源ユニット
120 fθレンズ
160 ポリゴンミラー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源を1ドット単位に変調駆動する光源駆動手段と、前記光源からの光束を偏向走査する偏向手段と、該偏向手段からの光束を、画像形成に寄与する有効書込領域を有する被走査面上に導く走査結像光学系と、を有し、前記光束が所定の像高を通過するときの被走査面上における光束径(以下静止ビームスポット径と呼ぶ)が、前記光束が1ドット分露光する間に移動することによって被走査面が受ける光束の径(以下走査ビームスポット径と呼ぶ)をほぼ一定に保つように設定されることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光走査装置において、前記静止ビームスポット径は、前記有効書込領域内の走査速度の変化分を補正するように設定されることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光走査装置において、前記光源駆動手段は、1ライン内の各画素毎に点灯開始タイミングを個別に設定する機能を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記偏向手段の前記有効書込領域における各走査位置のリニアリティが変化するように設定したことを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記有効書込領域内の前記走査ビームスポット径の偏差が±10%以内となるよう設定したことを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における走査速度の補正残差を12.5%以下としたことを特徴とする光走査装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における略中央部の走査速度を最大とすることを特徴とする光走査装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の走査速度を略同等とすることを特徴とする光走査装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の走査速度を、最大走査速度の−12.5%以上とすることを特徴とする光走査装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の走査速度を、最大走査速度の−10%以上とすることを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記偏向手段は、最大振幅を調整する調整手段を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における略中央部の静止ビームスポット径を最小とすることを特徴とする光走査装置。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系前記有効書込領域における両端部の静止ビームスポット径を略同等とすることを特徴とする光走査装置。
【請求項14】
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の静止ビームスポット径を、最小静止ビームスポット径の+21μm以下とすることを特徴とする光走査装置。
【請求項15】
像担持体と、帯電手段と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段と有する画像形成装置において、前記静電潜像形成手段は請求項1ないし14のいずれか1つに記載の光走査装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
光源と、前記光源を1ドット単位に変調駆動する光源駆動手段と、前記光源からの光束を偏向走査する偏向手段と、該偏向手段からの光束を、画像形成に寄与する有効書込領域を有する被走査面上に導く走査結像光学系と、を有し、前記光束が所定の像高を通過するときの被走査面上における光束径(以下静止ビームスポット径と呼ぶ)が、前記光束が1ドット分露光する間に移動することによって被走査面が受ける光束の径(以下走査ビームスポット径と呼ぶ)をほぼ一定に保つように設定されることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光走査装置において、前記静止ビームスポット径は、前記有効書込領域内の走査速度の変化分を補正するように設定されることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光走査装置において、前記光源駆動手段は、1ライン内の各画素毎に点灯開始タイミングを個別に設定する機能を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記偏向手段の前記有効書込領域における各走査位置のリニアリティが変化するように設定したことを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記有効書込領域内の前記走査ビームスポット径の偏差が±10%以内となるよう設定したことを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における走査速度の補正残差を12.5%以下としたことを特徴とする光走査装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における略中央部の走査速度を最大とすることを特徴とする光走査装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の走査速度を略同等とすることを特徴とする光走査装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の走査速度を、最大走査速度の−12.5%以上とすることを特徴とする光走査装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の走査速度を、最大走査速度の−10%以上とすることを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記偏向手段は、最大振幅を調整する調整手段を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における略中央部の静止ビームスポット径を最小とすることを特徴とする光走査装置。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系前記有効書込領域における両端部の静止ビームスポット径を略同等とすることを特徴とする光走査装置。
【請求項14】
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記走査結像光学系は、前記有効書込領域における両端部の静止ビームスポット径を、最小静止ビームスポット径の+21μm以下とすることを特徴とする光走査装置。
【請求項15】
像担持体と、帯電手段と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段と有する画像形成装置において、前記静電潜像形成手段は請求項1ないし14のいずれか1つに記載の光走査装置であることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−69504(P2009−69504A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238145(P2007−238145)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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